第2章 高齢社会対策の実施の状況 |
コラム 06
高齢者の社会参加への取組 ア 徳島県上勝町 人口2,229人、高齢化率44.32%(平成16年現在)という高齢化が進んだ過疎の町が、ある事業で注目を集めている。 その事業は、モミジやナンテンなどの木の葉を集め、料理に華を添えるつまものとして出荷する「彩(いろどり)事業」。事業の実施主体は、町が7割を出資する「株式会社いろどり」。事業に参加し葉っぱ集めに参加している生産者は約180人。そのほとんどは高齢の女性で、平均年齢は70歳近い。 生産者にはファックスやパソコン通信で受注・出荷状況が毎日伝えられ、それらの情報を基に、各自でどの商品をどれだけ収穫するかを判断する。「ナンテンの価格が低うなっとるなあ。」などとつぶやきながら、出荷戦略を考えるおばあちゃんの顔は個人事業者そのもの。 お年寄りでも簡単に操作できるパソコンからは、一日ごとに個人の売上げと順位を見ることができ、その売上げと順位が上がるのを励みにしながら、皆が葉っぱ集めに精を出す。中には、年収1,000万円を超える人もいる。 今年80歳を迎えたある生産者のおばあちゃんは、収穫した葉っぱをトレーに詰める手を休めることなく、「ここ上勝にある植物で稼げることがうれしい。」と笑顔で話す。 高齢化が進むこの街で、寝たきりの高齢者は平成14年度でわずか3人。「元気な人まで、施設やデイケアに行くのは、自分の居場所がないからではないか。」とこの事業の仕掛け人であるいろどりの取締役は語る。この町では、高齢者に生きがいと自信を持てるものを与える産業を興すことが福祉につながっており、町で「産業福祉」と呼ぶ取組が実践されている。
葉っぱをトレイに詰める高齢者
イ NPO法人ナルク NPO法人「ニッポン・アクティブライフクラブ」(通称「ナルク」)は、「時間預託制度」を通じ60歳代以上を中心とした会員同士がボランティアで助け合うという、特色ある活動を行っている。 「時間預託制度」とは、庭の手入れ、家事援助、話し相手、送迎などの手助けを必要とする会員に対し、それらの手助けをできる会員がサービスを提供し、その活動時間を点数として預託する制度のこと。どんなサービスでも1時間1点として時間貯蓄手帳に記入され、いずれ自分にサービスが必要になったときに他の会員からのサービスを受けることができる。預託した点数は、配偶者・両親・子どもなどのために使うこともできる。 平成16年現在の登録会員数は約17,000人。その大半は60歳代以上で、夫婦での参加が多いという。 預託した点数は、全国108箇所(2004年11月現在)の「ナルク」の拠点どこでも引き出すことができるため、首都圏で子どもが預託した点数を使って、地元で親が家事援助のサービスを受ける、という例も珍しくないという。 ウ おやじの会「いたか」 「お父さん、いたか!」。 この子どもの一声をきっかけとして名前が決まった、「いたか」。おやじたちがサークルをつくり、積極的に地域活動に参加していこうというおやじの会の草分け的存在だ。 活動内容は、まちづくり、行財政改革、ゴミ問題、バリアフリーなど様々な分野の講師を招いて行う勉強会から、餅つき大会の開催など多種多様。小学校で、コマ回しや竹馬乗りの一日講師を務めたりもする。これらの活動をきっかけとして、市民館のシニア向け地域参加セミナーで講師を務める人や、河川保全のNPO法人で役員を務める人など、多様な地域活動に参加する人もいる。 「いたか」の発足は1983年。川崎という地域柄、会員の大半は東京の職場に勤める会社員。朝早くから電車に揺られ、東京で残業のあと一杯やると、帰宅は夜遅く。日常生活の大半を東京の会社で過ごし、家のある地域社会との関係は希薄になりがちだった。 発足当初は、「会社人から家庭・地域人へ、居場所と仲間づくり」をテーマとして、会社とは異なる地域社会のヨコ人間関係を重視し、会員同士のつながりを深めてきた。 発足から20余年を経て、現在の構成員の大半は50代後半層と定年間近。定年を迎え地域活動への参加のきっかけを求めて入会してくる人も増えてきた。 「おやじたちも本当は地域でつながりを欲しがっているのだと思う。地域で住民、市民として生きるきっかけが欲しいのではないでしょうか。」と会の世話人はおやじたちの本音を語ってくれた。 かつては子どもから「いたか!」と言われたおやじたち。定年を迎え、地域で過ごす時間が長くなるにつれ、おやじたちの今以上の積極的な地域参加が重要となってきそうだ。
「いたか」活動風景
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