特定歴史公文書等の保存・利用等
国立公文書館等に移管等された特定歴史公文書等の管理については、公文書管理法第15条から第27条に規定されています。
(1)特定歴史公文書等の保存等
公文書管理法第15条では、特定歴史公文書等の保存等について、また、第25条では廃棄について規定されています。
国立公文書館等に移管等された特定歴史公文書等については、現在及び将来の国民への説明責務を全うするため、適切な保存が必要となります。
このため、国立公文書館等の長に対し、特定歴史公文書等の原則永久保存(特定歴史公文書等を廃棄する場合は、公文書管理委員会の調査審議を経た上で、内閣総理大臣の同意が必要となります。)が義務付けられるとともに、その内容、保存状態、時の経過、利用の状況等に応じ、適切な保存及び利用を確保するために必要な場所において、
適切な記録媒体により、識別を容易にするための措置を講じたうえで保存しなければならないことが規定されています。
また、特定歴史公文書等に個人情報が記録されている場合には、当該個人情報の漏えい防止のために必要な措置を講じなければならないとされており、さらに、特定歴史公文書等の分類、名称、移管等をした者の名称又は氏名、移管等を受けた時期及び保存場所等について記載した目録を作成し、公表しなければならないとされています。
(2)特定歴史公文書等の利用
公文書管理法第16条から第24条までは、特定歴史公文書等の利用について規定されています。
利用方法
特定歴史公文書等の利用は以下により行います。
特定歴史公文書等が文書又は図画の場合:閲覧又は写しの交付
特定歴史公文書等が電磁的記録の場合:
以下の方法のうち、国立公文書館等の長が利用等規則で定める方法
・専用機器により再生又は映写したものの閲覧・視聴・聴取
・用紙に出力したものの閲覧又は交付
・電磁的記録媒体に複写したものの交付
手数料
閲覧に係る手数料は不要です。写しの交付については、実費の範囲内において国立公文書館等の長が定める額を支払います。
利用制限
公文書管理法では、特定歴史公文書等の利用を具体的権利として位置付けています。一方、個人の権利利益や公共の利益等を害するおそれがあり、利用に馴染まない情報が記録されている場合や特定歴史公文書等自体に破損、汚損の危険がありその利用が物理的に困難な場合などに、その利用を制限する場合があります。
このような利用の制限に合理的な理由がある情報を法第16条第1号から第5号に具体的かつ明確に列挙しており、この利用制限事由に該当しない限り、国立公文書館等の長は、特定歴史公文書等を利用させなければならないとしています。
【利用制限事由】
- 個人に関する情報(法第16条第1号イ、同条第2号イ)
特定の個人を識別できる情報等で、以下に当たらないもの
・法令の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
・人の生命、財産等を保護するため、公にする必要がある情報
・公務員等の職務の遂行に係る情報 - 法人等に関する情報(法第16条第1号ロ、同条第2号ロ)
法人その他の団体又は事業を営む個人に関する情報であって次に掲げるもの(人の生命、財産等を保護するため、公にする必要がある情報を除く)
・公にすることにより、当該法人等の競争上の地位等正当な利益を害するおそれがある情報
・公にしない条件で任意に提供された情報 - 国の安全等に関する情報(法第16条第1号ハ、同条第2号ロ)
公にすることにより、国の安全や他国等との信頼関係が損なわれるおそれや交渉上不利益を被るおそれがある(と移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある)情報 - 公共の安全等に関する情報(法第16条第1号二、同条第2号ロ)
公にすることにより、犯罪の予防や捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある(と移管した行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある)情報 - 事務・事業に関する情報(法第16条第1号ロ、同条第2号ロ)
事務・事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げる等のおそれがある情報
・監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課等の事務を困難にするおそれ
・国又は地方公共団体が経営する企業・独立行政法人等の事業に関し、企業経営上の正当な利益を害するおそれ - 国の機関(行政機関を除く。)から移管されたものであって、当該国の機関との合意において利用の制限を行うこととされている場合(法第16条第3号)
- 法人等又は個人から寄贈又は寄託されたものであって、全部又は一部を一定の期間公にしないこととされている場合(法第16条第4号)
- 原本の破損若しくは汚損を生ずるおそれがある場合又は保存する国立公文書館等において原本が現に使用されている場合(法第16条第5号)
国立公文書館等の長が、利用制限事由に該当するか否かについて判断するに当たっては、作成・取得からの時の経過を考慮するとともに、移管をした行政機関の長の意見等を参酌しなければならないとされています。
また、国立公文書館等の長による利用請求に対する処分に不服がある者は、行政不服審査法による審査請求をすることができ、審査請求のあったときは、国立公文書館等の長は、原則、公文書管理委員会への諮問が義務付けられています。
(3)特定歴史公文書等の保存・利用状況の報告等
公文書管理法第26条では、国立公文書館等の長による特定歴史公文書等の保存及び利用の状況の内閣総理大臣への報告について規定されています。
具体的には、「国立公文書館等の長は、特定歴史公文書等の保存及び利用の状況について、毎年度、内閣総理大臣に報告しなければならない」と規定されています。また、これらの報告を受けた内閣総理大臣は、毎年度、その報告を取りまとめ、その概要を公表しなければならないこととしています。
(4)利用等規則
公文書管理法第27条では、利用等規則について規定されています。
具体的には、法の規定に基づき特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄が適切に行われることを確保するため、国立公文書館等の長に対し、特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関する定め(利用等規則)の制定義務が定められています。
<公文書管理法で規定されている利用等規則記載事項>
一 保存に関する事項
二 法第20条に規定する手数料その他一般の利用に関する事項
三 特定歴史公文書等を移管した行政機関の長又は独立行政法人等による当該特定歴史公文書等の利用に関する事項
四 廃棄に関する事項
五 保存及び利用の状況の報告に関する事項
利用等規則を制定又は変更する場合には、内閣総理大臣の同意が義務付けられており、内閣総理大臣の同意に当たっては、公文書管理委員会への諮問が義務付けられています。
また、利用等規則を制定又は変更したときは、遅滞なく、国民に公表しなければなりません。
なお、各国立公文書館等の長が適切に利用等規則を制定できるよう、内閣府が各国立公文書館等に対し、規定例や規定の趣旨・意義や実務上の留意点を解説した「特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関するガイドライン(PDF形式:481KB)」
(平成23年4月1日内閣総理大臣決定;令和4年1月25日一部改正)を示しています。