沖縄振興計画

  1. 第1章  総説
    1. 計画作成の意義
    2. 計画の性格
    3. 計画の期間
    4. 計画の目標
  2. 第2章 振興の基本方向
    1. 基本的課題
      1. 時代潮流
      2. 地域特性
      3. 基本的課題
    2. 基本的姿勢
      1. 参画と責任
      2. 選択と集中
      3. 連携と交流
    3. 基本方向
      1. 民間主導の自立型経済の構築
      2. アジア・太平洋地域の発展に寄与する地域の形成
      3. 世界的水準の知的クラスターの形成-大学院大学を中心として-
      4. 安らぎと潤いのある生活空間の創造と健康福祉社会の実現
      5. 持続的発展のための人づくりと基盤づくり
      6. 県土の均衡ある発展と基地問題への対応
    4. 県土利用の基本方向
      1. 県土の適正な利用
      2. 海洋の保全・利用
      3. 駐留軍用地跡地の有効利用
    5. 人口及び社会経済の見通し
  3. 第3章 振興施策の展開
    1. 自立型経済の構築に向けた産業の振興
      1. 質の高い観光・リゾート地の形成
      2. 情報通信関連産業の集積
      3. 亜熱帯性気候等の地域特性を生かした農林水産業の振興
      4. 創造性に満ちた新規企業及び新規事業の創出
      5. 地域を支える産業の活性化
      6. 販路拡大と物流対策
      7. 中小企業の成長発展
      8. 産業振興を支援する金融機能の充実
    2. 雇用の安定と職業能力の開発
      1. 雇用機会の創出・拡大と求職者支援
      2. 若年労働者の雇用促進
      3. 職業能力の開発
      4. 働きやすい環境づくり
      5. 駐留軍等労働者の雇用対策の推進
    3. 科学技術の振興と国際交流・協力の推進
      1. 大学院大学等による科学技術の振興と学術研究・交流拠点の形成
      2. 国際交流・協力の推進
      3. 国際交流・協力拠点の形成を目指した基盤整備
    4. 環境共生型社会と高度情報通信社会の形成
      1. 循環型社会の構築
      2. 自然環境の保全・活用
      3. 生活環境基盤の整備
      4. 都市・農山漁村の総合的整備
      5. 高度情報通信ネットワーク社会の実現
      6. 災害に強い県土づくり
    5. 健康福祉社会の実現と安全・安心な生活の確保
      1. 健やかで安心できる暮らしの確保
      2. 保健医療の充実
      3. ともに支え合う社会の構築
      4. 安全・安心な生活の確保
    6. 多様な人材の育成と文化の振興
      1. 初等中等教育の充実
      2. 高等教育の推進
      3. 産業や地域社会を担う人づくり
      4. 潤いと生きがいのある生涯学習社会の形成
      5. スポーツの振興と青少年の健全育成
      6. 豊かな感性を育む文化の振興
    7. 持続的発展を支える基盤づくり
      1. 交通体系の整備
      2. 情報通信基盤の整備
      3. 安定した水資源とエネルギーの確保
    8. 離島・過疎地域の活性化による地域づくり
      1. 産業の振興
      2. 交通、情報通信基盤の整備
      3. 生活環境基盤の整備
      4. 保健医療の確保と福祉の向上
      5. 教育及び地域文化の振興
      6. 自然環境及び県土の保全
    9. 駐留軍用地跡地の利用の促進
      1. 調整機関の設置
      2. 駐留軍用地跡地の利用の促進に関する取組
  4. 第4章 圏域別振興の方向
    1. 北部圏域
      1. 産業の振興
      2. 産業振興のための基盤整備
      3. 定住条件の整備
      4. 普天間飛行場移設先及び周辺地域の振興
      5. 駐留軍用地跡地利用の促進
    2. 中部圏域
      1. 産業の振興
      2. 普天間飛行場等駐留軍用地跡地の利用促進
      3. 産業振興のための基盤整備
      4. 都市機能の再編・再整備
      5. 生活環境基盤等の整備
    3. 南部圏域
      1. 都市機能の再編・再整備
      2. 産業の振興
      3. 総合的な交通基盤の整備
      4. 国際交流等の推進
      5. 生活環境基盤等の整備
    4. 宮古圏域
      1. 資源循環型の社会システムの構築
      2. 産業の振興
      3. 産業・生活環境基盤の整備
      4. 職業能力開発機会の確保
      5. 保健医療・福祉関連基盤の整備
    5. 八重山圏域
      1. 産業の振興
      2. 総合的な交通基盤等の整備
      3. 保健医療・福祉関連基盤の整備
      4. 職業能力開発機会の確保
      5. 産業・生活環境基盤の整備

第1章  総説

1 計画作成の意義

 時代の転換期にあって、沖縄の振興発展をどう図っていくのか。本土復帰して30年いわば一世代の時が経過し、新世紀を迎えた今、幾多の課題を抱えつつも大いなる発展可能性が現実化しつつある中、沖縄振興の新たな展望を切り開いていかなければならない。
 3次にわたる沖縄振興開発計画に基づく総合的な施策の推進と県民の不断の努力が相まって、各面にわたる本土との格差は次第に縮小され、県民生活も向上するなど社会経済は着実に進展してきた。
 しかしながら、社会資本整備等における本土との格差は総体として縮小したものの、道路、空港、港湾等の交通基盤の整備をはじめ、なお多くの課題があり、産業の振興や県民の新たなニーズへの対応を含め、今後とも積極的に整備を進めていく必要がある。
 さらに、本土から遠隔の離島県ゆえの不利性や米軍施設・区域が集中するなど沖縄の置かれた特殊な諸事情もあり、自立への展望を開くまでには至っていない。
 1990年代を通じ我が国経済が低迷する中で、沖縄経済も発展への足がかりを模索しているが、所得水準も全国平均の7割程度にとどまっている。こうした状況の中、失業率も全国平均に比べ高い水準で推移し、財政依存度も高いまま今日に至っている。
 全国各地においても現状を突破しようとする様々な取組がなされていることを考えた場合、沖縄にあっては、従来の枠組みにとらわれることなく、これまで以上の積極的な取組が求められる。
 こうした要請にこたえたのが、自立型経済の構築に向け策定された「沖縄経済振興21世紀プラン」であり、これに基づく思い切った施策の推進により、情報通信産業分野における企業立地及び雇用の確保、航空運賃の引下げによる観光客の大幅な伸びなど、着実な成果を上げつつある。また、我が国初の地方開催となったサミット首脳会合の成功を契機に、各種の国際会議が相次いで開催されるなど沖縄の優位性に着目した取組も、実を結びつつある。
 このような動きを加速し、新世紀に輝く沖縄の基礎を築いていくことが重要である。
 沖縄自らが振興発展のメカニズムを内生化し、自立的かつ持続的な発展軌道に乗るような条件整備を図っていかなければならない。
 そのためには、本土との格差是正を基調とするキャッチアップ型の振興開発だけではなく、沖縄の特性を十分に発揮したフロンティア創造型の振興策への転換を進める必要がある。
 自立的発展を目指すこうした沖縄振興策の成功は、日本全体の活性化と全国各地域の独自の発展の実現に、重要な布石となり刺激となると期待されており、同時にアジア・太平洋地域の社会経済及び文化の発展に寄与していくことにつながっていく。
 このような視点に立って将来展望を行い、地方自治を尊重し、県民の意向を反映しつつ、引き続き国の責務において今後の沖縄振興の方向と施策の在り方を明らかにするとともに、行政改革に係る政府の諸方針と整合性をとりつつ諸施策の推進に努めるものとする。
 ここに、沖縄振興計画を策定する意義がある。

2 計画の性格

 この計画は、沖縄振興特別措置法に基づいて策定する総合的な計画であって、沖縄振興の向かうべき方向と基本施策を明らかにしたものである。したがって、国、沖縄県、市町村等については、その施策の基本となるものであり、県民をはじめ企業等の民間部門については、その自発的活動の指針となるものである。また、財政投融資などによる民間部門の誘導助成は、この計画に沿って行われるものである。
 なお、計画期間中の経済社会情勢の変化や計画の進捗状況、政策の効果等を踏まえ、適切なフォローアップの実施に努めることとする。

3 計画の期間

 この計画の期間は、平成14年度から平成23年度までの10か年とする。

4 計画の目標

 この計画においては、沖縄の特性を積極的に生かしつつ、自立的発展の基礎条件を整備し、豊かな地域社会を形成するとともに、我が国ひいてはアジア・太平洋地域の社会経済及び文化の発展に寄与する特色ある地域として整備を図り、平和で安らぎと活力のある沖縄県を実現することを目標とする。

第2章 振興の基本方向

1 基本的課題

(1) 時代潮流

 現在、我が国は歴史の分岐点に立ち、進むべき針路を模索しているところである。
 一方、国際社会は戦争と革命の20世紀を越え、平和の新世紀をとの願いにもかかわらず混迷の度を深めつつある。
 こうした内外の情勢や時代潮流は、将来の沖縄を取り巻く環境や県民の価値観に影響を与える。21世紀を展望し、沖縄の進むべき方向を明らかにしていくに当たり、これらの潮流を的確にとらえ、適切に対応していく必要がある。
 21世紀の社会経済の姿を展望することは容易ではないが、少子高齢化の急速な進行や地球規模で拡大する環境問題などは、住民の生活様式の見直しや意識改革を迫ることになる。
 少子高齢化の進行に伴い、子育ての負担を社会全体で担う動きや経験豊かな高齢者の社会参加が進むなど、これまでの世代や性別等による役割意識が変わっていく。人と人とをつなぐ新たなコミュニティ活動も重要となってくる。
 地球環境の保全と循環型資源利用を推進するための国際的枠組みが強化されつつあるが、豊かな自然に恵まれた島しょ県である沖縄は環境共生型社会のモデルになり得る。過度の利便性追求を反省し自然志向が高まる中、エコロジーとエコノミーの調和を図り、沖縄の豊かな環境を将来世代に引き継いでいかなければならない。
 いまや、人、物、情報等が、これまでとは比較にならない規模と速度で国境を越えていく。企業は、最適な活動の場を求めて国を選択し、個人レベルでも、世界を舞台に活動する人々が増えている。また、居ながらにして海外の情報や商品を手に入れることができ、世界の芸術文化及びスポーツなどを楽しむ機会が増えている。
 このような国際化の進展は、国民生活を豊かにする反面、国内産業の空洞化や輸入品との競合などの経済や文化をはじめ地域社会に大きな影響を及ぼすことも否定できない。このため、技術開発力の強化等により産業の国際競争力を高めるとともに、それぞれの地域が世界各地域との多面的な交流を促進して相互理解を深めていく必要がある。また、国際化でいま求められていることは対外的対応だけではなく、内なる国際化にどう取り組むかである。こうした観点からも沖縄の果たす役割、貢献は決して小さいものではない。
 また、高度情報化時代を展望したとき、沖縄の前に新たな発展可能性が広がってくる。情報化は、時間や距離の壁を取り払い、これまで不利と考えられてきた条件を転換していく大きな力となる。自然や文化の豊かさなど、沖縄の居住地としての魅力を発信することにより、企業や研究機関等の立地促進につながり、新たな産業の創出が期待できる。
 一方、地方分権が本格化する中、地方公共団体は、複雑、多様化する住民ニーズにいかに対応し、独創性を発揮するのか、まさに生き残りをかけた自己改革が求められている。
 自主性、主体性を発揮した意欲的な取組により、分権時代にふさわしい地域づくりを進めていく必要がある。

(2) 地域特性

 沖縄は、全国の中でも際立った地域特性を有しており、これらの特性はそれぞれに優位性と不利性の両面を持っている。
 これまでは、主に本土との格差是正をめざし沖縄の振興開発が進められてきたが、復帰後30年の実績や時代潮流を踏まえたとき、これからは、沖縄の持つ優位性を最大限に発揮するとともに不利性の克服を図っていくことが重要となる。
 沖縄は、亜熱帯・海洋性気候の下、年間を通して温暖で、貴重な動植物が生息・生育する緑豊かな島しょ県である。また、周辺海域を黒潮が北上し、サンゴ礁に囲まれた海岸線には白い砂浜が広がり、青い空と相まって世界有数の海岸景観を誇っている。
 この自然的特性が、観光・リゾート地としての最大の魅力となっているのをはじめ、特色ある農林水産業の振興や熱帯・亜熱帯及び海洋性に関連する学術研究の場としての活用など、多様な可能性を付与するものである。
 一方で、台風常襲地帯であることや特殊土壌及び特殊病害虫の存在等による農業分野への影響に加え、島しょ性がもたらす環境容量の小ささなど、県民生活や産業面に少なからず影響を及ぼしている。
 広大な海域に散在する沖縄の多くの島々は、それぞれ特有の風土や文化を有する個性ある地域圏を育むとともに、経済水域の確保等我が国の国土形成に大きな役割を果たしている。
 しかし、一方で、狭小な市場規模を形成することになり、基盤整備を進める上で非効率な側面をもたらしている。また、東京をはじめとする大都市からの遠隔性は、物流面の不利性につながり、産業振興の制約となっている。
 また、東京と同距離内にソウル、上海、台北、香港、マニラ等の主要都市が位置する地理的条件は、我が国とアジア・太平洋地域等との相互依存関係が一段と強まり、各種の交流が一層進む中、交通通信等のネットワーク構築等により、大いなる優位性へと転ずる可能性を示している。
 沖縄の歴史及び文化的特性は、我が国の中でも独特のものがある。かつて琉球王国として、中国、東南アジア諸国等との交易・交流を通じて形成された琉球文化に、戦後米国からの影響等も加わり、国際色豊かな文化、生活様式を育んできた。
 また、沖縄は、先の大戦において、か烈な戦禍を被り、戦後も27年間にわたり米軍の統治下に置かれた。このような歴史の歩みの中で、平和への強い思い入れと国際性豊かでホスピタリティに富む県民性を培ってきた。
 また、我が国の高度成長時代にその施政権の外に置かれ、社会資本の整備が後れるとともに、技術や資本の蓄積などが必ずしも十分には進まず、いまだぜい弱な経済構造となっている。
 社会的特性としては、大都市圏を除き全国的に人口が減少する傾向にある中で沖縄の人口増加率は高く、若年人口の割合も高いことがあげられる。さらに、100歳以上の高齢者の比率も高い長寿県であることも特徴である。なお、かつて海外雄飛の覇気を持って移民し、世界にネットを築いている約30万人の世界のウチナーンチュ(沖縄人)の存在も、沖縄の貴重な財産といえる。また、世界約150か国から5,000人近い研修生が、沖縄で学び、沖縄を体験して大きな絆を結んできた。
 一方、沖縄には我が国における米軍専用施設・区域の約75%が集中している現状がある。狭小な県土の中での高密度の米軍施設・区域の存在は、土地利用上大きな制約となっている上、水域及び空域の利用について制限があるなど、県民生活をはじめ沖縄の振興に様々な影響を及ぼしている。

(3) 基本的課題

 三次、30年にわたる沖縄振興開発計画に基づく総合的な施策推進の成果を踏まえ、次なる発展段階へと飛躍するため、時代に適合した目標を設定し、戦略的な施策を打ち出していく必要がある。
 第1次から第3次に至る沖縄振興開発計画においては、「本土との格差是正」と「自立的発展の基礎条件の整備」に取り組み、社会資本や生活環境の整備が積極的に進められた結果、各分野で本土との格差も次第に縮小するなど着実に成果を上げてきた。また、産業面においては観光・リゾート産業がリーディング産業としての地位を築くほか、新たに情報通信分野等で企業の立地が進みつつある。
 しかしながら、内外の厳しい経済環境のもと、期待された企業の立地は十分には進展せず、産業経済面での伸び悩みが見られるなど、自立的発展の基礎条件は、なお整備されたとは言い難い状況にある。
 一方、第3次沖縄振興開発計画で新たに加えられた「我が国経済社会及び文化の発展に寄与する特色ある地域としての整備」については、サミット首脳会合の成果等を得て、我が国の南の交流拠点を目指すという施策の方向性を明確にした。今後、世界最高水準の大学院大学等をはじめとする各種の教育研究機関の整備充実を図るなど拠点形成に向けた強力な取組が必要である。
 このように、沖縄が、いまだ十分とはいえない分野を引き続き整備するとともに、変革の時代にふさわしい新たな振興発展を図っていくためには、沖縄振興特別措置法に基づく諸制度を積極的に活用し、施策を効果的に推進していかなければならない。このため、以下の基本的課題の解決に向け総合的に取り組む必要がある。
 第1に、明日への活力を生み出し、自立を促進する産業の振興を図っていかなければならない。豊かな生活と雇用の安定を確保するため、経済の持続的発展を可能ならしめる成長の原動力を地域経済の中に組み込んでいく必要がある。国際的にも魅力ある立地環境を整備するとともに、産学官連携による研究、技術開発や人材育成への取組を充実し、新事業の創出や既存産業の高度化を図っていくことが求められる。
 第2に、国際的な交流拠点形成に向け、人、物、情報等の結節機能の育成・強化を図る必要がある。大交易時代の歴史や海外雄飛の覇気にあふれた先人たちにならい、アジア・太平洋地域における連携・交流が活発化する中、東アジアの中心に位置する沖縄は我が国の国際交流・協力の先陣を担うことが期待される。そのためには、人、物、情報等が行き交うアジア・太平洋地域の交流拠点形成に向け、国際水準の空港、港湾や情報通信基盤等の整備を進めるとともに、交流を担う国際的な人材の育成・確保を図っていくことが不可欠である。
 第3に、豊かな自然環境の中で、人々が自然と共生する社会を構築しなければならない。様々な恵みをもたらす豊かな自然を次代に引き継ぐとともに、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式を見直し、環境への負荷を軽減することが求められている。また、近年の情報通信技術の飛躍的な進展は、経済や人々の生活をはじめ社会の隅々まで急速な変化をもたらしており、このような大きな動きに的確に対応し、新たな産業の創出や社会生活の利便性の向上を通して、県民がその恩恵を享受できるようにしていくことが必要である。また、県民が今後とも健康長寿を維持するとともに、少子高齢化が進んでも活力があり安心して暮らせる社会を構築する必要がある。さらに保健医療福祉の充実を図ることが重要であり、人々が支え合う社会の形成に向け、その条件整備を図ることも大切である。
 第4に、21世紀を担う人材の育成に果たす学校教育の役割は極めて大きく、教育改革に積極的に取り組みつつ、子供たちの能力と個性が発揮できる環境整備を進めていく必要がある。また、沖縄の社会経済の発展に不可欠な人材の育成・確保については、高等教育機関の設置・拡充、国際交流の推進等の施策を講じた結果、一定の成果は上がってきているものの、情報通信関連産業等の多くの分野で人材の不足が指摘されており、今後とも幅広い分野における人材の育成が重要である。知的資産の蓄積も重要であり、学術研究の総合的な振興を図る必要がある。県民が子供の頃から科学技術や芸術文化に親しむ環境を整え、科学技術等を担う人材を育成するとともに、先人たちの活動の成果である文化的所産の保存及び活用を図ることが重要である。
 第5に、社会資本の整備については、県民生活の向上に資するとともに、時代の要請に応じ選択の視点を変えながら、より効率的、効果的な整備を進めていかなければならない。今後、沖縄においては、人や物の移動・輸送の円滑化及び効率化の観点から、空港・港湾等の整備や道路網の整備等総合的な交通体系の改善整備が重要となる。また、水、エネルギーについては安定的供給を図る必要がある。社会資本の整備に当たっては、目的志向型の戦略的、重点的な整備という観点が求められる。
 第6に、県土の均衡ある発展が、引き続き大きな課題である。過疎化、高齢化により活力が低下する一方で、豊かな自然や固有の文化が残されている離島・過疎地域において、定住条件の一層の改善を図り、誇りの持てる自立的な地域づくりを進める必要がある。また、都市部においては、交通渋滞の緩和、修景緑化、バリアフリーの推進など、快適で活力ある都市空間の整備が求められる。
 第7に、沖縄の過重な基地負担の軽減や沖縄の振興を図る観点から、今後とも米軍施設・区域の整理・縮小に積極的に取り組む必要がある。そのためには、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)最終報告に基づき、在沖米軍の部隊・装備等の移転を含む米軍施設・区域のさらなる整理・縮小を計画的、段階的に進めていくとともに、国際情勢の変化に対応して、在沖米軍の兵力構成等の軍事態勢につき、米国政府と協議していくことが重要である。また、駐留軍用地跡地の有効利用については、円滑かつ迅速な対応が求められており、広域的な視点に立って、県土構造の再編も視野に入れた幅広い検討が求められる。米軍施設・区域内の環境保全対策の充実については、米国政府と引き続き協議していく必要がある。さらに、戦後処理問題についても、引き続きその解決に向けて取り組む必要がある。

2 基本的姿勢

 官と民、国と地方との役割の変化に伴い、沖縄振興策の推進に当たっても、県民と行政が連携し、英知を結集していくことがこれまで以上に求められる。このような多様な主体の参加を前提に、それぞれが、参画と責任、選択と集中、連携と交流といった基本的姿勢に立って、果敢な取組を行うものとする。

(1) 参画と責任

 沖縄振興に向けては、参画と責任を基調に、国、県、市町村及び民間部門の役割分担を明確にしたうえで、一体となって取り組んでいく必要がある。
 このうち、国は基幹的な基盤の整備や国家的見地からの施策展開と、県をはじめとする地方の主体的な取組に対する支援を行うものであるが、その際には、沖縄の抱える特殊事情等に配慮するとともに、今後沖縄の進むべき方向性や担うべき役割を見極めて適切に対応していくことが重要である。
 また、自立型経済を構築していくためには、何よりも沖縄の産業界や県民を中心とする主体的かつ責任ある取組によって、自ら活路を開いていく姿勢が不可欠であり、国及び県は、その環境整備を積極的に推進する必要がある。
 地域づくりは、自主性や主体性の発揮がその成功の鍵である。地域住民をはじめ民間企業やNPO等の地域づくりへの積極的参加を促し、行政とのパートナーシップを築き、施策実施の効果を高めていく必要がある。
 また、政策の効果や効率を高めるうえで、行政機関が行う政策の評価に関する法律、政策評価に関する基本方針(平成13年12月28日閣議決定)等の内容を踏まえ、事業評価等の政策評価を行うことが重要であり、その際には、対象とする政策の特性を踏まえつつ、できる限り政策効果を定量的に把握することができる手法を用いる必要がある。

(2) 選択と集中

 これからの沖縄振興は、中長期的視野に立った施策、事業の選択と資源の集中によって、効果を発揮し得るものである。
 特に、産業経済の分野に関しては、企業や団体が、その置かれている現状と課題を把握し、時代潮流や地域特性を踏まえた沖縄の可能性を見極めながら、方針を選択し、人材や資金など限られた資源を集中していく姿勢が求められる。国、県など行政においても、産業界の取組に対応して、施策、事業の費用対効果等を踏まえた政策評価の観点が、ますます重要となる。
 また、厳しい経済環境下で、活力ある地域づくりを進めるためには、効率と衡平の調和を図りつつ、参画する多様な主体の調整・合意を図りながら、地域の将来を見据えて優先すべき課題を選択し、集中的な取組を行う必要がある。

(3) 連携と交流

 広域的なネットワーク化が求められている時代において、沖縄の優位性をさらに高めるため、県内外、産業間、産学官、地域間等、様々な分野において多様な連携と交流を重層的に進める。
 特に沖縄の外との連携と交流が重要である。我が国ひいてはアジア・太平洋地域の発展に寄与する地域の形成に向けては、南の海洋連携軸構想をはじめとする他府県との様々な分野での幅広い連携と交流に加え、アジア・太平洋地域との連携と交流を深める必要がある。
 産業面については、観光・リゾート産業を中心に、農林水産業、伝統工芸産業、健康食品産業等の製造業、健康関連の産業、文化、スポーツ関連産業等、多くの産業とが関連する様々な形態での連携と交流が重要となる。
 産学官の連携と交流を深め、地域の資源を活用し、新たな産業創出を促進し、地域産業の活性化を図ることも重要である。
 また、地域間の連携と交流を通じた新たな機能分担、相互補完により、地域の人材と資源を有効に活用し、その自立性を高め、個性あふれる地域づくりが求められている。

3 基本方向

 「平和で安らぎと活力のある沖縄県」の実現を目指し、民間主導の自立型経済の構築、アジア・太平洋地域の発展に寄与する地域の形成、大学院大学を中心とした世界的水準の知的クラスターの形成、安らぎと潤いのある生活空間の創造に向けた諸施策を推進する。
 また、持続的発展のための人づくりと基盤づくり、地域の均衡ある発展と基地問題への対応を推進する。

(1) 民間主導の自立型経済の構築

 沖縄が自立的発展への軌道に乗り、大競争時代に生き抜く魅力ある経済的活動拠点として、新世紀の我が国の発展の一翼を担うべく、活力ある民間主導の自立型経済を構築する。
 こうした展開に向け、発展可能性の高い産業領域を戦略的に振興し、他の産業分野との連携を通じてその波及効果を高め、経済全体の活性化を図る。
 現在、観光・リゾート産業が沖縄のリーディング産業としての地位を確立し、情報通信関連産業が新たなリーディング産業として期待される状況にある。これらの産業に加え、地域特性を生かした農林水産業、特別自由貿易地域制度等を活用した加工交易型産業、国際物流関連産業、沖縄の地域特性や資源を積極的に活用した健康バイオ産業、環境関連産業等が戦略的に振興すべき重点産業として期待できる。
 観光・リゾート産業においては、国際的海洋性リゾート地の形成、国民の総合的な健康保養の場の形成に向けた取組を強力に進めるとともに、体験滞在型観光を推進するなど、通年滞在型の質の高い観光・リゾート地の形成を図る。
 情報通信関連産業については、産業の集積や情報通信ハブの形成を実現するための基盤整備を図るとともに、産学官が連携して、幅広い分野での高度な専門知識と技術を身につけた人材の育成などを進め、新たな産業としての可能性を追求する。あわせて、情報通信技術の発達に対応し、地域の産業振興を図るため、産業の情報化を促進する。
 農林水産業については、地域特性を生かしたおきなわブランドの確立と生産供給体制の強化を図るとともに、総合的な流通・販売・加工対策、亜熱帯・島しょ性に適合した農林水産業基盤の整備等を進め、その持続的な振興を図る。
 また、特別自由貿易地域や金融業務特別地区等において企業立地等を促進する。
 さらに、沖縄の地域特性や資源を活用した特色ある産業として、健康バイオ産業や環境関連産業等について、新事業展開を促進するための支援策を講じ、地域産業の活性化を図るとともに、チャレンジ精神を持った起業家の創造的な活動が十分に展開できる環境を積極的に整備する。
 製造業、建設業をはじめとする地域産業については、市場競争力の強化を基本に、情報化への対応、流通体制等の強化等を図り、活力ある産業として振興を図っていく。
 また、雇用の促進と人材の育成を図り、自立型経済の構築に向けた意欲ある担い手の確保に努める。

(2) アジア・太平洋地域の発展に寄与する地域の形成

 アジア・太平洋諸国に近接した地理的特性、亜熱帯・海洋性などの自然的特性、国際性豊かな歴史的特性など沖縄が持つ地域特性を生かし、アジア・太平洋地域における各種の結節機能を育成・強化する。
 このため、アジア・太平洋地域の交流拠点形成に向けた空港、港湾等の諸基盤や高次の都市機能を整備するとともに、航空・航路ネットワークの拡充など各種の条件整備を進める。また、関係機関の支援協力を得ながら、平和交流、技術協力等の国際貢献活動を促進するとともに、経済、学術、文化等における多角的な拠点の整備と交流を促進する。また、大規模自然災害に対応した情報通信分野のバックアップ機能、国際医療救急支援機能や地球環境汚染の未然防止に向けたモニタリングの体制等の整備を図る。
 さらに、交流の場に必要なコンベンション機能の充実はもとより、世界レベルの学術研究、芸術文化などの拠点づくりを進める。
 国際交流・協力拠点として、地域における国際化に向けた取組や世界各地とのネットワークの形成を図っていく。

(3) 世界的水準の知的クラスターの形成-大学院大学を中心として-

 民間主導の自立型経済の構築を目指すうえで、ハイテク技術の果たす役割が沖縄経済にとっても飛躍的に高まっている。
 このため、沖縄における科学技術の振興及び我が国の科学技術の進歩の一翼を担い、また、アジア・太平洋地域さらには世界に開かれた中核的研究機関として、我が国の大学のあり方のモデルとなるような「国際性」と「柔軟性」を基本コンセプトとした新たな発想を持った世界最高水準の自然科学系の大学院大学等を核に他大学、公的研究機関及び民間企業・研究所の集積と一体となった知的クラスターの形成に取り組む。
 また、大学や高等専門学校等高等教育の質的向上を図るとともに、科学技術創造立国を担う高度な技術と専門的知識を持った人材の養成・確保に努める。
 このような知的クラスターの形成を通じて、付加価値の高い新しい産業活動の創出を図り、活力のある沖縄経済の発展を追求する。

(4) 安らぎと潤いのある生活空間の創造と健康福祉社会の実現

 美しい沖縄を次の世代に引き継ぐとともに、県民が安らぎと潤いのある生活を享受できる地域社会を形成する。
 このため、自然環境の保全・創造に努め、環境共生型社会の構築に向け取り組む。
 また、上下水道、公園、緑地、住宅の整備等、快適で潤いのある生活環境を支える基盤の整備を図る。
 県民が、情報通信技術を積極的に活用し、かつそれを最大限に享受できる高度情報通信ネットワーク社会の実現に向け、情報通信基盤の整備や地域の情報化を促進するとともに、情報格差の解消に努め、電子自治体の構築を進める。
 県民が、豊かな自然の恵みを得て、安らぎと潤いのある生活を享受できる美しい県土、美ら島の創造を目指し、都市・農山漁村の連携と総合的整備に取り組むとともに、自然と調和した災害に強い県土づくりを進める。
 また、だれもが安全で安心して暮らせる健康福祉社会の実現に向け、子どもたちが健やかに生まれ育つ環境づくりや、高齢者・障害者がいきいきと暮らせるための社会づくりを進める。
 健康志向の高まりやいやしの求めにこたえ、県民の長寿の維持や健康増進はもとより、国民的な健康保養の場の形成にも資する保健医療基盤の充実、技術の高度化、人材の育成に努める。
 また、あらゆる分野における男女共同参画を進めるなど、多様性を認め合いながら互いに支え合う社会の実現を目指す。
 さらに、災害や事故、犯罪などに有効に機能するシステムを整備する。

(5) 持続的発展のための人づくりと基盤づくり

 沖縄が持続的に発展していくためには、人材の育成・確保が重要であり、産業、福祉、医療、学術・文化等の各分野を支える多様な人材を育成する。
 このため、人間性が豊かで創造性に富む児童生徒の育成を目指し、学校教育の一層の充実と家庭や地域の教育力の向上を図っていく。
 産業振興の観点からは、今後の方向性を踏まえて、産業界をリードする高度な人材が求められており、そのための戦略的な人材育成を進める。
 一方、県民生活の安定向上と産業経済の持続的発展を図るためには、その基盤となる各種社会資本の整備が重要であり、環境の保全に配慮しつつ、これまで以上に戦略的、重点的整備を図るとともに、亜熱帯・島しょ地域特性を踏まえた技術や整備手法の確立に努める。
 このため、交通通信体系については、国際交流拠点にふさわしい規模・機能を備えた空港や港湾の整備を図るとともに、沖縄都市モノレールと連携した質の高い公共交通サービスの実現や道路網の一層の体系的整備を進める。また、高速・大容量・低コストを実現する多様な情報通信基盤及び情報システムの整備を促進する。
 さらに、県民生活の向上や人口、観光客の増加等に伴い、今後とも水需要の増加が見込まれることから、多様な水資源の開発と保全を図り、水の安定的確保に努める。また、エネルギー需要に対応して、その安定供給を図るとともに、環境に配慮した電源開発を促進する。
 さらに、既存の社会資本ストックの適切な維持管理、更新及び有効活用に努めるとともに、自然環境との調和を図りつつ、バリアフリーの推進、情報化社会への対応など新たなニーズに対応した整備を図る。基盤整備に当たってはソフト施策との連携を図るとともに住民やNPOとの連携、協力並びに公共事業のコスト縮減等に努める。

(6) 県土の均衡ある発展と基地問題への対応

 県内の各地域が、それぞれの特色を生かした地域づくりを行うとともに、こうした取組の連携・波及を通じて県土全体の均衡ある発展を図っていく。
 交通や通信の発達に伴い、生活、産業、文化等の活動が、市町村や各圏域を越えて広がっている。このため、地域における住民福祉の向上や産業の振興を図ることは当然のこととして、より広域的な視点に立って、地域間連携による新たな活力の創出や産業の高度化などを促進する。これにより、それぞれの地域の特性や個性が互いに磨かれ、創意工夫を競い合う主体的な地域づくりが進展し、県土全体が発展する。
 各種基盤の整備に当たっては、それぞれの地域や圏域の抱える課題に的確に対応しつつ、地域連携や地域づくりが促進されるよう効果的に進める。
 地域における振興施策の展開に当たっては、地域間相互の連携や交流による役割や機能の分担を図りつつ、域内の地域間バランスに配慮しながら施策、事業を効果的に展開する。
 価値観や生活様式が多様化する中で、離島・過疎地域は、豊かな自然環境に恵まれた生活空間を有するとともに、その保全の役割を果たしており、地域の創意工夫のもと、その特性を最大限に生かした地域づくりを進める。
 米軍施設・区域の整理・縮小については、県民の過重な基地負担の軽減と県土の有効利用や沖縄の振興を図る観点から積極的に取り組む。
 また、県民の健康及び安全等を確保するため、米軍施設・区域内の環境保全対策の充実については、米国政府と引き続き協議していく。
 沖縄に存在する米軍施設・区域の面積規模は、沖縄島において約19%を占めており、その返還跡地は、これからの沖縄振興を図る上で貴重な空間である。このため、SACO最終報告等で返還が合意された施設・区域については、計画的、段階的な返還及び跡地利用計画を策定することにより、良好な生活環境の確保、健全な都市形成、新たな産業の振興、交通体系の整備、自然環境の保全・再生等、21世紀のまちづくり、田園づくり等のモデルとなるよう整備を進める。
 特に、普天間飛行場跡地については、中南部都市圏の枢要な位置にあることから、整備に当たっては、その役割・機能を明確にした跡地利用計画を策定し、今後の地域開発のモデルとなるよう取り組んでいく。
 また、沖縄における不発弾処理や旧軍飛行場用地など戦後処理等の諸問題に引き続き取り組む。

4 県土利用の基本方向

 沖縄は、我が国の南西端に位置し、東西1,000キロメートル、南北400キロメートルに及ぶ広大な海域に散在する大小160の島しょから成っている。県土総面積は約2,271平方キロメートルで、全国44位であるが、林野及び湖沼面積が小さいため、可住地面積の割合は全国の中でもかなり高い。
 しかし、広大な米軍施設・区域の存在が県土構造をいびつなものとしており、今後、その跡地を含めた陸域と1,748キロメートルの海岸線を有する沿岸域及び周辺海域の有効かつ高度な利用を図る。

(1) 県土の適正な利用

 県土は、現在及び将来における県民のための限られた資源であり、生活及び生産に通ずる諸活動の基盤であるとの基本認識に立って、その適正な利用と保全に努め、次の世代の県民に引き継いでいかなければならない。
 このため、自然環境の保全に配慮しながら、地域の自然的・社会的特性を踏まえ、土地需要の量的調整を行うとともに、県土利用の質的向上を図る。
 都市については、今後とも市街地の拡大が見込まれる中で、土地利用の適正化と秩序ある誘導を図り、都市の環境を安全でゆとりあるものとし、併せて社会経済諸活動を取り巻く状況の変化に適切に対応できるようにする。このため、都市施設の整備を推進しつつ、既成市街地においては再開発や沖縄都市モノレール開通など交通体系の再編等による土地利用の高度化や環境の整備を図るとともに、低・未利用地の有効利用を促進する。
 農山漁村については、地域特性を踏まえた良好な生活環境を整備するとともに、多様なニーズに対応した農林水産業の展開等により、就業機会を確保し、活力ある地域社会を構築する。このような対応の中で、優良農用地及び森林等を確保するとともに、その整備と利用の高度化を図る。また、農山漁村景観の維持・形成を図るとともに、都市との交流を促進するための環境整備を図る。
 さらに、高い価値を有する原生的な自然の地域や野生生物の重要な生息・生育地、優れた自然風景地など自然環境の保全を旨として維持すべき地域については、適正に保全する。また、適正な管理の下で、環境保全型自然体験活動等の自然とのふれあいの場としての利用を図る。
 あわせて、治山治水事業等により県土保全対策を引き続き推進するとともに、水源かん養等を図るために必要な森林を保全、育成する。

(2) 海洋の保全・利用

 沖縄の周辺海域は、熱帯海域で、黒潮の本流に近く、多様性に富むサンゴ礁が発達しているなどの特性がある。このような海洋環境等は、貴重な国民の財産であることから、陸域と一体となった海域の保全を図るとともに、海洋資源や海洋空間の多面的、総合的な利活用を促進する。
 沿岸域については、細心の注意を払いつつ必要に応じて用地を計画的に確保し、国際的海洋性リゾート地の形成や、交通・都市機能などの整備充実を図る。また、各種の陸域等の開発に当たっては、沿岸域環境との調和に配慮する。
 自然の持つ再生・浄化能力や多様性を維持するため、サンゴ礁、藻場、干潟及びマングローブ林等の保全・再生・創出に努める。
 沿岸及び沖合海域における漁場の保全に努めるとともに、水産資源の利活用を促進する。
 海洋深層水をはじめとする海洋資源や海底資源と海洋エネルギーの開発利用を促進するとともに、サンゴ礁海域などの特性に対応する海洋技術の研究開発を進める。
 また、海洋情報の整備、技術交流の推進、海洋研究体制の充実を図る。
 さらに、高潮や津波、波浪等による自然災害や海岸侵食から県民の生命や財産を守るため、景観や生態系など自然環境に配慮した海岸保全に努める。

(3) 駐留軍用地跡地の有効利用

 米軍施設・区域については、大規模かつ高密度に形成され、しかも沖縄の振興を図る上で重要な位置に所在し、県民の良好な生活環境の確保、都市の形成、体系的な道路網の整備等、社会経済の面で大きな影響を及ぼし、県土利用上の制約となっている。
 このため、都市的利用が想定される駐留軍用地跡地については、周辺の土地利用との調整を図りながら、都市機能の計画的な再配置・高度化及び諸産業基盤の整備を進める。農林業的利用が想定される地域については、農林業基盤の整備を計画的に推進し、公共施設整備や集落整備を含めた総合的な整備を促進する。その他の駐留軍用地跡地については、自然環境の保全を図るとともに、周辺の土地利用との調整を図りつつその有効利用を進める。

5 人口及び社会経済の見通し

 本計画の目標のために実施される諸施策事業の成果等を前提に、目標年次における沖縄の人口、社会経済を展望すると、次のようになると見込まれる。
 総人口は、出生率の低下等を反映して、緩やかな増加基調で推移し、平成12年の132万人から平成23年には約139万人程度の規模になる。年齢構成では、15歳未満の年少人口の割合の低下と65歳以上人口の割合の上昇が進み、少子高齢化が進行する。
 労働力人口は、女性の社会進出等により漸次増加し、平成12年の63万人から平成23年には約70万人になる。
 就業者総数は、平成12年の58万人から平成23年には約67万人になる。産業別の就業構造は、平成23年において、おおよそ、第1次産業では平成12年の7パーセントから5パーセントへ、第2次産業では19パーセントから18パーセントへ、第3次産業では74パーセントから77パーセントへと変化し、第1次産業及び第2次産業の割合が低下する一方、第3次産業の割合が上昇する。
 県内総生産は、本県の特性を生かした観光・リゾート産業、情報通信関連産業、製造業等の展開が期待されることから、平成12年度の3兆4千億円から平成23年度には約4兆5千億円(平成12年度価格)となる。その産業別構成は、平成23年度において、おおよそ、第1次産業は平成12年度の2パーセントを維持するが、第2次産業では製造業の割合がやや上昇するものの、建設業の割合の低下により平成12年度の17パーセントから16パーセントへやや低下し、第3次産業は観光・リゾート産業等の伸びにより81パーセントから82パーセントへ若干上昇する。
 一人当たり県民所得は、平成12年度の218万円から平成23年度には270万円(平成12年度価格)を超え、全国平均との格差は縮小し、完全失業率も低下していくことが期待される。
 なお、目標年次においては、新たな制度の活用などにより観光・リゾート産業、情報通信関連産業が一層成長するほか、既存産業の活性化と新規企業創出が進み、民間主導による自立型経済へ向けて前進していく。また、社会資本整備や生活環境整備が進み、情報化、国際化、少子高齢化などの環境変化に対応した社会経済への取組や多様な人材育成への取組が進む。

第3章 振興施策の展開

1 自立型経済の構築に向けた産業の振興

 活力ある民間主導の自立型経済の構築に向け、沖縄の産業の持つ競争力や産業展開の可能性を見極めて、観光・リゾート産業、情報通信関連産業、農林水産業、特別自由貿易地域制度等を活用した加工交易型産業、国際物流関連産業、地域資源等を生かした健康食品産業、環境関連産業等を、県経済をけん引する重点産業として戦略的な振興策を展開する。
 また、地域経済を支える製造業、建設業等の既存産業については、市場ニーズや環境の変化に対応した取組を促進する。
 さらに、産業活動の効果的展開のための環境整備を進めるとともに、重点産業と他の地域産業との連関を深め、産業間の相乗効果を高めることにより、経済全体の発展を図る。
 あわせて、人材を育成・確保するとともに、研究開発等技術の向上を図ることにより、産業の高度化を促進する。

(1) 質の高い観光・リゾート地の形成

 美しい海と豊かな自然、沖縄独特の歴史、文化等魅力ある地域特性を生かし、国際的な海洋性リゾート地の形成や国民の総合的な健康保養の場の形成、エコツーリズム、グリーンツーリズム等の体験・滞在型観光の推進、さらにはコンベンション拠点の形成など、多様なニーズに対応した通年・滞在型の質の高い観光・リゾート地の形成を図る。

ア 国際的海洋性リゾート地の形成
 国際的な海洋性リゾート地の形成に向け、観光振興地域制度を積極的に活用し、宿泊施設、ショッピング施設、レクリエーション施設、文化施設等観光関連施設の集積を促進するとともに、道路、港湾、公園、海浜等の観光関連公共施設の一体的・重点的な整備を推進する。
 また、沖縄におけるショッピングの魅力の向上を図るとともに、さらにその新たな魅力の創出に向け、沖縄型特定免税店の空港外展開と併せて国際ショッピングモール構想の推進を図る。
 さらに、国営沖縄記念公園における世界的規模の新水族館をはじめ、観光拠点施設の整備を推進するとともに、部瀬名地域及び中城湾港泡瀬地区においては、国際性や海洋性を備えたリゾート拠点の形成を図る。
 観光・リゾート地のネットワーク化を強化する道路網の整備を進めるとともに、景観や周辺環境に配慮した道路、歩道・遊歩道、公園・緑地、マリーナ・フィッシャリーナ、海岸・養浜等、アメニティを高める公共インフラの整備を推進する。
 また、自然環境の保全や再生に積極的に取り組むとともに、電線類地中化等良好な景観の形成、沖縄らしい魅力ある県土の修景緑化やまちづくり等を推進し、快適で美しい観光・リゾート空間の創出に努める。

イ 国民の総合的な健康保養の場の形成と体験・滞在型観光の推進
 高齢化の進展、心の豊かさやいやしを求める国民の価値観とライフスタイルの変化、さらには健康志向の高まりなどに対応して、沖縄の持つ温暖な気候や豊かな自然環境、健康長寿に適した生活環境等の地域特性を生かし、沖縄を長期滞在も可能な国民の総合的な健康保養の場と位置づけ重点的にその形成を図る。
 このため、国際的な海洋性リゾート地の形成のための施策に加え、保養、健康増進等に関連する施設、機能の整備や、これを支える保健医療機関とのネットワークの充実を図る。
 また、障害者や高齢者に配慮し、バリアフリー化を図るなど安心して快適に滞在できる施設づくりを促進する。
 さらに、健康面での保養効果の検証も含め、健康増進や高齢者保養に関するモデル事業の実施など、健康保養の場の形成に向けた地域における様々な取組を促進する。
 また、沖縄の多様な食材を生かし、健康の保持増進に資する食の提供や健康食品の開発、普及等の促進を図る。
 沖縄の豊かな自然を生かし、エコツーリズムを促進する。
 このため、保全利用協定の活用を促進するとともに、国立・国定公園をはじめとする自然公園の保護、整備等に努め、西表野生生物保護センター、やんばる野生生物保護センター及び国際サンゴ礁研究・モニタリングセンターにおいては、貴重な生物資源の研究・保護活動と併せて、エコツーリズムの拠点としての積極活用を図る。また、地域の特性を踏まえたエコツーリズム等のルールづくりや、自然環境と調和した魅力あるプログラムの作成を促進するとともに、情報の収集、提供等に努める。
 また、保全利用協定等の活用を併せて図りながら、亜熱帯地域の豊かな自然環境、景観、伝統文化等を生かしたグリーンツーリズム、ブルーツーリズム、ダイビング、修学旅行生の体験学習を積極的に促進する。
 さらに、世界遺産の首里城跡をはじめとする「琉球王国のグスク及び関連遺産群」の保全と周辺を含めた整備及び歴史的な建造物・まち並みの保全や復元を図るとともに、これらをネットワーク化した琉球歴史回廊の形成を促進する。
 体験・滞在型観光に関連する体験提供施設等の整備を図るとともに、多様な宿泊施設の整備を促進する。
 また、体験・滞在型観光のガイド、インストラクター等の養成に取り組む。

ウ コンベンション・アイランドの形成
 サミット首脳会合の開催地としての実績と、県全域がリゾート地ともいえる沖縄の特性を生かして、沖縄観光の付加価値の向上に資する国際会議等の開催を推進するほか、野球、サッカー等のスポーツキャンプの誘致、各種芸能、音楽の交流を促進するなど、コンベンション・アイランドの形成を図る。
 国際会議等各種会議の沖縄開催については、各省庁連絡会議の活用をはじめ、国、沖縄県、国際観光振興会等が一体となって積極的に取り組む。
 また、コンベンション需要に対応し、国際会議場等コンベンション施設の整備を促進するなど、コンベンション機能の充実を図る。
 さらに、コンベンション受入体制の充実を図るため、国際会議等の専門業者の育成、ボランティア組織の充実強化、国際会議等にも適応できる専門的な通訳の育成、接遇研修の実施等人材育成を強化する。

エ 国内外の観光客受入体制の整備と誘客活動の強化
 県民と行政が一体となった良質なサービスの提供、安全・衛生対策の実施、環境の美化、台風時の観光客対策、(財)沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の充実強化、市町村等との連携強化など、観光客の受入体制を整備するとともに、温かく迎えるためのホスピタリティーの高揚に努め、リピーターの増加と観光・リゾート地としての評価の向上を図る。
 また、外国語の案内標識の整備、外国人向け観光案内所の充実など、外国人にも優しい観光地づくりを推進する。
 観光情報システムの充実強化を図るとともに、沖縄の豊かな自然景観や、独特の風土、伝統文化、歴史等をデジタルアーカイブスとして整備し、沖縄情報の発信機能を強化する。
 観光客の多様なニーズに対応できる人材の育成・確保を図るため、県内大学、専門学校等における観光関連の学科等の拡充強化を促進する。
 沖縄への誘客については、魅力あるイベントの創出を図るとともに、行政と旅行関係企業・団体が連携して、誘客プロモーションを強化する。
 また、海外における誘致宣伝活動については、県及びOCVBの海外事務所のほか、国際観光振興会の海外ネットワークを通じた沖縄観光の宣伝・情報提供等に努め、中国、台湾、韓国、香港等を中心に外国人観光客の誘致を強化する。
 沖縄観光をさらに魅力的なものにするため、夜間や、雨天時及び季節を問わず楽しめるショービジネスをはじめとした多様なエンターテイメントづくりを促進する。
 国内外航空路線網の拡充を促進するとともに、当面航空運賃及び沖縄自動車道通行料金の低減に係る措置を継続し、アクセス条件の改善を図る。
 那覇空港については、沖合いへの空港施設の展開等について検討を行い、必要な整備を図るとともに、旧国内線ターミナル地区の利用について検討を行い、必要な整備を図る。また、貨物ターミナル等狭あい化が進みつつある地区について、所要の施設の整備拡充を図る。那覇空港へのアクセスを向上させる那覇空港自動車道、沖縄西海岸道路、臨港道路(空港線・浦添線)、沖縄都市モノレール等の整備を推進する。
 また、沖縄と国内外を結ぶクルーズ船の寄港・就航を促進するため、旅客船ターミナル等の港湾施設の整備を進めるとともに、観光案内等の受入機能の充実を図る。
 さらに、沖縄県内における観光客の移動の円滑化を図るため、共通乗車船券制度及び利用者利便増進事業制度の活用を促進する。

オ 産業間の連携の強化
 沖縄経済をダイナミックにけん引するリーディング産業として、産業間の連携を強化し、観光・リゾート産業の経済波及効果の拡大を図る。
 このため、土産品の製造販売等を通じた製造業や伝統工芸産業の活性化を図るとともに、農林水産物等消費財の県内供給の拡大を促進する。また、沖縄らしい料理サービスとして、地域食材を生かした料理メニューの開発、食材の供給体制の整備を推進する。
 さらに、保健、医療、福祉との連携を強化するほか、健康増進、美容等のためのケアビジネスや、海洋レジャー、スポーツ活動の拡大に対応した関連産業の新規創出を促進するとともに、音楽、文化、芸能、ファッション産業等との連携を図る。

(2) 情報通信関連産業の集積

 これからのリーディング産業として期待のかかる情報通信関連産業の集積を図るため、既存企業の振興を図るとともに新たな企業の立地促進を図る。また、高度な専門知識を有する人材の育成・確保、研究開発の促進、情報通信基盤の整備等を戦略的かつ機動的に促進する。
 情報通信関連産業を集積することにより、グローバルなインターネット・イクスチェンジの整備を促進し、アジア・太平洋地域における国際的な情報通信ハブの実現を図る。

ア 情報通信関連産業の立地促進
 沖縄において成長が見込まれる情報サービス分野、コンテンツ制作分野、ソフトウェア開発分野を中心に、情報通信関連産業の振興を図る。
 このため、情報通信産業振興地域制度や情報通信産業特別地区制度を積極的に活用しつつ、本土沖縄間の通信コストの低減化支援及び高度な情報通信機能や技術開発、研修等の設備を備えたインキュベート施設等の産業支援施設の整備等、地域の実情を踏まえながら戦略的な企業立地環境の整備を促進し、国内外からの情報通信関連産業の誘致及び県内情報通信関連産業の振興を図るとともに、起業を支援する。
 また、情報通信関連産業の集積を図るために必要な公共施設の整備に努める。
 情報サービス分野については、情報通信産業振興地域を中心に、コールセンター等の情報通信技術利用型事務処理センターの立地促進及び振興を図るとともに、情報通信産業特別地区においては、国内外の情報通信関連産業の立地要因となるデータセンター、インターネット・サービス・プロバイダ及びインターネット・イクスチェンジ等の中枢機能を有する企業の立地を促進する。
 コンテンツ制作分野については、名護市マルチメディア館等県内の施設のネットワーク化を促進し、最先端のデジタルコンテンツの制作環境の整備を進める。クリエーター、プロデューサー等人材の確保、県外からの業務受注支援や県内クリエーター等の起業支援、国内外コンテンツ制作企業の立地を促進する。
 また、観光情報の発信や沖縄の自然、歴史、風土、文化等の保存や継承、発信に向け、デジタルアーカイブスの整備を行うとともに、国内外コンテンツの集積を推進する。
 ソフトウェア開発分野については、県内企業への先進的技術の蓄積及び新規事業分野への業務拡大を促進するため、県外市場等の獲得に向けた企業のプロモーション活動を支援する。
 また、電子政府、電子自治体の実施に伴う公用アプリケーションの開発を強力に推進するなど先進的アプリケーションの集積を促進する。

イ 人材の育成・確保と研究開発の促進
 情報通信関連産業の振興を図る上で最重要課題である人材の育成・確保については、産学官が連携して、幅広い分野で、高度な専門知識と技術を有する人材を早期・大量に育成するとともに、国内外から優秀な人材を招致し、情報通信関連産業を支える研究開発及び技術の集積を図る。
 このため、技術革新に対応し、IT技術者のプログラミング、ネットワーク、データベース等の高度な技術活用能力や開発管理能力、企画提案能力等の総合的な高度化を図る。各種研修事業等の実施により、コールセンター等の高度化、多様化に対応した人材を大量に育成する。また、情報通信・放送分野の専門技術者を育成する。
 情報通信関連産業を担う高度技術者の育成・確保を図るため、専修学校における企業ニーズに対応した即戦力となる人材育成を促進する。琉球大学や県立芸術大学、県内私立大学におけるIT関連教育の充実強化を促進するとともに、沖縄工業高等専門学校における実践的技術者教育の充実に努める。
 さらに、Uターン、Iターンの促進や、世界水準の技術者、経営者などを国内外から招致するとともに、IT先進国への学生等の派遣により、国際性豊かな広い視野と高度な技術を身につけた人材の育成・確保に努める。
 長期的な視点に立った小中高校の情報教育の充実強化を図り、児童生徒の発達段階に応じた情報活用能力の育成を体系的に行うとともに、IT教育センター等を活用した教育関連コンテンツやソフトウェアの研究開発と普及、教育指導者の育成及び情報活用能力の向上に努める。
 また、沖縄の地理的な特性を生かし、アジア・太平洋地域のIT技術者の育成と交流拠点を形成するため、JICA沖縄国際センター等におけるアジア・太平洋地域のIT技術者を対象とした人材育成や人的交流を推進する。あわせて、これらアジア・太平洋地域からの研修生との交流機会の確保に努める。
 大学などの研究成果を生かし情報通信関連産業の技術の高度化を図るため、琉球大学をはじめとする県内大学及び国の研究機関における情報通信技術の研究開発を促進するほか、研究開発施設の立地の促進と研究機関相互の連携強化に努める。

ウ 情報通信基盤の整備
 情報通信関連産業を集積するため、高速・大容量・低コストを実現する多様な情報通信基盤の整備を促進する。
 また、情報通信関連産業の立地促進及び振興を図ることにより、国際的な情報通信ハブの形成に必要なインターネット・イクスチェンジの整備を促進する。
 さらに、沖縄県総合行政情報通信ネットワークの整備拡充を図るとともに、地域情報格差の是正、住民生活の向上等を図るため、情報通信基盤の整備を促進する。

エ 産業における情報化の促進
 高度情報化の進展や情報通信技術の革新に伴う流通構造の変化などに適切に対応し、地域産業の一層の振興を図るため、産業の情報化を促進する。
 このため、情報化に向けた投資や人材育成などの取組を促進し、情報の共有化や新たな事業価値を生み出すネットワークの形成を図る。
 また、中小企業におけるインターネットや、LAN、電子商取引など情報通信技術の導入を促進し、経営管理・生産の効率化を進めるとともに、県外、海外市場への一層の展開を図る情報発信機能の強化を促進する。
 さらに、製造業分野における在庫管理や消費者需要動向の把握、商店街の活性化に向けた顧客管理やイベント情報を発信するためのインターネットの活用等の情報化を促進する。また、商工会、商工会議所及び県中小企業団体中央会による情報化対策の充実強化を図る。
 あわせて、SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)、テレワーク等の新たなビジネス形態の導入を進める。

(3) 亜熱帯性気候等の地域特性を生かした農林水産業の振興

 亜熱帯性気候特性等を生かした活力ある農林水産業の振興を図るため、優位性の発揮や生産性向上が期待される重点的に推進する品目を定め、地域特性や地域の諸条件に適合した選択的かつ集中的な振興施策を推進し、豊かな太陽エネルギー等の環境で育まれたおきなわブランドを確立するとともに、環境と調和した持続型農林水産業への取組を強化する。

ア おきなわブランドの確立と生産供給体制の強化
 我が国唯一の亜熱帯性気候等の優位性を生かした活力ある産地を形成し、健康長寿や観光・リゾート地にふさわしい高品質かつ安全で安心な農林水産物を、消費者や市場に安定的に供給することにより、おきなわブランドを確立する。
 このため、市場競争力の強化により生産拡大が期待される園芸作物をはじめとした農林水産品目については、拠点となる産地を中心として、共同利用施設等の各種近代化施設の整備、収量、品質及び安定供給力の向上に向けた新技術の開発・普及など、各種施策を集中的に実施するとともに、生産・出荷の組織化を促進し、計画的、安定的に出荷できる産地を形成する。
 基幹作物であるさとうきびなど、農林水産業の安定的な振興を図る上で重要な品目については、生産基盤を整備するとともに、新技術の開発・普及、生産施設の整備、畜産環境対策、水産資源の適切な保存・管理等を推進し、生産性の向上を図りつつ安定的な生産供給体制を確立する。特に、さとうきびについては、担い手の経営規模拡大、農業生産法人や受託組織の育成、機械化一貫作業体系の導入などにより、生産コストを低減するとともに、生産の維持増大を図る。

イ 流通・販売・加工対策の強化
 大消費地から遠隔にある島しょ県の輸送上の不利性を軽減するとともに、県内外の消費者・市場に品質の高い信頼される農林水産物及び加工品を効率的かつ安定的に供給できる流通・販売・加工体制を構築する。また、市場競争力の強化に向けたマーケティングの充実を図る。
 このため、共同出荷場、水産物卸売市場等の各種流通施設の整備・再配置による県内物流の効率化を促進するとともに、生鮮品等の高品質保持流通システムを構築するほか、船舶・鉄道等を活用した輸送コストの低減対策を推進する。
 適格な品質表示の徹底、産地情報の発信機能の強化、クレーム処理体制の確立等により、消費者や市場から信頼されるおきなわブランドの確立に向けた出荷・流通体制を整備する。
 農林水産物流通情報システムの整備、観光需要を含む地産・地消体制の整備、地域農林水産物のマーケティング力の強化等により、県内外の市場動向等に対応した販売・供給体制を構築するとともに、積極的な販売促進に取り組む。
 特に、観光・リゾート産業、健康食品産業等との連携を強化し、地域食材を活用した料理、特産品の開発を促進するとともに、ニーズに応じた地域食材等を安定的に供給する体制の整備を促進する。
 農林水産物の付加価値を高める特産品やモズク等を利用した健康の維持増進に働く食品の開発を促進するとともに、HACCP方式に対応した加工処理施設の整備を促進する。また、素材の特性を生かした特色ある加工品の開発を推進する。
 製糖企業については、経営の合理化、さとうきびの総合利用を促進し、特に、含みつ糖については、新商品の開発、販売促進等による経営体質強化に向けた取組を促進する。

ウ 担い手の育成と農林水産技術の開発・普及
 担い手の減少や高齢化、産地間競争の激化等に対処するため、新規就業の促進、意欲ある経営感覚に優れた担い手の育成・確保を図るとともに、経営の安定・発展に向けた支援体制の充実強化を図る。
 新規就業者の支援をはじめとした後継者育成対策等を充実強化するとともに、認定農業者制度を推進し、農地流動化施策等の強化による経営規模の拡大、農業生産法人、作業受託組織等の育成・強化を図る。また、新規就業者等による養殖業、ブルーツーリズム等の展開を支援する。
 農業協同組合や漁業協同組合が地域農水産業の振興と地域活性化に十分その機能を発揮できるよう組織・機能の再編・整備を促進し、経営基盤の拡充強化を図るとともに、経営管理能力の向上、技術・経営指導体制の充実強化を促進する。
 沖縄では、台風災害が多いこと、他府県とは異なる多様な魚種を養殖していること等の沖縄の特性を考慮した共済制度の拡充強化を促進するとともに、農林漁業金融の充実やこれまで講じてきた主要農水産物についての価格対策を引き続き実施する。
 亜熱帯地域の特性等に適合した技術の開発・普及を推進し、市場競争力や生産体制を強化するため、産学官の連携による優良品種・種苗等の掘り起こしを推進するとともに、省力・低コスト化に向けた技術、高品質・安定生産技術等の開発・普及や未利用資源の研究開発等を推進する。
 経営感覚に優れ、技術力の高い担い手を育成するため、試験研究機関、農業大学校、普及センター等が連携を図り、教育・指導を充実する。
 技術情報提供システムを整備強化するとともに、農林漁家巡回指導等の充実を図り、高度先進技術の迅速な発信、わかりやすい情報提供を推進し、普及の徹底を図る。
 亜熱帯農林水産業の技術開発拠点である農業研究センター、林業試験場及び水産試験場等の再編整備を推進するとともに、本県と類似した地域・海域特性を持つアジア・太平洋地域等と連携した農林水産技術の交流を推進する。

エ 亜熱帯・島しょ性に適合した農林水産業の基盤整備
 亜熱帯特性等を生かした特色ある農林水産業の振興を図るため、亜熱帯・島しょ性の地域特性に適合する生産基盤の整備を推進する。
 沖縄の気象、地形、地質、営農形態に応じた、地下ダム等の農業用水源の確保、かんがい施設、ほ場等を計画的に整備する。特に、農業生産力の維持向上を図り、赤土等の流出を防止するためのほ場勾配の抑制やグリーンベルトの設置、沈砂池等の整備を積極的に推進する。また、台風等の影響を強く受ける沖縄の気象条件や侵食されやすい土壌条件等に対応した防風施設、農用地保全施設等を整備する。
 森林の有する多面的機能の発揮や林業の持続的かつ健全な発展を図るため、多様な森林の計画的な整備・保全を図るとともに、潮害等の防止のための海岸防災林の整備・保全を行う。
 温暖でサンゴ礁の発達した海域特性を活用したつくり育てる漁業の育成や漁船漁業の健全な発展を図り、また、台風時の漁船の安全確保等に資するため、魚礁、増養殖場等の漁場及び漁港の一体的な整備を推進し、併せて海洋レクリエーションの進展等に対応した多目的活用を図る。
 これら、生産基盤の整備に当たっては、農林水産業が自然循環機能を有する産業であることを考慮し、周辺の生態系等に配慮した整備に努める。

オ 環境と調和した農林水産業の推進
 農林水産業の自然循環機能の維持増進と豊かで美しい環境の保全を図り、環境と調和した農林水産業を推進する。
 このため、環境負荷の軽減に配慮した作付体系の確立、堆きゅう肥等有機質資源を活用した土づくり、農業用廃プラスチックの適正処理、自然エネルギーの活用等を推進する。特に、家畜排せつ物の低コスト処理や有効活用技術を確立するとともに、耕畜連携による家畜排せつ物の農地還元を基本に、環境と調和した資源循環型の農業を促進する。
 法的に移動規制の対象となっているイモゾウムシ等の根絶、有害なミバエ類の再侵入防止対策について、不妊虫放飼法や誘引剤を活用するなど環境負荷の低い害虫防除を推進する。また、病害虫対策については、施設園芸作物等への天敵昆虫の導入、さとうきび害虫防除へのフェロモン活用など、環境にやさしい技術の確立・普及を図る。
 農地からの赤土等の流出を防止し、農業生産力の維持向上、海域等の環境保全を図るため、ほ場の勾配修正、グリーンベルトの設置等と併せて、緑肥作物の導入、作付け体系の改善等、環境の負荷軽減に配慮した営農活動の促進に向けた総合的な取組を推進する。
 貴重な動植物の保全、身近な自然とふれあう空間の提供、地球温暖化防止等の機能を持つ森林の整備を推進するとともに、木質資源の有効活用を推進する。
 また、水産資源の再生産の場である藻場、干潟、マングローブ林及びサンゴ礁域等の保全・再生に努める。

(4) 創造性に満ちた新規企業及び新規事業の創出

 技術開発、経営相談、資金供給、人材育成、情報提供等の総合的・一元的な支援機能の整備や産学官連携のネットワークの構築等を図り、健康食品産業、情報通信関連産業、環境関連産業など地域特性や優位性を生かした産業等の新規事業の創出を戦略的に促進する。
 また、特別自由貿易地域制度、産業高度化地域制度及び金融業務特別地区制度等を効果的に活用することにより、国内外からの企業立地を一層促進する。

ア 新規事業展開の促進と創業支援体制の整備
 沖縄の地域特性や優位性を生かした新技術・新製品の開発や新たな分野への進出など、新規事業の創出やベンチャー企業の創出を促進し、地域産業の活性化を図る。
 (財)沖縄県産業振興公社を中核として各産業支援機関との連携を強化し、人材、技術、特許等の情報の共有化を図るとともに、情報提供のワンストップサービス化を行うなど、研究開発から事業化までの技術面、資金面、経営面の総合的な支援体制(プラットフォーム)の充実強化を図る。
 公設試験研究機関の機能や研究支援体制等の充実強化と、産学官の連携を強化し、企業のニーズや市場動向を踏まえた研究開発や、企業、大学等との共同研究を推進する。
 TLO(技術移転機関)の創設を支援し、地域産業への速やかな技術移転等を促進するとともに、大学発ベンチャーの育成を図る。また、大学等の研究成果と産業界のニーズを的確に結びつけるコーディネート機能の充実を図る。
 健康、バイオについては、健康バイオ研究開発拠点施設を核に、企業が行う事業化を見据えた研究開発を促進するとともに、付加価値の高い新商品開発等を支援する。
 また、バイオテクノロジー等最先端技術を利用した亜熱帯生物資源の解析による生理活性物質の探索を推進し、健康食品の差別化、高付加価値化を図るとともに、新たな健康食品の開発を促進する。
 新たなビジネスの展開等に潜在的可能性が高い海洋深層水については、製造業や農水産業における研究開発を積極的に進め、新技術・新製品の開発及び事業化を促進する。
 CM、テレビ番組、映画などのロケーション撮影に関する各種サービスを提供するフィルムオフィスの設置を促進し、ロケーション撮影の誘致拡大を図り、ひいては映像製作に関するCG等コンテンツ関連産業の事業創出を促進する。
 新たに起業化に取り組む個人や創業間もない企業等の円滑な事業展開を促進するため、インキュベート機能の充実やベンチャー企業等の初期投資の軽減を図る資金調達のサポートなど、創業基盤の整備を促進する。
 沖縄振興開発金融公庫の出資制度を積極的に活用し、ベンチャー企業等の新事業創出を促進する。
 起業家を数多く輩出するため、ロールモデルの活用等により、起業家意識の高揚を図るとともに、新事業の創出及び高度な経営・技術に対応できる人材の育成・確保に努める。
 また、若い世代の起業家精神発揚とベンチャー企業への支援のため、学生のベンチャー企業へのインターン派遣を促進する。

イ 特別自由貿易地域制度及び産業高度化地域制度等の活用
 アジア・太平洋地域における沖縄の地理的優位性や、国内唯一の特別自由貿易地域制度、産業高度化地域制度等の活用に加え、企業ニーズを踏まえた魅力ある投資環境を整備するなど戦略的な取組により、国内外企業の立地を促進し、加工交易型産業等の集積を図る。
 このため、特別自由貿易地域において、管理運営法人が実施する立地企業のための事業場の設置や創・操業支援など特別自由貿易地域活性化事業を促進するとともに、今後の特別自由貿易地域の活用状況等を踏まえ、初期投資の負担を軽減する賃貸工場の整備や、土地の賃貸方式の導入及び助成制度の充実に取り組む。
 アジア地域を中心とした国際物流市場の活発化と効率的な物流管理のニーズに対応するため、沖縄の地理的特性を生かし、国際的なロジスティクスセンター等の国際物流関連産業を集積し、国際物流拠点の形成を図る。
 また、中城湾港新港地区の整備を促進するとともに、具志川沖縄線等道路網の整備を推進するなど、関連基盤の整備を図る。
 産業高度化地域においては、製造業等を行う企業及び産業高度化事業を行う企業の立地を促進し、相互の有機的な連携により、製造業等の高度化を図る。
 企業誘致については、特別自由貿易地域制度、産業高度化地域制度などの各種優遇措置を積極的に活用し、国内外企業の立地を促進する。

ウ 金融業務の集積
 金融業務特別地区において、金融業務の集積を図り、沖縄における雇用機会の創出、ひいては自立的発展につなげるとともに、我が国をはじめアジア・太平洋地域の経済発展へ貢献する。
 このため、金融業や金融関連業務の集積に向け、情報通信基盤を整備するとともに、企業ニーズを踏まえ、レンタルオフィス等、企業立地環境の整備を促進する。また、居住環境を含めた周辺環境の整備を図り、金融センターにふさわしいまちづくりを促進する。
 また、雇用助成制度等の各種制度を活用し、国内外からの企業誘致を進める。
 さらに、高度な金融知識を備えた人材の確保に努めるとともに、県内の大学等における金融に関する専門コース・講座の開設を促進する。

(5) 地域を支える産業の活性化

 製造業や建設業をはじめとした既存産業の活性化を図るため、内外市場における競争力の強化、経営基盤の強化、経営の革新、情報化への対応、流通体制の強化等、市場ニーズや環境の変化に的確に対応した取組を促進する。

ア 製造業
 競争力を強化し、一層の活性化を図るため、付加価値の高い製品づくり、売れる商品づくり、県産品の県内市場占有率の向上等の取組を強化する。
 このため、内外企業との資本、技術提携を促進し、大消費地における県産品の販路開拓など、市場競争力の強化と市場の拡大を図る。
 工業技術センター、(株)トロピカルテクノセンター等試験研究機関における試験研究・技術開発の強化と研究成果の企業への移転を促進し、企業における製品の開発や高付加価値化を促進する。
 企業の生産力及び技術力の向上を図るため、ITを活用した生産設備や共同生産・加工施設の整備等を促進するとともに、品質の向上と沖縄産製品のブランド化を目指し、企業の国際規格(ISO)取得やHACCP方式の導入を促進する。
 県産品の県内市場占有率を高め地域産業の振興と雇用機会の創出を図るため、産業まつりの開催や県産品奨励運動、地場産業振興支援策の拡充、消費者等の県産品愛用意識向上を図る。
 また、企業活動を支える工業用水道等の産業基盤の整備を進める。
 工芸産業については、ゆとりと豊かさを求める消費者のニーズにこたえる地域産業として育成を図る。また、伝統的工芸品の安定した供給体制の確立に努め、持続的に発展する産業として自立化を促進する。
 このため、試験研究機関との連携を図るとともに、観光・リゾート産業等他分野の産業との連携強化及び新技術の活用を進め、消費者のニーズを的確に把握し、消費者ニーズに対応したデザイン開発や製品開発を促進する。
 また、原材料の確保、後継者の育成、技術者の養成等に努めるとともに、インターネットの活用による工芸産業の活性化を図る。
 さらに、県民や観光客等が工芸品に気軽に触れ合い、購入できる場として、ファッション、食文化等を取り込んだ工芸振興ゾーンの整備を促進する。

イ 建設業
 沖縄県の建設業は、生活関連施設及び産業活動基盤づくりを担う産業として、県経済の中で重要な役割を果たしているが、中小零細な事業者が多く、経営基盤がぜい弱であるとともに、公共投資の抑制、民間投資の減少等、厳しい環境の中にある。
 このような中で、企業の自助努力のもと、多様化、高度化する建設需要に対応し技術力・経営力の強化を図るため、技術開発やIT等の先進技術の活用、技術者等の育成を促進するとともに、組織化による経営の合理化、合併、協業化等の企業連携の強化、企業体質の近代化等を促進する。
 また、官公需についての中小企業者の受注の確保に関する法律等に基づき、地元中小・中堅建設業者の受注機会の増大に積極的に取り組むとともに、技術と経営に優れた企業が伸びることのできる透明で競争性の高い市場環境の整備を図る。
 さらに、建設産業の持つ技術やノウハウを活用して環境、福祉、観光、情報通信等新分野への進出や維持補修、リニューアル等の社会ニーズの変化への的確な対応を促進する。
 
ウ 鉱業
 石灰石等は、自然環境、地域住民の生活環境に配慮した開発を促進するとともに、安定的供給の確保を図る。
 多数の採石輸送トラックの往来は、粉塵の発生等により、住民生活や快適な観光・リゾート地のイメージに影響を与えることから、輸送体制の整備に努める。
 可燃性天然ガス・石油等の地下資源については、産業振興に寄与する方向で調査及び開発を促進する。

エ 商業
 モータリゼーションの進展への対応の遅れ、郊外型大型店舗の立地等により、空洞化や衰退化が進む地域の中心市街地の活性化を図るため、市街地の整備改善と商業の活性化に向けた総合的な街づくりを進める。
 このため、中心市街地の活性化に取り組むまちづくり機関(TMO)を活用し、市町村が策定する中心市街地活性化基本計画に基づく活性化に向けた様々な取組を支援する。
 また、通り会等の組織化や組織力の強化を図り、情報の発信、電子商取引など新たな販売手法の導入等による大型店舗との差別化や、空き店舗の有効活用等を図る。また、タウンマネージャーなど街づくりや活性化を担う人材の育成・確保を図る。
 さらに、駐車場等の商業基盤、施設の整備を促進するとともに、街路、ポケットパークの整備、電線類地中化、バリアフリー化及び再開発を促進する。
 全国的な流通経路の短縮化や小売業者間の競争激化による取引先の減少等、急速に変化する卸売業の動向に対応して、物流センターの設置等による流通の効率化、受発注システムの高度化などを促進するとともに、卸売団地の整備、リテールサポート等の取組を強化する。

オ 運輸交通業
 島しょ性や本土からの遠隔性等の特性を有する沖縄において、航空輸送及び海上輸送は、県民の生活路線であるとともに、観光や産業振興に重要な役割を果たしている。陸上輸送については、交通渋滞の緩和や環境問題への配慮から公共交通機関の重要性が増している。このような沖縄の地理的特性や地域社会の発展に伴う人、物の輸送の増大に対応するため、運輸交通の安定的な確保を図る。
 また、これらの輸送手段を確保、拡充するため、運輸事業者の経営基盤の安定化を図るとともに、情報通信技術の活用による近代化や合理化を促進する。加えて、各種輸送機関の特性を生かした効率的な輸送体系の確立を図るとともに、物流環境の整備を促進する。
 さらに、公共交通機関の利用を促進するため、バス路線網の再編及び渋滞緩和等走行環境の改善を図るとともに、沖縄都市モノレールの需要喚起策を促進する。

(6) 販路拡大と物流対策

 大消費地等国内外の市場における県産品の販路拡大を図るため、生産振興策や物流対策と一体となった積極的な市場展開を促進するとともに、マーケティング機能や販路拡大のための体制を強化する。
 沖縄の貿易振興と県産品の販路拡大を図るため、貿易や取引の相談・あっ旋、国内外の市場情報等の収集・提供、多彩なプロモーション機能等、市場から生産への情報の伝達や製品開発等の機能を一体として有する組織体制を強化する。
 また、海外事務所等を中心としたネットワークを強化し、貿易・経済情報の収集及び提供、物産のPR活動に努め、企業活動の活発化による貿易促進を図る。
 また、おきなわブランドの確立に努めるとともに、物流コストの低減化に向け、県外への製品出荷等を一元的に管理する効率的な物流システムの構築を図る。

(7) 中小企業の成長発展

 県内外における競争の激化、消費者ニーズの多様化、情報化社会の急激な進展などの変化に適切に対応し、中小企業の成長発展を図るため、新規事業の創出に関する施策に加え、経営基盤の強化と体質の改善、経営の革新等を促進する。
 このため、経営革新等を行う中小企業等の情報化、物流効率化、販路開拓等に対する支援を充実強化する。
 中小企業の規模の過小性等を改善するため、組織化及び情報化を支援する。
 また、商工会等の経営改善普及事業等を促進し、小規模事業者の経営の安定と競争力の強化を図る。
 さらに、消費者ニーズに合った製品・サービスの開発、提供など、中小企業が実施する市場競争力の強化、生産性の向上等に必要な取組を促進するため、市場動向調査や新商品・新技術開発、販路開拓、人材育成等を支援する。
 中小企業者の事業活動に必要な資金の調達を円滑化し経営の安定を促進するため、制度金融及び信用補完制度についても、時代の変化等に適切に対応した制度の見直しを図る。
 また、中小企業経営者等を対象とした研修事業や意識啓発セミナーなどの拡充を図り、経営者の資質の向上に努める。

(8) 産業振興を支援する金融機能の充実

 民間主導の産業振興を図るため、円滑な資金供給等金融の円滑化を推進する。
 このため、沖縄振興開発金融公庫においては、沖縄振興特別措置法に基づく地域指定制度等に対応する資金制度を整備し、企業等の積極的な活用を促進する。
 また、新規産業、新規事業の創出を図るため、民間金融機関等と連携してベンチャー企業等への出資や助言等の支援を充実し、その育成発展を図る。

2 雇用の安定と職業能力の開発

 産業振興と一体となった雇用機会の創出・拡大を図るとともに、特に厳しい雇用状況にある若年者の雇用促進のための施策を積極的に実施する。
 また、産業振興に必要な専門的な能力を有する人材の育成に重点を置いた職業能力の開発を行う。

(1) 雇用機会の創出・拡大と求職者支援

 地域雇用開発促進法の特例を踏まえ、地域の特性に応じた雇用機会の創出のための施策と産業動向等の情報提供や職業講習会の実施等の求職者支援の施策とを一体的に実施する。
 今後、発展が期待される重点産業において、雇用の創出と人材育成を一体的に行う沖縄特別雇用開発推進事業等の施策を推進するとともに、助成金制度等の各種制度を活用し、雇用機会の創出・拡大に努める。
 地域の特性に応じた産業振興と連携したこれらの雇用施策を効果的に推進するため、(財)雇用開発推進機構を中心とした推進体制を強化する。
 さらに、関係機関が連携した地域求人の開拓や「しごと情報ネット」の活用等による求人情報の提供及び職業相談等の職業紹介機能を充実強化し、労働力需給のミスマッチの解消に努める。
 雇用環境が厳しい状況にある高齢者や障害者等については、各種の就職支援制度の活用等きめ細かな雇用対策を推進するとともに、シルバー人材センターや障害者就業・生活支援センターの設置を促進し、就業機会の拡大を図る。
 また、全国で最も高い完全失業率など構造的に厳しい沖縄の状況を踏まえ、国、沖縄県等が連携して雇用失業情勢の改善に重点的に取り組む。

(2) 若年労働者の雇用促進

 新規学卒者を中心とする若年労働者については、若年者の雇用開発を支援する制度等を活用した雇用機会の創出・拡大を図るとともに、職業指導の充実、就職情報システムの整備及び県外求人の積極的な開拓等広域的な就職促進を図る。
 また、企業における求人動向の変化等に対応した多様な職業能力の開発や試行就業の促進等きめ細かな就職促進対策を実施する。
 特に、就職が厳しい新規学卒者等については、在学時におけるインターンシップ等就業体験を通した職業意識の向上や、キャリア・カウンセリングの充実等相談体制の強化及び実践的な技術・技能の修得促進等人材育成から就職までの一貫した支援体制を構築し、県内外に開かれた雇用機会の創出を図る。

(3) 職業能力の開発

 技術革新や経済のグローバル化の進展による経済・産業構造の変化、就業意識や就業形態の多様化に伴う労働移動に的確に対応するため、高度で専門的な職業能力開発を一層推進する。
 労働者が自発的に行う職業能力開発を促進するとともに、労働者個人のキャリア・コンサルティングを強化しキャリア形成を支援する。
 情報通信関連産業、観光・リゾート産業、加工交易型産業、健康食品産業、環境関連産業等の重点産業分野については、専門的な技術や知識を有する人材を確保するため、公共職業能力開発施設での職業訓練のほか、事業主や事業主団体、民間の教育機関、大学及びNPOなどへの委託訓練を実施するとともに、事業主が行う職業訓練を支援する。
 沖縄職業能力開発大学校においては、「生産情報システム技術科」を設置するなど、高度で専門的な技術や知識を有する人材の育成を推進する。また、沖縄職業能力開発促進センターにおいては、離転職者の早期再就職のための職業訓練を実施する。さらに、「沖縄北部雇用能力開発総合センター(仮称)」を設置し、企業の立地状況に応じた人材の育成を図るとともに、事業主団体との連携により、地場産業の基盤形成に資する教育訓練の実施、職業能力開発等に関する情報提供、相談援助等を行う。
 県立職業能力開発校においては、訓練コース、訓練内容の見直し、施設・設備や指導体制の充実強化等ハード、ソフト両面からの再編整備を進める。
 また、グローバルな知見や行動力を備えた意欲ある産業人材を育成するため、学生等のインターンシップの幅広い活用や海外企業等への従業員の長期派遣研修を行う事業主に対する支援等戦略的な施策を促進する。

(4) 働きやすい環境づくり

 職場、家庭や地域において、労働者の個性が発揮できる豊かで働きやすい社会の実現のため、労働時間の短縮を促進し、中小企業勤労者福祉サービスセンター、中小企業退職金共済制度及び勤労者財産形成促進制度などの普及促進に努める。
 また、育児・介護休業法の周知やファミリー・サポート・センターの設置を促進し、仕事と家庭の両立を支援するとともに、男女雇用機会均等法等の周知等、職場における男女の均等な取扱いの確保に努める。
 さらに、労働相談機能の充実に努めるとともに、個別労働関係紛争の解決を着実に図り、安定的労使関係の形成を支援する。

(5) 駐留軍等労働者の雇用対策の推進

 駐留軍等労働者の雇用の安定を図るため、返還合意後の職業訓練等に十分な期間を確保する。また、配置転換等に向けた技能教育訓練を推進し、雇用の継続が図られるよう努めるとともに、離職を余儀なくされる駐留軍等労働者については、再就職に向けた離職前職業訓練の一層の充実を図る。
 さらに、駐留軍関係離職者については、特別給付金の支給、就職促進手当の支給、職業指導、職業紹介、職業訓練等各種の支援措置を実施するほか、(財)沖縄駐留軍離職者対策センターを活用し、離職者の再就職を促進する。

3 科学技術の振興と国際交流・協力の推進

 「知の世紀」といわれる21世紀の社会経済の発展に向け、付加価値の高い産業を創出し、活力ある自立型経済を構築するとともに、県民生活の向上に資するため、科学技術の振興に積極的に取り組む。
 さらに、経済、学術、文化及び平和等様々な分野で、アジア・太平洋地域との交流・協力を推進し、我が国のみならずアジア・太平洋地域の社会経済及び文化の発展に寄与する地域の形成を目指す。
 また、沖縄の歴史的、地理的特性を踏まえ、アジア・太平洋地域における平和交流拠点の形成を目指す。
 さらに、国際交流・協力拠点の形成に必要な交通基盤等の整備を図る。

(1) 大学院大学等による科学技術の振興と学術研究・交流拠点の形成

 科学技術は、21世紀の沖縄の社会経済を発展させる大きな原動力となるものである。科学技術から得られる知的資産の集積は、新たな技術革新を促進し、新産業の創出や既存産業の高度化及び市場競争力の向上に寄与するとともに、医療・福祉、環境、食料・エネルギー問題の解決など、県民の生活全般にわたる質の向上につながる。
 沖縄における科学技術の振興及び我が国の科学技術の進歩の一翼を担うため、また、アジア・太平洋地域さらには世界に開かれた中核的研究機関として、我が国の大学のあり方のモデルとなるような新たな発想を持った世界最高水準の自然科学系の大学院大学等を核とした大学、公的研究機関、民間の研究所などの教育研究機関の整備充実に努め、科学技術の集積を図る。
 沖縄における学術研究・交流拠点の形成を目指し、琉球大学をはじめとする県内の大学、国及び沖縄県の研究機関等の整備や研究開発機能の充実強化を図り、これらの研究機関を軸としたIT、バイオ、環境、食品工業等の分野における研究開発を積極的に促進する。サンゴ礁保全やマングローブ研究、亜熱帯農業技術等、沖縄の亜熱帯特性を活用した研究開発を総合的に推進する。
 また、国際的な地球環境情報の集積・発信拠点である国際海洋環境情報センター等を中核として地球環境、海洋気象等に関する研究ネットワークの整備を促進するとともに、独立行政法人国際農林水産業研究センター(JIRCAS)沖縄支所の研究施設を充実し、熱帯・亜熱帯作物の栽培・利用技術及び島しょ農業の環境管理技術に関する研究等を推進する。アジア・太平洋地域の国々が抱える地球規模の諸問題に関する学術研究と情報発信ができるアジア・太平洋地域の研究拠点の整備に向けて取り組む。
 さらに、大学等の研究成果を産業や経済の発展に生かすため、これらの学術研究拠点と県内外の研究機関や関係団体との連携の強化を図るとともに、沖縄が有する資源や特性等を活用した産学官連携による共同研究開発を積極的に支援することにより関連産業の振興を図る。特に、産業技術総合研究所及び科学技術振興事業団においては、沖縄における科学技術の振興や産学官共同研究の成果の普及、情報提供等の支援を積極的に行う。
 また、大学における研究成果の移転を行うTLOの創設を支援し、地域産業への速やかな技術移転を促進するとともに、大学の知的資産や大学で開発された技術を活用した大学発ベンチャーの創出を図る。
 また、これらの研究成果については、国際会議の開催等を通して広く世界へ向けて発信する。
 科学技術を担う人材育成や確保については、国内外を問わず広く研究者や学生の派遣・受入れや交流を積極的に推進するとともに、次代を担う子どもが科学技術への関心を高めるための施設整備の促進等、科学技術と親しむ機会の提供に努める。

(2) 国際交流・協力の推進

 国際化に対応し得る人材を育成・確保するとともに、地域における国際化に向けた取組や世界各地とのネットワークの確立を図る。また、県民、NPO、企業、大学、行政等は文化、経済、平和等様々な分野における国際交流・協力を展開する。
 このため、留学生派遣制度や同時通訳者養成制度を有効に活用し、英語を中心とした外国語が堪能な人材を育成するとともに、これらの人材の活用を図る。
 また、国際交流・協力に対する啓発に努めるとともに、積極的に県民の英語力の向上を図る。
 さらに、留学生研修生の受入体制を強化するとともに、NGO、NPO等との交流の場を設けるなど、地域における国際交流を進める。
 相手国の習慣、宗教、文化等の多様性を踏まえ、友好親善交流や海外の地方自治体との姉妹都市提携を促進する。
 国際交流基金は、国際文化交流を目的とした人物の派遣や招聘、催し等の積極的な実施に努める。
 平和の礎及び平和祈念資料館をはじめとする平和学習拠点の活用を図り、展示品等をデジタル情報として記録し、閲覧できるようにするとともに、平和に関する国際会議等の開催誘致に努め、国連機関を含む国際機関等の誘致の可能性も検討し、沖縄平和賞事業を実施するなど平和の大切さを沖縄から世界に発信する。
 また、海外事務所や民間経済団体等との連携による経済交流や福建省との交流促進、ワールドウチナーンチュ・ビジネス・アソシエーション(WUB)との連携強化、世界のウチナーンチュ大会の開催等により世界各地とのネットワークの形成を図る。
 JICA沖縄国際センターを活用し、開発途上地域からのIT、保健・医療等の分野における研修、青年海外協力隊に対する訓練等、開発途上地域の持続的発展、人材育成のための諸事業を積極的に推進する。
 さらに、ハワイ州等との地域間協力を促進するとともに、遠隔医療システムを用いた医療協力などの成果を他の島しょ地域に移転するための仕組みを整備する。
 あわせて、国際貢献拠点形成に向けた環境等のモニタリング機能の充実や緊急医療機能の高度化等を図る。

(3) 国際交流・協力拠点の形成を目指した基盤整備

 国際社会に貢献する特色ある地域として、国際交流・協力拠点の形成に向け、アジア・太平洋地域における人、物、情報の結節点として必要な交通アクセスの拡充等の環境整備を図る。
 このため、那覇空港については、沖合いへの空港施設の展開等について検討を行い、必要な整備を図るとともに、旧国内線ターミナル地区の利用について検討を行い、必要な整備を図る。また、貨物ターミナル等狭あい化が進みつつある地区について、所要の施設の整備拡充を図る。
 あわせて、航空会社の就航を促すための条件整備に努め、国際航空ネットワークの拡充を図る。
 また、那覇港の国際航路ネットワークの拡充を図るため、国際クルーズ等に対応した旅客船バース等を整備するとともに、利便性を高めるため、那覇、泊、新港、浦添の4ふ頭地区の機能再編を促進する。
 さらに、国際コンベンション拠点を目指し、国際会議を誘致するとともに、国際会議場等のコンベンション施設の整備を促進する。
 加えて、那覇空港自動車道、沖縄西海岸道路等規格の高い道路の整備、及び本島東西間や南北幹線の道路網の整備を図るとともに、国際的な情報通信ハブの形成に向けた基盤整備を図る。

4 環境共生型社会と高度情報通信社会の形成

 沖縄の島しょ性を踏まえ、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷が低減される持続可能な循環型社会を実現するため、先導的な取組を推進するとともに、地域の特性に応じ、豊かな自然環境、地域環境の保全・創造を図る。また、快適で潤いのある生活環境基盤を整備するとともに、都市・農山漁村の総合的整備や自然と調和した災害に強い県土づくりを進める。
 さらに、環境影響評価制度の推進を図る。
 また、情報格差の解消や、住民生活の利便性の向上、産業の振興及び行政事務の効率化等を支える情報通信基盤の整備を促進し、豊かで暮らしやすい高度な情報通信ネットワーク社会の実現を目指す。

(1) 循環型社会の構築

 沖縄が世界に誇れる財産である美しい自然環境と社会経済活動との調和を図るとともに、環境負荷の少ない循環型社会を構築する。
 このため、廃棄物の減量化、リサイクル及び環境美化を促進するとともに、処理困難物の適正処理や廃棄物の資源化対策を推進する。
 また、一般廃棄物の広域的な処理体制及び公共関与による産業廃棄物等の処理施設整備を促進するとともに、使用済自動車など廃棄物の不法投棄防止体制を強化し、その防止を図る。
 さらに、沖縄の島しょ性を踏まえて、雨水の有効利用を促進するとともに、離島と沖縄本島間の連携による処理困難物対策や廃棄物の輸送等静脈物流システムの構築に取り組む。
 ゼロエミッション・アイランド沖縄構想に基づき、豊富な自然資源を生かした自然エネルギーの活用、バイオマテリアル製造事業の導入、廃ビン等の循環資源を活用した企業化の促進、環境関連技術に関する研究開発の推進を図る。
 こうした取組等を通じて、沖縄を、環境共生、循環型社会のモデル地域として形成し、その成果を広く情報として発信する。

(2) 自然環境の保全・活用

 沖縄の豊かな自然を守り、適切な活用を図るため、自然保護施策の総合的推進、環境保全、公害の未然防止に取り組むとともに、環境教育等を推進する。
 このため、島しょ生態系にかなった土地利用を進めながら、森林を適切に保全管理し、新たな国立公園の指定を検討するとともに、自然環境保全地域、自然公園及び鳥獣保護区の適正な配置・管理及び活用を図る。また、希少な野生生物の保護管理など生物多様性の確保に努めるとともに、移入種対策を強化する。
 環境保全型自然体験活動の促進を図るため、同活動の実施に関する保全利用協定の活用を促進するとともに、指導者・ガイドの育成、情報提供体制の整備及び講習会の開催などの普及啓発等を推進する。
 また、県木であるリュウキュウマツを守るため、全県的な松くい虫防除対策を推進する。
 赤土等流出問題については、流域協議会を設置し、地域住民による流出防止への取組を促進するとともに、農地等の各種発生源対策の強化、赤土等の流出防止技術の研究・開発及び堆積土砂の除去等総合的な対策を推進する。
 サンゴ礁に甚大な影響を与えるオニヒトデの大発生については、早期段階から情報把握に努め、集中的な駆除を実施するなど、実効ある対策を講じる。
 地球温暖化防止対策やオゾン層の保護対策等を推進するとともに、水質汚濁や大気汚染等の防止に努める。また、低公害車の導入を促進する。さらに、米軍航空機騒音や基地排水等の監視測定を強化する。
 環境教育を充実し、県民、事業者、行政が一体となって環境問題に取り組む。また、自然体験型学習施設を整備するとともに、野生生物保護センター等を活用した自然体験活動を促進する。

(3) 生活環境基盤の整備

 上水道、下水道、公園・緑地、住宅等の生活環境基盤を整備し、快適で潤いのある豊かな生活環境や環境に優しい生活空間の創出を図る。

ア 上水道の整備
 水需要の増加に対応した水資源の安定的な確保と併せて、導水・浄水・送水・配水施設等の整備を進めるとともに、高度浄水処理施設を整備し、より質の高い水の供給を図る。また、自家発電設備の整備や耐震化等災害に備えた整備を進めるとともに、老朽施設の改良を図る。
 さらに、小規模水道事業の広域化を促進するほか、離島における海水淡水化施設及び海底送水管の整備を図る。

イ 下水道等の整備
 快適な生活環境の確保と併せて、河川・海域等の水質保全を図り豊かな自然環境を保全するため、下水道、集落排水施設等汚水処理施設の整備を推進する。
 このため、人口の増加、生活様式の変化、都市化の進展に伴う汚水量の増大にあわせた都市部における公共下水道の整備、優れた自然環境の保全等を図る特定環境保全公共下水道等の整備を促進するとともに、中部流域下水道、中城湾流域下水道、中城湾南部流域下水道の整備を進める。
 また、整備にあたっては、良好な水環境の保全・再生に配慮し、下水処理水等の有効利用を図るとともに、合併処理浄化槽の普及と下水道等への接続を促進する。

ウ 公園・緑地の整備
 レクリエーション需要を満たし、地域活性化を支援するとともに、災害時の避難場所ともなる公園・緑地の整備を図る。
 このため、我が国唯一の熱帯・亜熱帯公園である国営沖縄記念公園海洋博覧会地区及び琉球の歴史・文化を伝える同首里城地区とその周辺地域の整備など、国内外のレクリエーション需要に応えるとともに、観光の拠点ともなる国営公園等の整備充実を図る。
 中城公園の整備等、歴史・文化などを生かした観光・リゾート産業の振興に資するとともに県民の多様なニーズに対応した都市公園を整備する。
 また、地域防災計画に基づく都市公園の適正配置や防災機能の付加、バリアフリーへの対応、市街地や観光地における良好な景観の形成を推進するとともに、快適なウォーターフロントを形成するための港湾緑地等の整備を推進する。さらに、地域の歴史的空間の計画的な緑化等の推進を図る。

エ 住宅の整備
 住宅需要に対応した住宅の量の確保と併せて、居住水準の向上を図るほか、高齢者、障害者等の住生活に対応した多様な住宅の供給を促進する。
 このため、公的資金を活用した民間住宅の建設を促進するとともに、公営住宅の供給を促進する。
 また、高齢者向け優良賃貸住宅の供給や民間住宅のバリアフリー化を促進するとともに、沖縄の気候・風土を考慮した住宅の整備を促進する。
 さらに、既成市街地における不良住宅密集地区の改善、老朽化した公共賃貸住宅の建替えと併せた総合的住環境の整備を促進するとともに、消費者への適切な住まいに関する情報提供体制の整備を進める。

(4) 都市・農山漁村の総合的整備

 地域に活力と利便を提供する都市の機能強化とともに、豊かな環境に恵まれ県民の憩いの場ともなる農山漁村の振興を図り、活力ある地域を形成する。また、都市・農山漁村の連携と機能分担を図るとともに、都市の整備においては、民間のノウハウや資金等を活用しつつ、地域の特性に応じた整備に努める。

ア 市街地の効率的な整備
 地域や街を活性化するため、既成市街地における都市機能の更新、空洞化しつつある中心市街地の再構築、市街地内低・未利用地の活用を図る。また、駐留軍用地跡地と市街地との一体的な再開発を促進する。
 このため、住民参加のもと、地域の創意工夫を生かす地区計画を積極的に定め、きめ細かなまちづくりに努めるとともに、土地区画整理事業や市街地の再開発等を推進し、道路、公園、宅地等を一体的に整備する。併せて、土地の有効高度利用、ハード、ソフト施策の連携による交通渋滞の緩和、電線類地中化、バリアフリーの推進等による歩行者空間の整備など良好な住環境整備に努め、中心市街地の活性化を図る。
 同時に、無秩序に散在する墓地の集約化や緩衝緑地等の保全、整備による住宅地の環境改善など、魅力あるまちづくりを推進する。

イ 民間主導による都市の再開発
 戦後、自然発生的に形成された既成市街地において、建築物の老朽化が進行し、更新の時期を迎えている。
 これからの都市再生においては、民間のノウハウや資金等を活用し、新たな需要を喚起することが重要である。
 このため、民間から提案される都市再開発に対しては迅速な対応、適切な誘導を行い、民間施行市街地再開発等の事業を積極的に支援するとともに、都市基盤施設を整備し、良好な市街地形成や土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の維持増進を図る。
 モノレール駅周辺については、それぞれの地域の特性を生かした再開発を促進する。

ウ 多面的機能を生かした農山漁村の振興
 農林水産業の生産活動の場であるとともに、生活の場である農山漁村について、豊かな自然環境の保全や景観の形成、伝統文化の継承等の多面的機能を生かし、都市住民にも開かれた快適で活力あるむらづくりを推進する。
 このため、コミュニティ活動を促進し、地域活力の向上や伝統文化の継承を図るとともに、女性、高齢者等の活動を促進する。
 地域の自然や景観と調和した集落道、集落排水施設、コミュニティ施設、公園などの生活環境基盤を計画的、総合的に整備し、地域の諸条件に応じた農山漁村空間の創造を促進する。また、高度情報化に対応するため、地域情報基盤を整備し、都市地域との情報格差の改善及び農林水産業の経営の多角化を推進する。
 観光・リゾート産業と連携した地域の主体的な取組によるグリーンツーリズム、森林ツーリズム、ブルーツーリズムを促進するため、体験・滞在交流施設等の整備を図るとともに、コーディネーター、インストラクター等の人材育成、多様な活動メニューの開発及び情報の受発信等を促進する。
 都市住民との交流による地域の活性化や就業機会の創出及び地産・地消による農林水産物の需要拡大を図るため、特産品の加工・開発及び直売所の整備など、農林水産物供給体制の確立に努める。

(5) 高度情報通信ネットワーク社会の実現

 豊かで暮らしやすい高度情報通信ネットワーク社会を実現するため、高速・大容量・低コストを実現する情報通信基盤の整備やそれらを利用しやすい環境の整備を進め、県民生活の利便性の向上、産業の振興、行政事務の効率化等を図るとともに、情報格差の解消に努める。

ア 高度情報通信ネットワークの整備
 光ファイバ網やCATV網等をはじめ、有線回線、衛星回線及び地上無線回線等の多様な情報通信基盤の整備を促進する。
 住民が高度な情報通信サービスや公共サービスを受けられる環境の整備を図るため、高速・超高速ネットワークの整備や地域公共ネットワークの整備を促進するとともに、離島・へき地における情報格差の是正に向け、情報通信基盤の整備を促進する。
 また、県と市町村等間を結ぶ沖縄県総合行政情報通信ネットワークの整備拡充を図るとともに、学校教育における情報化を推進するため、沖縄県総合教育情報ネットワークを整備拡充する。
 さらに、技術やアプリケーションの急速な進展が見込まれる携帯電話等をはじめとする、次世代の先進技術を活用した情報通信基盤や施設の県内への先行的な整備を促進する。

イ 地域情報化の促進
 島しょ性がもたらす時間的・空間的不利性を克服するとともに、住民生活の向上と地域の特色ある産業や文化の振興に資するため、地域の情報化を促進する。
 このため、児童・生徒及び教員の情報リテラシーの向上に取り組むとともに、社会教育施設等における講習会の開催等を通して、住民が情報通信技術を利活用する機会の拡大に努める。
 地域や圏域をネットワーク化する情報通信基盤の構築を促進し、地域の社会経済の活性化を図る。
 また、離島地域における民間放送テレビ・ラジオの難視聴解消に努めるとともに、離島・へき地遠隔医療支援情報システムの充実を図る。
 さらに、データ通信においても、距離による料金格差を解消するサービスの提供を促進する。

ウ 電子自治体の構築
 行政事務の効率化及び住民サービスの向上を図るため、電子文書・電子決裁、電子投票の導入、調達、入札、申請・届出等のオンライン化等、県及び市町村の電子自治体構築、運営等を支援する。
 また、国が保有する光ファイバ網を活用して、国・県間の行政情報の高度利用を図る。
 さらに、ITを利用した教育研修システムの導入等、県と市町村を結ぶ行政情報通信基盤の多様な活用を促進するとともに、電子自治体の構築、運営等を担う人材育成を促進する。

(6) 災害に強い県土づくり

 島しょ性や県土の厳しい地形・気象条件のもと台風や集中豪雨、地震、津波等による自然災害から県民の生命と財産を守り、安全で快適な住みよい生活環境を確保する。
 このため、浸水対策としては河川改修及び下水道整備を連携して推進する。特に浸水被害が頻発している都市部における河川改修などを重点的に推進する。また、治水・利水をあわせた多目的ダムの整備のほか、砂防・地すべり・急傾斜地崩壊対策、治山対策及び高潮対策等を推進する。
 さらに、浸水被害及び土砂災害を軽減するため、災害情報の共有化と迅速な情報提供に資する防災情報システムを整備する。
 また、県土保全施設の整備に当たっては、景観や生態系など自然環境との調和に配慮する。特に、河川、海岸等の水辺は多様な動植物が生息・生育する貴重な場であるとともに、県民生活に安らぎと潤いを与える貴重な空間であることから、多自然型川づくりやエコ・コースト形成等を通じて自然環境との調和に努める。

5 健康福祉社会の実現と安全・安心な生活の確保

 だれもが、地域において、いきいきと自分らしい生活が送れる社会の実現を目指し、県民の福祉ニーズに適切に対応するとともに、健康長寿の確立に向けて取り組む。保健、医療及び福祉の充実と相互の連携を図るとともに、県民一人一人が協力し、ともに支え合う社会づくりを進める。また、県民が安全で安心して暮らせる環境づくりに取り組む。

(1) 健やかで安心できる暮らしの確保

 急速に進展する少子高齢社会において、子どもや高齢者、障害をもつ人が健やかでいきいきと暮らせる環境づくりを進める。

ア 子どもが健やかに生まれ育つ環境づくり
 21世紀を担う子どもが健やかに生まれ、たくましく育ち、豊かな可能性が発揮できる環境を整備する。
 このため、母子保健相談・支援体制や周産期・小児医療体制の整備充実を図る。
 多様化、増大する保育ニーズに対応した保育所の整備を促進し、保育所待機児童の解消に努めるとともに、認可外保育施設の認可化促進をする一方、職員に対する健康診断の実施などにより認可外保育施設の質の向上を図る。また、子育て不安や悩みに対する相談体制の充実を図るとともに、地域において育児に関する相互援助活動を行うファミリー・サポート・センターの設置を促進する。
 児童館等地域における児童の健全育成のための拠点施設の整備を促進するとともに、放課後児童クラブの設置促進など、その充実を図る。
 児童虐待については、児童相談所や学校、警察等の関係機関による連携を強化し早期に対応するとともに、その防止に努める。
 要保護児童施設の整備拡充を図るとともに、ひとり親家庭の自立及び生活の安定を図る支援を強化する。

イ 高齢者が安心して暮らせる環境づくり
 高齢化が進展する中で、高齢者やその家族が安心して暮らせるよう保健福祉や介護サービスの充実を図るとともに、高齢者の社会活動への参加を促進する。
 このため、地域リハビリテーション支援体制の強化と在宅介護支援センターの整備を図り、介護予防に努めるなど高齢者が寝たきりにならないための対策を進める。
 また、要介護高齢者が必要なサービスを適切に利用できるよう、安心・快適な在宅サービスの確保と老人福祉施設等の整備を進めるとともに、介護支援専門員等の人材の養成に努める。 
 さらに、高齢者の経験や知識が活用できるシステムづくりや生きがい及び健康づくりなどの自主的な活動に対する支援を強化するとともに、高齢者の就業機会を拡大するための多様な取組を進める。

ウ 障害のある人が活動できる環境づくり
 障害のある人が、その持てる能力と個性を発揮しながら、社会の一員として快適に生活していくための条件整備を図る。
 このため、在宅福祉サービスや障害児(者)の歯科医療の充実を図るとともに、相談支援体制の整備を促進する。また、障害児(者)を地域で支援するグループホーム、小規模作業所の法人化等を促進するとともに、社会復帰施設の拡充を図る。
 障害者の生活訓練等の実施、障害者スポーツ・レクリエーションや文化活動の振興等社会参加を促進するための必要な援助を行うとともに、障害者の就業機会を拡大するための多様な取組を進める。
 さらに、施設入所が必要な障害児(者)の各種施設の整備充実を図る。

(2) 保健医療の充実

 県民が安心して暮らせるよう、保健衛生の推進を図るとともに、個人の努力と社会の支援による健康づくりや保健医療体制の整備を促進する。

ア 健康づくりと保健衛生の推進
 県民が健康長寿を維持し、実り豊かで満足できる人生を送れるよう、健康づくりへの支援、疾病予防、難病対策等を進めるとともに、保健衛生の向上に努める。
 このため、公共施設の整備に当たっては、県民の健康づくりに資する付加機能を備えるなど、健康づくりを社会全体で支える環境整備を促進するとともに、健康教育、健康診査等の推進、長寿研究機関の利活用による健康寿命の延伸を目指す。
 また、健康づくり等の活動拠点となる市町村保健センター等の整備促進、福祉事務所と保健所の総合的な整備を図る。
 感染症、食中毒等の発生予防及びまん延防止対策の推進や、食品の安全性を確保するとともに、関係機関との連携による健康危機管理体制の強化や定期予防接種体制の充実強化を図る。
 難病患者等については、療養生活の支援、療養環境の整備等を図る。
 さらに、ハブ等有毒生物被害の未然防止に努めるとともに、これらの研究を推進する。

イ 保健医療体制の整備
 高齢者人口及び生活習慣病の増加など疾病構造の変化等に伴い高度化・多様化する保健医療ニーズに対応するため、医療基盤の整備充実や保健医療従事者の養成・確保を図る。
 このため、国、県、市町村及び民間医療機関が各々の機能に応じた役割を担い、連携して取り組む。県立病院については、各保健医療圏域の状況に応じ、高度医療の提供や地域医療の確保などの役割を担うとともに、高度医療、救命救急医療、母子総合医療等に対応できる県立高度・多機能病院(仮称)の整備を進める。
 救急医療体制の充実強化を図るため、広域災害・救急医療情報システムを整備するとともに、精神科救急医療システムの充実等に努める。
 また、離島・へき地医療の向上を図るため、離島・へき地遠隔医療支援情報システムの充実に努めるとともに、沖縄県離島医療組合を中心とする離島医療体制の拡充や急患搬送体制等を充実する。
 さらに、医師・看護師等保健医療従事者の養成・確保に努めるとともに、研修事業を推進し、保健医療従事者の資質や医療水準の向上を図る。また、離島・へき地における医師・看護師等の確保に努める。

(3) ともに支え合う社会の構築

 住民の積極的かつ主体的な参加を通じてすべての人々がともに支え合い、いきいきと暮らすことができる地域づくりを進める。

ア 男女共同参画社会の実現
 男女が互いにその人権を尊重しつつ責任を分かち合い、性別にかかわりなくその個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現を目指す。
 このため、女性リーダーの育成や発掘に努めるとともに、安心して子育てができる環境づくり等を進め、家庭生活と地域・職場等との活動の両立を支援し、社会のあらゆる分野へ女性が参画する機会の確保に努める。
 また、女性総合センターにおける各種広報啓発活動等の充実、女性団体の育成や女性起業家等の支援等の強化に努める。
 さらに、重大な人権侵害である家庭における夫婦間の暴力等(DV=ドメスティック・バイオレンス)女性に対する暴力をなくすための広報・啓発を図るとともに、その被害女性や社会的に支援が必要な女性のための相談支援体制の強化に努める。

イ 地域福祉社会の形成
 地域の中で、だれもが安らぎと潤いのある暮らしができるよう、障害者や高齢者の社会参加を困難にする物理的、心理的な障壁の除去を目指すとともに、地域福祉活動の推進や人材の養成・確保等に努める。
 このため、バリアフリー化の推進や、ユニバーサルデザインの理念を取り入れた施設やものづくりを促進するとともに、バリアフリー情報の発信等人にやさしいまちづくりを進める。また、ハンセン病患者、元患者に対する偏見や差別を解消するため、正しい知識の普及啓発に努めるとともに、施設入所者の社会復帰の促進を図る。
 保健、医療、福祉サービスの一体的提供に努めるとともに、福祉サービス利用者等が不利益を被らないよう、苦情解決の体制を整備し利用者保護を促進する。
 また、援護を必要とする低所得者世帯の自立支援を図る。
 さらに、民間福祉団体等の行う地域福祉活動の活性化を支援するとともに、福祉人材の養成、研修の充実、県民の福祉意識の高揚を図る。

ウ 社会参加活動の推進
 地域社会に貢献するボランティアやNPO等の社会参加活動を促進するとともに、円滑な活動のための環境整備を図る。
 このため、多様なボランティア団体、NPO等の育成及び活動の促進やボランティアリーダー、ボランティアコーディネーター等の育成を進め、幅広い分野における社会参加活動を促進する。
 また、社会参加活動拠点の整備、提供や各市町村社会福祉協議会におけるボランティアセンターの設置促進等、社会参加活動の活性化に向けた環境整備を図る。

(4) 安全・安心な生活の確保

 安全・安心な生活を維持、拡充するため、交通安全対策、地域安全対策、防災・消防活動、消費者相談等の推進、充実を図る。

ア 交通安全対策の推進
 交通事故のない安全で快適な住みよい社会をつくるため、交通安全思想の普及を促進するとともに、交通秩序の確立及び交通環境の整備等を図る。
 このため、総合的な交通安全教育施設や信号機等の交通安全施設を整備するとともに、高度道路交通システム(ITS)、バリアフリー歩行空間ネットワークや交差点の改良等安全で快適な交通環境の整備等を推進する。また、交通事故被害者支援体制の強化等に取り組む。

イ 地域安全対策の推進
 社会の変化に伴って多様化する犯罪を防止し、県民生活の安全・安心を確保するため、各種犯罪に対して迅速・的確に対応する体制等を強化する。
 このため、県民の身近な不安を解消するための警察安全相談体制の充実強化、地域と一体となった防犯活動の推進及び犯罪被害者に対する支援活動を拡充するとともに、ストーカー事件、DV事件、侵入窃盗事件、少年事件等へ迅速に対応できる体制を強化する。
 また、犯罪のハイテク化、国際化等に対応した人材を育成するとともに、警察施設及び装備資機材等、警察基盤の整備充実を図る。

ウ 防災体制の整備と消費生活の安定
 県民の生命・財産、安全を確保するため、防災・消防体制の強化を図る。また、県民の消費生活の安定に努める。
 このため、消防行政の広域化、高規格救急車等の導入を促進する。また、自主防災組織及び防災ボランティアを育成するとともに、防災情報システムを整備し防災・救急等危機管理体制の整備を図る。
 戦後処理の一環としての不発弾処理対策を推進する。
 マルチ商法等問題商法による被害や多重債務から派生する諸問題を未然に防止するため、消費者教育・啓発を推進するとともに、消費者相談、苦情処理体制の充実強化等を図る。

6 多様な人材の育成と文化の振興

 人づくりは、百年の大計といわれる。21世紀の沖縄が、自立に向けて持続的に発展し、世界に開かれた交流拠点を形成していくためには、産業、福祉、医療、学術、文化等各分野を担う高度多様な人材の育成が不可欠であり、各分野における施策と併せて横断的な取組を展開する。
 また、潤いと生きがいのある生涯学習社会の形成や、豊かな感性を育む文化の振興に努める。

(1) 初等中等教育の充実

 生涯にわたる学習の基礎を培い、社会の様々な分野で活躍する創造的な人材を育成するためには、その基礎・基盤となる初等中等教育の役割が極めて重要である。
 また、国際化、情報化、科学技術の高度化、環境問題など、社会の変化に対応した教育を推進する。

ア 学力向上対策等の推進
 子どもたちが、自ら学び、考え、行動できるよう「生きる力」を身に付けることを重視し、知・徳・体の調和のとれた豊かな人間性の育成を目指す。
 このため、読み・書き・計算能力をはじめとする各教科の基礎的・基本的事項の確実な定着を図るとともに、外国人とも分け隔てなく接することのできるコミュニケーションの能力の育成、コンピュータ操作・活用能力の育成を図り、社会の変化に主体的に対応できる資質や能力を養う学力向上対策を推進する。
 また、実践的な指導力向上のための教職員研修の充実に努めるとともに、総合的な学習の時間の充実及び小・中・高連携による進路指導の充実を図る。
 心の教育については、ボランティア活動や自然体験活動などを通して、生命を尊重し、他人への思いやりがあり、正義感に満ちた幼児児童生徒の育成を図る。
 また、スクールカウンセラーを配置し生徒へのカウンセリングや保護者の悩み相談、教師への指導、助言、相談等を実施し、心のケアを支援する。
 たくましい体の育成については、基礎的な体力の向上及び健康的な生活を実践する力の育成に努める。また、運動部活動の活性化等スポーツ活動の充実を図るとともに、全国高等学校総合体育大会の開催及び競技力の向上を推進する。

イ 国際化、情報化等に対応した教育の推進
 子どもたち一人一人が時代の進展に適切に対応できる能力を備え、個性にあふれ、国際性豊かな広い視野を持ち、環境を大切にし、環境の保全やよりよい環境の創造のため主体的に取り組む人材の育成に努める。
 このため、小学校における英語活動の積極的導入等、語学力を備えた児童生徒の育成に努めるとともに、総合的かつ体験的な活動を重視した環境教育を推進する。
 また、全ての生徒がコンピュータやインターネットの基本的な利活用等が可能となる情報活用能力を育成するとともに、IT教育センターを総合教育情報ネットワークの拠点として整備、活用し、国際性豊かな広い視野を持った多様な人材を育成する。
 生徒の個性や創造性を一層伸ばすため、公私立学校における中高一貫教育の導入を促進し、6年間のゆとりのある時間の中で多彩なカリキュラムによる豊かな教育を実施する。
 職業教育については、産業現場での就業体験学習の導入や産業技術教育センターにおける研修を拡充し、専門的な知識や技術の活用能力の向上に努める。
 特殊教育については、早期からの適切な教育的対応や、幼児児童生徒の障害の状態及び特性等に応じた教育を推進し、社会参加や職業自立に向けた指導を充実強化する。

ウ 魅力ある学校づくりの推進
 国際化、情報化などに柔軟に対応し、地域に開かれた特色ある学校づくりを進めるとともに、教育の基盤となる施設・設備の充実を図る。
 このため、総合実業高校や総合工芸高校など魅力ある学校を設置するとともに、外国語による授業の導入、情報教育中心校の設置など、県立学校を編成整備するほか、それに対応した学校施設・設備を整備する。
 また、老朽校舎の改築等学校の施設整備を進め、併せて環境を考慮した学校施設や校内LANの整備を進める。
 学校評議員制度の活用など、開かれた学校づくりを進めるとともに、地域独自のニーズに基づき、地域が運営に参画するコミュニティ・スクール等新しいタイプの学校の設置を促進する。
 私立学校については、学校教育における私立学校の役割も踏まえ、個性あふれる人材育成を促進するなど、特色ある学校づくりを促進する。
 さらに、新たな教育ニーズであるフリースクール等については、適切な対応に努める。

(2) 高等教育の推進

 多様な社会的、時代的要請に的確に対応できる専門分野の人材育成を目指して、高等教育機関の整備充実に努め、教育・研究活動の積極的な展開を通じて、人材育成機能の充実強化を図る。あわせて、県内における大学進学機会の拡大に努める。
 このため、沖縄工業高等専門学校を設置し、情報通信システム工学、メディア情報工学、機械システム工学、生物資源工学分野における実践的技術者の育成を図るとともに、地域社会や産業界と連携して産業の振興に有為な人材の育成に努める。
 また、沖縄における高等教育の中心的役割を担う琉球大学においては、教育研究施設・設備の整備充実と併せて、理工系人材や法分野等の高度専門職業人の育成等時代のニーズに対応した学部、学科、大学院の教育研究体制の一層の充実を図り、地域の特色ある大学として整備する。
 県立芸術大学においては、沖縄の豊かな芸術文化の伝統を受け継ぎ、新しい創造的芸術文化の形成及び発展を担う人材を育成するとともに、デザイン工学分野等の学部設置を進める。
 また、県立看護大学においては、資質の高い看護職を育成するとともに、大学院等の設置を進める。
 私立大学においては、私学の自主性、独自性を踏まえ、個性あふれる人材の育成を目指した独自の学校運営を期待するとともに、高等教育を実践するにふさわしい施設・設備の整備及び教育研究体制の充実を期待する。特に、地域や時代のニーズに対応した学部・学科の新設、大学院の設置の促進を図る。
 さらに、私立専修学校等における実践的職業教育及び専門的技術教育を行うための、観光・リゾート関連や情報通信関連等の学科の充実、施設・設備の整備の促進に努める。

(3) 産業や地域社会を担う人づくり

 沖縄の持続的発展を図るため、産業や地域社会を担う人材の育成に取り組むとともに、アジア・太平洋地域との交流・協力を担う人材の育成に努める。
 このため、観光・リゾート産業分野においては、国内外から沖縄を訪れる観光客の多様なニーズに対応し、質の高いサービスを提供できる観光人材の育成を図る。
 情報通信関連産業分野においては、産学官が連携し、高度な専門知識と技術を身につけた多様な人材を早期かつ大量に育成するとともに、国内外から優秀な人材を招致する。
 新事業創出に向けては、起業家意識の高揚を図るとともに、高度な経営と技術に対応できる人材の育成・確保に努める。
 農林水産業については、新規就業者への支援をはじめ、経営感覚に優れ、高い技術力を備えた担い手を育成する。
 地域を支える産業の活性化に向けては、ものづくりの核となる技術・技能を持った人材や、企業経営に優れた産業人材の育成等に努める。
 科学技術を担う人材の育成・確保については、国内外を問わず広く研究者や学生の派遣・受入れや交流を積極的に推進するとともに、子どもが科学技術への関心を高めるための施設整備の促進等、科学技術と親しむ機会の提供に努める。
 また、幅広い分野における社会参加活動を促進するため、ボランティアやボランティアリーダー、NPO等の育成を進める。
 福祉・医療に対する需要の増大や多様化に対応した福祉人材の養成や研修の充実を図るとともに、医師・看護師等保健医療従事者の養成・確保に努め、研修事業を推進し、保健医療従事者の資質や医療水準の向上を図る。
 さらに、県内大学、高等専門学校、専修学校、高等学校及び職業能力開発機関など、様々な教育機会の提供を通した人材の育成に努める。
 あわせて、海外からの技術者招聘や国際化対応のための海外派遣など、人材交流を積極的に推進する。また、国際的な知見と行動力を備え、激しく変動する社会経済情勢に対応しうる人材の育成・確保を図るため、国際交流・人材育成財団の充実強化を図る。

(4) 潤いと生きがいのある生涯学習社会の形成

 県民が、21世紀に生きるためのパスポートといわれている生涯学習に取り組み、いつでもどこでも学ぶことができるよう、生涯学習の推進体制を整備するとともに、学習機会の提供や学習相談体制等の整備を図る。
 このため、多様化、高度化する地域住民の学習ニーズや生活圏の拡大に伴う学習活動の広域化に対応し、市町村の行政区域を越えた広域的な学習支援体制を整備するなど生涯学習社会の形成に努める。
 また、生涯学習推進センターを整備し、多様な学習機会や情報提供に努めるとともに、リカレント教育や学校開放講座等を推進する。
 図書館、公民館等の社会教育施設の整備や指導者の養成など社会教育基盤を整備充実するとともに、市町村における家庭教育支援のネットワークを強化し、地域や家庭における教育活動の活性化を図る

(5) スポーツの振興と青少年の健全育成

 県民のだれもが、それぞれの体力や年齢等に応じて、いつでも、どこでもスポーツに親しむことができ、心身ともに健康でいきいきとした生活を送ることができるような生涯スポーツ社会の実現を図る。また、競技スポーツの振興を図る。
 このため、生涯スポーツについては、県民が身近な地域において気軽にスポーツに親しむことができる環境の整備、スポーツ活動活性化のための支援、社会体育指導者の養成・確保及び資質の向上を図る。
 競技スポーツについては、トップアスリートの育成強化を図り競技力向上を推進するとともに、体育・スポーツ団体等の育成強化及び指導者の養成・確保に努める。また、プロスポーツ等トップレベルのスポーツイベントの誘致を促進する。
 県民の健康・体力の保持増進とスポーツの振興及び全国高等学校総合体育大会などの各種大会の開催に向け、社会体育施設の整備充実を図る。
 また、沖縄が生んだ空手・古武道が世界の武道としてますます発展するよう、ネットワークづくり等を進め、その普及・発展を図る。
 家庭、学校、地域が相互に連携し、豊かな心を持ち、夢・実行力のある青少年を育成するための環境づくりを推進する。
 このため、子育てに関する学習機会や情報の提供等による家庭教育機能の強化と支援、ボランティア活動の活発化等社会教育の充実を図る。
 また、完全学校週5日制に対応するため、地域での文化・スポーツ活動、生活・自然体験活動等を支援し、その充実に努める。
 青少年の国内外での交流を推進するとともに、少年の非行防止及び被害少年の保護・支援活動、青少年の健全育成に資する環境づくり等を推進する。

(6) 豊かな感性を育む文化の振興

 県民のゆとりと豊かさのある生活の実現を目指し、余暇時間の増大や、県民の文化への志向に対応するため、文化の振興、文化財の保護活用等の施策の充実を図る。

ア 芸術・文化の振興
 豊かな感性と創造性を育む文化を振興するとともに、沖縄文化を世界に発信する。また、誇りある独特の伝統文化を保存及び活用するとともに、多様な文化活動を支える施設や催し、優れた芸術文化等の鑑賞機会の充実を図る。
 このため、県芸術祭の充実や伝統芸能の継承、発展など県民文化の振興や、郷土芸能に関する文化施設の整備充実を図るとともに、バイタリティあふれる多様な音楽等沖縄文化の世界への発信に取り組む。
 また、次代を担う児童生徒の芸術鑑賞機会の拡充や、総合文化祭及び国際交流などの文化活動を推進する。
 さらに、県立博物館新館及び県立美術館の整備を図る。

イ 文化財の保護と活用
 沖縄の地理的特性や歴史の過程を経て醸成された沖縄の文化遺産は、県民の財産であり、大切に保存、管理、活用するとともに、県民の文化財愛護の意識の高揚を図る。
 このため、重要な文化財の指定及び保護を促進し、史跡等の整備、保存、活用を推進するとともに、伝統芸能や工芸技術、民俗文化財等の保存伝承と活用を図る。
 特に、世界遺産の「琉球王国のグスク及び関連遺産群」については、適切な保存を図るとともに、観光資源としての活用に向けた周辺環境の整備充実を図る。また、文化財の公開及び普及啓発に努めるほか、新沖縄県史や歴代宝案の編集活動を推進し、今後の歴史研究に役立てるとともに、学校等における歴史的教材資料として活用する。
 国立劇場おきなわを整備し、「組踊」を中心とする沖縄の伝統芸能の公開、伝承者養成等を行ない、その保存・振興を図る。
 公共・民間の開発事業や駐留軍用地跡地の利用に伴う埋蔵文化財に関する調査、戦災等によって失われた文化財の復元・整備、海外に流出した文化財の調査及び返還等を推進する。
 また、埋蔵文化財センターの体制を強化し、埋蔵文化財の発掘調査を推進するとともに、文化財保護思想の普及啓発に努める。

7 持続的発展を支える基盤づくり

 広大な海域に散在する多くの離島で構成されている沖縄にとって、交通基盤、情報通信基盤、水資源、エネルギー等の社会資本は、県民生活の安定向上や産業活動を活性化する上で重要な基盤となるものである。特に、県内をはじめ国内外との連携を強化し、人、物、情報の交流を支える交通基盤や情報通信基盤は、本県の持続的発展の土台となるものである。
 このため、国際性や拠点性を高め、新たな活力を生み出し、地域の魅力を支える交通体系を確立し、航空、海上交通、陸上交通相互間の有機的連携の強化を図る。
 また、情報格差の解消、住民生活の利便性の向上、産業の振興、行政事務の効率化等を支える情報通信基盤の整備を促進するとともに、県民生活に不可欠な水資源やエネルギーの安定確保を図る。

(1) 交通体系の整備

 県民生活の安定向上、産業の振興、交流の活発化等を支える空港、港湾、陸上交通の整備を進め、沖縄の発展に資する有機的な交通体系の確立を図る。
 このため、アジア・太平洋地域における国際交流・協力拠点にふさわしい空港や港湾の整備を図るとともに、観光・リゾート地としての魅力を高め、県民生活を支え、地域の産業振興に資する空港や港湾の整備を推進する。
 また、人、物、情報の交流を活発化し、地域間の連携を強化する道路、環境への配慮や高齢社会に対応した道路の整備を進める。
 さらに、情報通信技術を活用し、自動車交通の円滑化を図るとともに、公共交通の利便性を高める。

ア 空港
 増大する航空輸送需要に対処するとともに、県内をはじめ国内外との連携を強化し交流の活発化を促進するため、空港の整備を図る。
 このため、那覇空港については、沖合いへの空港施設の展開等について検討を行い、必要な整備を図るとともに、旧国内線ターミナル地区の利用について検討を行い、必要な整備を図る。また、貨物ターミナル等狭あい化が進みつつある地区について、所要の施設の整備拡充を図る。
 あわせて、航空会社の就航を促すための条件整備に努め、国際航空ネットワークの拡充を図るとともに、国際航空物流ネットワーク企業の立地を促進し、国際物流拠点の形成を図る。
 また、離島の生活向上や産業振興などに資する新石垣空港、与那国空港等、離島空港の整備を図る。
 さらに、北部地域の観光・リゾート産業や農林水産業、製造業に加え、情報通信関連産業、金融業務の集積など産業の振興に資する軍民共用空港を念頭に置いた普天間飛行場代替施設(以下「北部新空港」という。)及び民間航空関連施設の整備を図る。

イ 港湾
 港湾については、海上交通の安全性・安定性の確保はもとより、輸送需要の増大、輸送形態の変化に加え、海洋レクリエーション活動の進展などに適切に対応するとともに、ウォーターフロント空間の形成、防災機能の強化、バリアフリー化の推進等により、産業と生活空間等諸機能が調和した質の高い整備を図る。
 特に、那覇港については、国際流通港湾としての機能の充実強化を図るとともに、那覇、泊、新港、浦添の4ふ頭地区の利便性を高めるための機能を再編する。また、臨港道路(空港線、浦添線)等、幹線臨港道路の整備を推進する。
 さらに、国際クルーズ等に対応した旅客船バース、大水深バースを有する国際海上コンテナターミナルやコースタルリゾート施設等の整備を図る。
 また、国際物流拠点の形成を目指し、戦略的な中継コンテナ貨物の取扱いを促進するため、電子データ交換等を含む情報システムの構築等効率的なコンテナターミナル運営を推進するとともに、物流を総合的に管理する国際的なロジスティクスセンター等の立地を図る。
 中城湾港については、東海岸地域の活性化を図るため、泡瀬地区の整備、新港地区の流通加工港湾としての整備を図るとともに、中城湾港マリンタウンプロジェクトを推進する。
 さらに、平良港、石垣港については、それぞれの圏域の拠点としての機能を高める施設の整備を図るとともに、金武湾港、運天港及び地方港湾の整備を進める。
 また、船舶の避泊及び航行の安全確保のための基盤整備を進める。

ウ 陸上交通
 陸上交通は、通勤・通学、業務活動、観光レジャー、貨物輸送など県民生活の向上や産業の発展に密接に関わっており、体系的な道路網の整備を計画的に推進するとともに、公共交通の利用拡大を図るなど、交通円滑化のための総合的な取組を強化する。
 また、高速性、定時性、安全性の確保に加え、環境、高齢者、外国人等への配慮など多様なニーズに対応した質的充実を図る。
 このため、都市部と県内外との連携を強化し、人、物、情報の交流を活発化するとともに、観光等各種産業の振興に資する那覇空港自動車道、沖縄西海岸道路、名護東道路等、規格の高い道路の整備を推進し、これらと一体的に機能する一般国道58号、一般国道329号、一般国道507号、沖縄環状線等の広域的な幹線道路の整備を推進する。
 また、都市部においては、市街地の秩序ある形成を促進する街路整備を推進するとともに、放射道路、環状道路の整備や交差点の改良を行い、住み良い住環境の確保及び渋滞対策の推進を図る。
 その他の地域においては、地域間の連携をより強化するための県道、生活に密着した市町村道等の整備の促進や、生活交通バス路線の維持・確保を図るとともに、米軍施設・区域の返還に対応した交通ネットワークの整備を図る。
 さらに、沖縄都市モノレールの整備を推進するとともに、沖縄都市モノレールとバスの有機的な連携に加え、他の交通機関との結節機能の充実を図るため、駅周辺にタクシー乗り場、自家用車乗降場、駐輪場等を備えた交通広場を整備する。
 あわせて、パークアンドライドシステムの構築を推進する。
 安全で快適な道路環境の充実を図るため、バリアフリー化や電線類の地中化を進めるとともに、自転車道の整備等を推進し、誰でも安心して安全に利用できる道路に加え、周辺地域の環境に配慮した道路を整備する。
 自動車交通の円滑化のため、道路改良や交差点改良により交通容量の拡大を図るとともに、交通需要マネジメント(TDM)や高度道路交通システム(ITS)を積極的に活用する。
 さらに、軌道系を含む交通システムについて調査、検討する。なお、沖縄都市モノレールの延伸については、公共交通の体系的整備の観点から開業後の利用状況等や延伸が想定される地域の開発計画等を踏まえた上で検討する。

(2) 情報通信基盤の整備

 情報格差を解消するため、高速通信網の整備やそれらを利用しやすい環境の整備を進め、県民生活の利便性の向上、産業の振興、行政事務の効率化等を図る。
 このため、光ファイバ網やCATV網等の情報通信基盤の整備をはじめ、有線回線、衛星回線、地上無線回線等をシームレスに接続した、高速・大容量・低コストを実現する多様な情報通信基盤の整備を促進する。
 また、住民が高度な情報通信サービスや公共サービスを受けられる環境の整備を図るため、高速・超高速ネットワークの整備や地域公共ネットワークの整備を促進する。
 さらに、沖縄県総合行政情報通信ネットワークの整備拡充を推進するとともに情報通信基盤の整備を促進し、離島・過疎地域における情報格差の是正を図る。

(3) 安定した水資源とエネルギーの確保

 県民が潤いのある生活を享受するとともに、活力みなぎる産業を展開するため、環境の保全に配慮しつつ、水資源やエネルギーの安定的確保を図る。

ア 水資源
 人口の増加や、生活水準の向上、経済発展等に伴い今後とも増加の見込まれる水需要については、生活用水、工業用水、農業用水等の用途別の需要の動向を踏まえ、安定した水資源の開発及びその有効利用を進めるとともに、水源のかん養を図る。
 このため、大保ダム等多目的ダムや農業用ダムの建設等を推進するとともに、西系列水源開発事業等を促進する。
 また、雨水等未利用水、下水処理水などの有効利用を推進するとともに、県民の水有効利用や節水意識の醸成を図り、節水型社会の形成を推進する。
 さらに、水源かん養保安林の計画的な指定や水源地域の森林の整備・保全等による水源かん養機能の維持増進を図るとともに、水源地域の振興を図る。

イ エネルギー
 電力、石油、ガス等のエネルギーについては、将来にわたり低いコストで安定供給を図るとともに、地球温暖化など地球環境問題への適切な対応を促進する。
 このため、LNG火力発電所の建設等環境対策の支援、海底ケーブルの敷設等離島における効率的な電力供給の確保、安定的な石油供給の確保、新エネルギーの導入等を促進するとともに、自然エネルギー供給モデル地区の形成を図る。

8 離島・過疎地域の活性化による地域づくり

 離島・過疎地域については、それぞれの地域の持つ多様性や魅力を最大限に発揮した地域づくりを進めるとともに、雇用機会の拡大に向け、農林水産業や観光・リゾート産業をはじめとする産業の活性化を図る。また、交通基盤や情報通信基盤の整備、保健医療の確保、福祉の向上、教育・文化の振興などを図り、豊かな自然環境を生かした快適で潤いのある生活空間を創造し、地域間格差の是正や若者の定住促進及び交流人口の増加を図る。

(1) 産業の振興

 離島・過疎地域においては、住民の創意工夫を生かし、地域特性を生かした農林水産業の振興をはじめ、豊かな自然、独特な文化等を活用した個性ある観光・リゾート産業の振興、観光・リゾート産業と連携した農林水産業、製造業、伝統工芸産業等の産業振興を図る。
 このため、地域の基幹産業である農林水産業については、さとうきび等土地利用型作物、畜産等の生産体制の強化、さとうきびの総合利用など地域資源を活用した製品開発を促進し、農林水産物の付加価値を高めるとともに、担い手の減少や高齢化等に対処し、新規就業者の支援をはじめとした後継者の育成・確保に努める。製糖企業については、経営の合理化を促進し、特に、含みつ糖については、新商品の開発等による経営体質強化の取組を促進する。
 また、農業用水源、かんがい施設、ほ場、防風施設、漁港・漁場等の整備を進めるとともに、森林が持つ多面的機能の維持・増進に努める。
 観光・リゾート産業については、自然景観や伝統文化など地域資源を生かし、エコツーリズム、グリーンツーリズム、森林ツーリズム、ブルーツーリズムの体験・滞在型観光、健康・保養をテーマとした観光等を推進する。また、これらの体験・滞在型観光を支える施設整備や体験プログラムの作成、ガイドやインストラクター等の育成など、受入体制の整備を促進するとともに、宿泊施設の整備を促進する。
 また、観光ルートの整備を図るとともに、各種イベントの創出など地域内外との交流活動や、ピーク時における輸送力の強化を促進する。
 食品加工業等の製造業については、観光・リゾート産業と連携した土産品等の開発や、地域食材等を活用した特産品の開発を促進するとともに、情報化等に対応した設備の近代化や技術力の向上を図る。
 伝統工芸産業については、その継承・育成に努めるとともに消費者のニーズに対応した新製品の開発を促進する。また、後継者の育成・確保、原材料の安定供給に努める。
 地域特産品等の販路拡大を図るため、インターネット等の活用を促進する。

(2) 交通、情報通信基盤の整備

 離島・過疎地域においては、県内外や都市部との連携を強化し、人、物、情報等の交流を活発化するため、空港、港湾、道路等及び情報通信基盤の整備を図るとともに、航空路線網や海上航路網の維持・確保に努める。
 このため、新石垣空港、与那国空港等離島空港の整備を図るとともに、離島航空路線網の維持・確保に努める。
 海上交通については、安全性・安定性を高める防波堤等の整備に加え、施設のバリアフリー化や、旅客待合所を整備する等地域の特性に応じた港湾の整備、海洋レクリエーションやクルーズ等に対応した港湾の整備を図るとともに、離島航路網の維持・確保に努める。あわせて、那覇港、石垣港等のふ頭地区の再編を促進することにより、離島航路利用者の利便性の向上を図る。
 道路については、離島架橋の整備、空港、港湾等の交流拠点との連結を強化する道路の整備、生活に密着した市町村道等の整備を図る。
 情報通信基盤については、光ファイバ網やCATV網等の情報通信基盤の整備を促進するとともに、沖縄県総合行政情報通信ネットワークの整備拡充を進める。

(3) 生活環境基盤の整備

 地域特性に立脚した定住環境を整備し、快適で潤いのある豊かな生活環境や環境に優しい生活空間の創出を図る。
 水の安定供給を図るため、多目的ダムの建設を推進するとともに、海水淡水化施設や海底送水管の整備等を進める。
 また、高度処理施設等水道施設の整備を進めるとともに、水道事業体の広域化を促進する。
 下水道等については、下水道、集落排水施設の整備を図るとともに、合併処理浄化槽の普及を促進する。
 廃棄物対策については、廃棄物の減量化、リサイクルを促進するとともに、使用済自動車等の不法投棄防止対策の強化、廃棄物の輸送コスト低減に向けた取組及び処理施設の整備を促進する。
 エネルギーについては、新エネルギーの導入、自然エネルギーのモデル地区の形成、電力海底ケーブルの敷設などを促進する。

(4) 保健医療の確保と福祉の向上

 離島・過疎地域の住民の保健医療を確保するため、地域の実情に応じた保健医療体制の整備を図るとともに、高齢者の保健福祉対策、子育て支援、障害児(者)支援対策を促進する。
 このため、へき地医療支援機構及び沖縄県離島医療組合の設置・拡充を図るとともに、離島・へき地遠隔医療支援情報システムの充実、救急患者搬送等救急医療体制の充実強化を図る。
 また、無医地区や無歯科医地区については、巡回診療を実施するとともに、その解消に努める。
 さらに、公立病院及び診療所、医師住宅、看護師宿舎の整備を図る。
 総合診療医の養成等研修の充実を図り、医師・看護師等医療従事者の安定確保に努めるとともに、町村における保健師の確保及び定着を支援する。
 さらに、介護サービスの充実及び在宅介護支援センターの整備など高齢者保健福祉の向上を図るとともに、へき地保育所及び児童館の整備による子育て支援及び小規模複合施設の整備等による障害児(者)の支援を促進する。

(5) 教育及び地域文化の振興

 地域の実情に対応した創意工夫に富んだ教育を進めるとともに、教育環境の整備に努め、創造性に富み国際性豊かな人材の育成を図る。
 また、生涯学習を推進する施設整備を図るとともに、地域文化の創造活動を促進し、それぞれの地域に誇りを持ち生涯にわたって学習できる環境づくりを進める。
 このため、近隣学校間での集合学習、都市地区との交流学習等を積極的に推進するとともに、老朽校舎の改築、給食調理場等教育施設の整備、既設施設の共同利用、国際化や情報化等に対応した施設設備の整備を図る。
 また、地域住民に身近なスポーツ施設の整備を促進する。
 さらに、伝統文化を保存・継承するとともに、地域文化活動の推進、伝承者養成、芸術鑑賞の機会の創出等による文化の振興に努める。

(6) 自然環境及び県土の保全

 多様性を有する離島・過疎地域の自然環境の適切な保全施策を総合的に推進するとともに、災害に強い県土づくりを進める。
 このため、森林を適切に保全管理し、新たな国立公園の指定を検討するとともに、自然環境保全地域、自然公園及び鳥獣保護区の適正な配置・管理及び活用を図る。生物多様性の確保に努め、国際サンゴ礁研究モニタリングセンターや野生生物保護センター等の活用を図る。
 また、赤土等流出防止対策を推進する。
 さらに、自然景観や環境等に配慮した治山治水対策及び海岸等の整備を推進するとともに、森林の多様な整備等を図る。

9 駐留軍用地跡地の利用の促進

 駐留軍用地跡地は、良好な生活環境の確保、産業の振興、健全な都市形成、交通体系の整備、自然環境の保全・再生など、沖縄振興のための貴重な空間として、県土構造の再編を視野に入れた総合的かつ効率的な有効利用を図る。
 また、県土の均衡ある発展を目指し、それぞれの地域特性を踏まえた跡地利用を促進する。
 駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用は、沖縄の将来発展にとって、極めて重要な課題であることから、国、県、及び跡地関係市町村の密接な連携の下、駐留軍用地跡地の利用の促進に向けて取り組む。

(1) 調整機関の設置

 駐留軍用地跡地利用に関する基本原則に基づく具体的な枠組みとして、調整機関(「跡地対策協議会」(仮称)、以下「協議会」という。)を新たに設置し、駐留軍用地跡地利用の推進体制を整備・強化する。
 協議会は、沖縄担当大臣、沖縄県知事及び跡地関係市町村長の代表で構成し、個々の跡地の課題に応じて、跡地利用計画の策定・具体化の促進に向けた国、県及び跡地関係市町村間の所要の協議、調整を行い、駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用を促進する。
 あわせて、県及び跡地関係市町村で構成する「跡地関係市町村連絡・調整会議」(仮称)を新たに設置し、跡地利用の促進に関し県と跡地関係市町村との連携を図るとともに、協議会へ跡地関係市町村の意見の反映に関し連絡調整を図る。

(2) 駐留軍用地跡地の利用の促進に関する取組

 SACO最終報告等で示された返還が予定されている駐留軍用地の跡地利用を迅速かつ円滑に進めるため、早期の跡地利用計画の策定、速やかな計画関連手続きの着手、返還後の速やかな事業着手、迅速な原状回復措置、公共公益施設の整備のための用地取得などに取り組む。
 跡地利用の促進に当たっては、返還前から文化財や自然環境に配慮した取組を進めるとともに、跡地利用計画や事業計画等に対する地権者や地域住民との合意形成を図る。
 また、駐留軍の使用に起因する土壌等の汚染の除去や建物等の撤去などの原状回復措置を返還後迅速に実施するため、国は、日米合同委員会の返還合意後の早い段階から取組を進める。
 特に、普天間飛行場の跡地利用については、大規模性や地理的位置などから、沖縄全体の振興に影響が及ぶものと考えられることから、国、県、宜野湾市が連携して、跡地利用の基本方針及び跡地利用計画の策定に向けて取り組む。また、跡地利用計画を踏まえ、再開発を迅速かつ的確に推進するため、事業実施主体、事業手法、機能導入等についてのより具体的な措置について、検討を進める。

第4章 圏域別振興の方向

 圏域ごとの振興については、地域の特性を生かし、特色ある産業の振興と快適な居住環境の形成を図る観点から各種施策を講じてきたが、離島・過疎地域を抱える圏域と都市地域を含む圏域において依然として地域間格差が残るなど、県土の均衡ある発展を図る観点から、なお多くの課題を抱えている。
 沖縄本島地域においては、中南部の都市地域は経済的な豊かさや生活の利便性が高いものの、人口や諸機能の過度の集中による交通混雑や環境問題等の様々な都市問題が生じている。一方、沖縄本島の北部地域、周辺離島や宮古、八重山の離島地域においては、各種施設等へのアクセスが不便な地域、周辺離島が多く、また、雇用機会の不足等による定住人口の伸び悩みがみられるなど、都市地域と異なる課題を有している。
 特に、離島地域においては、若者の定着を促進する雇用機会の創出、保健医療・福祉基盤の整備、教育環境の整備等に多くの課題を抱えている。
 このため、圏域別の振興に当たっては、地域の抱える課題を踏まえ、産業や生活の基盤整備を引き続き進めるとともに、地域の特性を最大限に生かし、また、IT、バイオ等の先端的な科学技術も活用しつつ、特色のある産業の振興を積極的に図っていく必要がある。
 また、地域においては、行政単位の枠を越えた広域的な取組を視野に入れ、域内の地域間バランスにも配慮しながら施策・事業を効果的に展開するとともに、住民等の積極的な参加のもと、地域の選択と責任に基づく主体的な地域づくりに取り組む必要がある。
 さらに、各自治体が単独で全てを自足しようとするいわゆる「フルセット主義」の発想にとらわれることなく、地域連携と交流により他の自治体との役割、機能の分担を図るとともに、行政サービスの向上、行財政の効率化と財政基盤の確立等に向け、市町村の合併等も視野に入れた効率的な施策展開を推進する必要がある。
 圏域の区分については、沖縄の自然的・地理的条件、土地利用の状況、社会経済の状況などを踏まえ、県全域を北部圏、中部圏、南部圏、宮古圏及び八重山圏の5圏域に区分する。

1 北部圏域

【現状と課題】
 本地域は山林が約7割を占め、動植物の貴重種の生息地であるとともに、沖縄本島の水資源の供給地として大きな役割を果たしているほか、恵まれた海浜景観を有しており、農林水産業や観光・リゾート産業の振興を図ってきたところである。
 しかし、これまでの沖縄振興開発事業の推進にもかかわらず、中南部に比較して産業基盤、生活環境基盤の整備水準や所得水準が低く留まるなど、地域の振興が十分には図られなかったことから、進学や就職を機会とした若年層の流出が進んでいる。
 近年、北部振興事業の実施により、情報通信関連産業の集積、農林水産業等既存産業の新たな展開が図られ、雇用機会の創出や、定住条件の整備が進みつつあるが、地域の持続的な発展に向けた産業の振興と定住人口の増加がなお大きな課題となっている。
 
【振興の基本方向】
 北部圏域の振興に当たっては、閣議決定された「普天間飛行場移設先及び周辺地域の振興に関する方針」及び「沖縄県北部地域の振興に関する方針」並びに今後の北部圏域における振興の指針となる「北部振興並びに移設先及び周辺地域振興に関する基本方針」に基づき、人と産業の定住条件の整備による地域の持続的な発展を目指す。
 このため、本地域の豊かな自然環境を保全・活用しつつ、産業の振興による雇用機会の創出や、魅力ある生活環境の整備を図ることが必要である。
 特に、普天間飛行場移設先及び周辺地域については、若者の定着に向け、空港活用型産業、情報通信関連産業等の新たな産業の集積と既存産業の活性化及び産業基盤の整備等により、魅力ある雇用機会の創出、定住条件の整備等を図るとともに、自然環境の積極的醸成に向けて取り組む。
 北部圏域の振興については、振興の効果的な展開を図るため、地理的・自然的特性等の観点から区域を分け、各区域についてそれぞれの地域特性を踏まえて取り組む。
 国頭3村においては、豊かな自然や伝統文化等の地域資源を生かしたエコツーリズム、グリーンツーリズム、健康長寿をテーマとした体験・滞在型観光、農林水産業や地場産品の開発等を中心に振興を図る。
 本部半島から名護市、宜野座村にかけての地域は、周遊型観光や農林水産業の振興を図るとともに、離島地域とのアクセス機能の充実に努める。また、名護市においては、行政、経済、情報通信、交通結節等の高次の都市機能の整備を進める。
 名護市から恩納村の西海岸地域にかけては、国際的な観光・リゾート拠点としての一層の基盤整備を進める。
 また、名護市から宜野座村、金武町にかけての東海岸地域では、体験・滞在型観光の振興を図るとともに、西海岸地域との効果的な連携を図る。
 離島3村については、地理的な不利性を克服する観点から、交通アクセスの改善や医療、福祉、教育等に係る生活環境を整備するとともに、離島特有の自然環境や文化を生かした体験・滞在型観光や農林水産業を中心に振興を図る。

(1) 産業の振興

ア 観光・リゾート産業の振興
 基幹産業として地域の他産業のけん引役となることが期待される観光・リゾート産業については、健康・長寿関連産業、農林水産業等他産業との有機的な連携を図りつつ、豊かな自然や伝統文化、地域の営み等、地域との交流機会を提供していく「文化交流型産業」として新たな視点で取り組み、観光の通年化、滞在の長期化を図る。
 このため、エコツーリズム、グリーンツーリズム、ブルーツーリズム等の体験・滞在型観光を促進するとともに、健康・保養をテーマとした観光を促進するため、健康増進施設等の整備を図る。さらに、各種イベントの誘致促進やスポーツ・リハビリ機能を備えた施設等の整備により、イベント・スポーツ観光を促進する。
 また、国際的観光・リゾート地の形成を目指し、恩納村から名護市を経て本部町に至る西海岸地域に定着している人の流れを拡大し北部地域全体に波及するよう、各観光・リゾート拠点の整備を図るとともに、各拠点の連携強化に向け周遊ルート化を促進する。
 このため、国営沖縄記念公園海洋博覧会地区の拠点機能の充実や、世界遺産の今帰仁城跡の整備・保全、自然環境等観光資源の保全・創出に努める。
 また、各観光・リゾート拠点のテーマ性を持たせたネットワーク化とともに、アクセス道路、駐車場及びインフォメーション施設等の整備や、総合的な公共交通等のネットワークの充実により、観光客の移動の利便性を高める。
 国頭3村にまたがる広大な森林地域については、適切な保全管理や多面的活用をはじめ、国立公園化を検討する。
 さらに、赤土流出防止対策等の環境対策による観光資源の維持・向上や、良好な景観の形成、魅力あるまちづくり等を推進し、豊かで美しい観光・リゾート空間の創出を図る。

イ 農林水産業の振興
 農業用水の確保など生産基盤の整備を推進する。キク、マンゴー等重点的に推進する品目については、拠点産地を形成し、生産拡大とブランド化を図る。さとうきび、パインアップルについては、農業生産法人の育成や生産体制の強化を図る。養豚等畜産については、畜産環境対策を推進する。
 また、農林水産物の加工、流通、販売体制の強化を促進するとともに、薬用作物、シークヮーサー、黒糖等の特産品の一層の高付加価値化を図るため、集出荷施設及び農産加工施設の整備を促進する。
 木材生産の産地形成及び特用林産物の生産を促進するとともに、県産材の需要喚起を図る。また、森林の持つ多様な機能を持続的に発揮させるため、森林整備を推進するとともに、森林ツーリズム等その多面的活用を図る。
 漁港・漁場等の生産基盤整備を推進し、資源管理型漁業の定着を図る。また、モズク、養殖魚介類の生産・流通体制等の強化を促進する。
 あわせて、亜熱帯の自然環境条件を踏まえた農林水産技術の開発を推進するため、研究機能の強化を図るとともに、農林水産業の担い手育成機能の強化のため、研修拠点の整備を図る。
 また、観光・リゾート産業の振興に寄与するため、都市と農山漁村の交流拠点施設の整備等を図る。

ウ 商工業の振興
 商工業については、新たな企業の誘致とともに、地場商工業の集積及び活性化を図り、地域経済の発展を目指す。 
 このため、地域資源の活用のための研究開発を支援するとともに、加工施設等の整備を促進することにより、地域の加工製造業の効率的な事業展開や新たな事業の創出を促進する。また、ITを活用した地場産品の販路拡大に努める。
 さらに、中心市街地を活性化するため、市街地の再開発事業等により基盤施設等の整備、魅力ある商業・アミューズメント施設の誘致等を促進するとともに、道路や駐車場の整備を進め、周辺の観光・リゾート拠点との連携を図る。

エ 情報通信関連産業の振興
 名護市や宜野座村においては情報通信関連施設の整備が進みつつあり、それとともに情報通信関連企業の立地が着実に進展している。
 こうしたことから、今後も情報通信産業振興地域制度等の積極的な活用や、通信コストの低減化支援などにより、企業の立地を一層促進し、情報通信関連産業や金融業務の集積を図る。
 また、名護市マルチメディア館等の最先端の機能を備えた施設の立地を生かした新たなコンテンツ産業等の集積を促進する。

オ 環境関連産業及び健康長寿関連産業の振興
 豊かな自然環境の保全や、健康長寿などの地域特性の活用をとおして、環境関連産業や健康長寿関連産業等の新たな産業の振興を図る。
 このため、循環型社会の形成を目指し、廃棄物の再資源化等に取り組み、新たな環境関連産業の創出を促進するほか、健康長寿地域としての特性を踏まえ、薬草等を活用した健康食品産業の振興を図る。
 あわせて、少子高齢化の進展に対応し、保健医療体制の充実等を通じた健康関連ビジネスの創出を図る。

(2) 産業振興のための基盤整備

ア 交通及び企業立地基盤の整備
 交通基盤については、北部新空港及び民間航空関連施設の整備を行うとともに、関連産業の立地促進に向けて取り組む。また、規格の高い幹線道路ネットワークの形成を推進するとともに、東西、南北間の交通の利便性の向上に資する道路を整備する。
 さらに、北部地域にある港湾の役割分担を踏まえたうえで、国際交流や物流機能の再構築に必要な拠点となる港湾整備に向けて取り組むとともに、海上交通や航空交通による本島・離島間の交通アクセスの改善を図る。
 また、物流コスト低減化に向け、地理的不利性の克服に取り組む。
 企業立地基盤については、産業の集積を支える情報通信基盤、研究施設や複合機能型産業団地等、企業立地に向けた受け皿を整備するとともに、起業促進のための総合的な支援対策を強化する。

イ 研究開発の促進と人材の育成等
 専門的な技術や知識を身につけた人材は、地域における産業の創出・育成に重要な役割を果たしている。このため、産学官が連携し、情報通信関連産業や金融関連業務をはじめ各分野にわたる人材の育成・確保や雇用・職業能力開発を推進するとともに、教育機関の充実や、研究機関の整備・充実を図る。名桜大学、沖縄工業高等専門学校、沖縄北部雇用能力開発総合センター(仮称)においては、それぞれの特性を生かした人材育成を図る。
 また、情報通信の高度化に対応するため、教育機関の情報化を推進するとともに、人材育成に資する教育・研修の機会を充実するための支援策を推進する。
 さらに、職業意識を高めるため、企業と教育機関等が連携して行うインターンシップの促進を図るとともに、国際化への対応や優れた経営能力と企業家精神に富んだ人材育成の環境整備を図る。
 情報通信関連産業等の新たな展開のため、産学官が連携した研究開発を促進するとともに、今後発展が期待される健康長寿関連、食品関連、バイオ関連、環境関連などの産業化のための研究開発を促進する。
 あわせて、部瀬名岬を中心とする地域においては、国際交流を促進する観点から、国際コンベンション機能の充実や国際会議等の開催に継続的に取り組み、国際コンベンション拠点としての魅力のPRに努める。
 

(3) 定住条件の整備

 北部地域への定住を促進するため、生活環境を整備する。このため、住宅、道路等の整備をはじめ、上下水道、集落排水施設等を整備する。
 風力発電等の新エネルギーの活用に向けた取組や廃棄物処理施設等の整備の促進、利用の高度化を図り、環境に配慮した循環型社会を形成する。
 また、保健医療及び福祉については、関連施設の整備を推進するとともに、保健医療及び福祉従事者の養成・確保や地域福祉のネットワークづくり、救急医療体制の充実強化等を図る。あわせて、子育て支援体制の整備充実を図る。
 地域交流等の中心となるコミュニティ拠点の整備を図るとともに、快適で潤いのある地域形成のため、公園等スポーツ・レクリエーション施設の整備を図る。
 教育については、通学に係る利便性の向上に努めることにより、教育環境の整備を図る。

(4) 普天間飛行場移設先及び周辺地域の振興

 普天間飛行場移設先及び周辺地域の振興については、北部新空港を活用した空港活用型産業の誘致・育成を図るとともに、情報通信関連産業、金融業及び金融関連業務等の集積や既存産業の活性化を図りつつ、空港へのアクセス道路や複合機能型産業団地等、企業立地に向けた基盤を整備する。
 情報通信基盤をはじめ居住環境を含めた周辺環境の整備を図り、金融センターにふさわしいまちづくりを進める。
 また、魅力ある生活基盤や住民福祉の向上、利便性の確保につながる施設整備を進めるとともに、公園や港湾、市街地開発等の整備や公共機関の設置に努める。
 さらに、優れた自然環境の積極的醸成を図る事業を推進するとともに、それに必要な研究機関の設置に努める。

(5) 駐留軍用地跡地利用の促進

 SACO最終報告に示された返還予定施設である北部訓練場や、安波訓練場の跡地については、自然環境の適切な保全及び森林地域の保全・整備を進めるとともに、その資源を生かした活用を図る。
 また、ギンバル訓練場の跡地については、その自然・地域特性を生かした整備を図る。

2 中部圏域

【現状と課題】
 本地域は全域が都市計画区域に指定されているが、中央部の比較的平坦な土地を嘉手納飛行場や普天間飛行場等の広大な米軍施設・区域が占め、土地利用上大きな制約となっている。
 戦後は米軍施設・区域が集中的に立地し、長い米軍統治期間に特色ある文化を育み、国際色豊かな地域が形成されてきた。
 本土復帰後、沖縄振興開発計画に基づき各種事業が実施される中で、本地域においても、沖縄自動車道をはじめとする広域道路や中城湾港開発及び市町村における新市街地等の整備が進展してきているほか、琉球大学の移転及び沖縄コンベンションセンターの設置等、学園都市機能が整備されつつある。
 今後は地域の創意工夫により、恵まれた立地条件、特色ある歴史・文化などの地域特性を生かした安らぎと潤いのある地域づくりを促進するとともに、産業を振興し、豊富な若年労働者に対する雇用機会の創出を図り、地域の活性化に努める必要がある。

【振興の基本方向】
 本地域においては、普天間飛行場等駐留軍用地跡地の再開発を契機として、都市機能の再編・整備を行い、那覇市から石川市間において、活力と潤いのある連たんした都市圏形成を推進する。
 与勝半島から具志川市、石川市など、金武湾に面した東海岸地域では、研究開発、交流体験等を含め、健康長寿をテーマとした地域の振興を図る。
 具志川市から沖縄市にかけての東海岸地域においては、中核的な都市として、広域商業、文化、交通結節等の高次都市機能の整備を進める。また、中城湾港新港地区では、特別自由貿易地域を中心に加工交易型産業等の集積を図り、泡瀬地区では国際交流リゾート拠点等の形成を推進する。
 宜野湾市から読谷村にかけての西海岸地域においては、コンベンション支援機能及び都市型リゾート施設等の整備を促進し、観光・リゾート産業の振興を図るとともに、沖縄西海岸道路等の整備により交通アクセスの利便性を高める。
 北中城村から中城村、西原町にいたる地域においては、歴史・文化の体験や県民行楽の場としての整備を図るとともに、良好な居住環境を充実強化する。また、陸上交通の円滑化を図るため、本島東西間を結ぶ道路等の整備を推進する。
 広大な米軍施設・区域については、引き続き整理・縮小に取り組むとともに、それぞれの地域特性を生かした駐留軍用地跡地の有効利用を促進する。

(1) 産業の振興

ア 観光・リゾート産業の振興
 宜野湾市から読谷村に至る西海岸地域においては、沖縄コンベンションセンターを中心に、マリーナ、人工海浜、リゾートホテル等が整備されており、これらの施設を連携させるとともに、宿泊施設等のコンベンション支援機能及び都市型リゾート施設を拡充強化し、人と情報の交流ゾーンの形成を推進する。
 沖縄観光の魅力を高めるため、観光振興地域において、沖縄型特定免税店の空港外展開とあわせて、国際ショッピングモール構想の推進を図る。
 東海岸の中城湾港泡瀬地区においては、東部海浜開発を促進し海洋性レクリエーション機能を導入することにより、海に開かれた国際交流リゾート拠点等を形成する。
 また、与勝半島、具志川市、石川市など、金武湾に面した地域は、一体的な地域として、健康長寿をテーマとした体験・滞在型観光を促進する。
 さらに、世界遺産の中城城跡、勝連城跡、座喜味城跡の遺産群等については、文化交流型観光への取組の一環として、歴史的景観の保全、これと調和した周辺整備及び観光ルート化等を促進し、琉球歴史回廊の形成を図る。
 また、国際色豊かなおきなわマラソン、中部トリムマラソン、ピースフルラブ・ロックフェスティバル等の各種イベントやレクリエーション活動を促進するとともに、エイサー等の伝統芸能や、異文化と融合して生まれたオキナワンミュージック等を活用した観光振興の取組を促進する。

イ 情報通信関連産業の振興
 高速・大容量・低コストを実現する情報通信基盤の整備を促進するとともに、情報通信産業振興地域制度等を積極的に活用しつつ、通信コストの低減化支援やインキュベート施設等の整備促進などにより企業立地を促進し、情報通信関連産業の集積を図る。
 このため、嘉手納町マルチメディアセンター、美浜メディア・ステーション等の情報通信関連産業支援施設を中心に、企業の立地を促進するとともに、地域の特色ある歴史・文化を生かして、コンピュータ・グラフィックスや芸能関連を中心としたコンテンツ制作の拠点形成を図る。

ウ 加工交易型産業等の振興
 中城湾港新港地区においては、特別自由貿易地域制度を活用して魅力ある投資環境を整備するなど戦略的な取組により企業立地を促進し、沖縄における加工交易型産業の拠点形成を図る。
 また、特別自由貿易地域において、管理運営法人が実施する立地企業のための事業場の設置や創・操業支援など特別自由貿易地域活性化事業を促進するとともに、今後の特別自由貿易地域の活用状況等を踏まえ、初期投資の負担を軽減する賃貸工場の整備や、土地の賃貸方式の導入及び助成制度の充実に取り組む。
 さらに、産業高度化地域において、製造業等を行う企業及び産業高度化事業を行う企業の立地を促進し、相互の有機的な連携により、製造業等の高度化を図る。
 あわせて、中城湾港新港地区の工業技術センター、トロピカルテクノセンター及び健康バイオ研究開発拠点施設等を中心に、産学官の有機的な連携のもと健康関連産業、食品・飲料関連産業、バイオ関連産業等の産業分野における企業化や新規事業の創出を促進する。

エ 農林水産業の振興
 農業用水の確保など生産基盤の整備を推進し、キク、甘しょ等重点的に推進する品目については、拠点産地を形成するとともに、さとうきび、養豚等の生産体制の強化及び畜産環境対策を推進する。
 生活環境保全のための森林整備を推進するとともに、漁港・漁場等の生産基盤の整備、モズク等養殖業の生産流通体制の強化を図る。

(2) 普天間飛行場等駐留軍用地跡地の利用促進

 SACO最終報告等に示された返還予定施設である普天間飛行場、キャンプ瑞慶覧、キャンプ桑江、読谷補助飛行場等の跡地利用を促進する。
 普天間飛行場については、約480haという広大な面積を有し、人口の集中する中南部の中央に位置するとともに、周辺都市地域と近接していることから、その開発が沖縄の振興に与える影響は大きい。
 このため、跡地利用に当たっては、中南部都市圏における位置づけや、周辺市街地整備などに留意し、沖縄の振興をリードする高次都市機能の導入や基幹道路の整備等、総合的かつ計画的に進める。
 また、都市的利用が想定されるキャンプ桑江、キャンプ瑞慶覧等の駐留軍用地跡地については、良好な住宅地や生活関連施設、行政サービス施設等の整備を進め、併せて地域商業の活性化を図り、職住近接のまちづくりを進める。
 さらに、読谷補助飛行場、楚辺通信所及び瀬名波通信施設の駐留軍用地跡地については、公共施設整備や集落整備を含めた総合的な整備を促進し、個性豊かな田園空間の形成を図る。

(3) 産業振興のための基盤整備

 産業全体の活性化につながる人の交流、物流の効率化の観点から、港湾、道路等の交通体系を総合的に改善・整備する。
 このため、中城湾港新港地区において、流通加工港湾の整備を推進するとともに、中城湾港泡瀬地区において東部海浜開発を促進する。また、中城湾港マリンタウンプロジェクト(西原・与那原地区)や、宜野湾港の公共マリーナの整備を推進する。
 陸上交通の円滑化を図るため、沖縄西海岸道路をはじめ、一般国道329号、具志川沖縄線、沖縄環状線、本島東西間を結ぶ道路等の整備を推進する。
 また、一体的都市軸の形成を促進するため、公共交通ネットワークの拡充・強化等交通システムの検討を行う。

(4) 都市機能の再編・再整備

 沖縄市、具志川市、嘉手納町等においては、戦後、自然発生的に市街地が形成されたため、都市基盤が未整備のまま過密現象が生じ、都市機能の低下がみられるとともに、周辺市街地の拡大等に伴う大型店舗の立地等により、都市型の商業・業務の集積地としての機能が弱まりつつある。
 このため、広域的な視点に立った都市機能の再編・再整備を行うとともに、中心市街地の再開発や土地区画整理を促進し、都市機能を強化する。
 また、西原町等においては、琉球大学等高等教育機関周辺の整備を促進し、学園都市機能の充実強化を図る。
 さらに、緑化等による潤いのある空間の創出に努め、魅力ある景観形成を図る。

(5) 生活環境基盤等の整備

 多様化する廃棄物問題に対処するため、廃棄物の減量化、リサイクル及び広域的な廃棄物処理体制の整備を促進する。
 また、増大する都市の水需要に対応するため、新石川浄水場等の水道基盤を整備する。
 さらに都市地域の人口の増加、市街地の拡大に伴う汚水量の増大に対処するため、引き続き下水道の整備を推進する。
 都市化の進展にともない雨水の流出が増大し、浸水被害が多発している比謝川等の流域において総合的な雨水対策を推進する。
 具志川市等の不良住宅密集地区において、総合的な住環境の整備を推進する。
 看護師等の安定確保を図るため、民間養成所の整備を促進する。

3 南部圏域

【現状と課題】
 本地域は、那覇市とその周辺市町村の一部を含めた都市地域、都市近郊地域、農村地域、さらに那覇を中心として結ばれる慶良間諸島、久米島、渡名喜島、粟国島、南・北大東島からなり、多様な地域性を有している。
 本土復帰後、沖縄自動車道をはじめとした広域道路、沖縄都市モノレール等交通基盤の整備が進展しているほか、那覇新都心地区の開発事業や各市町村の市街地等の整備により都市機能の整備が進められてきた。
 今後は、国際ハブ機能の形成を目指す那覇空港の整備、ハブ機能を有する国際流通港湾化に向けた那覇港の整備、及びこれらへのアクセス道路の整備を推進し、情報通信基盤の整備等を促進するとともに、戦後の無秩序な市街地の形成により過密化が進んだ既成市街地の整備を推進し、人口の集中から生じる交通混雑や環境問題等さまざまな都市問題に対処する必要がある。
 農村及び離島地域においては、都市地域との交流、連携を促進し、都市機能の享受を可能にするとともに、豊かな自然を生かした快適な居住環境を整備し、地域特性を生かした活力ある地域づくりを推進する。

【振興の基本方向】
 那覇市を中心とする都市地域においては、都市の利便性とアメニティに満ちたゆとりある生活空間を併せて享受できるように都市機能の再編・再整備を推進する。
 浦添市から那覇市に至る西海岸においては、空港、港湾等の整備により国際物流拠点の形成を図るとともに、その後背地と一体となった都市の整備を進める。
 特に、那覇港湾施設の移設が予定される浦添市については、港湾の展開整備と一体となった地域の振興を図る。
 豊見城市から糸満市にかけては、臨空港型産業や製造業、情報通信関連産業等の誘致・集積を図るとともに、園芸農作物の拠点産地の形成や水産業の振興を図る。
 与那原町から知念半島に至る東海岸地域においては、農林水産業の振興を図るとともに、健康・保養や歴史散策等を中心とした観光を推進する。
 南風原町、東風平町、大里村、具志頭村のような都市近郊地域においては、都市近郊型農業等を振興するとともに、良好な住宅市街地の形成に向けた整備を進める。
 離島地域においては、健康・保養や歴史・文化等をテーマとした体験・滞在型観光を推進するとともに、農林水産業の拠点産地化を促進する。

(1) 都市機能の再編・再整備

 那覇市を中心とする都市地域においては、人口や諸機能の集中による交通混雑の解消や住宅・住環境の整備が課題となっている。
 このため、沖縄都市モノレール駅周辺の再開発や既成市街地の再編・再整備、那覇新都心地区への情報通信関連産業等の集積を図る。また、国際通り活性化事業の推進、市街地開発事業と併せたマチグァーの再生等によりアメニティに満ちたゆとりある生活空間の創造を促進する。
 急速な市街地の拡大が進む那覇市周辺地域については、地域商業拠点としての機能を併せ持つ良好な住宅市街地の形成を図る。
 浸水被害が多発している安里川及び国場川等の流域において総合的な雨水対策を推進する。
 那覇港湾施設の駐留軍用地跡地については、那覇空港、那覇港と隣接した特性を生かし、国際交流拠点にふさわしい交流空間の形成を目指す。

(2) 産業の振興

ア 観光・リゾート産業の振興
 西海岸地域においては、空港、港湾等の施設と連携したショッピング施設や海洋レクリエーション施設等を整備し、コースタルリゾートの形成を図る。
 東海岸地域においては、海洋レジャー施設等の整備による海洋性レクリエーション基地の形成を図る。また、健康食品等地域特産品の開発を促進するとともに、健康・保養をテーマとした観光振興を図る。
 国営沖縄記念公園首里城地区及び県営首里城公園の整備充実を図るとともに、識名園、玉陵等の琉球王国のグスク関連遺産群とその周辺地域の整備を促進する。
 また、園比屋武御嶽を起点として玉城グスクに至る「東御廻い」の史跡や景勝地を経由する沖縄のみち自転車道を整備し、歴史的遺産群を結ぶ観光ルートの整備を促進するなど、琉球歴史回廊の形成を図る。
 さらに、沖縄戦跡国定公園を中心とした平和学習拠点の形成を図る。
 ラムサール条約に登録された漫湖については、都市における環境教育や自然観察の拠点地域としてその整備を図る。
 離島地域においては、豊かな自然環境を生かしたグリーンツーリズム、ブルーツーリズム等の体験・滞在型観光を促進するため、宿泊施設やレクリエーション施設の整備など受入体制の強化を促進するとともに、多様化する観光ニーズに対応する各種イベント、観光プログラム等の開発により観光の通年化、長期化を図る。

イ 情報通信関連産業の振興
 情報通信関連の中核的な施設・設備の整備が比較的進んでいる南部地域においては、情報通信産業振興地域制度等を積極的に活用しつつ、通信コストの低減化支援やインキュベート施設等の整備促進などにより、情報サービス、コンテンツ制作、ソフトウェア開発等の企業立地を促進し、情報通信関連産業の集積を図る。

ウ 物流・製造業の振興
 浦添市から糸満市に至る西海岸地域については、那覇空港や那覇港に隣接する利点を生かし、倉庫・運輸及び空港支援サービス等、空港・港湾活用型産業の集積に努める。
 また、豊見城市地先埋立地への臨空港型産業等の導入を促進するとともに、糸満工業団地等への県内製造業の移転再配置等を促進する。
 さらに、那覇港湾背後地への港湾関連企業の導入等により物流機能の向上を図る。

エ 農林水産業の振興
 地下ダム貯留水の水質保全に留意するとともに、都市排水の循環利用等、多様な農業用水の開発など、生産基盤の整備を推進する。
 さやいんげん、ゴーヤー、マンゴー・パパイヤ等の熱帯果樹等重点的に推進する品目については、拠点産地を形成するとともに、さとうきび等については、農業生産法人、作業受託組織の育成、農地の流動化等による生産体制の強化を図る。
 また、本地域は、沖縄の主要な経済圏に位置する特性を生かし、都市近郊型農業を促進する。天敵を利用した減農薬栽培等の拡大を通じ、消費者に安全・安心をアピールできる生産・供給体制の整備を図る。
 養豚等の畜産については、家畜排せつ物処理施設の整備、耕畜連携等による資源循環型農業を推進し、河川の水質保全等を図る。
 荒廃原野における緑化を推進するとともに、周辺離島における水源かん養、潮害防備のための森林を整備する。漁港施設、増養殖場の整備を推進するとともに、水産物流通拠点である糸満等において流通・加工機能の充実を図る。
 地域の特色ある歴史的・自然的な農山漁村景観等の保全整備を通じて、都市と農村の交流による快適で活力ある農山漁村を形成する。

(3) 総合的な交通基盤の整備

 那覇空港については、沖合いへの空港施設の展開等について検討を行い、必要な整備を図るとともに、旧国内線ターミナル地区の利用について検討を行い、必要な整備を図る。また、貨物ターミナル等狭あい化が進みつつある地区について、所要の施設の整備拡充を図る。
 那覇港については、沖縄の地理的条件に起因する輸送コストの問題を克服するとともに、戦略的な中継コンテナ貨物の取扱を促進するため、貨物の増大・集積に迅速かつ効果的に対応できる大規模コンテナターミナル等の整備を推進する。あわせて、国際航路ネットワークの拡充に向けて、港湾利用コストの低減化、効率的なターミナル運営を目指す。また、幹線道路や那覇空港と結ぶ臨港道路を整備する。さらに、大型クルーズ旅客船バースやマリーナ等国際交流拠点にふさわしい施設整備を推進する。
 また、空港や港湾等の拠点間の連携を強化するため、那覇空港自動車道や、沖縄西海岸道路等の広域道路の整備を促進する。
 さらに、バス、モノレール等交通機関相互の適切な連携による利便性の向上を図るとともに、都市における交通渋滞の緩和を図るため、沖縄自動車道と沖縄都市モノレールとの効果的結接や那覇市と南部各地域との連携強化及び各地域間の交流を促進する道路網の整備を進める。
 また、離島においては、空港、港湾及び道路等の整備、航空路線網及び海上航路網の維持・確保等により、交通ネットワークの形成を図り、生活の利便性の確保に努める。

(4) 国際交流等の推進

 JICA沖縄国際センターとの連携を充実強化し、研修員等と県民との交流を盛んにするなど国際交流を推進する。
 豊かで個性ある地域づくりや産業振興を担う人材の育成を図る。また、県立芸術大学においてデザイン工学分野等の学部設置を進める。

(5) 生活環境基盤等の整備

 人口の集中する南部圏域においては、高度医療、救命救急医療、母子総合医療等、高度化、多様化する保健医療のニーズに対応できる県立高度・多機能病院(仮称)の整備を推進する。
 多様化する廃棄物問題に対処するため、廃棄物の減量化、リサイクルの推進、広域的な廃棄物処理体制の整備とともに、環境関連ビジネスの企業化の促進、資源の域内循環の推進など、ゼロエミッションを積極的に展開する。
 都市地域の人口増加、市街地の拡大に伴う汚水量の増大に対処するため、引き続き下水道の整備を推進するとともに、下水処理水の有効利用を図る。
 また、生活排水や畜舎排水等による河川水質の悪化に対処するため、河川の上流から下流にいたる流域市町村の広域的・総合的な河川浄化対策を促進し、河川の浄化を図る。
 離島地域においては、地域における定住環境を整備し、快適で潤いのある豊かな生活環境を創出する必要がある。
 このため、保健医療及び福祉においては、関連施設の整備や従事者の養成・確保や地域福祉の基盤整備、救急医療体制の充実強化等を図る。
 廃棄物対策については、廃棄物の減量化、リサイクルの促進や、使用済自動車等の不法投棄防止対策を強化するとともに、廃棄物処理施設の整備を促進する。
 また、水の安定供給を図るため、多目的ダムの建設及び海水淡水化施設の整備を推進する。
 さらに、下水処理については、特定環境保全公共下水道、集落排水施設の整備を進めるとともに、合併処理浄化槽の普及を促進し、河川、海域の汚染防止に努める。
 離島における教育の充実を図るため、本島への学生寮の設置を促進する。

4 宮古圏域

【現状と課題】
 本地域は、隆起サンゴ礁の平坦な地形から、台風や干ばつによる被害を受けやすい厳しい自然環境に置かれている。
 また、生活用水のほとんどを地下水に頼っており、地下水の水質の保全が重要な課題である。
 一方、島全体が石灰岩土壌であることや、美しい海浜景観に恵まれていることから、さとうきびを中心とした農業や観光・リゾート産業が基幹産業となっている。
 また、御嶽等の多くの文化遺跡や豊かな自然に見られるように、独特な文化と風土を有している。
 しかしながら、総体として労働人口を吸収するだけの産業が育っていないことから、圏域の担い手となる若年層の島外への流出による、過疎化と高齢化が進んでいる。

【振興の基本方向】
 美しい自然環境を保全するとともに、地下水の水質を維持し快適な生活環境を創出するなど、資源循環型の社会システムの構築に向けて取り組む。
 情報通信基盤の整備が進められていることから、自然に囲まれた島の環境を生かしたSOHOの導入を促進する。農林水産業の振興はもとより、各種スポーツイベントの開催やキャンプ地としての利用の実績を生かし、スポーツや健康・保養をテーマとした体験・滞在型観光を中心に観光・リゾート産業の振興を図る。
 また、これら産業間の連携を図り、雇用機会を創出することにより、地域の活性化に努める。

(1) 資源循環型の社会システムの構築

 本地域は、環境の保全と産業の振興とのバランスの上に、美しい自然と豊かな暮らしを両立させるため、ゼロエミッション・アイランド沖縄構想に基づくモデル事業を展開する。
 このため、廃棄物の減量化、リサイクルや適正処理を促進するとともに、新エネルギー導入の促進や自然エネルギー供給モデル地区の形成を図る。

(2) 産業の振興

ア 農林水産業の振興
 地下ダム貯留水の水質保全に留意するとともに、かんがい施設など生産基盤の整備を推進し、マンゴー等重点的に推進する品目については拠点産地を形成する。
 また、さとうきび、肉用牛等については、生産体制の強化及び畜産環境対策を推進する。特に、さとうきびについては、葉たばこ等との輪作体系の確立、農業生産法人、作業受託組織の育成・強化、機械化一貫作業体系の導入を推進する。
 沿岸漁業や藻類養殖業の促進、水産加工品の開発、流通加工施設や漁港・漁場等生産基盤の整備などによる生産流通体制の強化を図るほか、水源かん養、潮・風害防備等のための森林を整備する。

イ 観光・リゾート産業の振興
 「全日本トライアスロン宮古島大会」等の定着により、観光客は増加しており、今後とも地域の特性を生かした魅力ある観光・リゾート地づくりを推進する。
 このため、島の特性を生かした体験・滞在型観光を可能にするレクリエーション施設や長期滞在型施設、数多く所在する歴史・文化遺産を生かした「歴史・文化ロード」の整備を促進する。
 ウエルネス等の健康・保養をテーマとした観光や、ダイビングをはじめとしたマリンスポーツの振興を図るとともに、グリーンツーリズム、ブルーツーリズム等の農業や水産業と連携した観光を促進する。
 また、本土とのチャーター便就航の実績を重ね、航空路線の拡充を図るとともに、国内外の大型クルーズ客船の就航を促進する。
 平良港については、宮古圏域の観光・リゾート拠点としての整備を図るためコースタルリゾートプロジェクト(トゥリバー地区)を推進する。
 下地島空港の周辺地域については、観光資源である海洋景観の保全を図るとともに、スポーツレクリエーション施設等の整備を促進する。

(3) 産業・生活環境基盤の整備

 平良港の地域の拠点港湾としての整備と併せた大型クルーズ客船に対応した施設整備を推進する。また、空港及び港湾等広域交通拠点へのアクセス道路や地域振興を支援する道路網の整備、地域を支える公共交通基盤の整備、地域ITSの導入を促進する。さらに、伊良部架橋の事業着手に向けて取り組むとともに、新多良間空港や高野川満線等の整備による離島とのアクセスの改善等により、交通体系の整備を行う。
 また、広域的なレクリエーション需要に対応し、住民の憩いの場となる広域公園の整備に努める。
 情報通信関連の環境整備を行い、情報通信産業振興地域制度を活用した企業立地や、産業、教育、医療、福祉等各分野における情報化を進めるとともに、SOHOの導入を促進する。
 生活排水処理については、公共下水道、集落排水施設の整備を進めるとともに、合併処理浄化槽の普及を促進し、地下水、海域の汚染防止に努める。

(4) 職業能力開発機会の確保

 本地域においては、公的な職業訓練の機会が乏しいことから、地域の人材ニーズに応じ、民間の教育機関等に職業訓練を委託するなど、職業能力開発機会の確保を図る。

(5) 保健医療・福祉関連基盤の整備

 公立病院等の保健医療及び福祉関連施設の整備を進めるとともに、保健医療及び福祉従事者の養成・確保や地域福祉の基盤整備、救急医療体制の充実強化等を図る。

5 八重山圏域

【現状と課題】
 本地域は、大小32の島々からなる島しょ地域であり、個々の島々が貴重な野生動植物を含む優れた自然環境を有しているほか、古来より「詩の国、歌の島、踊りの里」と呼ばれ、多種多様な民俗芸能が伝承されるなど、独特の歴史的・文化的環境を有する多様性に富んだ地域である。
 また、古くから、台湾や中国大陸との交流が盛んな地域であり、他の圏域には見られない独自の地域間交流の蓄積がある。
 本圏域の課題としては、進学や就職を機会とした若年層の流出、離島地域での高齢化の進行等がある。また、環境面では赤土等の流出防止対策が急務である。
 
【振興の基本方向】
 我が国の最南西端に位置する地理的条件と貴重な野生動植物を含む豊かで多様性に富んだ自然環境、歴史的・文化的特性を生かした観光・リゾート産業の振興を図る。
 このため、各種伝統行事や文化財等の保存・保護を図りつつ、観光資源としての利活用に努めるとともに、新たな観光資源の開発を進める。
 圏域外及び国外との交流ネットワークを形成するとともに、島々の自然環境を保全しつつ、各種産業の振興による雇用の創出、生活環境の改善等の定住条件の整備を図る。

(1) 産業の振興

ア 観光・リゾート産業の振興
 石垣島を中心とした国際的な観光・リゾート地の形成を図るため、本土との航空路線の拡充、海外との航空路線の開設、国内外の大型クルーズ客船の就航などを促進し、アクセス条件の改善を図るほか、石垣港については、離島ターミナルの再編等、観光・リゾート拠点としての整備を促進する。周辺離島間海上航路網の拡充を図るとともに、共通乗車船券の活用による周遊ルートの多様化を図り、個性あふれる島々の魅力を生かした観光を促進する。
 また、イリオモテヤマネコ等の天然記念物が生息する亜熱帯自然林、マングローブ等が密集する河口域や我が国最大のサンゴ礁域を活用したエコツーリズム、グリーンツーリズム、ブルーツーリズム等の体験・滞在型観光を促進する。
 観光振興に当たっては、恵まれた自然環境の保全が重要であり、そのための取組を強化する。西表国立公園に属する石西礁湖ゾーンをはじめとしたサンゴ礁を保全するとともに、観光資源としての活用を図る。また、国際サンゴ礁研究モニタリングセンターとの連携を図る。
 さらに、竹富島の伝統的建造物群保存地区等における歴史風土に育まれた集落景観をはじめ、民俗芸能や文化遺産等、島々のもつ魅力を生かすとともに、「石垣島トライアスロン大会」や「大海洋祭マンタピア」等各種イベントの充実を図る。
 与那国島においては、海底観光資源等の特異な観光資源を十分に生かすため、観光・リゾート施設の整備を促進する。また、東南アジア等に近い同圏域の地理的特性を生かし、国境を接する台湾との交流を促進する。

イ 農林水産業の振興
 農業用水の確保など生産基盤の整備を推進し、マンゴー等の熱帯果樹やかぼちゃ、肉用牛等重点的に推進する品目については、拠点産地を形成するとともに、畜産環境対策等を推進する。
 さとうきび等土地利用型作物は、農地の利用集積、生産の合理化、品質向上等に努め、生産体制の強化を促進する。
 また、森林の持つ公益的機能の維持増進を促進するとともに、森林ツーリズム等と関連づけた、新たな林業の振興を図る。
 近海魚介類の資源管理及び養殖魚介類の生産拡大を図るとともに、漁港・漁場等の生産基盤を整備し、生産体制等を強化する。

ウ 商工業の振興と中心市街地の活性化
 シャコ貝、ソデイカなどの水産物やパッションフルーツなどの熱帯果実を活用した新たな特産加工品の開発を進めるとともに、八重山上布やミンサー織などの伝統工芸産業の継承発展を図る。
 また、快適な商業環境を創出するため、中心市街地の整備改善及び活性化を促進する。

(2) 総合的な交通基盤等の整備

 県内外や都市部との連携を強化し、人、物、情報等の交流の活発化を促進するため、新石垣空港、与那国空港及び石垣港、祖納港や広域交通拠点へのアクセス道路、地域振興を支援する道路網等の総合的な交通基盤の整備を図る。

(3) 保健医療・福祉関連基盤の整備

 保健医療及び福祉関連施設の整備を推進するとともに、保健医療及び福祉従事者の養成・確保や地域福祉の基盤整備、救急医療体制の充実強化等を図る。

(4) 職業能力開発機会の確保

 本地域においては、公的な職業訓練の機会が乏しいことから、地域の人材ニーズに応じ、民間の教育機関等に職業訓練を委託するなど、職業能力開発機会の確保を図る。

(5) 産業・生活環境基盤の整備

 水の安定供給を図るため、新たな水資源の開発、老朽施設の改良を進めるとともに、水道事業の広域化等により水道事業の経営基盤の強化を促進する。
 また、環境を保全しつつ、産業の振興を図るため、流域協議会の活動を促進し、総合的な赤土等流出防止対策を推進するとともに、公共下水道、集落排水施設等の整備・普及を進める。
 循環型社会を構築するため、廃棄物の減量化、リサイクルや適正処理を促進するとともに、新エネルギーの導入促進や自然エネルギー供給モデル地区の形成を図る。
 さらに、情報通信基盤の高度化及び拡充を図るとともに、産業、教育、医療、福祉等各分野における情報化を促進するほか、情報通信産業振興地域制度を活用し、圏域の自然を生かしたSOHOの導入を促進する。