ウ 防災施策の推進
災害時に高齢者が大きな被害を受けやすいことを踏まえ、病院、老人ホーム等の施設を守る土砂災害対策の重点的な実施、高齢化率の特に高い地域等が激甚な水害、土砂災害を受けた場合の災害防止等を実施した。また、高齢者等災害時要援護者を津波、高潮等の海岸災害から守るため、安全情報伝達施設の整備や既存施設のバリアフリー化を推進した。
「住宅防火基本方針」(平成13年4月消防庁策定)に基づき、高齢者等を中心とした住宅火災による死者の低減を目標とした広報・普及啓発活動等の住宅防火対策を推進している。さらに、平成16年には、高齢者が過半を占める住宅火災による死者を低減するため、住宅用火災警報器等の設置の義務付け等を内容とする「消防法及び石油コンビナート等災害防止法の一部を改正する法律」(平成16年法律第65号)が第159回国会において成立し、16年6月2日に公布された。なお、新築住宅については18年6月1日から、既存住宅については市町村条例で定める日から施行されることになった。
また、本格的な高齢社会を迎え、「老人福祉法」(昭和38年法律第133号)で定める老人福祉施設等以外の新たな高齢者居住施設(グループホーム等)が増加していることを踏まえ、グループホームを中心とした高齢者施設に対応する自動消火設備の消火性能等に関する実験を行った。さらに、防災基盤整備事業の一つとして災害弱者消防緊急通報システムの普及に努めている。
平成16年の一連の風水害では、多くの高齢者が被災した。高齢者が早期の段階で安全に避難できる仕組みを築き上げるためには、避難情報の伝達と避難支援体制の整備が不可欠である。
まず、これまでの避難勧告・指示よりも早い段階で、高齢者等の避難行動に時間がかかる者を対象とした避難情報を発令することにより、早期の避難を促すことが必要である。また、避難を支援する者も、同情報に基づいて支援を開始することが重要である。
これらの避難情報についての基準を明確にするため、平成17年3月に、有識者等からなる「集中豪雨災害時等における情報伝達及び高齢者等の避難支援に関する検討会」において「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」を取りまとめた。
さらに、災害時にスムーズな避難支援を実施するためには平時からの準備が重要であり、高齢者等の一人につき複数の避難支援者を定めるなど、具体的な避難支援計画(避難支援プラン)を策定しておくことが必要である。市町村によるこれらの避難支援プランの作成の参考となるよう、平成17年3月に、同検討会において「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を取りまとめた。