平成27年度「心の輪を広げる体験作文」作品集 高校生・一般部門佳作

「『私』は『私』~自分を生きる~」

地主園 綾(福岡県)

 私自身が少しでも伝われば幸いです。

 私は障がい者で、身体障がいと知的障がいがあります。

 皆と同じように出来ない事がたくさんあり、同じように出来ず悔しい事もあります。

 理解するのに時間がかかるし、言いたい事をまとめるのが苦手です。

 今でこそ克服しましたが、『臨機応変』というのが苦手でした。「ダメだ。」と言われたらすぐかんしゃくを起こし、予定が変わるとパニックを起こすような子でした。

 小学校高学年では、周りの理解が少なく、無視してると思われる事がよくありました。

 言おうとする程フリーズしてしまい、より言えなくなりました。分かっていてもどう反応したらいいか分からず、自分にイライラしていました。

 答えたいのに答え方が分からない。どう言っていいのか分からない。何か分からない。

 その事があり、いじめと仲間外れにあいました。親友だと思っていた人にも裏切られ、私の存在価値を見失ってた事で人間不信になり、殻に閉じ込もる生活をしていました。

 中学でも、いじめと仲間外れにあいました。

 バイキン扱いされたり、『ガイジ』と呼ばれた上、「さわるな、ガイジが移る。」「ふれるな。障がいが移る。」と言われ続けました。

 修学旅行に行った時は地獄でした。

 時間が無いのは私のせいだと言われたり、「もっと早く歩いて。」「歩くの遅いけんじゃま。」と言われました。部屋では私の布団だけ離されていて、すごくショックを受けました。

 帰って大泣きし、もっと殻に閉じ込もりました。精神的にも肉体的にも辛い時間でした。

 不登校になりかけたり、ベランダから飛び降りて自分を殺そうと思いました。

 更にもっと、人間不信になり人嫌いになりました。

 ただ、一つ違った事があります。

 それは、親以外で一緒に戦ってくれる大人がいた事です。

 何度いじめられても、何度も注意してくれました。特別扱いもなく、平等に接してくれました。

 親身になって話を聞いてくれ、困った時にアドバイスをくれました。

 先生に出会えて救われたし、中学三年間同じ担任の先生だった事に感謝しています。

 時には厳しく時には優しくしてくれて、自分のペースで話せるようにしてくれました。

 初めて大人を信頼し、人間不信から出してくれました。失っていた笑顔と希望をくれて、ここから踏み出す勇気をくれました。

 私自身チャレンジしたいと思ったし、障がいのある自分にしか伝えられない事を伝えたいと思いました。

 障がいのある私が障がいについて色々知りたいと思い、高校・専門学校は福祉の学校を選びました。

 学ぶ事で、プラスになる部分が多くあり、多くの障がいについて理解出来たし、対処法を学べたのは貴重な財産になっています。

 ロールプレイや実習を重ねた事で、自信がつき、貴重な経験やもっと踏み出したいという気持ちが芽生えました。ロールプレイや実習先でも、障がい者としてでなく一人の実習生・一人の配役者として受け入れて頂いた事に感謝しており、配慮して頂く事で最後までやり通せたのが嬉しい限りです。

 全ては同じとまではいかなくても、出来るだけ同じようにして来ました。事前の配慮と受け入れ体制を整えて下さった事で、障がいのある人も最後までやり通せるというのを実証出来た気がします。  誰でも一緒というのを体感しました。

 反対に、学べば学ぶ程「自分は何が出来るんだろう。」「何を伝えられるんだろう?」と思いました。色々な障がいの壁があるという現実を改めて思い知りました。

 高校・専門学校では、踏み出す事で親友と良い仲間に恵まれました。

 最初は目立たないようにしてましたが、先生のくれた踏み出す勇気で新たな一歩を踏み出しました。

 親友・仲間に恵まれたのは、福祉を学ぶ人だからではなく、一人の人間として見てくれたからだと思います。

 学生時代に出会った親友は、今でもつながっています。差別や偏見でなく、皆が平等に見てくれたり、一人の人間として見てくれた結果だと思います。

 昔親に「私と一緒にいて恥しくないの?」と聞いた事があります。親は「そんな事はないよ。どんな子だって子どもは子どもなんだから。」と言ってくれたのです。

 障がいのある人を恥しいと思い部屋に閉じ込めたり、本人が恥しいと思い、部屋に閉じ込もるというのを聞いた事があります。

 私はけして恥しいと思った事は無いし、うらんだりもしてません。親に感謝しています。

 障がいは不便だし、悔しい思いをたくさんして来ました。苦しさも辛さもありました。

 その分、人に助けてもらうありがたさや人のつながり・協力性の大切さを学びました。

 「私は自分が大好きです。」と自信を持って言えます。「障がいは個性だ。」と思います。

 ここまで来るのに多くの涙や絶望を味わいました。時には、家庭や家族を傷付けました。

 障がい者を批判したり、差別・軽蔑の目を向ける人がいます。障がい者に対して、優しい目を向けてくれる人もいます。

 誰かの手と少しの支えで変われたりします。

 小さな勇気が大きな希望になる事もあると思います。障がい者の方が住みよい世の中になる事を願っています。

 今もこれからもこのままの私で進んで、一歩ずつ歩んでいきます。自分の道は自分にしか生きられません。「『私』は『私』」