平成13年7月24日
総合規制改革会議
(参考)
「規制改革」は、供給主体間の競争やイノベーションを通じて、生活者・消費者が安価で質の高い多様な財・サービスを享受することを可能とするものである。すなわち、自由な環境の下でビジネスチャンスを拡大し、社会全体としての生産要素の最適配分を実現することによって、経済を活性化するものである。このように、「生活者・消費者本位の経済社会システム構築」と「経済の活性化」を同時に実現する「規制改革」を、政府は、最優先課題として積極的に推進することが必要である。
規制改革を推進するため、政府としては、従来より例えば個々の事業者又は事業者団体からの要望に積極的に対応すること等により、「個別の規制改革」を重点的に進め、大きな成果を上げてきた。また、規制改革を分野別に進めるという手法も採ってきた。しかしながら、規制改革をより効率的に進め改革の実を上げていくためには、これらの手法に加えて、それぞれの分野の「あるべき姿」を念頭に置き、政策目標・理念を明確にした上で、競争促進のためのルール作りや予算措置等関連制度の見直しも含めた「体系的・包括的な規制改革」、すなわち、「システム全体の変革」についての取組を、意識的に強化していくことが効果的である。
政府が比較的早い時期から重点的に取り組んできた結果として、これまでに大きな進展がみられたのは、産業活動に直接関係の深い分野(いわゆる「経済的分野」)であった。しかしながら、この分野においても、なお一層の規制改革が必要な領域があり、各方面からの様々な要望にも対応しつつ、引き続き改革を推進していくことが重要である。
他方、「生活者向けサービス分野」(いわゆる「社会的分野」)については、取組の開始が遅かったこともあるが、主として下記2.の理由により、現在も改革の遅れが目立っている。この分野の規制改革を強力に推進していくためには、上記のような「システム全体の変革」という手法の有効性が、より一層高まるものと考えられる。
今後、民間事業者の自由な経済活動を阻害する規制を撤廃し、事業者間競争を促進する際には、市場機能が十分発揮されるよう、情報開示の義務付け、ルールの遵守やサービスの質の確保等の監視体制(違反者に対する罰則適用を含む。)及び事後的な紛争処理体制の整備、さらにはセーフティネットの充実等の新たなルール作りや既存のルールの明確化等にも積極的に取り組むことが重要である。
また、「民間でできることは、できるだけ民間に委ねる」との基本原則の下、公的主体の行っている業務について、可能な限り民間事業者が主体的に担い得るよう、参入を妨げる規制の撤廃を行うとともに、異なった経営主体が事業を行う際に存在する公的助成(予算措置等)などの競争条件の格差解消についても、これを規制改革の一環と位置付け、その積極的な推進を図ることとする。
なお、国や地方公共団体のみならず特殊法人、公益法人、特別な法律に基づき設立された法人についても、一般の民間事業者と比較して、競争上有利な立場にあり、この点は、規制改革を推進するに当たっての重要な視点と考えられる。
5月11日付けで公表された経済財政諮問会議の「サービス部門における雇用拡大を戦略とする経済の活性化に関する専門調査会緊急報告」においても指摘されているとおり、「個々の生活者に向けたサービス分野」については、これまで公的主体が、サービスの主たる担い手として市場を直接管理し、市場原理には馴染まないものとされてきた。これは、多くの「生活者向けサービス」が、「非収益的な慈善サービス」と性格付けられてきたためであるが、この結果、本分野には「規制」や「官業構造」が温存され、こうした供給側の問題からサービスの質的向上・量的拡大が妨げられるなど、改革の遅れが目立つに至っている。
今後の少子・高齢化社会においては、我が国の経済成長に貢献する新しい産業やイノベーションを開花させていくことが必要であるが、このような「生活者向けサービス分野」(いわゆる「社会的分野」)は、需要と雇用の拡大余地の高い分野であり、起業家精神の旺盛な個人による創業、迅速な事業展開が期待される。
このような「生活者向けサービス分野」の改革の重要性を踏まえ、当会議では、医療、福祉・保育、人材(労働)、教育、環境の各分野について重点的に検討を行い、新規産業・雇用の創出と、国民生活の質的向上に向けた抜本的なシステム改革を進めることとする。
その際には、特に生活者向けサービスは、一般に、その提供者と、需要者たる生活者との間で、有する情報に質・量共に格差があることを踏まえ、情報開示の義務付け、監視体制及び事後的な紛争処理体制の整備等についても併せて検討を行い、競争の促進とサービスの質の確保に努めるべきである。
また、都市は、生活の拠点であるとともに、その再生は、「緊急経済対策」(4月6日経済対策閣僚会議決定)に盛り込まれた喫緊の課題でもあり、当会議においても、重点的に検討されるべき分野として、規制改革を積極的に推進することが必要である。
我が国の医療は、国民皆保険制度を前提とした政府の様々な規制により、医療サービスを一定の質とコストで全ての国民に提供することに成功してきた。この点で我が国の医療制度は戦後の国民のニーズに応えた制度であったと言える。
元来、医療分野のサービスは、次の理由から通常のサービスと同様の市場原理が働かないという考え方がなされてきている。第一は、情報の非対称性である。医師と患者とでは持っている情報量に大きな格差があり、患者は自らサービスを選択するというよりは、医師から一方的にサービス提供を受ける存在とみなされている。第二は、需要構造の特殊性である。人の生命・健康に直接的に結びつくサービスであり、基本的に公的保険によってカバーされ、利用者にとって一定の給付が保証されることから需要が価格によって左右される要素が低い。第三は、医療における平等原則である。基本となる医療サービスは貧富の差に関係なく、一律・平等に提供されるべきと考えられている。第四は、一般の経済原則だけでは処理できない問題があるということである。稀にしか発生しない疾病のためにも設備や人材の確保が必要だというのがその例である。
このような医療サービスの特殊性に対応するため、政府は、供給主体・供給量の制限、価格の公定・医療費の公的扶助など、様々な施策を行いこれまでに一定の成果を収めてきた。
一方、近年、世界に類例を見ない急速な少子高齢化の進展、情報技術の進歩や医療技術の高度化・先進化、感染症の減少と生活習慣病の増加、社会意識(患者の知る権利)の向上や医療サービスに対する個々人のニーズ・価値観の多様化など、経済社会の大きな変化に伴い、医療サービスの提供に非効率や不合理が生じやすくなっており、また、国民の期待にも十分応えているとは言い難い。
例えば、供給主体・供給量の制限と医療サービスに関する情報の制限により、多様な主体が競争を通じて生み出す効率的なサービスの創出が妨げられ、利用者にとってのサービスの質が向上する仕組みが十分に機能していない。また、価格の公定・保険制度のために供給者、利用者ともにコスト意識が希薄となり、高齢化の進行とあいまって医療費負担の増加を招いている。
さらに、高齢化に伴う医療費の急激な増大により、このまま放置すれば、我が国の現在の医療保険制度自体がその存続さえ危ぶまれる状況にある。一方、医療の量的拡大を図った結果、人的資源などが分散してしまい、特に、診療ごとの人員配置は極めて手薄になっているのが現状である。
このような状況の下、医療改革の検討に当たって最も重要な視点は、国民皆保険体制と医療機関へのフリーアクセスの下で、「真に国民の求める医療制度とは何か」という点の追求にある。これまで医療分野については、供給面での規制により医療費の増大を抑制するとともに、無駄な医療需要を引き起こしやすい仕組みの是正に努力してきたが、問題は解決されていない。今後は、過剰な医療需要を防ぐとともに、供給面の抜本的な規制改革により、更に医療サービスの質を確保し、効率化を図り、真に国民が求める医療を提供することが必要である。
検討の基本的な方向性の第一は、利用者本位のサービスに向けた医療の効率化を目指すこと、つまり利用者にとって満足度の高い医療サービスをできる限り低いコストで提供できるようにすることである。第二は、国民の安心と生活の安定を支えるセーフティネットとして、安心感があり、効率性、透明性、公平性が確保された制度を構築することである。第三は、サービスの質を維持しつつコストを削減し、医療費の増加が経済と両立可能なものとなるようにすることである。第四は、医療を利用者の選択に基づいたサービス産業の一つと考え、民間活力の拡充、新たな雇用の創出など、経済活性化の原動力とすることである。
このような検討の方向性に基づき、当会議として特に緊急に改革を行うべきと考える事項は以下のとおりである。
良質で低コストかつ国民に分かりやすい医療サービスの提供を確保するために、徹底的な情報公開、医療情報(カルテ、レセプト)の電子化の推進、医療の標準化の推進、第三者による評価の充実が必要である。
医療サービスのIT化の促進は、医療機関を含めた医療システム全体の運営コストの削減のみならず、体系的な医療情報の処理など、医療サービス向上のための基本的なインフラ整備として必要不可欠である。そのために現実的にすぐにでも実行が可能な問題として、まずはレセプトの電子的手法による提出を原則とする制度にするべきである。この関係で、平成3年9月27日厚生省令第51号の附則第2条に定める「磁気テープ等を用いた費用請求の特例」では電子的請求を極めて限定しているため、これを直ちに廃止するべきである。
現在、医療機関や医師ごとに診療内容にばらつきがあり、それが医療費の格差にもつながっている。安心できる医療サービスを確保するためには、医療の標準化を推進するべきである。このためEBM(根拠に基づく医療)を推進するべきである。その際、診療ガイドラインの作成やデータベースの整備が重要であるが、これは、公正で中立な第三者機関が行うべきであり、政府はそのための環境整備を行うべきである。また、カルテの電子化及びレセプトへの主病名の記載は体系的な医療情報の処理・分析のために必要不可欠である。こうした体制を平成14年度までに整備し、平成16年度を目途にEBMの樹立を図るべきである。
患者が複数の医療機関にかかった場合、患者情報はそれぞれの病院が管理している。個人情報の保護など一定の条件を備えた上で、患者情報を複数の医療機関で共有し有効活用ができるようにすることは、医療サービスの効率化に向けた有効な手段であり、これを推進するべきである。
現在、日本医療機能評価機構による評価が行われているが、その評価内容は主に医療機関の組織システムに関するものであり、真に利用者が知りたい医療サービスのメニューなどの情報は含まれていないとも言われる。医療情報に関するインフラが整備され、適切な第三者評価方式による医療機関の質の評価が充実すれば、利用者自身による医療機関の比較、評価が容易になる。そのためには利用者の視点に立った評価、及びその評価結果の公開を行うことが期待される。また、このような評価機関として多彩な主体が出現することが望まれる。
医療分野においては厳しい広告規制が行われている。情報の非対称性が大きい医療サービスの特殊性を考えれば、誇大広告など不適切な広告などから利用者を守ることは重要であるが、逆に過度な規制により利用者が真に求めている情報まで入手できない状況は、利用者本位の医療サービスを阻害することになる。そこで、例えば客観的事実に裏付けられた診療実績情報の提供などが可能となるよう、広告規制について、将来のネガティブリスト化を視野に入れつつ、ポジティブリストの積極的な拡充を図るなど、広告や情報提供に係る規制の抜本的な見直しや規制の運用についての明確化が必要である。また、関係者の要望にもかかわらず、ポジティブリストへの掲載が困難であるとするものについては、その理由を明らかにするべきである。
現在、我が国の診療報酬体系は出来高払いが中心となっているが、出来高払い方式については、コストインセンティブが働きにくく過剰診療を招きやすいといった弊害が指摘されている。一方、定額払い方式についても、コストインセンティブは働くが粗診粗療を招きやすいといった弊害が指摘されている。こうした点に留意しつつ、先に述べたEBMや医療の標準化及び情報公開の推進により、後者の弊害を排除することによって、定額払い方式(診断群別定額報酬支払い方式など)の拡大を進めるべきである。
国民の生活水準の向上やニーズの多様化の中で、診療内容についても多様なメニューの下で、公的保険による診療と公的保険によらない診療との併用(公民ミックスの医療サービス)により、利用者による診療方法の自由な選択を可能とすることは、利用者本位の医療サービスの観点から望ましい。このため、当面、特定療養費制度の積極的な拡充など公民ミックスの医療サービスの規制緩和など、公的医療保険の対象となる範囲を見直すべきである。また、公民ミックスの医療サービスの拡充は、情報開示、インフォームドコンセントの推進にも資すると考えられる。
診療報酬、薬価、医療材料価格は、中央社会保険医療協議会で決定されているが、価格の根拠、決定プロセスなど、決定方法について問題点が指摘されている。中央社会保険医療協議会の委員構成の見直しも含め価格決定方法の見直しが必要である。
また、現在、薬価205円以下(内服1日分、頓服1回分など)の薬剤に関しては、薬剤名等の内訳を省略して薬剤費請求ができる「205円ルール」については廃止し、内訳を明示した請求とするべきである。
なお、新規性の乏しい新薬(いわゆる「ゾロ新」)の薬価の在り方など薬価算定ルールについては、今後とも抜本的な改革を検討することが必要である。
医療機関の経営情報を開示し、医療機関の収益構造、業務内容を明らかにすることにより、医療機関の透明度を高め、医療の改善を図るべきである。
保険者を被保険者のエージェントとして医療の効率化や質の向上を促す機関として真に機能させるために、保険者機能を強化することが必要である。
本来、レセプト審査・支払は保険者の権限であるが、現状では、社会保険診療報酬支払基金又は国民健康保険団体連合会に一次審査・支払事務を委託することが事実上強制されている(厚生労働省保険局長通達)。これらの審査・支払機関による一次審査についての問題点は、第一に審査が特定の医師による「身内の審査」になりがちなこと、第二に保険者の審査手数料の負担が大きいこと、第三に支払基金に蓄積された医療情報は保険者には開示されないことである。
上記通達を廃止し、制度の本来の趣旨に沿って、レセプトの審査・支払を保険者が直接行えるようにするべきである。このことによって保険者にとっては医療機関ごとのパフォーマンスの比較や問題となる医療機関のチェックが行いやすくなる。また、被保険者への健康指導などを通じた医療費の抑制が可能となる。この場合、審査・支払事務の効率化・高度化を図る見地から、保険者が当該事務を支払基金以外の民間へ委託をすることを可能とするべきである。
また、保険者と医療機関で契約による診療報酬の引下げや同一報酬で追加的サービスを行えるようにするべきである。
医療機関の経営形態に関する規制の根拠は、医療法人の経営者の善意・倫理性に依存し、営利主体の参入を抑制することにより、情報の非対称性が大きい医療サービスの質を維持するためと考えられてきた。しかし、利用者本位の医療サービスの観点からは、更に経営の近代化、効率化を進めることが必要であり、このことが医療の質、結果を担保しつつ効率的な医療サービスの提供を可能とする。したがって、株式会社方式による経営などを含めた経営に関する規制の見直しを検討するべきである。
また、医療機関の理事長は医師でなければならないという人的な側面からの規制があるが、その合理性には疑問がある。病院経営と医療管理との分離により、医療機関の運営の効率化を促進するため、病院運営についても、法人運営のマネジメントを導入するため、平成13年度中に理事長要件を廃止するべきである。
医療資機材については、大きな内外価格差が存在しており、結果として我が国の医療は高コスト構造となっている。それらの是正のためには医療資機材の流通全体を通じた抜本的な改革が必要であるが、それらを促進するための競争政策の徹底など所要の措置を講ずるべきである。
医療分野に従事する専門的な人材の最適配置を可能とするため、現在、政令で特に禁じられている医師・看護婦などの医療関連の業務の派遣に関する規制を撤廃するべきである。
医療の技術の著しい進歩のなか、安全で良質な医療を確保するため、医師・看護婦などの質を確保していくことが重要である。このため生涯教育の充実や研究の推進とその成果の普及などにより、免許取得後の医療従事者の質の確保を図ることが必要である。
最先端の医療を提供できる体制を整備することが必要であり、そのためには医師の教育制度改革による人的資源の充実が不可欠である。現在、我が国では、出身大学による閉鎖的なネットワーク(医局制度)により、医師の自由な競争と正当な評価がなされていないと言われる。このような状況は即時改革し、出身大学(医局)にとらわれない広域での医師と病院をマッチングさせることを可能とする方策の検討が必要である。
医薬品の範囲について、平成11年3月31日に行った15製品群の医薬部外品への移行の実施状況を踏まえつつ、一般小売店でも医師の処方箋などを必要とする一部の分野を除いて、医薬品の販売を可能とするための制度の整備を実施するべきである。
介護・保育等の問題の共通項は、今後、高齢化の進展や、働く女性の増加という社会環境の変化のなかで、急速に増大する利用者のニーズに対し、特に都市部において、サービスの供給が不足し、多くの待機者が存在していることである。公的部門や社会福祉法人が主体となっている現行の供給体制では、施設整備費や運営費の相当部分が公的資金によって賄われるため、大幅な予算の増加を前提としなければ、供給量を増やすことはできない。特に公立保育所については、地域間の需要の変化に見合わない供給側の対応の遅れが大きな問題となっている。
このため、社会福祉法人の改革と、民間企業を含む多様な経営主体の市場参入、公的補助等の面での対等な競争条件を確保することで、サービス量を増大するとともに、消費者の多様な選択肢を拡大することを目標に、事業者間の競争促進と情報公開の徹底、事後的規制の整備等を図っていくことが必要である。また、こうした市場の拡大は、言うまでもなく、それに伴う新規雇用の拡大をもたらすこととなる。 社会福祉法人は、憲法第89条において、慈善・博愛事業について公の支配に属するもの以外への公金の支出が禁止されているとの解釈から、公的助成が可能となるよう社会福祉法に基づき設置される特別な法人であり、個人からの寄付と大幅な公的助成を前提として設立される。社会福祉法人は、質の高い福祉サービスを継続的、安定的に供給することに大きく貢献してきたし、今後もその果たす役割は重要である。しかし、公的福祉の体系は、既に社会福祉事業法の改革によって、措置方式から契約方式へと転換されつつあり、これを慈善・博愛事業という恩恵的なものとしてのみ捉える考え方から、実質的に変化してきている。経営主体の差にかかわらず、事業者間の対等な競争を前提とした公的介護保険が設立された今日、施設整備費に関する公的助成の対象を社会福祉法人のみに限定することの根拠は乏しく、公設民営方式を含む多様な民間企業の活用を図ることが必要である。
介護に関して、行政が必要なサービスを国民に「措置」として与えていた過去の制度は、事業者と利用者との間の「契約」を基本とするものへと改革されたが、異なる経営主体の間での対等な競争が妨げられているという意味で、利用者の選択肢は依然として制約されている。施設介護では、公的部門や社会福祉法人が経営する特別養護老人ホーム等の介護施設と、民間企業が経営する有料老人ホームとの間には、介護報酬や施設整備費補助の面で大きな格差が存在しており、それが利用者負担の格差に反映されている。これは、こうした介護サービスが、仮に利用者の視点から見れば同一の内容とされるものであっても、経営主体の差のみによって異なる類型に区分されているからである。
こうした格差は、公的部門や社会福祉法人が経営する認可保育所と、民間企業等が経営する認可外保育所との関係においてもほぼ同様に存在する。保育の問題に関しては、何が子どもの幸せかを第一に考えなければならない。然るに、特に低年齢児を中心に、認可保育所を利用できない「待機児童」が多数存在している。また、休日保育などを必要とする児童を含め、認可外保育所を利用せざるを得ないという児童も多数存在する。こうした状況は、子どもの幸せという観点からみて十分な状況とは言い難い。
このため、保育行政に関しては、実質的に公的助成とリンクしている認可保育所の運営基準と、認可外保育所に対する指導監督基準とが、一種のダブルスタンダードとして現に存在しており、両者の利用者間の負担格差は著しいものとなっている。こうした格差を是正するため、認可外保育所を認可保育所への転換を促す規制緩和が進められているが、都市部における土地の取得が困難であることなどから、その効果は微増にとどまっている。現在、「営業の自由」の下で放置されている認可外保育所における乳幼児など社会的弱者の安全や人権を守るためには、少なくとも現行の指導監督基準に基づく規制を徹底するとともに、多様な民間企業の活用を困難としている規制を撤廃し、公設民営の積極的な活用などを通じ、質の高い保育所の量的拡大が必要とされる。また、長期的には、現在の認可施設に補助する公的助成の仕組みを、利用者に直接補助する仕組みに変換していくことを検討するとともに、事業者と利用者との契約に基づく、在宅も含めた多様な保育サービスの拡充を図る必要がある。
社会福祉法人は、法人解散の場合に、その財産を他の社会福祉法人か国庫に寄付するしか方策がなく、設立者がその寄付分を回収することは禁止されている。しかし、多大な資金を必要とする介護施設を設立者の寄付だけに依存して設立・運営することは、その供給を大幅に増やす上での大きな制約となっている。もっとも、社会福祉法人の規制緩和も進められており、社会福祉施設の整備については、都市部等の用地取得が困難な地域では、それを賃貸することは可能となっている。また、限られた範囲内ではあるが、介護報酬に基づいて運営される社会福祉法人については、それを事業に伴う融資の返済に充てることも容認されている。こうした政策をさらに進めることにより、社会福祉法人のより効率的な運営を図り、そのサービスの供給を拡大していくことが必要である。このためにも、既存の社会福祉法人の運営に対する厳格な規制を緩和する一方で、既存の社会福祉法人を含めた多様な経営主体の間で、公的助成の面について、対等な立場での競争を促していくことが必要である。
社会福祉法第62条第2項には、公的部門や社会福祉法人以外の者が社会福祉事業を行おうとする際の「都道府県知事の許可要件」があるが、これを受けた厚生省通知(昭和47年)において、設置・経営主体として民間企業を挙げていないため、民間企業の参入を妨げている。このため、本通知の改正を行うべきである。
グループホームについては、本年度より同一敷地内では3ユニット以内に抑制されること、認可の際には市町村の意見書が必要とされることなど、新たな規制が加わっている。密室性が高く、利用者保護の体制整備が特に求められるグループホームにおけるケアの質を確保するためにも、新規供給増を抑制しないよう配慮しつつ、市町村による事前関与とともに、情報公開の推進や、質の確保を目的とした事後的規制を強化する必要がある。
地方自治法(第238条の4第1項)では、行政財産の貸付け、交換、売却、譲与等は禁止されているが、これについての特例措置を講ずるなど、公設民営を促進するべきである。また、「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律」(PFI法)第12条第2項では、「公有財産を無償又は時価より低い対価で選定事業者に使用させることができる」とされており、PFI法が地方自治法に優先すると考えられ、これを活用していくべきである。
公的部門、社会福祉法人、民間企業等といった経営主体にかかわらず、利用者やその家族が事業者を選択する際に活用できるチェックリストの作成などにより、介護事業者の情報公開義務を適切に果たさせるとともに、第三者評価を推進するべきである。また、消費者利益の観点から、その運営に関する監視体制の強化を図るべきである。
同一の介護サービスを供給する施設と在宅等との間の負担均衡を図るため、現在の特別養護老人ホーム等への介護報酬に含まれている食事・居住費等のいわゆるホテルコストについては、既に閣議決定された規制改革推進三か年計画に沿って、特別養護老人ホームの個室化など、質の向上に対応しつつ見直し、受益者負担により、社会福祉法人とそれ以外の経営主体との間の施設整備費の格差を是正することが必要である。
これに加えて、長期的には、社会福祉法人への施設設備費補助を削減する一方で、介護報酬の内に施設設備費用分も含める(医療分野における診療報酬と同様な)方式への変更などについて、検討することが必要である。
なお、この点は、既に現行法でも、特別養護老人ホームを整備する社会福祉法人については、その施設整備の際に必要な資金(全体の4分の1)の一部を融資により調達し、それを介護報酬から返済することが可能とされている。
待機児童の多い地域における定員基準の弾力化等を促進する。また、一定の設備に関わる設置基準等については、その見直しを進めるとともに、分園の積極的促進を図ることにより、子どもの幸せを第一に考えてサービスの質を確保しつつ供給量の拡大を図るべきである。
また、新規参入を促進するためにも、国の設置基準等に、地方公共団体が合理的でない基準を上乗せすることのないよう、さらに、保育需要があるにもかかわらず既存保育所への配慮などから認可保育所への供給を抑制しないよう、既に実施された規制緩和措置については、地方公共団体に対し、早期かつ逐次、周知徹底を図るべきである。
公立保育所が、民間への事業委託方式を採用した場合、当該民間企業が効率的な経営の結果として得た剰余金の使用に関し、保育の事業拡大のインセンティブを阻害しないよう、関係通達の見直しを図るとともに、積立金の扱いを見直すなど会計処理の柔軟化を進めるべきである。
また、介護施設と同様、PFI方式を活用することや、地方自治法の特例措置を講ずることなどにより、公設民営を促進するべきである。
施設や経営面で一定の基準を満たす認可外保育所については、法律上、明確な位置付けを与え、これらに対する指導監督制度(例えば、横浜保育室等)を導入するとともに、これらの認可外保育所に対する施設整備費補助について直ちに検討するとともに、長期的には認可保育所も含めた利用者への直接補助について検討するべきである。
他方、経営主体にかかわらず、地方公共団体の立入検査権を明確にし、運営に関する監視体制の強化を図るべきである。また、指導監督基準以下の認可外保育所に対しては営業を認めない、いわば「ライセンス方式」の導入を検討するべきである。
現行法令を適切に運用し、経営主体にかかわらず、保育所の情報公開義務を適切に果たさせるべきである。また、第三者評価を促進する仕組みを整備するべきである。
多様なニーズに的確に対応できるよう、保育所と幼稚園等の教育施設とが施設の共用化(文部省・厚生省による平成10年の指針)を促進し、運営や施設利用の面で一層連携を深める必要がある。また、保育士資格を名称独占化するとともに、幼稚園教員免許との同時取得を一層しやすくするべきである。さらに、多様なニーズに的確に対応できるよう、幼稚園における預かり保育の拡充を図るとともに、小学校等の空き教室を活用するべきである。
また、地域の様々な人材を活用し、放課後児童対策(放課後児童健全育成事業など)の充実を図るべきである。
社会福祉法人の会計や運営に関しては、かつては行政機関に準じた方式が強制されていたが、平成11年度に「措置から契約へ」の制度改革に伴い一部弾力化が図られた。しかし、更なる改革の余地はあるため、特に、行政への報告のみならず、利用者への情報公開の視点をより重視する方向での改革が必要である。
介護・保育分野での社会福祉法人のサービス効率化を妨げないよう、担当行政部門間の円滑な調整を図るとともに、既になされた規制緩和措置について地方公共団体に対し、周知徹底を図るべきである。
消費者の選択の幅を拡大するとの観点から、社会福祉法人について株式会社並みの公認会計士等による会計監査等の一層の普及を図るなど、情報公開のための基準の強化を図るべきである。また、社会福祉法人の公益性にかんがみ、収支決算書、事業報告書、監事の意見書等は、インターネット上での公開を促進するべきである。
社会福祉法人の在り方について、現行の方式だけでなく、多様な形態の社会福祉法人の在り方について検討を開始するべきである。特に、寄付金のみに依存せず、介護保険事業による運営を基本として介護報酬によって存立する社会福祉法人の在り方を早急に構築するべきである。
市区町村社会福祉協議会については、社会福祉法に基づき、地域福祉の実施主体としての役割が明らかにされたところであるが、在宅福祉サービスの実施に当たっては、公的助成のみに依存することなく、他の事業主体の参入を妨げることのないよう、適切な運営に努めるべきである。
長期的な経済・社会の構造変化の下で、労働市場の状況や雇用の在り方は大きく変わってくる。これに伴って雇用・労働市場をめぐる規制の在り方も変化する。人材(労働)分野の規制改革の基本視点はここにある。
まず人口の構造変化、すなわち人口高齢化に伴い、個人の職業人生は長くなる。年金支給開始年齢の引上げなどを考えれば、少なくとも60代中盤までは本格的に働かなければならない。一方で、経済のグローバル化に代表される国際競争環境の変化、消費者選択の多様化に代表される国内競争環境の激化、さらにはIT化に代表される技術構造の急速な変化などにより、個別企業、産業の栄枯盛衰のテンポは速くなる。結果として、個々の企業あるいは産業が労働者に対して保障できる雇用期間は短くならざるを得ない。
個人は雇用を守れなくなった企業から、人材を必要とし、雇用を増やそうとする企業へ移動することで長い職業人生を全うしなければならない。特にこれまでピラミッド型の人口構造の中では、経済の衰退部門から成長部門への労働力の比重移動は、主として若者の就職行動を通じて実現していたが、若年人口の激減するこれからは、主として中高年労働者の企業間・産業間移動を通じてこれを実現しなければならなくなる。就職から定年退職まで一企業で雇用を保障するのではなく、労働市場を通じて雇用を保障していく体制への移行が必要となる。
また、これまでは典型的な労働者像を基に労使関係や労働基準などの枠組みを考えてきた。雇い主の指揮命令に従って、定時に仕事を始め定時に仕事を終わるようなタイプの仕事をする、常用労働者である。そうした中で、労働条件等は、雇用主と労働者との交渉上の地歩の乖離を前提として、集団的に決定されてきた。
しかし産業高度化に伴い、高度な専門能力を有するホワイトカラー層なども増えてきており、能力・成果主義賃金の浸透など、労働条件の個別決定化も進んできた。また個人の就労意識の多様化から、生活と仕事のバランスを考えて、パートや派遣労働などを選択する個人も増えている。
こうした新しいタイプの労働者像に対しては、従来型の規制は必ずしも適切とは言えなくなっている。これは企業側にとって雇用しにくいというだけでなく、多様な形で働きたいと考えている個人にとっての選択肢を制約するという点でも問題となる。もちろんこうした変化に対応して、労働政策においても雇用の選択肢を拡大し、多様な就労形態を許容するための規制改革に取り組んできてはいる。しかし経済が急速に変化する中でその改革は必ずしもこの急速な変化に対応し切れているとは言えない。
以上のような観点から、経済・社会の構造変化に対応して雇用・労働市場の規制の在り方も、より市場を通じた雇用保障を拡充し、多様な就業・雇用形態に対応し得るような形に改革していく必要がある。
上記のような観点から人材(労働)分野においては、以下のような基本的な考え方により、今後検討を進めていくこととする。
一つは、円滑に人材の移動が行われるための労働市場システムの整備である。例えば、就職情報が行き渡って転職や就職のガイダンスを受けやすく、転職や一時的失業のコストが過大でなく、必要に応じて能力開発の支援があり、職業復帰がしやすい制度作りといった労働市場の条件整備である。その中には、募集・採用における年齢の制限緩和等も含まれる。
二つ目は、一を補完するものであるが、有期労働契約、派遣労働などの雇用の選択肢を更に拡充し、働きやすい・雇いやすい環境作りを進めることである。これは、個人の就労意識・価値観の多様化に対応する上でも重要であり、女性の社会進出の円滑化にも貢献する。また、労働形態による損得を生じさせないよう、あるいは女性の就業意欲を阻害しないよう、社会保険制度等を見直す必要がある。
これらの課題は、国際競争が激化する中、さらに本格的な少子高齢化社会を迎える中で喫緊の課題であり、法律の改正を伴わないものは可及的速やかに、法改正を伴うものであっても早期に実現することが極めて重要である。
また、将来に向けた課題として、高度な専門能力で仕事をするような新たな労働者像に対応した制度作りや解雇基準の明示化等、21世紀にふさわしい労働市場システムの整備についても早急に検討に着手することが必要である。
労働者の就業機会を拡大するためには、能力開発を促進し労働者のポテンシャルを向上させることが効果的である。そのため、雇用保険の被保険者を対象として行われている現行の教育訓練給付金制度の在り方を再検討するとともに、キャリアカウンセリングや職業訓練制度の拡充に加え、資金の貸付制度等の活用の促進等、能力開発を支援する制度を次期の予算手当の機会を捉えて拡充するべきである。
雇用のミスマッチ解消を促進するためには、有料職業紹介事業に関し、求職者からも一定の枠組みの下で手数料を徴収できるようにするべきである(現在は芸能家・モデルからの徴収のみ認められている)。特に、いわゆるヘッドハンティングの対象となるような例えば一定以上の収入を得られる経営管理者層・プロフェッショナル等の求職者から徴収する手数料についてはその規制の撤廃について早急に検討を開始し年度内に結論を得るべきである。【平成13年度中】
また、求人企業から徴収する手数料については、現行の上限に係る指導等の廃止について早急に検討を開始し年度内に結論を得るべきである。【平成13年度中】
なお、現下の深刻な雇用情勢にかんがみ、地方公共団体においても無料職業紹介事業が行えるような措置を講ずるべきである。さらに学校等以外の者の行う無料職業紹介事業に係る許可制についてもこれを届出制に改めることも含め、法施行3年後の見直し規定にかかわらず、今秋から調査検討を開始し、可及的速やかに法改正を行うべきである。【見直し前倒し】
本年10月1日までに作成する改正雇用対策法に基づく「指針」に、募集・採用において年齢要件を課す場合には、求人企業にその理由を明示することを求める内容を盛り込むべきである【今秋中】。さらに中長期的には法律において義務付ける必要性についても検討するべきである。また年齢制限の緩和は、派遣労働における派遣先企業にも同様に適用するべきである。
募集・採用において、人種・信条・社会的身分を理由とする差別を明文で禁止することを検討する必要がある。また公務員は率先して年齢制限を撤廃するべきである。
労働者派遣制度については、昨今の雇用情勢の急速な変化を踏まえ、労働者の働き方の選択肢を拡げ、雇用機会の拡大を図る等の目的から、派遣期間の延長や「物の製造」の業務の派遣禁止の撤廃等を含めて、法施行3年後の見直し規定にかかわらず、労働者派遣法の見直しに向けて今秋から調査・検討を開始し、可及的速やかに法改正を行うべきである。【見直し前倒し】
あわせて紹介予定派遣の円滑な運用を妨げている派遣先による派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止等について、現行制度の運用の見直しを直ちに行うべきである【直ちに見直し】。さらに紹介予定派遣については実態調査等を踏まえ、上記労働者派遣法の見直しと併せて、法制度を含む現行制度の見直しを検討するべきである。【見直し前倒し】
なお、現下の深刻な雇用情勢にかんがみ、上記の法改正に至るまでの緊急措置として、現在3年の派遣が認められている業務(旧適用対象26業務)の範囲を拡大する等、法改正を必要としない見直しについては今秋に検討に着手するべきである。【平成13年中】
有期労働契約については、労働契約期間の上限を現行の3年から5年に延長し、適用範囲を拡大する等の方向で、早期の法改正に向けて直ちに調査・検討を開始するべきである。【直ちに調査検討を開始】
また、大臣告示によって定められた専門職の範囲については、例えば修士号の実務要件緩和などの拡大措置について年度内に結論を得るべきである。【平成13年度中】
労働に対する価値観の多様化に対応して、労働者がより創造的な能力を発揮できる環境を整備する観点から、自己の裁量の下で自由に働ける裁量労働制を拡大する必要がある。
まず、いわゆる専門業務型裁量労働制については、研究職、SE、放送等のプロデューサー、コピーライターなど11の対象業務に限定されているが、これを年度内に拡大するべきである。【平成13年度中】
また、いわゆる企画業務型裁量労働制については、法施行3年後の見直し規定にかかわらず、今秋から実態調査を行った上で、可及的速やかに規制について必要な見直しを行うべきである。【見直し前倒し】
労働基準法は労働契約の根幹を規定する基本法として、戦後50年余にわたり累次の改正を経つつ、我が国労働者の生活の安定と生活水準の維持向上を図る上で大きな役割を果たしてきたと言える。しかし冒頭に述べた経済社会の構造変化によって、雇用の在り方にも大きな変化が生じている。特に、高度な専門能力を有するホワイトカラー層などの新しい労働者像に、定型労働を行う労働者を念頭に置いた規制を一律に課すことは適切ではない。
こうした構造変化を踏まえ、新たな時代の雇用関係を規定する基本法とするために労働基準法の見直しを図っていく必要がある。見直しに際しては、いわゆるホワイトカラー・イグザンプションなどの考え方も考慮しながら制度改革を検討するべきである。
また、解雇については予告手続等を規定しているだけで、解雇そのものは、現在のところいわゆる解雇権濫用法理を始めとする判例法で規制されているが、解雇の基準やルールを立法で明示することを検討するべきである。
就労形態の多様化に対応し、パート・派遣労働者に対する雇用保険の適用拡大を徹底する必要がある。年金・医療保険の適用においては、パート労働者に対する適用を拡大することについて早急に検討するとともに、派遣労働者についても適用の実態等を把握の上、運用面の改善も含め、必要な対応について早急に検討を進めるべきである。また現行法において当然加入すべき私立学校教員等の雇用保険への加入は速やかに実施するべきである。
また制度が働き方の制約とならないよう、その中立化を図る必要があり、例えば企業倒産・転職時における企業年金のポータビリティの更なる拡大や退職金に関わる制度・枠組み等の見直しについて検討するべきである。
なお、女性の就業意欲の阻害要因と考えられる配偶者手当などの制度については、民間部門においては見直しが進められつつあるが、公務員についても、今後、男女共同参画の観点から同様に見直すべきである。
社会・経済・文化におけるグローバル化が拡大し、国際的な競争がますます進展していく中で、教育分野においても、義務教育から高等教育までを通じて質の高い教育を提供し、社会のニーズに応えることのできる優れた人材を育成するとともに、大学や大学院においては先端的・独創的な研究をさらに進め、新しい産業やイノベーションを開花させていくことが必要不可欠である。
大学においては教育機関や教員が互いに質の高い教育を提供するよう競い合うことが、また、初等中等教育においては透明化多様化を進めることが、我が国の教育全体の質的向上に結びつくと考えられ、そのような環境の下で学生や生徒に対し学習に対する積極的な動機付けを行っていくことが必要であると考える。
上記のような観点から教育分野の規制改革を図っていくためには、大学において競争的な環境を整備することを通じて、教育研究活動の活性化を図っていくことが必要である。また、初等中等教育においては、児童や生徒の能力・適性に応じた教育機会の提供を推進するため、学校の透明性を高め、多様化を進めることを通じて質の高い教育サービスを提供していく体制を整備することが課題となるものと考える。
このため、当会議では、以下のような具体的施策について、今後検討を進めていくこととする。
大学における研究体制の弱体化に歯止めをかけるためには、様々な競争的資金の拡充を進めていくことが必要であり、その際、研究機関が研究資金を多く持ち込める研究者の採用を競争的に進めるインセンティブを与えるべきである。同時に、競争的資金による、研究者の雇用、博士課程学生の給与型支援の日本学術振興会特別研究員制度をモデルとするものへの拡大や、その現場への定着など具体的改革方策を進めるべきである。【平成13年度中に検討、結論】
また、国立大学の独立法人化を検討する際には、寄付金、受託研究等の扱いが公私の大学で相互に競争的になるようにすることを検討する必要がある。【平成13年度中に検討、結論】
さらに、大学教育に対する公的支援については、機関補助に世界最高水準の大学を作るための競争という観点を反映させるとともに、個人支援を重視する方向で公的支援全体を見直す中で、教育を受ける意欲と能力がある人が確実にこれを受けられるよう、奨学金の充実や教育を受ける個人の自助努力を支援する施策を検討することが必要であると考える。【平成13年度中に検討、結論】
大学生の学習に対する動機付けの促進のためには、ダブルメジャー制、学生に対する成績評価の厳格化、学生のキャリア教育の活性化(インターンシップ制度の積極的活用等)などについても推進していくべきである。【平成13年度以降継続的に推進】
一方、大学の教員については研究・教育力の適正な評価を行い、その結果を外部に公表するとともに、結果に応じた処遇(インセンティブの付与等)を大学が行えるようにすることについても検討するべきである。【平成13年度中に検討、結論】
特に、いわゆる招へい型を始めとした任期付き教官に対して給与法上の特例措置をとり、能力・実績に応じた給与等の処遇の改善を検討するべきである。【平成13年度中に検討】
大学がより自主的自律的な運営をすることができるようにするため、設置された後の学部については、第三者機関による継続的な評価(いわゆる「アクレディテーション」)を前提として、その改廃を一層弾力化するよう、大学設置基準の見直しを行うべきである。また、新規産業やイノベーション開花の観点から、工業(場)等制限制度の見直しをするべきである。【平成13年度中に検討】
また、大学の運営に当たっては、教育研究活動の実効性を向上させるため、外部から専門家の参加を得るなどガバナンスの改革を図るとともに、情報公開や第三者評価の実施など運営の透明性を向上させていくべきである。【平成13年度以降継続的に推進】
さらに、運営の効率化の観点から、大学における事務部門のアウトソーシングを大学の判断で自由に行えるようにするなど、大学の組織をより活発なものにするための検討を早急に行うべきである。【平成13年度中に検討、結論】
社会人のキャリアアップを強力に支援するため、社会人向け大学教育、大学院教育をさらに促進するべきである。例えば、コミュニティカレッジ、一年制大学院、夜間大学院、通信制大学院、都心部におけるサテライトキャンパス、インターネット等の活用など、社会人が大学や大学院に一層通いやすくなる仕組み作りについて検討するべきである。【平成13年度中から段階的に実施】
また、産業界等との連携による学習ニーズを的確に捉えた教育コースの設置や、実務家の積極的な大学教員への登用についても積極的に行うべきである。【平成13年度以降継続的に推進】
特別免許状制度や特別非常勤講師制度の一層の活用を促進することなどにより、学校教育の場において企業勤務等の経験を有する社会人の活用を飛躍的に伸ばしていくべきである。【次期予算措置から段階的に実施】
昨年12月の教育改革国民会議報告において「設置の可能性を検討する」とされた「地域独自のニーズに基づき、地域が運営に参画する新しいタイプの公立学校("コミュニティ・スクール")」を市町村が設置することができるよう、法制度整備を含めて積極的に検討を行うべきである。【平成14年度中に検討】
他方、現行法制の下においても、校長を公募し、教員について校長の推薦が尊重されるとともに、学校と協力して運営に当たる「地域学校協議会」を学校ごとに設置するなどの仕組みを備えた、自主的な学校運営の実験を行うモデル校作りを早急に推進するべきである。【平成14年度中に実施】
また、多彩な教育理念に基づく私立の小・中学校の設置が促進されるよう、小・中学校の設置基準を明確化するとともに、財源調達や校地取得に関する要件を適切に緩和するべきである。【平成13年度中に実施】
設置認可に際しては、設置認可の基準や要件等を明示した上で、いわゆる「準則主義」に基づいて決定が行われるようにするべきである。なお、私学審議会の在り方についての検討も必要である。【平成13年度中に検討】
公立学校システムに関しては、まず、学校運営に係る責任の明確化を図る観点から、教員人事権を個々の学校に委譲することを含めて基本的な見直しを開始するべきである。また、教育サービスの質的向上の観点から、教員や学校全体の評価システムを確立し全校で実施するとともに、学校全体の評価については、その結果を公開することが必要である。【平成13年度中に検討】なお、評価の内容や導入の仕方や時期に関しては各自治体がニーズに基づいて決めることが望まれる。
教員採用の多様化をするために、特別非常勤講師制度の積極的活用を含め、教員免許を必要とせず、社会経験などの要素を入れた他の基準による評価も併せて考慮して採用できるようにするなどの方策を一層推進することが必要である。【平成13年度中に検討、結論】加えて、国民にとっての多様な選択肢を拡充するという観点から学区の弾力化について、各自治体はその考え方や実施方法を公開し、保護者等が十分な情報を持つことができるようにすることが望まれる。
子供たちの学ぶ意欲を高めていくためには、教員の資質の向上が必要不可欠であり、企業経験者の積極的採用や教員が企業等学校外において研修を受ける機会の充実を図るとともに、子供がカウンセラーなどの専門家にアクセスしやすい環境を整備することについて、引き続き当会議においてその具体的改革方策の検討を進めることとする。
創造力ある人材を育成するための教育、例えば理数系教育・IT教育・芸術教育・コミュニケーション/言葉教育、等については、その充実を図ることが必要であり、引き続きその具体的な在り方についての検討を進める。【平成13年度中に検討、結論】
また、社会性を身につける教育や勤労観、職業観を育む教育機会についても、充実していくべきであると考える。【平成13年度中に検討、結論】
グローバル化に則した外国語教育の実施のみならず、国際理解教育を早期から実施するべきであり、例えば海外の小、中、高等学校との連携等によりその実現促進を図る等、当会議において具体的改革方策の検討を進める。
また、諸外国の優秀な学生が日本に留学したくなる体制や環境の整備を強化することが重要であり、例えば留学生数の倍増を実現するためのODA等による支援の充実や宿舎の整備等の受入れ体制の整備・充実を進める。【平成13年度以降継続的に推進】
健全で恵み豊かな環境を将来世代に継承していくには、これまでの我が国の経済社会活動の在り方を見直し、経済発展と環境保全を同時達成し、環境の自己再生力を超える環境負荷を環境に与えない「自然と共生する社会」の構築が不可欠となる。
このため、物質循環をできる限り確保し環境への負荷をできる限り減らす循環型社会、省エネルギー型社会及び多様で豊かな自然環境と共存する共生型社会の構築が必要となる。この際、経済活動に伴う環境コストを経済活動に内部化する等、市場機能を最大限に活用しつつ環境負荷を低減させるとともに、このような環境保全活動を経済活動の新たな成長因子へ転換させる仕組みの構築を図っていくことが必要である。
環境問題は、廃棄物問題のような比較的身近な問題から地球温暖化問題のように地球規模のものまであり多岐にわたっている。自然と共生する社会への転換を図るには、環境問題の各々の構造、特性を踏まえ、環境問題ごとに適切な制度を構築していくことが必要である。
当会議では、喫緊の環境問題のうち、以下のような基本的考え方により今後検討を進めていくこととする。
廃棄物・リサイクル問題については、循環型社会の構築のため、リデュース・リユース・リサイクルの3Rを促進するとともに、廃棄物の適正処理を確保することが必要である。そのためには、排出事業者や製造事業者の責任及び排出者としての国民の責務を徹底し、民間活力を活用することにより、廃棄物処理及びリサイクルを効率的に推進していくことが必要であり、このような観点から、廃棄物処理法を始めとする諸制度の見直しを行うことが必要である。
土壌汚染は、土壌の直接摂取や地下水汚染を通じて人の健康や生活環境、生態系に悪影響を及ぼし、さらには土地取引の円滑化の阻害要因となっている事例も見られる。したがって、早急にその対策を行うことが必要である。
地球温暖化問題については、京都議定書の批准に備え、経済的手法の活用等により、二酸化炭素等の温室効果ガスの削減を図るための総合的な対策について早急に検討することが必要である。
また、環境保全活動全般を通じ、経済活動の重要な主体である企業等による環境保全のための自主的取組が非常に重要な位置を占めており、これを推進するため、環境会計等、外部から環境保全に係る企業等の取組努力を評価できるような情報的手法の活用について検討するべきである。
また、ヒートアイランド現象は、都市の高温化やこれに伴う豪雨のほか、冬季における都市での大気汚染の悪化等、都市の生活環境に悪影響を与えている。このため、その対策を検討することが必要である。
自然との共生については、動植物の生息し得る多様な自然環境が失われつつあるとともに、ペットの遺棄等に伴う外来種の移入により生態系に混乱が生じていることが問題である。このため野生生物の生息地等の豊かな自然の保全と失われた生態系の再生など、人間と自然が共生できる社会の構築に向けた戦略を樹立するとともに、その実施を推進するための仕組み作りを行うことが必要である。
廃棄物の定義、一般廃棄物・産業廃棄物の区分の見直しについて、その処理責任の在り方と併せて検討を行うべきである。また、併せてリサイクルに係る廃棄物処理法上の業及び施設の許可や手続の簡素化に関し、早急に見直しを行うべきである。【早急に検討を開始し、平成14年度中にとりまとめを行う】
廃棄物の発生の抑制、リサイクルしやすい製品の生産等に係る拡大生産者責任につき、従来導入されていなかった分野について導入を図るとともに、既に導入されている分野については、その強化を図ることを検討し、デポジット制の導入についても検討する。【早急に検討を開始し、平成14年度中にとりまとめを行う】
不法投棄跡地等の修復対策に関し、費用負担、責任分担を明確化し、技術開発の促進や環境修復ビジネスの促進のための措置等を講ずるべきである。【早急に検討を開始し、平成14年度中にとりまとめを行う】
土壌汚染に関し、調査手続並びに浄化責任及び費用負担の明確化、情報開示の実施のための立法措置等を講ずるべきである。【平成13年度中にとりまとめを行う】
二酸化炭素等の温室効果ガスの発生を削減するための仕組みを充実させる。
その際、経済的負担を課す措置については、その有効性についての国民の理解の進展、措置を講じた場合の環境保全上の効果、国民経済に与える影響等についての調査研究結果、諸外国における取組の現状等、措置を取り巻く状況の進展を踏まえ、幅広い観点から検討するべきである。
石炭や石油に比べて炭素排出量が少ない天然ガスの普及を阻害している要因を除去するべきである。
ガスパイプライン敷設費を下げるため、埋設の深度に関する規制について技術的な検討を行うべきである。
なお、発電所の環境アセスについては、質を落とさない範囲で、いっそう合理化に努めるべきである。特に方法書手続において、事業の内容や場所に応じた合理的な調査の設計を行うなど、効率的な実施を図るべきである。こうした取組により、環境負荷が石炭に比べ相対的に少ない天然ガス発電が正当な評価を受けると期待できるからである。
環境会計等についてのルールの確立、第三者機関による監査制度の在り方等についての検討を行う。
ヒートアイランド現象の解消のため、都市の人工廃熱量の低減、地表面被覆の改善、海からの風の道を作る等のための立法措置等を今後更に講ずるべきである。
野生生物の生息地(森林、干潟、河川域等)の保全・再生、外来種の移入による生態系の破壊防止などを内容とする「自然との共生を目指す国家戦略」を策定し、これを実現するための立法措置等を講ずるべきである。【平成13年度中に予定している「生物多様性国家戦略」の改定に併せて検討を行い、とりまとめを行う】
我が国においては、1970年代以降、都市への集積をコントロールする政策が採られてきたが、これが一面では東京を始めとする大都市、ひいては我が国全体の生産性の伸びを低速させてきたとの指摘もある。近年、我が国の都市は、その生産性と魅力において、上海、香港、シンガポール等との競争時代に入ったにもかかわらず、依然として長時間通勤、慢性的な交通渋滞等の従来から続く課題さえ解決されていない。また、これまでも不動産市場に係る様々な制度整備が行われてきたが、いまだに土地神話的な要素の残る旧弊的な不動産市場も存在している。
こうした状況の下、今後予想される環境変化にきちんと対応し得るような各種制度改革をスピーディーに行っていくことが重要である。まず、都市の魅力に直結する安全で豊かな生活空間の創造を目指し、住み易く、働き易い成熟した都市生活の実現に向けた政策の転換に加え、効率的な資源配分を実現する観点から、経済社会活動の中心となる都市の魅力と国際競争力を高め、その機能を十分に発揮させることが必要である。また、現代社会の状況に応じた、公正で透明な信頼のできる不動産市場を再構築するための構造改革を推進することが必要である。
都市の価値を維持し高めていくためには、経済社会の成熟化の進展に応じた適切なマネジメント手法や様々な仕組み・制度の導入が必要であることはいうまでもない。しかし、そうした仕組み等を活用しながら、地域の活性化を推進していく主体は、地域の住民自身や事業関係者であり、そこで求められているのは土地利用の公益性とダイナミズムの確保である。この観点から、不動産市場の構造改革と、都市に関わる諸制度の抜本的見直しを進めていくべきである。
不動産市場の構造改革は、都市再生の基本課題であり、まず、取引情報の開示、仲介業者の機能やサービスの質の向上、証券化の更なる促進による流動性の創出等、不動産市場の透明性を高める方向の制度整備が重要である。とりわけ、取引情報の開示の徹底は、最も基本的な施策である。その際、プライバシーの保護等の問題が予想されるが、土地利用の公益性、不動産市場の活性化という公共性を踏まえれば、国民全体として長期的に得られる価値の方が大きいと考えるべきである。情報開示の結果として、現在の国家的課題である不良債権処理等に直接間接に寄与できる部分も大きい。また、借家制度等、不動産と密接に関連する諸制度について、事前予測可能性を最大限確保する方向での制度改正も必要である。こうしたことを通じ、透明で公正な信頼できる不動産市場を確立する。さらに中古住宅を良質な社会資本として維持・流通させるため、中古住宅市場の整備を推進することが重要である。
都市に関わる諸制度の抜本的見直しに当たっては、まず国際的水準の都市づくりを誘導する具体的なグランドデザインの策定と実行が必要であり、その際民間主体による積極的投資が行われるよう、民間の都市計画に対する責任と自発性を醸成することが重要である。また、地震等の災害に対して安全な都市空間を創造するためにも、街区の統廃合を含めた敷地の統合化を図り、国際的水準の都市骨格を形成する。これにより、高度利用が推進され、集積の利益を通じた都市の生産性が向上することとなる。さらに、交通基盤・情報通信基盤等インフラ整備に重点的な資源配分を促すとともに、インフラ整備を阻む制度的要因を是正することが必要である。 また、分譲マンションについて、現在既に築後30年を超えているものが約12万戸あるが、10年後には、約93万戸に急増すると予想されており、老朽化マンションへの対応は、住宅政策上の喫緊の課題となっている。マンション建替えについては、その制度に多くの課題が指摘されており、早急に制度を整備することが必要である。
不動産価格に関する正確かつ詳細な情報に対するニーズは著しく高くなっている。不動産の流動化を促進する上で不可欠な市場の透明性を高める観点から、土地の取引価格情報について、国民からの要請に応じて適切な形で提供できるような仕組みを早急に検討していくべきである。
また、地価公示価格の透明性及び社会的信頼性を高める観点から、その情報の一層の開示(取引当事者、取引対象地等が特定されない範囲で、評価の手続、評価に用いた基礎的情報を閲覧等により一般に公開)を図るとともに、固定資産税評価額について、当面固定資産税課税台帳の縦覧対象範囲の拡大を図るほか、さらに情報開示の拡充を進めるべきである。
不動産評価の一層の適正化を図るため、不動産鑑定評価基準の見直しを図ることで、より収益性を重視した不動産鑑定の定着を促進するべきである。【平成14年度中に実施】
不動産取引の透明性・公平性等をより一層推進する観点から、耐震性能の追加など重要事項説明の範囲を拡大するとともに、いわゆる両手仲介及び仲介手数料の在り方、エスクロー制度の導入について検討を行うべきである。
居住用建物について、当事者が合意した場合に定期借家権への切替えを認めることを検討するべきである。
また、借地借家法上の正当事由制度について、建物の使用目的、建替えや再開発等付近の土地の利用状況の変化等を適切に反映した客観的な要件に基づく制度とすることを検討するべきである。
正常な賃貸借の保護という観点も踏まえつつ、悪用・濫用のケースが多く透明性、事前予測可能性等の観点から望ましくない現行の短期賃貸借制度については、廃止することを基本として検討し、平成15年通常国会までに関係法案を提出するべきである。
地籍調査の実施率が低い都市部において、計画的集中的に地籍調査を行うとともに、土地境界紛争に関する裁判外紛争処理制度などの地籍調査を促進するための対策を講ずるべきである。
建築基準法の集団規定について、その趣旨・目的を明確化する観点から、できるだけ集団規定を性能規定へ移行させるために検討を行うべきである。また、街区単位・地区単位で緩和や規制を柔軟に判断できるような制度等の仕組みについても併せて検討を行うべきである。
容積率の根拠について説明責任を果たすとともに、今後国際的な水準のオフィスビルを整備していくという観点から、容積率の算定方法を見直すなど容積率規制制度の合理化を図るべきである。
地区計画等以外の都市計画についても、民間主体から提案ができる制度など、より多様な主体がまちづくりに積極的に参画できる仕組みの導入について検討するべきである。
市街地再開発等の都市計画事業を進めていくに当たって、都市計画決定、組合設立認可、事業計画認可、権利変換計画認可の各手続段階において制度の趣旨に沿った運用を徹底するため、合意形成プロセスにおけるルールの明確化等を図り、事業進捗の迅速化を推進するべきである。
市街地再開発事業の施行区域要件について、耐震性の向上、狭小な敷地・街区の統合化、高度利用化などによる公益性をも尊重し、耐火建築物の割合の算定における除外建築物の拡充などにより、施行対象範囲を広げるべきである。
公共用地取得に携わる職員の資質向上、民間事業者への委託等により、一層効率的な用地取得を進めるべきである。【平成13年度中実施】
駐車場や住宅付置義務、負担金や施設提供義務等不明瞭な基準による要綱行政については、必要な場合には条例化することを原則とするとともに、その内容が法令の趣旨に照らし適正なものとするなどルールの明確化・客観化を図るよう指導するべきである。また、要綱の目的・意義を一定期間ごとに再検討し、できるだけ縮小することを基本として、必要に応じて見直すよう指導するべきである。【平成14年度までに実施】
インフラ整備に伴う路上工事に関し、工事帯の延長・工事帯幅の拡大・工事時間延長等を認めることにより、混雑度が高まる代わりに、工事期間が短縮され、工事全体がもたらす外部費用の総計を縮減できる場合もあると考えられる。そのため、路上工事に係る道路占用・使用許可の運用改善について検討を行うべきである。
交通渋滞・通勤混雑を緩和し、都心部の有効・高度利用を可能にするため、ピークロードプライシングの導入に向けての条件整備を含めた検討を行うべきである。
区分所有法の建替え要件を5分の4以上の合意のみとすることや、隣接敷地との敷地共同化による建替えや住宅部分以外の床(商業・業務床)の大幅な増加を認めることも含めて、マンション建替えを円滑に実施するための方策を早急にとりまとめ、遅くとも平成15年通常国会までに関係法案を提出するべきである。
再建建物への権利の円滑な移行のための仕組み等を取り入れた新たな建替え等の制度について早急にとりまとめ、遅くとも平成15年通常国会までに関係法案を提出するべきである。
総合設計制度の積極的活用等により既存不適格マンションの建替えの円滑化を図るべきである。
中古住宅の外装、内装、設備、耐震性能等を第三者である評価機関が買主又は売主に代わって標準化された方法により検査し、買主がその結果を参考とし購入を判断できるような制度を導入するべきである。【平成14年度中に実施】
管理組合の維持管理を支援し、適正に維持管理がなされたマンションが適正に市場で評価されることを目的として、マンションの維持管理等に関する情報を第三者機関に登録し、その情報を開示する制度を導入するべきである。
今後の審議の進め方
フリートーキング(規制改革の基本理念)
※重点検討分野ごとにワーキング・グループを設置(医療、福祉・保育等、人材(労働)、教育、環境、都市再生)。素案審議までの間に随時開催(有識者ヒアリング、省庁ヒアリング、論点整理等)。
フリートーキング(重点検討分野における検討課題)
重点検討分野別審議(主要省事務次官出席)
中間とりまとめ素案審議
中間とりまとめ案審議・決定
オリックス株式会社代表取締役会長兼グループCEO
セコム株式会社取締役最高顧問
株式会社商船三井代表取締役会長兼会長執行役員 *環境WG主査
株式会社ザ・アール代表取締役社長
東京大学大学院法学政治学研究科教授
株式会社リクルート代表取締役社長
株式会社イー・ウーマン代表取締役社長
株式会社旭リサーチセンター代表取締役社長 *医療WG主査
慶應義塾大学商学部教授 *人材(労働)WG主査
ユニ・チャーム株式会社代表取締役会長
東京大学空間情報科学研究センター教授
ゴールドマン・サックス証券会社東京支店ヴァイス・プレジデント *都市再生WG主査
森ビル株式会社代表取締役社長
社団法人日本経済研究センター理事長 *福祉・保育等WG主査
東京大学大学院情報学環教授 *教育WG主査