平成26年度アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査
平成27年3月 内閣府

第2部 調査の結果

第3章 カナダ

3 青少年のインターネット利用環境に関する公的機関及び民間企業の取組み

(1) 青少年のインターネット利用環境に関連する政策・規制(法律)並びに監督官庁
ア 青少年の個人情報保護

(a) カナダ・プライバシー委員会(OPC 702

カナダ・プライバシー委員会(OPC)は、少年のプライバシーについての情報と、デジタル技術を使用する際のプライバシーの意義や重要性について少年に助言するツールを提供している。2008年、カナダの州政府や準州政府の同等組織と共に、OPCは、青少年に個人情報の保護やどのように彼らのユーザー情報がオンライン上で形成されるのかを管理することについてアドバイスするのウェブサイト(www.youthprivacy.ca)を立ち上げた。OPCはまた、少年に関係するソーシャルネットワーキングウェブサイトやオンラインID、バーチャル世界、オンラインの個人情報保護方針といったトピックスについて、プライバシーに関する調査・研究を行っている。

2013年、OPCは、10代の青少年を対象として、「プライバシー、インターネットとあなた」と題するオンラインで入手可能な漫画703を初めて掲載した。

図 182 「Social Smarts」マンガでの啓発の例

(出典:The Office of the Privacy Commissioner of Canada)

(b) カナダ連邦警察(RCMP 704

カナダ連邦警察(RCMP705 )は、国立児童搾取センター(National Child Exploitation Coordination Centre:NCECC)を運営している。NCECCはインターネット上の児童ポルノから子供を守るためのカナダの国家戦略による法執行機関の構成組織として、インターネットが子供への性的虐待画像や児童買春の客引き等児童ポルノ犯罪を促すために頻繁に使用されている状況を受けて2003年に設立された。

NCECCの役割は、被害にあった子供の特定、性犯罪者の訴訟における捜査と支援及び研修と捜査支援を通じた市、準州、州、連邦の各警察と国際警察組織の能力強化により、インターネットを利用する児童ポルノに対する子供の脆弱性を減らすことである。また、RCMP はオンライン安全プログラムも運営しており、そのウェブサイト(www.deal.org)は、少年のための情報提供と保護ツールである。

RCMPの国家青少年戦略(National Youth Strategy) は少年犯罪と児童虐待の減少という本来の目標から拡大してきている。その戦略の取組みの一つであり、カナダ連邦警察が運営するウェブサイト(www.deal.org)は、1998年に設立された当時のカナダの青少年に薬物に関する意識を育てるという本来の目的と共に、更に、親や教師に向けたページを含む総合的なインターネットリソースへと広がっていっている。deal.orgは、双方向のフォーラムを提供することで、青少年が情報交換や調査、意見を述べられるようになっており、カナダや世界中の青少年がお互いにつながりを持ち、お互いに語り、地域社会に関わりを持つことが可能である。

図 183 青少年犯罪防止センター作成TV広告(Stop Hating Online TV Ad 706

青少年犯罪防止センター作成TV広告(動画キャプチャ)(再生はできません)

(出典:Stop Hating Online: Consequences TV Ads 707

青少年犯罪防止センター作成TV広告(動画キャプチャ)(再生はできません)

(出典: Cyberbullying: Bullying 2.0 708

また、RCMPは、親が参照できるウェブサイト(www.commonsensemedia.org)を提供している。非営利団体により運営されるこのウェブサイトの使命は、あらゆるタイプのメディアのコンテンツのレビューを提供することであり、ウェブサイトには特定の年齢層を対象として評価されたウェブサイトのリストが載せられており、その数は増え続けている。それらには、カナダの青少年が夢中になるウェブサイトやアプリ、ゲーム、ビデオ、テレビ、本、音楽を含んでいる。

(c) ビロンギング(Belonging.ca 709

カナダのボーイズ・アンド・ガールズ・クラブとして、いじめに対して、積極的に取り組んでいる。

(d) キッズ・ヘルプ・フォン(Kids Help Phone 710

青少年のための無料で匿秘の電話やオンラインでの専門家によるカウンセリングサービスである。

(e) メディア・スマート(Media Smart 711

Media Smarts712は、非営利のカナダにおけるメディア・デジタル・リテラシー・センターで、カナダ最大のメディア教育ウェブサイトを開設している。MNetは専門家と共に、現場で全国調査を実施したり等を通じて、カナダの青少年がオンラインの悪影響による社会的、文化的、衛生的問題について分析したり、他人との健全な人間関係、倫理的意思決定、社会的責任等に対する尊重の念を促すような情報提供や、活動を行っている。MNetの教育者向けのウェブ意識向上・専門能力開発ワークショップでは、オンラインの安全性、プライバシー、ネットいじめについてのプレゼンテーション等が行われており、カナダの学校の約3分の2からそのワークショップは認識されている。その一環である「オンラインネットワークに住むカナダの青少年」(2001年、2005年)では、カナダ政府の「違法・不快なインターネットコンテンツ」に関する方策とあわせてカナダ政府の学校や図書館においても規定を設定するよう提唱している。

図 184 Media Smarts

(出典:同ウェブ)

(f) 関係発展・暴力根絶ネットワーク(PREVNet 713

関係発展・暴力根絶ネットワーク(PREVNet)は、カナダのいじめ防止に関する研究・援助機関である。

(g) カナダ赤十字社(Red Cross 714

カナダ赤十字社(Red Cross)のミッションは、カナダと世界各国の人間の力を結集して弱者の生活を向上させることである。赤十字社の「ビヨンド・ザ・ハート」というプログラムでは、いじめの状況をどうやって見極め、対処し、防止するかという情報を青少年と成人に提供している。

(h) WITSプログラム(WITS Program 715

WITSプログラム(WITS Program)では、学校、家庭、コミュニティをまとめることで、いじめや同級生からの虐待と戦っている子供を助けることのできる環境を作り上げようとしている。

(i) カナダ・セーフティ・カウンシル(Canada Safety Council)

カナダ・セーフティ・カウンシル(Canada Safety Council)は、オンライン上等での安全な環境を構築する活動をおこなっている慈善団体である。情報提供、教育活動、他機関との協業を通じて、安全に対して、リーダー的な活動を行っている。非営利・非政府機関であり、役員、委員会メンバー、講師陣の献身と責任感において運営されている。企業・個人メンバーの寄付により、少人数の専門スタッフでもプログラムの維持や一般市民、専門家、メディア等からの照会への対応が可能となっている。

(j) キッズ・イン・ザ・ノウ(Kids in the Know 716

キッズ・イン・ザ・ノウ(Kids in the Know)は、「カナダ児童保護センター」の全国安全教育プログラムである。プログラムでは、生徒を対話式のアクティビティに参加させ、身の安全を高め、オンラインや現実の世界で被害者となるリスクを減らすスキルを構築させる活動を行っている。

図 185 Kids in the know.ca

(出典:同ウェブ)

(k) セーフ・オンライン・アウトリーチ・ソサエティ(Safe Online Outreach Society:SOLOS 717

セーフ・オンライン・アウトリーチ・ソサエティ(Safe Online Outreach Society:SOLOS)は、ブリティッシュコロンビア州を拠点とするインターネット安全機関で、青少年がオンラインで境遇するネットいじめ、ネット性的搾取、暴力団への誘い等の問題に取り組むプログラムを提供している。SOLOSの主な活動は、ブリティッシュコロンビア州の学校、コミュニティセンター、フレンドシップセンターでのプレゼンテーション及び州の青少年に関するリサーチの実施である。

図 186 Safe Online Outreach Society

(出典:同ウェブ)

(l) カナディアンセンター(Canadian Centre 718

カナディアンセンター(Canadian Centre)は、ウェブについての良い面、悪い面、危険な面について理解を深めたいと思う親、教師等に対して情報等を提供している。ウェブサイト(ドアは閉じられていない:The Door That’s Not Locked)は、検索し、楽しみながら、子供の安全を守るために参考になる情報が得られるようになっている。本ウェブサイトには、インターネットの安全性に関し、親が子供に、より安全にインターネットの世界を検索し、楽しめるようにさせるための様々なリソースとツールが提供されている。どのオンライン活動が人気で子供はそれをどうやって使うのかということを学ばせたり、健全な関係と非健全な関係について子供に教える方法を見つけさせたりする等、本ウェブサイトは、親に必要かつ大切な情報を提供している。

図 187 The Door That is Not Looked

(出典:同ウェブ)

イ ネットいじめ

ネットいじめは有害であるのみならず、中には違法なものもある。中傷、侮辱、からかいが嫌がらせ、脅迫、威嚇にエスカレートした場合、青少年は刑事責任に問われることもある。ネットいじめ行動の本質により、以下の現行「刑法719」違反で起訴されることがある。

  • 犯罪的ハラスメント(刑法264)
  • 脅迫(刑法264.1)
  • 威嚇(刑法423(1))
  • データの損傷(刑法430(1.1))
  • コンピュータの不正使用(刑法342.1)
  • 身分詐称(刑法403)
  • 恐喝(刑法346)
  • 虚偽メッセージ、猥褻・嫌がらせ電話(刑法372)
  • 自殺の推奨(刑法241)
  • 憎悪の扇動(刑法319)
  • 児童ポルノ(刑法163.1)
  • 中傷(刑法298~301)

このようにネットいじめは、状況により民法又は刑法に問われることがある。民法では、ネットいじめに対して以下の三つのアプローチがとられている。

1ネットいじめは名誉毀損に関わることがある。ある人物に関する虚偽の情報を広めることで、いじめがその人の評判を傷つける場合である。通常、一時的に現れる(録音されないスピーチや生中継等での)名誉毀損をslanderといい、永久的に現れる(書籍やウェブサイトでの)名誉毀損をlibelという。発言が名誉毀損であるとするには以下の要件が必要となる。1誰かの評判を傷つける、2明確な標的者がいる、3発言者と標的者以外の人に分かる。名誉毀損のケースでは、標的者が発言者を訴えることができる。勝訴の場合、発言者は標的者に損害賠償(金銭)を支払わなければならない。名誉毀損で告訴されている人は、発言は事実であり正当なコメントである(真の批評であって個人攻撃ではない)又はどのようなことか分からずに発言を罪の意識なく再生してしまったとして自分を弁護することができる。
2加害者は、標的者が学校に行けば暴力を受けたり、からかわれたり、除け者にされたりすると感じるような状況を作っていることがある。学校や職場は生徒や従業員に安全な環境を提供しなければならず、そのために適切な処置を取らなければならない。よって、学校は他の生徒たちが安全な環境で学習できるように、環境を害するオンライン行動をとった生徒を罰することができる。オンタリオ州では、「安全な学校法令」が改訂され、オンライン行動について具体的に言及し、ネットいじめを行った生徒は、それが校外で行われた場合でも、停学又は退学にできるようになっている。可能な限り安全な環境を提供する努力を行わない学校や職場は、標的者(たち)から訴えられ得る。発言が名誉毀損でないとしても、それを言い触らすことは安全でない環境を作り上げることになり兼ねないからである。
3最後に、人は当然起こるであろうと思われるあらゆる結果に対して責任を負う。よって、落ち込んでいる生徒は自殺すればいいと言う加害者は、その生徒が実際に自殺してしまった場合、そのような結果になるであろうと思われる理由がある以上は、責任を負うことになる。

刑法は、状況に対してどの行動が犯罪となるのかを決めるものである。刑法では、ネットいじめに対して以下の二つのアプローチがとられている。

1ハラスメントは刑法の下では犯罪となる。ハラスメントとは、ある者が言ったか行ったことによって、ある人あるいは、その人以外の人の安全が脅かされることである。加害者がその人を脅かす意図がなかったとしても、標的者が脅威を感じる場合にはハラスメントで訴えられることがある。犯罪的ハラスメントは10年以下の懲役に課される。
2名誉毀損は刑法の下における犯罪である。名誉毀損発言が権力者に対する直接的なものであり、その人の評判を深刻に傷つけるような場合には、大抵犯罪として扱われる。名誉毀損は5年以下の懲役に課される。

カナダ権利自由憲章の第2章では表現の自由が保証されている。しかしながら、この権利は「法に規定される合理的な範囲内で自由で民主的な社会において確実に正当である場合に限り」保証されるものであり、ネットいじめの場合は、第7章を踏まえて検討されることとなる。第7章は「人の生活、自由及び安全の権利」を保証している。一般に、憲章第2章はいじめに関する民事・刑事事件における弁護答弁としては認められていない。

一部の自治体には、オンラインやオフラインいじめを具体的に取り扱った法律がある。

(a)オンタリオ州

教育法に、具体的な「いじめ」の定義が盛り込まれた。「いじめ」とは、児童による攻撃的で通常は度々繰り返される以下のような行為を意味する。

I 児童が以下を意図して行った行為、あるいは、児童がその行為により以下の効果をもたらすと知り得た行為:

(i)別の個人に、身体的、心理的、社会的又は学業への損害を含む危害、恐怖又は苦悩をもたらす効果、あるいは、別の個人の名誉に対する損害や別個人の財産へ損害を及ぼす効果 (ii)学校で別の個人に悪影響を及ぼす効果

II 児童と別個人の間の力関係に、体格、強さ、年齢、知能、友人グループ、経済的地位、社会的地位、宗教、民族、性的嗜好、家庭環境、性別、認識性別、性別表現、人種、身体的障害の有無又は特別指導の受講有無等に基づく実質的又は認知不均衡が存在する状況で発生している行為。

ネットいじめも以下のように定義されている。

「いじめ」の定義【上記I (i)】の一般概念はそのままに、いじめには、以下を含む技術を用いた電子的手段で行われるネットいじめとして知られる行為も含まれる。

  • 作成者が別人を装ってウェブページやブログを作成する。
  • 投稿されたコンテンツ又はメッセージの作者として別人になりすます。
  • 複数の人に情報を伝えたり、複数の人がアクセス可能な電子媒体で情報を投稿したりする。

修正法では、学校が、「就学期間中のすべての児童のためのいじめ防止指導」、「いじめ被害者のための救済処置」及び「管轄内の学校教員にいじめやいじめ対処法を教育するための職能開発プログラム」を提供することを義務付けている。また、各教育委員会には、「管轄内の学校いじめ防止策を講じる」ことが義務付けられている。

(b) ケベック州

学校におけるいじめや暴力を防止するための法律により、教育法や私立学校に関する法律が修正された。この法律では、いじめを「個人を傷つける、虐げる又は排斥する目的で、特にソーシャル・メディアを使って直接又は間接的に行われる、ネットいじめを含む、行為、発言、行動又はジェスチャー(tout comportement, parole, acte ou geste, y compris la cyberintimidation, exprimés directement ou indirectement, notamment par l’intermédiaire de médias sociaux, ayant pour but de léser, blesser, opprimer ou ostraciser)」と定義している。教育委員会にはいじめ防止策を講じることが義務付けられており、すべての学校職員がその対策に参加しなければない。

(c) アルバータ州

2012年、教育法が改訂され、いじめが「学校のコミュニティ内で個人が繰り返し行う、心理的危害又は個人の名誉への悪影響を含む、同じコミュニティ内の1人以上の個人に対する危害、恐怖又は苦痛をもたらす敵対的あるいは屈辱的行為」と定義された。この法律では、児童に対し、「学校内で発生したかどうか、就学時間中に発生したかどうか又は電子的手段が用いられたかどうかに関わらず、学校内の別の生徒に対して、いじめやいじめ行為を行わないこと、いじめを報告すること、また、いじめを許さないこと」を義務付けた。教育委員会には「いじめ行為を是正するための生徒の行動規範を制定することも含め、快適かつ思いやりがあり、他人を敬う安全な学習環境を提供するという教育委員会の義務を尊重した政策を制定、実施及び維持」することを義務付けている。アルバータの法律は、ネットいじめを目撃した生徒はそれを報告しなければならず、それを怠った場合には停学や退学処分もあり得るという点で注目すべきものである。

(d) ノバスコシア州

ノバスコシア州では、2013年に、法的にいじめを「他者の身体、感情、自尊心、名誉又は財産に恐怖、脅迫、屈辱、苦悩又はその他の危害を与えるため、あるいは、与え得ると知りながら、直接又は間接的に、通常は繰り返し行う行為(そのような行為を支持又は助長するあらゆる行為も含む)」と定義し、ネットいじめを「技術(コンピュータ、その他の電子機器、SNS、テキストメッセージ、インスタントメッセージ、ウェブサイト、電子メールを含む)によって発生する電子的手段によるいじめ」と定義した。ネット安全法(Cyber-Safety Act)では、ネットいじめの被害者に、加害者の行為を止めたり加害者を特定できる可能性のある「保護命令」を求めさせたり、加害者が18歳未満の場合は、加害者の保護者にその子供の行為に対する責任を持たせている。

(e) ニューブランズウィック州

教育法の第1項の「重大な違法行為」には、オンライン及びオフラインのいじめが含まれている。児童には、「学校生活に影響をもたらす学校時間外や学校敷地外で行われる行為又は非行も含め、いじめ、ネットいじめ、嫌がらせ又はその他の破壊的又は許容されない行為又は非行」のない「正常な学習及び作業環境」が保証されている。校長には、正常な学習及び作業環境計画を策定し、また、重大な違法行為事件はすべて学区長に報告することが義務付けられている。また、各学校は、他人を敬う行為を促進する方法や非行防止案を制定し、更に、他人を尊重しない行為に加担した児童だけでなく、その被害者も支援できる政策も検討する保護者学校支援会(Parent School Support Committee)を設置しなければない。

(f) アルバータローレビュー(The Alberta Law Review)

アルバータローレビュー(The Alberta Law Review720 によると、ネットいじめ被害で最も多い民事案件は、保護命令又は接近禁止命令を適用すること、あるいは、名誉毀損訴訟として是正を求めることである。

(g) ブリティッシュコロンビア州の法務省

ブリティッシュコロンビア州の法務省は、保護命令を以下のように説明している。

保護命令は、裁判所又は警察により、ある個人を別の個人から守るために出される。保護命令には、特定の(指名)個人(複数可)に安全やセキュリティーを提供できる条件が含まれる。保護命令には、「接触の禁止」、「接触の制限」又はその他の保護命令と見なされる保護条件が含まれていなければならない。

被害者が、自分自身又は家族が差し迫った危険に曝されていると感じている場合、警察に連絡するべきであり、警察は、申し立てのあった攻撃者を逮捕するかどうかを判断する。しかし、警察が逮捕するに十分な証拠がないと判断した場合、被害者は接近禁止命令を求めることができる。

「接触の禁止」又は「接近の制限」命令の具体的な内容は、直ぐにインターネットの使用にも適用される。しかしながら、ネットいじめが直接的な接触ではなく、差し迫った脅威ではないものの、被害者の名誉を傷つけるために被害者の噂が吹聴されているという状況では、これらの禁止令は適用されない。この場合、被害者は名誉毀損で訴えることができる。カナダ法曹協会ブリティッシュコロンビア州支部(The Canadian Bar Association BC Branch:CBABC)は、名誉毀損を以下のように説明している。「名誉毀損」とは、個人の名誉を傷つけ得るその個人に関する情報の伝達を意味する。この情報伝達は、渦中の個人に対してだけではなく、他者にも伝えられていなければならない。口頭で伝えられる場合、その名誉毀損は「中傷」と呼ばれる。文章で伝えられる場合、「誹謗」と呼ばれる。名誉毀損はジェスチャーで行われる場合もある。これは、中傷の一種である。

カナダでは、他者にも共有されない限り、そのような情報伝達は名誉毀損とみなされない、とCBACBは指摘する。つまり、ネットいじめの加害者が、被害者だけに繰り返し悪質、屈辱的又は軽蔑的なコメントをメールで送っている場合、それは法的には名誉毀損とみなされない。しかしながら、それは間違いなく、ネットいじめの定義に当てはまる。更に、いじめの加害者は軽蔑的なコメントに加え、仲間外れ等、別の形のいじめも合わせて行う可能性があるが、それについても名誉毀損で訴えることはできない。

いじめの被害者は、特に、被害者自身やその家族が差し迫った危険に曝されているという恐怖を感じている場合、カナダのハラスメント刑法264721の下で告発することも可能である。

いずれの人物も、法的な権威なく、別個人が悩まされていることを知りながら、あるいは、その個人が悩まされているかも考えず、あらゆる状況において、別個人又はその人が知る人物の安全が脅かされていると妥当に感じられるような行為を行ってはならない。

禁止行為には、別の個人やその個人の知人の後を度々追いまわす以下のような行為が含まれる。

  • 別個人又はその個人を知る人物と、度々、直接又は間接的に接触する。
  • 別個人又はその個人を知る人物の自宅、又は生活、作業、仕事又はたまたま居合わせる場所に繰り返し押しかける又はそのような場所を観察する。
  • 別個人又はその家族に対し、脅迫的な行為を行う。

しかし、この種のケースは証明が非常に難しいことも考えられる。大抵のネットいじめは繰り返し行為によるものだが、いじめの加害者の条件とされる、意図をもってその行為に及んだことを証明することは、必ずしも容易でないからである。冗談やいたずら等とみなされるかどうかに関わらず、特に未成年者の名誉毀損の訴えでは、実質的な危害を加えるつもりではなかったと異議を唱えられてしまうことがほとんどであり、陪審員はそれを信じる傾向にある。直接的なネットいじめのケースでは、特に、その行為が度々繰り返される悪意の高いものである場合、ストーカー又は嫌がらせとして起訴する方が簡単である。例えば、教師をからかうことを目的としたMySpaceページを作成するといった間接的なネットいじめの場合、加害者の条件であるストーカーや嫌がらせ行為の意図を証明することは更に難しくなるだろう。アルバートローレビューによると、問題の一部は、民事法や刑事法が情報技術の進歩に追いついていないことにある。ネットいじめに対処するための新しい法律が必要な状況になってきているとも考えられる。

いじめやネットいじめの問題は増加しており、それに対処するためにすでにいくつかの対策が講じられている。ネットいじめの被害者がまず得られる初期支援の一つは、被害者の学校、大学又は職場に解決を求めることである。

多くの大学や職場では方針が設けられており、この問題に対応するために教育法を厳しく運用し始めている自治体もある。例えば、2008年にオンタリオ州では、教育法に対する212修正法案722が可決された。それにより、この法律において、懲戒処分の事由にいじめも含まれることとなった。ニューブランズウィック州でも、公立学校制度における非行に関する同様の法律が可決された。肯定的な学習及び作業環境政策では、「重大な違法行為」の条項下にネットいじめに関する記載が直接盛り込まれている。

(h) PREVNet

図 188 PREVNet

(出典:同ウェブ)

PREVNet723 は、いじめ等の撲滅のために、カナダの大学17校の研究者23名、NGO34団体及びその他協力団体の協働を目的として2006年に設立された。PREVNetは、NGO及び政府と情報を共有、いじめを査定、いじめ及びネットいじめに関する指針を策定するための科学的背景のある情報を基に、戦略の計画、実行により、カナダの子供及び青少年に安全で健康的な環境をもたらす活動を行っている。

PREVNet開設以前は、地域、州及び国レベルで、様々ないじめ防止活動が個別に行われていた。しかし、PREVNet設立後は、全国レベルのネットワークとして、認識を拡大し、研究能力を高め、いじめ問題を査定し、カナダ全土におけるプログラムと効果的な指針を推進するため、研究者と国の組織を協働へと導きつつある。

(i) 子供ヘルプ電話(Kids Help Phone 724

子供ヘルプ電話(Kids Help Phone)では、カナダのあらゆるコミュニティの子供、10代の青少年及び若い大人が、365日24時間オンライン又は電話で専門のカウンセラーに相談することができる。彼らの使命は、テクノロジーを用いたコミュニケーション手段による匿名かつ親展な専門カウンセリング、照会及び英語とフランス語での情報提供を通じ、カナダの子供と青少年の健康な生活を改善することである。

図 189 Kids Help Phone

(出典:同ウェブ)

(j) カナダ赤十字社(Red Cross 725

カナダ赤十字社(Red Cross)は、カナダ及び世界における人道的な力を動員することで、弱者の人生を改善することを目的としている。ビヨンド・ハート(Beyond the Hurt)プログラムは、青少年と大人にいじめを認識し、対処し、予防する方法を教えるものである。

図 190 Red Cross

(出典:同ウェブ)

(k) WITSプログラム(WITS Program 726

WITSプログラム(WITS Programs)は、子供たちがいじめと虐待に対処できる環境を作り出すために学校、家族及び地域社会を協働へ導くためのプログラムである。The WITSという略語は、ランプソン・ストリート小学校で1993年にジュディ・スティーブンソン校長が生徒たちに争いを解決するために教え始めた4つの簡単な行動の頭文字から取られている。それらは、1その場を離れる、2無視する、3他の人に話す、4助けを求める、の4つである。これらは教師、カウンセラー及び学校関係者により熱心に採用され、すぐに「WITSを使おう(using your WITS)」は、ブリティッシュコロンビア州エスクィマルトの学校で合言葉となった。それらの効果を認識した学校と警察の担当者は、その適用範囲を広げ、1997年には地元の運動選手グループと法執行担当者と共に、ロック・ソリッド財団(Rock Solid Foundation727 )を立ち上げた。その使命は、子供と青少年への暴力を防ぐプログラムを提供することである。

図 191 WITS Program

(出典:同ウェブ)

(l) 現状と課題

教師、親、警察、法律家及び政治家といった社会の様々なグループからネットいじめに対しての法制定の要請が高まり、新しい法律とより厳しい罰則を求める状況となってきている。例えば、2010年に、カナダ国内の警察の大半を代表するカナダ警察委員連盟は、公にネットいじめへのより厳しい罰則を求めた。しかし、既存の法律がすでにネットいじめに対処しており、新しい法律は不要だとみなす他の組織からの抵抗にあった。反対派は、そうした法律が不要であるのみならず、実際に個人の言論の自由を侵す可能性があるとみなしている。例えば、前述したウェブ上で教師たちを中傷したかどで逮捕された生徒たちは、教師を傷つけるつもりはなく、また彼らには意見を表明する権利があると主張した。また、実際に、自由の一部を剥奪される形で学生が懲戒された件では、学校の学生団体は、彼の思いを口にする権利を擁護するデモを起こした。

ウ 児童売春等の青少年を性的行為に誘引する行為

子供たちをインターネット上での性的搾取から保護するためのカナダ国家戦略は、2004年に開始され、関係部局を通じ、提供、拡張されてきた。5年間の間、戦略はインターネット上で子供たちを保護するための広範かつ組織されたアプローチを確保し、テクノロジーを利用する者がそれらをよりよく活用するための活動資金として、4,300万カナダドルを拠出した。

(a) 児童売春等の青少年を性的行為に誘引する行為に関する法律、規制及びその監督官庁、関係団体

2002年に、カナダ刑法が改正され、「インターネット上で性的犯罪を目的として子供たちと交信することは違法である」とすることにより、18歳以下の個人への誘惑が犯罪として規定された。これに従い、警察は、改定後の法律を基に発覚した子供の誘惑事件の情報収集及び報告を開始した。

(b) 児童インターネット安全連盟(Kids Internet Safety Alliance:KINSA 728

児童インターネット安全同盟(KINSA)は、インターネット上での子供への性的虐待へ対応するために創設され、また同時に子供と青少年がテクノロジーを利用する上でのポジティブ、創造的で想像をかきたてる方法をサポートし、働きかけを行っている。KINSAの活動は、支援活動、啓蒙、研修及び研究を中心に行われており、インターネットの安全教育プログラムとして、KINSAパートナーと子供向けエンターテイメント企業が子供と青少年のための情報源を作るプログラム、Surf Smartを実施している。KINSAはまた、最新技術、調査方法及び情報源を提供し、世界中での法執行を支援するため、IT業界、法執行、刑事告発及び法制定の専門家からなるネットワークを組織している。

図 192 Kids Internet Safety Alliance

(出典:同ウェブ)

(c) コミット・ツー・キッズ(Commit to Kids 729

コミット・ツー・キッズ(Commit to Kids)は、カナダ子供保護センターの子供関連組織での性的虐待発生を予防するための段階的プランを提供するプログラムである。

図 193 Commit to Kids

(出典:同ウェブ)

エ 児童ポルノ

児童ポルノは、成人のポルノに関する問題とは異なり、児童ポルノの制作に児童が参加することと、児童ポルノに児童が接するこという別の問題点がある。成人の場合、ポルノ制作に関与したりそれを鑑賞したりすることについて選択できると考えられるのに対して、児童の場合、そうした行為に対する状況を理解したうえでの同意はできないとみなされる。これらの理由から児童の利用は違法とすべきであり、児童が関係する性的に露骨な表現のすべては猥褻とみなすべきであると主張する者もいる。

児童ポルノに関する違反には4つの形態がある。1児童ポルノの所持、2アクセス、3頒布(利用できるようにすること)及び4制作である。

児童ポルノに関する法律としては刑法163.1 730がある。

本条において「児童ポルノ」とは、方法が電子的であるか機械的であるかを問わず、写真、フィルム、ビデオ等の視覚的表現であり、18歳未満の人又は18未満として描写されている人が、性的に露骨な行為をしているか、しているものとして描写されている場面を提示し、もしくはその主要な特徴が、性的な目的での18歳未満の人の性器又は肛門部の描写であるもの、本法に基づき犯罪となる18歳未満の人との性的行為を支持又は推奨する著作物、視覚的表現又は録音、その主要な特徴が、18歳未満の人との性的行為についての性的な目的での描写である著作物、18歳未満の人との性的行為についての性的目的での描写、表出又は表現を主要な特徴として有する録音をいう。

児童ポルノを制作、印刷もしくは発表し又は発表目的で所持するすべての者は、最低刑を1年の拘禁とする10年以下の拘禁刑又は陪審によらずに裁かれる、最低刑を6ヶ月の拘禁とする2年未満の拘禁刑に処される。

児童ポルノを送信し、利用できるようにし、頒布、販売、宣伝もしくは輸出入するか又は送信し、利用できるようにし、頒布、販売、宣伝もしくは輸出する目的で所持するすべての者は、最低刑を1年の拘禁とする10年以下の拘禁刑又は陪審によらずに裁かれる、最低刑を6ヶ月の拘禁とする2年未満の拘禁刑に処される罪に処される。

児童ポルノを所持するすべての者は、最低刑を6ヶ月の拘禁とする5年以下の拘禁刑に処される罪又は陪審によらずに裁かれる、最低刑を90日の拘禁とする18ヶ月以下の拘禁刑に処される。

児童ポルノにアクセスしたすべての者、最低刑を6ヶ月の拘禁とする5年以下の拘禁刑に処される罪又は陪審によらずに裁かれる、最低刑を90日の拘禁とする18ヶ月以下の拘禁刑に処される罪に処される。

(a) ストップ・セックス・ウィズ・キッズ(Stop sex with kids 731

児童の性的搾取に取り組むマニトバ計画の一部であるストップ・セックス・ウィズ・キッズ(The Stop Sex with Kids)キャンペーンは、性目的の人身売買による児童の搾取に対する認識を高めるような活動を実施している。2010年4月28日に始まる第3段階は、児童を保護するために大人を参加させ、大人に自分の役割を果たさせる行動喚起の運動である。

図 194 Stop sex with kids

(出典:同ウェブ)

(b) ニード・ヘルプ・ナウ(Need Help Now 732

ニード・ヘルプ・ナウ(Needhelpnow)は、性的な写真やビデオで影響を受た青少年に、状況に対処するためにとれる具体的な措置を提供することである。そこには、イメージ、ビデオの削除を要請するために行うウェブサイト、オンラインサービスへの連絡、安全な大人を関与させるための助言、セルフケアの大切さ、及び物事が行きすぎた場合の認識に関する情報が含まれている。ウェブサイトでは、コンテンツの削除を要請する連絡をウェブサイトに行うときに伝えるべき情報、クレームのテンプレート、有名なウェブサイトに連絡するためのステップ・バイ・ステップの情報を提供している。

図 195 Need Help Now

(出典:同ウェブ)

(c) インターネット・サービス提供者による児童ポルノの強制通報を考慮する法律 733

本法は、インターネット・サービスを公共に提供する者に対して、児童ポルノを公衆が入手できるインターネット・アドレスを知らされた場合又は自己のインターネット・サービスが児童ポルノに関する犯罪に利用されているか、もしくは利用されていたと信じる合理的な根拠がある場合に報告義務を課している。本法において、報告義務の不履行は犯罪になる。

■ 法律概要

  • インターネット・アドレス報告義務

インターネット・サービスを公に提供する過程で、児童ポルノが一般市民に入手可能となるようなインターネットプロトコルアドレス(IPアドレス)又はユニフォームリソースロケーター(URL)の通知を受けた場合、当該人物は当該IPアドレス又はURLを、規制に準じ実行可能な限り迅速に、規制により指定された団体に報告を行わなければならない。

  • 警察官への通知義務

インターネット・サービスを一般市民に提供する者が、インターネット・サービスが児童ポルノ違反を犯している又は犯していたと信じるに足る合理的根拠を有する場合、当該人物は、規制に準じ実行可能な限り迅速に、警官又はその他治安を保護し維持するために働く者に当該事実を通知しなければならない。

  • コンピュータデータの保存

通知を行う人物は、当該通知を行った日から21日間、自身が保有又は管理する当該通知に関連するすべてのコンピュータデータを保存しなければならない。

  • 児童ポルノを探し出さないこと

本法令は、児童ポルノを探し出すよう求めたり、その権限を付与したりするものではない。

  • 違反

違反を故意に犯すすべての人物は、以下の罪に問われる。

個人の場合、

  • 最初の違反については、1,000ドル以下の罰金。
  • 二度目の違反については、5,000ドル以下の罰金及び
  • それ以降違反の度に、10,000ドル以下の罰金又は6ヶ月以下の懲役又はその両方。

その他の場合、

  • 最初の違反については、10,000ドル以下の罰金。
  • 二度目の違反については、50,000ドル以下の罰金及び
  • それ以降の違反の度に、100,000ドル以下の罰金
オ リベンジポルノ

リベンジポルノに関して、これまでは、刑法の、「のぞき、盗撮(voyeurism)(刑法162 734)」、「公衆わいせつ(obscene publication)(刑法163 735)」、「ハラスメント(criminal harassment)(刑法264 736)」、「誹謗・中傷(defamatory libel)(刑法298〜300 737)」を事件の状況に応じて適用していた。

しかし、2014年12月に、新たにリベンジポルノを対象とした法案(法案13 738)が提案、オンライン犯罪からカナダ人を守る法令(Protecting Canadians from Online Crime Act 739)として、可決され(12月9日)、刑法162.1として、インターネットを利用して、本人の承認なしに、ポルノ的なイメージを広めた者に対して、最大5年の拘禁刑を課すことが可能となった。

カ 現在検討中の青少年のネット利用環境に関する新しい政策・規制とその背景

過去に検討された、もしくは、検討中(立法過程にあるものも含む)の政策・規制としては以下がある。

(a) 子供をインターネット犯罪より守る法律(The Protecting Children from Internet Predators Act)

子供をインターネット犯罪より守る法律(The Protecting Children from Internet Predators Act:公式なタイトルはBill C-30)は、もとは合法アクセス法(Lawful Access Act)として、第41回議会中、2012年2月14日に、ステファン・ハーパー(Stephen Harper)保守政権により提出された、カナダの刑法への改定案である。

本法案は当局に新しい権力を付与し、リアルタイムでカナダ人のデジタル活動を監視、追跡することができ、ISPに自身の顧客についての情報を記録し、要請があれば提出するように求めるものであり、強制的に個人の電子情報に、許可証を必要とせずに、遠隔でアクセスできるようにするものである。

本法案は、そのタイトルを除いて、子供やインターネット性犯罪者に言及していなかったことから、「聞こえのいいタイトル」は法案の内容と関係がなく、単に「法律を一般市民に売る」ために採用したとの批判が上がった。そのため、本法案に対しカナダ国内で広く反対の声が上がり、政府は最終的に、当該反対を理由に、本法案を2013年に取り下げた。カナダの自由党及び進歩保守党いずれにおいても、過去に似たような法律案は成立したことがないのが現状である。

(b) オンラインヘイト・カナダ法(Online Hate and Canadian Law)

いくつかの形のヘイトスピーチを禁止する連邦法が、カナダの刑法、カナダの権利と自由憲章、一括法、放送法、移民法で概要が示されている。しかしオンラインでのヘイトスピーチに適用されるであろうさまざまな法律がいくつもあることで、憎しみに満ちた行為の定義や表現の自由についての矛盾する判決が下る可能性がある。更に、一体どのスピーチのタイプがこの法律に服するかという点についてのかなりの論争が存在する。

(c) スパムと戦う法律(Anti Spam Legislation 740

望まれない電子メール(e-mail)、携帯メールのメッセージ、そのほか様々な電子メッセージは迷惑であり、詐欺や有害ソフトを持ち込むために使われうることもあり得る。しかし多くのビジネスでは、さまざまな電子的手段を通して製品やサービスを合法的に宣伝し、 求められていない商業的な電子メッセージを送ることは、完全にビジネスの方法として普通に受け入れられるようになってきている。このような状況下、カナダは公式にアンチスパムの法律741を2010年の年末に制定した(2014年7月1日に始めて施行)。これは、詐欺的な形のスパムを止めることが意図されたと思われるが、電子メッセージを送るすべてのビジネスに大いに影響を与えると思われる。ほとんどのビジネスにとって、その法律の重大な側面は次の点である。

  • 電子的メッセージを送るためには同意が必要で、そのメッセージの形式の点に一定の必要条件が課される。(2013年の7月1日に施行)。
  • 同意なしで、ユーザーのシステムにコンピュータプログラムをインストールすることを禁止。(2015年1月15日に施行予定)。
  • 法律に違反した結果損害を被った人に対して、個人で訴える権利を創設する。(2017年7月1日に施行予定)。

(d) 何がカナダにできるか(What Canada can do? 742

近年の多くの連邦法と州法の改善により、カナダは児童の性的犯罪等において様々な取り組みを行っている。それは児童の権利についての国連条約と児童の売買、ポルノ、売春についての選択議定書の下での国際的な義務と一致している。

更に、カナダの子供を守るために、ユニセフ(UNICEF)が考えるカナダがするべきことは以下のとおりである。

  • すべてのカナダの青少年に適切で正確で有用な情報を提供し、オンラインでの選択とリスク管理の方法を伝える。また、青少年は以下のような情報を必要としている。
  • プライバシーと保護についてのオンラインの情報にアクセスする権利
  • 具体的なリスクがどのようなもので、どのようにそれを避け、管理するか。
  • 自分を守り他人を尊重するために、責任あるやり方でどのようにオンラインで行動するか。
  • 問題に遭遇した場合どうするか、具体的な知識を得ること(使いやすく簡単に手に入るホットボタンのレポート等)。
  • 仲間をサポートする方法。
  • 護的な立法が、児童の権利の影響評価と共に、確実に発展するようにすること。その評価はオンラインでの児童の実際の危険を考慮にいれ、児童のオンラインでの行動を十分に視野に入れる必要がある。児童への危害を妨げるよう設計された保護的な法律の増加が、実際には危害を作り出しうる可能がある。児童自身が「セクスティング」のような大部分は意図せず十分な知識をもたない行為について、法律の矛盾に至った場合である。ひとつのアプローチは、性的搾取と性的虐待からの児童の保護について、ランサローテ協定(the Council of Europe Convention)が推奨するように、青少年の特別条項を含む法律を修正することである。
  • ・ 国家青少年コミッショナー(National Children’s Commissioner)を設立すること。人権に関する上院委員会は、国家児童委員の設立を求めている。児童委員は、児童の性的搾取を受けて、プログラムと政策を監視するべきであるとしている。

(e) 青少年犯罪正義法(The Youth Criminal Justice Act)

青少年犯罪正義法(Youth Criminal Justice Act:YCJA)743は、刑事犯罪を犯した12歳以上、18歳未満の少年を対象としている。カナダの1世紀以上にわたる少年法として、青少年非行法(the Juvenile Delinquents Act:1908-1984)、青年犯罪法(the Young Offenders Act:YOA:1984-2003)及び青少年犯罪正義法(the Youth Criminal Justice Act:YCJA:2003〜現在)の三つが存在した。この内、YCJAに関して、2012年に議会で一連の改正が可決された。また、2012年、カナダ政府は安全なコミュニティ法(Safe Streets and Communities Act)として知られる新法を可決し、YCJAに対して重要な改正を行った。これらの改正は、2012年10月23日に施行されたが、少年司法制度の凶悪な暴力犯や再犯者の取扱いを強化するために行われた。