第1章 高齢化の状況(第3節 1-1)

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第3節 <特集>高齢者の経済生活に関する意識(1)

高齢期の生活において、経済面での安定が図られることは、現役世代を含む多くの人にとって大きな関心事であるが、実際に現在の高齢者はどの程度ゆとりをもって生活ができているのだろうか。そこで、令和元年度は「高齢者の経済生活に関する調査」を実施し、60歳以上の人を対象に経済生活全般や就労に関する実態や意識を把握することとした。具体的には、主に「生きがい・健康状態・社会的活動」、「就労状況」、「経済的な暮らし向き」、「貯蓄・老後の備え」について調査を行ったが、この白書では、その結果の一部を紹介する。

(資料出所は特に断りのない限り、内閣府「高齢者の経済生活に関する調査」(令和元年度))。

内閣府「高齢者の経済生活に関する調査」(令和元年度)

・調査地域:全国

・調査対象者:全国の60歳以上(平成31年1月1日現在)の男女(施設入居者は除く)

・調査時期:令和2年1月9日~令和2年1月26日

・有効回収数:1,755人(標本数:3,000人)

[都市規模別]

大都市 東京都23区・政令指定都市

中都市 人口10万人以上の市

小都市 人口10万人未満の市

町村  郡部(町村)

※本調査については、本格的な高齢期を迎える前からの年代による意識の違い等についても把握するため、60歳以上の男女を調査対象としている。

[調査対象者の主な基本属性]

性別 全体
1,755人 854人 901人
年齢 全体 60~64歳 65~69歳 70~74歳 75~79歳 80歳以上 65歳以上(再掲) 75歳以上(再掲)
1,755人 14.7% 22.3% 22.9% 19.6% 20.5% 85.3% 40.1%

1 経済生活全般の状況

(1)60歳以上の人の約4分の3が心配なく暮らしている

全国の60歳以上の男女に、現在の経済的な暮らし向きについて聞いたところ、「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」が20.1%、「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」が54.0%となっており、合わせると約4分の3(74.1%)が心配なく暮らしている。

なお、平成28年「高齢者の経済・生活環境に関する調査」(内閣府実施。以下「平成28年調査」という。)の結果では、心配なく暮らしているとする割合が6割強(64.6%)となっており、今回調査の方が心配なく暮らしている割合が高くなっている。

性・年齢別に見ると、心配なく暮らしているとする割合が、各年齢階級で男性より女性の方で高く、特に女性の80歳以上では、8割以上(81.1%)が心配なく暮らしている。

未既婚別に見ると、結婚したことのない人や配偶者と離別した人は、心配なく暮らしているとする割合が低くなっている。

同居形態別に見ると、三世代世帯(子・孫と同居)及び夫婦のみの世帯で、心配なく暮らしている割合がやや高くなっている。

就業状況別に見ると、収入のある仕事をしている人は、まったく心配なく暮らしている割合がやや高くなっている。

健康状態別に見ると、健康状態が良いほど、心配なく暮らしている割合が高くなる(図1-3-1)。

(2)1か月の収入額

全国の60歳以上の男女のうち、ほとんどの人(99.1%)には何らかの収入があるが、収入のある人に1か月あたりの収入(配偶者と同居している場合は、夫婦の収入の合計)の平均額を聞くと、「10万円~20万円未満(年額では120万円~240万円未満)」(30.9%)が最も多く、次いで「20万円~30万円未満(年額では240万円~360万円未満)」(25.8%)となっている。平成28年調査と比較すると、30万円以上の割合がやや増加している。

性・年齢別に見ると、各年齢階級において、男性より女性で、10万円未満の割合が多くなっている。

同居形態別に見ると、夫婦のみの世帯では、他の世帯形態に比べ、20万円以上の割合が多くなっている(図1-3-2)。

また、収入の種類については、「公的年金、恩給」(87.3%)及び「仕事による収入」(41.0%)が多く、それ以外の収入がある割合は少なくなっている。

性・年齢別に見ると、男女とも60歳代までは半数以上の人に「仕事による収入」があるが、その後、年齢が上がるに従って割合が低くなっている(図1-3-3)。

(3)60歳以上の人の半数以上が預貯金を取り崩さずに生活している

全国の60歳以上の男女に、日常生活の支出で預貯金を取り崩してまかなうことがあるか聞いたところ、「ほとんどない・全くない」(51.6%)が最も多く、次いで「時々ある」(34.6%)、「よくある」(13.5%)の順となっている。

性・年齢別に見ると、男女とも80歳以上で、「ほとんどない・全くない」の割合が最も高くなっている。

同居形態別に見ると、単身世帯及び三世代世帯(子・孫と同居)で、「ほとんどない・全くない」の割合がやや高くなっている(図1-3-4)。

(4)過去1年間の大きな支出は食費が多い

全国の60歳以上の男女に、過去1年間の大きな支出項目は何か聞いたところ、「食費」(59.4%)が最も多く、続いて「光熱水道費」(33.1%)及び「保健・医療関係の費用」(33.1%)、「交通費、自動車維持費等の費用」(25.7%)の順となっている。

性・年齢別に見ると、男性では「保健・医療関係の費用」を挙げる割合が年齢とともに上がる傾向にある。また、「交通費、自動車維持費等の費用」、「生命保険や損害保険などの保険料」、「通信・放送受信(携帯電話、インターネット等を含む)の費用」、「家賃、住宅ローン等」は、男女とも60代前半層が最も高く、年齢が高くなるにつれて低くなる傾向がある(図1-3-5)。

(5)年齢が上がるほど経済的な不安は少なくなる傾向

全国の60歳以上の男女に、今後の生活で、経済的な面で不安なことを聞いたところ、「不安と思っていることはない」(34.2%)が最も多いが、不安がある場合の内容は、「自分や家族の医療・介護の費用がかかりすぎること」(30.8%)、「自力で生活できなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかること」(26.0%)、「収入や貯蓄が少ないため、生活費がまかなえなくなること」(25.8%)の順に多くなっている。

性・年齢別に見ると、男女とも年齢が上がるほど、「不安と思っていることはない」とする割合が高くなる傾向にある。また、「収入や貯蓄が少ないため、生活費がまかなえなくなること」は、60歳代の男性で特に高く、年齢が上がるにしたがって低くなる傾向が見られる。

同居形態別に見ると、三世代世帯(子・孫と同居)で、「不安と思っていることはない」とする割合が特に高い。また、「認知症などにより、財産の適正な管理ができなくなること」は、単身世帯や夫婦のみの世帯で、他の世帯形態よりやや高い(図1-3-6)。

(6)60歳以上の人の約8割が生きがいを感じている

全国の60歳以上の男女に、現在、どの程度生きがい、喜びや楽しみを感じているかを聞いたところ、「十分感じている」が37.2%、「多少感じている」が42.5%となっており、合計すると約8割(79.6%)の方が生きがいを感じている。

性・年齢別に見ると、各年齢階級とも男性より女性で生きがいを感じている割合が高いが、男女とも高齢になるほど生きがいを感じている割合が低下する傾向が見られる。

未既婚別に見ると、結婚したことがない人や、配偶者と離別した人で、生きがいを感じている割合が低い。

就業の有無別に見ると、収入のある仕事をしている人は生きがいを感じている割合が高くなっている。

健康状態別に見ると、健康状態が良いほど生きがいを感じている割合が高くなる(図1-3-7)。

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