第1章 高齢化の状況

○地域の住民が自ら率先してまちづくりに取り組んでいる事例(島根県松江市、「天神町商店街」「なごやか寄り合い事業」)

  全国で最も高齢化率が高い島根県の県庁所在地である松江市では、地域の住民が自ら率先してまちづくりに取り組んでいる。その1事例として、天神町商店街がある。かつては天満宮の門前町としてにぎわっていた天神町商店街も空き店舗が目立つようになり、また地区全体の高齢化率が市内で最も高くなるなどの問題を抱えるようになってきた。そこで、地域住民と市とが問題解決のための話し合いを行い、空き店舗を利用した高齢者のためのコミュニティ施設「まめな館」「いっぷく亭」が作られることとなった。両施設が開設して今年で10年になるが、今では月に1度開かれる天神市の日には両施設の利用者は約400人弱にのぼるなど、地域においてなくてはならない場として定着している。
  その2施設のうち「まめな館」は高齢者の交流の場として機能している。毎日午前10時から午後5時までボランティアが2名常駐し、訪れた高齢者にお茶のサービスを提供しながら話し相手になっている。独居高齢者も多いこの地区において、まめな館は大切な憩いの場となっているが、まめな館で働くボランティアにとってもまた、まめな館は生きがいの場となっている。まめな館開設時に募ったボランティアは平均年齢約75歳、最高齢は89歳であり、今は22人が登録している。ボランティアとして働くことが責任感や生きがいにつながっており、ほとんどのボランティアが現在も元気に続けている。
  もう1つの事例として、「なごやか寄り合い事業」がある。このなごやか寄り合い事業は、平成12年度の介護保険制度導入に伴い、寝たきりや認知症の一因である高齢者の閉じこもりを防ぎ社会参加の機会を提供することで介護予防につなげようと、松江市が各地区社会福祉協議会に推進をお願いし、それぞれの地区にある公民館を中心に展開されている事業である。各地区ともに住民が主体となってその地域の特徴をこらした様々な取組を行っており、魅力的なまちづくりに貢献している。
  その1つである城北公民館は、市内で初めて館区を3つのブロックに分け、それぞれのブロックにある空き家を利用して近所の高齢者が集まれる寄り合い所を開設した。友愛クラブと名付けられたその寄り合いは、それぞれ月木、火金、水土に開かれる。つまり、公民館区内に住む高齢者が一人で寂しい、誰かと話したいと思ったときに、3ヶ所の寄り合いのうちのどこか1つは開いているため、いつでも出かけていくことができるのである。友愛クラブに参加する人たちは皆、集まりを楽しみにしており、出かける場があることで毎日を生き生きと過ごせていると城北公民館の館長真先正敏氏は話す。
  友愛クラブの参加費は月2千円で、ここから家賃や光熱費、お茶飲み代金が支払われる。なごやか寄り合い事業では、基本的に参加費を徴収することにしている。最初は「福祉は行政が行うもの」という住民の意識が強く、参加費を払うことに抵抗を感じる人もいたが、自らが楽しむために、自らがお金を払う、高齢者であっても自分のことは自分でという意識が、事業の浸透とともに徐々に地域全体に広がっていったという。これから高齢化がどんどん進んでいく中で、若い世代に頼るのではなく、高齢者自らが地域をどうしていくかを考え、盛り上げていく。身近な地域に様々な交流の場が生まれることで、閉じこもりがちな高齢者の外出の機会にもつながり、ひいては介護予防にもなる。すべては地域から始めなければならないことだと、城北公民館の館長は話している。

高齢者のためのコミュニティ施設「まめな館」

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