平成27年度「心の輪を広げる体験作文」作品集 小学生部門佳作

笑顔と感謝が第一歩

袋井市立袋井北小学校六年 鈴木 琴乃(静岡県)

 父は数年前、大病をわずらい聴覚に障害が残りました。

 長い闘病生活を終え、仕事に復帰しましたが、闘いはここからだったと父は言います。

 父は読しん術と補聴器で会話を理解しているため、面と向かっての会話はできますが、多人数での聞き取りが苦手で、聞きまちがいや聞き直しも多いです。

職場で障害の理解が得られず、心無い態度や言葉に悲しい思いを何度もしたそうです。

そんな父が最近明るくなりました。明るくなった父が私に言う言葉は、

「障害者になって分かったことは、障害者に無関心が一番悪いことだった。」と言います。私はなぜ無関心が悪いのか分かりませんでした。

「障害者に、障害を理由にいじわるすることが一番悪いことじゃないの?」と父に聞くと「確かにそれは悪いことだね。でも、いじめられたと感じるとき、最近感謝してしまうんだよ。」

「えっ!」私は父がおかしくなったと思いましたが父は

「どんな状態でも、障害者に関心をもって接してくれたなら、これからどうするのかを考えられる。でも、全くの無関心な人には対処方法がないんだよ。」

と言いながら、私の肩にポンと手を置きながら笑顔を見せ、

「意地悪されても、笑顔と感謝の気持ちでその人と接していると、良い方向に変わるよ。全部良い方向になるわけではないけど、少しずつ変わっていくのが分かるんだよ。」

と言いながら、私の肩にのせた手をもみもみしながら言いました。

「くすぐったい。やめてよ、お父さん!」

私は父の手をはらいのけながら思いました。

「父は私を、家族を大切にしてくれている。」

以前の父は仕事第一優先でした。

仕事を優先することで、よく母とけんかをしていて、いつもおこっていました。

しかし、今では仕事から早く帰ってきて、私達の習い事の送りむかえや、食事も家族で食べることがとても多くなり、家族が父を中心に明るくなりました。

父は言いました。

「お父さんに関心を持ってくれる家族が一番大切だよ。」

その時、私は以前本で読んだ、マザーテレサの一言を思い出しました。

「愛の反対は憎しみではなく無関心です。」

さらにマザーは、愛は相手の幸せを願い、不幸を望まないこと、と述べていました。

 私の中の障害者は「かわいそう」「大変」といった私自身を基本とした目線であり、それが「どうして?」などの差別的なものに変わる可能性があるこわい考え方と感じました。

 もっとおそろしいことは障害者を人として見ないこと。空気のように感じてしまうこと。数年前の父のように、自分のことで精一杯だと周囲に無関心になっていきます。

結果的に家族をこわしてしまう勢いでした。

今、多くの人々が、数年前の父のような状況だと感じ、何とかしなければと強く思います。まずは、マザーの言うように、身近な人に関心を持つこと。

そして関心を持って接してもらった人は、笑顔と感謝を伝えること。

そうすることで、父のように周囲の人々が少しずつ変わっていくことを実感できるはずです。

そして、健全者も障害者も、みんなが関心を持てたら、きっと世の中が変わり、笑顔と感謝の社会ができると信じています。

まず、私から実せんしていきます。

私の目指す笑顔と感謝の社会にするための第一歩として。