新規の化学物質を輸入するにはどのような審査を受ける必要がありますか。
新規化学物質の輸入に際しては、その化学物質の名称・構造・輸入予定数量等と生分解性などの試験データを添えて届出を行い、審査を受けなければなりません。
1.我が国において製造又は輸入実績のない化学物質(新規化学物質)を輸入する際には、あらかじめ厚生労働大臣、経済産業大臣及び環境大臣に新規化学物質の名称等のデータを添付して届出を行い、分解性(自然的作用による化学的変化を生じにくいものであるかどうか)、蓄積性(生物の体内に蓄積されやすいものであるかどうか)、人への長期毒性(継続的に摂取される場合には、人の健康を損なうおそれがあるものであるかどうか)および動植物への毒性(生態毒性とも言う。動植物の生息若しくは生育に支障を及ぼすおそれがあるものであるかどうか)等の観点から、新規化学物質が監視化学物質、特定化学物質、または規制対象外の化学物質のいずれに該当するか事前審査を受ける必要があります。
2.この審査の結果、第一種特定化学物質に指定された場合には、その製造、輸入等を実質的に禁止する等の厳しい規制が実施されます。また、第二種監視化学物質又は第三種監視化学物質に指定された場合には経済産業大臣に対して輸入実績数量等の届出が義務づけられます。
3.高蓄積性は有さないが、難分解性であり、人への長期毒性の疑いのある化学物質は第二種監視化学物質に指定され、輸入実績数量等の届出が義務付けられます。その物質による環境の汚染により、人の健康に係る被害を生ずるおそれがあると見込まれる場合には、輸入事業者は有害性(人への長期毒性)の調査を指示されることがあり、その結果、有害性を有すると判定され、被害を生ずるおそれがあると認められる場合には第二種特定化学物質に指定されます。
4.難分解性であり、動植物一般への毒性(生態毒性)のある化学物質は第三種監視化学物質に指定され、輸入実績数量等の届出が義務付けられます。その物質による環境の汚染により、生活環境動植物の生息・生育に係る被害を生ずるおそれがあると見込まれる場合には、輸入事業者は有害性(生活環境動植物への長期毒性)の調査を指示されることがあり、その結果、有害性を有すると判定され、被害を生ずるおそれがあると認められる場合には第二種特定化学物質に指定されます。
5.新規化学物質の届出の際には、新規化学物質の名称、構造等、輸入予定数量等の他、分解性、濃縮性、Ames(細菌を用いる復帰突然変異)試験、染色体異常試験、28日間反復投与毒性試験、藻類生長阻害試験、ミジンコ急性遊泳阻害試験及び魚類急性毒性試験等の試験データが必要となります。
6.ただし、年間の製造・輸入数量の国内総量が政令で定める数量(十トン)以下の新規化学物質については、難分解性・高濃縮性でないことが明らかな場合には広範囲な地域の環境中に残留することによる環境経由の暴露の可能性が極めて低いと考えられることから、人への長期毒性の疑いの有無及び生態毒性の有無が明らかでない場合であっても分解性、濃縮性の試験データにより年間政令で定める数量(十トン)以下の輸入が可能となる審査の特例制度が設けられております。
7.昭和48年当時、製造又は輸入されていた化学物質については、既存化学物質名簿に収載されています。化学物質を輸入する際に新規化学物質の届出が必要か否かはこの既存化学物質名簿により判断されます。外国においては長年使用されている化学物質についても、この既存化学物質名簿に収載されていない場合は、新規化学物質としての届出が必要です。
8.既存化学物質については、国の安全性点検等によって、難分解性・高蓄積性を有する化学物質であると判明した場合、第一種監視化学物質に指定され、輸入実績数量等の届出が義務付けられます。その物質による環境の汚染が生ずるおそれがあると見込まれる場合には、輸入事業者は有害性(人又は高次捕食動物への長期毒性)の調査を指示されることがあり、その結果、有害性を有すると判定された場合には第一種特定化学物質に指定されます。また、既存化学物質も人への長期毒性や動植物への毒性等のデータにより第二種監視化学物質、第三種監視化学物質及び第二種特定化学物質に該当するとされた場合には新規化学物質と同様の規制を受けることとなります。
9.なお、新規化学物質の届出の際に必要となる試験データについては、OECDが定めた試験機関が満たすべき基準(優良試験所基準:GLP基準)に基づき試験所認定制度(GLP制度)を実施し、データの信頼性を確保しています。この制度に基づきOECD諸国のGLP認定機関で取得した試験データについても、届出の際に受け入れているところです。