労働者派遣業務の医療分野(医師・看護師等)への対象拡大について

 (厚生労働省医政局出席者入室)

○宮内主査 大変お待たせいたしました。それでは残された時間内で本日の第2のテーマでございます「労働者派遣業務の医療分野(医師・看護師等)への対象の拡大」、このテーマにつきまして、厚生労働省と引き続き意見の交換をさせていただきたいと思います。 本テーマにつきましては、篠崎医政局長は国会の都合でおいでになれませんでした。御関係の皆様方においでいただいております。ありがとうございます。
 本テーマにつきましては、資料2の3ページにもございますように、当会議の昨年来の第2次答申におきまして、医師等の派遣については1.社会福祉施設では今年度中に措置する。
 2.医療機関等では平成16年中に結論を得る。このように記載されております。
 その後、厚生労働省は構造改革特区の第2次提案を受けまして、医療機関等について、平成15年度中と結論時期を前倒しされているとお聞きしておりますが、実施時期につきましては、明確化されておりません。そのような事情がございます。
 資料1にもありますように、厚生労働省はかねてより医師等の派遣が認められる等、チーム内でのお互いの能力が把握できなくなり、問題であると御主張されておりますが、当会議としましては、これだけ医師不足が深刻化する中で、派遣される医師等は、一応有資格者である上、その能力等についても、あらかじめ医療機関側が指定できるため、弊害は小さいと、このように考えている次第でございます。
 それでは、そういう点も踏まえまして、まず厚生労働省から御説明をちょうだいいたしまして、その後、意見交換をさせていただきたいと、このように思います。
 それでは、よろしくお願いいたします。

○榮畑厚生労働省医政局総務課長 厚生労働省医政局総務課長でございます。常日ごろから大変お世話になっております。厚く御礼申し上げます。
 それでは、資料に沿いまして、医政局の医事課長の方から御説明させていただきます。

○中島厚生労働省医政局医事課長 初めに労働者派遣法につきましては、既に御承知のことと思いますけれども、派遣事業の対象業務については、平成11年の改正により原則自由化されて、その中で港湾運送と建設・警備業等と並んで医療関係職種の行う業務についても適用除外とされてきたところでございます。
 これにはそれぞれ業種ごとに事情があってこのようになっているわけでございますが、医療関係業務につきましては、医療スタッフによるチーム医療の下で、相互に十分な連携を図りながら業務を遂行する必要があるということで、派遣制度そのものになじまないということから、このような取り扱いにこれまでなってきているというふうに理解をしております。
 今回、その取り扱いを改めるべきであるという御意見をいただいておるわけでございますけれども、原則的な見直しを行いました平成11年当時の状況と比べまして、医療現場において今日問題となっております医療事故、医療安全の確保ということが大変大きな課題ということでございまして、むしろ医療関係者間での十分な連携の確保がより重要になってきているという面もあるではないかと認識しております。
 こういったことから、このような状況の中で、国民の理解が得られるのはどのような在り方なのかという視点からも慎重に検討する必要があると考えておるところでございます。 お手元の資料に基づきまして、若干説明をさせていただきたいと思います。
 まず、1ページ目の「労働者派遣法上の適用除外業務の位置付け」についてでございますが、先ほども申し上げたように、原則的に労働者派遣事業の対象が自由化されているわけですけれども、その上で適用除外業務というものが限定列挙されております。個々の業務につきましては、政令で各資格ごとに列挙されているということになっておりまして、参考の施行令にありますような形で医療関係業務が規定されているということでございます。
 2ページ目でございますが、このたび社会福祉施設等への労働者の派遣については、これを認めていこうということでございますけれども、現行、医療関連職種については、一律に派遣禁止ということになっておりますが、それを社会福祉施設等における医業は解禁ということで、(2)を除いて派遣を解禁しようということでございます。
 (2)の引き続き派遣を禁止という業務につきましては、病院、診療所、助産所、介護老人保健施設、医療を受ける患者の居宅というようなものでございます。
 これにつきましては、公布の日ということで平成15年の3月末を予定をしているということでございます。
 3ページ目でございますが、規制改革の関係では先ほどもお話がございましたように、派遣規制の見直しということで、平成14年12月中に規制改革会議の答申の中に、このようなことで盛り込まれているわけでございます。
 社会福祉施設における医療関係業務につきましては、できるだけ早期に結論ということで、14年度中できるだけ速やかにということで先ほど申し上げたようなことですし、医療関係その他の職種におきましては、16年度中に結論ということでございましたが、次の4ページにまいりまして、医療分野の労働者派遣についての基本的な対応方針ということでお示ししておりますように、第二次答申を踏まえまして、更に検討いたしました結果、社会福祉施設等における医療関係業務の派遣につきまして、今年度内に措置をするということと併せて、医療機関における関連業務に対する派遣についても、15年度中に結論を得るということとしているわけでございます。
 5ページ目でございますが、医療機関における派遣を検討する上で課題としてどのようなことがあるかということでございます。主としてチーム医療の観点ということで、以下のような問題を考えておりまして、社会福祉施設当における派遣の影響、あるいは効果の分析とか関係者の意見も踏まえた上で慎重に検討していく必要があるのではないかと考えております。
 具体的な中身としては、医療機関側が医療スタッフを事前に特定できないということ。 2つ目は、スタッフの移動が頻繁になるということで、職場でのコミュニケーション不足から医療ミスにつながる恐れがあるのではないか。
 3つ目は、派遣会社の都合によりそのスタッフの異動を余儀なくされる恐れがあり、これもまたチーム医療に影響を及ぼすのではないか。
 4つ目は、派遣労働者は派遣元企業の職員でありながら、医療機関の指揮命令下に行うということになりますので、医療提供上の責任の所在という観点からこれらが分散をする、責任の所在が不明確になる恐れがあるのではないかということでございます。
 6ページ目でございますが、こういった問題を考える上での医療サービスの特徴ということでございますが、人の生命、身体を預かるサービスが医療であるということ。これは申し上げるまでもありませんが、その医療というのは一人の医師の活動だけでは完結をいたしませんで、他の医師、看護師、理学療法士などのスタッフとの連携があって初めて成り立っているということ。
 そして、安全な医療の提供には細心の注意が必要で、できるだけの努力が必要であるということでございます。
 次に参考資料として2つほどお付けしておりますが、1つは、病院・診療所、社会福祉施設等における医療従事者の数の比較でございます。過去には申し上げませんけれども、ここに挙げておりますように、医療施設においては大変に多い数の従事者が業務に従事をしているということで、これらに与える影響が非常に大きいということでございます。
 それから、その次の8ページでございますが、これは「ヒヤリ・ハット事例における発生要因」ということでございまして、我が国の病院について見ますと、この表にはありませんけれども、500 床以上の病院というのが大体全国で500 病院程度ございまして、そこで行われる医療行為、日々行われる医療行為ということですけれども、そういうものについて見ますと、入院患者でいくと、140 万人程度が入院をしている中で、診療行為などから手術とか麻酔とか注射、放射線治療などのようなものが生命に直接危険が及び得るような行為について見ますと、1つの病院当たり1,500 から2,000 回くらいの頻度で行われているということですけれども、危険な行為が日常的に行われているということでございます。
 そういう中でこの8ページの資料でございますが、ヒヤリ・ハットということで、ひやりとした、はっとしたという事例を安全の観点から収集分析をしておるところでございますけれども、その中で見ますと、この問題を考える上で重要な医療関係者の連携という項目については、左の表で行けば、上から6番目、網掛けのような形になっておりますが、全体の6.4 %ということで、かなり大きな比重を占めているということでございます。こういったことからも、医療においては連携が非常に重要な要素であるという認識を持っているということでございます。
 以上のようなことを含めまして、今後、この問題についてはできるだけ早急にということではございますけれども、慎重に検討を進めていく必要があるだろうと考えているところでございます。
 以上でございます。

○宮内主査 ありがとうございました。それでは、意見交換に移らせていただきたいと思います。鈴木さん、どうぞ。

○鈴木副主査 これは私が2001年に厚生労働省と話して決着がついている問題です。非常に心外なのは、2001年の答申、つまり一昨年の答申ですが、そのときには、医療分野における労働者派遣を認めるということで、完全に一致していたのです。そして、そういう答申を書いて、閣議決定されているということですから、これはもう既定事項なのです。
 したがって、ここで議論するまでもなく、粛々と厚生労働省はこれを実現するということのみが厚生労働省に課せられた責務なのです。それが何とかという審議会にかけたとところ、福祉関係に限定するということになって、逆転してしまった。福祉関係での医療従事者の派遣を認めればそれで閣議決定を満たすと言わんばかりの曲解した議論をしてこられるから、仕方がないからもう一回取り上げたのですが、本来取り上げる必要もない、既定の問題だと私は思っております。
 まず、2001年の答申を受けて、閣議決定をされたら、審議会にかけるときには、こういう閣議決定を受けているのだから、その方向でどういうふうに派遣労働というものを制度設計するのかという、そういうふうに諮問をするのが当たり前のことです。かつて運輸省が需給調整規制の全廃をやったときにも、そういうふうにして審議会にかけているのです。需給調整規制は撤廃するが、その後の措置はどうするのかということを諮問しているのです。そういうふうに厚生労働省は諮問するのが当たり前なのに、どういう諮問の仕方をしたのか。そこで、福祉だけになって戻ってくるというのは極めて心外です。
 ただ一つだけ厚生労働省と話したのは、例えば医師、看護師というような専門職から派遣をスタートするのはこれが最も望ましいが、いろいろな摩擦もありうるから、コメディカル、後ろの方から上に上がっていくということで、これは了承していることです。それが事もあろうに、福祉関係だけに限定するということは全くなかった話でる。私としてはこれは閣議決定違反ということであって、議論する必要もない話だけれども、しかし、どうしても福祉関係だけだと言われるから再度取り上げたということです。
 それから、チーム医療を害するというのも、聞きあきるほど聞いたのですが、派遣労働を許可したからといっても、それは病院に許可することだけであって、チーム医療を害すると思うのだったら、派遣を強制するわけではないのだから、その病院は派遣者を受け入れなければよいことです。普通、派遣労働というと、派遣される側、つまり医師の側、あるいは労働者の側からの身分という問題で議論になのんだが、ここでチーム医療云々とおっしゃっているのは、受け入れる側の経営の問題として言っておられるのだから、それは派遣を強制するわけでも何でもないから、チーム医療上問題があるというなら派遣労働を受け入れなければよいことです。したがって、どうしてこういうことにこだわるのかということだけ言っておきます。
 結論は、要するに決まっていることだということについて認識はあるのかということです。

○中島医事課長 これは先ほど申し上げたようなことで、こういった分野への派遣については、基本的に生命・身体に関わるということから慎重に進める必要があるということで当初福祉施設の関連の分野からということで、諮らせていただいたというふうに理解しております。
 その他の関係機関についても、これから順次検討を進めてまいりたいということでございます。

○八代委員 先ほどの御説明を聞きますと、あたかも今、病院において、正規の医者、看護師さんの数が十分あって、それを派遣労働者に代替すると関係者の連携が不足することで今より悪くなるという論理のように聞こえますけれども、本当にそうなのか。特に今、中小病院では、必要な医者を全部自分で雇えるというところは非常に少ないわけで、特に麻酔医などが非常に不足して、それが医療事故を起こしているといわれる。ですから、正規は雇えないけれども、派遣なら雇えるとすれば、それによってむしろ医療の安全性が担保されるのではないかという意見についてはどう考えられますか。
 それから、このヒヤリ・ハット例もそうでありますけれども、これだけ問題がある。私が聞いたところでは、例えば朝食時のときに一番看護師さんの負担が大きくて、事故が起きやすい、そういうときに例えば派遣労働者を使うことによって、もっと看護師さんを増やすことができれば、むしろ安全性は高まるのではないですか。これは病院の選択肢を広げることにすぎないわけで、なぜそれを禁止しなければいけないのかということを是非お聞きしたいと思います。

○中島医事課長 基本的に麻酔医も含めてですけれども、医師なり看護師、人が増えれば安全性が高まるというのが一般的に言えることだろうと私どもも考えております。
 その場合に、どうやって増やすかということで、これまではそういう不足に対しては、派遣という方法ではなくて、パートというような形でお願いをしてきたというのが医療現場の実態ではないかと思っておりまして、その場合に、どこが違うかということですけれども、それは最初の説明にもありましたように、事前面接の関係とか、あるいは個人を特定できるかとか、そういった問題もあり、パートという形で主として臨時のものは対応してきたんだと思います。
 そこで新たな派遣という業態を導入することについては、さっき申しましたような観点から、慎重な検討を要するということでありますが、その辺りについては今回の福祉施設における状況等も。

○八代委員 補足ですけれども、派遣はだめでパートならいいという根拠はどこにあるわけですか。中小病院がパートの医者を自由に選べるような状況ですか。そんなに医師は余っているのですか。自分が個々に採用するパートのお医者さんとか看護師さんではなくて、きちっとした専門の派遣会社が派遣する、しかも厚生労働省の認められた公的資格を持っている方が、なぜパートの医者よりも悪いのか。特定できないから悪いとおっしゃいましたけれども、きちっとした専門的能力、例えば麻酔医としての資格があれば、それは別に、例えば中島さんとか榮畑さんでなければいけないということは何もないわけですね。もしそれがだめなら、派遣法自体がナンセンスになってしまいませんか。

○中島医事課長 医療の場合は、資格さえ持っていればどこでも同じことをやって、それで済むということでは必ずしもないわけですから、そういう中で現状では。

○八代委員 なぜそうなのですか。

○中島医事課長 それは例えば手術などについても、それぞれ病院ごとに、あるいは術者ごとにやり方が微妙に違ったり、麻酔医のことを取り上げれば、麻酔に対する要求も異なっている場合が結構あるわけです。そういう中で現状では、その辺の状況がわかったところに頼んでいるというのか実態だろうと思うんです。

○八代委員 それは医療の未発達で、麻酔医などはきちっとした標準的な医療を確立するべきではないのですか。仮に、個々の病院で麻酔の仕方が違っていたら、それこそ危険ではないのですか。

○中島医事課長 危険なほど違っているかどうかという問題はありますけれども、それでもやはり手術のやりやすさ、やりにくさという問題もありますし、また、現在ではそういう形で派遣会社という形での麻酔医の供給なり、そういうものがありませんから、そういうものが一体どういう格好になるかということについては。

○八代委員 現状では派遣が禁止されているから、派遣会社もないに決まっているのではないですか。

○中島医事課長 ですから、そこはどういう形になり得るかということをよく見定めた上でないとなかなかすぐということにはなりにくいです。

○八代委員 闇でやって実績を作れといっておられるように聞こえますが、そういう医師の派遣としての供給があるかどうかは、まず規制緩和してからでなければ、できないのではないですか。

○中島医事課長 認定しなくても、それに類するようないろんな面での検討というのはあり得るかなと思いますし、福祉施設での経験というのも、そういう意味で参考になるんじゃないかと思います。

○八代委員 福祉施設では麻酔はしないと思いますけれども。

○中島医事課長 麻酔はちょっと別ですけれども。

○稲葉専門委員 何かフセインにならって小出しにするという感じを受けるんだけれども、我々がお聞きしていて、今は、この議論をしているのだけれども、前の保険医療の議論なんかをしているときは、医者というものは全部画一的で標準的だということを前提として厚生労働省は議論されているのですね。だから、一方でそういう議論しておいて、今度はこの話になると個別性が強いという話をされるのが、何かいろんな議論を都合よく使い分けされているようで、すとんと入らないんです。
 今日、2つ資料を出されていますが、私、この資料を拝見して何のために出されたのかな、どっちに都合がいい資料なのかなという気がするんです。というのは、最初の、これは実態だからいいけれども、医療従業者の数ですね、これはこんなに多いのですよというけれども、今度の改革でやるのはこれだけしかないのですよということを改めて確認しているようで、まだやるべきことがこんなにたくさんまだ残っていますよという資料ですね。
 次の「ヒヤリ・ハット事例」なんですけれども、これは連携ミスによるものが6番目だというのですけれども、割合からすると6.4 %なんですね。ところが、一番多い確認の不十分というのが31.7%あるのです。一般的な常識から言うと、これは慣れに伴って確認のミスが出てくるんです。だからこれは抽象論だけれども、慣れたチームでやっているからミスが多いということも相当あるのではないかと、この31.7%の中に。だから、これは新しい人を派遣事業で入れたら、連携ミスが出るばかりでなく、むしろダブルチェックになって、人が代わることによっていい影響も相当あるんじゃないかと、そういうこともいえる資料で、連携ミスだ、連携ミスだと厚生労働省さんはおっしゃるんだけれども、これによるのはわずかで、本当は確認ミスがこんなに多いのですよ。だから、厚生労働省さんの言っていることはナンセンスですよという資料に読めるのではないかと思うのです。
 皮肉を言うと、この連携というはひょっとすると気心が知れない人がいると、内部告発されるのが怖いからというふうに聞こえてしまうんです。こんな資料を見せられると。だから、資料の出し方ももうちょっと説得力のあるものを出していただきたいという感じがします。

○河北専門委員 私は、医療の現場から感ずることなんですけれども、かなり医療の職種というのは専門分化しているということは事実だろうと思うんで、今日の資料の中の病院、診療所、社会福祉施設等における医療従事者と書いてあっても、これは国家資格を中心とした資格者だろうと思いますけれども、それ以外にも今、安全管理であるとか、あるいは看護師でも何々専門看護師というふうに言われていて、そういう専門の人たちを医療現場がすべて確保できるかというと、非常に難しいわけです。
 ですから、やはり人材を流動化をするということは、決して好ましくないということではないというふうに私は思います。問題はそちらの方の意見で幾つかの問題が指摘されていますけれども、これは契約の仕方の問題と、それから病院自体の組織管理の問題であって、派遣であるからこういう問題が起こるということではないんではないかというふうに思います。
 もう一つは、事前面接、この派遣の場合に事前面接ができないということになっているようですが、それを変えればいいんであって、事前面接をして、あとは各病院がしっかりした組織管理ができていて、契約が明確になっていればこの問題は全く問題ないというふうに私は現場で思っています。

○宮内主査 どうぞ。

○宮川厚生労働省職業安定局民間需給調整課長 派遣法の事前面接の関係でございましたので、事前面接についての現在私ども派遣法を所管している立場からの考え方を御説明させていただきますと、今回紹介予定派遣ですとか、派遣労働者の特定関係も私どもの労働政策審議会においてさまざまな議論を行いました。そこで、紹介予定派遣につきましては、事前面接あるいは派遣就業開始前の面接や履歴書の送付、そういうものについては解禁していこうという結論に達したわけでございますけれども、それ以外の労働者派遣について認めることについては、引き続き解禁のための条件整備等につきまして、紹介予定派遣における派遣就業開始前の面接や履歴書の送付、そういう派遣労働者を特定することを目的とする行為の実施状況等を見ながら慎重に検討していくことが適当であるというのが、私ども労働政策審議会として結論だったということを御紹介させていただきます。

○福井専門委員 お出しいただいた資料で、他の医師、看護師、理学療法士などのさまざまな医療スタッフとの連携イコールチーム医療があって始めて医療サービスが成り立つとあります。これが派遣がいけないということの論拠のポイントなんでしょうか。

○中島医事課長 そうです。

○福井専門委員 そうすると、チーム医療というのは逆に言えば派遣の形を取らないような雇用形態であれば、常に担保されるのですか。

○中島医事課長 原則的には、そういうチーム医療として機能し得るということだと思います。

○福井専門委員 その理由は何ですか。派遣という形か、そうでないかによって、なぜチーム医療の成立条件が変わってくるんのですか。

○中島医事課長 医療を行う前の段階でのチーム間でのコミュニケーションがどれだけ取れているかということが派遣労働者と違うということだと思います。

○福井専門委員 派遣じゃない形でも、例えば来たばっかり、雇い入れたばっかりの人が医療チームの中にいるということはあり得るわけでしょう。それが法律で禁止されているわけではないですね。

○中島医事課長 勿論そうですね。

○福井専門委員 そうであれば、いきなり来た普通の雇用契約の人とか、あるいは普通のパートの医療関係者が混じっているときに、チーム医療の前提条件がおぼつかないということはあり得ないと言えるのでしょうか。

○中島医事課長 ですから、それは通常の新人教育とか、配置換えがあったらそのときのトレーニングということになるわけですけれども、それで終わりではなくて、やはり一定のトレーニングを経た上で、一定のチームで経験を積み重ねていくということが、より安全な医療のために望ましいということです。

○福井専門委員 経験を積み重ねることで、こういうチーム医療の齟齬を来す要件は除去できるということですか。

○中島医事課長 そういうことだと思います。

○福井専門委員 であれば、派遣で来た人に経験を積ませて、おっしゃるような弊害が除去できるまでトレーニングしてからチームに組み入れて、何か問題ありますか。

○中島医事課長 そういう格好が取れれば、その問題については解消されると思います。

○福井専門委員 ということは、雇用形態が問題なのではなくて、トレーニングの期間が問題だという理解でよろしいですか。

○榮畑総務課長 というか、しかし派遣はやはり派遣の限界がございますから、最初医事課長が御説明したペーパーの5ページ目にございますが、医療スタッフの異動が頻繁になって、結局そこは雇用者と派遣の場合との程度の差というのが出てくるだろうと思います。

○福井専門委員 しかし、パートタイマーの非常勤の医師とか看護婦というのは、本人がいつ辞めるかもわからないし、首切ることだっていつもでできるわけですから、同じことじゃないのですか。

○榮畑総務課長 そこは、しかし雇用されているような方と、派遣で異動というのが頻繁にある方との違いというのはあるんじゃないでしょうか。

○福井専門委員 その実態が違うという調査はされているんですか。派遣の人がどれぐらいのテンポで異動していて、パートタイマーや常勤の人がどれぐらいの年限で異動するという実態は把握されていますか。

○榮畑総務課長 実態というより、ものの考え方、性格論じゃないかなと思っております。

○福井専門委員 把握されていないわけですか。

○榮畑総務課長 現在数字を出せと言われると、私は今この机の上には持っておりません。

○福井専門委員 では、省に帰ればあるのですか。あるのだったら後ほどいただきたいと思います。

○宮川民事需給調整課長 医療についてないのは、当然今、認められてないからおわかりいただけると思いますけれども、一般的な意味での派遣労働者と通常の労働者との雇用期間、あるいは就業期間の差があるかどうかということですか。

○福井専門委員 そういうことですね。医療はないのだから、勿論わからないでしょうけれども。

○宮川民事需給調整課長 私、今すぐにそういう資料があるかどうかはわかりません。帰って調べてみます。

○福井専門委員 常勤か非常勤かの区分で、是非教えていただきたいと思います。

○宮川民事需給調整課長 あればということで、なければないということをお答えいたします。

○福井専門委員 そうしますと、今の御説明でも両課長の御説明、大分論理が違っているような気がするのです。要するに派遣の場合には異動を余儀なくされる、習熟期間が短いからだということになりますね。そうだとすれば、一定期間経験なりトレーニングを重ねて、その残りの期間であれば、勿論一回クリアーされたらそこからまた研修が始まるのかもしれませんけれども、一定のコミュニケーションが取れる期間なり、あるいはトレーニングをきっちりやれば、もともとが派遣だということは一切支障がない、という御主張をそのままおっしゃっているように思いますけれども、そういう理解でよろしいですか。

○中島医事課長 そういう面では、そういう理解でよろしいと思います。

○福井専門委員 だったら、そういう制度であればすぐに変えられるのですね。およそ派遣がだめだという主張は放棄されたということですね。

○中島医事課長 およそ派遣がだめだというふうに言っているわけではないと思います。それから。

○福井専門委員 前回の特区のワーキングと同じですが、これまでの一貫した御主張は、派遣だからだめだということをおっしゃっておられたのに、今日始めてまともな言い分を聞いたような気がしますので、であればそういうふうに変えることを検討していただいてはどうでしょうかという提案です。

○中島医事課長 あと先ほどの話で、パートと派遣でもそういう似たようなところがあるんですけれども、パートの場合は事前の面接ということで、慣れの部分をある程度病院の状況に合わせて選択できるというところはあると思います。

○福井専門委員 派遣の場合は、嫌だったらすぐチェンジできますね。チェンジした後、その人がうちの医療スタッフの一員にふさわしいという確信をチームのみんなが持って、その後にしかるべき研修トレーニングを経た後は何の支障もないのではないですか。

○中島医事課長 だから、その場合にはチェンジすべき人が来て、一定の期間の間が問題になるというふうには思います。

○福井専門委員 期間の長短はあるかもしれない。だけどそれは、およそ雇用形態が通常の雇用契約の常勤、非常勤と違うから医療スタッフになじまないのだということにはならないですね。

○中島医事課長 だから、そこは事前にスクリーニングできるかできないかというところが、かなり重要な要素になると思います。

○福井専門委員 事前に1回面接するのと、例えば2か月とか3か月働くのと、どっちがよくわかりますか。人となりや技術について。

○中島医事課長 それはケース・バイ・ケースだと思いますけれども、何もなしよりは。

○福井専門委員 ケースによっては、2〜3か月一緒に働くよりも、1回だけ面接する方がよくわかることがあるのですか。

○中島医事課長 定かではないですけれども、1回面接しても、これはということがはっきりする場合もあるという意味です。

○福井専門委員 だから、2〜3か月面接してもっとわからないということがあるかどうかということなのですけれども。

○中島医事課長 それはしばらく経ってから、あれというようなことはままあるかもしれませんね。

○福井専門委員 勿論そうだと思いますけれども、だとしたら派遣の人だって1か月と2か月とか仕事の様子は見られるし、必要ならそれからトレーニングを施すこともできるわけですから、派遣がそもそもだめだということは、恐らく論拠としても主張されないようにお見受けしましたので、だったらそういう制度改正の可能性も御検討されてはどうですかということです。

○稲葉専門委員 5ページ目の・ですね。これは何気なく書いてあるんだけれども、かなり大事なことが書いてあるように思います。医療スタッフの異動が頻繁になると医療ミスにつながる恐れがあるということですが、本当にそんなもんなんですか。
 そうだとすると、病院など異動期がありますね。異動期の後には医療ミスが多いというデータがあるんですか。あるいは、医療ミスが多いかもしれないから、何かそういうときには大きな手術は控えるとか、そういう方針でもあるのですか。こういう資料を見ていると、例えば4月、5月は病院に行かない方がいいなという気分になってしまうのだけれども、そういうデータがあるのですか。

○榮畑総務課長 今、手元にないんでございますが、8ページの「ヒヤリ・ハット事例」というのを、ずっと私どもここ1年半ぐらい集めておるところでございますが、これにつきましての発生時期、時間帯等々がございますから、その辺データとして必要ならお出しすることは可能でございます。

○鈴木副主査 今後のスケジュールですけれども、これは何とかという審議会に諮るのでしょう。何という審議会でしたか。

○榮畑総務課長 労働政策審議会です。

○鈴木副主査 そのとき、どういうふうに持って行くつもりなのですか。白地で持って行くつもりですか。

○榮畑総務課長 私どもも、この総合規制改革会議の議論等々、さまざまなところから医療に関する規制改革というような御指摘も受けておりますし、私どもの坂口厚生労働大臣からも医療における規制改革について、患者、国民の側、医療機関の側、両方から見てどういう規制改革の在り方があるんだろうかというのをちゃんと検討せいというあれもちょうだいしております。
 したがいまして、私ども早く言えば、厚生労働省の中でこの規制改革に関する検討会、医療分野における規制改革に関する検討の会のようなものを立ち上げまして、そこの中でこの問題も含めまして、できるだけ早く議論をして一定の方向性を出して、そしてそれを更に先ほど申しました労働政策審議会の方で、審議会としての正規の御検討をちゃんとしていただこうと。そういう2段階というか、まずこの派遣だけに限らず、規制改革全体を検討する場をできるだけ早期に立ち上げるということからスタートしたいというふうに考えております。

○鈴木副主査 この問題は平成13年度中に措置というのが本来の決定だったという事を忘れないでくださいね。白地で投げるというのは、さっき私が言ったように閣議決定違反もはなはだしいとろだということは、十分理解の上でやってください。厚生労働省は随分その他の点でも閣議決定をねじ曲げられていますので、今度は目を見開いて注視していますから。

○榮畑総務課長 私どもも、昨年3月の閣議決定なり、去年の暮れの第2次答申なり、それからこの2月、3月の動き等々で、そういう点では私どもその場、その場できちんとした判断をさせてきていただいておりますけれども、今お話しいたしましたような、規制改革の検討会の中で、この議論も含めましてきちんとした議論をさせていただこうと思っております。

○鈴木副主査 お願いします。

○宮内主査 どうぞ。

○坂政策統括官 事務局から、若干念のためなんですけれども、皆さん御理解の上だと思いますが、せっかく宮川さんいらっしゃっているから、派遣という制度の、例えば今度最高3年まで原則としていいとかとなっているわけですが、最高3年、例えば短い方はどこまでかとか、まずいときにどういうふうに取り替えられるのかとか、普通の常用雇用とどこが違って、どういうことができるのかということを一度御紹介いただいておいた方が、議論の基礎としていいんじゃないかと思いますけれども。

○宮川民事需給調整課長 それでは、私の方から概略御説明させていただきますと、そもそも派遣というものが認められた趣旨ということでございますけれども、昭和61年に今の派遣法が新たに施行されて、それ以前の状況というのは、こういう派遣元と派遣先と派遣労働者という三者関係をつくるような雇用形態というか、そういうものは一切禁じられておりました。労働者供給事業ということで、禁じられていたわけでございます。
 ただ、それがいわゆる事務処理サービスを中心といたしまして、実態として、形式的には労働者供給事業に当たるわけですけれども、労働者供給が本来禁止すべきであろうとしていた、いわゆる戦前からありました、建設業とか、製造業などにおきます、口入れというか、人入れ稼業的なそういうものとは違った形での、特のアメリカからまいりました事務処理を行う人を中心として労働者を派遣する、言わば派遣する仕組みというものが当時は請負という形を利用して行っていた、これは昭和61年以前の世界でございます。
 そういうようなものは、労働者供給の中で違法性が少ないのではないか、逆にある一定のルールに基づいて労働者派遣というものを認めていった方がいいのではなかろうかということで、労働者派遣を、常用労働者のみを派遣する場合には届出制、それ以外の、具体的に言うと今、派遣会社が行っておりますような、登録型を含めた派遣業を行う場合には許可制で、その際には例えば派遣法という法律をつくったときに整理いたしましたのは、派遣労働者の保護ということも十分考えるべきであるという観点から、例えば派遣法がなければ請負という形で、請負元の責任しかない。例えば、労働基準法上の責任ですとか、労働安全衛生法上の責任、これらのものにつきましても、派遣先でしか扱えないような安全部門、衛生部門というものについて、派遣法で派遣先に責任を負わせるというようなルールをつくることによりまして、労働者保護を図りつつ、一方こういう当時で言うと専門性の高いような仕事。当時は、今とは違いまして、いわゆるネガティブリストではございませんで、ポジティブリストだったわけでございますが、そういう専門性の高い仕事のようなものにつきましては、そういう派遣という形態を認めてもしかるべきではなかろうかと、派遣という形態を認める際には、先ほど申しましたように、一定のルールの下にやっていただきましょうということで始まったのが昭和61年以来でございます。
 その後、議論が大きくなりました一点が、いわゆる派遣の業務につきまして、そういうポジティブリストではなくてネガティブリスト、つまり派遣というものがふさわしくないもののみ以外は派遣を認めてもいいんではないかという議論が出てまいりまして、これが平成11年、ですから1999年の改正でございますが、その改正におきましてネガティブリスト化ができたわけでございますが、その際に大きな議論が2つございまして、この法改正で、ネガティブリスト化で認めた派遣の意味するところは何なのかということでございます。
 先ほど申しましたように、ポジティブリストのときには、専門性が高いですとか、特別の雇用管理が必要だということで、業務を限定する。この業務を前提することによって、実は常用労働者との代替を防止するという意味での常用代替防止、常用労働者との調和というのを図ってきたわけですが、そういう意味で逆にネガティブリスト化したときにはどういうふうな考えの下にこの派遣というのを認めるのかといった場合に、その際整理いたしましたのは、臨時的、一時的な労働力需要対策であるという形でございます。
 そういう形で法律改正を平成11年に行いまして、この三者関係のものを整理いたしまして、今回まさにこの3月に出しましたものが、期間制限を従来一律1年としていたものにつきましては、最大限3年まで延ばすことが可能であると。その場合には、派遣先の過半数代表者の意見を聞いていただくとか、それからものの製造につきましても、これは前回の平成11年度改正では禁止されていたものを解禁するですとか、その際には経過措置的に3年間だけ派遣期間は1年に制限すると、こういう改正が今回法律案として提出させていただいているということでございます。
 長くなりまして申し訳ございませんでした。

○宮内主査 それでは、時間が迫ってまいりましたので、それでは、局長、どうぞ。

○篠崎厚生労働省医政局長 それでは、医政局長でございます。ちょっと国会業務で遅れてまいりまして、大変失礼をいたしました。
 今、課長の方からいろいろ御説明を申し上げさせていただきましたけれども、私どもといたしましては、この平成11年に先ほど申し上げたような法律改正があって、そのスタンスで今、お話を申し上げているわけでございますが、法的な文言でディベートいたしますと、認めるという側と、いや認めたくないという側とどうしても議論がかみ合わないということが出てくるかと思いますが、申し上げたいのは、昭和23年ごろでございますが、ほとんどの医療法の関係の法律ができまして、医療についてはいろいろ事件が起こりますとその度に規制、規制と、規制が強くなっていく状況にございます。
 昨今、例えばWHO加盟191 か国の中でも、我が国の医療制度はかなり効率はいいと私ども自負をいたしております。平均寿命や健康寿命、その他を見ても世界一とか、あるいは非常にトップレベルにあるので、今までのいろいろな制度については、私どももある程度自信を持っておるというような状況でございます。
 また、医療につきましては、なかなかやってみればいいじゃないかと言っても、命にどうしても関わるものですから、やり直しがなかなかきかないというような不安の方も私どもの方にございまして、例えば病院でも人の命に関わるような医療行為というのは、投薬や注射まで含めますと、やはり年1日に万のオーダーでいろんなことが身体に侵襲を及ぼす行為をしているわけでございまして、そういうような状況からどうしても今までのような状況だったというふうに思っております。
 今、坂口厚生労働大臣の下で、医療制度の抜本改革をしなければならないということで、3月末までに一応の考え方を示すということで進んでおりますが、やはりそれには患者の視点、あるいは国民の視点に立った医療制度改革ということでございますので、先ほど榮畑課長からも申し上げましたけれども、そういう視点に立って今までのいろんな医療に関する規制も見直したいと考えておりまして、先ほど15年度中というふうに申し上げましたけれども、少し歩みを早めまして、6月中ぐらいには検討の結果を出したいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

○宮内主査 ありがとうございました。この派遣の問題につきましては、ただいまの局長のお話のように、非常に近い時期に検討の結果をちょうだいできるということでございます。考え方につきまして、今日の意見交換によりまして、更に深まったということでございます。それまでもまた私どもとの引き続き意見交換をさせていただきながら、私どもはやはり医療サービスの向上という意味で、派遣という問題は病院、診療所といった医療従事者の選択肢と言いますか、彼らの責任感というものを信頼しまして、こういう制度を持ち込むことによって、最終的な国民の医療サービスの向上につながるんではないかというふうに考えているわけでございまして、その辺もお含み置きの上、引き続き御議論をさせていただきたいと思います。
 国会中、大変お忙しいところ篠崎局長始め、皆様方おいでいただきまして、本日はありがとうございました。
 以上をもちまして、厚生労働省の公開討論を行わらせていただきます。

 (厚生労働省医政局・職業安定局関係者退室)


内閣府 総合規制改革会議