我が国の不動産市場は、バブルの生成・崩壊の過程において見られたような不透明性や閉鎖性が依然として十分払拭しきれたとはいえない状況にある。今後、一般消費者を含めたすべての参加者が適正に機能する市場から最大限の受益を得ることができるよう、不動産鑑定及び価格形成の適正化、将来収益等に関する予測可能性の向上、不動産取引の公正化、住宅の態様(新築・中古、持家・賃貸)に中立的な市場の整備等を推進することにより、不動産市場の透明性の確保に努める必要がある。
我が国において、地価が右肩上がりの時代には不動産への投資が土地の資産価値の増加を期待して行われてきた傾向があるが、バブル崩壊後、商業地を中心に収益性を重視した実需中心の市場への構造変化が進む中で、収益性を重視した不動産取引の前提である売買価格や賃料等の情報に対するニーズが高まっていると認識している。この点も踏まえ、不動産市場をより公正でオープンなものにしてゆくため、以下のような施策を進めているところである。
不動産鑑定分野においては、収益重視の不動産鑑定評価の充実を図るため、これまでもSPC法に基づく鑑定評価の際の実務指針等を策定し対応してきたところであるが、さらにこうした観点から、平成13年度中を目途に鑑定評価の統一的な基準である不動産鑑定評価基準を改定することとしており、本年6月に国土審議会土地政策分科会に不動産鑑定評価部会を設置したところである。
投資物件の平均的な収益性を示す指標である不動産投資インデックスの民間による整備を支援するため、平成14年までにガイドラインを策定する予定である。
適切かつ円滑な不動産取引の確保の観点から、宅地建物取引業法において宅地建物取引業者に対して、
媒介契約内容を記載した書面を依頼者に交付
重要事項を記載した書面を依頼者に交付し、取引主任者をして説明
等の規制を課すとともに、媒介業務にかかる仲介手数料について、最高限度を設ける等消費者保護を図っている。
中古住宅市場を整備するため、住宅の質に係る情報が取引関係当事者に十分に開示されることが必要であり、中古住宅の売買等にあたり、住宅の現況を検査し、必要に応じて耐震性能等についても表示する新しいサービスの導入や共同住宅の維持管理等に関する情報を登録し、開示する制度の導入等を検討している。
我が国の都市については、長時間通勤・慢性的な交通渋滞等の課題が依然として解消されていないのみならず、バブル崩壊後の経済的低迷のなかで国際競争力が低下しておりその回復が急務となっている、あるいは欧米諸国の都市と比較して全体としてのまとまりがなく景観的に見劣りがするばかりか、住む場所、働く場所としても劣っていると言わざるを得ない。21世紀にふさわしい、快適で活力にあふれた、個性豊かな都市への再生を図るため、都市に係る各種制度の見直しを図るべきである。
我が国の都市は、90年代以降の経済の低迷の中で、特に中枢機能が集積している東京圏、大阪圏などが国際的にみて地盤沈下しており、職と住の遠隔化による長時間通勤、良質な都市型住宅や少子高齢化等に対応した生活支援施設の不足、水や緑に乏しく景観への配慮も不足する潤いのない都市空間等多くの課題が山積している状況である。こうした状況を踏まえ、我が国の都市を文化と歴史を継承しつつ、豊かで快適な、国際的にみて経済活力にも満ちあふれた都市に再生することが必要である。
また、都市再生を通じて、民間に存在する資金やノウハウなどを都市整備に振り向け、さらに新たな需要を喚起することにより、かねてから懸案となっている土地の流動化をもたらすだけでなく、経済構造改革に大きく寄与することができる。
これらの点を踏まえ、災害に対する脆弱性、長時間通勤、慢性的な交通渋滞等我が国の都市の「20世紀の負の遺産」ともいうべき課題を、集中的に施策を展開することにより、早急な解消を図るとともに、国際競争力のある世界都市の形成のための交通基盤や情報基盤の整備、持続的発展可能な社会の実現のための循環都市の構築など、「21世紀の新しい都市創造」に強力に取り組むこととしている。このため、都市再生を図るために必要な様々な制度についても聖域なく総点検し、改革を行って参りたい。