(4)高齢者医療制度の改革
ア 高齢者医療制度の改革
我が国では、原則としてすべての国民が、労働の形態、職種、職域等によって、いずれかの医療保険制度に加入する国民皆保険制度がとられている。
国民皆保険制度は、被用者を対象とする政府管掌健康保険や組合管掌健康保険などの被用者保険と、自営業者や無職者等を対象とする国民健康保険制度の二本立ての体系を基本としているが、高齢者については、こうした体系を前提とした上で、医療と保健サービスを一体的に提供する仕組みとして市町村が運営する老人保健制度が設けられている(図2−3−21)。
図2−3−21 老人保健制度の構造
医療保険制度については近年、急速な高齢化、経済の低迷、医療技術の進歩、国民の意識の変化など、医療制度を取り巻く環境が大きく変化する中で、持続可能な制度としていくための着実な改革が行われてきたところであり、平成14年には、各制度・世代を通じた給付と負担の見直しや後期高齢者への施策の重点化を柱にした健康保険法等の一部を改正する法律(平成14年法律第102号)が成立した。
さらに、少子高齢化がピークを迎える将来においても医療保険制度の安定的な運営を図るため、同改正法の附則に基づき、保険者の統合及び再編を含む医療保険制度の体系の在り方、新しい高齢者医療制度の創設、診療報酬体系の見直しに関し、平成15年3月に基本方針を閣議決定した。基本方針においては、年金制度の支給開始年齢や介護保険制度の対象年齢との整合性、また、一人当たり医療費が高く、国民健康保険・被用者保険の制度間で偏在が大きいことを考慮して、65歳以上の者を対象に、75歳以上の後期高齢者と65歳以上75歳未満の前期高齢者のそれぞれの特性に応じた新たな高齢者医療制度を設けることを基本的な方向とした(図2−3−22)。
図2−3−22 高齢者医療制度の基本的考え方