【中学生区分】 ◆佳作 綾田 暦(あやだ こよみ)

ふにゃふにゃの文字綾田 暦(吹田市立第一中学校3年 大阪府)

私の妹は自閉症だ。滑舌があまりよくなくこだわりも強い。妹は私と同じ小学校に通っていて、小学校の支援学級に所属していた。滑舌が悪くて上手に話せないことも、ずっと一緒に暮らしている内に聞き取ることにも慣れてくるので、妹が何を言いたいのか概ね理解することができた。周りの人たちも妹のことを温かく受け入れてくれていたので、自閉症の妹がいるからという理由で私の日常生活に支障が出ることはなかった。

私は中学生になり、妹は小学五年生に進級した。私の通う中学校は二つの小学校からの児童が進学してくるので中学生になって新しい友達とたくさん出会った。

ある違う小学校の友達と話しているときだった。会話が弾み、自分たちの家族の話になった。話しているうちにその友達にも私の妹と同い年の妹がいることが分かった。「○○の妹と私の妹は同じタイミングでこの中学校に入学するね。」友達にそう言われて私は少し戸惑った。その時にはもう、私の妹は私の通う中学校には進学せずに支援中学校に進学することが決まっていたからだ。「実は、私の妹はこの中学校には来ないの。支援中学校に行くの。」と続きを言うべきなのか私は迷った。なぜかそのとき、私の妹は障がいを持っているということがバレたくないという気持ちが湧いたからだ。結局、私は笑ってその話を流してしまった。

私の妹は障がいを持っている。このことは恥ずかしいことなのか。小学生の時はみんな妹のことを暗黙の了解のように分かっていてくれたが、中学生になって、新しい友達はこのことをどう思うのだろう。そう思うと私は少し怖くなった。それから私は妹のことを人前では話さないようにと意識するようになってしまった。しかし、妹と二人で遊んだり、おつかいに行ったりと私の妹への接し方は今までと変わらなかった。

そのまま月日は流れ、妹は小学校の卒業式を迎えた。妹と一緒に卒業式から帰ってきた母から一通の手紙を渡された。その手紙に書かれていたのは妹の書いたふにゃふにゃの文字だった。妹が書いたその手紙には、ほとんど最後の行まで母でもなく、父でもなく、私に宛てられた内容だった。そこには妹から私に向けての感謝の気持ちが一生懸命つづられていた。何度も書き直したのであろう、消された文字の跡がまだ残っていた。私は一文字一文字、妹が書いた字にじっくりと目を通していった。その手紙を読み終わったとき、私はなぜ人と違う個性があるからという理由だけで妹のことを恥ずかしいだなんて感じたのだろう、と思った。その瞬間、私の目から涙が溢れ出た。いろいろな感情が混ざった涙だった。

私の妹は人と違う個性を持っている。また、私の妹は人より何百倍も大きな優しさや人を思いやる気持ちを持っている。そんな妹を私は今、恥ずかしいだなんて一ミリも思っていない。私は妹のことをとても誇らしく思うし、そんな妹を持っている私はとても幸せ者だ。