第9回総合規制改革会議 議事概要

1. 日時

平成13年9月20日(木)16:30〜19:00

2. 場所

合同庁舎4号館共用第1特別会議室

3. 出席者
(委員)

宮内義彦議長、飯田亮議長代理、神田秀樹、河野栄子、佐々木かをり、鈴木良男、高原慶一朗、八代尚宏の各委員、河北専門委員

(政府)

渡辺大臣政務官

(事務局)

[内閣府]坂政策統括官、岡本審議官、竹内審議官、磯部審議官、吉原事務室長、長屋事務室次長

(関係団体等)

略 (下記議事次第参照)


議事次第

  1. 関係団体等ヒアリング

  2. その他


議事概要

1.関係団体等ヒアリング

(○:関係団体発言部分、●:当会議委員発言部分)

(1)四病院団体協議会

<説明>

○ 現在の日本の医療提供体制は、世界的に見て良い制度。反省点は次の二つ。

○ 一つは医療情報公開不十分の為、日本の医療提供体制の良さが国民に十分に認識されなかったこと、国民の意見を吸収・反映させる制度の不備、大きな欠陥が指摘されなかったことが、変革意識を惹起させ得なかった。もう一つは、これまで病院団体は医療全体の方向性など将来像の提言が少なかったこと。

○ 「中間とりまとめ」は、何の為の規制改革かを明確にすべき。医療の(1)質の向上、(2)安全な提供、(3)効率的な提供に資する規制改革を論じるべき。

○ 効率性重視で医療の質の向上を軽視してはならない。経済・財政の視点のみの改革は社会保障、医療の特質から疑問。具体的施策の整合性、拙速な改革は目的に反して医療の質の低下を招くおそれがある。

○ 「原則電子的手法によるレセプトの提出」は、原則賛成ながら 目的を明確にすべき。「医療の質の向上、標準化、統計処理のため」という観点を明記すべき。審査強化、コストの削減を目的とすべきではない。コーディングの推進、統一フォーマット作成等、基盤整備が必要。

○ 「カルテの電子化・EBM・医療の標準化などの推進」は、原則賛成ながら 最低でも入院医療に関しては国際疾病分類(ICD)コーディングが必要。

○ 複数の医療機関による患者情報(カルテなど)の共有、有効活用の促進が必要。

○ 日本医療機能評価機構を含む第三者機関による医療評価の充実・公開が必要。

○ 「医療機関の広告及び情報提供に係る規制の抜本的見直し」は、原則賛成ながら 医療機関が質の高い情報を出すような基盤整備が必要。

○ 「定額払い制度の拡大」について、出来高払いと定額払いには一長一短がある。医療の質の向上、標準化、コストインセンティブが働くような支払い方式であれば、どのような支払い方式でもよい。提言のDRG-PPSは米国型でありPPS以外のやり方もある。日本はDRGを踏まえPPS以外を遣るべき。

○ 「公民ミックスによる医療サービスの提供等、公的医療保険の対象範囲の見直し」は、公民ミックスの定義が曖昧。混合診療であれば問題。賛成しかねる点が多く、意見を控える。公的医療保険の対象範囲の見直しについては、慎重な議論が必要。

○ 「医療機関の経営情報の開示」は、当然この方向にこれから進むべきと考えている。問題は経営主体別で会計基準がまちまち。統一した会計基準の導入が是非必要。

○ 「保険者の経営情報の開示」を追加希望する。医療機関と同じ会計基準とする。

○ 「保険者機能の強化」は、レセプト評価しかないように読み取れるが 他にも重要な機能がある。実態把握及び保険者のあり方の検討から行うべき。「保険者と医療機関で契約による診療報酬の引き下げや同一報酬で追加するサービスを行えるようにする」は削除すべき。契約で診療報酬を引き下げるのはおかしい。上がる場合もある。

○ 「医療機関の経営形態の多様化、理事長要件の見直し」は、現在の参入医療機関の実態把握及び分析を先行すべき。医療機関の競争基盤整備を行うべき。また、営利、非営利、営利法人、非営利法人の定義を明確化の上議論することが必要。非営利は日米でも定義が異なる。株式会社方式と明記すると議論の範囲が狭くなる。多様な経営形態として検討すべきである。医療法人制度の改革が必要。

○ 「医療資機材の内外価格差の是正」は、産学官の共同議論必要。

○ 「医療分野の労働者派遣について」は、責任の所在、質の担保等の検討が必要。

<意見交換>

● 何の為の改革かは、医療の質の向上である。自己責任強化と言う意味で民間保険にしても良い訳で、産業としての医療が必要。

● 経済財政の視点は持たないわけにはいかない。国民皆保険制度は支払能力あっての話。コストについては決してむやみやたらに引き下げろとは言っていない。コストダウンはどこの産業でもやっている話。

● DRG-PPSのみを意味していない。

● 公的には賄えないものがあり、私的なもので補っていくのが有意義と言う意味。

● 参入は、株式会社に限定しているわけではない。多様な参入を可能にすることが必要。

○ 文面からは委員が今言われたことは読み取れない。今言われた事を明記して欲しい。医療費とは、総医療費全体を意味しているのか、保険医療費のみか、明記して欲しい。

● 総医療費のつもり。公的部分は限界がある。

○ 民間保険の在り方については問題ある。現在の民間保険には加入制限がある。これそのものも改革の対象になるのではないか。

● 公は伸ばそうとしてもこれから伸びないという認識。民間保険については、改める点が色々あるのは判る。リスクとってやるのは行き過ぎと言うのも判る。支払い渋りということがあればこれは改めるべき。

○ セイフティネットはできるだけ高いところに置いてほしい。高度医療でなくても、保険が効かない治療法には特定療養費で対応すれば救済できるものがあり、検討して欲しい。

● 全くその通り。現行では一部でも自由診療となると診療の全てが自由診療扱いとなるのが問題ではないか。混合診療も医療産業全体のパイ拡大に繋がり、良い事と思う。

○ 保険者との契約も問題。契約医療機関以外の機関にかかったら保険は払わないということか。

● 保険者の推薦病院以外へのアクセスは患者の自由。情報提供や紹介サービスを行うということ。


(2)日本医師会

<説明>

○ わが国の医療は国際比較をすれば、比較的小さなコストで大きな成果を得ている。少なくともマクロ的には成功している。その要因は (1)国民皆保険、(2)現物給付、(3)医療の非営利性を守りフリーアクセスを実現し、医療の質を担保している事、が挙げられる。これらを捨て去る政策には危機感を覚える。国民に青写真が示されずに議論されているのが心配。

○ われわれが到底受け入れられない考え方は、命の値段を付けるという点。その典型例は、株式会社の参入と患者からチップを貰おうという混合診療の問題。市場経済オールマイティという考えには首肯できない。研究開発分野については質と価格の関係は成り立つ。患者も医療機関側も期待は最善の治療、という最善の原則がある。

○ 市場経済オールマイティについての異論。医療現場に競争原理が通じない。

○ 市場原理と競争原理がイコールフッティングで議論されているが、現状でも競争原理は十分機能すると考えている。現在でもアクセス制限はない。患者は医者を選ぶ権利があるが、医者は患者を選べない。提供される医療の質による競争は現状でもあると考える。問題があるとすれば、どう情報を共有化するか、そこにあるのではないか。情報の共有化が出来れば競争原理は機能出来る。現在の大きなテーマは、いかに正確で客観的な情報を公開し、患者がそれを的確に評価できるかである。

○ こうした基本的考え方に基づき医療制度の整備を進めた結果として、わが国は、(1)WHO健康寿命ランキング世界第1位、(2)世界一の平均寿命、(3)世界一低い乳幼児死亡率、(4)経済規模に比較して低い医療費等において世界的な高い評価を得たことを忘れてはならない。

○ データベース化を進める日本健康情報センターの立ち上げを準備中(資料2の10ページ参照)。

○ もう一つの課題としてIT化をどう推進するか。オープンリソースの概念の元、オルカ(ORCA)プロジェクトを推進(11ページ参照)。

○ 個々の医療機関内におけるIT投資を行っているが、ネットワーク化へのインセンティブが問題。全国的なネットワーク化を図るとすると、ごくごく控えめな見積もりであるが、毎年1.8兆円、10年間で18兆円。誰がどう負担するか、今後の大きな問題(14ページ参照)。

○ 各医師会に設置されている診療情報の提供に関する相談受付の集計結果に依ると、これまでの相談受付は5000件以上で、そのうち65%は診療内容に関するもので、診療情報の提供に関するものは10%しかなかった(17ページ参照)。

○ 医療の安全確保に関し、日本医師会としては医療安全推進者養成講座を開講している。委員の手元に9巻からなるテキストがあると思うが、600人が通信講座を受講し、来年は1,000人を予定(21ページ参照)。

○ 10〜15年先にどういう先端医療が臨床の場で使えるか、ある意味では予想不可能であるが、将来の医療給付の区分け案を整理したもの(30ページ参照)。

○ 保険者機能の評価。被保険者は健康か病気かで2つのグループに分かれる。1つは健康で費用負担をする者の立場であり、もう一つは患者の立場。当会義では健康をベースにしていると見受けられる。HMOに対する患者権利を求めた法案が米上院で提議。どちらにスタンスをおくかで在り方は変わる。真の保険者は国である(35〜36ページ参照)。

○ 生涯教育に対する取組みについてまとめた。医者は勉強していないのではないかという声を聞くが、医者も勉強していると言いたい。ここでは北海道医師会の例を挙げている(47ページ参照)。

<意見交換>

● 「命に値段はない」というのは賛成するが、この言葉はスローガンになり過ぎてはいないか。このスローガンを掲げて実は医者の平等をねらっているとすれば、それは如何なものか。典型的なものは株式会社と混合診療だと仰っているが。市場原理がオールマイティではないという点は私どももそう認識している。医療の競争原理をアクセスの自由、選ぶ権利あるという点に求めているが、アクセスは義務であり当たり前の話。これをもって競争とはいえない。色々な施策をやっておられる点は評価するがそれが囲い込むことにならないようにお願いしたい。

● IT化の費用は年1.8兆円と仰るが、人によって数百億円から数十億円と幅があり、何がオリジナル・コストに入っているかが不明。IT化の効用は非常に大きく、医療経営に効率化が出てくる。現状では効率化の入口に一歩も入っていない。オンラインで結んだらどんなに楽か。

● 医療は受益者と負担者が必ずしも一致しない。情報開示に可能な限りのお互いが切磋琢磨する仕組みが必要。医師会の情報開示に対する姿勢は評価する。

● 混合診療をチップを取る医療と言われる意図がわからない。税金で維持出来ないと言う状態の中、保険で出ない医療でも金を自分で出したいという患者がいる時になぜそれが規制されるのか。患者は恩恵を受けるし、医者は収入が増える。医療のパイも増える。産業としての規模が広がる。医療費はGDPの7.5%で効率的と言われるが、もっともっと増やしていいのではないか。皆がハッピーになる方向に持っていきたい。

● 42ページに株式会社参入の結末の表があるが、本当に医師会はこれを信じているのか。外資参入や資本調達競争の発生のどこが問題か。質が悪ければ潰れるのは当然。これは少し観念論に過ぎないのではないか。この手の話は何度も聞かされたが、もう少し本当の医療はかくあるべし、という議論がしたい。国家レベルでの政治的影響力の行使とあるが、現在の医師会の方が影響力あるのではないか。

● 43ページの表(営利法人の参入が医療費高騰を生むメカニズム)の意図するところは何か。株式会社経営の病院だけに配当コストが加わるというご説明だが、これと比較すべき医療法人の銀行借り入れコストはどこに計上されているのか。

○ 混合診療については、診療行為ではなく「費用」の混在と言う趣旨で私どもは話した。

○ なぜもうけの話に医師会が乗らないか、委員の話はそこに尽きると思うが、私たちは患者に最善の治療をすることを、患者は最善の治療を受けることを望み、それを阻害しないということが前提。今95%以上の医療行為が保険の対象。米国でもMIT経済学者クルーグマンが「5万ドル出せば受けられる治療があるが、口が裂けても命に値段を付けるとは言えない」と述べており、アメリカでもそう言うことは受容れらない倫理がある。10〜15年後のわが国においても基本的な倫理が変わるとは思わない。

○ IT化について、囲い込みにならないようにという意見があったが、18兆円の根拠については、15〜16ページにあるが全国の診療所にアンケートを行い、病院については実際導入の際のデータをもらい推計を行った。アバウトにやったということではない。

○ 株式会社の参入については、我々は観念論ではなく実際的な議論をしている。類似の事例では、介護保険での株式会社導入でヘルパーの不足がおきた。民間参入がおきすぐに退出した為である。このようなことが医療の現場で起きては困る。NHK BS討論でもやったが、株式会社である医療経営コンサルタントが入った病院では「不採算の救急と小児医療無くしたら黒字になった」事例があったが、こういう処理が本当に望まれるのか。株式会社による訪問看護ステーションの事例でも、質の良い仕事をやっていた人たちが、企業の方針と合わなくなってやめさせられた。

● 医療法人の大部分は個人財産と病院財産とが区別できないという意味では個人企業と同じ組織形態。個人企業は良くて株式会社ならなぜ問題が起こるというのか。

● 医療法人が銀行借り入れする間接金融なら良くて、資本市場で調達する直接金融ならなぜ悪いのか。48ページでは患者の選択によって医療法人の経営が駄目になるというが患者の選択で医療機関が選択される状況が何故悪いのかご説明願いたい。

○ 日本では諸外国と異なり、有床診療所が再生産コストを積み立てて大きくなりそれが病院となった。診療報酬に再生産コストを要求したい。金をどこから調達すべきかの議論は、株主は何を期待して投資するのか、に尽きる。撤退が容易となる仕組みを医療の世界に入れる方が問題。

● 株主が利益追求を強いるから儲け主義経営になるというが、銀行は医療法人が赤字になっても借金を取り立てる。株主は赤字であれば配当を諦めるだけではないか。資金調達方法の違いだけで営利性を定義することに意味はあるのか。


(3)日本保育協会

<説明>

○ 中間報告を読み、いても立ってもいられない気持ちになり日本中から11名参上した。

○ 総理の諮問機関として国の最高水準の説得力のあるものを期待したが、がっかりした。日本の将来を託す子供たちの人づくりの基礎事業を産業と同一視して、日本経済の活性化、市場原理、雇用創出、と言った大人社会の都合主義に合わせ経済論理でやるのはおかしい。

○ 大都市の一部に限る問題を全国の問題としてとらえ、民間企業の参入が救世主のようにとらえた論法は偏見であり、怒りを感じる。保育者は一生懸命にやっているし、子供たちも我慢することが多く健気である。そうした現場を無視したやり方は、悲しい。(1)基礎構造改革が必要なことは認識、(2)ほど良い環境の中で競争が必要と認識、(3)公立保育所の改革が必要なことは認識するが、以下の点で疑問が残る。

○ 第一に、主人公が不明。財源の分配法を審議するとしても、誰のために、誰の立場に立った改革かという視点が必要。子供を中心に据えた議論でなければ国民の理解が得られない。

○ 第二に、待機児童解消策は課題であると承知。この問題は大都市の一部で短期的な問題。全国的に一般化することで問題が解決するとは思わない。地域性の強い保育所問題は、国と地方自治体の役割分野を明確にすべきだ。待機児童解消の為に法律で定めた最低基準を更に下げる改革案は絶対受け入れてはならない。

○ 第三に、民間企業参入には絶対反対とは言わないが、保育所の事業主体には公立、社福、民間、認可外と多数種類があり資産、税制、会計基準等、それぞれ異なるのに、元来対等な競争にはなり得ない。それぞれの性格に合った役割を明確にすべきだ。民間参入が行われれば全てが解決するのかのような国民に錯覚を与える言い方は問題。ダブルスタンダードは誤解を生むので絶対反対。

○ 第四に、社会福祉法・児童福祉法が改正され、情報公開、第三者評価、等新しい制度が導入された。改正制度が機能することで既存の制度が改善されることが期待。そういう改善をキチンと評価せずに「まず民間参入」というのはおかしい。

○ 最後に、直接補助は安易であり、危険であり、時期尚早。もっと議論が必要。

○ 委員のメンバーを知って驚いた。総理の諮問機関の委員が経済界だけなのは何故か。福祉も保育も知らない委員が決めるのは問題。雇用対策のために保育分野を産業扱いするのは将来に危険を残す。10〜20年先どんな人間を育てるかを考えて議論すべきではないか。育児能力、家庭養育機能の弱体化に視点を当て議論すべき。私たちは親のみでなく地域の親のニーズに対応してきたので、民間参入があっても自信がある。保育の場での競争とはどういうことか。一般産業のように競争させさせれば良いということではない。選ぶのは親であり、利益をあげることを目的とした保育所を親は選ばない。見た目の良い保育が横行し、早期英才教育、園同士の子供の取り合いなどが起こる可能性あり、全く賛同できない。

○ 公立保育所について供給側の対応の遅れが問題と言うが、都内は年齢別の定員を盾に入所制限しており、こちらから手をつけるべき。都市部では認可施設に入れないために認可外施設を利用し、高い金を払っているが、都市と地方では認可外施設の利用の仕方に違いがある。地方では25,000円〜30,000円と認可外の方が安いので認可外を選ぶ人もいる。本来このような利用者に補助の手が差し伸べられる必要はない。全国一律に助成するという議論はおかしい。

○ 地方から見て判らないのは待機児童の言葉の定義。認可施設に入所しながら、第一希望の認可施設を待つものも待機児童とよぶのか。

○ 直接補助、直接契約については、地方を含めた全国の利用者を見た場合、成熟した存在とは思えないので反対。また、東京の問題である。育児能力の低下、保育料の滞納の増加、保護者の判断能力は低下している。過疎地も多くあるという現実を踏まえた直接的対応を望む。

○ 自由競争原理が必ずしも子供のためにはならない。年寄りの介護と子供の保育は別物。介護の制度が変わったからということで、保育分野も同じ扱いはおかしい。これ以上の競争は過当競争。職員は疲れ、仕事に対するプライドを失い、しわ寄せは子供に行く。

○ 育児機能の低下は子供にどのような影響を与えているか。人間本来の刺激、考える、感じ判断し行動する力は赤ちゃんの時からある。その機能の低下は心ない親の増加によって歪んだ育ちの子供が増えている。育児休暇を終えて仕事に戻る母親の子供を預かる時に、生まれて1年も経つのに歩けない、立てない、寝返りが出来ない子がいる。2歳6ヶ月の障害児として受入れたが、それも親の育て方であって、障害児ではなかった例もある。現場では治療的な視点でかかわり支援している。若い保育士のみでは到底子供を守りきれない。蓄積された知識や技術を備えて、損得無しに対応している。社会福祉法人の認可保育所を軽視しないで欲しい。

○ 保育士の立場から話をすると、子供たちは自分では選択できないので平等な保育をしている。保育士は子供の本当の幸せと育ちを願い、保護者も子供も丸ごと受けとめていく専門家としての総合保育力が求められている。コストを抑えて、経験年数の少ない臨時の保育士では満足な保育は出来ない。経験、力量などバランスのとれた職員配置が必要。

○ 待機児童は都市問題である。第2希望に入れるのに第1希望で待機、というのもあるので待機児の実態は定かでない。託児所的に預かるという印象がある民間が増えるのみでは解決にならない。保育所だけでなく、企業でも子育て中の人の勤務時間や子供の病気時に看護休暇がとれる体制等にも配慮すべきだ。

○ 調理室の必要性について、生活時間の乱れ。遅く寝る為朝食を取らない子が増え、一人で食べる子が増えており、食べる楽しみ、食べる意欲に欠ける子供が増えている。外部委託で栄養面では配慮できても食べる楽しみや食欲などには十分な対応はできない。保育所給食は、そういった子供に対しても誇りと愛情を持ってやっており、感謝の気持ちと心の育ちを重視したこまめな対応が可能。

<意見交換>

● 我々も子供の利益を第一に考えて報告書を作ったことに理解を願いたい。

● 待機児童は都市の一時的な問題ではない。待機児童は認可外保育所を利用している23万人以上の問題であり、一時的な話ではない。認可保育所は世界一のサービスだが、その半面で極めて劣悪な環境にある子供がいる。こうした子供は一時的なことだからといって供給を増やさなくていいということはない。現実に存在するダブルスタンダードの保育所の低い方にいる児童を救うことに主眼を置いている。

● 親の判断能力を過少評価していないか。親は本来保育内容の高い方を選ぶものと考えられないか。民間保育所が入ってきても負けない自信があるというのなら、なぜそれを排除する規制に賛成するのか。親の判断能力が低く事業者の判断能力が高いと何故言えるのか。保育士が頑張らなくてはいけない、だから規制が必要というロジックだが、保育所の多様な選択肢を規制した方が規制しないより子供にとって良い理由は何か。

● 民間企業が参入は冒涜というご意見があったが、それは利用者が選ぶ事ではないか。大事なことは企業を含む多様な主体が競争してサービスの質が上がることだ。

● 以前に、認可保育所は休日保育を何故やらないのかと聞いたら、福祉の専門家から休日くらいは親が子供の面倒を見るべきだと言われてショックを受けた。休日働かなければならない人がいることを無視していないか。

● 親より保育所の方がよく判断できるというなら、政府の規制強化が不可欠となる。ニーズに応じたサービスを提供するのが産業で何故いけないのか。なぜ企業経営の保育所の保育士はだめで社会福祉法人の保育士だとよいのか。利用者にとっては何よりも保育所の供給を増やすことが大事と考える。

● 今2歳と7歳の子供がいるが、今日の皆さんの考えは全く同意見。私も無認可はだめ、公立を増やすべきという意見。委員リストで判断しないで欲しい。悪い企業もいればよい企業もいる。悪い社会福祉法人もいればよい社会福祉法人もいる。産業界の論理でこの委員会がうごいているのではないこと理解してほしい。

● 認可外の保育園に今子供が一杯いることが問題。ある意味では無知かもしれないが、そういうところに預ける親がいる。民営化の流れが止められない現状の中で理想ばかり掲げていてはいけない。私は免許制とか設置基準を設けたいと思っている。すでに自由化された産業であるならば、きちっとした最低基準を決めなければならない。ご賛同頂けないか。

○ 都内の公立の話は、以前の充足率は78%ときく。25%の上乗せ分を含めると解決すると理解する。やむを得ない場合日曜日は受容れるが、一方で日曜日くらいはという心情もある。そうしたことを踏まえて制度作りを考えて欲しい。

○ 改革論は待機児童解消の前にメインテーマを語るべきであり、論法が国民に誤解を生む表現になっているのではないか。殆ど大都市の問題であり、地方の問題と区別して議論して欲しい。民間参入もいいが、最低基準を落とすことはやめてほしい。

○ 東京は公立全て悪いわけではない。品川区では様々なサービスを提供している例がある。自治体の長が考えてくれればいろいろなことが出来る。公立では子供が半数近くに減っても職員が減らされてないところもある。そうしたところをまず整理する必要がある。

○ 親の判断基準は損か得かと言うこともあり、中身の判断は出来ない親もいる。保育所が頑張れば頑張るほど家庭の養育機能が低下している。全て保育所が抱え込めよ、だから数を増やせと言う考え方には反対。

○ 親の判断能力について保育所の、公立、認可、無認可別には理解されていない。保護者に意見を聞いたところ、親の気持ちとしては子供ともっと付き合いたいが、働く企業が労働条件を緩和してくれなければ無理という声が大勢。調理室をなくす声についても反対。最低基準を下げることについても反対。無認可に行かせていた子供が認可に来て表情が明るくなったとも聞く。

● 問題は無認可にしか行けない親、子供を救いたいと思うかどうかだ。

○ 全国6割を占める公立保育園の改善、整備が第一ではないか。認可保育所の果たす役割は明確になっていると思うが、これについても理解してほしい。

○ 「少子化への対応を推進する国民会議」で少子化への対応が課題。新エンゼルプランで認可保育所の果たすべき課題も推進されてきている。一方企業において有能な女性を使うことは企業の利益にも通じ、女性が働きやすい環境というのは男性にも働きやすい環境になる。企業の経営者にもこの点、是非検討してほしい。

○ 最低基準や保育の中身については、総合規制改革会議で議論するよりも旧中央児童福祉審議会のような専門的機関で検討されるものではないか。

○ 日本経済の活性化の問題と子供の健全育成の問題とごちゃまぜにして議論していることに無理がある。一緒にすることは次元が違う。最初からかみ合う話ではない。

● 当会議で保育の中身を検討しようということはない。制度を作るという視点で議論をしていると理解頂きたい。


2.その他

次回は、10月1日(月)15:00〜17:15に、合同庁舎4号館第1特別会議室にて、米国、経団連、EUからの意見・要望等の聴取をおこなう。

以上

(文責 総合規制改革会議事務室


内閣府 総合規制改革会議