栄典制度の在り方に関する懇談会第8回議事録

日時

平成13年10月29日(月) 16:00~16:45

場所

内閣総理大臣官邸大客間

議事次第

  1. 開会
  2. 報告書(案)について
  3. 報告書の内閣総理大臣への提出
  4. 内閣総理大臣あいさつ
  5. 閉会

議事内容

吉川座長それでは、定刻になりましたので、ただいまから第8回「栄典制度の在り方に関する懇談会」を開催させていただきます。御多忙のところお集りいただきまして、大変ありがとうございます。
本懇談会も本日でいよいよ最終回ということで、報告書を取りまとめまして、小泉内閣総理大臣に提出したいと考えております。小泉総理は16時30分ごろにこちらにお見えになるという予定であります。したがいまして、それまでに結論を出していただくことを私としては期待しております。
本日は、残念ながら平山委員が急に海外出張にお出になったということで欠席でございますけれども、報告書の案については既に御了解をいただいていることをお知らせしておきます。
お手元に報告書案がございます。これは、前回資料としてお配りした報告書の骨子を基に、その場における議論も踏まえまして文章化したものです。内容については、事前に十分調整させていただきましたし、委員の皆様の御意見も十分伺ったわけでありますが、この場で最終的な確認を行って、正式な御了承をいただきたいと思います。
それでは、内容につきまして賞勲局長から説明をお願いいたします。

内閣府賞勲局長  前回の懇談会で示された報告書の骨子の案について、その後文章化の作業をしたものでございます。それから、委員の皆様から御意見をいただきまして、最終的に盛り込みました案を最終案という形で既にお送りしてございます。事前に御意見を調整させていただいたものと了解をいたしておりますが、最終案をお送りしました後で、若干文章上の微修正をさせていただいたところがございます。
次に、報告書の上に「栄典制度の在り方に関する懇談会報告書の要旨(案)」をお配りしてございます。この報告書を外に公表すると同時に、各方面に説明させていただくに当たりまして、要旨を使って説明させていただきたいと思っております。この要旨をご覧いただきまして、盛り込んだ内容を再確認していただいて、表現につきまして御議論いただければと思っております。
それでは読み上げさせていただきます。まず「一 栄典の意義」でございます。「・我が国の栄典制度には長い歴史と伝統。固有の文化としての意義」。「・国家・社会に対する功労を評価し、顕彰することは各国共通の制度。外国との交際儀礼としても重要な役割。我が国においては天皇と国民を結ぶ役割」。以上の意義があるので、「存続」という結論を出したということでございます。
次に、「ニ 我が国の栄典制度の今後の在り方」でございます。
「1.基本的な考え方」。「(1)栄典制度はその国の歴史と文化を象徴。歴史と伝統ある勲章等を活用した上で、運用の改善を図ることが必要」。ここでは、新しい勲章をつくるよりも従来のものをということを表現させていただいております。「(2)栄典制度は国の機関や地方公共団体の各種表彰制度とも関連。公的な称揚の体系が総体として適切に機能するよう留意」。「(3)公的部門・民間部門の役割分担の変化などの環境の変化や、中央から地方へ、量の観点から質の観点へといった価値観の変化を適切に反映」。このような点に注意すべきということでございます。
次に、「2.叙勲制度の在り方」でございます。
「(1)等級」。「[1]叙勲は、国家・公共に対する功績を評価するものであり、功績の大きさに応じた等級区分は必要」。「[2]『勲一等、勲二等・・・』など数字による表示を改め、各勲章に固有の名称を付し、それにより表示することを検討」。「[3]等級区分を、功績の質的相違に応じた旭日章と瑞宝章の使い分けにより、実質的に12段階から6段階に簡素化」。
「(2)官と民の取扱い」でございます。「『官』には警察官など公務部門に固有の分野等が含まれ、数値による官民比率を目標として設定する議論は不適当。官・民を問わず功績のある人を適切に評価。上位等級における官と民の不均衡に留意し、適正な運用に努める」。
「(3)功績の質的相違に応じた勲章の運用」。「長年にわたり積み重ねられた功労を顕彰するものと、従事した期間の長さよりも功績の内容に着目して顕彰すべきものとに同種の勲章を運用することには無理があることから、同一の勲等であれば旭日章が瑞宝章よりも上位とされる現在の運用を改め、功績の質的相違に応じて、旭日章と瑞宝章を別系統の勲章として運用することを検討」。
「(4)功績評価の在り方」でございます。「民間分野の功績の評価は、実質的内容に応じて行う必要があるが、同時に客観的な評価基準が必要」。「在任期間の長短による画一的な評価は不適当。国際社会における貢献等を積極的に位づけ、評価」。「これらの観点を踏まえ、新たな功績評価の基準を検討」。
「(5)勲章の男女別の扱い」でございます。「一般の受章者に対しては、旭日章と瑞宝章を共に男女共通の勲章として授与。特別な場合に使用される勲章として、宝冠章を存続させることについて検討」。
「(6)受章者数」。「人目につきにくい分野の受章者数を増加。警察官など著しく危険性の高い業務に精励した者の受勲を通常の春秋勲章とは切り離して実施し、受章者数の大幅な増、受章平均年齢の引き下げに努める」。
「(7)候補者の選考、審査」。「・各省庁、地方公共団体における候補者の選考に当たって、一般国民からの推薦を受け付ける仕組みも検討」。「・『栄典に関する有識者会議』の機能を強化し、栄典制度の運用の方針、功績評価の基準等重要事項を審議」。「・個別具体の審査は国の機関が責任をもって行う」。
「(8)受章年齢」でございます。「生涯における功績が固まった時期をとらえて顕彰するという考え方は適切であることから、現行の受章年齢を踏襲」。
「3.文化勲章の在り方」。「受章者の高齢化が見受けられるが、できる限り早い時期に授与するよう努めることを期待」。
「4.褒章制度の在り方」。
「(1)社会の各分野における優れた事績、行いを顕彰するものとして、年齢にとらわれることなく事績の都度速やかに顕彰することを基本」。
「(2)具体的には、以下の観点から運用の改革を図り、より積極的に活用」。
「[1]黄綬褒章…技能、技術の伝承等に努力している人を随時表彰」。
「[2]紫綬褒章…科学技術分野における発明・発見や、スポーツ・芸術分野における優れた業績等に対して、その都度表彰」。
「[3]藍綬褒章…公同の事務に対するもののほか、新規創業、経営革新、ベンチャー企業の創設等の優れた業績に対して、随時授与。また、勲章と同じ功績内容により褒章も重複して受章するような運用は行わないという観点から対象分野ごとに見直し」。
「[4]紅綬褒章…人命救助に取り組んだ人に対して、要件を緩和し授与」。
「[5]緑綬褒章…ボランティア活動などで顕著な実績のある個人等に授与」。
「[6]紺綬褒章…授与の対象及び要件について検討」。
「5.叙位制度の在り方」。「歴史のある制度であり、存続させることが適当。社会経済情勢の変化に応じた運用に努める」。
「6.その他」。「将来的には、公務員等が職務として行った事績等を表彰する際に、記章等を活用することについて検討が必要」。
「7.法制面の問題」。「歴史ある勲章等を活用した上で運用の改善を図ることから、現行の枠組みの中で対応することが可能」。
このような形で要旨をまとめてございますが、これでよろしいかどうかお伺いできればと思っております。

吉川座長  ありがとうございました。以上、要旨に沿って御説明をいただきましたが、本文の方も事前にお読みいただいているわけでございます。私としましては、委員の皆様の御協力のお陰で、皆様の御意見をできるだけ反映させることができたというふうに思っております。そこで、案のとおり御了承いただきまして、本懇談会として総理に提出したいと考えますけれども、御異議ございませんでしょうか。

(「異議なし」という声あり)

吉川座長  ありがとうございました。無事にまとめられましてほっといたしました。
それでは、先ほど申し上げましたように、この報告書を小泉総理に提出いたしますが、入室されるまで自由な時間があります。総理が見えてから少し時間があれば、総理に直接御要望を言っていただく機会もあるかもしれませんが、その前段階として、今後どういうふうにすればよろしいかというような御意見などあれば、御自由に御発言いただきたいと思います。あるいは、特に注意すべきところなどもございましたら頂きたいと思います。

 叙勲制度の在り方の「(6)受章者数」のところで、「人目につきにくい分野の受章者数を増加」というのは非常にうれしいことなのですけれども、そういう方々を選考する段階で、今までと違ってどういうところをどうするのかという具体的な選考方法のようなものをきちんと打ち出してほしいと思います。また、これから女性で受章に値する方が多くなると思うので、今まで以上に選考に携わる人に女性を増やしていただきたいと思います。
また、若い層に興味を持ってもらう意味でも、これから「栄典に関する有識者会議」の今までと違う積極的な活用を図り、若い人にも理解してもらえるようにきちんと取り組んでいただきたい。今、こういう良い報告書を検討したのですから、持続してそういうことをやっていただきたいと思います。

内閣府賞勲局長  人目につきにくい分野の方々を増やすに当たりましては、役所の方でもなかなか探しにくいということもあります。また、多分野で活躍している人の場合、その活躍の分野は各省庁に分かれているというようなことで、時々漏れてしまうとか、評価が片方だけで出てきてしまうということもありますので、そういう漏れがないように留意すべきということと同時に、以上のような観点からということでございますが、各省庁、地方公共団体における候補者の選考に当たりましては、関係団体から推薦を受けるのが今までの通例なのですが、そこに一般国民からの推薦を受けられるような仕組みを考えようということを報告書に盛り込んでいただいております。そうしますと、こういう方がいるというようなことを出すチャンスが出てくるということで、今までよりは埋もれてしまう方々が減るのではないかというふうに期待はしております。この点をうまく仕組んでみたいと思っております。
それから、有識者会議の機能を強化してということが盛り込まれておりますが、これをもっと活用して、基準とか運用の方針についても随時そこで御意見を聞きながらと思っております。また、有識者会議の委員の人選をどうするかというところも含めまして、また再度考えてみたいと思っております。

吉川座長  その辺りの具体的なことは、これから議論するということですね。

内閣府賞勲局長  そういうところの機能を強化するよう十分議論しろというところまで報告書に盛り込まれているという形になります。

吉川座長  報告書をよく読むと、具体的にではありませんが、どういうふうな選び方をしなければいけないとか、かなりはっきりと書かれているなという気がします。

 本当に8回でよくここまで取りまとめていただいたということを、座長に本当に感謝したいと思うのですけれども、今お話に出ましたように、この報告書が出たのを受けて、どういうふうにこれから取り組んでいくのか、そこのところが非常に大事だろうという気がしますので、是非賞勲局の方でよろしくお願いをしたいと思います。

内閣府賞勲局長  ここで、今後の腹づもりをお話ししておきたいと思います。本日御報告をいただきまして、政府の中では明日の閣議に御報告を申し上げて、各省の協力をお願いするということを考えております。 それから、与党のプロジェクトチームの方で5項目の要望が出ておりましたが、これに対してこういう懇談会の意見が出たということの御報告を近々行わせていただこうと思っております。それと同時に、与党各党の内閣担当のところに御説明しなければならないだろうということを考えております。
また、現行の枠組みでできるということが盛り込まれておりますが、根拠法令の手当てというのが一つございます。
もう一つ、新しく基準をつくらなければならず、現在叙勲基準が閣議決定で定められておりますが、これを全面改定しなければならないだろうと思っております。先ほど有識者会議のお話を申し上げましたが、現在の有識者会議の任期が来年の1月で切れますので、新しい有識者会議のメンバーをこれから選考した上で、その方々のところに基準等をお諮りした上で決めたいと思っております。
したがいまして、来年の春になるかと思いますが、与党、各省と調整した上で、根拠法令の改正、あるいは制定になるかもしれませんが、そういう形での手当てをし、それから叙勲の基準を閣議決定等で示します。
なお、この報告書の中には、予算を必要とするものも出てまいりますので、15年度予算に要求を出さなければならないと思いますので、方向を決めた上で夏の概算要求に乗せるという手続が必要であります。
それと同時に、各省庁、それから各都道府県等に叙勲の基準の大筋をお示しして、それに合った方々の推薦を依頼するということになります。
またそれと同時に、一般の国民からの推薦を受けるとなりますと、そういうことを一般にお知らせしなければいけないため、どういう手続で行うかなど地方公共団体、各省と調整しなければいけませんが、それを明確にした上でスタートするということになります。
また、勲一等、勲二等という数字を廃止いたしますと、現在では勲章の箱の上に「勲一等旭日大綬章」などと書いてありますので、別の箱をつくらなければならないということになります。このようなことは、現在、零細の業者にやっていただいております。
それから、例えば警察官等の数を増やしますと、現在では春秋叙勲はそれぞれ約4,500という数字でやっておりますが、かなりの数の在庫を持った上で踏み切る必要がありますので、そういう物理的な準備も含めますと、基準を示してから相当の準備期間が要るかと思っております。

 よくお取りまとめいただいて、私どもがそれぞれの気持ちを込めて申し上げたことが整理されてここに出来てきたということを大変うれしく思い、皆さんの御苦労に改めて感謝したいと思います。
それから、先ほどお話がありましたが、私も現役時代に随分いろいろな審議会や懇談会で答申や提案を書いたりしましたが、後から見ると、それが非常に活かされて、次の新しい改革への出発点になったと思われるものと、何となくどこかに行ってしまったのではないかと思われるものとが正直言ってございますので、願わくはこの報告書につきましては、これから政府の方で早速取り上げられることですが、是非これを一つの出発点にして、良い見直しが行われて、良い制度が出来上がることを、この会合に参加させていただいた一人として強く期待したいと思います。

 私も非常に良いまとめ方になったと思います。やはり国が国としての枠組みを決めるということは大事でありまして、しかしそれがなかなかやりにくい時代になりましたので、それをこれだけやって、当面とにかくこれでやるのだと、それぞれのところで当初よりはっきりと意思表示をしている、そういう改革案だと思いますので、その辺りを続けていただきたいと思います。また、恐らく、今後は我々の世代、まだ50才になるかならないかの世代ですが、これが今しばらくしたところで、きっともう少し大きな改革になるのだろうなという気がしております。

 この1年間、我々がこの懇談会でいろいろ発言をしてきた内容が、おおよそこの報告書の中に網羅されていると思います。そういう意味で、座長を始め皆様方の御苦労に敬意を表したいと思います。
局長がおっしゃったような事務手順でいろいろな作業が進められていこうかと思いますが、中でも叙勲の基準をおつくりになるときには、有識者会議についてもおっしゃいましたが、この報告書の内容が活かされると思っております。必要ならば是非現場の意見等もお聞きになって、この懇談会で我々が発言した内容が活かされるような現実的な基準をおつくりいただければありがたいと思います。

 今回の見直しに当たっては、できるだけ勲章あるいは褒章制定の本来の意義に沿って考えてみたいというふうに思ったわけですが、その基本になる「国家・公共への貢献」ということは、非常にはっきりしているようで実際はなかなか難しい問題でありました。したがって、「国家・公共への貢献」ということを基本的な概念にして、それを演繹的に制度の中に反映させていくということができれば非常に良いと思っておりましたが、これが当初の制定の趣旨を読んでみましても、なかなか統一的には理解しにくいほど複雑であって、そこまではやり切れませんでしたけれども、しかしながら、結論といたしましては、委員の皆様方の御努力によりまして、非常に妥当なところに落ち着いたのではないかというふうに思っておりまして、感謝を申し上げたいと思います。
先ほどもお話がありましたように、これから具体的に審査の基準等を固めていく上では、賞勲局にまた大変御苦労願わなければならないと思いますけれども、この考え方を基本にして是非良い制度に仕上げていただきたいと思います。
それと同時に、これまでの議論は、今回の制度の改革に役立つと同時に、その後においても振り返ってみる必要のあるものではないかと思っております。そういうことから言いましても、将来また改革があるかもしれませんが、是非良い形でスタートしてもらいたいと思います。

 よくまとめていただいたことにお礼を申し上げたいと思います。
 それから、これからが本当に大切で、いろいろな批判があった中ここまで来ましたので、願わくは、すべてのことについてと言ってもいいと思いますけれども、余り斜に構えないで、素直にこの新しい提言が実施に移されて、受け入れていただくことを強く期待していますし、これからは具体的な仕組み、仕掛けについても、できる限りの透明度を確保していただくようにお願いをしたいと思います。

 これからの基準づくりと運用ということが重要であり、この制度は信頼の上に立たないと本当に評価されるものではないと思いますので、やはりその評価、運用、透明度などいろいろな具体的な課題があると思います。

(小泉内閣総理大臣、福田内閣官房長官入室)

吉川座長  小泉総理におかれましては、お忙しいところ御出席いただきましてありがとうございます。私どもの懇談会は、昨年10月に森前総理の下に発足いたしましたが、それ以後8回にわたり会議を開催し、21世紀にふさわしい栄典制度の在り方について議論をしてまいりました。本日、その報告書を取りまとめましたので、提出させていただきたいと思います。
今後、この報告書に盛り込まれました内容、提言を、政府における検討に活かしていただきますよう、懇談会を代表してお願い申し上げます。

(吉川座長から小泉内閣総理大臣へ懇談会報告書を手交)

小泉内閣総理大臣  ただいま吉川座長から御報告をいただきました。誠にありがとうございました。お忙しいところ、皆様方には栄典制度の在り方につきまして熱心に御議論をいただきまして、今日の報告書を取りまとめていただきました。御努力に厚く御礼申し上げます。
時代の変遷につれて、栄典制度についても国民の考え方にもいろいろ変化があると思います。大変伝統のある重要な制度でありますので、これから社会経済の変化と国民の意識の動向に沿ったものとすることが必要だと思います。
今後、政府といたしましても、この報告書における各般の御提言を踏まえて検討を進めまして、我が国の栄典制度が21世紀においても国民の励みとなり、また活力ある社会の形成に資するものとなるよう、適切に対応してまいりたいと考えております。
これまで委員の皆様におかれましては、非常にお忙しい中にもかかわらず、御理解と御支援を賜りまして、今日の報告書をまとめていただきましたが、今後ともよろしく御指導賜りますよう、改めてお願いしたいと思います。本当にありがとうございました。

吉川座長  ありがとうございました。総理、お忙しいでしょうけれども、しばらくお時間をいただいておりますので、ここで委員の皆様方から直接総理にお話しいただければというふうに思います。

小泉内閣総理大臣  等級の表示を改めるということですね。

吉川座長  そうですね。等級の数字をやめて、それからもう一つ、旭日章と瑞宝章があるのですけれども、旭日章の方は個々の業績に対して、瑞宝章の方は長年の業績に対してというふうに質を分けたのです。実際、叙勲の対象になる人は、非常にいろいろな質がございまして、そういうふうに2つに分けることによって、結果的には12の等級が、2種類ついてそれぞれ6となり、等級の数も減るということになります。
前から御議論いただいております「複雑過ぎる」ということは、随分変わるようになると思います。
結論的には、このような栄典制度というものは、やはり文化の問題ですから、そう軽々に各時代で変えてはいけないだろうと、それは歴史ですからしっかり守ろうと。しかし、一方で時代は非常に変わっていますので、だれが叙勲されるべきかという基準は変わるのだと思うのです。一番大きいものに、やはり今まで官主体と言われていたことの変化があります。国家・公共に対する貢献ということですから、昔は官の立場にいる人がそれだけあったということですけれども、今では非常に広がってきて、民の方々もそういう貢献が非常に多いということで、官から民へという一つの流れがあります。もう一つには中央から地方へという流れもあります。時代が非常に変わっているだろうということで、これから御検討いただかなければいけないことですけれども、叙勲基準を変えていくという議論が非常に大きな骨子だったと思っております。

小泉内閣総理大臣  一番問題があったのは何ですか。

吉川座長  外の方々からは、官民格差という指摘が非常にあったのですけれども、数を数えてみると決してそうではなくて、実際に数が多いのは警察官とか消防士とか、そういう現場で非常に苦労されている方々なのです。ですから、官民格差というものを分析してみると、そう単純ではないと思うのです。やはり、官を減らして民を増やせという単純な話ではなくて、業績があった人に出そうということです。基準に関してはそのようなことがありました。

 実は、私がこの懇談会のメンバーになり懇談会が始まるというときに、民間経済人で、立派な方ですけれども、民間の経済人が勲章なんてもらうものではないのだということを言われたということがありました。今までもいろいろな理由で辞退をされた方があります。それは、官民格差が大きいのではないかとか、官に位をというのは主義主張に反するとか、いろいろあったのですけれども、私も随分勉強させていただいて、その感想としては、報告書のこのような考え方に基づいて実施されていけば、もっと多くの方が、余り難しいことは言わないで、素直に喜んでいただけるという方向が出てきたのではないかというふうに思います。
依然としてこれから難しいなと思うのは、評価の方法などについてもいろいろ書いてありますけれども、人間が評価するわけなので、結果的に何を基準にして評価するかという今までいろいろな形で問題になっていることがあり、そのような難しい中で結局ある程度機械的になってしまうということが今の問題になっていると思います。これから報告書の内容を活かしていくわけですけれども、評価の問題はこれからもなかなか難しい。いろいろ注文を付けさせていただきましたが、これを実際に行うのは大変なことだと思います。個々の審査の最終決定は官で行うわけですけれども、その間でなるべくいろいろな意見が入るようにするということが必要ではないかと思っています。ただ、方向は、私などが民間の立場に立ってみても、従来に比べれば、企業人にしても団体の長とか何とかではなくて、もっと広いレベルの民間の皆さんが素直に受けていただけるようなものになったのではないかと思っております。

 顕彰される人が大変名誉に思う、そして誇りに思うということがこの顕彰制度にあると思いますけれども、私はこの懇談会に参加させていただいて、国民みんなが顕彰された人を誇りに思い、信頼できるということが大事なのではないかと思いました。したがって、そういう意味で、今よりも更に開かれた制度というものが大事かなというふうに思いました。
社会は、本当にいろいろな人によって支えられていると改めて思いました。大きくて見える形で貢献なさる方もいらっしゃいますけれども、小さいけれども力を尽くして隣の人のために、だれかのために、社会のためにやっている人もいるわけでございまして、できる限り栄典制度というものが幅広い視野でそのような方々に、本当に適正なところに光を当てることができればというふうに思われ、要するに、栄典制度を国民に身近なものにしていけばと思いました。それが、もらう人だけではなくて、それを見ている人にとっても、私たちの社会の誇りに思う人が選ばれていると思うことが大事かなというふうに思いました。

小泉内閣総理大臣  数の面もあるでしょう。今までとこれからとでは数はどうなのですか。増やすと、ありがたみがなくなるという面もあるのですね。

吉川座長  そうですね。ですから、人目に付きにくい人を拾い上げようということを報告書で述べています。

小泉内閣総理大臣  少ないからこそ、周りの人が、希少価値があると思うのですね。

吉川座長  そうですね。ですからそういう意味で種類を区分しているわけですけれども、例えば別の意見で、国立大学の教授とか、政治家とか、そういう人が非常に目立つのではないかというものもあるのですね。私は個人的には、その辺りはむしろ減らして、そういう人目に付かない人を増やしていくというふうなことになるのかなと思っております。

小泉内閣総理大臣  政治家多過ぎますね、国会議員が。

吉川座長  数はそんなに多くないのですけれども、目立つのですね。もちろん、国家に貢献しているわけですから当然ということかもしれませんが、国家や公共に対する貢献というものはその国の仕組みでございますので、これは総理のお考えにも非常に合っていることだと思うので、是非これを国民に定着した制度にしていただきたいと思います。  それでは、時間がまいりましたので、福田官房長官から一言お願いいたします。

福田内閣官房長官  お礼を申し上げるだけですけれども、大変ありがとうございました。特に、委員の方々お忙しいにもかかわらず、長期間にわたりまして御議論をいろいろいただき、今日このような立派な報告書をいただきました。この報告を、今後の政府の賞勲局中心の検討に取り入れさせていただきまして、委員の皆様方の御期待に沿うような具体案をつくってまいりたいと思っておるところでございます。本当にありがとうございました。

吉川座長  どうもありがとうございました。委員の皆様方の御協力によりまして、本日無事に報告書を取りまとめ、総理に提出することができました。栄典制度の見直しという大変難しい課題について、1年間の長期にわたり、大変熱心に御議論いただきましてありがとうございました。座長の私から御礼を申し上げるとともに、総理には今後是非報告書の精神を活かして制度をおつくりいただきますようよろしくお願いしたいと思います。
これを持ちまして、本懇談会を閉会いたします。どうもありがとうございました。

(以上)