競争政策、特に競争の促進は、市場が正常に機能することを担保するために極めて重要な分野である。特に独占禁止法(昭和22年法律第54号)等は、市場における参加者の行動を律する最も基本的なルールを提供するものであり、その執行機関たる公正取引委員会は、市場における競争を促進し、自由かつ公正な競争を担保するため、競争政策の番人たる役割を果たすことが期待される。同時にまた、新規参入を阻害する行為や消費者の誤認を招く不当な表示が行われないよう、規制改革後の市場の監視に努めていくことも期待される。
また、政府調達システムについては、受注業者間の自由かつ公正な競争を促進し、納税者にとって納得感の高い制度を確立するため、公共工事の適正な施工の確保を図りつつ、競争的環境の一層の整備を行う必要がある。
規制改革の目的は、ルールに基づいた自由で公正な競争が行われる経済社会を実現していくことであり、市場経済の基本ルールである独占禁止法等についても、その厳正な執行が求められる。このためには、独占禁止法等の執行機関である公正取引委員会について、その体制と権限が独占禁止法等の執行の徹底にふさわしいものである必要があり、そのための検討が不可欠であると考えられる。
権限に関しては、公正取引委員会は現行法制の下では行政調査権限を有するのみであるが、これを強化して、国税庁のように犯則調査権限も併せて有するようにすべきではないかとの指摘がある。一方、独占禁止法違反行為に対して行政処分に加えて刑事罰も科され得る現在の独占禁止法の措置体系にかんがみると、公正取引委員会が独占禁止法違反行為を調査する権限の強化に関する議論は、独占禁止法違反行為に対して採られる措置の体系(刑事罰か行政処分か)がどうあるべきかという議論と密接不可分の関係にある。
したがって、厳正な独占禁止法の執行を図る観点から、現在の独占禁止法の措置体系及び公正取引委員会に付与されるべき権限の在り方についての一体的な検討を開始すべきである。
体制についても、公正取引委員会の体制強化を図るとともに、公正取引委員会の位置付けについて、規制当局からの独立性及び中立性等の観点からよりふさわしい体制に移行することを検討すべきである。
独占禁止法は、事業支配力の過度の集中を防止する観点から、持株会社や大規模会社の株式保有等を規制している。しかし、このような一般集中規制は、企業の事業活動に過度な抑止的効果を有しているとの指摘もあることから、不断に経済実態の変化等を検証し、規制を継続する必要がなくなった場合には、直ちに必要な措置を講じる必要がある。
独占禁止法は、大規模会社について、自己の資本の額又は純資産額のいずれか多い額を超えて株式を保有することを禁止している。しかしながら、競争上の弊害を防止する観点から、資本の額又は純資産額というような形式的な基準で事前にその株式保有を規制することに合理性を見いだすことは困難である。
したがって、大規模会社の株式保有について、資本の額又は純資産額という形式的な基準による規制は廃止すべきである。
持株会社については、事業支配力が過度に集中することとなる場合に独占禁止法上禁止される。
「事業支配力が過度に集中することとなる」とはどのような場合であるかについては、公正取引委員会が「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の考え方」(持株会社ガイドライン)で明らかにしているところである。例えば、その1類型として、持株会社グループの総資産の額の合計額が15兆円を超え、5以上の売上高6,000億円超の事業分野のそれぞれにおいて、単体総資産の額3,000億円超の会社を持株会社が傘下に有する場合と定義している。
しかし、このような基準は、平成9年に持株会社が解禁された際に定められたものであり、実際に存在する持株会社の競争に対する影響力を調査・把握して定められたものではない。
したがって、解禁後の持株会社の実際の状況、経済実態等も踏まえ、過度に持株会社を規制することのないよう、持株会社ガイドラインを見直すべきである。
政府調達システムにおいては、競争的かつ透明性の高い制度整備及び運営を図ることにより、公正な手続に基づく低価格かつ高品質な公共工事等の受発注を実現し、納税者に納得感の高い制度を確立するとともに、業者間の公正な競争を促進する必要がある。平成13年に施行された「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」(平成12年法律第127号)等により指名基準及び指名停止基準の公表が義務付けられたところであるが、更に以下のような点について改善をすることが重要である。
国及び一定の政府関係法人の工事における一般競争入札方式は、指名競争入札方式と比較すると、透明性が高く、かつ公正な競争を促進するなどの点において優れており、このことは会計法(昭和22年法律第35号)の趣旨でもある。一方、一般競争入札方式の下では、不良・不適格業者の排除が困難であり、施工能力に欠ける業者が落札し工事の品質の低下をもたらすおそれがあるとの指摘もある。
したがって、国及び一定の政府関係法人の工事について、後述するような不良・不適格業者の排除及び適正な施工の確保のための措置を強化するとともに、一般競争入札方式の拡大を逐次行うべきである。また、地方公共団体が実施する工事についても、国の動向を踏まえつつ、同様の観点から、一般競争入札方式の拡大を図るよう要請すべきである。
現行制度では、地方公共団体は、工事等の契約に当たって、一般競争入札方式のみならず、指名競争入札方式を採る場合にも、最低制限価格を設定することができることとなっている。しかし、指名競争入札は、契約の内容に適合した履行が十分期待できる業者を選定して入札に参加させるものであり、最低制限価格を機械的に設定し、これを下回る価格で入札した業者を排除する理由は少なく、競争者の利益を阻害するおそれもある。
したがって、地方公共団体が指名競争入札方式により工事又は製造の請負の契約を締結しようとする場合については、後述するような不良・不適格業者の排除及び適正な工事の施工の確保のための措置の強化、審査体制の整備等と並行して、国の工事の場合と同様の低入札価格調査制度への移行等を検討すべきである。この場合、都道府県及び政令指定都市は、他の市町村と比して適正な工事の施工の確保のための措置等が採りやすいと考えられるので、その実施する指名競争入札方式を採る工事について は、低入札価格調査制度への早期移行に向けた検討に着手すべきである。
競争入札において、一定の悪質な行為を行った者について、その事実があった後一定期間は入札に参加させないこととすべきである。例えば、指名停止措置を行う場合は、一般競争入札においては指名停止期間中は入札に参加させない旨を競争参加資格に明記するとともに、指名競争入札においても、同様に指名基準に明記すべきである。
一般競争入札の対象となるような大規模工事について、長期間にわたる工事に必要なファイナンスが十分できる経営力のある企業が入札に参加する仕組みとして、入札参加時点で入札参加企業にあらかじめ金融機関等による保証を求める制度の導入などの履行保証制度の見直し(履行義務を果たさなかった場合に発注者が被った損害の填補等の在り方を含む。)について早期に検討を開始すべきである。
公共工事の質を確保するためには、現場での施工の監督・検査(工事の途中段階での検査を含む)を徹底する必要がある。しかし、特に市町村ではそうした体制の確保が困難であるとの指摘もある。
したがって、上記アで述べた競争的環境の一層の整備と並行して、発注した工事の監督や検査について、会計法及び地方自治法施行令の規定の下での監督・検査の外部委託を積極的に活用するとともに、その実施状況を踏まえ、必要があれば更なる監督・検査の外部委託の活用についても検討すべきである。
また、行政改革及び雇用創出の観点も踏まえ、監督・検査の外部委託の積極的な活用を検討すべきである。
事務機器や情報機器のリース契約等(これら機器の保守を含む。)は、電気・ガスの契約等と同様に官庁が存在する限り必要な契約であるが、国が締結するこれらの契約にかかる長期の債務負担をあらかじめ国庫負担行為として予算で定めることは困難であるとの指摘がある。また、これらの契約を単年度で繰り返すことは合理的ではないとの指摘がある。一方、現行法令の下では、これらのリース契約は有期かつ総額の確定したものであり、電気・ガスの契約等と同様の長期継続契約に該当するとは言えないとの指摘もある。
したがって、これらのリース契約等の在り方を改善する観点から、これらの契約等の実態について調査を行うべきである。
法務分野における大きな課題としては、国民が利用しやすい司法制度の確立と事業者の活力ある経済活動を支える法的な基盤整備が挙げられる。
前者については、法曹人口の大幅増員及び隣接法律専門職種の活用を早急に実現するとともに、企業法務等の位置付けについても検討を行うことが、国民が利用しやすい司法制度の早期確立のために是非とも必要である。
後者については、現下の経済を取り巻く厳しい環境にかんがみれば、企業再建が円滑に進む環境を整備するとともに、事業者が、自らの事業活動によりふさわしい組織形態を選択できるような法基盤の整備を進め、経済の活性化を図ることが重要である。
本来市民社会における権利確保や紛争解決の手段であるべき司法が、実際には十分機能せず、行政その他により解決が図られている場合が多い。司法が本来の機能を果たすためには、法曹人口の大幅な増加が不可欠である。また、利用者である国民の需要にこたえる視点から、当面の法的需要を充足させるためにも、隣接法律専門職種の活用が図られる必要がある。これに関連して、さらに、企業法務等の位置付けについても検討を行うことが必要である。
以上の諸点の幾つかの点については、行政改革委員会の見解以来、規制緩和委員会及び規制改革委員会の見解並びに規制緩和推進3か年計画及び規制改革推進3か年計画等の既往の閣議決定において繰り返し指摘されてきたところである。本年6月には司法制度改革審議会の意見書がとりまとめられ、司法制度改革審議会意見を最大限に尊重して司法制度改革の実現に取り組む旨の閣議決定が行われ、11月には司法制度改革推進法(平成13年法律第119号)が成立し、司法制度改革審議会の意見の趣旨にのっとった司法制度改革の実現に向けた体制が整いつつある。当会議としても、規制改革の観点から、司法制度の改革の早期実現に向けてその具体的な作業を注視していく。
司法試験合格者数を、年間3,000人とするため、平成16年にはその達成を目指すべきとされている1,500人程度への増員以降、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成22年頃にその達成を目指すべきとされている3,000人程度への増員に向けて計画的かつ早期の実施をすべきである。
なお、実際に社会の様々な分野で活躍する法曹の数は社会の要請に基づいて市場原理によって決定されるものであり、平成22年頃までに3,000人程度に増員されても、これが上限を意味するものではない。
隣接法律専門職種のうち、司法書士(簡易裁判所での訴訟代理権)及び弁理士(特許権等の侵害訴訟での代理権)については、早急に所要の権限を付与するための措置を講ずるべきである。
また、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士など、その他の隣接法律専門職種などについては、その専門性を訴訟の場で活用する必要性や相応の実績等が明らかになった将来において、出廷陳述など一定の範囲・態様の訴訟手続への関与の在り方を個別的に検討することが、今後の課題として考えられる。
企業法務等の位置付けについても検討を行い、少なくとも、司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者について法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備を行うべきである。
なお、措置年限については、司法制度改革推進計画策定の過程で検討されることとなる。
弁護士法(昭和24年法律第205号)第72条は、「弁護士又は弁護士法人でない者」は、「報酬を得る目的」で法律事務を取り扱うことなどを業とすることができない旨規定している。その一方、会社形態の多様化が進む中で、例えば、親会社が子会社の法律事務について一定の範囲内で受託できるようにしてもよいのではないかとの意見もある。
また、隣接法律専門職種の有する専門性を、ADRを含む訴訟手続外の法律事務に関して、もっと活用する余地があるのではないかとの指摘もある。
したがって、弁護士法第72条については、少なくとも、規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性を確保するため、隣接法律専門職種の業務内容や会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係も含め、その規制内容を何らかの形で明確化すべきである。
なお、措置年限については、司法制度改革推進計画策定の過程で検討されることとなる。
現下の厳しい経済環境の下で経営が悪化する企業が増加する中、企業の倒産処理に関する諸法制の役割が重要になっている。特に、経営悪化した企業等の再建手続に関しては、再建手続に時間が掛かると、再建が可能な企業の再建が困難になったり、不必要に財産価値が目減りするなどの問題が生じる。
こうした問題認識も踏まえて、企業等の再建に関しては、平成12年に民事再生法(平成11年法律第225号)が施行され、これまでの和議手続に代わって簡易・迅速な手続が整備されたところであり、企業等の再建の選択肢として重要な位置を占めるようになっている。
権利関係が複雑でより強力な手続が求められる株式会社の再建に関しては、会社更生法(昭和27年法律第172号)が存在するが、同法に基づく会社更生手続については、これまで手続に時間が掛かるなどの問題点が指摘されてきたところであり、企業の迅速かつ円滑な事業再建を可能とする透明性の高い会社更生手続としていくことが重要である。例えば、新しい民事再生法の成果も踏まえれば、更生手続開始の条件や債権確定手続などについては、手続迅速化のための見直しが必要ではないかと考えられる。
したがって、会社更生法に関して、更生手続開始の条件の緩和や債権確定手続の迅速化のための見直し等も含めて総合的な検討を行い、会社更生手続が、企業の迅速かつ円滑な事業再建を可能とする透明性の高い手続となるよう会社更生法を改正すべきである。
我が国においては、民法(明治29年法律第89号)、商法(明治32年法律第48号)、有限会社法(昭和13年法律第74号)のほか特別法により幅広い組織形態が認められており、匿名組合及び中小企業等投資事業有限責任組合など、米国のリミテッド・パートナーシップに類似するものがある。
このような現行法上の組織形態については様々な指摘もあり、したがって、合理的かつ健全な事業組織形態の在り方について、私法上の問題点の整理と検討を開始するとともに、併せて税法上の取扱いも検討すべきである。
金融分野における課題としては、(1)資産運用と資金調達の双方の分野において個人と企業の多様な金融ニーズにこたえるための一層の制度整備と、(2)不良債権問題の早期解決を通じた金融機能の向上とその結果展望される我が国金融業の再生等が挙げられる。
当会議としては、日本版「金融ビッグバン」の成果を踏まえた上で、これらの課題に取り組むために必要な規制の撤廃・緩和を更に推し進め、これを通じて、次代の成長産業であるべき金融サービス業の発展のための基盤整備を行うことが、国民経済の発展に寄与するためにも極めて重要であると考える。
こうした観点から、今年度の具体的な取組方針としては、第一に、「事前規制から事後監視へ」という監督行政の在り方のパラダイム転換がいまだなされていないと考えられる分野の規制については、その時間軸を大幅に早めて改革を遂行すること、第二に、金融を取り巻く急速な環境変化に照らして、業務に関する規制で見直しの必要性が高まっているものについては、個別に改革を行うこと等を掲げることとする。
なお、金融審議会の答申(「21世紀を支える金融の新しい枠組み」平成12年6月27日)においては、金融サービスの各分野に関する「取引ルール」、「業者ルール」、「市場ルール」の横断的な整備に向かって着実な努力が必要であるとしており、個別の規制の撤廃・緩和に当たっても、金融サービス分野における規制の全体像の行方を視野に入れつつ、これを積極的に推進していく必要がある。
したがって、以下で指摘する具体的な施策の検討及び実現に際しては、上記のような法制・ルールの「横断的な整備」の観点を踏まえるべきである。
銀行等の登録金融機関による投資信託等の窓口販売については、投資家の利便性の向上等の観点から、平成10年12月以降、いわゆる金融システム改革により開始され、その販売額の拡大とともに販売体制・情報提供体制も整備され、個人投資家の間に確実に浸透してきている。こうした中で、今年に入り、新たに株価指数連動型上場投資信託(ETF:Exchange Trade Fund)や不動産投資信託が導入された。
通常、投資信託は、その購入をした証券会社や登録金融機関を通じて投資家は解約又は売却を行うが、ETFについては、個人投資家は取引所等の市場を通じて売買を行う仕組みになっている。このため、投資家がETFの購入や売却を行うためには、市場への売買の取次ぎ等を依頼することになるが、現行制度上、登録金融機関による窓口販売は、募集の取扱い等を行った投資信託等の顧客からの売り付けの取次ぎ等に限られており、購入(買い付け)のための取次ぎ等は認められていない。
株価指数に連動する上場タイプの証券投資信託であるETFは、投資家に対して利便性の高い株式投資の手段として提供され、我が国の証券市場の活性化に資するものと期待されるものである。このため、本年8月に金融庁が発表した「証券市場の構造改革プログラム」及び9月の政府の「改革工程表」において、個人投資家にとって魅力ある投資信託の実現のため、株式投資信託の販売チャネル多様化の方策として「上場投資信託(ETF)の銀行での取扱いの実施のための所要の措置を講ずる」こととされたところである。
銀行等の登録金融機関においてETFの販売が行えるようになることは、個人投資家の利便性の向上及び我が国証券市場の活性化に資するものと考えられる。
したがって、こうした観点から、ETFについて、銀行等の登録金融機関における窓口販売が行えるよう、法令上の措置を行うべきである。
我が国の証券決済制度は、証券の種類ごと、また券面の有無に応じて、決済制度が異なっており、これを改善して、決済リスクを削減し、国際的にも遜色のない安全かつ効率的な決済制度を構築する必要がある。このような観点から、本年6月には短期社債等の振替に関する法律が成立し、CPのペーパーレス化と単層構造の場合の振替制度が実現した。今後は、一般の社債等を含めて、無券面化を可能とするとともに、証券が金融機関や証券会社等を通じて階層的に保有される場合について、横断的かつ統一的な証券決済制度の構築を目指す必要がある。
したがって、証券決済の迅速化及び確実化を実現するため、社債等について、その無券面化を可能とするとともに、それが階層的に保有される場合について、社債等登録法(昭和17年法律第11号)を廃止し、新たな振替制度を創設すべきである。
銀行法(昭和56年法律第59号)第10条第2項では、同項各号に掲げる付随業務のほか、「その他の銀行業に付随する業務」(その他付随業務)を営むことができるとしている。
しかしながら、例示業務以外に具体的にどのような業務がその他付随業務に該当するかどうかについての基準は明示されていない。また、銀行が固有業務を遂行する中で正当に生じた余剰能力(エクセス・キャパシティ)を活用することは明示的には認められていない。
平成12年12月の金融審議会第一部会報告では、「(『その他付随業務』に該当するかどうかの基準を)当局が提示し、行政の透明性を向上させるとともに、銀行等が新たな付随業務を開始することを容易にすることが望ましい。」と示されている。また、エクセス・キャパシティについては、「他業禁止の趣旨や本来銀行にどのような業務が求められているのか といった観点に留意しつつ、その適切な範囲での活用を認める方向で検討することが適当である。」とされている。
さらに、「規制改革推進3か年計画」(平成13年3月30日閣議決定)では、本件は「銀行・保険会社本体の業務範囲の見直し」として「平成13年度検討・結論」とされている。
したがって、情報化・高齢化等の環境変化が急速に進む中、多様化・高度化する顧客ニーズへの的確な対応を通じて顧客の利便性を向上していくためには、金融審議会第一部会に示された考え方を踏まえ、「その他付随業務」の該当基準を早急に明確化し、付随業務の範囲を柔軟に拡大すべきである。
いわゆる金庫株解禁等に係る商法改正(平成13年6月29日公布)により、株式会社は資本金の4分の1に相当する額を超過する法定準備金について、これを株主総会の決議により減少することが可能となった。これを受けて銀行法第18条も改正されたものの、従前の利益準備金の積立限度額に係る規定との平仄と銀行の健全性確保の観点から、銀行が減少することができる法定準備金の額は資本金と同額を超過する部分とされた。
また、法定準備金の減少に際しては、資本減少時における債権者保護手続(預金者等への個別催告)が必要とされている。
しかし、多数の預金者を有する銀行にとっては、預金者等への個別催告を行うことは実務上の大きな制約となっている上、仮にこれが可能であるとしても多大なコストを要し、かえって銀行の健全性確保の観点から問題であるとの指摘がある。当会議としては、銀行が法定準備金の額を法律で認められた範囲内である資本金と同額を超過する部分まで減少する限りにおいては、その手続きを改善し、実際に利用可能な合理的な制度とすべきであると考える。
したがって、銀行については、法定準備金の減少に際しての債権者保護手続について、合併(銀行法第33条)や会社分割(同第33条の2)の場合と同様に、預金者等への個別の催告を不要とすることの可能性について検討を開始すべきである。
現在、信託銀行が行う公告については、次のa〜cのとおり日刊新聞紙又は官報に掲載することとされている。
定型的信託契約に係る約款変更を行うとき、所定の事項を日刊新聞紙に公告。
貸付信託に係る信託契約を締結・変更しようとするとき、所定の事項を日刊新聞紙に公告。なお、内閣総理大臣の承認を受けた信託約款においては、一定の事項を日刊新聞紙に公告(方法については法定されていない)。
公益信託について、毎年1回一定の時期に信託事務及び財産の状況を官報に公告(方法については法定されていない)。
インターネットが急速に普及する中、公告をインターネットによって行うことは、日刊新聞紙又は官報による公告と比べて、公衆縦覧性の点で劣らず、また検索も容易である等、委託者・受益者等の利便性向上に資する。また、低コストで広く情報の送受信ができるというメリットもある。
平成13年4月に公表された「商法等の一部を改正する法律案要綱中間試案」においても、株式会社の行うべき公告をインターネットでも可能にすることを提案している。
したがって、信託銀行が行うこれらの公告について、委託者・受益者の利便性向上及びインタ−ネットによることを認めることの各種のメリットにかんがみ、電磁的方法の利用を認めるための検討を開始すべきである。
「規制改革推進3か年計画」では「保険会社の特別勘定の見直し」として、「特別勘定の資産が、保険会社の破綻時において顧客のために保全されるよう、一般勘定と特別勘定のリスク遮断をより厳格化する等の措置について検討する。その検討に際しては、特別勘定で経理される財産を一般勘定へ振り替える場合、現金でなく現物資産のままできるようにすること、特別勘定へ直接保険料を投入できるようにすることについても併せて検討する。(13年度以降検討)」とされている。
生命保険会社が経営破綻した場合、現行では保険業法(平成7年法律第105号)に該当条項がないため、一般勘定、特別勘定とも同等に扱われる。しかし、特別勘定で運用される資産については、その価額変動リスクを基本的に顧客が負うこととなっており、当該生命保険会社の経営破綻の原因とは無関係であると言えるものである。
また、特別勘定へ資金を投入する際には、リスク遮断の観点から一般勘定を経由することなく直接的に行うことも考えられる。
したがって、こうした特別勘定で運用される資産については、一般勘定との財産的性格の相違や保険会社における負債性の相違から、リスク遮断の厳格化を前提とした保険関係請求権への特別先取特権の付与等について、検討を開始すべきである。
現行では、保険料受入れ及び解約時の引渡しに際しては、株、債券等の現物資産によって行うことが認められていない。一方、新会計基準の適用に伴い、企業の間で保有株式を年金制度に現物で拠出することで退職給付に係る積立不足額を解消したいというニーズが高まっている中、企業間の持ち合い株式を市場に悪影響を与えずに解消できる手段として現物資産による保険料受入れ等の導入が望まれている。
したがって、特別勘定において保険料の受入れ及び移受管を現物資産で行うことについて、検討を開始すべきである。
特別勘定を付加できる契約は、現行は、(1)変額保険、(2)新企業年金(適格退職年金契約)、(3)厚生年金基金保険、(4)国民年金基金保険、に限定されている。これ以外の保険商品に特別勘定を付加するためには、別途、法令上の措置が必要になる。
しかし、多様な市場のニーズに対応するために対象商品の拡大を求める声が強まっており、したがって、特別勘定を付加できる保険商品を拡大すべく法令上の措置を行うべきである。
銀行等による保険商品の販売は、保険業法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律(平成12年法律第92号)により、平成13年4月より解禁されたものの、販売可能な商品は、住宅ローン関連の長期火災保険、信用生命保険、債務返済支援保険、及び海外旅行傷害保険の販売に限定されている(信用生命保険に関しては、銀行等の子会社・兄弟会社の商品に限定)。
平成9年の保険審報告では、銀行等による保険販売については利用者利便の向上につながるとする一方、銀行等がその優越的地位や影響力を行使することにより、(1)顧客保護、競争条件の公平性確保等の観点から弊害が生じるおそれがある、(2)預金・決済等により得た情報を流用するおそれがある、との指摘があることが示された。一方、銀行等による投信窓販の取扱い開始から既に2年余りが経過し、また、「金融商品の販売等に関する法律(平成12年法律第101号)」の制定等、保険契約者保護のための環境整備も図られてきている。
このような変化をも踏まえ、「規制改革推進3か年計画」では、「銀行等が原則としてすべての保険商品を取り扱えること、その銀行の子会社又は兄弟会社である保険会社の商品に限定しないことについて引き続き検討を行い、平成13年度中に結論を得る。」こととされている。
当会議としても、銀行等が幅広い保険商品を取り扱う環境は整いつつあると考え、利用者利便の向上と販売チャネル間の競争促進の観点から、その全面的な解禁を推し進めるべきであると考える。
したがって、銀行等による保険商品の販売規制の更なる緩和について、引き続き検討を行い、結論を得るべきである。
保険商品の審査制度・届出制に関する規制改革については、金融ビッグバンにおける保険自由化の過程において相当程度進められてきたが、より多様化・高度化する保険契約者のニーズに対する迅速な対応や商品開発の自由度の向上といった観点等から、いまだ取り組むべき課題が存在する。
具体的には審査期間の短縮、審査基準の透明性の確保、ファイル・アンド・ユース(届出使用制)の導入、企業向け保険商品の普通保険約款の自由化が挙げられるが、同様の問題意識については平成13年3月の「規制改革推進3か年計画」や平成13年6月の金融審議会中間報告においても指摘されているところであり、このような改革は保険分野の自由化による保険会社間の一層の競争を促し、また消費者より求められているサービスの向上をもたらすことにつながると考える。
現在、保険業法施行規則第246条における認可申請の標準処理期間、保険業法第125条における届出の審査期間については各々90日とされているが、認可申請及び届出の内容に応じ短期間での審査が可能であるものを類型化し、それらについては事務ガイドラインにおいて現行90日の認可に掛かる標準処理期間及び届出に掛かる審査期間をそれぞれ60日に短縮すべきである。
審査基準の透明性の確保を一層図る趣旨から、現在認可申請及び届出の際に使用されている「届出内容評価表」や「認可申請内容評価表」について所管官庁と保険会社の間で解釈の相違が生じることのないよう、その項目・記載内容について今後充実を図っていくべきである。
市場の変化に応じたタイムリーな保険商品の販売を可能にするとの観点から、保険契約者保護等の面で問題が少ない商品に関しては、届出後直ちに販売が可能となるファイル・アンド・ユース(届出使用制)を導入することについて、商品販売後に問題が生じた場合の是正措置の在り方などに十分留意しつつ、検討を開始すべきである。
普通保険約款の自由化については現在、外国あるいは国際間における様々な取引慣行に弾力的に対応することを可能とするため外国における事業活動に伴う損害賠償責任保険等ごく一部についてのみ認められているが、これを外国又は国際間において使用されるほかの種類の保険に対しても拡大することについて検討すべきである。
保険業法第300条第1項においては、保険会社や保険募集人等が保険契約の締結又は保険募集を行うに当たっての禁止行為が規定されている。すなわち、(1)重要事項の説明義務(保険業法第300条第1項第1号)、(2)虚偽告知の勧奨の禁止(同2号)、(3)告知妨害や不告知勧奨の禁止(同3号)、(4)不当な乗換募集行為の禁止(同4号)、(5)保険料の割引・割戻し、特別利益の提供の禁止(同5号)、(6)誤解を招くおそれのある比較表示の禁止(同6号)、(7)予想配当に関する禁止行為(同7号)、(8)特定関係者による特別利益の提供の禁止であり、そのほか保険契約者等の保護に欠けるおそれがあるものとして内閣府令で定める行為としていわゆる圧力募集等が禁止されているところである。
これらの禁止行為規定は、保険契約者等の保護や保険募集の公正性を図る上で有効な役割を果たしている一方、その適用範囲が明確でないとの指摘があるため、これら禁止行為の明確化を図るよう工夫すべきである。
例えば、保険商品がいわゆる標準料率や幅料率で認可される場合において、この認可範囲内での料率の適用と保険業法第300条第1項第5号に規定されている保険料の割引・割戻し、特別利益の提供の禁止との関係については、次のとおりである。すなわち、同条第2項により基礎書類(事業方法書、普通保険約款、保険料及び責任準備金の算出方法書)に基づく料率の決定は適用除外とされており、基礎書類に規定された範囲内で具体的な料率を個々の保険会社の合理的な経営判断により決定することは、保険業法第300条第1項第5号に違反するものではないとの結論に、所管官庁とのヒアリングを通じて当会議としては達したものである。
これに対して、保険契約におけるコンサルティングサービス等各種の無償提供サービスが特別利益の提供に当たるか否か等については、保険会社や保険募集人等の活動への萎縮効果の防止及び消費者の利便性の向上並びに保険契約者保護の観点から、特別利益の提供への該当性の有無を明確にするため、これまでの事例において蓄積された「特別利益の提供」の該当基準について事務ガイドラインの記載をより一層充実させるとともに、今後ノーアクションレター制度の活用等により積み重ねられた事例について適宜事務ガイドラインに例示として追記すべきである。
また、契約内容等についての比較広告規制については、現在、金融サービスの各業態間(銀行、証券、保険等)においてその整合性が図られていない上、法令で規制されているものから業界の自主ルール(公正競争規約等)に任せられているものまであり、規制の強弱と不整合が存在しているが、保険業法及び同施行規則において禁止されている比較広告は「誤解させるおそれのあるもの」についてとなっており、禁止行為の構成要件が必ずしも明確とは言えず、実際には保険会社や保険募集人等に対する萎縮効果を生んでいる。
したがって、比較情報が正当に提供される場合には消費者の選択に資することを踏まえ、保険業法第300条第1項第6号及び同施行規則第234条第4項についての禁止行為についても「特別利益の提供」と同様に、これまでの事例において蓄積された該当基準について事務ガイドラインの記載をより一層充実させるとともに、今後ノーアクションレター制度の活用等により積み重ねられた事例について適宜事務ガイドラインに例示として追記すべきである。
貸金業規制法(昭和58年法律第32号)は、すべての貸金業者に対し、貸付けの相手方の属性や規模等にかかわらず、すべての契約等について一律に行為規制を課している。また、平成11年の法改正の経緯を踏まえ、同法においては書面の電磁的交付が認められていない。
同法は、資金需要者の利益の保護を図るという観点から規定されているものであるが、書面交付について、例えば、いわゆるプロ同士の契約などについてまでも、同様の規制を課すことについては、その必要性は乏しいのではないかとの指摘がある。
したがって、このような点を勘案すれば、貸金業に係る規制については、(1)個人と法人、例えば上場企業を同一に扱う必要性、(2)貸金業者が交付する書面の電子化の実現可能性、(3)流動化の際における通知義務の緩和の可能性、等について、所管官庁において実態調査を行うべきである。
商品の購入代金等の支払に関して、リボルビング方式又は代金を分割で支払う総合方式の取扱いができるクレジットカードを発行するためには、割賦販売法(昭和36年法律第159号)に基づき、登録を受けることが必要であるが、銀行本体が発行するクレジットカードについては、既に子会社等でクレジットカード子会社を展開していることや、過去において銀行業務の比重が企業金融に置かれ、リテイル分野への経営資源の投入が遅れたという経緯もあって、実質的には認められていない。
銀行によるリボルビング方式については、既に平成10年に割賦販売審議会クレジット産業部会において、「金融ビッグバンのクレジットカード事業に対する影響等を調査し、検討を行った上で実現されることが適当である。」との中間報告がとりまとめられている。
また、「規制改革推進3か年計画」においても「銀行に対するリボルビング方式の解禁」として、「調査し、検討を行った上で措置する」とされ、「検討結果を踏まえ速やかに措置」することとなっている。
本件については、当会議としても、多様化する顧客ニーズへの対応を通じて顧客の利便性を向上するメリットが大きいと考える。
したがって、「バンクカード」でのリボルビング方式による割賦購入あっせんについては、日本版「金融ビッグバン」のクレジットカード事業に対する影響等を調査し、検討を行った上で、速やかに実現することについて結論を得るべきである。また、総合方式についても早期に調査・検討を開始すべきである。(「バンクカード」は地方銀行64行が取り扱う銀行本体発行のクレジットカード兼キャッシュカードの共通ブランド名)。
日本は気候条件等において、他の先進国と比べて劣っていないにもかかわらず、食料自給率は著しく低いものとなっているが、食の多様化による需要の変化に、国内生産が対応していないという市場メカニズムの機能不全もその一因と考えられる。
この背景には、日本の農業では、企業が多くの研究開発費を投入して技術革新をもたらし、それに関連するベンチャー企業が多数誕生するという産業のダイナミズムが欠けていることがある。
政府は、農業生産法人の一形態として、土地利用型農業に係る株式会社形態を認めること等を内容とした農地法の一部を改正する法律を成立させた。これは株式会社の参入による農業分野への資本投入や経営近代化を促進する点で評価されるものの、法改正後の半年間で、株式会社形態の農業生産法人の成立件数は7法人となっており、その大部分が既存の有限会社からの転換にとどまっている。今後、効率的な農業経営を行う企業が、海外ではなく国内で農業生産を拡大させるためには、企業による株式会社形態の農業生産法人への参画条件において、更に改善すべき点がある。
現行農地法(昭和27年法律第229号)では、農地の法人による所有は、農業生産法人(農事組合法人、合名会社、合資会社、株式会社又は有限会社)についてのみ可能とされているが、その際、以下のような要件(農地法第2条第7項)を満たすことが必要と定められている。
主たる事業が農業(農畜産物の製造・加工・貯蔵・運搬・販売、資材の製造、農作業受託を含む。)であること。
法人の社員・株主が、原則として農地の所有者、当該法人での農業常時従事者、地方公共団体・農協等、農地保有合理化法人であること。
例外的に外部からの出資を受ける場合、その総額で議決権の4分の1、個別企業では議決権の10分の1に制限。
法人の理事、取締役の過半数が農業常時従事者であり、かつ、その過半数が農作業の従事者であること。
以上のような要件等が、農家自身が法人化する場合にはともかく、当初から農地を保有していない株式会社が、農業生産法人になることを、事実上、困難なものとしていると考えられる。このため、農業の活性化とその健全な担い手を増やすための農業構造改革を早急に具体化するためには、多様な形態の経営主体の参入が必要であり、上記のような株式会社による農業生産法人への出資制限を始めとする現行制度や実態について速やかに検証を図り、農業経営の株式会社化を一層推進するための措置を講じるべきである。【速やかに検証に着手し、平成14年度以降結論を得たものから逐次実施】
企業の生産と家計の消費との間に存在する「流通」は、消費生活の充実を図り、国民生活の質の向上を図る上で、極めて重要な機能である。また、その主たる担い手たる流通企業は、特に小売企業を中心に、地域性・社会性の高い存在となっており、地域における経済活動や雇用の受皿としても重要な役割を担っている。
近年、消費者ニーズの高度化・多様化が進み、情報化等が進展する中、流通機能の担い手も商品ごとに、又は地域ごとに、多様化・複雑化してきている。流通が円滑に機能し、あくまでも消費者本位の流通サービスが提供されるようにするためには、流通企業間の競争を阻害する要因を排除することはもちろん、情報開示等の競争促進のためのより強固なルールを迅速かつ適切に整備していく必要がある。
「フランチャイズ・システム」は、本部経営者(フランチャイザー)にとっては、他人の資本・人材を活用して迅速な事業展開が可能となり、他方、加盟者(フランチャイジー)にとっては、本部の様々なサービスを活用して独立・開業が可能となるため、小売・外食・サービス業などの広範な産業分野における新規産業・雇用の創出に大きく貢献するシステムである。(社)日本フランチャイズチェーン協会の調べによれば、平成12年度では、売上高は17兆8千億円(対前年比3.3%増)、チェーン数は約1,000、店舗数は約20万店、雇用者数は約200万人に上っている。
フランチャイズ・システムが円滑に機能するためには、フランチャイザーとフランチャイジーとの連携・協力が重要であるが、このためには、両者の間の契約(フランチャイズ契約)が公正・的確に締結される必要がある。このため、政府としては、以下の2点において、契約の適正化のための措置を講じているところである。
中小小売商業振興法(昭和48年法律第101号)
中小小売商業振興の観点から、特に、コンビニエンスストア等の小売業におけるフランチャイズ契約締結の際に、フランチャイザーが加盟希望者に対して、省令で定めた一定の事項に関する契約内容の開示、事前説明を義務付けたもの。
フランチャイズ・システムに関する「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(フランチャイズ・ガイドライン)(昭和58年制定)
フランチャイズ契約については、その特徴を踏まえ、独占禁止法上の不公正な取引方法(欺瞞的顧客誘引、優越的地位の濫用等)の観点から、問題となる事項を例示したもの。
中小小売商業振興法の情報開示の対象となる事項は、国際的に見ても限定的なものとなっている。また、現行のフランチャイズ・ガイドラインにおける不公正な取引方法に該当するフランチャイザーの行為に係る記述は、明確性に欠ける部分がある上、近年のフランチャイズ産業の実態を必ずしも的確に反映していないものとなっている。
このため、現在中小小売商業振興法施行規則において定められている本部経営者による加盟希望者に対する「フランチャイズ契約締結時の書面記載及び事前説明義務」の対象となる個別事項について、当該制度が経済社会全体に持つ費用対効果の分析を含め、早急な実態把握を行うとともに、それに基づいた制度面での対応を図るべきである。また、フランチャイズ・ガイドラインについては、公正な情報開示・取引が一層促進されるよう、現在のフランチャイズ・システムにおける新たな問題の発生も踏まえて、見直すべきである。
近年、フランチャイズ・システムを採用する企業群は、小売業だけでなく、サービス業などの幅広い産業分野に広がっているが、前述の中小小売商業振興法は、中小小売商業の振興を目的とした法律であるため、同法に定める契約締結の際の情報開示、説明義務は、小売業以外の産業分野には適用されない。
したがって、近年、小売業以外のフランチャイズ産業のウェイトが高まっている実態にもかんがみ、フランチャイズ・チェーンシステムの普及促進等による中小企業・ベンチャー企業の健全な発展を図るため、サービス業などの小売業以外のフランチャイズについては、その実態把握を十分に行い、上記の現行法制上のルールに加え、契約締結時の情報開示を含めた制度の在り方について、早急に検討するべきである。
平成12年6月から施行されている大規模小売店舗立地法(平成10年法律第91号)(以下、「大店立地法」とする。)は、大型店の出店に際して周辺の生活環境の保持のために合理的な範囲内での対応を求めることを目的としているが、本法が施行されてから本年9月末までの16か月間で、379件の新規出店届出がなされるなど、本法の施行状況はおおむね順調であると評価できる。
しかしながら、一部の小売企業から、都道府県等の運用方法等に対し、その改善を求める声があることも事実である。大店立地法の運用については、自治事務として都道府県等にゆだねられており、国が個別案件について積極的に関与することはできないが、大店立地法第13条の趣旨(地方公共団体の施策における本法の趣旨の徹底)にのっとり、本法の適正な運用が確保され、地方公共団体による上乗せ規制や恣意的な運用がなされないようにすることは重要である。
したがって、経済産業省及び各経済産業局は、部内に設置された「大店立地法相談室」などを通じ、地方公共団体に対し必要に応じて法の解釈を示すとともに、法第13条の趣旨に反する事例が生じた場合には、速やかに地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づく技術的助言・勧告を行うべきである。
また、大店立地法第4条に基づき定められ、設置者が配慮すべき基本的な事項や、駐車需要の充足、騒音の発生への対応等の店舗施設の配置及び運営方法に関して配慮すべき具体的な事項を内容とする「指針」については、産業構造審議会・中小企業政策審議会の中間答申(平成11年5月)を踏まえ、大店立地法の施行後5年以内(平成17年6月1日まで)に必要な見直しを行うとされているところである。
しかしながら、既に策定後2年以上、法施行後1年以上を経過し、本法の施行状況に対する評価もより明確になりつつあるため、本「指針」について、平成16年度中を目途とする見直しに向けた調査等を早急に行うべきである。
電力供給システムについては、平成12年3月の小売部分自由化を契機として、新規参入者の市場参入が実現し、小売託送料金を含む電力料金の値下げが行われ、従来からの競争促進策には一定の効果が見られるところである。他方、新規参入者の電力供給シェアは現在のところ小さい。また、現行の接続供給制度については、行政が定めたルールに従い託送収支の公開等を行っており、託送約款やその運用には行政のチェックが行われているところであるが、接続供給料金や事故時バックアップ料金の算定における妥当性、透明性が不十分との指摘もある。さらに、競争圧力の下で既存電力会社による規制対象需要家までを含めた料金値下げなどの「効率化の成果」がみられるものの、圧倒的な市場シェアを保つ既存電力会社相互の競争については、自家発子会社等を通じた小規模な競争に止まっている。
このように、現行制度には、まだ施行後1年余の段階ではあるが、幾つかの問題点も指摘されている。これらの問題点については、既存電力会社相互の競争の促進も含め、是正を図っていくことが国民経済的にも重要な課題である。
都市ガス事業分野では、平成7年にそれまでの供給区域内の独占供給体制から年間契約数量200万m3以上の大口需要家へのガス供給が自由化され、11年には当該自由化範囲を100万m3以上まで引き下げたほか、自由化市場における競争を促進する観点からパイプラインの託送制度が整備された。この結果、一部において新規参入者によるガス供給が開始されるなど一定の成果がみられるところであるが、その供給量は全大口需要家への供給量の2%程度となっている。
今後は、安定供給を確保しつつ、自由化範囲を拡大し、より競争促進的なガス市場を構築することで、需要家利益の一層の向上を目指すことが必要である。とりわけ、天然ガスはクリーンエネルギーとして注目されており、競争的な市場の構築を通じてその供給コストを低減させていくことは、今後我が国が直面する地球規模の環境制約を克服しつつ、競争力ある経済社会を維持発展させていく観点からも極めて重要である。他方、こうしたガスの競争的市場を有効に機能させるためには、その供給基盤として必ずしも十分とは言えない国内ガスパイプライン網等を強化するための投資促進的な措置を検討するとともに、それらの公共的利用を図るためのルール整備を進めていく必要がある。
上記の問題意識及び検討の方向性を踏まえ、平成14年度において、以下の事項について総合資源エネルギー調査会電気事業分科会の場などを通じ検討・検証を行い、経済産業省において早急に結論を得るべきである。【平成14年度中に措置(検討、結論)】
小売自由化範囲が限定された現状においては、選択肢の拡大を求める消費者の要望に必ずしも十分にこたえられない可能性もある。このような要望への対応のため、広域的な電力の融通のための仕組みの整備や送電網の広域的な整備などによる大規模電源についての投資環境の整備が行われ、電力の安定的な供給が確保されることを前提として、全面自由化を実施するべきである。仮に、急激な全面自由化の実施に伴う影響が非常に大きいといった特段の問題がある場合には、少なくとも高圧分野までの自由化範囲拡大は即座に実施するとともに、全面自由化を実施する条件・時期等を明確に設定するべきである。
自由化範囲を拡大する際には、いわゆる同時同量の原則を高圧分野以下の需要家を含めて要求することとした場合には、メーターの設置コスト等が膨大となり、それ自体が新規参入者に対する参入障壁となる可能性もある。したがって、同時同量の確保の方法についても、電力系統全体では同時同量が守られる必要がある等の技術的な要素も踏まえつつ、より柔軟な制度への見直しを行うべきである。また、中立的な系統運用の一環として行なわれる使用量の差分の調整については、引き続き、既存電力会社が担わざるを得ないとも考えられるが、その場合、独占力を行使することがないよう適切な制度設計を行うこととするべきである。
経済合理性に則した最適な電力の需給が行われるために、全国大での卸電力市場の整備が有効であるとの見方がある一方、系統が地域的に独立している状況では、全国大の卸電力市場を整備しても、それだけではあまり有効性が無いとの見方もある。いずれにせよ、現行制度における電力の調達は、限定されたものにとどまっており、より柔軟な電力調達を可能とする観点から卸電力市場へのニーズは存在すると考えられる。また、このような市場を通じて電力が取引されることにより、既存電力会社の発電、電力販売にも競争圧力が働くことも考えられる。加えて、卸電力市場の整備により、電力取引に 伴うリスクヘッジ手段も整備され得ることとなる。他方、海外においては、市場創設に失敗し安定供給が損なわれた例も存在することから、これらを踏まえ、卸電力市場を整備するべきである。
なお、卸電力市場の整備に際しては、供給信頼度の面、効率性の面等に留意しつつ、市場原理が有効に機能するよう、託送料金の全国一律化、周波数変換設備の整備やスポット取引を実現する託送制度の整備などの条件整備を行うべきである。
現行の接続供給制度については、既に指摘したとおり、改善が必要であるとする利用者からの意見も一部にはある。これらの指摘事項については、「適正な電力取引についての指針」や「電力の取引に関する紛争処理ガイドライン」に基づき適時・適切に対応を行うとともに、必要に応じて見直しも行うべきである。また、新規参入者の利用に当たっての透明性の向上のため、一層厳格な会計分離の徹底を行うとともに、電力会社・新規参入者双方の利用上の公平性の確保のための制度整備を行うべきである。これらにより、託送料金の引き下げが期待される。
いわゆる「連系送電線」は、既存電力会社同士の競争や、新規参入者の市場参入の促進にとって不可欠との指摘もあるが、従来の我が国の送電網は、地域ごとの供給義務と費用負担の公平性の観点から整備されてきたことなどにより、事実上、電力会社ごとに完結したネットワークが形成されており、我が国において連系送電線の十分な整備が行われていないとの指摘もある。
今後、既存電力会社や新規参入者が活発な競争を行い、卸電力市場が有効に機能するためには、エネルギーの大宗を輸入に依存し、燃料調達コストを始めとした地域間の電源立地費用に大差ないという我が国の特性にも配慮しつつ、「連系送電線」の強化を始め、全国的視点からの送電線整備が行われる仕組みを整備するべきである。その際、これまでの地域独占と総括原価主義を前提とした送電線建設の費用負担のルールについては、自由化市場の下での新たな仕組みに改められるべきである。
さらに、発・送電分離も含む送電部門の中立性確保策については、安定供給を確保しつつ、これまで電力会社内で一体として行われてきた電源開発と送電線整備の計画について、中立性を確保し得るスキームの整備を行うべきである。
連系送電線を中心とした基幹送電線については、全国的視点からの整備の必要性を踏まえつつ、諸外国における送電会社や、ISO(Independent System Operator)のような、既存電力会社に限定されない主体による送電線の整備ルールや整備計画の作成などが行われる仕組みを整備するべきである。
送電線の整備ルールや整備計画の作成を全国的視点から行い、連系送電線を中心とした整備を行う制度とする場合には、その実効性を確保するため、送電線建設について入札を義務化(送電会社や、いわゆるISOなどの中立的な送電線整備主体が入札ルールの策定を行う)するといった海外での方策も踏まえ、送電線整備にも競争原理を導入し、最も効率的な送電線整備が行われるための仕組みを整備するべきである。
また、自家発電設備を所有する事業者が近隣へ電力を供給する場合、特定電気事業や特定供給の場合を除いて、現状では自ら送電線を引いて供給することはできず、電力会社に託送料を支払い電力会社の送電線を使って供給せざるを得ないが、国民経済的観点にも配慮しながら、原則として自由な送電線建設を認めるべきである。その際、送電線建設を認めることで自由化部門では不必要となる特定供給に対する許可規制の在り方や、新規参入事業者が建設したネットワークのオープンアクセスについても併せて検討するべきである。
このほか、送配電網を利用した電力分野における競争上の公平性についての懸念を排除するために、電力系統の運用のルールについて、既存電力会社とは異なる主体がこれを作成し、これに従った公平・中立な電力系統の運用を行うといった海外における方策も踏まえた制度整備を行うべきである。電力系統の安定的な運用と電力品質を維持する上でも、新規参入者が安心して技術情報を電力系統の運用者に公開できる仕組みを確保するべきである。
なお、既存電力会社がこの機能を担うこととした場合には、新規参入者に対する差別的な運用の問題だけではなく、既存電力会社同士の競争を促進する観点からも問題とする見方もあり、セキュリティや信頼度維持の観点も踏まえつつ、中立的な主体によるルール設定が行われる制度を整備するべきである。
さらに、新規参入者が託送を円滑に利用できるように、ネットワークのセキュリティの維持にも配慮しつつ、新規参入者に対する電力系統に関する技術情報などの公開や、送電線の空き容量が適時確認できるシステムを導入するべきである。
託送制度、送電線整備、電力系統の運用ルールを中立化し、発電と電力販売における競争を一層促進するためには、既存電力会社の送電部門と他部門の情報遮断の確実な担保が不可欠である。
情報遮断の問題は、部分自由化実施の以前から指摘されていたが、現状では、既存電力会社の自主的な努力にゆだねられており、各社とも情報取扱規程を定めるなどの措置を講じている。しかしながら、一部の新規参入者からは、情報遮断の在り方についての疑問も提示されている。送電部門の中立性については、発送電分離が最も望ましいとの見方もある一方、発電と送電が組織的に完全に分離された場合には、電力系統の運用への影響を考慮する必要があり、また、地域的に送電網が独立している現状では、全国規模での中立性を担保する別途の方策を検討することが適切であるとの見方もある。このような指摘や、諸外国の制度、現行制度の運用状況などを踏まえつつ、発送電を組織的に完全に分離することなども含めた中立性・公平性・透明性の担保方策を講ずるべきである。
託送、送電、系統運用の各分野の中立化を図り、発電及び電力販売の分野における一層の競争の促進を図るためには、託送制度の運用について、より専門的な見地からの事後的な監視や、より公平・中立的な立場からの市場監視が望ましいとの指摘もある。
このため、市場監視のためのより高度な専門性を備えた行政組織や、より公平性・中立性・透明性が確保された機動的な紛争処理を行う組織を整備するべきである。この組織は、専門性の高い分野における競争促進のためのものであることから、一般的な競争政策と協同・競合する関係で、両者があいまって市場監視の成果が得られることが必要である。
都市ガス事業の自由化範囲(年間契約数量100万?以上の大口供給)は全都市ガス供給量の約37%に相当するが、既に指摘したとおり、新規参入による十分な競争促進効果が認められるとは言えない。ガスの安定的な供給を確保しつつも、需要家の過半を占める年間契約数量が100万m3以下の需要家への供給についても自由化範囲を拡大することによって、競争を促進し、料金の低下、サービスの向上等自由化の果実がより多くの需要家に享受されるようにするべきである。
これに合わせ、自由化範囲における大口供給の許可制については、これを撤廃することも含め、その在り方を検討するべきである。
我が国においては、これまで、LNG基地を中心として地域毎に分散したパイプライン投資が行われ、消費地間を結ぶ輸送パイプラインは十分に形成されてこなかった。また、地域内においても、都市ガス事業の供給区域は全国土の5%にすぎず、大都市圏を除けばパイプライン網は必ずしも十分なネットワークとなっていない。しかし、全国的なパイプライン網の整備はガス市場の競争環境整備の最も重要な要素である。また分散型電源の普及促進の観点からも早急に整備を図る必要がある。
したがって、まず大動脈的な基幹パイプラインの整備促進のため、供給を行う新規のパイプライン設置者については、供給区域規制の例外とし、新たなパイプラインが通過するいかなる地点(他の都市ガス会社の供給区域内であっても)においても分岐管を通じて原則として自由に自由化部門へのガス供給を行うことを認めるべきである。またそのようなパイプライン設置者について、一定期間、例えば、使用料を高く設定することを容認するなどの、投資インセンティブを高めるための措置を講ずるべきである。
既存のパイプライン網に対しては、平成11年のガス事業法の改正により、新たにガス事業者のパイプラインによる託送制度が導入されたが、現在その対象は大手都市ガス4事業者(東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガス)に指定されている。
自由化が進展するガス市場において競争を一層効果的に推進するためには、ガス市場参加者によるガスの調達・供給手段の多様化が不可欠である。こうした競争環境を整備するため、パイプラインへの投資意欲を高めてインフラ整備を進める一方で、パイプライン網やLNG基地の第三者利用を一層拡大する必要がある。
したがって、まず既存のパイプラインについては、大手都市ガス4事業者以外の都市ガス会社のパイプラインなど公共性の高いものについては、第三者利用を一層拡大するべきである。さらにLNG基地についてもガス市場への新規参入を促進する観点から第三者利用を拡大するための措置について、最も実効性のある適切な方法を検討するべきである。また既に開放されている大手都市ガス4事業者の託送料金については公正競争の観点からその算定の透明性を高めるための一層厳格な会計分離の徹底を行うとともに、自由化の範囲の拡大に伴う一層の透明性・公平性の確保の観点から、厳格な情報遮断の仕組みも整備すべきである。これらにより、託送料金の引き下げが期待される。
我が国においては、おおむね都市ガス事業者(一般ガス事業、簡易ガス事業)による供給需要家数が2,700万、LPガスのそれが2,500万と市場は二分されている。さらに前者の市場は200社以上の一般ガス事業者と1,700有余の簡易ガス事業者によって、後者は約28,000のLPガス事業者によって細分化されている。ガス事業が規模の経済性を有する産業である以上、こうした細分化された市場が競争によって統合され、コストが低減されることが長期的にみて需要家利益にかなうものと考えられる。
このため、ガス市場参加者が、互いに公平な条件の下で競争が可能となるよう、一般ガス事業、簡易ガス事業、LPガス事業の事業区分の見直しを行うべきである。この際、簡易ガス事業者によるLNG利用については、これを認める方向で検討を図るべきである。
運輸分野は国民生活や産業活動にとって不可欠な分野であり、この分野が活性化して、高コスト構造から脱却することは、社会や経済の発展にとって必須の要件である。運輸分野は、規制が多い分野であり、このため近年においては、各種の規制改革が行われてきた。
需給調整規制の全面的な撤廃による免許制から許可制への移行、倉庫業等の許可制から登録制への移行、各分野での料金の届出制への移行等などは、参入・料金設定をより自由なものとするとともに、経済社会の変化に伴い規制は必要なものであってもできるだけ低いレベルのものに移行すべきであるとするこれまでの累次の規制改革(規制緩和)推進計画が繰り返し指摘してきた点とも合致するものと言える。
しかしながら、運輸分野における規制改革による合理化・活性化は、今後とも不断に促進されるべきものである。また、近年のIT化と歩調を合わせて、複数の省庁が関与する申請・届出等手続についてのワンストップ化など残された課題は多い。
これらの問題を着実に解決することは、社会・経済活動の便益にとって重要なことである。
運賃・料金規制については、利用者ニーズに即した運賃・料金を機動的かつ弾力的に設定することを可能にするため、現行の事前届出を事後届出とするべきである。また、運賃・料金の掲示の義務付けについては、宅配便のようにいわゆる一般消費者が利用者となる場合を除き、原則的に廃止するべきである。
営業区域に係る規制については、現在、原則として都道府県単位、拡大営業区域については経済ブロック単位にまで広げられているが、トラック事業者による効率的かつ機動的な営業を可能にする観点から、この営業区域制度自体を廃止し、全国的な範囲で自由な事業の展開を可能とさせるべきである。また、これにあわせて、許可の基準となる車両の保有台数についても、現在拡大営業区域で15台とされているが、これを全国一律に5台にまで引き下げるべきである。
タクシー事業については平成14年2月から需給調整規制を廃止し、免許制から許可制に移行することになったが、一定の条件下では需給調整措置をとることができる緊急調整措置が設けられている。この措置の発動が安易に行われ、それにより需給調整規制撤廃の意義を失わせるものであってはならないことはもとよりであり、このため発動要件と手続について、不断に見直しを行い、真にやむを得ない場合に厳に限定されるよう運用するべきである。また、発動する場合には十分な説明責任を果たすべきである。
タクシー事業は、運輸部門の中で港湾運送事業と並んで料金の認可制が残っている分野である。近時の運賃認可の運用基準の設定により遠距離運賃の大幅弾力化や特定ゾーンでの定額運賃化は一定の評価ができるが、これを真に機能するように運営するべきである。
また、車種や事業者の区分を廃止してその範囲内の運賃設定を軽微な手続で認可する点は評価するが、それ以下の運賃設定に対する認可に当たっては個別審査となっている。この個別審査においては、いわゆる「追い越し」の禁止と「不当な競争」や「差別的取扱い」のみを審査することとし、認可制の下にあっても、規制は上限規制に限られるという点を厳守すべきであり、行政による裁量判断を介入させるものであってはならない。
内航海運暫定措置事業は、保有船舶の解撤等をした者に対して交付金を交付するとともに、船舶建造者から納付金を納付させることを内容としており、内航海運活性化を図るために船腹調整事業を解消したことに伴う影響を考慮して導入されたものである。
しかし、交付金交付の期間は15年と長く、今後新たに船舶を建造するものは長期間に渡り納付金を支払わなくてはならず、新規の建造者にとって大きな負担となる。のみならず、当該事業のための借入金(700億円)は事業開始後3年余で大幅に使われており、今後日本経済が低成長を続けることが想定されることから、船腹に対する需要の動向によっては、さらに多額の支払が生じるが、それを償う新規造船は多くは期待できない事態も予想される。この場合、内航海運暫定措置事業の借入金を累増することになりかねない。
このような事態を回避するため、この事業については交付金単価の一層の減額をするとともに、健全で透明性のある施策を講ずるべきである。
平成12年11月より、京浜港を始めとする主要9港については、需給調整規制を廃止し免許制を許可制に、運賃・料金の認可制を事前届出制に改めること等を内容とする規制改革が実施されている。
このように主要9港を先行して措置したのは、港湾運送事業が「過去混乱の歴史を経験したという事実に鑑み、混乱が生じることのないよう、手順を踏んで段階的に規制緩和を進める必要がある」とする行政改革委員会最終意見(平成9年12月12日)も踏まえてのものであり、最終目標は全港湾における免許制の廃止と料金の規制の届出制への移行であることは既定の方針である。
主要9港に対する措置が実現するまでには、平成10年3月の閣議決定から2年8ヶ月を要したことに鑑み、段階的実施の第2ステップとして残余の港湾における上記の規制の改革に向けて速やかに検討を開始し、平成15年度中に結論を得るべきである。
高速自動車国道等における自動二輪車の二人乗りを認めることの可否については、平成12年の規制緩和推進3か年計画により平成12年度中に調査を行うこととされており、さらに平成13年の規制改革推進3か年計画においては、平成15年度までに結論を得るべきこととされている。一方、近時の経済の停滞が我が国の構造改革(規制改革など)の遅れに起因している側面が大きいことから、様々な分野における規制改革の一層の深度化と実施時期の前倒しが求められている。
高速自動車国道等における自動二輪車の二人乗りに関する規制の取扱いについては、自動二輪車の二人乗りの安全性の確認の問題はもとよりであるが、国民の一部に強い見直し要望があることから、過去のデータの活用、加速的な実証実験などをすることにより、当初の予定時期より繰り上げて、平成15年度中の可能な限り早期に二人乗りの是非について最終判断すべきである。
港湾における輸出入手続等については、我が国港湾の競争力強化、物流の効率化等の観点から、電子的な申請・処理を原則とすべきであり、そのワンストップ化が極めて重要であるにもかかわらず、実現に時間を要しているのが実情である。
現在、平成15年度内の運用開始を目標に、関係省庁の連携の下に、平成13年度中にシステムの仕様をとりまとめる作業が行われているが、必要なことは利用者にとって使いやすく、運用に当たってコストが低く、国際標準にも配慮し、手続面で簡素なシステムであるべきことはもとよりである。このため、既往の部分システムの改善にも努めつつ、平成15年度のできるだけ早い時期に、上記の要請を満たしたシステムの運用開始ができるよう、早急に関係省庁がグランドデザインを描き、協力して、検討・調整を加速化するべきである。
基準・規格及び検査・検定(以下「基準認証等」という。)については、自己確認・第三者認証への移行等による政府の直接的な規制の必要最小限化等を基本として、各所管省庁により分野横断的な観点から見直しが行われ、所要の措置が講じられるとともに、平成13年4月に「基準認証等制度に係る見直し状況」がとりまとめられた。
各府省においては、上記見直しの検討結果を踏まえ、ア) 国が関与する基準認証等の範囲の見直し、イ) 自己確認・自主保安を基本とした制度への移行、ウ) 基準の国際的整合化・性能規定化、重複検査の排除等の指針に基づき見直しを更に行うこととされている。
当会議においては、事前規制から事後規制への転換等行政の関与を必要最小限とするという基本方針の下に、基準認証等に関して内外から寄せられた意見・要望も踏まえ、検討を進めてきたが、下記事項については、国際整合性の確保等の観点から早急な規制の見直しが必要と考える。
電話機やモデム等の通信端末機器の技術基準適合認定制度及びPHS等の特定無線設備の技術基準適合証明制度については、諸外国の制度との整合性を図る観点から、回収命令、罰則強化などの事後措置の拡充強化を前提とした自己適合宣言制度の導入について、引き続き対象分野の特性を踏まえて検討を行うべきである。
電気用品安全法(昭和36年法律第234号)は、事業者の届出に当たって、構造・材質・性能等について製品の安全確保上同様の性質を有すると認められる範囲である「型式」を単位としている。平成13年4月からは(平成11年法改正)、それまで型式区分による届出が不要であった特定電気用品以外の電気用品について届出義務を付加しており、事業者の負担は増している。行政による立入検査などの事業者の調査に必要な区分等、法の目的に照らし必要最小限の規制となるよう、型式区分の記載内容の合理的な変更を検討すべきである。【速やかに検討】
また、電気用品に関する国際的な技術基準は、技術の進展等に伴い改訂が進められており、現行の国内基準については、現在、鋭意整合化作業が行われているところであり、速やかにその整合化が図られるべきである【平成13年度中を目途に措置】。さらに今後においても、国際基準の動向を踏まえ、タイムリーな改訂による国際整合化を図っていくことが重要である。
規制改革の推進に当たって、行政庁に対する申請等に係る国民の負担を軽減することは重要であり、申請手続に関する別表に掲げる事項について、各府省等は早期に検討に取り組み、所要の措置を講じる必要がある。
なお、手続の簡素・合理化に係る意見・要望の中には、既に添付が不要となっているにもかかわらず、当該添付書類の廃止を求めているものなどもみられることから、各省庁においては、これまで講じてきた措置について、国民にその旨周知するとともに、地方支分部局等所管行政庁にも趣旨の徹底を図ることが必要である。