規制改革推進3か年計画(改定)

規制改革推進3か年計画(平成13年3月30日閣議決定)の改定に当たっては、医療、福祉・保育等、人材(労働)、教育、環境、都市再生を重点分野とする「規制改革の推進に関する第1次答申」(平成13年12月11日総合規制改革会議。以下「第1次答申」という。)を最大限に尊重する旨の閣議決定(平成13年12月18日)を踏まえ、第1次答申の指摘事項を重点計画事項として列記する等下記のとおり改定する。

1 共通的事項

1 本計画の目的及び規制改革推進の基本方針

(1) 本計画の基本目的

本計画は、近年、我が国が直面する経済のグローバル化、少子高齢化、情報通信技術革命(IT革命)、環境問題の深刻化等の構造的な環境変化に対応して、経済社会の構造改革を進めることにより、(1)経済活性化による持続的な経済成長の達成、(2)透明性が高く公正で信頼できる経済社会の実現、(3)多様な選択肢の確保された国民生活の実現、(4)国際的に開かれた経済社会の実現等を図り、もって、生活者・消費者本位の経済社会システムの構築と経済の活性化を同時に実現する観点から、行政の各般の分野について計画的に規制改革の積極的かつ抜本的な推進を図ることを目的とする。

(2) 本計画の基本的性格

上記の基本目的を達成するため、本計画においては、各行政分野について個々の規制のみならず関係する諸制度も含めた見直しを行うための中長期的な改革課題と改革の基本的な方向性を示すとともに、当面の改革事項として、第1次答申、これまでの行政改革推進本部規制改革委員会の見解、「経済構造の変革と創造のための行動計画」(平成12年(2000年)12月1日閣議決定)、「e−Japan重点計画」(平成13年(2001年)3月29日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)、内外からの意見・要望等により明らかにされた規制改革関連事項について、これを平成13年度(2001年度)から15年度(2003年度)までの3か年にわたって取り組む事項として確定することにより、その着実かつ速やかな実施を図ることとする。

(3) 改革の重点

各分野の規制改革の推進に当たっては、特に次の視点を重視し戦略的かつ抜本的な改革に向けて取り組む。

  1. 生活者・消費者が安くて質の高い多様な財・サービスを享受することが可能になる経済社会システムの実現

  2. 企業や個人が多様な選択肢の下で自由に創造性や個性を発揮でき、競争や様々な可能性への挑戦を通じて創意や努力が報われる社会の実現

  3. 構造的な環境変化に対応した制度の再構築等による医療・福祉、雇用・労働、教育等の社会システムの活性化

  4. 持続的な発展を可能とするための環境負荷の少ない循環型社会の形成推進

  5. 企業の先導的・創造的な経済活動を促進し、新しい産業と雇用機会の創出を促進するための環境整備

  6. 高コスト構造の是正等による国際的に競争力を持った事業環境の整備

  7. IT革命により情報と知識が付加価値の源泉となる社会を構築するための制度・システムの改革

  8. 事後チェック型行政への転換、情報の非対称性の是正等透明なルールと自己責任の原則に貫かれた事後監視・救済型社会への移行

(4) 改革方針

1)見直しの視点等

具体的な規制制度の見直しに当たっては、以下の視点に沿って、規制の撤廃・緩和、運用の見直し等を推進する。また、我が国を取り巻く環境変化への対応等の緊急性にかんがみ、各般の取組の更なる加速化に特に留意する。

  1. 経済的規制は原則自由、社会的規制は必要最小限との原則の下での規制の抜本的見直し

  2. 免許制から許可制への移行、許可制から届出制への移行等より緩やかな規制への移行

  3. 検査の民間移行等規制方法の合理化

  4. 規制内容・手続についての相互の国際的整合化の推進

  5. 規制内容の明確化・簡素化や、許認可等の審査における審査基準の明確化、申請書類等の簡素化

  6. 事前届出制から事後届出制への移行等事後手続への移行

  7. 許認可等の審査・処理を始めとする規制関連手続の迅速化

  8. 規制制定手続の透明化

  9. 不合理な規制の是正による社会的な公正の確保

2)規制改革の推進に伴う諸措置

また、規制の見直し等に当たっては、これと併せて、1) 活力ある競争社会の前提条件となる社会的安定機能(セーフティネット)の確保、2) 経済活力維持・向上の観点からの公的分野の合理化・効率化、3) 企業製品等に対する国民の不安を解消し、疑念を払拭するため、特に国民の安全を確保する観点からの企業における自己責任体制の確立・情報公開等の徹底、4) 社会的に必要な規制の実効性の確保等の諸措置を実施する。

3)競争政策の積極的展開等関連改革との連携等

このほか、次のとおり、規制改革と関連する各分野の改革との連携を図る。

  1. 市場機能をより発揮するための競争政策の積極的展開

  2. 事前規制型行政から事後チェック型行政に転換していくことに伴う新たなルールの創設及びこれに係る法体系の抜本的見直し

  3. 行政組織、予算、税制、補助金、特殊法人、公益法人、地方行政等の規制改革以外の分野の改革との連携

また、国民の側からも、消費者・生活者として、規制改革が期待された効果をもたらすよう関心を持ち、これに主体的に貢献できるようにすることが重要であるとの観点に立って、各府省において規制改革の取組状況等について積極的な情報の提供を行うものとする。

2 総合規制改革会議による規制改革への抜本的取組

総合規制改革会議は、経済社会の構造改革の視点を踏まえた広範な取組を通じて規制改革を推進するための審議を行うとともに、本計画の実施状況の監視を行い、本計画に掲げられた各改革事項の推進を図るものとする。また、本計画は、総合規制改革会議における審議結果等を踏まえ改定するものとする。

3 規制改革の推進に伴う制度的な取組

(1) 行政手続法の遵守、周知

行政手続法(平成5年法律第88号)を遵守し、許認可等の行政処分及び行政指導の透明性・明確性を確保する。また、引き続き国民・事業者に行政手続法の周知を図り、その活用を促す。

あわせて、規制プロセスの予測可能性及び透明性の向上に資する観点から、許認可等のうち、いまだ標準処理期間の定めのないものについてその設定に努めるとともに、いまだ審査基準のないものについては早急に設定することとする。

(2) 行政機関情報公開法の円滑な施行

規制に係る行政情報の公開を図り、規制の効果と負担について透明性を確保し、国民への説明責任を果たすため、平成13年(2001年)4月1日から施行された行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)の円滑な施行に引き続き努める。

(3) 規制の設定又は改廃に係る意見提出手続

規制の設定又は改廃に係る意思決定過程の透明性の向上と公正の確保等を図る観点から、「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」(平成11年(1999年)3月23日閣議決定)に基づき、引き続き、規制の設定又は改廃に係る政省令等の策定過程において、広く国民・事業者に案等を公表し、それに対して提出された意見・情報を考慮して意思決定を行うこととする。

また、同手続に従い適切に規制の設定又は改廃が行われるよう、総務省は、その実施状況をフォローアップし、公表する。

(4) 行政機関による法令適用事前確認手続

民間企業等がある行為を行うに際し、法令に抵触するかどうかの予見可能性を高めるとともに、行政の公正性を確保し、透明性の向上を図るため、「行政機関による法令適用事前確認手続の導入について」(平成13年(2001年)3月27日閣議決定)に基づき、同手続の円滑な実施を図る。

また、同手続が適切に実施されるよう、総務省は、その実施状況をフォローアップし、公表する。

(5) 規制改革・規制制度の評価等

ア 規制制度に関する基礎的な調査研究の充実

総務省は、規制改革の推進に資するため、我が国の規制制度の全体像の把握等規制制度に関する基礎的な調査研究の充実を図る。

イ 規制改革の数量的効果分析の実施・公表

内閣府は、規制改革に関する国民の関心と理解を深めるため、政府における規制改革の推進に関し、規制改革による需要拡大効果、生産性向上効果、雇用創出効果、物価引下げ効果等の経済効果につき数量的な分析を積極的に行い、公表する。

ウ 規制のコスト及び効果の分析・公表

各府省は、所管する行政分野における国民の負担等の規制のコスト及び効果の分析・把握を行い、現行規制制度の見直しに資するとともに、新たに規制を設ける場合においては、当該規制のコスト及び効果についての情報の積極的な提供・公表を行い、国民への説明責任を果たすためのシステムの確立に向けて検討を進める。

エ 政策評価機能の活用

規制制度等の評価に当たっては、総務省及び各府省の政策評価機能並びに総務省の行政評価・監視機能を積極的に活用する。

(6) 規制の新設審査等

規制の新設に当たっては、原則として当該規制を一定期間経過後に廃止を含め見直すこととする。法律により新たな制度を創設して規制の新設を行うものについては、各府省は、その趣旨・目的等に照らして適当としないものを除き、当該法律に一定期間経過後当該規制の見直しを行う旨の条項(以下「見直し条項」という。)を盛り込むものとする。なお、この見直しの結果、その制度・運用を維持することとするものについては、その必要性、根拠等を明確にする。

各府省は、規制の新設について、これを必要最小限にするとの基本的な方針の下に、大臣官房等総合調整機能を有する部局において審査を行うこととする。このため、各府省は、規制の新設に当たり、規制の必要性、期待される効果、予想される国民の負担等のコスト等について検討し、その検討結果を、見直し条項を付した法律及び見直し条項に基づく見直しの結果とともに、毎通常国会終了後速やかに国民に分かりやすく公表する。

また、内閣法制局、総務省行政管理局及び財務省主計局は、規制の新設についてそれぞれの所掌事務に基づき厳格な審査を行う。

なお、総務省行政管理局及び財務省主計局は、規制の新設抑制等の観点から、各府省が行う規制の設定又は改廃に係る意見提出手続に際し、必要に応じ意見を述べるものとする。

4 計画の改定、フォローアップ等

(1) 既定計画の着実な実施

「規制緩和推進3か年計画(再改定)」(平成12年(2000年)3月31日閣議決定)を始め、規制改革に関連する既定諸計画に定められている事項のうち、本計画に記載のない事項であって、平成13年度(2001年度)内に措置が完了していない事項(措置内容が検討にとどまっている事項を含む。)についてその着実な実施を図る。

(2) 計画の改定

本計画は、総合規制改革会議の審議結果、内外からの意見・要望等を踏まえ、毎年度改定する。

なお、内外からの意見・要望のうち、現行の制度・運用を維持するものについては、各府省においてその必要性、根拠等を明確にするものとし、内閣府は、毎年これを取りまとめて公表する。

(3) 計画のフォローアップ等

内閣府は、本計画に定められた措置を積極的に推進するとともに、その実施状況に関するフォローアップを行うこととし、その結果は、総合規制改革会議に報告するとともに、公表する。

また、内閣府は、規制緩和推進3か年計画(再改定)の別紙4に掲げられている分野別措置事項のうち、本計画の個別措置事項として掲げられていないものであって、平成13年度(2001年度)内に措置が完了していない事項(措置内容が検討にとどまっている事項を含む。)についても、その後の実施状況のフォローアップを行う。

(4) 審議会等の結論の早期化

本計画の個別措置事項のうち審議会等の結論を得る必要があるものについては、審議会等の結論を原則として平成14年(2002年)9月末までに得ることとし、審議の早期化を図る。その時点で審議会等の結論が得られないものは、審議状況を取りまとめて公表するとともに、原則として平成15年(2003年)2月末までに結論を得るものとする。

(5) 市場開放問題苦情処理体制(OTO)の活用

市場アクセスの改善に資する規制改革を推進するため、市場開放問題苦情処理体制(OTO)の機能を積極的に活用する。

(6) 諸外国の規制情報の収集・分析

我が国における規制改革の一層の進展に資するため、各府省においては、その所管する分野に係る行政が、世界各国でどのように行われているかを、インターネットなども活用し常時情報収集を行い、積極的に公開に努める。外務省は、在外公館における活動の一つとして、各国の規制についての幅広い情報収集や分析に努める。

5 民事・刑事の基本法制の整備等

(1) 民事・刑事の基本法制の整備

社会経済構造の変革と事後監視型社会への転換に対応し、国民や企業の経済活動にかかわる民事・刑事の基本法について、抜本的に見直す。また、その用語・表記法においても、新たな時代にふさわしく、かつ国民に分かりやすいものとする。これらの法整備は平成17年度(2005年度)を目途に完了させる。

(2) 事後チェックを重視したシステムへの移行と司法制度改革の推進

行政の在り方が事前規制型から事後チェック型に転換していくことに伴い、許認可等の直接規制に係る体制のスリム化を進めるとともに、明確なルールづくりとそのルールが守られているか否かの監視を重視した体制に移行するものとする。

これに伴い、司法の果たすべき役割がより重要となってくることから、司法制度改革推進計画(平成14年(2002年)3月19日閣議決定)の実施等を通じ、真に実効ある司法制度改革を推進する。

6 地方公共団体における積極的な取組の要請等

国・地方を通ずる規制改革推進の観点から、地方自治の観点を尊重しつつ、地方公共団体に対し、本計画の趣旨を踏まえ積極的に規制改革に取り組むよう要請するとともに、国においても、地方公共団体における国の法令等に基づく規制について、必要に応じ検討、見直しを行う。


内閣府 総合規制改革会議