第1章 高齢化の状況(第3節 コラム6)

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第3節 高齢者の社会的孤立と地域社会 ~「孤立」から「つながり」、そして「支え合い」へ~

コラム6

見守りや安否確認の取組


高齢者が孤立死などの不安を抱かずに、住み慣れた地域で安心して過ごせるよう、各自治体では見守りや安否確認に関する様々な取組が進められており、住民も参加した取組が広がりつつある。
また、独立行政法人都市再生機構(以下「都市機構」という。)においては、都市機構賃貸住宅に居住する高齢者等を対象とした見守りサービスを団地自治会や関係法人等と連携するなどして実施しているほか、企業においても安否確認ができる生活用品の開発が行われている。(取組事例については表を参照)
ここでは一つの事例として東京都日野市の取組を紹介する。

○市民と行政の協働による「高齢者見守り支援ネットワーク」(東京都日野市)

東京都のほぼ中心に位置する日野市は、全国的な高齢化の急速な進展の例に違わず、高齢者の一人暮らし世帯や高齢者夫婦世帯が増え続けている。そのような状況下、平成16年、高齢者の生活実態や見守り支援に関する意向等を把握するため、日野市は、民生委員が市内に住む高齢者宅を一軒ずつ訪問する「ふれあい訪問調査」を実施した。
この調査は、民生委員が高齢者と直接顔を合わせることで、地域で「誰も知らない」高齢者を減らすとともに、高齢者の生活状態を適切に把握することができるなど、日野市の高齢福祉施策・地域福祉づくりには必要不可欠なものと位置づけられた。
調査で把握した高齢者の実態を、「高齢者見守り支援ネットワーク検討委員会」等で検討し、支援の対象となりそうな高齢者像を12パターン、支援の内容を5パターンに整理した。
この5パターンの支援―「地域で見守り型」「安否確認・緊急対応型」(以上、基本機能型)、「ふれあい交流型」「社会との接点創出型」「お世話・お手伝い型」(以上、追加機能型)― を提供する事業を、平成17年度から「高齢者見守り支援ネットワーク事業」として開始した。
初年度は、市内の4地区を対象に、まずは基本機能である「地域で見守り型」「安否確認・緊急対応型」の提供を開始。ボランティアからなる「ふれあい見守り推進員」が19人の高齢者を対象に声かけや見守りを実施した。この4地区での取組がおおむね良好な評価を得たこともあり、平成18年度からは市内の各地区に展開することとなった。

見守り方法は基本的に次の2つである。

  • 月に1回程度を目安に推進員が玄関先で高齢者に声かけを実施
  • 週に1回程度の割合で、郵便受けに何日もたまった新聞がないか等、さりげない見守りを実施

推進員による見守りに加えて、市のごみゼロ推進課も戸建住宅に関しては可燃ごみの回収時に見守りを行っている。日野市では自宅前に可燃ごみを出し、週2回、可燃ごみを回収する。連続3回ぐらい可燃ごみを出していない世帯には、ごみ収集担当者が地域包括支援センターに連絡している。

「高齢者見守り支援ネットワーク」の取組を評価するため、平成20年度に、ふれあい見守り推進員、対象高齢者、民生委員に対してアンケートを実施。推進員の5割は、活動する中で「よかったこと」「印象に残る出来事」を経験したと回答している。
さらに、「活動がなければ近くに住みながらも顔を合わせることもなかったかもしれないが、おかげで存在を知りふれあうことができた」という意見も寄せられた。見守られる高齢者も9割が肯定的な回答をしている。また、「長く続けるために気をつけていることがあるか」という問に、1割の高齢者は「ある」と回答。具体的には、「適切な距離を保つ」「感謝の気持ちをモノでやりとりしない」「気遣いを忘れない」といったことを心がけているとの回答であった。

平成21年度末時点では、228名のふれあい見守り推進員が、市や地域包括支援センターと連携しながら、登録した185名の高齢者に対して、見守り支援を行っている。22年度からは、担当する高齢者がいない推進員の力を活用し、特定の高齢者の見守り支援だけではなく、もっと広い視野にたった地域全体の見守りを考えているという。
また、追加機能である3つの取組「社会との接点創出型」「ふれあい交流型」「お世話・お手伝い型」については、平成20年度に「ふれあいサロン」、「ちょこっとサービス」をスタート。
日野市では、今後も「高齢者見守り支援ネットワーク」の充実を図ることで、「安心していきいきと暮らせるまち」づくりに積極的に取り組んでいく。

*調査及び事業の実施にあたっては、個人情報保護の観点から、市の情報公開・個人情報保護運営審議会において検討を行ったうえで、調査では調査内容について福祉関係者で情報を共有することに関する同意の署名を得る、見守り支援ネットワークへの参加希望を確認するなどの配慮をした。

〈参考事例〉
○ 都市機構における取組
あんしん登録カード ・緊急時に速やかな連絡等の対応ができるよう、希望する高齢者等が緊急連絡先、かかりつけ医師等の情報をあらかじめカードに記入して登録できるサービス
・カードは都市機構と団地自治会が保管
あんしんコール ・上記あんしん登録をしている方で、かつ、希望する方に対し、週1回安否確認の電話を入れるサービス
・連絡が取れない場合は、連携する団地自治会員が当該住戸へ赴き確認し、都市機構へ報告
ごみ出しサービス ・自力でごみをだすことが困難な高齢者等に対し、代わりにごみ出しを行うサービス
・連絡がとれない場合は、ごみ出しサービス実施者が都市機構に連絡、都市機構は緊急連絡先へ連絡などの安否確認
○ 企業等における取組
分類 事例
ライフラインの活用 ・一日一回、家族等に高齢者のガス使用量をメールで連絡。
家電等の活用 ・電気ポットをインターネットにつなぎ、高齢者がポットを使用すると、家族等に電子メールで連絡。
・室内に人の動きを感知するセンサーを取り付け、一定時間、反応がないと緊急事態と判断し、警備員に通報。
新聞・回覧等の活用 ・新聞配達スタッフらが高齢者の異常に気付いた場合、登録先の親族や民生児童委員に連絡。
・回覧板を活用した高齢者への声かけ。
配食、乳酸飲料等の活用 ・定期的な乳酸菌飲料等の宅配や配食サービスによる声掛け。
その他 ・往復はがきを活用した状況把握。
(地元の高校生や地域のサークルメンバーが高齢者に絵手紙(往復はがきを活用)を送付し、高齢者が返信はがきを送付することで状況を確認。高齢者は郵便ポストまで行かず、返信はがきを自宅の郵便受けに入れるか、郵便局員に直接手渡すことで郵送可)
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