〜平成20年度入賞作品〜
【小学生部門】 ◆佳作
大すきな兄弟からもらう温かい心
わたしが生まれたのは、今から十年前。重い自閉症の兄ちゃんの妹になって十年。発達しょう害の妹のお姉ちゃんになって八年。十四年間生きてきた、一番上のお姉ちゃんから見れば、わたしなんてまだまだあまい。姉ちゃんは、同じ学校に通っていた一つ下の兄ちゃんを見る冷たい目に、悪口にきずついたけど、兄ちゃんを守って卒業していった。わたしは、その姉ちゃんが道を切り開いてくれたおかげで、こうしてのほほんと生きている。姉ちゃんの、「弟は、すきでしょう害を持って生まれてきたわけじゃない。みんなちがってみんないいのよ!」と立ち向かった勇気が、今のわたしを支えている。認め合い、共に生きていこうという土台が、作られたと思うんだ。
姉ちゃんには、つくづく感しゃだ。わたしは兄ちゃんがパニックになり、妹にじだんだをふまれた時は、何でこうなるの?と、つらく悲しくなる。「めいわくだ」「しつけが悪い」と、注意されたこともあったっけ。けど、そういう大変なところもふくめて、丸ごと兄ちゃんと妹だ、って教えてくれたのは姉ちゃんだ。だから、わたしはしょう害者家族キャンプやしせつの活動、その他の場でも、大きく広い心でしょう害のある人を見られるようになった。やりとりを工夫して遊んだり、車イスをおしたり手をかすお手伝いが、自ぜんにできるようになったんだ。
きっとみんな、この世の中にはいろいろな人がいるって、わからないのだろう。わたしたちみたいに、みんなが身内にしょう害者がいるわけじゃない。また、形だけのふれあいはあっても、しょう害者を身近に感じることは少ないだろう。心のつみ重ねがないから、自分の中のものさしで、一方的にとらえちゃう部分ってあると思うんだ。
姉ちゃんは、その心のキョリを『へん見』『差別』という、むずかしい言葉で教えてくれた。「ふつうじゃない」「みんなとはちがう」というワクでくくり、しょう害のある人とない人の間に、かべを作るんだって。
兄ちゃんが入学した時、特しゅ学級は「できない子が入るかわいそうなクラス」だったと姉ちゃんが言う。兄ちゃんは言葉が出ないから、「あー」とか「うー」とか声を出すか、なくかさわぐか。姉ちゃんは、「お前の弟、バカじゃん」「変な弟でかわいそう」など、たくさん言われた。お母さんはそれをすごく気にして、妹はようご学校に入れると決めていたくらいだ。(わたしは、妹といっしょに学校に行きたかったけど……仕方ないか)
でも、姉ちゃんが「わたしのかわいい弟だからよろしく」と投げかけたことで、わかってくれる人が少しずつふえたんだって。おかげで兄ちゃんは友だちができ、兄ちゃんのまわりは笑顔がいっぱいになったんだって。
「それが『かべ』、つまりバリアをなくすこと。心のバリアフリーなんだよ」と、姉ちゃんはさらっと言ってのけるけど、それが大事だってことはよくわかる。
「心のふれあいがあればかべはなくなり、すてきな笑顔に出会える。そして、その笑顔が笑顔をよび、笑顔も運ぶ。言葉はなくても、心のキャッチボールはできるのよ」
姉ちゃんは、しょう害者のボランティアにも進んで参加する人。心にひびく話はさすがだ。心が結ばれるって、かべがなくあったかだから、笑顔の花が咲くんだね。
わたしも、兄ちゃんと妹を大切に思う気持ちでいっぱい。どうであろうと、わたしのかけがえのない兄弟。この笑顔をずっと守っていきたいと思っている。そのことを今さらながら気づいたわたしは、妹として、お姉ちゃんとして、これからもがんばっていけるはず。そして、今度はその気持ちを『心のバリアフリー』という温かい心に乗せ、多くの人に伝えていく。笑顔の花が咲くよう、人の心に訴えていきたいと思っている。