国土交通省との意見交換

 (国土交通省関係者入室)

○宮内主査 それでは、次に国土交通省との意見交換をさせていただきたいと思います。今日は御多忙のところをおいでいただきまして、ありがとうございました。
 20分間しか時間がございません。そういう意味で誠に申し訳ございませんが、ただいまから高層住宅に関する抜本的な容積率の緩和ということにつきまして、意見交換をさせていただきたいと思います。
 本日は大変お忙しい中、青山事務次官、並びに澤井都市・地域整備局長、お2人においでいただいております。
 最初に私の方から、これまでの意見交換を踏まえまして、本テーマにつきまして、当会議の意見をまとめておりますので、申し上げさせていただきたいと思います。
 当会議といたしましては、容積率規制については、良好な市街地環境の維持という要素ではなく、インフラに対する負荷という要素のみを基準とすべきであると考えております。 したがいまして、インフラへの負荷の小さい高層住宅については、都心部における複合的な用途を積極的に誘導する混合用途地域の創設などを通じまして、容積率規制の抜本的緩和を図ることをお願いしたい。こういうことをやっていただきたいと考えているわけでございます。
 私どもはそういう意見を持っておりますが、国土交通省としてのお考えを、誠に申し訳ございませんが、5分程度で青山次官からお話し賜ればと思います。よろしくお願いいたします。

○青山国土交通省事務次官 一点、最初に申し上げておかなければいけないと思いますのは、日本の都市と言いましても、いろいろあるわけでございまして、東京といった大都市から、稚内とか石垣とかいうふうな小さな街まで全部あるわけでございまして、そのうち、私どもがここで議論しますのは、かなり全国一律の議論になりがちでございます。テーマとしては、今おっしゃったような話は東京のような大都市圏を頭に置いたお話じゃなかろうかと理解しております。
 特に大都市周辺の通勤は非常に大変だということも事実でございますし、これから高齢化が進みますと、郊外部の住宅地は車が必須の生活手段になっているわけでございますが、高齢ドライバーが車を運転できなくなれば、生活が極めて不自由になるといった意味で、都心居住が進むという流れも、東京のような大都市圏周辺ではあるのだろうと。そういった意味で都心居住というものが非常に重要視されるであろうという認識は私どもも共有しているところでございます。
 また、いい街を作りたいという思いも皆様方と共有しているつもりでございまして、グランドデザインをしっかりとその街ごとに描いて、その中でどういうふうなことをやっていけばいいかという、グランドデザインに対するしっかりした議論と同時に、適切な運用というものが要るのだろうと思っています。
 更には、一定程度まとまった開発におきましては、その規模や地相、基盤条件の違いに応じまして、容積率の設定の考え方に差を付けること、差異を設けることといったことも皆様方と同じ考え方ではなかろうかと思っております。
 そういうふうに共通認識はかなりあるのではないかと思っておりますが、住宅につきましては、どちらかと言えば、おおまかな事前の一般ルールを前提にしながら、その一般ルールを補完する仕組みとしまして、特定の地域を限ることなどで容積率を緩和する仕組みというのを、委員の先生方御存じのように、逐次整えてきたところでございまして、このような仕組みが有効に活用されれば、御提案についても、現行制度で相当程度対応可能ではなかろうかという認識でいるわけでございます。
 また、今申し上げたような仕組みが、その趣旨、目的どおりに有効に使われているかどうか、常に検証が必要だと考えておりまして、それを踏まえて、運用改善等を含めて検討を深めていきたいという姿勢も持っております。
 いずれにしましても、この問題、現場が一番大事なのだろうと思っております。現場と言いますのは、実際の街づくりを担当される地方公共団体の方、また事業者の方、そういった方々がどのようなことで悩み、また、どのような街づくりをしようとして考え、実際上、容積率がその中でどのような位置づけにあるのかということを是非、現場を担当する方の意見も聞いていただければと思うわけでございます。
 いずれにしましても、東京のような大都市圏において良好な街づくりをすると同時に、都心居住を進めるという政策の重要性は認識しているつもりでございますし、方向性は揃っているんじゃないかという認識でございます。

○宮内主査 ありがとうございます。それでは、当会議で住宅・土地・公共事業を担当されております八田委員から御質問をお願いします。

○八田委員 どうもありがとうございました。基本的な認識で私どもの会議と一致しているということは大変心強く思っております。
 私どもは前々からなるべくこの容積率を性能規定化して、目的を非常に明確化して、抜本的な改革をしていただきたいということをお願いしてまいりました。国土交通省さんの方もそれを中期的な目的としてやろうというふうに確約してくださったということがございます。容積率規制によって道路などのインフラ負荷を抑制するというのはそれなりに理解できるのですが、それが容積率規制の目的だとすると、居住用のビルの容積率まで制限するというのは、あまり理由がつかない。居住用ビルを都心に建てれば、通勤をむしろ減らすわけですから、容積率を緩和した方がいいのではないか。これをアメリカなどに比べると非常にきつく制限していたということが、日本に例外的な通勤地獄を生んでいるのではないかと考えられます。従来の政策の結果、都心居住が抑えられてきたという面があるのではないかというわけです。このため、特に住宅に関して容積率規制の緩和をご要望したいというわけです。
 先ほども御指摘がありましたように、例えば用途別容積型地区計画というのが去年からできまして、住宅についてだけは1.5 倍に増やしてもいいということになりました。これは大変望ましいと思うのですが、問題もあります。例えば住宅用の建物が1.5 倍ですから、住宅は有利になって建設されていくと、オフィス用の場所は減っていくわけです。この削減は全く必要性がないことでございます。住宅用ビルが都心に増えても、通勤へのインフラ負荷のことを考えますと、事務系のビルを減らすという必要性は全くございません。電気や水道へのインフラ負荷も、事務系と住宅系では使用時間が全く違いますから、住宅系を増やした分事務系を減らす理由がない。事務用はちゃんと残すべきではないか。
 そうすると、住宅用あるいは混合系のビルが増えたならば、オフィス用の基準容積率に満たない分の容積を地区内に転売できるというような方策をお採りいただけないだろうかというのが第一点です。
 次に、現行制度の下では、ビル全部が住宅用の場合に容積率を1.5 倍にできるのですが、一部がオフィスであった場合には、倍率が低い。それを、基準の容積率までオフィスを作った上で、さらに五割増し分の住宅を作るということもOKにしていただきたいというのが第二点です。そうすれば、元来の容積規制の目的に沿った形で都心居住が促進できるのではないかと思うのです。その二点について、まずお願いいたします。

○青山次官 まず、オフィスビルについて、東京については言えば、2003年問題と言われるくらい、むしろオフィスビルの供給は非常に高まっている状況だと思っております。
 その中で、今お話しございました用途別容積型地区計画、これにつきましても、実際の運用でどんな問題になっているのかということの検証を是非していきたいなという気持ちがございます。
 オフィスビルそのものと住宅と、できるだけ同じビルにある、もしくは近接しているという形がライフスタイルとしては望ましいという思いはありますが、実際の現実からいきますと、そのオフィスにお勤めになる方が、その隣の住宅、もしくは同じビルの住宅から通勤されるということでは必ずしもないわけです。むしろかなり広範囲のところからオフィスに通勤される。それも今のような郊外型の遠いところからではなくて、かなり範囲は縮まるかもしれませんが、それにしても、かなり東京都内の都市交通については、混雑度というのはあまり変わらないのではないかという気もいたしますし、その辺、この用途別容積型地区計画の運用をもう少し私どもとしては検証しながら見定めていきたいという思いが非常に強うございます。

○八田委員 第一点についてですが、例えばオフィスの2003年問題があるから、オフィスの供給自体は十分なのではないかとおっしゃるのですが、私はこの容積率規制というのは需給調整の目的のためにあるのではないと思うのです。これはあくまでインフラ負荷に対して、不当な負荷がかかってはまずいという観点からつくられていると思うのです。
 そうすると、需給調整のことは考えずに、不必要にきつい制限というものを取り払うべきではないか。そもそも、住宅用ができれば、その分オフィスが減っていくという理由がないわけです。したがって、住宅用を建てれば、その分使われなかったオフィス容積を転売できるというような仕組みが必要なのではないか。
 そうすることができると、都心では、居住用のビルを補助金を得て建てられるわけです。同じ地区内でオフィスを作る人が容積率を買ってくれますから、補助金が出る。だから、都心の居住用のビルの建設が急速に促進されると思うのです。そういう観点からはいかがでしょうか。

○澤井都市・地域整備局長 制度的なことなので、私の方からお答えさせていただきます。 2003年問題という話が出ましたけれども、おっしゃるとおりオフィスの需給調整という観点は持ち込むべきではないというのは先生おっしゃるとおりだと思っております。
 最初の技術的なことで、去年スタートしたというのは都市再生特別地区の制度、それから総合設計を性能規定化して、一定の場合確認ができる、その場合住宅を優遇するという制度です。用途別容積型の地区計画、これは平成2年から運用していますので、かなり運用実績はございます。
 その上で、次官も申し上げましたとおり、今日は時間も短いので、私ども今後どうするということを主として申し上げようと思って参上しておりますけれども、運用をきちんと見て、最初に次官も申し上げたとおり、改善できるところは改善するという姿勢は私ども持っているつもりですので、また、都心居住という観点も非常に大事だと思っておりますので、そういった観点から運用を総ざらいして、この時点にふさわしい、私どもも技術的助言を整理するようなことを事務的には今、考えております。

○八田委員 用途別容積型地区は、確かに平成2年創設です。ご指摘ありがとうございました。
 しかし、そうであれば、なおさら都心居住促進は、運用によってではなくて、法律の改正によって行われるべきではないかと思うのです。もともとの理屈がオフィスを減らして住居をつくるという必要は全くないと思うのです。それが第一点。
 それから、先ほどの通勤のことでございますけれども、同じビルの中で通勤が行われるわけではないというのは全くそのとおりだと思いますが、東京での通勤状況を見ておりますと、やはり郊外から来る電車が混む。一番混んでいるのは上野−御徒町間ですけれども、郊外から来る線が集中するところが混む。地下鉄の混み方は、そういう郊外線に比べると顕著に低いのです。ということは、確かに都心居住が進むと、通勤の距離が比較にならないほど短くなります。そして、歩いても行けるし、自転車でも行けるということになる。したがって、都心居住を促進するということは、通勤インフラへの負荷を大幅に軽減することだと思うのです。
 その観点から考えますと、先ほど申し上げましたように、例えば全部が住宅であれば容積率を1.5 倍にするが、一部がオフィスだったら1.5 倍は許さないというのはきつ過ぎる規制なのではないかと思うのですが、いかがでございましょうか。

○青山次官 基本的に都心居住を推進していきたいという気持ちは私どもも再三申し上げているとおり、そういう主張でございます。オフィスビルの問題につきましては、この場で即答はできませんが、実態等を見なから、私ども検討を加えていきたいという姿勢は持っております。

○澤井局長 確認ですけれども、用途別容積型地区計画では、おっしゃるようなことが法律で決まっているわけではなくて、これは御存じだと思うのですが、法律上は基準容積の1.5 倍までということで、先生、前回おっしゃったとおり、オフィスビルが基準容積以内であれば、トータル1.5 倍まで住宅が積み増すということも制度的に否定されておりませんので、先ほど私が申し上げたのも、そういったことを含めて、運用の改善を考えてみたいと、こういう趣旨です。

○八田委員 わかりました。どうもありがとうございました。その後半の分については確かに運用で改善できると思います。しかし、容積率の移転は法律の問題が入ってくると思います。
 最後に、私ども前から御提案しておりますのは、例えば4ヘクタール以上の大きな再開発ですね。先ほどは商業地区のようなことを考えておったのですが、4ヘクタール以上の大きな再開発地区においては、基本的に居住用や店舗用については、容積率規制を撤廃してはどうかと思うのですが、それについてはどうでしょうか。
 これも理由は今までと同様の理由です。事務用に関してはインフラ負荷をはっきりかけるけれども、居住用はそうではないでしょう。そして、ある程度の広さがあればその内側で解決できる側面があるのではないか。それについても、もう1つ別の御提案としてお伺いしたのですけれども、これについてはどうでしょうか。

○青山次官 既に先生も御存じだと思いますが、都市再生特別地区などの制度があるわけですし、一定規模以上のものについて容積率無制限だと。ただし提案をしていただいて、それを透明性のある下で議論をして、都市計画決定をしていくという手続が既にあるわけですね。これは大阪だとか名古屋も含めて発足しているわけでございますが、こういったものでかなりカバーできるのではないかという感覚でおるところでございます。

○八田委員 一般原則としてこういう規制緩和をする。例えば大型の再開発地区については、居住用はいいというふうにできないのでしょうか。

○青山次官 一般原則としてとなりますと、いろんな都市があるわけです。例えば京都市のようなことを考えたときに、御所の横に4ヘクタールのまとまった土地ができたから、容積率無制限でビルが建つということは、市民の合意が得られるのかどうかとか、いろいろ街ごとに状況が違うわけでしょうから、むしろ街ごとにグランドデザインを十分議論をして、どんな街であるべきかという議論をする中で、色々な特例をつくれるのは制度的にあるわけですから、それを使っていくというのが基本的なスタンスではなかろうかなと思っています。

○八田委員 どうもありがとうございました。

○宮内主査 時間がまいりましたので、ここで終わらないといけませんが、本件につきましては、国土交通省のお考えになっておられることと、我々の考えている方向性につきましては、特に御異論がないようでございますけれども、今日のお話をお聞きしながら、私の感想といたしましては、日本の大都市圏というのは、世界に冠たるだだっぴろい広がりを見せてしまったと。どうしてこういうことになったのだろうかということを考えますと、規制というものも一つ大きく働いたのではないかと。それが都市住民の生活の質を、文明国とは思えないような質まで落としめているのではないかという感想。
 もう一つは、今、次官が現場ごとというお考え、これは都市計画等の場合、確かに重要だと思うのですけれども、できれば一般ルールでもう少し集積を高めるということは、世界の都市を見ましても、必要な時期ではないかという感想を持っております。
 いずれにいたしましても、国土交通省は高層住宅に関する抜本的な容積率の緩和ということについて、平成15年度以降検討することとされておりますけれども、ただいまのお話のように、需要創出とか経済活性化という観点から、より一層の検討の時期を、もしできましたら、前倒ししていただくと。そして、早期の実現をお図りいただくということをしていただければ、我々といたしましては、大変ありがたいと思っている次第でございます。
 まだ、6月まで日がございますので、本件につきまして、さまざまな形でどこまで詰められるか、コンタクトさせていただきたいと思いますので、何分よろしくお願い申し上げたいと思います。 本日は御多用なところ、お時間をいただきまして、ありがとうございました。

○八田委員 どうもありがとうございました。

 (国土交通省関係者退室)


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