【中学生区分】 ◆佳作 川﨑 由衣(かわさき ゆい)
兄ちゃんへ川﨑 由衣(高松市立高松第一中学校2年 香川県)
私は兄ちゃんが大好きです。私の衣服やエプロンにアイロンをかけてくれたり、洗濯もしてくれたりします。家事を手伝ってくれるおかげで家族のみんなが助かっており、感謝しています。家族だけではありません。誰に対しても優しく接する兄ちゃんは、私たち家族にとって自慢の兄です。兄ちゃんと過ごす時間はとても楽しく感じます。でも、私の兄ちゃんには、自閉症という障がいがあります。
「なんでみんなのお兄ちゃんと少しちがうんやろ?」私が小さい頃抱いていた小さな疑問です。一人でふらふら歩き回ったり、独り言が多かったり、当時の私にとって、兄は少々厄介で迷惑な存在でもありました。しかし、私の家族は、兄を通して障がいがある方と接する機会が多く、様々な出会いの中で、その考えは徐々に変わってきました。
Aさんは、相手の意見を落ち着いて聴き、自分の意見はハキハキと言う、とても爽やかな方です。今、彼女は仕事に就いており、自立しています。彼女は普段から周囲に気を配り、私にも優しく接してくれます。母から「あの子にはダウン症という障がいがあるんやで」という言葉を聞くまで、その事実を知りませんでした。
Bさんは、重度の自閉症と知的障がいがある女性です。彼女は一人で考えて行動することがほとんどできません。しかし、障がいのある人たちが参加するトランポリンの大会では、なんと賞を取ることができました。また、エレクトーン大会にも出場しています。Bさんのように、障がいがあっても、こんなに優れた技能をもつ人はたくさんいます。できることはいっぱいあるんです。
しかし、健常者の中には障がい者を見て「劣っている」とする、目には見えない風潮があるようです。AさんやBさんと接していると、それが不思議でなりません。健常者であっても走るのが苦手な人はいます。コミュニケーションを取るのが苦手な人だってたくさんいます。人には長所があって短所も存在します。人とは少し違う得意なことや不得意なこと、それらをひっくるめて個性と呼ぶならば、障がい者にとってのハンディーキャップもまた、個性に他ならないと思います。健常者の言う「劣っている」という目には見えない風潮は、「何もできない」という偏見を生み、例えば、就職時において採用されないといった差別をたくさんの人たちが受けています。私と兄ちゃんが歩む未来は、そうであってはならないんです。誰もが平等に、互いを尊敬しあい、明るく楽しく過ごせる、そんな社会を、兄ちゃんや私のなかまとともに創っていきたいと思います。
兄ちゃんは今日もまた、嫌な顔ひとつせずに、頼まれたことを「いいよ」とふたつ返事で引き受けて、せっせと家事をこなします。
兄ちゃんは褒め上手。知らない振りして、私のことをしっかり見ていてくれます。私が気付かない私の良さをしっかり指摘してくれます。いろいろなことも教えてくれます。私の知らない学校の事、私の知らないゲームの話。兄ちゃんは私の世界を広げてくれます。私とけんかをしても、私の方が悪いのに、兄ちゃんの方から「ごめん」と謝ってくれます。兄ちゃんは嘘がつけない人だから、私に「ここがダメ」って言うことがあって、時々私は「ムッ」とすることもあるけれど、その素直なところが兄ちゃんの一番の長所だと思っています。いつまでも変わらぬ優しい兄ちゃん。笑った顔が誰よりも素敵な兄ちゃん。心配性で、いつも私のことを気にかけてくれる優しい兄ちゃん。差別なんかに負けるなよ。私がついてるからね。
兄ちゃん、大スキだよ。