EUからのヒアリング

<説明>

○資料2「日本の規制改革に関するEU優先提案」に基づき説明があった。要旨以下のとおり。

・我々の提案書は長年にわたるEUの規制改革の体験や経験を反映したものである。EUの規制改革に関する考え方を述べる上では、決して自分たちの弱みや欠陥に目を瞑るということであってはならないと我々自身考えている。すなわち、EUにも既得権があり、それを克服することが必要であって、「良薬口に苦し」とはどこでも同じである。

・ 提案書は長くもあり、また大変技術的な部分にも及んでいることは承知しているが、我々が主たるメッセージとして投げかけているものはシンプルなものである。すなわちビジネス環境へのconfidence(信頼)というものをどうやって強化していくかという問いに対する答えを示している。日本という極めて重要な経済圏に、外からより多くの投資がもっと円滑に流れ込むために必要で、かつ正しいことは何かというメッセージである。

・ 個々の提案について詳しくは述べないが、特に2つのメッセージに照準を当てたい。
1つ目は、EUから日本への投資を行う際のコストの高さの点である。2つ目は、日本の投資環境における透明性、予見性。これら2つの点は互いに深く関わりあっていることは言うまでもない。
実際、ヨーロッパの潜在的投資家が日本の状況を見て投資決断をする際に、2つのことを考えるだろう、それは「投資の実現性」であり、「投資の利益性」である。これらを満たすには条件がある。すなわち市場状況の知識を(投資家が)持っていること、特に日本の規制の在り方を知ることである。そしてそれは透明性の問題でもある。実際、EUにおける約71%ものビジネスマンが投資先国のいわゆる透明性の欠如が投資上の一番大きな障害になると答えている。
そういった状況をどうやって是正していくかということについては、本日のペーパーの中で幾つか提案をしている。

・ 是正の手段の中で、申し上げたい1点目は、これまでのEU規制改革提案には入っていなかった「情報へのアクセスの確保」である。すなわち日本の記者クラブ制度がジャーナリストによる情報への自由・公正なアクセス上のバリア(障壁)になっているという点に注意喚起したい。

・ 2点目は、「信頼できる包括的な法務サービスの提供の枠組みが必要」であるということである。日本に完全な形で統合された国際的な法律事務所、すなわちローファームが欠如しているということは、日本の企業がより広い経済領域の中で事業を考えていかなければいけない時に必要とする包括的な法的知識を求めるような日本企業にとってマイナスであるばかりか、外国からの日本に進出する企業にとってもマイナスである。現下、日本の司法制度改革推進本部の下でより良い制度への改革・変更に向けた機会が開かれていることは大いに歓迎すべきことである。それにより日本と外国の弁護士が、よりしっかりとした適切な形で提携が出来るような状況が生まれることを願っている。誤解をしないでいただきたいのは、我々が提案していることはアメリカ式の弁護士主体の社会システム・法務制度ではないということである。しかるべき司法制度が導入され、それに基づいて日本の状況がしっかりと把握出来るとともに、外国人の弁護士が日本における活動、その市場に適切なアクセスが確保されるということに尽きる。

・ さらに、日本への投資に際して投資家が望むことは、日本の意思決定制度に関してより多くの知識を持っていたいということではないだろうか。
詳しくは申し上げないが、例えば、どのように経済界あるいは市民社会が日本における意思決定に影響力を持つのか、関与しているのかということが重要なポイントであろう。この点から欧州委員会2001年7月に作成した「欧州のガバナンス」に関する白書に皆様のご注意を喚起したい。この白書は、グローバライゼーションの世界にあって、今後行っていかなければならない興味深い討議に対して有益な土台を提供すると思う。

・ 加えて投資家の欲求は、この外国(日本)の市場にいかに一番良い形で入っていくか、最善の条件は何であって、どこまで可能かということを知りたいということであろう。
この観点から、EUは投資に関する単一のアクセスポイントの創設を強く提案している。すなわち投資家が情報あるいは投資基盤を求めていく時の助けとなる手段として、いわゆるワンストップショップを通じて全ての必要な認可や投資候補地に関する情報が得られるような一本化された窓口の創設を強く提案したい。

・ 投資の手法としてM&Aがあるが、このM&Aにおいてもヨーロッパの企業は日本において問題に直面している。複雑な制度、税金の問題が大きく負担となっている。この観点から税的に中立性のある株式交換型の企業買収が可能な制度の創設を提案させていただきたい。投資家自体にとってのプラスのみならず、かかわった企業全体の競争力の向上を上げるという効果を生んでいるのも事実である。
この点に関し、経済産業省がいわゆる三角合併の提案をしていることを歓迎している。その上で本件が規制改革特区の構想にどう適合していくのか、説明を日本側からいただきたい。

・ 競争規則の厳格な存在もいうまでもなく重要であるが、我々は執行の強化に係る最近の動きを大変関心持ってフォローしている。とりわけ公正取引委員会を内閣府の下に移す計画に関心を持っている他、公正取引委員会竹島委員長が最近提言されている罰則の大幅強化についても大変な関心を持ってフォローさせていただいている。

・ 手続きも極めて重要である。パブリックコメントやノーアクションレターの導入など一定の措置をしてきていることは承知しているが、実際的には成果があまりあがっていないと言わざるを得ない。

・ 「より良い規制」というのは必ずしも「より少ない規制」を意味するわけではない。競争があり、フェアな市場環境を作るための本当の必要性を満たす規制を作るということである。そうしたルールはシンプルでなくてはいけない。信頼性はあってもフレキシブルでないといけないと同時に、差別が排除されるような規制でなければならない。

・ この点に関しても、日本の政府は正しい方向での前進をされていると思っている。
しかしながら証券取引法65条に代表されるように、いわゆるファイアーウォールの存続を認めるような規定が未だ残っており、EUとしてはそもそも掲げられた規制改革の目標に反していると思っている。

・ 提案書においては、日本が消費者を保護する意味での日本独特のニーズを根拠とする数多くの障害を列挙している。例えば化粧品、食品添加物、切り花 そして今回初めて挙げさせていただいた血漿などである。もちろん独特な状況を否定するわけでは決してない。回避しなければならない事は、消費者が混乱するといった状況や小売業者が複雑な規制・規定に対して犠牲を伴う再調整を余儀なくされるという状況ではないか。

・ 今や規制は国際化しており、日本における最も競争力を有する企業は、企業自体が国際的な基準に適合しているばかりか国際基準を作り上げていく中心的な役割をも果たしている。

・ EUにも同じ事が言えるが、最も競争力がある産業こそが、グローバルスタンダードを採用している産業であるし、また域外からの直接投資も一番多く誘致している。

・ 日欧が共有しなければいけない責任、日欧がそれぞれの能力を大いに発揮する目的というのは国際経済の更なる活性化という目的のためである。この背景があるからこそ日欧が共有の責任として環境整備を行い、起業の促進を図り、より良いビジネスの機会を提供していく努力を続けていくわけであるが、その中においては、フェア−で競争力ある市場環境を確保するためにWTOのルールに則り、多国間の貿易制度に基づくということが極めて重要である。

・ 我々の規制改革提案書には極めて重要な問題に関する我々としての回答を盛り込んでおり、我々の抱える課題について前向きかつ有益な対話を引き続き皆様と実施していくことを望み、期待している。

<質疑応答>

[○委員又は政府側発言部分、●団体発言部分]

○EUは常に統合の過程で構造改革を続けており、それが現在の繁栄に繋がっていると思う。現在、日本も同じような形で構造改革を進めているわけであるが、例えば提案のあった三角合併についても検討していきたい。

●委員のおっしゃる通りである。今後とも、このような新しい要素に関する情報交換・意見交換を密にさせていただきたい。協力こそがキーワードではないか。オープンな意見交換をする、すなわちこれまでのノート、経験を比べあうということが重要であって、そのような協力を経てこそ今一度我々の経済を活性化させる契機になると信じている。
なお、特に規制改革特区に関心がある。素晴らしいアイデアと思うが、規制改革全体の枠組みの中でどう取り扱われていくのか知りたい。

○規制改革特区は今年に始まった新しい試みであり、これまで社会的実験が許されなかった日本の仕組みの中で、少しでも新しい制度を試みることによって全体の規制改革を促進させようという考え方である。今年は第一歩であるが、様々な形でビジネスの効率化を図るための提案が出てきており、これらを実現することが全体の規制改革を促進させる一つのステップになると考えている。

●EUとしての、今のご説明に対する正式な応答をする立場にないが、個人的な印象はテストグランドとして極めて良いアイデアではないか。規制改革を行動で示してみるというアイデアが突破口となって全体的な他の多くの経済分野に必要な改革の波に波及されることが考えられる。


内閣府 総合規制改革会議