平成27年度「心の輪を広げる体験作文」作品集 高校生・一般部門佳作

私なりの支え方

兵庫県立龍野北高等学校二年 後藤 七星(兵庫県)

 中学三年生の時、初めて同じクラスになった女の子が杖をついていました。私は、「なんで杖をついているんだろう」と思いました。しかし、クラス替えをしたばかりで詳しいことは聞けませんでした。それに、聞いていいのかもわからず、そのまま時間は過ぎていきました。

 それから一ヶ月が経ち、その頃にはその女の子とも仲良くなり、思い切ってどうして杖をついているのか聞いてみました。その子の話によると、熱中症による後遺症で身体に麻痺が残ってしまったためだそうです。その話をする彼女は何も気にしていない様子でした。笑顔で話す彼女に私は驚きました。

「だって、今さらどうこう言ってもしょうがないやろ」

私は、そう言って笑う彼女がとても眩しく見えました。障害を持ちながらもそれを気にせず強く生きていると感じました。そんな彼女の姿を見て、私は彼女を支えたいと思いました。そう思った私は、その日から彼女と一緒に過ごすようになりました。一緒に過ごしてみてわかったのは、私たちの当たり前は彼女にとっても当り前とは限らないということでした。移動だけでも違いました。足が動きにくい彼女は、歩くスピードも私たちより遅く、移動教室の時は誰よりも早く準備して教室を出ないと授業に遅れてしまいます。教科書が多い時は特に大変そうでした。私は、その姿を見て自然と手を差し伸べることが出来ました。教科書が多い時は彼女の分も持ったり、移動教室の時は「そろそろ行こう」と声をかけたりと以前の自分がしなかったことを自然とするようになっていました。

 彼女はとても強い人でした。自分の意志をしっかり持っていて、障害があってもいつも笑顔を絶やさない人でした。何があっても一生懸命に生きる彼女を近くで見ているうちに「この人の力になりたい」と思うようになっていました。そして、自然と手を差し伸べることができました。その頃には、彼女に障害があるなんて関係なく、彼女自身が大好きになっていました。

 ある時「自分でできることは自分でやりたい」と彼女は言いました。教科書を自分で持つこと、移動教室のときは自分を気にしないで先に行ってほしいことなどはっきりと伝えてくれました。最初は私に気を使っているのかと思い、今まで通り彼女に手を貸しました。しかし、そうすることで逆に彼女に気を使わせていることがわかり、少しずつ手を貸すことをやめました。すると、彼女にもできることはたくさんあるんだと初めて気づきました。教科書が多い時には鞄に入れて持って行ったり、移動教室は私がいなくても間に合っていました。今考えれば当たり前のことだと思いますが、その時の私には初めての発見でした。障害を持っているからできないことが多いのだと決めつけていたのかもしれません。それを自覚した途端、彼女に対して申し訳ないという気持ちが湧き出てきました。勝手に彼女を「何もできない人」と無意識に決めつけて、「手伝ってあげよう」と上から目線で接していました。そんなつもりはありませんでしたが、私がとった行動は彼女を見下しているようなものだったと思います。彼女が自立するチャンスを奪っていたのかと思うと本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。それと同時にやはり彼女は強い人だと思いました。「自分でやりたい」という思いを私にはっきりと伝え、自分でできることを増やしていこうとする姿は今でも目に焼きついています。ただ、本当に困った時も助けを求めず、自分でなんとかしようとする彼女にはもどかしさを感じました。きっと自分ですると言った手前、助けを求めることができなかったのだと思います。「そういう時は頼ってほしい」と思いながら、できるだけさりげなく手を貸すようにしました。その時に彼女からもらった「ありがとう」は以前とは少し違って聞こえました。彼女は何もできないと決めつけて何にでも手を貸していたあの頃は感謝されて当然だと無意識に思っていました。でも、彼女が本当に困っている時にだけ手を貸した時は本当に彼女のためになれたんだと感じられ、心の奥が暖かくなりました。この時、私は初めて見守ることも必要だと知りました。

 それから彼女はリハビリの成果もあってか、今では麻痺も無くなり元の生活を送れるほど回復しました。私は少しずつできることが増えていく彼女に喜びを感じながら、私なりに彼女を支えました。「自転車に乗れるようになった」と聞いた時は二人でハイタッチをして喜びました。彼女の回復が自分のことのように嬉しく思いました。今は麻痺があったことを忘れるくらい元気に過ごしている彼女を見ると彼女の傍にいることができて良かったと思います。

 彼女と出会ってから、たくさんのことを感じ、たくさんのことを学びました。初めて障害を持つ友達ができたことで、障害を持つ人に対する見方が変わりました。今振り返ると彼女と出会えて本当に良かったと思います。彼女とはこれからも気兼なく話せる親友として付き合っていこうと思います。