コラム5
高齢社会における新たな交通手段
高齢化の進展に伴い、高齢者が安全にしかも気軽に外出・移動できることが重要な課題となってきており、高齢社会対策大綱においても、「日常生活に必要な様々な支援を行う輸送サービスの促進を図る」こととされている。
ここでは、現在試みられている新たな形態の交通手段について、いくつか紹介する。
(コミュニティバス)
高齢者や身体障害者が公共施設・病院に行きやすくするなど、地域住民の交通の利便性向上を目的として、地方公共団体が運行に関与している乗合バス。
気軽に利用できるようにするため、例えば、市街地の狭い道路でも走行可能な小型のノンステップバス(床を低くして乗降口の段差をなくしたバス)を使用する、バス停の間隔を短くする、運行頻度を均一にする(15分間隔など)、運賃をワンコイン(100円均一など)にするというように、地域によって様々な工夫がなされている。
写真 東京都武蔵野市のコミュニティバス「ムーバス」
(タクシーやボランティアによる新たな形態の個別輸送サービス)
1)生活支援輸送サービス
タクシー運転手が利用者のために、輸送サービスだけでなく、買い物の代行、薬の受取、切符の手配など様々な生活支援を行うサービス。利用者は会員制で、なるべく運転者を固定して「顔の見える」関係で利用できることを目指している。
2)STS(スペシャル・トランスポート・サービス)
高齢者や身体障害者など、単独で公共交通機関を利用することが困難な者に対し、NPOなどのボランティア団体が実費程度の有償で輸送を行うサービス。
3)交通空白の過疎地における住民輸送サービス
交通機関空白の過疎地において、生活交通確保のため、住民ボランティア等が実費程度の有償で輸送を行うサービス。
(1)〜3)とも、平成14年度に実証実験を実施して、各サービスに関する実施上の課題を明らかにし、その在り方について検討を行った。2)及び3)については、道路運送法の運用の特例措置が必要であることから、15年4月から一定の要件のもと構造改革特区で先行実施し、その結果及び実証実験の結果も踏まえ、全国実施につなげる予定。)
(タウンモビリティ)
歩くことが不自由な高齢者等に、電動スクーターや車椅子を無料で貸し出し、買い物や公園散策など街に出て楽しんでもらうサービス。イギリスで、ショッピングセンター等における買い物を主目的として誕生した「ショップモビリティ」を一歩進め、広く街歩きに利用してもらう「タウンモビリティ」として導入されている。
普及のためには、自宅からサービス拠点までの交通手段を確保することが課題となっており、STSなど他の交通手段との連携を図っていくことも期待される。
写真 地域住民が主体となった広島市佐伯区楽々園地区の取組
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