日本労働組合総連合会からのヒアリング

<説明>

○資料1「総合規制改革会議『中間とりまとめ』に対する連合の意見」に基づき説明があった。総論的事項に関する要旨は以下のとおり。

・ 現在の状況は、労働者にとって先行き不安が高まっている状況であると受け止めている。日本国民の8割を占める勤労者とその家族が安心と安全で安定した生活を1日も早く見通せるような社会改革を行っていく必要があると常日頃感じているところである。

・ 経済活性化が必要であるとの認識は同じであるが、現在未曾有の高い失業率に見られるように労働者は雇用不安に直面しており、国民の安心・安定を確保しながら経済活性化を進めることが是非とも必要であるというのが連合の最上位の考え方である。

・ その趣旨から考えるに、貴会議の「中間とりまとめ」は規制改革による効率化の促進との考え方が前面に打ち出されているが、その前提として安全の問題、労働基準の問題、サービスの維持の問題、これらをしっかり確保しながら規制改革を進めていただくことが大切であって、逆に不安を起こすということでは問題を生むことになると指摘したい。

・ なお、そのような観点も踏まえたものと思われるが、「中間とりまとめ」においては事後チェックルールの整備が取り上げられており、我々も意を同じくしている。情報公開、第三者評価あるいは苦情・紛争処理がしっかり社会的に整えられる必要があると考える。しかし同時に、これらの事後チェックルールは社会的・公的にしっかりと確立されなければ、安心・安全・安定に繋がらないとも考えており、単なる自主規範としての事後チェックルールでなしに、しっかりした社会的・公的ルールを確立するという視点での具体策を伴った規制改革を行うべきであるとの指摘をしたい。

<質疑応答>

[○委員又は政府側発言部分、●団体発言部分]

○事後チェックルールについて連合が積極的に考えていることは、当会議にとっても大変有り難いこと。特に意見書にあるように医療、介護、教育分野について情報公開を推進すべきといったことや、医療、介護、保育、教育分野についての第3者評価の実施が必要といったことなどの事後チェックルールの整備については、是非我々を応援していただければと思っている。
その上で2点質問したい。
1つ目は、労働者派遣の規制について、先般当会議の雇用労働WGにおける連合からのヒアリングでは、従来からの派遣規制の根拠としての「常用代替」の考え方よりは、むしろ派遣労働者の労働条件の担保や派遣労働者のためになるようなルール作りが大切だと考えている趣旨の発言があった。もしそうであれば、例えば派遣労働者の安全衛生や賃金等の労働条件が、しっかりと定められ、かつ事後チェックがしっかりと行われれば、派遣期間規制や対象業務規制は論理的に言えば必要ない。連合の意見を伺いたいのは派遣労働者の労働条件についての合意形成がなされ、またそのルールが担保されるのであれば、連合として派遣期間、派遣対象業務についての枠(規制)は外して良いという我々の考え方に同意されるのかどうか。
2つ目は、職業紹介の問題は現在、雇用問題が非常に深刻であり、また今後構造改革の中で労働移動の円滑な推進を図っていかなければならない中で、むしろ労働者の利益のためにも出来るだけ労働市場に雇用情報が行き渡るようにするということは異論のないところだと考える。そうした観点からハローワークにももちろん頑張ってもらう必要があるが、民間の職業紹介が活性化されることが労働市場の機能を充実させる上で不可欠であり、したがって、紹介予定派遣も含めて職業紹介についての規制は、出来るだけ〜これは先ほど一部緩和したから様子を見てという意見も表明されたが〜ゆっくりではなくて、もう少し早急に規制の緩和を進めることが労働者の利益のために不可欠だと思っている。
特に求職者からの料金徴収については、確かにILO条約の中に「求職者からの手数料は原則禁止」となっているが、実はその後ろに但し書きがあり、「労働者の利益になる場合にはこの限りではない」という規定になっている承知している。したがって、例えば求職者が不当な料金を取られないようにするように料金規制を行い、その上でハローワークという一定水準の無料のサービスが全国一律に行き渡っているというセーフティネットが担保されていれば、料金徴収の規制を設けるべきではないと考えているが、連合としてはその上で、なお求職者から手数料を取るようなサービスに関して規制すべきと考えているのかどうか。現状は、芸能家・モデルおよび年収1,200万円以上の科学技術者・経営者だけが自分で料金を払う職業紹介サービスの恩恵を受けられるようになっており、これ以外の労働者は自ら料金を払ってこういったサービスを利用できなくても良いと連合が考えておられることについて我々としては理解に苦しむ。
また、特に紹介予定派遣についても確かに今のルールではあまりに早く採用活動をすることは禁止されているが、これについても、もともと紹介が予定されているのであれば、より一層採用活動などについての規制を見直すあるいは撤廃していくことが大切ではないか。

●3つある。1つ目は、冒頭申し上げたように今現在の実態を見ていただきたい。実に様々な問題が存在している。基本的な問題に係わるトラブルについては労働者サイドだけでなく、使用者サイドも抱えている実態がある。したがって、まず今の枠組みの中でどのように労働者に安心感を与えるかということ抜きに改革する時期ではないだろうと考えている。
2つ目は、我々としては派遣機関を労働についての需給機関と考えているが、労働者需給といった場合に、市場と言うからにはどんなものであれ対等で交渉し得る、あるいは均等の一物一価のルールがあるといったルールの存在が大前提である。市場、市場と言われているが、一体誰が使用者サイドと対等で交渉できるのか、だからこそ労働組合は対等で取引を成立させるべく集団取引のためにある。そのための条件を整えるのが先だろう。連合の改革案は、(労働者使用者間の一対一での対等な交渉が)一企業で完結しないとすれば、どういう社会的インフラなり、システムを作るべきなのかということについてのものである。連合としては(労働者使用者間の一対一での対等な交渉が)一企業で完結し得ないから、市場任せ、企業任せという考え方には与しない。
3つ目は、労働移動するときに残念ながら今は言わば吐き出しだけである。受け皿がない。エンプロイ(employ)アビリティと言うがハイア(hire)ビリティが落ちてしまっている。全て構造に問題が言われるけれども、まず予見を整える中でルールの問題も労働移動の問題も考えていかなければならない。したがって、現在関係審議会あるいは関係分科会で当事者同士が議論しており、実際なかなか意見が合わずに苦労しているが、その過程を見守っていただきたい。

○現在の実態について良く見るということには賛成であるものの、最近の厚生労働省の調査によっても派遣労働者等は派遣期間の規制緩和を、多数の人が望んでいるという結果が出ており、連合においても併せて考えていただきたい。

●我々としては、働く人が長く安定して働きたいということと派遣契約の期間延長とは別問題だと思っている。現に今でも派遣契約期間と実際に働いている人の雇用期間は違う。仮に延びたとしても雇用期間は3ヶ月になるかもしれない。したがってデータはそうかもしれないが、そのことは、より安定した仕事に就きたいという気持ちの表れであって、それが派遣期間の延長にストレートに繋がるかと言えばそんなに単純なものではないと思っている。

○今の解釈はやや曲解であって、派遣労働者の希望を素直にそのまま聞き取っていただきたいと思う。
また、規制改革特区に関しては連合からの意見を以前に聞いていた内容とはやや違っており、例えば「特区の適用期間は10年から20年以上とするべき」や「地域活性化が主目的」といったことなど、我々への激励の言葉と受け止めたい。
なお、特区において弊害が生じてはいけないのは当然のことであって、十分な代替措置を前提に規制緩和を試みるということであり、この点でも連合とは意見の対立はないものと感じている。

○株式会社問題については、従来より「株式会社は儲け主義」という一辺倒単純な論理であったのに対して、今回色々と気付くべき点としてご提言いただいているのは歓迎であるが、利益は何のためかという点については、より一層のご理解をお願いする。すなわち株式会社は利益を単純に、また恣意的に配分するということでは本質的にないものであって、より良い財とサービスを、より多く供給するために利益を追求していることが株式会社の基本である。その点を理解して頂かないと本件は進んでいかない。
高度先進医療の分野における「混合診療」に対する意見であるが、今まさに公的保険だけで進めていくことはもはや出来ない。実際、世界的に行われていることが日本では出来ておらず、我々はそれを打破するということを掲げているが、本件に経済的格差を持ち込むというのはいかがなものか。例えば、国民全てが粗診しか受けられないということで良いのかという問いに対してどう答えられるのか。

●特区については、地域の活性化、地域住民の安定を主目的に据えて欲しいということであって、もし我々と貴会議が同じ考えだとおっしゃるのであれば、是非とも規制改革が「主語」でなく、「地域の活性化」を主語にしていただきたい。なお、その際には安心や安全ということについて地域住民の努力が活きる制度として作っていただきたい。
株式会社問題については、社会的サービスの分野で守るべき最低限の安全や消費者保護であるといった質を維持できるのかという条件が大事であって、むしろそのことを中心に考えて欲しい。


内閣府 総合規制改革会議