【一般区分】 ◆優秀賞 上井 梨瑚(かみい りこ)

笑顔で頑張る上井 梨瑚(香川県)

青空に照りつく太陽。連続猛暑日が続く危険な暑さだが自然と笑みがこぼれた。“勝手にひとりぼっちにならない”そう自分に言い聞かせながら私は再び前を向き、歩き始めた。

「何をしても何か絶対失敗するんだよね、ほら失敗した」心の中でそう呟き自分を否定しているのは小学4年生の頃の私だ。発達障害の診断を受けたのは16歳、高校生の時だったが私の中にある違和感だったその“何か”は随分前から感じていた。頑張っても周りとずれているような不器用さ、勉強も出来ない。その“何か”はどうやら自分だけでなく周りも感じていたのだろう。出来ない事を笑われたりいじめにも遭った。

私は今まで“頑張る”ということを大切にしてきた。結果に繋がらなかったとしても別に良かった。何よりも頑張ることが好きだったから。「頑張る」ということは今の自分より、もっと上を目指し真剣に取り組まないといけない時に使う言葉だと思っている。その思いはもちろん今も変わらない。それは当時と変わらず「頑張る」という言葉を使うのが多いからかも知れないが、やはり何よりも頑張ることが好きだという気持ちが変わらないというのが一番の理由かも知れない。人と比べて焦ったり自分を追い込んでしまう所は気をつけなければいけないと思いつつも、何かに夢中になれる。頑張りたいと強く思える日々を過ごせる事が本当に嬉しくてありがたいことだと気付けた今がある。当時、笑われるという事は私にとって、ただ本当に悲しかった。そして、悔しかった。上手くいっている人が頑張っている人で上手くいかない人は頑張っていない人という方程式は絶対に成り立たない。頑張ってもどうにもならない事や上手くいかない事はある。それは誰にでもあることだと思う。失敗をしない人なんているはずがない。だからこそ人を応援できる人が増えて欲しい、そして私自身も応援したり支える事ができる存在になりたいと思っている。

私は高校生の頃から福祉センターにお世話になり、中学校の部活で始めた卓球をきっかけに沢山の人と出会い、そこからボランティアなど活動の幅が広がっていった。そんな中、ある出会いをきっかけに知的障がいをお持ちの方の支援がしたいと強く思うようになった。私自身を助けて頂いたからだ。支援と格好良く言ってはいるが明るくて笑顔が溢れるその輪にもう一度加わりたかったから。

そして知的障がい者施設で生活支援員として働き始めた。夢が叶い充実した日々ではあったが、仕事の量や早さなど自分が頑張れる以上頑張ってしまったのか、周りと比べて焦ったり自分を追い込みすぎたのか体調を崩し辞めてしまった。“もう頑張れない”退職から数ヶ月が経ち、頑張ることが好きだった私が本当にそう思った。

けれど、“勝手にひとりぼっちにならないで”と感じるほど温かく支えて下さる多くの方々が周りにいる事に気が付いた。そして再び立ち上がり新たな場所で知的障がいをお持ちの方の生活支援員として働き始めることができた事に本当に感謝をしている。今までと違い自分の障がいを伝えたことで「無理しないでね」「今日一日どうだった?困ったことなかった?」と声をかけて頂いたり相談しやすい環境や、しんどくなった時のための部屋を考えて頂けた。今まで自分の問題を一人で抱えながら働いていたが、今は負担が軽減されまっすぐ利用者さんをみることが出来ている。本当に温かい職場や、ここまで辿り着くことを支援して下さった方々のおかげで笑顔で頑張ることが出来ている。今は、笑顔が良いと言って頂ける事が本当に嬉しい。勝手にひとりぼっちになって無理をしていた過去の自分とは違う。

だから「笑顔で頑張る」この言葉を大切にしたいと思う。夢中になれる“何か”、頑張りたいと思える〝何か〟がある日々をまた過ごせるようになり嬉しさを噛みしめ生きている。この気持ちを忘れないでいたい。

私は以前、上手くいかなくて落ち込んでいた時やふとした瞬間、もしもの世界を空想することが多かった。頭の中で広がる“もしもの世界”

“もしも、もっと早く発達障害だと分かっていたら…”自分に適した環境で学ぶことが出来ていたのかな。そうしたら馬鹿にされて笑われたり、いじめられる事はなかったのかな。自分を責めたり、傷付ける事もなかったのかな。

“もしも、障害がなく健常者だったら…”普通に高校生活を楽しんで大学に進学していたのかな。沢山友達と遊んで社会人になってもメールやたまに会ったりして繋がっていたのかな。誰でも空想をする“もしもの世界”私はその世界に自分を受け止めてくれるそういった人の存在を無意識に求めていたのかも知れない。

人と違って出来ないことや上手くいかない事が私にはある。

けれど、人と違った物の見えかた、聞こえかた、感じかたで驚かれる事もある。凸凹で独特な私の世界。職場で小、中学校の同級生と再会し優しく教えてもらいながら一緒に働いている今がある。自分で周りとの間に壁を作っていたのではないかと思う程、勇気を出し一歩を踏み出してみたら、周りには優しさや温かさで溢れていた。だから私は頑張ることができるのだと、笑顔でいられるのだと伝えたい。大好きな仕事、大好きな職場。何一つ無駄な事なんてなかった。今日も明日も笑顔で皆と頑張りたい。