平成26年度アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリアにおける青少年のインターネット環境整備状況等調査
平成27年3月 内閣府

第2部 調査の結果

第4章 オーストラリア

1 青少年のインターネット利用環境に関する実態

(1)青少年の定義

オーストラリアの刑法では大きく分けて4つの年齢区分が州によって規定されている773。10歳未満、10歳~14歳、18歳未満(ただしクイーンズランドでは17歳未満)、そして成人である。犯罪を取り締まる際、その者が18歳未満の場合、未成年による犯罪ということで何らかの免除及び刑の軽減がなされる。

表100 オーストラリアにおける刑事責任の年齢
管轄 刑事責任追求無し 刑事責任追及の可能性有 未成年として取り扱う
連邦 10歳未満 10歳以上14歳未満 指定なし
オーストラリア首都特別地域 10歳未満 10歳以上14歳未満 18歳未満
ニューサウスウェールズ州 10歳未満 10歳以上14歳未満 18歳未満
ノーザンテリトリー 10歳未満 10歳以上14歳未満 18歳未満
クイーンズランド州 10歳未満 10歳以上14歳未満 17歳未満
南オーストラリア州 10歳未満 10歳以上14歳未満 18歳未満
タスマニア州 10歳未満 10歳以上14歳未満 18歳未満
ビクトリア州 10歳未満 10歳以上14歳未満 18歳未満
西オーストラリア州 10歳未満 10歳以上14歳未満 18歳未満

(出典:Australian Institute of Criminology掲載の資料774 を元に作成)

オーストラリアでは、一般的に18歳以上を成人、18歳未満を未成年として扱うことが多い。例えば、選挙権は18歳以上の全国民に与えられ、投票することを義務付けられている。また、喫煙行為又は巻きたばこの購入及び飲酒については、現在18歳未満は認められていない。運転免許取得の下限年齢は州や地方自治体ごとに異なり、ビクトリア州では18歳、ノーザンテリトリーでは16歳と6ヶ月、その他の州とオーストラリア首都特別地域では17歳で運転免許の取得が認められている。

オーストラリアにおける法的責任力のある最低年齢は10歳であるため、本章では、基本的に10歳~17歳(クイーンズランド州では10歳?16歳)を青少年として取り扱う。なお、オーストラリアでは、シニアハイスクール(中等学校相当)へ進学する準備期間を含め、13年間を義務教育期間としており、義務教育が終了する最低年齢は飛び級制度が採用されていることから16歳となっている。

(2) 青少年の閲覧が望ましくないとされている情報(有害情報)及び違法とされている情報(違法情報)の現状
ア 有害情報

オーストラリアでは、連邦政府の通信省(Department of Communications)配下のオーストラリア通信メディア庁(Australian Communications and Media Authority:ACMA)がインターネットコンテンツの規制行政全般を所掌している。

通信メディア庁では、性的描写や暴力要素を含んでいるコンテンツをオンラインにおける未成年者にとって有害又は適さないコンテンツとしているが、オーストラリアのインターネットに関する法律では、厳格には有害情報は定義されていない。未成年者にとって有害であるとみなされる情報は、年齢制限や格付けスキーム(National Classification Scheme)によって閲覧等の規制がされており、犯罪の手引きや児童虐待のような一部のコンテンツ(Refused Classification:RC)を除き、有害情報は違法ではないとされている。

有害情報の規制及び有害情報の強制的フィルタリングは過去数年間にわたり「テロ行為及び犯罪を促進するコンテンツの閲覧禁止ができること」や「一般からのアダルトコンテンツの閲覧を禁止又は制限できること」といった内容で労働党(Australian Labor Party:ALP)が推進してきたが、反対意見の方が多かったため、2012年に強制的採用をあきらめ775、児童虐待に関するコンテンツのブロック義務をインターネット・サービス・プロバイダーに課すこととなった776

イ 違法情報

オーストラリアでは、連邦政府のオーストラリア格付審査委員会(Australian Classification Board:ACB)が有害情報からの青少年保護を目的にビデオやDVD等を含む映画やコンピュータゲーム、出版物の倫理審査を実施している。

ビデオやDVD等を含む映画やコンピュータゲームは、格付けスキームによって、GからRCまで7段階で分類されており、格付けごとに閲覧や利用の規制対象が定められている。

表101 オーストラリアにおける格付けスキーム
カテゴリー 格付け アイコン 内容
法的規制のない映画及びコンピュータゲームの閲覧や利用 G
(General)
一般的に閲覧可能。
PG
(Parental Guidance)
保護者による子供への説明が必要。
M
(Mature)
成人に近い判断力、見方ができることが必要。
法的規制のある映画及びコンピュータゲームの閲覧や利用 MA 15+
(Mature Accompanied)
15歳未満は保護者の同伴が必要。
R 18+
(Restricted)
18歳以上限定。暴力的な表現がある。
法的規制のあるアダルト映画の閲覧 X 18+
(Restricted)
18歳以上限定。性的な表現がある。
RC
(Refused Classification)
国内での販売、入手、展示、輸入の禁止。

(出典:Australian Classification掲載の資料をもとに作成)

MA 15+に格付けされているものでも、携帯プレミアムサービスや音楽、ビデオを有料配信するサービスで、制限アクセスシステムにかからないコンテンツでも「裸体画や性的行為、薬物使用及び暴力行為を含む激しい描写に加え、内容があまりに強烈過ぎるもの」については、規制の対象となる。

更に、R18+に分類され、子供によるアクセスを妨げる制限アクセスシステムの対象外であるものも「性的行為を真似た描写、強い現実的な暴力描写を含むもの又は強烈な成人向けの内容を含むもの」に該当する場合は規制の対象となる。

また、アダルト映画については、X18+とRCに格付けされた「本番行為を含む性的描写、児童ポルノ、獣姦行為の描写、過剰な暴力行為や性的暴行を含むもの、犯罪の手引きと取れるもの、薬物使用やそれに関わる暴力行為、そしてテロ行為を提唱する行為等を含む」コンテンツが規制の対象となっており、その内RCと格付けされたものは、オーストラリア国内において合法的に販売や入手、輸入ができないことになっている。

2008年、オーストラリア労働党政権は、国外のウェブサイトの内、格付けスキームでRCに分類されるもの又はその可能性のものにまでインターネットの検閲対象に広げ、強制フィルタリングシステムの対象にすると発表したが、反対意見の多さ等により実現には至っていない。その反対意見の一端として、RCに分類されているものの内、現実に違法情報とされているものは、犯罪の手引きや児童虐待等、ほんの一部のみである。そのため、全てのRCコンテンツをフィルターにかけてしまうのはおかしいといったものから、フィルタリングそのものがオーストラリア憲法に反しているとみなすこともでき、事案として内閣を通らない可能性があることを指摘しているものまで反対意見は多岐にわたった777

2009年、匿名によって政府や企業等の機密事項を公にするウィキリークス(WikiLeaks)と呼ばれるウェブサイトに、通信メディア庁から入手したとされる検閲に関するリストがアップロードされ778、その翌日には子供を守るために、閲覧を禁止する見込みのある2,300のウェブサイトのリストが公開された。

数日後、新しくリストがウィキリークスにアップロードされ、当時の労働党通信担当大臣であったスティーブン・コンロイは、それが通信メディア庁の物とかなり近いものであると認め、その翌日には、スティーブン・コンロイの発言を元にテレビで特集番組が組まれる等、オーストラリア全土で大きな話題となった。

オンラインコンテンツの検閲及び有害情報の強制閲覧規制は依然として連邦政府及び州政府の課題であり、未だに正式なフィルタリングの導入にまでは至っていない。2010年当時のブロードバンド・コミュニケーション・デジタル経済部(Department of Broadband, Communications and the Digital Economy:DBCDE)の発表では、早くても2013年半ばに新しい法規制を導入する、ということだったが、未だ導入のめどは立っておらず、原因としてはフィルタリング導入や規制そのものに関して、賛成意見よりもはるかに反対意見が多いことがあげられる。一方で、反対に企業等による自主的なフィルタリング等は一部ではすでに行われている779

オーストラリアのインターネットアクセスのある公共施設を代表するものとして図書館があげられる。オーストラリア図書館・情報協会(Australian Library and Information Association:ALIA)が2013年に図書館の利用に関して調査780を行ったところ、有効回答668館の内、71%が無線アクセスを提供していた。その中で有効回答658館の内44%の図書館がインターネットフィルターを用いていると答えた。また、フィルタリングを用いていると答えた図書館の内、有効回答160館の内81%がフィルタリングレベルを低から中とし、強としているものは19%にとどまった。

図214 オーストラリアの図書館における無線アクセス提供有無(2013年)

(出典:ALIA internet access in public libraries survey 2013)

図215 オーストラリアの図書館におけるフィルタリング利用状況有無(2013年)

(出典:ALIA internet access in public libraries survey 2013)

図216 オーストラリアの図書館におけるフィルタリングレベル利用状況(2013年)

(出典:ALIA internet access in public libraries survey 2013)

(3) 青少年のインターネット利用数・利用率
ア 青少年のインターネット利用動向

(a) デジタルデバイス(携帯電話、スマートフォン、タブレット、ノートパソコン、デスクトップパソコン、電子書籍リーダー、ゲームコンソール、その他)の利用動向

オーストラリア通信メディア庁(Australian Communications and Media Authority: ACMA)の統計によると、2013年には青少年(14歳から17歳)の89%が携帯電話を所持しており、その内69%がスマートフォンを使用していた。また、その内56%の青少年は携帯電話を使ってインターネットにアクセスしており、その内72%が1日1度はインターネットを利用していることがわかった。タブレットを中心とした、携帯型端末によるインターネット利用者数は上昇傾向にあり、2013年12月には青少年全体の23%にあたる258,000人がタブレット端末でインターネットを利用していた781

別のデータとして、オーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics: ABS)が2012/13年度に行った統計調査782によると、インターネットアクセスのある家庭の数は依然として伸び続けており、2012年度には730万世帯を超え、全体の83%になった。(2010/11年度に行われた調査と比較して4%の上昇)また、4分の3(77%)以上の世帯で、インターネットへのアクセスにブロードバンド接続を利用していた。

この統計調査のデータによると、10人中9人の青少年が、家庭でインターネットアクセスをもっており、そのほぼ100%がブロードバンド接続であった。また、公衆Wi-Fiを利用したオンラインアクセス者数についても2009年12月時点と比較すると176%増加している。この背景には、ショッピングセンター、カフェ、公共スペース等での公衆Wi-Fiの導入が増加していることが考えられている。

表102 オーストラリアにおける青少年(14歳から17歳)の自宅以外でのインターネット利用場所(2013年12月)
学校 59%
友人宅 40%
無料の公衆Wi-Fiスポット 20%
ワークプレイス 24%
図書館 21%

(出典:Australian Communication and Media Authority, Aussie teens online)

表103 オーストラリアにおける青少年(14歳から17歳)のインターネット利用目的(2013年12月)
エンターテイメント 90%
コミュニケーション 85%
情報検索 60%
ネットサーフィン 55%
ブログ・オンラインコミュニティ 50%
インターネット・ショッピング 20%
インターネットバンキング 15%

(出典:Australian Communication and Media Authority, Aussie teens online)

また、前述したオーストラリア通信メディア庁の統計によると、青少年オンライン活動の手段として、引き続きデスクトップコンピュータの利用が多いものの、携帯電話からのアクセスがより増加しており、これら行動パターンは成人男性のそれと一致していた783。特にブログやオンラインコミュニケーションにおいては大幅に増大し、デスクトップコンピュータの利用率を上回っている。

図217 オーストラリアにおける青少年のオンライン活動での利用端末

(出典:Australian Communications and Media Authority, Aussie Teens Online)

(b) ブログ及びSNSの利用動向

前出のオーストラリア通信メディア庁の統計によると、青少年によるブログ及びSNS等のソーシャルメディア離れが目立つ。

例えば、ブログサービスのTumblrでは2012年には17%が利用していたが、2013年には14%になった。また、SNSのFacebookでは2012年には70%が利用していたが、2013年では58%になった。Facebook自身は、特に2013年7月から9月の間は特に10代の青少年の利用が減少したと公言している。

図218 オーストラリアにおける青少年のオンラインサービスの利用率経年比較

(c) ゲーム(オンライン及びデジタルデバイス利用による)の利用動向

オーストラリア統計局(Australian Bureau of Statistics:ABS)の統計によると、2006年度の調査ではインターネットを利用している青少年の内、半分程度(51%)しかオンラインゲームを行っていなかったが、2009年度の調査では、オンラインゲーム人口はおよそ7割(69%)にまで跳ね上がった。オンラインゲームは女子に比べて男子に人気が高く、男子のオンラインゲーム人口は、インターネット利用者中78%であり、女子の60%と比べて、およそ20%以上も多くの男子がオンラインゲームを行っていた。

オンラインゲームは比較的、小さい子供たちの方が多く行っており、12歳~14歳までの内、オンラインゲームを行ったことがあるものは59%であったのに対し、5歳~8歳では4分の3以上(77%)が行っていた。また、小さい子供ほど、一人用の問題解決ゲームを好み、大きくなるにつれて、対話式のロールプレイングゲームを好む傾向がみられる784

人気の高いゲームはCall of Duty、Assassin’s Creed、Halo、FIFAシリーズ等。媒体は主にパソコンやPS3、Xbox360のようなハイスペックなハードの人気が高く、ゲームのカテゴリーとしてはFPS(First Person Shooting)やTPS(Third Person Shooting)等の自分の視点で進むゲーム等の人気が高い。

オーストラリア・ニュージーランド精神医学ジャーナルによると、インターネットゲームへの依存が、インターネット依存であるか、ビデオゲーム依存であるかを議論している785。およそ3%のインターネットゲーム利用者が精神疾患を患っていると考えられており、インターネットゲーム依存者の傾向として、男性や独身であること以外にも、社会的に孤立している、学校での人付き合いがうまくない、家族との関係が悪い等の点が挙げられている。

(d) インターネットショッピングの利用動向

オーストラリアでは、2012年から2013年のインターネットで何かを購入又は注文をした利用者は、インターネット利用者全体1,540万人の内76%にまで上った。最も人気のあるインターネットショッピングは「旅行や宿泊関連、イベントチケットの購入(74%)」となっており、次いで「CD、音楽、DVD、ビデオ、本、雑誌(50%)」、「衣服、化粧品、宝石、貴金属(59%)」となっている786

(e) インターネット接続機器、インターネット回線、フィルタリングの基礎情報

オーストラリアでは、パソコン及びゲーム機等インターネット接続可能な機器の購入時には年齢確認は義務付けられていないが、ゲームソフトに関しては分類(Classification)によって区分されている。

インターネット加入には18歳以上であることと身分証明が必要となる。また、プリペイド式のモバイルブロードバンド回線の契約は、未成年の場合、親の承諾は不要だが身分証明の提示が必要となる。

携帯電話については、オーストラリアではSIMロック端末とSIMフリー端末の両方が販売されており、SIMフリー端末の利用率は全体の25%から30%程度である。一般的にTelstraやOptus等現地の携帯電話オペレーターが運営する店舗では、回線付きのSIMロック端末が売られており、SIMフリー端末は専門小売店で販売される。必要。また、オンラインで携帯端末等の購入には18歳以上でかつクレジットカードでの支払い及びプライバシー規約への同意が必要となる。その他、現地Apple社のオンラインストアでは、SIMフリー端末を販売しているが、クレジットカード支払いであれば購入でき、年齢確認は必要がない。

図219 オーストラリアにおける携帯電話オペレーターのマーケットシェア(2013年)

(出典:Roy Morgan Single Source (Australia), January~ December 2013)

図220 オーストラリアにおけるスマートフォンOSのマーケットシェア(2012年)

(出典:ACMA, Communications Report 2011-12 series)

オーストラリアの全てのインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)は、通信・メディア庁が承認した業界規範に記載されているフィルタリングの提供を義務付けられており、利用者は回線契約時にISPが提供するフィルタリングサービスに加入できる。フィルタリング加入は利用者の任意で、法律及び業界規範による強制はない。オーストラリアにおける、ブロッキング及びフィルタリングの状況は、以下のとおりである。

表104 ブロッキング、フィルタリングの状況
項目 詳細
ブ ロ ッ キ ン グ  ブロッキングの定義 ユーザー側の同意を得ずに一定のウェブサイトやURLに対するアクセスの強制的遮断をすること。
ブロッキングの法的義務付けの有無(ISPや携帯端末メーカー等に対して) 義務付けられていない。
根拠法令
義務付けられている場合、制限するコンテンツの決定者
ブロッキングの手法 通信・メディア庁が児童虐待ウェブサイトに指定したウェブサイトや国際機関が作成したリストに基づくウェブサイトへのアクセスをISPが自発的にブロックしている。
義務付けられていない場合、その理由 政府は強制的フィルタリングシステム(ブロッキングシステム)の導入を提案したが、非違法ウェブサイトもブロックされる対象になる可能性がある等、反対多数のため、実施には至っていない。
ブロッキング機能のソフト、サービスの携帯等にプリインストール有無
ブロッキングに対しての新しい動き 継続して議論はあるが、反対意見も多いため、特に大きな進展はなし。
フ イ ル タ リ ン グ  フィルタリングの定義 ユーザーの同意を得た一定のウェブサイトやURLに対するアクセスの遮断をすること。ブロッキングと同意語としてフィルタリング、強制的フィルタリングが使われることもある。
フィルタリング機能を提供することの法令による義務付けの有無(ISPや携帯端末メーカー等に対して) オーストラリアのすべてのISPは、通信・メディア庁が承認し、業界規範に記載されているフィルタリングの提供を義務付けられており、ユーザーは回線契約時にISPが提供するフィルタリングサービスに加入できる。
根拠法令 「Internet Industry Codes of Practice 787
義務付けられていない場合、その理由
フィルタリング機能がプリインストールされている携帯OS iOS すべてのバージョンにプリインストールされている 788
Android Google Playにアクセスすることにより、設定変更可能 789
Synbian 現状Symbianの取扱いはほぼなし。
Blackberry 現状Blackberryの取扱いはほぼなし。
その他 Windows Phone: すべてのバージョンにプリインストールされている 790
SIM フリー端末でOSレベルではなく、端末の機能としてフィルタリングができる端末の有無
ブロッキングに対して新しい動き 自主的なフィルタリングサービスの導入は、子供がいる家庭レベルで拡大傾向にある。その背景にはアプリを利用したフィルタリングサービス等、簡単に設定できることが一因である。
イ 青少年のインターネット利用に伴う生活等への影響

(a) インターネットやスマートフォンへの依存に関する動向

青少年の1日におけるインターネット利用時間として、2008年時点では1日1.9時間であったのに対し、現在では2.5時間以上になっている。オンラインは週7日24時間利用できるため、青少年のインターネット利用が長くなっている兆候がみえており、保護者からは、子供たちのインターネットへの依存が高まりすぎることを危惧する声があがっている791
(4) インターネット経由等による犯罪等
ア インターネット(ウェブサイト、SNS等)を利用した児童買春等の犯罪被害の実態

2012年8月に発表された、オーストラリア国立大学のオンライン・チャイルド・グルーミング(Online Child Grooming)に関するレポート792によると、インターネットを利用したチャイルド・グルーミングはインターネットの匿名性やどこからでもアクセスできる利便性等の点から、児童性犯罪者にとって自らの正体を隠すことを容易にしており、また被害を受けた青少年は、インターネット上の人間が親切にしてくれることから、あまり不審に思わずに接していたとの報告がなされている。

犯罪学会は2009年7月に、オンライン・チャイルド・グルーミングに関連したレポートをまとめている793。多くの場合、犯罪者はインターネットを利用して児童を性行為に誘導する際、まずは児童の信頼を得ることから始まり、信頼を積み重ねることによって、犯罪者を特別な人と思い込ませる。その後犯罪者は、性的要素を含む会話を混在させていき、被害児童の性行為に対する意識を鈍感にさせた上で、性的行為を要求する。

チャットルームやSNS等の子供たちの多くが利用するウェブサイトでは、ネットストーキングやネットいじめ、チャイルド・グルーミング関連の犯罪が多く見られ、モナシュ大学の調査では、72%のオーストラリアの中高生がネット上で不審者から接触を受けたことがあると答えた794。また、児童の性行為の画像等を含む違法コンテンツもオンライン上で広く見つかった。

表105 ソーシャル・ネットワーク上での不審者からのコンタクトへの対応
質問:SNSを通して、不審な人物からコンタクトがあったことがあるか?
回答 どのような対応をしたか 回答者数(人) 割合(%)
はい 削除あるいはブロックした 382 637 43.4 72.4
無視した 132 15.0
特に何もしなかった 123 14.0
いいえ 243 27.6
合 計 880 100

(出典:モナシュ大学Teenagers, Legal Risks and Social Networking Sites, Table 32 Strategies in response to unwelcome contact via SNSを元に作成 )

イ 青少年によるセクスティングの実態

2012年の2月から5月までの間に、西オーストラリア州警察には7件のセクスティング事件が報告されており、またビクトリア州では10歳から15歳までの青少年の内5人に1人が性的なメッセージの送受信をしたことがあると報告されている765

2010年11月から2011年2月の間にオーストラリアのクイーンズランド工科大学を含む複数の大学と研究機関が、11歳から16歳及びその保護者を対象に行った調査では、7人に1人(15%)が性的メッセージをオンライン上で見た、もしくは受け取ったことがあり、3%が週に1度以上の頻度で受信していた。特に15歳から16歳の年齢層の受信頻度が高くなっている796。性的メッセージの送信よりも、受信の割合が高くなっており、全体の4%のみが過去1年間の間に、性的メッセージを送信したことがあった。

性別による大きな違いは、オーストラリアでは見受けられておらず、11歳から16歳までの6%はインターネット上で性的話題について尋ねられたことがあると回答し、3%~5%は、メッセージで他人の性的行為を見ること、写真やビデオで陰部を見せてほしいと尋ねられること、あるいはオンラインで誰かが閲覧できるところにアップロードしてほしいと頼まれるといったことのいずれかを経験していた。

15歳から16歳の場合、オーストラリアでは18%が性的メッセージを受信し、15%が性的行為についてインターネット上で尋ねられ、14%が他人の性的行為の写真や動画等を見たことがあると回答した。

青少年が関与するセクスティングは、大きな問題として扱われるようになっている。20%以上もの青少年がセクスティングに関係しており、政府は、防止策を提示しない限り、この数字は伸び続けるのではないかと不安視している。

2010年にガールフレンドマガジン社(Girlfriend magazine)が行った調査によると、調査対象588人の少女の内40%がセクスティング被害にあったと回答した797

2011年度では、セクスティング被害はクイーンズランド州で最も多くみられ、459件に上っている。また、西オーストラリア州でのセクスティング被害は、2009年から2011年の2年間に、3倍にもなったことがわかっており、更には、法規制の強化方針とは反対に、青少年によるポルノ画像送受信への関わりが、以前に比べ数多く警察に報告されている。

青少年のセクスティングに関連して、ビクトリア州は新たな法律を導入している。この法律では、18歳未満同士でのセクスティングの場合、加担者は児童ポルノの保持等の罪に問われず、性犯罪者として扱われることはない。加担者が成人の場合、相手の同意を得ることなく性的な写真を送信、あるいは送信を相手に強要したケースでは、犯罪として取り扱われることになる798

ウ 青少年の間のネットいじめ

2011年の調査799では、ヨーロッパ諸国と比較して、オーストラリアではいじめ自体が多く、29%の子供たちがいじめを経験しており、13%はインターネット上でいじめられたことがあると答えた。この統計値はヨーロッパ25カ国の2倍以上である(ヨーロッパでは19%の子供がいじめを経験し、その内6%がネットいじめであった)。

ネットいじめの種類は、相手を不快にさせるようなメッセージ(7%)、メッセージを無視、又は対象者にだけ送信しない(4%)、それ以外の不快な行為(3%)であった。大学研究者の調査では、10歳から17歳の青少年の内、約20%がネットいじめの被害にあっており、調査対象であった小中高校の72%がネットいじめの存在を認知していることがわかった800。この現状を踏まえ、連邦政府は警察によるネットいじめの取締りを強化する方針を明かしている。

調査によると、オーストラリアでは過去12ヶ月以内にいじめを経験したのが最も多い年齢区分は、10歳から11歳で35%、反対に最も少ないのが14歳から15歳で21%であった。この結果はヨーロッパでの調査結果と大きく異なり、ヨーロッパでは年齢が上がるにつれて、いじめ経験数が増加していた。オーストラリアの17%の子供たちがいじめに加担、ないしは誰かをいじめたことがあると答えたが、ネットいじめをしたことがあると答えたのは6%であった。

2012年に15歳の女の子が、誕生日の1週間前にFacebookでのいじめが原因で自殺し、メディアでも大きく取り上げられた。この女の子は、いじめにあっていることを家族に伝えることもなく、1人で問題を抱え込んでいた801。2012年から2013年の間に、合計13名の青少年が、いじめを苦に自殺したことが報告されている。オーストラリアは先進諸国の中でも、ソーシャル・ネットワーク上でのいじめ率が高くなっている802
エ リベンジポルノ

オーストラリアではビクトリア州を除いて、リベンジポルノを取り締まる法律は未整備であり、その件数は増加の一途をたどっている。

リベンジポルノの件数が増加傾向にある背景には、スマートフォン利用率上昇とソーシャルネットワーキングウェブサイト人口の増加がある。事件の多くは、恋人に拒絶された男性が腹いせや辱め、脅迫の意味を込めている場合がほとんどであった。また、画像シェアウェブサイトやソーシャルメディア等で、無断で裸の写真をアップロードし、盗用したりする被害も増加している。

ウエスタンシドニー大学の調査によると、リベンジポルノ被害にあった90%が女性であり、93%はリベンジポルノ被害によって精神的な脅威を感じていると回答している803。また被害者の内、約半分が、インターネット上でストーキング行為にあう、不審な人物に声をかけられる等の被害にもあっていた。リベンジポルノは写真だけでなく、個人情報の流出を伴う場合もあり、その多くはフルネームだけであるが、5件に1件程度の割合で、家や職場住所等の個人情報を拡散される場合もあった。

オーストラリアでは、2013年9月までにリベンジポルノにより刑事事件に発展し、懲役刑を言い渡されたケースは、1件のみである804。2011年に、ニューサウスウェールズ州で、20歳の男が前の恋人の写真をFacebookにアップロードした罪で、6ヶ月の懲役を言い渡されている。
オ その他、新たな動向

青少年が被害者になる場合だけでなく、インターネット犯罪に加担する場合も報告されている。2007年、ニューサウスウェールズ州では、14歳の少年がインターネットを利用して詐欺行為を働いており、被害総額はAU$20万にも上った805。少年の母親は、銀行に対して、少年の銀行口座の凍結を訴えかけていたが、個人情報保護等の観点から、銀行は行動を起こさなかった。

少年は、インターネットオークションウェブサイトeBayでノートパソコンや携帯電話、腕時計等の高級な商品を架空に売ることで、1日AU$6,000以上もの大金を手に入れており、シドニーハーバーの1泊AU$4,300もの高級ペントハウスに滞在し、リムジンを借り、週末にはオーストラリア国内中から友人を呼びつけてパーティを開く等、豪勢な生活を送っていた。

eBayで利用した口座は、オーストラリア四大銀行であるWestpac、ANZ、NAB、CBAを含む、多数の金融機関で開設されていた。2008年に少年は、20件に及ぶ詐欺行為の容疑で逮捕された。母親はこの事件以前に15回、少年を警察に連れて行っており、少年はすでに鑑別所に送られた経験があったが、少年はこれまで、クレジットカードやインターネットを利用して犯罪を犯したことはなかった。

2011年には少年の母親が、銀行や母親が相談したカウンセラー等を相手取り、不手際によって少年の犯罪をとめることが遅れたことから、民事訴訟を起こしている。

オーストラリア犯罪学研究所による2011年の調査806では、2010年に発生した総計42,385件の詐欺の内、インターネットオークションウェブサイトに関連していた詐欺は二番目に多く13%、これに次いで、フィッシング詐欺が6%であった。最も多かったのはお金の貸し借りに関連した詐欺で、全体の35%であった。

一方で、賭け等の予想ソフトウェアを利用した詐欺行為の被害件数は1%にも満たなかったものの、被害総額は全体の46%を占めていた。インターネットオークションウェブサイトに関する詐欺被害総額は全体の34%であった。

2010年のインターネット詐欺の半分以上は被害額がAU$1,000未満であり、AU$10,000未満の詐欺と合わせると8割近くに上った。

図221 オーストラリアにおける青少年のオンラインサービスの利用率経年比較

(出典:犯罪学研究所:Australian crime: Facts & figures 2011, Figure 53)

(5) 青少年のインターネット利用の際のフィルタリング利用率
ア フィルタリング利用の動向

オーストラリアでは長年に渡って、インターネット・サービス事業者レベルでの強制フィルタリングシステムを導入すべきか、また、どの範囲でフィルタリングを採用すべきかという議論が続けられてきた。

ハワード政権時には、2006年6月にAU$1億1,660万の予算にて、家庭をオンライン上で守る政策(Protection Australian Families Online)が開始された。この政策には、全世帯に無料フィルタリングソフトの提供が含まれ、更には、インターネット・サービス事業者に対し、法規制を伴ったフィルタリングシステムを求めたが、2007年に労働党が与党となったことにより、すぐさま廃止された。

ラッド・ギラード政権下では、インターネット・サービス事業者に「ブラックリスト」方式でのフィルタリングシステムの採用を義務付けようとしたが、2013年に、この労働党案も廃止されている。インターネットフィルタリングに対する現連立政権の政策傾向として、情報教育プログラムを組み合わせた法案を好んでいる。

2011年度では、インターネットフィルタリングを利用している家庭は45%を超えているが、これは2009年度に比べ約5%の上昇となっており、家庭内におけるフィルタリングへの関心の高まりを表している。

図222 子供がいる家庭におけるインターネット安全性向上のための保護者行動(単位:%)

(出典:統計局:Australian Social Trends, Jun 2011, ACTIONS TAKEN BY PARENTS FOR PERSONAL ONLINE SAFETY AND SECURITY AT HOME - 2009(a)(b) 807

11歳から16歳とその保護者を対象とした2011年に行われた調査808では、45%の保護者が、子供のインターネット利用に際してフィルタリングシステムを導入していた。フィルタリングシステムを導入されているのは女児の方が10%程度多かった。7%の子供は、保護者が実際にはフィルタリングを利用していないにも関わらず、フィルタリングで管理されていると考えていた。

図223 オーストラリアにおけるフィルタリングによるアクセス管理(単位:%)

(出典:CCi :Risks and safety for Australian children on the internet, Figure 25 809

※保護者の回答=実際にフィルタリングを導入している率/子供の回答=保護者によるフィルタリング管理をされていると考えている率

(6) 青少年のインターネット利用に関する親子間の話し合い並びにルール設定の有無及び内容

11歳から16歳とその保護者を対象とした2011年に行われた調査810では、子供の36%が親は特定のウェブサイトを遮断又はフィルタリングしていると考えており、これはヨーロッパと比較して、高くなっている。

親からのインターネットに関するアドバイスについて、74%の子供が、役に立つと考えており、86%の親は、自分のアドバイスが有効であると考えている。

また、ほとんどの子供が、ウェブサイトのお気に入り登録や、インターネットの正しい使い方に関する情報を調べ、有害なメッセージをブロックできると回答しているが、フィルタリング設定を変更できると答えたのは、37%であった。

子供がインターネットを利用する際の親の仲介行動は、「子供に何をしているのか話しかけること」(67%)、「子供のそばで見ている」(63%)、「インターネットで勉強するように言う」(44%)、「子供の横に座る」(40%)、「子供と一緒にインターネットをする」(38%)であった。これらの内、最低でもどれか一つを行っている親は全体の91%であった(ヨーロッパでは87%)。