(文部科学省関係者入室)
○宮内主査 どうもお待たせいたしました。御多用のところありがとうございます。
それでは、続きまして、ただいまから4時まで予定をしておりますが、株式会社、NPOによる学校経営の解禁。大学・学部・学科の設置等の自由化。幼稚園、保育所の一元化。この3つのテーマにつきまして、文部科学省からおいでいただいております。意見交換を行いたいと思います。
本日は大変御多忙の中から文部科学省の御手洗事務次官、並びに玉井総括審議官においでいただいております。ありがとうございます。
まず、3つございますので、一つひとつのテーマにつきまして、分けて進めさせていただきたいと思います。
まず、株式会社、NPOによる学校経営の解禁と、初めのテーマにつきまして、最初に私の方からこれまでの意見交換を踏まえまして、私ども会議の考えております点を一言申し上げたいと思います。
当会議といたしましては、まず特区においては地方公共団体等の設置した学校について、これを株式会社、NPO等に対し、包括的に管理、運営委託を行うという、いわゆる公設民営方式の導入を解禁していただきたいと考えております。また、こうした特区における解禁の状況を踏まえれば、全国規模での株式会社等による学校経営を禁止することに合理性は乏しいということになるわけでございますから、特区のみならず、全国規模でも遅くても今後2年以内にこれを解禁すること。このようなことをお考えいただきたいと考えております。
こうした当会議の意見につきまして、まず、文部科学省としての最終的な考え方を御手洗次官から、1つのテーマごとに2、3分でお考えをお教えいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○御手洗文部科学事務次官 初等・中等教育を中心とします公立学校、これは基本的に、例えば義務教育で御案内のとおり、市町村が設置をして責任を持っていく。国はそれに対して必要な水準設定、あるいは財政援助、こういうサポートをしていくという考え方に立っておりまして、それと同時に私学設置の自由という観点から、国・地方公共団体以外に学校法人がこれを設置するという考え方に立っているわけであります。それぞれの設置者が責任を持って学校の公共性を担保し、これを安定的、継続的に運営していくということから、それの設置主体が責任を持って管理運営していく。これはやはり今の学校教育の基本的な考え方でありますし、公教育制度ということの中で基本的には地方公共団体、そして、私学の自由、こういったことで相まちながら国全体として公教育の運営を円滑にしていくという考え方に立っているわけでございます。
したがいまして、それぞれの設置主体が、丸ごと教育の内容を他の設置主体に包括的に委任をするというような考え方は取っておりません。
そうは言いましても、さまざまな形でより公立学校、あるいは地方公共団体と民間私立学校とが共同いたしまして、特色ある学校をつくっていくという観点からの取組が、多くの大学等に見られますし、また、小中学校でも大変特色ある学校づくりということで、地方自治体が施設を提供する。あるいは特別に私学助成等別途運営資金を補助して、学校法人が学校を設置し、そして、責任を持って運営していくという実質的な協力方式というものを進めており、こういったやり方というのは今後とも私は妥当な方向ではないだろうかと思っているわけであります。
なお、学校の管理運営の民間委託等の部分的な可能性の範囲というものにつきましては、第2次答申における提言を踏まえまして、今後、どの程度、どの範囲でより効率的、あるいはより教育水準を高めていくために民間の委託が可能かということにつきまして、学校の管理運営の在り方の問題として中央教育審議会におきましても、近々に検討していきたいと考えているところでございます。
○宮内主査 ありがとうございます。それでは、特区担当の八代委員からお願いいたします。
○八代委員 今、次官の方から教育というのは、特に義務教育というのは、公共性が大事である。そういう意味では市町村が責任を持つか私学法人がやるかの2つに1つしかないという御説明があったわけであります。そのときに、市町村が責任を持つというときの持ち方でございますけれども、それを例えば文部省が決める画一的なやり方でなければ責任が取れないというふうに考えるのか、あるいは、地方自治体がそれぞれの地域の実情に応じて多様性を認めるのか。例えば学校法人がないような地域も当然あるわけですし、それにもかかわらず、さまざまな制約の下から、自治体が自ら運営できないというケースもあるわけであります。先ほど丸ごととおっしゃいましたが、それは極端であって、文部科学省の定めたカリキュラムというのはきちんと守らなければいけないわけでありますし、所定の規制と言いますか、行為規制の中において実際に運営するやり方について、自治体がこれが必要だと思えば、先ほど宮内議長がおっしゃったように公設民営という形によって民間の主体に運営委託をさせるということの方がむしろ教育サービスの正しい責任の取り方ではないかという考え方もあり得るのではないか。それを特区の要請として、今出てきているわけですが、なぜ形式的にすべてを自治体で自らやらなければ責任は取れないのか。自治体が責任を持ってしかるべき民間主体に公設民営の形でやるということが、なぜいけないのかという根拠というのを教えていただきたいと思います。
○御手洗次官 カリキュラム等、学校としての公の教育内容、水準、これをきちっと担保していく。これは国公私立学校を通じまして、小中高、基本的に私は同じである、その指摘はそのとおりだと思っております。
ただ、私どもが申し上げておりますのは、学校の教育活動をしていくために、建物をつくり、教員を雇って、その教員を動かして、日常の教育作用をやっていく。ここの部分におきまして、公設民営と言いましたけれども、公と私がお互いに協力する方法ということで、公的なセクターが建物を提供していく。そして、設置運営管理主体としては、学校法人がそれを設立して、学校法人として自ら学校を設置して運営していく。こういう考え方が今大学、あるいは小中学校でも取られているということを申し上げたわけで、こういう形での運営の方法というものを積み重ねていくということは大事ではないかと思っております。
○八代委員 ありがとうございました。ですから、それを更に一歩進めて、そういう適当な学校法人が見つからない、あるいは民間のNPO等で、自治体が責任を持って、ここに任せれば大丈夫だという判断をしたときに、なぜそれはだめなのだというふうに政府が決めなければいけないのかということであります。お話を伺っていますと、学校教育というものを、かつての厚生省の措置制度のように、利用者の選択ということよりも、政府、国がすべてを決めるのだという、やや一時代昔の考え方を取っておられるように見えますが、福祉制度におきましても、やはり利用者と事業者との自由な選択という中で、より質の高いサービスを提供するという方向に、今、国全体として動こうとしているわけですが、なぜ文科省だけがその流れにさおを差しておられるのかということ、この点についてお聞きしたいと思います。自治体の判断をなぜそんなに信頼できないのかということです。
○御手洗次官 自治体は学校を自ら設置して管理する。それに対して民間は、自らの発意で私財を投入して、学校法人という形で学校を設置管理するということで、この学校法人制度というのは、まさに民の活力を戦後、大変大きな勢いで導入するための、これは世界中を見て私は大変すぐれた制度になっていると思います。幼稚園も8割が私学でございますし、高等学校も都会では半分以上、地方を含めて、全国的に平均しましても、高等学校の3割は私学でございます。
○八代委員 学校法人が結構な制度だということはよくわかっております。
○御手洗次官 学校法人がまさに民として、そこに自由に参入して、そして一定の規制の上で、一定の質を担保していくということで、日本の幼稚園から高等教育までの学校制度が発展してきたという仕組みの流れの中で、私どもは公と私の協力の仕方というものについては、私立学校のなかった地方でも、先ほどから申し上げているような幾つかの方法を工夫しながら実質的に公設民営という形で、しかし、私立学校は私立学校として……。
○八代委員 それはわかっておりますが、なぜそれしかだめなのか。今言っていますのは、自治体が責任を持って教育をやるということには何の変わりもないわけです。ですから、学校法人ならばいいけれども、自治体が選んだNPOではいけないという、そこまで自治体に対する不信感というのはどこから出てくるのでしょうか。
○御手洗次官 NPOの話と、学校法人の話は、私はまた別の次元の話であろうと、こう思っております。
○八代委員 いきなりNPOに義務教育をやらせろと言っているわけではないわけで、特区においては公立学校の運営に責任を持つ自治体が自ら判断したときに、その選ぶNPO、あるいは株式会社に管理を委託する。これを実験的に例えばやってみるわけです。特区というのは実験ですから。それがおっしゃるように学校法人に比べて意味がなければやめればいいわけですし、しかし、今の学校法人について不満を持っている方もおられるわけですから、だからこういう提案が出てきているわけですから、特定の地域の試みですらやってはいけない。やることが自明としてこんなことは意味がないという根拠をお聞きしているわけであります。
○御手洗次官 特区について、1つ御理解をいただきたいのは、今の御指摘も踏まえながら、特区において学校法人をつくりやすくするという方式で、今言ったようなさまざまなニーズに応えていくと。したがって、そのときに学校法人に対して市町村が一定の直接的にさまざまな、例えば校舎を貸し出したりという形でやっているわけでございます。
○八代委員 それはお聞きいたしました。それは私の質問とは違うわけで、学校法人をつくりやすくしておられるということは十分承知しております。ただ、それは何が何でも学校法人にこだわる政策から来ているわけで、それも結構でございますけれども、それ以外のオプションとしての選択肢、学校法人を否定するわけでは毛頭ないわけです。そういう自治体の要望になぜ応えてはいけないのかということです。
○御手洗次官 特区の問題で申し上げると、そういった自治体の要望も踏まえまして、今回の新しい特区の改正法案におきまして、株式会社、あるいはNPO、それぞれの要請があるならば、まさに特区の申請者である地方公共団体がそのニーズをくみ上げながら、初等教育につきましても、一定のニーズがあるものにつきましては、NPO法人、株式会社法人でもそれを認めるということで、これは少し実験的にやらしていただこうということを考えたわけです。その際にも、繰り返しになりますけれども、基本的に学校の設置者が自ら最後まで責任を持って教育の質を担保する。
○八代委員 まさにそれを言っているのですよ。市町村の責任の取り方の1つのバリエーションにすぎないわけで、次官のおっしゃっている趣旨と何ら矛盾するのではないと思いますが、百歩譲って、義務教育ではそうだとしても、大学とか大学院とか、あるいは逆に幼稚園などについて、今言ったことが認められないのでしょうか。例えば公立の分野について、自治体が自分の運営している分野を包括的に委託するという考え方ですね。
○御手洗次官 それは義務教育にかかわらず、幼稚園にいたしましても、高等学校にいたしましても、今の全体の公教育の日本国における国民のニーズに応える最終の責任というものは、地方公共団体が責任を持っていこうではないか。したがって、幼稚園も小中学校も高等学校も、国がつくるというのではなくて、国は特別の目的のためにつくります。
公的セクターで言えば、それは地方公共団体がそれぞれ事務を遂行しましょうという形になっているわけでありまして、そこに民間の自由な発意、そしてできるだけ目的に合った教育をやりたいということで、民間参入の道をそういう形で私立学校として開いているわけで、その2つの協力の仕方というものについては、私ども一つひとつ特区等も含めて歩を進めているということで御理解いただきたいと思います。
○八代委員 その民間の中に学校法人以外のものを入れていただきたいというのが私らの意図でございますが、これだけではだめなので、次をお願いします。
○宮内主査 テーマがいろいろございますので、意見の違いということはクリアーになったと思いますが、最後に私から当会議としての意見としまして、まず、特区においてでございますが、福祉とか保育など、他の分野においては既に認められている。これは公設民営方式です。それが学校に限って導入できないということの合理的な理由が果たしてあるのだろうかと思われます。
したがいまして、委託契約の締結に際し、条件を付すなど、学校設置者が責任を果たし得るような措置を講ずることによりまして、公設民営方式というものは早急に解禁していただけるのではないかと、このような思いがございます。
また、ただいま八代委員が申しましたように、全国規模につきましても、特区で解禁した理屈とは全く異なる議論をいまだになさっているのではないかと。義務教育以外の教育分野、すなわち大学、大学院や幼稚園などについては、やはり早急に全国規模でも解禁する目途を立てるということをお願いできればと思っているわけでございます。この辺りが意見の違うところでございますので、会議の考え方を申し上げさせていただきます。
それでは、次のテーマに入らせていただきたいと思います。
次は、大学・学部・学科の設置等の自由化に関するテーマでございます。当会議の考え方は、これだけ学問分野の融合化が進んでいる中でも、そもそも学部・学科の設置等の許可の要否について、既存の画一的な学位・学問分野を基準とすることは、余りにも非合理的ではなかろかと認識しております。
したがいまして、遅くても第三者評価制度などの事後チェックルールが完備される来年度初めからは、学位・学問分野の変更を伴う学部・学科の設置等については、現在の許可制から届出制へ移行することとしていただきたいと。このように考えているわけであります。この点につきまして、まず、御手洗次官からお考えをお伺いさせていただきたいと思います。
○御手洗次官 この点につきましても、当会議の提言を受けまして、学校教育法、昨年改正をいたしまして、本年度、この15年度から今、宮内主査御指摘のとおり、学位の分野を変更するものに限って認可を必要とし、その他は届出にするということで、まさにこの4月から走らせていただいたわけでございまして、まさにその適用が今年、これから事例が上がってくるであろう、こういうことになっているわけでございます。
また、こういった最低限の事前関与としての設置認可、その前提として大学の質を、事後チェックとして第三者評価をしていく。これは基本的にアメリカの各州に見られるシステムでございまして、今回の学校教育法の改正による我が国の改革状況もそういったアメリカ、あるいはヨーロッパのスタンダードに一歩近付いていくシステムであると私どもは考えているわけでございます。
第三者評価制度の導入につきましては、そういった意味で16年度から実施ということで今、各大学の関係者は、勿論、大学評価・学位授与機構が評価をするということは1つございますけれども、私立学校の団体は大学基準協会を始めとしまして、幾つか独自に第三者認証評価機関をつくりたいということで、こういった制度へ向けて、今、大学関係者は大変な努力を実はしているわけでございまして、それを立ち上げた上で、16年度からこの評価システムに移行するということになっております。
例えばアメリカにおきます第三者評価システムというのは、大学設置と同時に、機能してくるという大変な長い歴史を持って今日まで来ているわけでございます。我が国がそういった意味で第三者評価システムでもって自主的に大学の質を担保しようというのは、まさにこれから大学人が一丸となって歩き始めようという時期でございまして、是非、そういった意味でこの制度の今後の実施状況、あるいは定着状況、その運営に対する発展というものを見守っていただければ、大変ありがたいと思っているわけでございます。
学位の問題を全く抜きにいたしまして、開設時に単にすべての学部、あるいは大学の新設を形式的に設置認可を不要として届出をするということになりますと、そういった意味で国際的なスタンダードから見ましても、我が国の大学の質、あるいは学位の国際的な信頼性というものに大変大きな評価の低下を来すということを私ども懸念をしているわけでございます。以上でございます。
○八代委員 ありがとうございました。第三者評価制度を充実されるということは、非常に結構なことでありまして、是非速やかにお願いしたいと思います。それができれば、今のような事前の許可制と言いますか、山のような書類を大学に出させれば、それで学生を保護できるという単純な考え方は要らなくなるのではないかと思っております。
そのときに、せっかく同じ学部の中であれば、学科の改廃について届出制にされたことは非常に英断だと思いますが、残念ながら工学部とか理学部、経済学部と経営学部のように隣接している学部が現にあるわけでして、そうした学部の中で、例えば新しい学科をつくるときに、違う隣の学部の学科をつぶしてこちらをつくりたいというケースは現にあるわけでありまして、そのときに何故許可制になって、また、山のような書類を出さなければいけないのか。きちっと文科省に届出を出すことによって、また、学生に対してもそれをきちっと示すことによって、なぜそれで学生の保護にならないのか。あるいは、大学の質の向上をそんなに妨げるのかということです。それについて、なぜ異なる学部間の移動がそんなに問題なのかということについてお聞きしたいと思います。これはそんな専門的な話ではありませんから、次官に是非お伺いしたいと思います。
○御手洗次官 専門的、学問的な区分をどうするかということは、例えばどういう切り方をいたしましても、その切った間の中で融合学際分野が出てくるということは制度の仕組みとして論理的に避けられない部分だろうと思います。
そういった部分を、現在、設定しております17の学問分野の間でどう具体的に整理していくかということは、今後動き出す中で、それは1つの改善点というものは浮かび出てくることはあり得るであろうと思っておりますけれども、大学というのはそもそも国際的に通用するものでなければならない。そういった意味では1つの標準が学位ということになっておりまして、その学位の質がどういうものであるかということで、アメリカで言えばそれをアクレディテーションでやる。あるいはヨーロッパ各国で言えばそれを国が、これはほとんど私学はございませんから、日本と違いまして国がやる。アメリカとヨーロッパ、日本、それぞれ大学の歴史も違いますので、設置形態も随分違いますけれども、そこにある学位というものについて、国際的に1つ共通するスタンダードという考え方があるわけでありまして、そういった意味で今の17に学部分類している点につきましても、中教審で専門的、学問的な見地からさまざまな御議論を得た上で、可能な限り多くということで、現在のような形になっているわけでございますが、そこは御理解いただきたいと思います。
○八代委員 ありがとうございました。ただ、なぜ17になったかという専門的な中教審の意見を一言で御説明いただけませんでしょうか。
○御手洗次官 これは基本的に今までの学問にそれぞれ流れがあるということであろうと思います。私が申し上げるまでもなく、学問のプリンシプルというものがありますし、そして、方法論というものがございますし、大学自身が自らそれぞれ学位を与えてきた。そして、今、この学位については、これは文部科学省が設置基準で、こういった学位、こういった学位ということではなくて、どういう学位の名称にするかということについては、これは大学人に任されているというところまで来ているわけでございます。ただ、その17の学問の分野という形で、今までの経験等を専門的な観点から、おのずとそこに分類するということで、1つの共通的な御理解を中教審の場でいただいたということで御理解いただきたいと思います。
○八代委員 そういう過去の経緯にずっとこだわっていることが本当に大学の質を高めることに役立つかどうかというのが今、まさに問われているから、もっと個々の大学が自発的に学科を自由に改廃できることが求められているのではないかと考えておりますが、時間もありますので、ここで。
○宮内主査 時間が来てしまいましたので、ただいまお聞き及びのとおり、本テーマにつきましは、特区の要望が非常に多い事項でございます。したがいまして、百歩譲ってという言葉ばかりでございますけれども、特区におきましては、少なくとも実現することをお考えいただきたいと思います。
また、別の観点でございますが、全国規模でお考えいただきたい点は、少なくとも学科につきましては、学位・学問分野の変更を伴う場合についても、早急に許可制から届出制に移行するということを是非お考えいただければと当会議としては考えるわけでございます。
それでは、次の最後のテーマに移らせていただきたいと思います。
幼稚園・保育所の一元化に関する意見交換をさせていただきたいと思います。本テーマについては、当会議といたしましては、少なくとも特区において、幼稚園と保育所に関する行政を一元化し、施設・設備基準、資格制度、配置基準、入所要件等を統一化することをしていただきたいと、このように考えているわけでございます。特に文科省の所管される規制につきましては、以下の2点をお願いしたいと思います。
1つ目は、株式会社等による幼稚園の設置等を解禁することとしていただきたい。
2つ目は、幼稚園については、入園できる幼児は満3歳から。特区においても、満2歳に達した日の翌日以降からという入園年齢制限がございます。これを一層緩和するということをお考えいただきたいということでございます。この当会議の考え方に対しまして、引き続き御手洗次官から文科省のお考えをお述べいただきたいと思います。
○御手洗次官 特区における株式会社の問題につきましては、先ほど申し上げましたけれども、今回の特区改正法の中で一定の要件を課しながら、一定の特別のニーズがある場合におきまして、特区の中で実験的にやってみながら、教育水準の活性化に資するということをしっかりと評価をしていこう。それを見極めながら私どもとしては今後検討したいと考えているわけでございます。
それから、2歳での幼稚園教育でございますけれども、これはやはり保育所のイメージがあるのかもしれませんけれども、幼稚園は原則として3歳に達したところというのは、それなりの幼児の発達段階というものを考慮し、集団的な教育の場、家庭でもない、地域でもない、集団的、ある程度教師の計画的な活動の中で子どもたちを活動させて、そこで必要な言葉、あるいは論理、音楽、リズムといったさまざまな今後の初等教育につながっていくための教育活動を1つのまとまりとして系統的にやっていこうということでございます。これはおのずと限度があるだろうと。そういった意味で、満3歳になる年度の初めから特区において子どもさんの発達状況等を見ながら、状況をしっかりと見させていただきたいというのが現在の考え方でございます。
○八代委員 ありがとうございました。最初の点でございますけれども、基本的に保育所と幼稚園とは違うのだというお答えで、幼稚園は教育をやっている。保育所は何をやっているか知らないということでございますけれども、そこは保育所においてもきちっと教育をやっているところも幾つもあるわけでありまして、我々の立場から見れば、そんなに幼稚園というのは保育所と違った存在なのかどうかという点がまず疑問を持っているわけであります。現に自治体の間では、ある意味で幼稚園と保育所との運用を実質的に一体化している面もあって、国の官庁だけが縦割の構造になっていて、非常に不便であるということから、この特区の要望の中にこれが非常に大きいわけでございます。
そういう意味では、事実上、同じような機能を果たしている幼稚園と保育所というものについては、現に保育所は既に企業の参入が認められている。これは厚生労働省の決めるきちっと認可保育所の基準を定めれば、別に企業がやっても、社会福祉法人がやっても構わない。そういう行為規制で決められているわけですが、なぜ同じことが幼稚園については言えないのか。これはせっかく次官に来ていただいていますから、是非次官にお答えいただきたいと思います。
○御手洗次官 設置者の問題で、説明が不十分であったかと思いますが、株式会社、現在審議いたしております株式会社による学校の設置というものにつきましては、地域の特別のニーズがあるという場合におきまして、これは幼稚園から大学を含めまして、それぞれの市町村の特区申請者の申請をしていただいて、それを認めるという法律構造になっておりますが、ちょっとそこが説明が不十分であったかと思います。
後段の部分の、同じような機能でという御指摘でございます。これは確かに外から見ておりますと、年齢段階は違いますけれども、とりわけ年齢段階が同じになると同じような活動をしているではないかという部分があるということは私ども否定はいたしません。しかしながら、あくまでも幼稚園は一定の限られた時間の中に、先ほど申し上げました計画的な教育を施していく。計画の中で子どもたちをきちっとやっていく。こういった内容につきましては、保育所もそういった3歳以上の子どもにつきましては、教育内容につきましては、できるだけ整合性を保とうということで、お互いに同じような保育内容、教育内容を持っていこうということでニーズに応えているわけでございますけれども、保育所はそれに加えて、長時間にわたって保育に欠ける子どもたちを預かっていただきたい。こういったニーズにそもそも応えていくという本質的な機能を持っておりまして、そこが福祉と言われる点であろうかと思いますが、いずれにいたしましても、幼稚園におきましても、そういった預かり保育という形で、幼稚園自身の本来的な機能を持ちながら、そういった地域のニーズに応じたさまざまな活動をエクステンションとしてどうやっていくかということにつきましては、さまざまな地域において現在工夫が行われているということでございます。
○八代委員 ありがとうございました。ただ、預かり時間に関して言えば、保育所でも5時に終わってしまうところもありますし、幼稚園でも午後預かり保育という形で、事実上同じくらいの時間、子どもを預かっているところもあるわけでございますから、そこは本質的な差ではないかと思います。
先ほどちょっと訂正されましたけれども、そういうことでは、株式会社等による幼稚園の設置を解禁するということについては問題がないということでございますね。
○御手洗次官 特区法においては、今、そういう形で見させていただきたいということです。
○八代委員 それを保育所の方は基本的に全国ベースにおいて、厚生労働省は株式会社を認めているわけでございますから、先ほどの預かり時間の長短の問題は大した差ではないということを考えれば、全国ベースにして、なぜ厚生労働省がいいと言っていることが文科省ではだめなのかということを最後にお聞きしたいと思います。
○御手洗次官 私どもは幼稚園は幼稚園として、幼稚園に求められる多様なニーズというのは現実にあるわけでございまして、すべて保育所でいいというような地域のニーズというものはないわけでございます。
○八代委員 そんなことを言っているわけではなくて、それはおっしゃるとおりです。
○御手洗次官 幼稚園と保育所がそれぞれ多様なニーズに応えていくために、さまざまな努力をしていくという、相当、今両者連携しながらやっているということを御理解いただきたい。
○八代委員 ですから、一層それを同じような形で、イコールフィッテングでやっていただきたいということでございます。
○宮内主査 まだ、いろいろ御議論があろうかと思いますけれども、3つのテーマを短い時間で駆け足でまいったわけでございますけれども、文科省のお考えにつきましては、十分要諦のところは聞かしていただいたと思います。今日の議論を経ましても、我々の考え方とかなり隔りがあるのではないという感じもするわけでございます。
一番目のテーマにつきましても、私の感想を申し上げさせていただきますと、やはり学校法人という法人格に対するこだわりが、学校法人イコール教育というところをもう少し広い社会的ニーズにどう応えていくかという点につきまして、隔りがあるのではないかという感じがいたしました。
2つ目のテーマにつきましては、大学レベルの教育に対して、監督官庁はどこまで関与をすべきなのか。私どもの感じでは、少し過大ではなかろうかという観点から、これを見ることもできるのではないかと存じましたし、ただいまの幼保一元化の問題につきましては、サービスの受け手である子どもさんとか、親御さんから見ますと、単なる縦割行政の被害者であるというような考え方もひょっとしたら国民の方は見ているかもわからない。そこのところと、幼稚園と保育所は違うんだということを本当に国民が理解できるのかどうかというところの問題ではなかろうかという感じがいたしました。
いずれにいたしましても、私どもは6月まで更に議論を詰めさせていただきたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げたいと思います。
今日は御多用のところおいでいただきまして、大変ありがとうございました。
(文部科学省関係者退室)