農林水産省との意見交換

○宮内主査 テーマは、1つが株式会社等による農地取得の解禁。
 2つ目が、株式会社等による農地のリース方式による農業経営の解禁。この2つのテーマでございます。
 本日は大変お忙しいところ、農水省より渡辺事務次官、並びに川村経営局長においでいただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 それでは、最初に私の方から、これまでの意見交換も踏まえまして、2つの項目につきまして、当会議の意見を申し上げたいと思います。
 まず、株式会社等による農地取得の解禁についてですが、当会議といたしましては、株式会社等が土地を取得した場合に、農水省が懸念されております農地転用や耕作放棄のリスク、これにつきましては、何も株式会社に限ったものではなく、自作農、あるいは農業生産法人にとっても同様であり、土地利用規制などの措置によりまして、対応することが可能であると認識しております。
 したがいまして、少なくとも特区において、株式会社等による農地取得の解禁を早急に行うことにしていただきたいと。このように考える次第でございます。
 次に、株式会社等による農業経営、これは農地のリース方式による農業経営でございます。これの解禁についてでございますが、当会議といたしましては、特区で既に認められたこうした農地のリース方式のような特例措置は、地方公共団体が直接民間の事業に深く関与し、当該事業をある程度保障することによって、弊害の発生の可能性を極力抑制しているような措置であると認識しております。
 したがいまして、こうしたタイプの特例措置は、全国規模での規制改革に速やかに移行することにしていただきたいと考えている次第でございます。
 ただいま申し上げました当会議の考え方につきまして、まず農林水産省の渡辺次官から最終的なお考えをお聞かせいただくということでお願い申し上げたいと思います。何分よろしくお願い申し上げます。

○渡辺農林水産事務次官 農林水産次官の渡辺でございます。宮内さんから2点、御指摘がございましたので、私どもの考え方を冒頭5分間ほど、資料もお配りをしておりますので、簡単に説明させていただいた上で、議論に入りたいと思います。
 資料の一番左の上でございます。およそ食料・農業政策を効果的かつ円滑に進めていくためには、3つの要素がきちんと調和をしていることが大事でございます。3つの要素というのは、経営と生産と地域であります。
 経営は今、主査からお話がありましたように、できるだけダイナミックにやるということで、私どももよい経営を育てていく手立てとして、法人化ということを食料農業農村基本法に掲げております。法人化の中での形態は恐らく最終的には株式会社ということになろうと思いますし、株式会社の利点はここに赤い字で書いてあるとおりでございます。 しかし、そのような経営体を育てたとしても、大宗を委ねると私ども思っておりますけれども、6割から7割程度の生産シェアであろうと思います。これはそういう展望をしております。
 次に、生産であります。今申し上げたように、6、7割のシェアの中で、日本の農地が農地としてきちんと活用されて、自給率を向上させていく。言うならば総生産を増大させるという点につきましては、この生産の部分におきまして、効率的な経営体のほかにこれを補完する生産の組織なり生産者が必要でございます。平成22年の展望におきましては、40万の効率的な経営体のほかに、およそ200 万のこれを支えていくそれ以外の方々が存在をする。これによって農地が農地として確実に使われていくということでございます。
 次は地域の問題であります。地域というのは、農村地域と言っていいと思いますが、これらの地域が健全に維持され発展していくということが不可欠でありまして、このこともまた、食料農業農村基本法の中にきちんと位置づけをされております。
 御承知と思いますけれども、我が国は13万5,000 の農業集落がございます。この集落の中をおよそ40万キロメートルの用水路、排水路が流れて、静脈のような形づくりをしております。基幹水路だけでも4万キロ、これはJRの全路線の長さ、あるいは国道の全路線の長さに匹敵するものでございます。
 こういったものをやはり地域全体として支えていく。日本の水需要でいきますと、900 億トンの水が使われておりますけれども、そのうち600 億トンは農地を通って下流、もしくは都市の住民に供給されているわけでありますので、この地域が健全に維持をされませんと、日本の水も食料もうまくいかないということでございます。
 こういう中でこの経営の部分に着目をいたしまして、法人に対する農地の利用権をどうするかという点が右側の上の欄でございまして、既に農地法の改正なり特区法によりまして、相当の制度改革を実施をいたしております。
 今申し上げましたとおり、1つの要素だけが満たされても、ほかの2つの要素が満たされなければ食料、農業の発展はあり得ませんし、逆に1つの要素だけが取り上げられたために、他の2つの要素が補完されないため、その当初目指した第1の要素そのものも効果が失われるということも念頭に置いて構造改革を推進中でございます。
 第1は、農地法の一部改正を13年に実施をいたしまして、株式会社形態での農業生産法人、これに農地の取得を認めることにいたしましたが、その株式会社としての農業生産法人は地域に根差したものという限定をしております。先ほど申し上げました地域の農業者ときちんと融和をしてやっていく。それから、地域の水その他の資源をうまく維持していくという点で、取得につきましては、地域に根差した株式会社ということでございます。これは順調に増加をいたしておりまして、現在42社に達しております。
 それから、株式会社一般と書いてあります。これは「一般」に意味がございまして、株式会社は勿論のこと、日本の資本主義社会の発展に大変な貢献をしております。これは株主の意向を最大限に尊重し、株主から資金を集めて会社を経営するということでございますので、株主の意向が最大の眼目でございます。したがって、そのような場合、株主の意向と農業の生産・耕地の利用というものがぶつかり合いましたときには、これが再びきちんと農地の保護に戻っていくというような措置をビルトインしなければならないわけでございます。
 そういう点で特区制度の活用の中におきましては、リース方式でやるとさせていただきまして、現在それが滑り出したところでございます。第2弾の特区の申請におきましても、同程度の要請が上がっております。
 繰り返しますが、貸付方式というのは、農地が耕作されなくなったり、他の用途に向けられると。そのようなことをきちんと防止できる装置としての方途でございます。
 いずれにいたしましても、特区制度が今始まったばかりでありますし、この特区制度の貸付方式によっても安定的な農業経営は十分可能でありますので、農業経営を行いたいとする株式会社の御要望には十分応え得るものでございます。
 メリットとデメリットを比較いたしました場合に、そのメリットを極力生かしながら、デメリットが生じないようにするというのが大事でございますので、私どもとしては、特区制度の実施状況等を十分に見極めながら、今後のことを考えるという点でございます。 左の下に現場の声が書いてありますが、その点につきましては、当グループとかなり相違点がございますが、現場はこういう意見を持っているということでございます。
 ところで、主査から御指摘がありました株式会社一般による農地取得の解禁について、幾つかの御指摘がありました。取得によるのか、賃貸借によるのかということで、貸借がいいんだし、いろいろな規制措置を講ずれば転用だとか耕作放棄の点についてのストップは効くだろうということでありますが、先ほど申し上げたように、株式会社制度そのものが持っている株主の意向の最大限の尊重、そして経営上これがペイしないということになれば、それを放棄をするというのは当然のことでありまして、都会における企業の遊休地の割合というのも、農村地域における耕作放棄地の割合とそんなに遜色がないくらい大きいものでございます。
 ことほどさように景気の動向や経営の状態によって、そこにおける耕作をペイしないものを終始続けるということはないわけでございますので、私どもとしては、農地のフル活用の点から、やはり取得という点につきましては、問題があるだろうと思っております。 最後に規制を強化すればということであります。この点につきましては、議論が相当分かれます。学会の通説は、これ以上規制を強化するということはできないというのが通説でございます。
 それから、規制の強化の場合に、リース方式と取得によって規制の効き方がまるで違います。リース方式であれば所有権はこちらにあるわけでございますので、回復が容易でありますけれども、ひとたび取得をし、私有財産となった場合に、これは極めて莫大な費用と膨大な時間を要するというのは過去の経験からも明らかでございます。
 以上、結論といたしまして、私どもとしては、農地が農地として効率的に耕作をされて、総生産が増大をし、自給率が向上する。その中で経営がよくなって地域が健全に維持・発展をするという観点からは、現状の農地法の改正による地域に根差した株式会社による農地取得と特区法による特区地域における株式会社一般によるリース方式での株式会社の農業参入が現状で、私どもが取り得る措置でありますし、そのリース方式の全国化の問題につきましては、まずはこの制度の実施状況を見極めながら、評価をしながら、後のことを考えたいと思っております。以上であります。

○宮内主査 ありがとうございました。それでは、ただいまの御意見に対しまして、農業を御担当いただいております八代委員からまず口火を切っていただきたいと思います。

○八代委員 ありがとうございました。今、渡辺次官の方から、株式会社の農地経営を認めると、こういう問題点があるということを詳しく御説明いただいたわけですが、私の最大の関心は、そうであれば株式会社の参入が認められていない現在で、なぜ農地がフルに活用されて、効率的に農業が行われていて、自給率が上がって、農地の転用が防止されていないのかということをまずお聞きしたいと思います。

○渡辺次官 それでは、またお話をいたしたいと思います。
 それは耕作放棄地が生じていることは事実であります。21万ヘクタールという面積はかなりの面積であります。しかし、この面積は社会学的、あるいは歴史的に見れば、本来はもっと2倍、3倍の面積であったはずであります。これを村落地域における農業地域における人的関係やこれまでの歴史的ないきさつ、そういう中で押しとどめて、かろうじて21万ヘクタールにとどめているというのが私は現状だろうと思います。

○八代委員 その農地転用が防がれているという根拠はどこにあるんでしょうか。具体的な根拠を述べていただかないとわかりませんので。

○渡辺次官 したがって、そういうふうなことのない、極めてドライな経営であれば、その点は、その数字がそのままストレートに出てくるであろうと思います。そこで実例を挙げます。
 私どもが例えば山間の谷の谷地田のところをどういうものができているかということを5年も10年もかかって見てきております。今から3年くらい前には何でこんなところに水稲をつくるんだろうか。何でそんな無駄なことをするんだろうかというふうなことを思っておりました。それが1年くらい前につくられているのを見て、ここでもおじいちゃん、おばあちゃんは元気だなと。それが今年そこへ行ってみますと、その田が放棄をされております。聞いてみますと、おじいちゃんが亡くなった。あるいはおばあちゃんの体が弱って田舎を出た。つまり、無理をして一生懸命先祖伝来の土地であるから、これはどうしても耕すのが義務である、責任であるということでやったものが集落内の構造です。それは経済学ではなく、むしろ哲学の分野かもしれません。

○八代委員 なぜこれまで株式会社を排除してきたら自給率が上がり、農地がフルに活用されたかという御質問と全く今は無関係のお答えをいただいたわけですけれども、今おっしゃったように、農地を効率的に経営するということを守るのが農業政策の1つの大きなポイントであるとすれば、なぜそれが自然人とか今の農業生産法人では可能であって株式会社では可能でないのかという違いですね。これについて繰り返し今までお伺いしてきたわけですけれども、それが単なる次官個人の信念というもの以外は全くこちらとしてはわからないわけであります。その点について、もっと説得的な、例えば外国の例とか、そういうものも含めて、なぜ株式会社が農地経営をしたら今より悪くなるのか。これまですばらしく成功してきた日本の農業政策が株式会社によって損なわれるのかという点を詳しく説明していただきたいと思います。

○渡辺次官 今2つ御指摘がありましたので、まず株式会社の参入を阻止してきたから自給率が上がったかという話は私たちしておりません。今、お話をしました中で、株式会社の参入を認めて、耕作者主義が今まで以上に生きるようにしようと。その限界はどこだろうかということでやったわけでございます。おわかりいただけましょうか。
 次に外国の例であります。これも前回、多分川村局長が話をしたと思いますが、アメリカにおける例、アメリカというのはヨーロッパよりも更に耕地の面積、あるいは開発可能な面積は広いわけでありますけれども、そのような国においても、参入ができる企業の条件というのは、例えば中西部においては極めて限定的であります。そこに住んでいる。10人以上株主がいてはいけない。中小でなければいけない。農業をやっている人でなければいけないという限定が付いております。
 その企業的農業経営の占める割合というのは、アメリカにおいてもわずか0.9 %にすぎません。つまり、ファミリーファームが主流であって、そして企業的農業経営というものはそれを補完するもの、そして、限定的にやるものであるということが実はこれはアメリカのような国においても必要であります。次にヨーロッパの例を申し上げます。

○八代委員 アメリカの例だけで結構です。
 次に、先ほどこれ以上規制強化ができないというのが通説であるという御発言がありましたけれども、例えばだれがそういうことを言っておられるのかということと、それから我々は何もこれ以上強化というより、今の農振法、農地法の規定をきちっと守るような制度をつくるべきだと農業WGの方でも指摘しております。今でも農地というのはそう簡単に宅地等へ転用できないはずになっているにもかかわらず、現にそうなっている。逆に言えば自作農の方が転用期待を持ちつつ、零細な農地を保持している。それがゆえに農水省の大規模な生産農家への農地集約政策というのが進まないわけです。そういう現状を踏まえた上で、なぜ株式会社だけが農地を転用して、キャピタルゲインを得ようとする。それ以外の人たちはそんなことを夢にも思ったことがないという根拠が出てくるのかということを聞きたいと思います。

○渡辺次官 転用以前に、耕作を放棄する蓋然性が株式会社一般では強いということであります。
 私どもとしては、例えば地域に根差した生産法人たる株式会社、これはやはり耕作を継続する可能性が強いだろうということをさんざん2年も3年も議論した挙げ句、こういうことを国会でも御審議をいただいて、ぎりぎりの選択として入れたわけです。株式会社一般ということについて言えば、これは資本主義の発達を支えてきた株式会社、この株式会社は株主の資金と株主の意向を反映して経営をやるわけですから、経営上ペイしない場合には、耕作を継続するということは、株式会社の持っている性格上あり得ないわけでございます。
 同時に、もし取得をされた場合に、この取得されたものについて私有財産権は発生しますから、これを買戻すということは、例えば大潟村で契約をして、国に買戻特約の付いた農地を取り戻すのに、相当長い年月と膨大な訴訟費用と、その結果、その地域で生まれた収益についても、全然回収できなかったというのが現状でございます。

○八代委員 それと同じことがなぜ自然人である大規模農家では起こらないのかということをお聞きしているわけです。

○渡辺次官 そこのところが先ほどお話をしました集落の中における社会的、歴史的つながりということでございます。
 これは私もう一点だけお話をしますと、農業集落という言葉がありますが、この農業集落というのは、農家がいれば農業集落ということではございません。その農家と農家の間に、あるいは農家と地域の住民の間に社会的、地縁的つながりがあるというのが定義でございます。

○八代委員 にもかかわらず、現に耕作放棄が起こっているわけです。耕作放棄というのは本来農地法では認められないのではないですか。耕作を放棄するならきちっと売るか、貸すかしなければいけないということではないのでしょうか。

○渡辺次官 ですから、そこは貸すことを十分指導しておりますが、その農地が、ここのところが大事ですけれども、かつてのように食べ物が足りないときに、耕して天に至るんであれば、それは耕作しましょうが、今、耕作放棄をしているところはどういうところかと見れば、1が高齢化、2が畑地の条件が悪い、日当りが悪い、規模が十分に拡大できない。そういうところでございます。したがって、それは今おっしゃられたように、ある意味で言えば、だれがやっても耕作放棄が生ずるのかもしれませんが、そういう地域をかなりの労力を費して、何とか維持をしているというのが集落の構造であります。

○八代委員 自然人というのは高齢化すれば当然耕作地を維持できないわけですね。頂いた資料によりますと、個人が高齢化して耕作地を放棄するのは仕方がないと、随分あっさりあきらめておられますけれども、それを防ぐのが法人化の1つのメリットではないでしょうか。

○渡辺次官 議論を相当違った形に誘導されておりますが、法人は私どもも推進すると言っております。よろしゅうございますか。そこのところは食料農業農村基本法に明確に書かれているわけであります。法人化の推進というのは大いにやるんです。その法人化の推進というのは相当いろんなパターンがあって、株式会社の場合には、株主の意向と経営、ペイしない場合の放棄という問題がありましょうし、地域に根差さないものについては取得は認めない。しかし、特区においてはリース方式で認めるということでありまして、法人化は我々の目指す道であります。

○八代委員 法人化というのは、農業生産法人の意味で言っておられるわけですね、当然ながら。

○渡辺次官 これから先はある意味で言えば、生産組織というものも入ってくるかもしれません。それは今度の制度改正の中で集落経営体というものを位置づけたいと思っておりますので、それはいろんな形がございます。

○八代委員 わかりました。しかし、農業生産法人では今、1つの企業はわずか10分の1分しか出資できないわけで、これで株式会社を認めたと言っておられるのは、はなはだポイントがずれているんじゃないかと思います。その次に先ほどこれ以上規制は強化はできないというのが通説という御発言があったわけですけれども、その根拠を是非示していただきたいと思います。だれが、どのような論文でそんなことを言っておられるのかということです。

○渡辺次官 そこは後ほど資料でお届けいたしましょう。それから、もう一つ申し上げますと、これは歴史的な経過の中で食料が足らないところには、GHQの意向と農政を担当する者の意欲、そして、農家が自分の土地で耕したいということの中で転用の強い規制というのが生じ、その一番最後のものが今日まで続いているわけでありまして、新たにもし規制の強化をするということになれば、それは財産権、憲法との問題で真っ向からぶつかるだろうということを私どもの農地制度の研究会でも指摘をされておりまして、その点については後ほど資料をお届けいたします。

○八代委員 現行の規制を現行どおりきちっとやるということについても、規制強化ということになるわけですか。

○渡辺次官 ちょっと趣旨がわからないんですが。

○八代委員 つまり、農地法では、例えばきちっとここは転用してもいい地域、悪い地域というのが決まっているにもかかわらず、あとで虫食い的に農業委員会が転用を認めている例があるわけですけれども、そういうものをきちっと法律どおりやるということも規制強化と考えられますか。

○渡辺次官 それは規制の強化ではなくて、運用の適正化でしょうね。もう一つ申し上げたいのは、転用の話を今されましたが、転用の前にまず耕作の放棄という問題があると思うんです。農地として使わなくなる。そのときの影響は今お考えになっているような株式会社による大規模な農地の利用権を持った状態での放棄はもっとこわいということでございます。

○八代委員 わかりましたが、ただ、大規模な放棄がこわいんであれば、大規模農家に集約するのも同じような問題があるんじゃないですか。大規模農家であって、要するに、株式会社以外の形態であれば、地域に根差しているから耕作放棄は起こり得ないということが、どういう根拠で言えるわけでしょうか。

○渡辺次官 起こり得ないのではなくて、起こる可能性がより少ない。相当に少ないということです。ですから、そこのところが先ほど来申し上げているように、経済学的な話だけをしているのではなくて、その土地で生きていく、その土地に住んでいる。そういう方々が目の前で自ら取得した利用権を野放図に放棄できましょうか。もし、そういうふうなケースにおいては、その利用権を他の方々に必ずや移すに違いないだろう。したがって、私どもは株式会社一般の参入の場合には、リース方式であればそれが容易に他の耕作をしたいという方々に移転をするのではないかということを申し上げて、リース方式が限度だということをお話ししているわけです。

○八代委員 そうしたお答えは信仰告白としか思えません。次官の信仰であればそれは結構でございますが、別に証拠なしに、そういう心情を吐露するだけで、農業政策が行われているというのは非常におそろしいことだと思います。時間もありませんので、ではリース方式に向かいますが、リース方式がそんなにいいものであれば、直ちになぜ全国展開できないのでしょうか。

○渡辺次官 特区法ができて、特区の申請ができて、これを一つひとつ評価しながら、次をどうするかということを考えるのが特区法のフレームだと私は思います。申請はございました。認可もありましたけれども、実際に動いておりません。そういう状況の中で予断を持って先を予測する。先の方向付けをするというのは正しくないと思います。

○八代委員 何年くらいを見ればよろしいんでしょうか。

○渡辺次官 年々レビューをされるわけですから、そういう中で実情を見ていきたいと思っております。ただし、この特区制度の中においてリース方式を認めたのは、極めて特殊な条件を持った地域ということでございますので、それを特区制度の中でやるのか、それとも農地制度全体の中でやるのかということはまだまだ先を見ないとわからないと思います。

○宮内主査 時間でございます。誠に残念ながら、本日のお話しを聞きましても、まだ、私どもの考えているところとは随分違うという感じがいたします。私はこちらに座っておりますので、あえてこういうことを申し上げていいかどうかわかりませんけれども、私どもの考えにつきまして、十分な御理解と理論的なお答えをいただけたかどうか。あるいは心情的な意味での応対につきましては、理解できるわけでございますけれども、農業という1つの産業を高度化し、効率化するという意味から見ますと、私どもとしましては、なかなかそうですかと申し上げられるような状況ではございません。
 いずれにいたしましても、株式会社等による農地取得の解禁につきまして、当会議といたしまして、数多くの責任ある農業経営を行いたいと言っております事業者からの強い要望事項でございます。
 したがいまして、ぎりぎりのところでございますが、少なくとも特区の要望には的確に対応し、早期に実現することをお考えいただきたいということで、当会議としての意見を申し上げたいと思いますし、また、先般の日曜日の新聞にも出ておりましたけれども、農水省では2005年を目途に特区方式を拡大するという法案をお考えであるような記事が出ておりました。そういう前向きなお考えがおありになるということでございますと、今日の議論も大変よかったということになるわけでございますけれども、私個人といたしまして、大いにこの記事に勇気づけられたということを申し上げたいと思います。
 まだ、私ども、本件をまとめる6月まで日もございます。今日の意見の相違ということもよくわかりましたけれども、本件につきまして、農水省と今後ともさまざまな形で、公開ということで今日で最高責任者の次官においでいただきましたので、終わらせていただきますが、さまざまな形でコンタクトを取らしていただき、ぎりぎりのところまで詰めさせていただければ、このように思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

○渡辺次官 報道は、私の記者会見、ホームページを見ていただければおわかりと思いますが、一言、誤報ですので、よろしくお願いいたします。

○宮内主査 誠にそれは残念でございます。ありがとうございました。

 (農林水産省関係者退室)


内閣府 総合規制改革会議