第1章 高齢社会対策の方向

3 要介護の状況と介護サービス

(要介護の状況)
 男女及び年齢別に在宅の高齢者の要介護度(要支援を含む。)をみると、要支援者、要介護1、要介護2の合計で男性は52.3%、女性60.3%となっており、認定を受けている者の中では女性の方が要介護度の軽い者が多い。この背景としては、女性の方が一人暮らしの割合が高いため、要介護度が低くても認定を受ける者が多いことが考えられる。なお、最も重い要介護5は男性で11.8%、女性で11.4%となっている。また、年齢別に高齢者の要介護度別の構成比をみると、年齢による大きな格差は見られない(図1−4−14)。

図1−4−14 性別・年齢階級別要介護度別の高齢者の構成比  <CSVデータ>

男女別、年齢階級別にみた高齢者の要介護度別構成割合を示したグラフ

 また、施設等に在所している者の要介護度をみると、介護療養型施設に要介護度の高い者が多く、平均要介護度は3.88となっており、要介護5の者の割合も37.9%となっている。一方、介護老人保健施設には要介護度の低い者が多く、平均要介護度は2.99、要介護3以下の者の割合は61.2%となっている。介護老人福祉施設は平均要介護度、要介護度別の在所者構成比も両者の中間にある(図1−4−15)。

図1−4−15 在所者数の要介護度別構成割合  <CSVデータ>

施設別にみた在所者数の要介護度別構成割合を示した図

 要介護等高齢者のうち、医師による診断の結果痴呆と診断されている者は、在宅の要介護者等で男性19.7%、女性26.9%、また、施設在所者ではいずれも9割近い割合となっている(表1−4−16)。

表1−4−16 要介護者等のうち痴呆のある者の割合  <CSVデータ>

  在宅要介護者等 施設在所者
介護老人福祉施設 介護老人保健施設 介護療養型医療施設
65歳以上 19.7% 26.9% 89.9% 89.6% 89.4%
65〜69歳 11.8% 8.1% 80.9% 80.7% 79.8%
70〜74歳 11.8% 18.9% 83.9% 85.5% 83.7%
75〜79歳 15.2% 22.9% 87.0% 88.0% 86.8%
80〜84歳 26.4% 29.7% 90.0% 89.5% 89.6%
85歳以上 27.0% 30.7% 92.6% 91.3% 92.3%
(再掲)65〜74歳 11.8% 15.3% 82.8% 84.2% 82.3%
(再掲)75歳以上 23.2% 29.0% 91.0% 90.2% 90.6%
資料:厚生労働省「介護サービス世帯調査」(平成12年)、「介護サービス施設・事業所調査」(平成12年)
注:在宅要介護者等は、医師による診断を受け痴呆と診断された者の割合。

(要介護の原因)
 要介護者等が要介護状態になった主な原因をみると、男女で若干異なる傾向が見られる。男女とも、「脳血管疾患」が最も多いが、男性では51.6%、女性では25.2%と男性は女性の2倍程度の割合となっている。以下、男性では、「高齢による衰弱」、「痴呆」、「骨折・転倒」と続き、女性では「痴呆」、「骨折・転倒」、「高齢による衰弱」、「関節疾患(リウマチ等)」となっている(後出第2章図2−2−32)。

(介護サービス利用状況)
 介護サービスの利用状況をみると、要介護等の高齢者のうち、居宅サービスを利用した者は76.4%、利用しなかった者は23.6%となっており、約4人に3人が何らかの居宅サービスを利用していることが分かる。サービスの種類別にみると、「通所介護」を利用した者が39.2%で最も多く、次いで「訪問介護」(24.5%)となっている。
 世帯構造別にみると、単独世帯では「訪問介護」が63.0%と特に多く、次いで「通所介護」が34.5%、「食事宅配・配食サービス」が20.7%となっている。また、夫婦のみの世帯や三世代世帯では「通所介護」が多く、それぞれ32.7%、45.5%となっている(後出第2章表2−2−36)。

(介護サービスの評価)
 介護サービスに対する満足度をみると、介護サービスの量に対して、「満足」、「ほぼ満足」と回答した者を合わせると、79.9%となっている。また、サービスの質に対しても、77.2%の利用者が「満足」又は「ほぼ満足」しているという評価となっている。介護保険によるサービスは量、質ともに評価されているということができる(図1−4−17)。

図1−4−17 現在利用しているサービスに対する満足度(サービス全体)  <CSVデータ>

介護保険サービスの量、質に対する満足度の構成割合を示したグラフ

 一方、介護サービスに対する苦情申し立ての状況をみると、平成13年4月〜11月までの8か月間に申し立てられた苦情は280件であった。その内容をみると、サービスの質が22.9%、従事者等の態度が9.6%、管理者等の対応が18.2%、説明・情報の不足が10.7%、具体的な被害・損害が15.0%となっている(図1−4−18)。

図1−4−18 介護保険のサービスに対する苦情内容(平成13年度4月分〜11月分/280件)  <CSVデータ>

介護保険のサービスに対する苦情内容の構成割合を示したグラフ

 このように、要介護の状況やサービスの利用状況は性、家族形態によって異なる。サービスヘの苦情の内容には、サービスの質や管理者等の対応に対するものが多い。

(新大綱に基づく施策の方向)
 介護サービスの質の向上を図るため、ケアマネジャー、ホームヘルパー等の養成、研修の充実により資質の向上を図る。また、介護サービスを適切に選択し、良質なサービスを利用できるよう、事業者の情報公開等を進める。
 また、特別養護老人ホームの全室個室化・ユニットケア化を進めるとともに、介護施設における身体拘束廃止に向けた取組を推進する。
 痴呆介護の質の向上を図るため、痴呆介護に関する研究、専門職の養成、研究・研修のためのネットワークづくりを進める。
 また、施設における虐待については、従事者の資質の向上を図るとともに、高齢者の人権に関する啓発、人権相談や人権侵犯事件の調査・処理を通じ、その予防や被害の救済を進める。

■ユニットケアによる食事(千葉県)
 (ユニットケアー施設の居室をいくつかのグループに分けて、少人数の家庭的な雰囲気の中でケアを行うもの。入居者10人前後が一つのユニット(生活単位)とされ、食事、談話などを通じて交流が図られるよう、ユニットごとに共用スペースが設けられる。)

写真 ユニットケアによる食事状況

 

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