沖縄振興特別措置法案の骨子
[1] 総則
1 目的
沖縄の特殊事情にかんがみ、沖縄の振興の基本となる沖縄振興計画を策定し、沖縄振興計画に基づく事業の推進等特別の措置を講ずることにより、沖縄の振興を図り、沖縄の自立的発展に資するとともに、豊かな住民生活の実現に寄与することを目的とする。☆2 施策における配慮
沖縄の地理的・自然的特性を考慮し、産業活動及び住民生活の基礎条件の改善、地域産業の自立的発展、文化的所産の保存・活用、環境保全、良好な景観形成、豊かな生活環境の創造に努める。[2] 沖縄振興計画
- 沖縄県知事が沖縄振興計画の案を作成し、内閣総理大臣が同案に基づき計画を決定する。
- 沖縄振興計画においては、振興の基本方針、産業の振興、職業の安定、教育及び文化の振興、科学技術の振興、福祉の増進及び医療の確保、国際交流及び国際協力の推進、情報通信の高度化、駐留軍用地跡地の利用、離島の振興、環境の保全、社会資本の整備等に関する事項等のほか、圏域別の振興に関する事項を定める。
- 沖縄振興計画は、10箇年を目途として達成されるような内容とする。
[3] 産業の振興のための特別措置
1 観光の振興
☆ (1) 観光振興計画- 沖縄県知事が観光振興計画を作成するものとする。
- 観光振興計画には、観光振興の方針、観光旅客の来訪の促進に係る方針、観光地の魅力の増進、観光旅客の受入れ体制の確保等の事項を定めるほか、観光振興地域の区域、利用者利便増進事業に関する事項及び環境保全型自然体験活動の推進に関する基本的な方針についての事項を定めることができる。
- 計画期間は5年以下とする。
観光振興地域において新増設される特定民間観光関連施設について、課税の特例等の措置を講ずる。
☆ (3) 国際観光振興会は、外国人観光旅客の沖縄への来訪の促進のための海外における宣伝及び国際会議等の誘致の促進のために必要な措置を講ずるよう努めなければならないものとする。
☆ (4) 沖縄内を移動する観光旅客を対象とする共通乗車船券に係る運賃又は料金の割引について手続の特例を設ける。
☆ (5) 一般乗合旅客自動車運送事業又は一般旅客定期航路事業についての利用者利便増進事業の認定等の特例を設ける。
☆ (6) 環境保全型自然体験活動に係る案内及び助言を業として行う者は、保全利用協定を締結し、適当である旨の認定を受けることができる等環境保全型自然体験活動の推進を図る。
(7) 沖縄型特定免税店
沖縄から本土へ出域する旅客が空港内の旅客ターミナル施設において購入した物品又は観光振興地域内の輸入品販売施設で購入し空港内の旅客ターミナル施設で引渡しを受ける物品について関税を免除する。
(8) 航空機燃料税の軽減
本土・沖縄本島路線に係る航空機燃料税を軽減する。
2 情報通信産業の振興
☆ (1) 情報通信産業振興計画- 沖縄県知事が情報通信産業振興計画を作成するものとする。
- 情報通信産業振興計画には、情報通信産業振興の方針、情報通信産業の立地の促進、情報通信産業を担う人材の育成等の事項を定めるほか、情報通信産業振興地域及び情報通信産業特別地区の区域についても定めることができる。
- 計画期間は5年以下とする。
情報通信産業振興地域において新増設される情報通信産業又は情報通信技術利用事業の用に供する設備について、課税の特例等の措置を講ずることにより、情報通信産業の振興を図る。 ☆ (3) 情報通信産業特別地区
情報通信産業特別地区において、課税の特例措置を講ずることにより、情報通信産業の集積の牽引力となる特定情報通信事業を行う企業の立地を促進する。
☆3 産業高度化地域
主務大臣が、沖縄県知事の申請に基づき、産業高度化地域を指定し、課税の特例等の措置を講ずることにより、産業高度化事業を行う企業の立地を促進し産業の高度化を図る。4 自由貿易地域等
- 主務大臣が、沖縄県知事の申請に基づき、自由貿易地域及び特別自由貿易地域を指定し、課税の特例等の措置を講ずることにより、産業及び貿易の振興を図る。
- ☆ 特別自由貿易地域活性化事業を実施する法人の事業について、地方税の課税免除等を行った場合の減収補填措置を講ずるとともに、国等の援助のための規定を設ける。
☆5 金融業務特別地区
主務大臣が、沖縄県知事の申請に基づき、金融業務特別地区を指定し、課税の特例等の措置を講ずることにより、金融業務の集積を促進する。6 農林水産業の振興
- ☆沖縄県知事が農林水産業振興計画を作成するものとする。
- 農林水産業の振興の方針、農林水産業に係る技術の研究開発及び普及、農林水産物の加工及び流通の合理化、農林水産業を担う人材の育成及び確保、農林水産業の振興を図るために必要な生産基盤の整備等の事項を定めることとし、国及び地方公共団体は、同計画に基づき、必要な措置を講ずる。
- 計画期間は5年以下とする。
7 電気の安定・適正供給
電気の安定かつ適正な供給の確保のため、課税の特例等の措置を講ずる。8 中小企業の振興
- ☆経営革新による経営の向上の促進が沖縄経済の振興に資すると認められる業種に属する事業を行う中小企業者について、課税の特例等中小企業経営革新支援法の特例を設ける。
- ☆厳しい経済的環境の影響を受け、生産額の減少等が見られる業種であってその経営基盤の強化を図ることが沖縄経済の振興に特に必要である業種に属する事業を行う中小企業者について、課税の特例等の措置を講ずる。
- 国及び地方公共団体は、沖縄の中小企業の振興のために必要な資金の確保その他の援助に努めるものとする。
☆9 沖縄振興開発金融公庫の行う新事業創出促進業務
沖縄振興開発金融公庫が、沖縄における新たな事業の創出を促進するために必要な資金の出資を行うことができる等の措置を講ずる。[4] 雇用の促進、人材の育成その他の職業の安定のための特別措置
- ☆ 沖縄県知事が雇用の促進、人材の育成その他の職業の安定に関する職業安定計画を作成するものとする。
- 職業安定計画には、職業の安定を図るための施策の方針、雇用の促進、人材の育成その他の沖縄の労働者の職業の安定を図るための施策等の事項を定め、国等は、同計画に基づき沖縄の労働者の雇用の促進等の措置を講ずる。
- 計画期間は5年以下とする。
- 沖縄失業者求職手帳を発給し、手帳所持者に対し就職指導等の必要な措置を講ずるとともに、雇用・能力開発機構は、沖縄の失業者の再就職の促進等に関し必要な業務を行うものとする。
- ☆地域雇用開発促進法に基づく地域の要件を沖縄において緩和する等の特例措置を講じ、同法に基づく助成及び援助の措置を講ずることができるものとする。
[5] 文化・科学技術の振興及び国際協力等の推進
☆ (1) 沖縄の文化の振興を図るとともに、沖縄の文化の振興に関する施策の総合的な推進を図るための方針を作成するための規定を設ける。☆ (2) 沖縄における科学技術の振興を図るとともに、国際的に卓越した教育研究を行う大学院を置く大学その他の教育研究機関の整備・充実等必要な措置を講ずることにより、科学技術水準の向上に努めるものとする。
☆ (3) 国は、沖縄の国際化に係る施策の推進に努めるものとする。また、国際協力事業団は、沖縄における開発途上地域からの技術研修員に対する研修の実施その他の必要な措置を、国際交流基金は国際文化交流を目的とする催しの実施その他の必要な措置をそれぞれ講ずることにより、沖縄の国際協力及び国際交流の推進に資するよう努めるものとする。
[6] 沖縄の均衡ある発展のための特別措置
(1) 医療及び福祉の向上のため、無医地区における医療の確保及び離島における高齢者の福祉の増進のための措置を講ずる。(2) 離島の振興のため、交通の確保、小規模校における教育の充実、旅館業に係る課税の特例等の措置を講ずる。
[7] 駐留軍用地跡地の利用の促進及び円滑化のための特別措置
☆1 駐留軍用地跡地の利用に関する基本原則等
(1) 国、県、跡地関係市町村は密接な連携の下、跡地の有効かつ適切な利用を促進するよう努めなければならない旨の規定を設ける。(2) 国は、跡地の有効かつ適切な利用を促進するため、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めなければならない旨の規定を設ける。
(3) 県、跡地関係市町村は、跡地の有効かつ適切な利用を促進するため、整備計画の策定その他の措置を講ずるよう努めなければならない旨の規定を設ける。
☆2 大規模跡地の指定等
☆ (1) 大規模跡地(市街地の計画的な開発整備を行うに当たって著しい困難を生じるおそれがあり、沖縄の振興の拠点となると認められるもの(規模要件等を政令で規定))の指定、国の取組方針の策定、県総合整備計画の策定のための規定を設ける。(2) 特定跡地(開発整備を行うに当たって原状回復に相当の期間を要し、沖縄の振興に資すると認められるもの(規模要件を政令で規定))の指定、市町村総合整備計画の策定のための規定を設ける。
☆3 大規模跡地給付金の支給等
☆ (1) 大規模跡地の円滑な利用を促進し、市街地の計画的な開発整備に伴う所有者等の負担の軽減を図るため、返還日の翌日から引き続き3年を超えて、当該土地を使用収益していないときは、返還日の翌日から3年を経過した日から、当該所有者等の申請に基づき、大規模跡地給付金を支給することとし、支給の限度となる期間その他必要な事項は、政令で定める旨の規定を設ける。(2) 特定跡地の円滑な利用を促進し、原状回復に相当の期間を要することに伴う所有者等の負担の軽減を図るため、返還日の翌日から引き続き3年を超えて、当該土地を使用収益していないときは、返還日の翌日から3年を経過した日から、当該所有者等の申請に基づき、特定跡地給付金を支給することとし、支給の限度となる期間その他必要な事項は、政令で定める旨の規定を設ける。
[8] 沖縄振興の基盤の整備のための特別措置
沖縄振興計画に基づく事業について、国の負担又は補助の割合の特例、国の直轄事業の特例等の措置を講ずる。[9] 沖縄振興審議会
沖縄振興審議会の設置その他の必要な規定を設ける。[10] 附則
1 沖縄振興特別措置法は平成14年4月1日から施行する。2 沖縄振興特別措置法は10年で失効するものとする。
☆ 3 平成14年度に限り羽田―沖縄離島(宮古島・久米島・石垣島)路線に係る航空機燃料税の軽減措置を講ずる。
4 県産酒類に係る酒税、揮発油税及び地方道路税の軽減措置を延長するための沖縄復帰特別措置法の一部を改正する規定を設ける。
(注):輸出物品販売場に係る課税の特例の延長については、政令で措置。
5 沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置法を平成24年3月31日まで延長するための規定を設ける。
6 その他必要な経過措置等の規定を設ける。
(注)☆印は新法において新たに措置するもの