【中学生区分】 ◆佳作 山内 萌夏(やまうち もえな)
あの一言をかけるため山内 萌夏(静岡市立藁科中学校1年 静岡市)
それは、私がどんな人間なのか、一瞬でわからせてくれるような出来事だった。私は、家族と街に出かけていた。買い物はたのしくて、とてもワクワクしていた。
私は、家族と別れ、別行動になった。行きたかった店に行くのがとてもたのしみで、足取りも軽かった。その店までの道を歩いていると、私の前の方にいた一人のおばあさんに目がいった。車いすにのっている人だった。そのおばあさんを見つけた直後、おばあさんがのっている車いすが、道の段差にはまってしまった。おばあさんは、一人で不安そうに困っている様子だった。その時私は、学校で、障害について勉強していたことを思い出した。だから、一人ではできないことがあったり、困った時、頼れる人がいなくて、どうにもできないことがあったりするなど、車いすの大変さや、不安さは、分かっていた。「助けないといけない。」とそう思ったけれど、私の体は、そこを動こうとしなかった。「まず、声をかけたとして、そこからどうしたらいいんだろう。」とか「私一人で、何とかできることかな。」などと色々な事が頭をよぎる。回りに、家族も知人も頼れる人がいなくて、自分がやるしかないと思っていても、行動に移せなかった。自分はこんなでいいのかと、こわくなる。「きっと父や母ならすぐ助けられるんだろうな。」や「どうすればいいのかわからないし、知らないふりでもしちゃおうかな。」と、自分の汚いところが、どんどん見えてくる。つくづく自分が、いやになる。
私が、そんな事を考えていると、高校生くらいの男の人が、おばあさんにかけより、「大丈夫ですか?」と声をかけていた。たった一言だったけれど、とても優しくて、思いやりのこもった一言だった。車いすのおばあさんは、とても安心したような表情を、うかべていた。おばあさんは、あの一言に救われたのだ。
私は、あの人のようにできなかったこと、おばあさんよりも自分を優先しようとしたこと。とても後悔した。そんな自分がくやしかった。
行動とは、一つの動きで、人を喜ばせることも、悲しませることもできるものだ。あの時私は、人を悲しませるような行動をした。困っている人よりも、自分を優先し、思いやりのない、あってはならない行動をした。あの時のことを、私は一生忘れない。いや、忘れたくても、忘れられないのだろう。もう、これ以上、後悔しないように、私は私に出来ることを精一杯やろうとちかった。私のこの一つの行動で、一人でも多くの人を笑顔にするために。