I 基本的な方針
(考え方)
21世紀に我が国が目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会とする必要がある。
共生社会においては、障害者は、社会の対等な構成員として人権を尊重され、自己選択と自己決定の下に社会のあらゆる活動に参加、参画するとともに、社会の一員としてその責任を分担する。
他方、障害者の社会への参加、参画を実質的なものとするためには、障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している諸要因を除去するとともに障害者が自らの能力を最大限発揮し自己実現できるよう支援することが求められる。人権が尊重され能力が発揮できる社会の実現を図ることは、少子高齢化の進展する我が国において、将来の活力を維持向上させる上でも重要である。
国民誰もが同等に参加、参画できる共生社会は、行政だけでなく企業、NPO等すべての社会構成員がその価値観を共有し、それぞれの役割と責任を自覚して主体的に取り組むことにより初めて実現できるものであり、国民一人一人の理解と協力を促進し、社会全体としてその具体化を着実に推進していくことが重要である。
この基本計画では、以上のような考え方に立って、政府が関係者の理解と協力の下に取り組むべき障害者施策の基本的方向を定めるものとする。
(横断的視点)
- 社会のバリアフリー化の推進
- 利用者本位の支援
- 障害の特性を踏まえた施策の展開
- 総合的かつ効果的な施策の推進
- 行政機関相互の緊密な連携
- 広域的かつ計画的観点からの施策の推進
- 施策体系の見直しの検討
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I 全体の目標
(考え方)
「障害者基本計画」は、国がみんなと力をあわせて、障害のある人のために何をしていくのかを示したものです。
21世紀の日本は、「共生社会」を目指します。
「共生社会」では、障害のある人もない人も、みんながお互のことを大切にします。
「共生社会」では、障害のある人もない人も、一人一人が違ことを大切にし、みんなが助あいます。
「共生社会」では、障害のある人は、社会の仲間の一人として大切にされます。障害のある人は、自分で選び、決ることができ、あらゆる社会の活動に加わることができます。
障害のある人の社会参加を難しくしているものをなくし、障害のある人がもっている力を出して、生きがいを見つけることができるように、みんなで支援します。
障害のある人をみんなで支援し、「共生社会」をつくるためには、みんなが「共生社会」が大切だと思って、協力することが必要です。
(障害のある人すべてに共通する考え方)
- 障害のある人も障害のない人もみんなが同じように暮すことができる社会にします。
- 障害のある人の気持ちになって、相談にのり、支援します。
- 障害のある人にもいろいろな人がいることをよく考えて、一人一人にあった支援をします。
- 障害のある人が必要とするさまざまなサービスを、うまく組みあわせて支援します。
- 国や市町村などで障害のある人のための仕事をしている人たちが、よく連絡をとって、協力します。
- 住んでいる場所や障害が違っても、同じようなサービスが受けられるように、よく考えます。
- 障害のある人が受けられるサービスを見直します。
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II 重点的に取り組むべき課題
- 活動し参加する力の向上
- 疾病、事故等の予防・防止と治療・医学的リハビリテーション
- 福祉用具等の研究開発とユニバーサルデザイン化の促進
- IT革命への対応
- 活動し参加する基盤の整備
- 自立生活のための地域基盤の整備
- 経済自立基盤の強化
- 精神障害者施策の総合的な取組
- アジア太平洋地域における域内協力の強化
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II これから特に力を入れる取組み
- 障害のある人が社会に参加するための力をつけます。
- 病気や事故を防ぎます。
- 日常生活品などを、障害のある人もない人も、みんなが使いやすいものにします。
- みんなが、パソコンやインターネットなどを自由に使えるようにします。
- 障害のある人が社会に参加するための環境づくりを進めます。
- 障害のある人が地域の一員として暮らすために、住宅や交通機関などを使いやすくします。身の回りで協力してくれる人を増やします。
- 障害のある人が自分で暮らすために必要なお金を得ることができるようにします。
- 精神障害のある人が、地域で暮らすためにいろいろな支援をします。
- 障害のある人が暮らしやすくなるように、アジアや太平洋の国々ともっと協力します。
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III 分野別施策の基本的方向
1.啓発・広報
(1)基本方針
障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会の理念の普及を図るとともに、障害及び障害者に関する国民理解を促進するため、幅広い国民の参加による啓発活動を強力に推進する。
(2)施策の基本的方向
- 啓発・広報活動の推進
- 福祉教育等の推進
- 公共サービス従事者に対する障害者理解の促進
- ボランティア活動の推進
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III いろいろな取組み
1.障害のある人のことを理解してもらうために
(1)これからの目標
障害のある人もない人も、お互いのことを大切にし、助けあう社会にするため、みんなに、障害のある人のことを、理解してもらうようにします。
(2)これからの取組み
- 国や都道府県、市区町村は、会社などと一緒になって、ポスターや広告などを使って、みんなに、障害のある人のことを、理解してもらうようにします。
- 学校の授業などで、みんなに、障害のある人のことを、理解してもらうようにします。
- 役所や病院、駅などで働く人に、障害のある人のことを、理解してもらうようにします。
- ボランティア活動を広めます。
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2.生活支援
(1)基本方針
利用者本位の考え方に立って、個人の多様なニーズに対応する生活支援体制の整備、サービスの量的・質的充実に努め、すべての障害者に対して豊かな地域生活の実現に向けた体制を確立する。
(2)施策の基本的方向
- 利用者本位の生活支援体制の整備
- 身近な相談支援体制の構築
- 権利擁護の推進
- 障害者団体や本人活動の支援
- 在宅サービス等の充実
- 在宅サービスの充実
- 住居の確保
- 自立及び社会参加の促進
- 精神障害者施策の充実
- 各種障害への対応
- 経済的自立の支援
- 施設サービスの再構築
- 施設等から地域生活への移行の推進
- 施設の在り方の見直し
- スポーツ、文化芸術活動の振興
- 福祉用具の研究開発・普及促進と利用支援
- サービスの質の向上
- 専門職種の養成・確保
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2.地域での生活を支えるために
(1)これからの目標
一人一人にあった地域での生活ができるように、サービスを利用する人の気持ちになって支援します。
障害のある人が必要なサービスを増やし、中身を良くするように努力します。
障害のある人がみんな、地域で豊かな生活を実現できるようにします。
(2)これからの取組み
- 地域で暮らすことができるように、サービスを利用する人の気持ちになって、支援します。
- 市区町村の窓口などで、身近に相談できる場所をつくっていきます。
- 知的障害や精神障害のために、自分で判断することが難しい人を支援するしくみ(成年後見制度、地域福祉権利擁護事業など)の利用をさらに広めていきます。
- 障害者団体や障害のある本人の活動を支援します。
- 地域で暮らすために必要なサービスを増やします。
- ホームヘルプサービスなど、必要なサービスを増やします。
- 障害のある人が住める場所をしっかりつくります。
- 障害のある人が地域で暮らし、いろいろな活動に加わっていくことができるよう支援します。
- 精神障害のある人や家族を、もっと支援します。
- いろいろな障害にあった支援を行います。
- 障害のある人が自分で暮らすために必要なお金を得ることができるようにします。
- 障害のある人が福祉施設で受けられるサービスを見直します。
- 地域で暮らす人を増やします。
- 福祉施設で受けられるサービスを見直します。
- 障害のある人が、いろいろなスポーツや文化、芸術活動をできるようにします。
- 使いやすい日常生活品などをつくり、広めます。
- サービスを良くするために、サービスの良いところと悪いところを考えます。
- 障害のある人のための仕事をする人を育て、増やします。
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3.生活環境
(1)基本方針
誰もが、快適で生活しやすいユニバーサルデザインに配慮した生活環境の整備を推進する。
このため、障害者等すべての人が安全に安心して生活し、社会参加できるよう、住宅、建築物、公共交通機関、歩行空間など生活空間のバリアフリー化を推進し、自宅から交通機関、まちなかまで連続したバリアフリー環境の整備を推進する。また、防災、防犯対策を推進する。
(2)施策の基本的方向
- 住宅、建築物のバリアフリー化の推進
- 公共交通機関、歩行空間等のバリアフリー化等の推進
- 安全な交通の確保
- 防災、防犯対策の推進
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3.生活環境を良くするために
(1)これからの目標
障害のある人もない人も、みんなが生活しやすいまちづくりを進めます。
(2)これからの取組み
- 障害のある人が使いやすい住宅をつくり、みんなが使う建物を利用しやすくします。
- 乗り物や道路などを利用しやすくします。
- 交通事故を防ぎ、みんなの安全を守ります。
- 災害や犯罪にあったときに、困らないようにします。
- 福祉施設の土砂対策などをすすめます。
- 住宅などの火事を防ぎます。
- 犯罪を防ぎます。
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4.教育・育成
(1)基本方針
障害のある子ども一人一人のニーズに応じてきめ細かな支援を行うために乳幼児期から学校卒業後まで一貫して計画的に教育や療育を行うとともに、学習障害、注意欠陥/多動性障害、自閉症などについて教育的支援を行うなど教育・療育に特別のニーズのある子どもについて適切に対応する。
(2)施策の基本的方向
- 一貫した相談支援体制の整備
- 専門機関の機能の充実と多様化
- 指導力の向上と研究の推進
- 社会的及び職業的自立の促進
- 施設のバリアフリー化の促進
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4.教育や子育てを支援するために
(1)これからの目標
一人一人にあったきめ細かな支援をするために、赤ん坊のときから学校を卒業するときまでを通して教育をします。
発達障害のある子ども(障害のために人とつきあうことや、勉強することが苦手な子ども)にも、必要な支援をします。
(2)これからの取組み
- 赤ん坊のときから学校を卒業するときまでを通して、障害のことを相談できるようにします。
- 障害のある子どもや親などの相談にのり、支援する仕事をする人がいる場所を増やします。
- 学校の先生などが、障害のある子どもや親などを支援する力をつけます。
- 障害のある子どもや親などを支援する方法を研究します。
- 学校を卒業した後、地域で暮らし、職場で働くことができるように、一人一人にあった支援をします。
- 学校の建物などを使いやすくします。
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5.雇用・就業
(1)基本方針
雇用・就業は、障害者の自立・社会参加のための重要な柱であり、障害者が能力を最大限発揮し、働くことによって社会に貢献できるよう、その特性を踏まえた条件の整備を図る。
(2)施策の基本的方向
- 障害者の雇用の場の拡大
- 障害者雇用率制度を柱とした施策の推進
- 障害者の能力・特性に応じた職域の拡大
- 障害者の働きやすい多様な雇用・就業形態の促進
- ITを活用した雇用の促進
- 障害者の雇用・就業を行う事業の活性化
- 障害者の創業・起業等の支援
- 総合的な支援施策の推進
- 保健福祉、教育との連携を重視した職業リハビリテーションの推進
- 雇用への移行を進める支援策の充実
- 障害者の職業能力開発の充実
- 雇用の場における障害者の人権の擁護
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5.働くことができるために
(1)これからの目標
障害のある人が、もっている力をうまく使って働くことができるようにします。
(2)これからの取組み
- 就職できる会社を増やします。
- 会社が障害のある人を雇うようにします。
- 一人一人のもっている力や障害の違いにあった仕事を増やします。
- 仕事をする場所や時間を工夫し、働きやすくします。
- パソコン、インターネットなどを使った仕事を増やします。
- 障害のある人をたくさん雇っている会社を応援します。
- 障害のある人が自分で会社をつくることを応援します。
- いろいろな支援を行います。
- 福祉の相談員や学校の先生と一緒になって支援します。
- 障害のある人が少しずつ仕事を覚えていくような支援を増やします。
- 障害のある人が働く力をつけるための支援を増やします。
- 障害を理由に、会社の中で差別されないようにします。
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6.保健・医療
(1)基本方針
障害者に対して、適切な保健サービス、医療、医学的リハビリテーション等を充実するとともに、障害の原因となる疾病等の予防・治療が可能なものについては、これらに対する保健・医療サービスの適切な提供を図る。
(2)施策の基本的方向
- 障害の原因となる疾病等の予防・治療
- 障害の原因となる疾病等の予防・早期発見
- 障害の原因となる疾病等の治療
- 正しい知識の普及等
- 障害に対する適切な保健・医療サービスの充実
- 障害の早期発見
- 障害に対する医療、医学的リハビリテーション
- 障害者に対する適切な保健サービス
- 保健・医療サービス等に関する適切な情報提供
- 精神保健・医療施策の推進
- 研究開発の推進
- 専門職種の養成・確保
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6.医療やリハビリテーションを受けることができるために
(1)これからの目標
医療やリハビリテーションを増やし、中身を良くします。病気やけがを防ぎ、治します。
(2)これからの取組み
- 病気やけがを防ぎ、治します。
- 病気やけがを防ぎ、早く見つけます。
- 病気やけがを治すようにします。
- 病気やけがのことを、みんなが正しく知るようにします。
- もっと良い医療やリハビリテーションにします。
- 障害のある人を支援するために、障害を早く見つけます。
- 医療やリハビリテーションのサービスを増やします。
- 障害のある人が、健康でいるためのサービスを、増やします。
- 健康づくりや医療のサービスのことを、みんなに知らせます。
- 精神障害のある人のための医療などのサービスを良くします。
- 悩みの相談をしやすくします。
- 病気を早く見つけて、早く治します。
- 病気の原因を見つけて防ぎ、治すための方法を考えます。
- 医療やリハビリテーションを仕事とする人を育て、増やします。
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7.情報・コミュニケーション
(1)基本方針
IT(情報通信技術)の活用により障害者の個々の能力を引き出し、自立・社会参加を支援するとともに、障害によりデジタル・ディバイドが生じないようにするための施策を積極的に推進するほか、障害特性に対応した情報提供の充実を図る。
(2)施策の基本的方向
- 情報バリアフリー化の推進
- 社会参加を支援する情報通信システムの開発・普及
- 情報提供の充実
- コミュニケーション支援体制の充実
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7.情報をうまく伝えるために
(1)これからの目標
みんなが、パソコンやインターネットなどを自由に使って、いろいろなことをできるようにします。
(2)これからの取組み
- パソコンやインターネットなどを使いやすくします。
- 地域のいろいろな活動に加わることができるように、パソコンやインターネットなどを利用します。
- いろいろな情報を手に入れることができるようにします。
- みんなが、コミュニケーション(伝えたいことを伝えること)ができるように、支援します。
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8.国際協力
(1)基本方針
「アジア太平洋障害者の十年」が2003(平成15)年から更に10年間延長されたこと等も踏まえ、障害者団体間の交流、政府や民間団体による各種協力の実施等によるアジア太平洋地域への協力関係の強化に努める。
(2)施策の基本的方向
- 国際協力等の推進
- 障害者問題に関する国際的な取組への参加
- 情報の提供・収集
- 障害者等の国際交流の支援
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8.国を越えてつながるために
(1)これからの目標
日本のまわりの国々の障害者団体などと交流し、協力できるようにします。
(2)これからの取組み
- 日本のまわりの国々と、もっと交流し、協力できるようにします。
- 障害のある人のことを、他の国の人と一緒に考えて、行動します。
- さまざまな国の障害のある人のことを調べて、みんなに知らせます。
- 国を越えて、障害のある人どうしが交流できるように、支援します。
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IV 推進体制等
- 重点施策実施計画
- 連携・協力の確保
- 計画の評価・管理
- 必要な法制的整備
- 調査研究、情報提供
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IV 「障害者基本計画」の実現にむけて
- 大事な取組みは、いつまでに実現するかをはっきり示して、実現にむけて進んでいるかを調べて、みんなに知らせます。
- 障害のある人の支援が進むように、国全体で協力して、都道府県や市区町村、障害者団体などとも協力します。
- 障害のある人のための支援が本当に役に立っているか、障害者団体や障害のある人の意見を聞いて、調べます。
- 障害のある人のために必要な法律を考えます。
- 障害のある人が何を必要としているか調べて、みんなに伝えます。
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