〜平成20年度入賞作品〜
【小学生部門】 ◆佳作
笑顔
「健ちゃーん。こんにちは。ぼくこれからプールに行くんだよ」
ギラギラ太陽が照りつける商店街を弟と歩いていると、一年生の男の子が走ってきて声をかけてきました。弟の健太郎は、うれしそうに笑い手をパタパタと動かしました。
弟は脳に障害があり、車いすに乗っています。今までは、街でも学校でも、声をかけてくれる子なんかいませんでした。私の運動会や学芸会などの行事で何度も学校に行っていたから、弟に声をかけるチャンスが無かったのではなく、気にもとめてもらえなかったのだと思います。でも、今年健太郎は、府中特別支援学校の一年生になり、私の通う第五小学校に副籍校交流で遊びに来てから、急に色々な子から声をかけてもらえるようになりました。
副籍校交流というのは、特別支援学校などに通っている子にも、地元の小学校の友達を作りましょうという活動です。この活動で弟は、五小の七夕集会に出席し、全校生徒の前で紹介してもらいました。集会の後は一年生の教室に行って、お手玉やけん玉をして楽しく遊んだそうです。
夏休みに入ってすぐに五小で行った防災キャンプでは、一年生ばかりではなく、色々な学年の子が弟と遊んでくれました。おしゃべりも出来ないし、手足も上手に動かせない弟と、友達として仲良くしてくれたのです。弟は、ほっぺをつつかれたり、くすぐられると大笑いして喜びました。みんな、いっぱい話しかけてくれました。それを見て私は、ちょっと照れくさかったけれど、とてもうれしかったです。みんなが今まで弟のそばに近寄らなかったのは、障害がある為ではなくて、単に知らない子に声をかけるのが恥ずかしかっただけなんだと分かりました。弟のクラスメイトには、お母さんや兄弟姉妹が消極的で、副籍校交流をしない子も多いそうです。障害児が家族にいると、いじめにあうかもしれないとか、恥ずかしいからというのです。私はそれを聞いて
「おかしい、許せない」
と腹が立ちました。そんな事をしていたら、障害のある子にとっても、無い子にとっても、色々な友達を作るチャンスが奪われてしまうし、差別の元です。
誰でも完ぺきな人はいません。不得意な事や出来ない事があります。障害もその内の一つだと気楽に考えられないものでしょうか。お互いに仲良くなろうと思えば、五小の生徒達のように、自然に障害を気にせず付き合えます。
健太郎は、いつも明るく笑っています。その幸せそうな笑顔は、みんなを暖かい気持にさせてくれます。弟を見ていると、やさしい心の交流がもっともっと、広がってほしいと願います。