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意見照会に対する回答は,中間試案に対する賛否を明らかにして書かれたもののみではなく,また,試案の一部の項目についての意見のみ述べたものもあるので,第3では,原則として,試案に対し反対である旨を明示した回答の数及び主な理由,その他の意見のうち主なものを記載した。
なお,回答に当たり複数の意見を併記している場合には,それぞれを取り上げている場合もある。
長期修繕計画は義務付けられておらず,また突発的事態に対応した修繕も機動的に行う必要があるから注2の案には反対
大規模修繕の機会に大きな改良・改善を行うこともあり,これについては形状又は効用の著しい変更かによって決議区分を定めれば足りるので注2の案には反対
注2のように,費用の多寡に対する配慮と建物の維持管理の要請が調和するような要件を目指すべき
注2の案により,普通決議の対象となる「改良で多額の費用を要しない」の表現を具体的なものに改める(2件)
長期修繕計画の策定を義務づけ,普通決議でできるのは新たな費用の負担を求めることなくできる修繕に限るものとする
多額の一時負担金が生ずる場合の対処についての検討が必要(2件)
マンションの私的自治の意識を高めるため,本文の案に「ただし,規約によって別段の定めをした場合にはそれによるものとする。」を加える
本来修繕と変更は異なるから修繕は17条とは別の規定にすることも考えるべき
変更は特別多数決という原則を維持するのなら条文のかっこ内の修正にとどめるべき
敷地の境界確定請求及び住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく修補請求等についても当事者適格を認めるべき(4件)
試案の内容で限定列挙するより,包括的・一般的権能を付与すべき
区分所有者の特定承継人による権利の承継を規定すべき(4件)
受領金の帰属の問題を明確化しておく必要がある
管理者が受領した金銭が修繕等に充てられることを確保する措置が必要
各区分所有者による権利行使との関係の明確化が必要
建物の設置又は保存の瑕疵により他人に損害を与えた場合の当事者適格や責任財産の範囲も整備すべき
区分所有者が1人でも法人設立を認めるべき
区分所有者の数が一定以上の場合は法人化を必須とする
法人の管理規約も登記事項とし公開すべき
規定を設けるべきとするもの(10件)
一般条項でなく具体的な効力規定を設けるべき
専用使用権の存続期間を民法の短期賃貸借の期間に限定するようなみなし規定を設けるべき
一定の事項は原始規約でなく集会の決議で定めなければならないこととすべき
衡平を著しく害する規約は無効とし,著しくないものについては10年経過後に普通決議で変更できるものとする
第1回集会で原始規約の成立を確定させる規定を設ける
原始規約は管理組合設立総会の場で設定することとすべきで,設立総会までの暫定規約は標準管理規約に準拠して分譲主の責任で作成する
規定を設けるべきではないとするもの(6件)
民法90条によることで足りる
分譲時の取引法の問題であり,区分所有法で対処すべき問題でない
規約の安定性,信頼性を損なう
価額格差,階層別・位置別効用格差があり,区分所有者の考え方により定めるもので,法で一律に定めるものではない
書面又は電磁的方法による決議等をするのに区分所有者全員の承諾という条件は重すぎる
集会主義の原則が形骸化しないよう歯止めが必要
規約の電子化については,公正証書により作成する場合に関する摺り合わせが必要
本人確認,記録の偽造・改ざんの防止,バックアップ等に配慮が必要(10件)
決議賛成者の責任について検索の抗弁権に準じた主張を認めるべき(8件)
決議賛成者の責任について催告の抗弁権を認めるのが相当
決議賛成者の責任について検索の抗弁権等は認めるべきでない(3件)
決議賛成者の責任についても期限の猶予の規定を準用すべき
買受人の指定がない場合の再買取請求等を認めるべき
買取請求に応じた区分所有者からの償還請求を認め,決議賛成者全員が床面積等により按分した額を負担すべき
決議賛成者からの売渡請求も認めるべき
買受人の指定は全員一致でなく多数決とすべき(3件)
時価の算定基準を明文で定める
時価による買取でなく買取請求部分の転売後の清算とする
催告期間は2月が妥当(2件)
催告期間は6月が妥当(2件)
指定買受人からの催告も認めるべき
復旧決議に賛成しなかった区分所有者への参加の意思確認及び売渡請求権の発生時期の制度に改めるべき
復旧決議に賛成しなかった区分所有者の買取請求の制度(61条7項)は廃止し,自己の責任で任意の譲渡をするものとすべき
建物の一部が滅失した日から6月以内に復旧又は建替えの決議がない場合の区分所有者相互間の買取請求の規定(61条8項)は削除すべき(2件)
時価の定義を明確にすべき
建替え決議と同様,費用・負担額等を明示する必要がある
管理組合法人も指定買受人たり得る旨を明記する
甲案に賛成するもの(10件−30年:8件,50年:2件)
甲案の方が基準として具体的かつ明確である
乙案では適正な管理が建替えを阻害することになる
乙案では修繕計画廃止後建替え決議が否定された場合に問題(3件)
乙案に賛成するもの(9件−30年:1件,40年:3件,50年:1件,年数記載なし:2件)
建築後の経過年数のみをもって,管理運営状態の優劣にかかわらず建替えの可能性を認めることは妥当でない。
建築時に建物の実態に応じた建替え計画を策定しこれを区分所有者に提示することを義務づけるべき
ただし書きのうち「区分所有者に新たに費用の負担を求めることなく」は不要
いずれの案にも反対するもの
甲案・乙案とも客観的要件としての合理性がなく,老朽化の場合の客観的要件もイの乙案によるべき
その他の意見
40年以上経過したときは無条件に老朽化の客観的要件を満たすものとし,30年の場合は乙案ただし書きの要件を付す
年数は建物の構造・用途ごとに省令等で定める(2件)
甲案に賛成するもの(6件)
損傷等の場合は緊急を要する場合が多いから客観的要件を緩和しておいた方がよい
現在の建物の価額を超える維持・回復費用を要するときには建替え可能という方が区分所有者の心情に整合しやすい
建物の経過年数等による減価を判断基準に織り込むことは,個々の建物についての損傷,一部の滅失その他の事由がない状態を適切に反映し,事実を反映する
建替え要件をなす価格基準が低くなり規制緩和に適う
耐震基準に満たない場合も建替え決議ができる旨を明記すべき
乙案に賛成するもの(13件)
乙案の方が額を評価しやすい(3件)
建替えか修繕かの選択だからその費用の比較をするのが素直である
マンション建替え円滑化法に基づく建替え勧告を受けた建物は要件に該当するとみなす規定を置く(2件)
耐震工事に要する費用が新築費用の2分の1を超える場合は要件に該当するものとみなす規定を置く
2分の1を5分の2とするなど,建替えをより容易にする方策も検討に値する
損傷・一部の滅失等に関する判定制度を設ける
公正な独立機関を設置し調査等を担当させる
その他の意見
経年変化の場合は甲案,原始的瑕疵又は突発的な事故の場合は乙案の表現が適切
決議要件は4分の3以上とすべき(3件)
客観的要件は不要(4件)
使用目的の同一性の要件を完全に削除することには反対
敷地要件の緩和につていは,従前の敷地との重なりを20%以上とする等のしばりを入れる
説明会の開催を義務づけるべき(2件)
説明会は招集通知前に行うこととすべき
説明会の義務づけによる紛争を招くおそれがある(2件)
招集通知は2〜3か月前とする
資料の閲覧・謄写の権利の保障の規定を設けるべき
費用の概算額の通知には積算根拠も添付すべき(2件)
徹底した情報開示と説明会及び集会による区分所有者間の十分な意志疎通による合意形成の実現が必要
規約で建替え準備金が定められていない場合には管理費又は修繕積立金から建替えの準備費用を支出できることを規定する
敷地利用権の3分の2の多数決によることとする
決議要件は普通決議とし,団地内の単独所有建物の建替えにも適用する
反対するもの(2件)
団地では全体のマスタープランが作成されるのが通例であり,容積率の先食いなどの現象は現れない,不明確な条項は新たなトラブルを引き起こす
拡大解釈により建替えの阻害要因が拡大するおそれがある
その他の意見
「特別の影響」は,例示をするなどにより明確化,限定をすべき(8件)
全員の承諾でなく影響を受ける建物の区分所有者の特別多数決によるべき(2件)
「特別の影響」が不明確で,結局敷地共有者全員の合意がない限り団地の部分的建替えができないことになりかねない
団地全体計画(マスタープラン)を作成し区分所有者に示すことを義務づける
団地全体の計画に沿った建替えであれば各棟の区分所有者の4分の3以上の多数決で建て替えできる規定を設ける
専有部分と共用部分の定義を明確化すべき
大規模建物の管理人室や集会室は法定共用部分とすべき
3条の団体は管理組合として法定し,法人格のないものにも最低限のルールを設ける(2件)
商法247条のような,集会や議決の手続の適正性の確保に関する措置が必要
修繕積立金等の分割請求を禁止すべき(2件)
一定以上の規模の管理組合には会計士等による監査制度を導入する
建替え決議後も建物が存続する限り区分所有者の団体は建物管理の責任を負うことを明記すべき
全部滅失の場合の再建決議に関する規定を設けるべき
老朽化・損傷・一部滅失があった場合には,区分所有者は復旧・建替え・一括譲渡(区分所有関係解消)のいずれの方法によっても対処できるよう法的整備を図るべきであり,その場合4分の3以上の特別多数決のみを要件とすべき。
区分所有権を解消する制度を検討すべき(2件)
団地内一括建替えの手続を定める規定を設けるべき
団地の集会において,団地全体の建替えマスタープランを決議できるようにすべき
マスタープランに対する一定の合意をもとに各棟の建替え決議を行う規定を定めるべき,団地内で建替え希望者と存置希望者が住戸を交換するなどして低資力者も建替え事業に参加できるような制度が必要
居住用の建物のみを念頭に置かず,汎用性のある法律への抜本的な改正を検討する