普天間飛行場移設先及び周辺地域の振興に関する方針

別紙1

 市街地の中心部に位置する普天間飛行場の返還は、沖縄県民多数の願いであり、この問題の解決促進のため、沖縄県にあっては苦渋の決断として、キャンプ・シュワブ水域内名護市辺野古沿岸域を移設候補地として選定され、また、名護市においてその受入れが表明されたところである。

 地元において新たな負担を伴うこの普天間飛行場にかかる代替施設建設の課題について、その平和と安全への大きな貢献に応えるべく政府として最大限の配慮をなすべきものと考える。

 もとより国民に平和と安全をもたらす安全保障体制の確保は全国民的課題であり、衡平と公正の見地から、政府として、全国民に対し、現下の国際情勢の下で代替施設の受入れにかかる地域が新たな負担を担うことについての深い理解を求めるとともに、当該地域の発展への地元の期待に対して、全力を上げてこれに応えるべきものと考える。

 こうした観点から、政府においては、平成11年12月13日に県から提示された「普天間飛行場移設先及び周辺地域の振興に関する要望」、「沖縄問題についての内閣総理大臣談話」(平成8年9月10日閣議決定)及び「沖縄問題に関する特別行動委員会の最終報告に盛り込まれた措置の実施の促進について」(平成8年12月3日閣議決定)を踏まえ、下記の方針に基づき、移設先及び周辺地域の振興・発展に向けて全力で取り組むこととする。

1.基本認識

(1)移設先及び周辺地域(以下「地元地域」という)における住民の福利の増進を図るべく、総合的な地域活性化方策を確立し、実行性のある政策の積極的かつ計画的展開を図るべきであること。
(2)若者が将来展望を持って地域に定着できるよう、魅力のある雇用機会の創出に努めることが大きな課題であること。
(3)雇用機会の創出に向けて、新しい産業の集積とともに農業、漁業の振興など、既存産業の活性化を図りつつ、産業基盤の整備を進める必要があること。
(4)自然環境との調和の視点とともに、複数世代の共生できる多様性の視点をあわせて重視した魅力のある定住条件の整備が課題であること。
(5)優れた環境の維持に努めるとともに、自然環境の積極的醸成に向けた取組みが行われるべきこと。

2.政策の具体化の方向

(1)空港活用型産業の育成・誘致等
 軍民共用空港を念頭に置いた新空港が地元地域の発展にとって真に有意義なものとなるよう、民間空港として利用するためのターミナル等空港利用施設の整備に向けた諸条件の整備を進めるとともに、空港関連産業の育成・誘致及び空港を活用した諸産業の発展のための諸条件の検討に早期に取り組み、その結果に基づいた具体的な事業展開を図る。
(2)空港の経済波及効果を高めるための道路整備
 空港の利便性を広範な経済波及効果に結びつけるため、空港へのアクセス道路を含め、地元地域における道路網の整備を進める。
(3)産業の育成・誘致のための条件整備
 地元地域において、新たな産業の立地や企業誘致による雇用機会の創出を図るため、産業業務施設を含む産業団地の造成、研究開発拠点施設や情報通信基盤の整備等産業の育成や誘致のための条件整備を行う。また、農林水産業をはじめとする既存産業の振興を図る。
(4)国際情報特区構想の展開
 沖縄経済特区21世紀プラン中間報告において新たに提唱された同構想が地元地域において展開されるよう、同構想の検討・実現の中で取り組む。
(5)国際交流等の推進
 アジア・太平洋地域との産業・経済・文化等の国際交流・貢献を具体的に展開する拠点施設や、同地域の発展に寄与する施設の誘致を図るとともに、既存の国際交流機能の拡充・強化を図る。また、九州・沖縄サミットを契機とした国際交流の一層の促進を図るため、アジア・太平洋地域の有数のコンベンション都市としてのポテンシャルを内外にアピールし、国際会議等の誘致に努める。
(6)人材の育成
 国際的な視野を持つ21世紀を担う人材を育成するとともに、アジア・太平洋地域からの留学生・研修生の受入れや、実践的な技術・知識を有する人材を育成するための高等教育機関の強化及び設置支援並びに研修施設の誘致等に努める。
(7)地域の定住と交流を促進するための生活環境施設の整備
 地元地域の要望を踏まえ、生活環境や住民福祉の向上、利便性の確保につながる施設整備を進めるとともに、広域的な観点から設置される公園や港湾、市街地開発等の整備や公共機関の設置に努める。
(8)自然環境の保全と活用
 優れた自然環境の創造的醸成を図る事業の推進や、それに必要な研究機関の設置に努める。

3.振興事業の具体化に当たっての留意事項

振興事業の具体化に当たっては、次の諸点に留意することとする。

(1)上記の基本認識及び政策の具体化の方向を当面の基本としつつ、今後策定される基本方針に沿って国、県及び地元地域自治体相互の連携と協力により振興事業の具体化に鋭意取り組むこと。
(2)振興事業の検討に当たっては、地元の創意と工夫が反映されるよう県及び地元地域自治体の協力を得て、地域を代表する農林水産業、商工業等の関係団体と協議を行うなど有益な意見の収集に努めること。
(3)地元地域にあって、移設先地域とともに、その周辺地域に対して均衡のとれた配慮を行うこと。
(4)周辺地域を含む地域の諸計画との整合性に配慮すること。

4.振興事業の実現のための枠組みの確保

振興策が確実に実現されることを担保する枠組みとして、以下の対応を図ることとする。

(1)協議機関の設置
 振興事業の推進にかかる基本方針の策定、事業の具体化に向けた協議及び事業実施にかかるフォローアップを行う機関として、国、県、及び地元地域自治体からなる「協議機関」を新たに設置する。
 なお、同協議機関は、県及び地元地域自治体の協力を得て極力早期に発足させることとする。
(2)振興事業の具体化に向けた取組
 同協議機関の協議においては、熟度の高い事業を中心に早急に予算へ反映されるよう勤めるとともに、振興事業の実施に向けた中長期的対応をあわせて検討することとする。
(3)新たな法制の整備
 振興事業の具体化の着実な実現を図るため、新たな法制の整備に取り組むこととする。このため、ポスト三次振計の今後の総合的検討においても、地元地域のこの要望を踏まえて検討を行うこととする。
(4)財源の確保
 本振興事業については、国、県の行う事業を含め予算上の特別な配慮を行うこととする。また、平成12年度において新たに確保する特別の予算措置、新たに発足させる「北部振興事業制度」(仮称)等においては、地元地域を重視した制度運営上の工夫を地元地域の意見を踏まえて行うこととする。
 これらの対応にSACO関連経費をはじめとする各種交付金等による対応が更に加わることにより、本振興事業の財源の確保及び一般財源の充実にかかる要望に的確に対処する。
(5)事務局体制の確保
 振興事業の着実な推進のため、政府部内の事務局体制を確保する。