栄典制度の在り方に関する懇談会第5回議事要旨

1. 日時

平成13年5月22日(火) 14:00~15:48

2. 場所

総理大臣官邸大客間

3. 議事

  1. (1) 開会
  2. (2) 「栄典制度の在り方に関する論点の整理」(案)について
  3. (3) 今後の議論の進め方等について
  4. (4) 閉会

4. 出席者

吉川弘之座長、工藤敦夫座長代理、今井延子委員、金平輝子委員、平山郁夫委員、藤森昭一委員、柳谷謙介委員、山口昇委員

(政府側)
古川内閣官房副長官、阪上内閣府大臣政務官、佐藤内閣府賞勲局長、福下内閣府賞勲局総務課長

5. 会議の模様

  1. (1) 阪上新内閣府大臣政務官から挨拶があった。
  2. (2) 佐藤賞勲局長から配布資料に基づき「論点の整理」(案)等についての説明があった。
  3. (3) 「論点の整理」(案)等について各委員により意見交換が行われた。
    <主な意見の概要>
    • 栄典制度を、将来に向かって建設的に改めるところは改め強化していくという、この懇談会の目的に合った形の答申にしたい。
    • 人生の大部分を私益の追求ではなく公のために捧げた人に対して、国家がその労を認め、報い、勲章という形で評価し、これを本人のみならず家族一同も心から喜ぶ、それが叙勲制度の原点である。これは日本だけではなく、各国の制度も同じ考えに立っている。
      社会情勢の変化に対応して改めるべきところは勇気をもって改めるべきであるが、それによって叙勲制度の原点がおかしくなることは適当でない。
    • 叙位叙勲や褒章制度そのものが日本では文化の一つである。日本文化の特質は「継続性」であり、栄典制度についても、そのような精神を忘れず、そして足りないところは時代に応じて補強することが大事である。
      ヨーロッパでは、革命が起こっても儀式(セレモニー)を非常に大事にしており、これが文化だと思った。文化は一朝一夕にはできない。一度壊してしまうと全然分からなくなる。だから、時代に即応しつつも、伝統を守るという精神だけは忘れてはならない。
    • もう少し若い世代の人達の意見が取り入れられる方法や、思い切って抜本的な見直しをするというところをもう少し出せないか。
    • 若い世代の人達は栄典というものをなかなか身近なものとは感じられず、建設的な意見というのは、やはりある程度高い年齢にならないと難しいかもしれない。
    • 栄典制度のいいところは残し、改めるべきところは改めるという両面の調和を図る必要がある。その接点を最終的に決めるのは最高責任者の判断になるが、我々の任務は、場合によっては両論併記、三論併記でもよいから、なるべくバランスのとれた公平な意見を提供することではないか。
    • 栄典制度については年代により意識の違いがあると思われるので、国民からの意見について年代別にデータ処理をしてみてはどうか。
    • 中には栄典制度などやめてしまえという意見もあるかもしれないが、何事も破壊することは簡単であるが、一回破壊されると建設するには大変な時間と労力がかかる。何よりも大事なことは、懇談会として、そういう無責任な破壊作業につながらないようガードすることではないか。
    • 栄典の意義として、特に地方では非常に大きな励みとなっている。また、この制度が天皇陛下と国民をつなぐ大きなパイプとなっているという意義を重く受け止めるべきである。
    • ただ、基準、物差しといった運用面の見直しに当たっては、年功序列だけではなく、社会に対する貢献度というものを取り入れる必要があるのではないか。
    • 栄典制度は大変歴史のある制度であり、この懇談会ができて見直しをし、整理していることは大変重いものだ。今回ここでいろいろと検討すれば、次に早々軽々に変えられるものではないから、この際きちんと考えたという姿勢を最終報告を出すときに示す必要があると思う。
    • 今も昔も若い世代の人達に栄典制度というものを理解してもらうことは難しい。若い世代の人達に理解してもらうことも大事だが、それほど大きな期待は持てないのではないか。意見募集では若い世代の人達からは否定的な意見が寄せられることも考えられるが、それは必ずしもそれほど重要な要素とは思わない。しかし、大勢の国民の意見を聞くためそれらの意見も聞く必要がある。
    • 勲章と褒章との関係をきちんと整理しないといけないのではないか。勲章は国家・公共への貢献を称えあるいは報いるもの、褒章は個人の善行を褒めるものであり、それぞれ目的、性格が違うものであり、国の栄典というものについて、この2つをどのように位置付けるのかということをしっかり考えなければならない。
    • 今日指摘されている栄典制度の問題は、官・民あるいは中央・地方といったそれぞれ質の違った功績というものをいかに公平に、あるいは公正に判断するか、その基準をどのように考え、どのように運用するかにかかっている気がする。
    • 今後褒章や位階について更に議論を深める必要があるのではないか。特に褒章については、もっと関心を高め、評価を高める方法や、勲章と褒章の役割をどう変えていくかといったことについてよく検討する必要があるのではないか。
      国民栄誉賞や内閣総理大臣顕彰との関係についてもよく検討する必要があるのではないか。
    • 勲章と褒章の関係について、褒章を受章した後勲章を受章するので、褒章は勲章よりも下位の扱いという印象を持たれている。このような扱いをどうするかについても検討する必要があるのではないか。
    • 若い人は、勲一等や勲二等といったものよりも身近な福祉や人命救助あるいは音楽やスポーツといったものに関心があるので、そのような若くてもできるものに対して何か出せるものがあれば関心が高まるのではないか。
    • JICAの青年協力隊や万国赤十字の看護婦さんを始めMGOで海外で活躍している人達に対して、国際協力や人類愛ということで、国としてもっと表彰することを検討してはどうか。
    • 日本から海外に出た人が外国で大きな貢献をし高く評価されたことに対しても、日本の国益、国際的信用・信頼に大きく貢献することになるので、日本に対する功績と考えてよいのではないか。
  4. (4) 意見交換の後、吉川座長により本日の議論の整理があった。
    • 栄典制度の存在そのもの、その本質的な重要性については完全に理解、合意が得られたと考える。一方、国際的な視点や「公」の意味の変化など社会の変化に対して、これらを具体的に評価の基準(尺度)にどう反映するかについて今後更に詰めていく必要があるのではないか。
    • この「論点の整理」は「手直しはあるとしても、この制度が持っている本質は変更しない」というメッセージとして受け取られ、特に若い世代の人達から反論が出てくると思うが、そういう反論も一度正面から受け止めてみた上で、最終報告ではそういった反論をも説得できるような強力な説明というものを出すぐらいの覚悟を持っておいた方が良いと思う。
    • 栄典とは、現代人が褒めるだけでなく歴史が褒めるもの。国家とはそのようなものであり、どのような国家においてもこのような制度が存在するはず。だから、このような制度を無くしたら大変だということを説明する責任がある。今の日本からそういう意識が欠落しつつあるところに問題があるので、国民から意見を募集し、それに対してはっきりしたメッセージを打ち出すことが非常に重要な仕事だと思う。
  5. (5) 「論点の整理」を原案のとおり取りまとめ、公表することについて了承がなされた。
  6. (6) 6回目の会合は、平成13年7月16日に開催することを予定。次回の会合においては、「論点の整理」に対する国民からの意見募集の結果の報告を受け、最終報告に向けて更に議論を進めていくこととされた。

[文責:内閣府賞勲局総務課]

(注)本議事要旨の内容については、今後変更の可能性があります。