第1章 高齢社会対策の方向

4 社会参加状況の多様性

(就業状況)
 65歳以上の者の労働力率をみると、男性で32.9%、女性で13.8%となっている。年齢が低いほど労働力率が高く、65〜74歳では、男性は41.9%、女性は20.4%であるのに対し、75歳以上では男性16.0%、女性では5.9%となっている(図1−1−17)。

図1−1−17 高齢者の労働力状態(労働力率)  <CSVデータ>

年齢階級別、男女別にみた高齢者の労働力率を示したグラフ

 また、65歳以上の無業者(ふだん所得を得る仕事をしていない者)のうち、男性で15.1%、女性で6.3%が就業を希望している。一方、実際に求職活動をしている者は、男性で5.3%(就業希望者の35.5%)、女性で1.5%(就業希望者の23.6%)となっている(表1−1−18)。

表1−1−18 就業希望者・非希望者の状況  <CSVデータ>

  総数(無業者)
  就業希望者 就業非希望者
就業希望者 求職者 非求職者
65歳以上 4,398 15.1% 5.3% 9.7% 84.9%
65〜74歳 2,799 22.4% 8.5% 13.8% 77.6%
75歳以上 2,139 5.5% 1.2% 4.2% 94.5%
65歳以上 9,618 6.3% 1.5% 4.8% 93.7%
65〜74歳 4,941 10.0% 2.6% 7.3% 90.1%
75歳以上 4,677 2.4% 0.3% 2.1% 97.6%
資料:総務庁「就業構造基本調査」(平成9年)
注:「無業者」とは、ふだん収入を得ることを目的として仕事をしていない者を指す。すなわち、ふだんまったく仕事をしていない者及び時々臨時的にしか仕事をしていない者をいう。

 就業を希望する理由としては、「健康を維持したいから」が最も多く(男性44.0%、女性40.0%)、「収入を得たいから」(男性30.5%、女性37.9%)がこれに次いでいるほか、「知識や技能をいかしたい」、「余暇ができたから」、「社会に出たいから」という理由を選んだ者も合計すると男性で15.2%、女性で12.5%と相当な水準で存在する。高齢者が就業を希望する理由は多様であり、経済的な面に限らないことが分かる(表1−1−19)。

表1−1−19 高齢者就業希望者の就業希望理由別割合(若年層参考掲載)  <CSVデータ>

  総数 失業しているから 学校を卒業したから 収入を得たいから 知識や技能を生かしたいか 社会に出たいから 余暇ができたから 健康を維持したいから その他
65歳以上 100.0% 3.4% 0.0% 30.5% 7.7% 2.3% 5.2% 44.0% 6.2%
65〜74歳 100.0% 3.5% 0.0% 31.5% 7.5% 2.4% 5.6% 43.5% 5.6%
75歳以上 100.0% 2.5% 0.0% 25.4% 8.5% 1.7% 3.4% 46.6% 9.3%
(参考) 35〜64歳 100.0% 28.0% 0.0% 37.1% 5.6% 2.8% 2.1% 16.8% 7.2%
65歳以上 100.0% 1.5% 0.0% 37.9% 4.2% 2.5% 5.8% 40.0% 8.0%
65〜74歳 100.0% 1.6% 0.0% 39.6% 4.1% 2.6% 6.3% 38.4% 7.3%
75歳以上 100.0% 0.9% 0.0% 30.0% 4.5% 1.8% 3.6% 47.3% 10.9%
(参考) 35〜64歳 100.0% 4.2% 0.0% 58.5% 6.4% 6.2% 10.0% 10.0% 4.5%
資料:総務庁「就業構造基本調査」(平成9年)

高齢者と就労
 我が国では、高齢者の労働力率は高く、先進諸国と比較して最も高い水準にあることは、しばしば指摘されてきた。今後、高齢化が見込まれるアジア等の国々も含めて国際比較を行うとどうだろうか。
 我が国の高齢者の労働力率は男性で32.9%、女性で13.8%となっており、欧米諸国よりも高い水準となっている。欧米以外の国と比較すると、男性では中国、韓国と同程度の水準であり、女性ではメキシコと同じくらいの水準にある。このように、欧米以外の国を含めて比較しても我が国の労働力率は相当に高い。これらをみると、各国における労働力率の違いの背景には、公的年金などの社会保障制度の整備状況や就業構造を挙げることができるが、それだけでは説明できない要因もあることがうかがわれる。

 次に、高齢者の就業形態についてみると、男女ともに現役世代に比べて自営業主や家族従業者が多い。65歳以上の男性は、自営業主が47.6%、家族従業者が5.0%となっている一方、女性は、自営業主は25.3%だが、家族従業者は39.8%となっており、夫が自営業主で妻がその家族従業者になっている場合が多いと推測される。また、正規の職員・従業員は男性で14.1%、女性で9.9%、パート・アルバイトは男性で8.9%、女性で13.7%となっている(図1−1−20)。

図1−1−20 高齢者の性・年齢階級・就業形態別就業者割合(若年層参考掲載)  <CSVデータ>

男女別、年齢階級別にみた高齢者の就業形態別就業者構成割合を示したグラフ

 また、高齢の従業者について週当たりの就業時間をみると、35時間未満が男性で41.4%、女性で56.3%となっており、短時間就業が高齢者の働き方の中で大きな位置を占めている。特に男性の場合は、35〜64歳では10.5%であることに比べると、違いが際立つ。他方、高齢者であっても、男性の39.3%、女性の28.4%が35〜48時間、さらに、男性の18.9%、女性の14.8%は49時間以上働いており、働く時間の長さでみても高齢者の多様性がみられる(図1−1−21)。

図1−1−21 高齢従業者の週当たり就業時間別構成割合(若年層参考掲載)  <CSVデータ>

男女別にみた高齢従業者の週当たり就業時間別構成割合を示したグラフ

 このように高齢者の就業形態や就業時間は、現役世代に比べて多様である。この背景には、高齢者は定年制度や年齢制限などで正規職員として雇用されにくいという事情とともに、無理のない範囲での多様な働き方を求める高齢者側の事情もあると考えられる。

(グループ活動等への参加状況)
 65歳以上の者の約半数は、様々なグループ活動に参加している。活動の内容としては、「町内会・自治会活動」(男性28.0%、女性20.2%)、「趣味活動」(男性13.6%、女性20.2%)、「健康維持のための活動」(男性15.6%、女性10.8%)の参加率が高い。一方、いずれのグループ活動にも参加していない者の割合は、年齢が高いほど高く、また、男性よりも女性のほうが高くなっている(表1−1−22)。

表1−1−22 グループ活動への参加状況  <CSVデータ>

 
  総数 65〜74歳 75歳以上 総数 65〜74歳 75歳以上
総数 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0% 100.0%
社会福祉活動 10.7% 11.6% 8.5% 7.3% 9.4% 4.0%
趣味活動 13.6% 14.4% 11.9% 20.2% 23.7% 14.7%
健康維持のための活動 15.6% 16.1% 14.4% 10.8% 14.4% 5.1%
環境保護のための活動 11.2% 10.2% 13.6% 5.3% 6.1% 4.0%
消費者保護のための活動 1.2% 1.8% 0.0% 1.8% 2.5% 0.6%
政治活動 2.7% 3.2% 1.7% 0.4% 0.4% 0.6%
宗教活動・教会活動 4.5% 4.6% 4.2% 6.6% 8.6% 3.4%
町内会・自治会活動 28.0% 29.1% 25.4% 20.2% 21.6% 18.1%
その他 4.2% 3.2% 6.8% 4.2% 3.6% 5.1%
参加していない 45.9% 45.3% 47.5% 52.7% 47.1% 61.6%
無回答 0.5% 0.7% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0%
資料:内閣府「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(平成13年)

 また、60歳代では男性の69.0%、女性の71.8%、70歳代では男性の66.9%、女性の61.8%がボランティア活動に参加したいと考えている(図1−1−23)。

図1−1−23 年代別ボランティアへの参加意識  <CSVデータ>

年代別にみたボランティアへの参加意識を示したグラフ

(近所の人たちとの交流・友人の有無)
 60歳以上の者が近所の人たちと交流する状況をみると、「ほとんど毎日」の者が男性で19.1%、女性で22.7%を占める一方で、男性の31.5%、女性の19.9%は交流がほとんどない(後出第2章図2−2−37)。
 また、60歳以上の者について、親しい友人の有無をみると、同性・異性両方の友人がいる者も男性で22.7%、女性で13.4%となっている一方で、男性の29.0%、女性の20.9%は親しい友人がいない(後出第2章図2−2−38)。

(外出状況)
 60歳以上の者の外出状況についてみると、男性で56.8%、女性の44.8%が「ほとんど毎日外出」している一方、「ほとんど外出しない」者も男性で6.3%、女性で10.0%いる。「ほとんど外出しない」割合は、男性より女性の方が高く、また、年齢層が高くなるほど高い(後出第2章図2−2−48)。
 このように、高齢者には、働いたり、グループ活動に参加したりして積極的に社会参加している者がいる一方で、近所の人たちとの交流がほとんどない人、友人のいない人、ほとんど外出しない人がかなりの割合でいる。高齢者の社会参加の状況もまた多様である。

 

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