平成13年9月20日
四病院団体協議会
現在の日本の医療提供体制は、世界的に見て良い制度である。
総医療費もGDP対比7%台と比較的安価であり、国民皆保険制度と受診の自由(フリーアクセス)の保証により国民にとって十分な医療サービスの利用が確保されている。
しかしながら、医療についての情報が十分に公開されず、日本の医療提供体制の良さが国民に十分に認識されなかったこと、国民の意見を吸収し反映させる制度を持たなかったこと、大きな欠陥がこれまで指摘されてこなかったことが、医療関係者をはじめ国民全体に変革への意識を惹起させえなかった理由として挙げられよう。
また、これまでの病院団体は、国より提示された種々の医療政策や制度の変更に際し、それぞれの事項ごとの対策を提案するだけで医療全体の方向性など広い視野に立ち将来像を論じて提言するような事は少なかった。
我々病院団体の使命は、国民に良質な医療を安全に提供するという理念のもと、その為の制度、提供体制を構築することである。医療提供者にとっては、努力したもの、良いサービスを提供したものが報われるような制度の構築である。
我々はこの使命を遂行する為に医療人としてのプライドを持ち、最大の努力をし、必要な改革に対しては強く推進するものである。
当然のことながら、医療提供側だけの都合で、改革を遅らせるようなことはすべきでない。
何の為の規制改革かを明確にすべきである。改革が目的であってはならない。
我々が目指すのは第1に「医療の質の向上」を目的とした改革であり、その為の規制改革を論じるべきである。第2に安全な医療の提供、第3に効率的な医療の提供を目的とする。
但し、効率性を重視するあまり、医療の質の向上を軽視あるいは無視する事があってはならない。また、経済・財政の視点のみの規制改革は、社会保障、医療の特質を考えると疑問であり危険であるといわざるを得ない。
規制改革を検討するにあたり、まず、理念・目的を明確にし、それを達成するためのストーリーを描くことが必要と考える。それにより具体的施策が決まり、それぞれの整合性が計られ、また、時間軸も明確になる。具体的施策の整合性、時間軸を無視し、拙速な改革を行うと目的に反して医療の質の低下を招くおそれがある事に充分留意すべきである。
以下に、〔具体的施策〕に対する意見を述べるが、その視点は「医療の質の向上」である。
何を目的としているのかを明確にする。医療の質の向上、標準化、統計処理の為…と明記すべきである。
審査強化、コストの削減を目的とすべきではない。
また、電子的方法によるレセプト提出を行うにはコーディングの推進、統一フォーマットの作成等が必要である。
入院医療に関しては、国際疾病分類(ICD)によるコーディングを行う。
広告規制の改革は行うべきであるが、そのためには医療機関が質の情報を出すような基盤整備を行うことが必要である。
医療の質の向上、標準化、コストインセンティブが働くような支払い方式であれば、どのような支払い方式でも良い。
公民ミックスの定義が曖昧である。混合診療とも受け取れるが、何を指しているのか理解できない。
公的医療保険の対象範囲の見直しについては、慎重な議論が必要である。
統一した会計基準が必要である。現状では経営主体間による比較ができない。
新しい項目として追加する。当然、医療機関と同じ会計基準とする。
保険者の実態の把握及び保険者のあり方の検討から行うべきである。
「また、保険者と医療機関で契約による診療報酬の引き下げや同一報酬で追加するサービスを行えるようにする」は医療の質の向上の視点から反しており、削除すべきである。
現在の参入医療機関の実態の把握及び分析を先行すべきである。
国公立・公的・医療法人・その他法人・個人の医療機関の競争基盤の整備を行うべきである。
営利、非営利、営利法人、非営利法人の定義を明確にした上で議論すべきである。
医療法人制度の改革が必要である。
責任の所在、質の担保等の検討が必要である。