個別苦情個票

ＯＴＯ番号	652	各省庁番号	厚労-10
受付日付	平成14年7月24日	受付省庁	内閣府
担当省庁	厚生労働省	関係法令	有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律
苦情申立者	在日カナダ大使館	輸入先	カナダ
事例名	乳幼児用肌着に含まれるホルムアルデヒドに関する規制の緩和
処理内容	1．苦情の概要有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律（以下「法」という。）及び、これを受けた同法施行規則において、出生後24月以内の乳幼児用繊維製品のうち、おしめ等11品目に含まれる有害物質「ホルムアルデヒド」の含有量について規制が設けられている（アセチルアセトン法による測定で吸光度差が0.05以下）。また、厚生労働大臣等は、家庭用品衛生監視員に工場、店舗等への立入検査等を行わせることができ、必要があると認めるときは、当該家庭用品の回収命令を発すること等ができる。カナダから乳幼児用肌着を輸入しているが、輸入時における所定の検査機関において上記基準を満たしているとの証明を受けたにも拘わらず、家庭用品衛生監視員による小売店への立入検査の際、基準以上のホルムアルデヒドが検出されたとの理由で当該小売店に回収命令が出され、その責任を負わされる形で当該小売店から損害賠償を請求された。 (1)規制のあり方 1)日本の規制値（ppm換算値12-18ppm）が他国(フィンランドやノルウェーでは30ppm）の約２分の１に設定されていることは著しい相違であり、国際的な整合性を欠く。 2)現在の試験方法について、諸外国に習いppm単位で基準を示すようにするとのことだが、具体的な導入時期はいつ頃か。 3)現行では、移染（周囲に存在する化学物質が当該製品に付着し汚染してしまうこと）と樹脂加工品（製品そのものがホルムアルデヒドを発生させる要因を有している）の発生要因の明確な科学的区別がつかないにもかかわらず、検査結果の中に、度々塩酸加水分解抽出による「樹脂加工・移染判別法」を行った結果、基準を上回った原因は「移染と考えられる」と出ているのは何故か。 4)ホルムアルデヒドの濃度は水洗いにより著しく低下することから、同様の規制を持つ他国においては、消費者に対し使用前の「要水洗い」を注意事項として明記した上で、商品の水洗後にホルムアルデヒド値測定検査を実施している。日本においても同様のシステムの導入を望む。 (2)規制の運用各自治体における法律の運用について、実際には外国製品に対し不平等に行われている。このような誤った状況を所管省庁としてどのようにお考えか。また、今後このような状況を是正すべくどのように指導・改善を徹底されていくのか。 (3)検査方法 1)検査機関による結果の食い違いが著しい。管轄省庁の責任下において、検査方法の標準化、法律運用のマニュアル化を実施する等お願いしたい。 2)３種類のタグ（付属品）を混合で検査したとのことであったが、ホルムアルデヒドが検出されたのは、唯一カナダ製であった英字のタグであると結論を出している。しかし、その科学的な裏付けは皆無で、国産品であれば問題はないはずとの先入観が先立ったものであり、外国製品に対する不当な差別が行われていると判断せざるを得ない。 (4)その他厚生労働省では、試買試験の結果等に関する統計・資料について、関係者による違反発生防止のため原因の研究などケーススタディーを可能にし、結果違反件数を減少の方向にもっていくためにも、一般に情報を開示すべき。（再意見） (1)規制のあり方今後新たに移染と樹脂加工品を科学的に区別し別基準で取り扱える方法の導入を検討中とのことであるが、移染源、移染時期を特定できない限り結局は責任の所在が不明確になり、最終的に製造者・輸入業者が商品回収を含めた対応をとらざるを得ない現状は改善されないように思われる。この点についての厚生労働省の見解はいかがなものか。また、ホルムアルデヒド検出の原因別（移染、樹脂加工の各ケース）行政指導は具体的にどのような内容なのか、さらに移染、樹脂加工を区別できる方法を導入した場合、行政指導内容はこれまでとどのように異なってくるのかご教示願いたい。また、他国の30ppmと比較して日本の12-18ppmは明らかに数値的に厳しいと考えられるのに、厚生労働省が「現行の基準が著しく厳しいとは考えていない」とする根拠を明示して欲しい。 (2)規制の運用　先の回答によると、「各自治体における法律の運用については監視指導についての指針を通知で明確に示している」とのことであったが、各地方自治体において検査を実施する担当員は、途方もなく微量なレベルでの検査に不慣れのように見受けられる。日本市場に流通する全ての商品について、生産国にかかわらず厳正で公正な試買・検査が確実に実施されるよう厚生労働省ではどのようにしているのか。また、乳幼児の健康と安全の確保という重要な件につき、保健所職員が実施している試買・検査の過程をどのような方法で監視・評価しているのか。 (3)その他 1)既に考えうる限りの改善策を日本側、カナダ側で徹底しているにもかかわらず、いまだに商品の自主回収を余儀なくされることがあり、輸入業者、メーカー共に、日本の基準を遵守したいと切望しながらも、これ以上とる方策がない状況にある。ホルムアルデヒド検出防止のための有効な手段があれば是非ご教示願いたい。 2)また、テキスタイル・テクノロジー・センター（訳：繊維技術センター）と、日本で家庭用品の規制基準に関する試験検査を実施している機関との技術・情報交流あるいは姉妹提携を推進し、さらに将来的には同センターにおける試験結果が日本国内においても認証されるような可能性があれば方法を模索して行きたいと考える。アドバイス等があれば是非ご教示願いたい。 3)ＯＴＯプロセスを引き続き利用すると同時に厚生労働省、特に当該基準の運用側面の担当部署との直接の対話をはかっていきたいが、どの部署が直接の窓口になるのか、また出来ればご担当者名も教えて頂きたい。 2．担当省から以下のとおり回答。 (1)ホルムアルデヒドは、慢性毒性を有し、また数ppmの低濃度で感作性を有することが動物実験で判明していることから、特に乳幼児の経皮、経口等の暴露量を出来るだけ低減し、化学物質に対する抵抗力の弱い乳幼児期における感作を予防するという観点から設定したものであり、抵抗力の弱い乳幼児に対する安全性が同じ水準で確保されることを示す信頼に足るデータが存在するのであれば、今後の規制のあり方について検討することを否定するものではない。また、諸外国におけるホルムアルデヒド含有量についての規制状況は一様ではないが、我が国の基準が著しく厳しいとは考えていない。基準のppm表示の導入については平成15年度中を目途に行いたいと考えている。なお、新基準値については現在検討中である。繊維製品から基準値以上のホルムアルデヒドが検出された場合、ホルムアルデヒドが樹脂加工に由来するのか移染に由来するのかを判別することは、行政指導すべき対象が製造者であるのか、販売店であるのか等を決定する上で重要となるため、これについての知見を得るための一つの手段として、公定法としては定められていないが、塩酸加水分解抽出による「樹脂加工・移染判別法」が用いられていると承知している。ただし、移染であるとの結論は、包装品と非包装品との測定結果の比較、周辺のホルムアルデヒド発生源の有無等の総合的な判断が必要とされるため、この試験法の結果のみから移染と断定することはできず、参考として移染の可能性を試買先に指摘している事例があると承知している。我が国において制定している基準は、消費者が製品を購入後、水洗いすることなく着用した場合でも、健康被害がおこらないことも想定して設定したものである。また、「要水洗い」を注意事項として明記することについては、法第3条で規定されているように、製造者または輸入者が人の健康に係る被害を発生させないようにする責務の一環として行われることが適当だと考えている。 (2)厚生労働省は規制基準、試験法および処理基準等を定めており、試買検査や行政指導の実務については、基本的に法定受託事務として各自治体に委任していることから、試買品目の選定、実施にあたっては、各自治体が過去の違反事例並びに試買検査の経験等に基づき適切に行っているものと考えている。 (3)家庭用品の規制基準に関する試験検査実施機関にあっては、同法施行規則において定められた試験法、家庭用品規制に関する監視指導について(昭和56年３月10日環企第45号厚生省環境衛生局長通知)等に基づき、信頼性のある試験結果が得られるものと考えている。試験結果の信頼性の確保にあたっての精度管理等については、各試験機関の責任において行われるべきであると考えている。 (4)自治体が実施した試買検査の結果等についても、家庭用品の安全確保に資するために各自治体がその責任において公表することは差し支えないと考えている。（再回答） (1)について樹脂加工によるものか否かを推定する手段導入の可能性については、他国の制度も含め、現在調査中である。我が国の規制基準の根拠については、これまでも回答したとおり、妥当なものであると考えている。なお、現行の基準より高いホルムアルデヒド含有量のもとでも、抵抗力の弱い乳幼児に対する安全性が同等以上の水準で確保されることを示す信頼に足る実証データが存在するのであれば、検討することを否定するものではない。 (2)について先に回答したとおり、当省は規制基準、試験法及び地方自治法第245条の９に基づく処理基準を定めており、自治体が適切に行っているものと考えている。また、当省は、年１回、自治体の家庭用品安全対策担当職員を対象とした会議を開催し、家庭用品の安全対策に資するための情報交換等を行っているほか、自治体において行政措置等がなされたものについては当省に報告されることから、報告の妥当性を検証するとともに監視業務の参考とするため事例を取りまとめた上、自治体に提供している。 (3)について担当課は、医薬局（現、医薬食品局）審査管理課化学物質安全対策室である。（再回答後の担当省の対応等）基準のppm表示の導入、新しい試験方法の追加について、平成15年10月１日に開催された化学物質安全対策部会に諮問し、平成15年10月14日付で答申を得た。平成16年度中に省令を改正する予定である。
処理分類	処理済（平成15年10月21日）	検討の方向	①－ア、イ ④
備考	平成14年８月１日付文書にて回答。平成14年12月16日付文書にて回答。

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