5 まとめ −高齢者の多様性に対応した施策を−
以上みたように、高齢者は、所得や貯蓄は平均でみれば現役世代と遜色なく、持ち家率は現役世代よりもむしろ高い。健康状態は現役世代に比べれば劣るというものの、およそ4人に3人は健康上の問題で日常生活に影響はない。およそ2割は労働力として活動しており、半分はグループ活動に参加しており、およそ7割がボランティア活動に参加意欲を持っている。子供夫婦との同居はおよそ3割で、成人子とは同居していない高齢者が半数、意識としても子や孫との同居を望む者は4割程度である。
多くの高齢者は貧しく病気がちで、子や孫に囲まれて暮らしているという旧来のイメージとは実態としても意識としても異なっており、自立した活動的な生活を送っている。今後、ベビーブーム世代が高齢期を迎えるにつれ、このような高齢者が更に増加していくことが予想される。
しかし、高齢者の姿は多様であり、活動的な高齢者が増加する一方で、介護を要する寝たきりや痴呆等の高齢者が、割合としては少なくても増加することが予想される。また、日常的な相互支援機能を担う同居家族のいない、一人暮らしの高齢者が今後割合としても増加することが予想されている。
したがって、今後の高齢社会対策は、年齢だけを基準として一定の年齢以上の者をひとまとめにして、画一的に特別の施策を講ずるのではなく、できるだけ年齢だけで別扱いせず、高齢者の多様な実態に応じた施策を講ずることが必要と考えられる。