第1回中央障害者施策推進協議会

平成17年5月20日

内閣府政策統括官(共生社会政策担当)

○山本政策統括官 定刻になりましたので、ただいまより第1回中央障害者施策推進協議会を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、ご多忙中のところをお集まりをいただきまして、誠にありがとうございます。

それでは、協議会の開催に当たりまして、小泉内閣総理大臣からごあいさつをお願いいたします。

○小泉内閣総理大臣 皆様、ようこそ官邸にお越しいただきました。また、今回、委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。

障害者の皆さんの社会参加、だんだん最近はごく自然に受け入れられて、各方面で障害者の皆さんが活躍している姿を見て、障害者の方はもちろん、むしろ障害を持っていない人々も自分たちも頑張らなければいかんという、勇気づけられている場合が多いと思います。

私が初めて厚生大臣に就任したのは昭和63年の暮れでした。その翌年、平成元年になったんですね、今から17年前ですか。私は厚生大臣として、特に高齢者の福祉を考える場合、あまりにもわかりにくい英語を使いすぎる、もっとわかりやすい日本語を使ったらいいんじゃないかと言っていましたが、その一つがノーマライゼーションだったんです。

バリアフリーというのも、これもオーストラリアにグレートバリアリーフというのがあったから、バリアリーフと間違えるんじゃないかといった話をして、できるだけ多くの皆さんにわかりやすい言葉を使った方がいいということでありました。

バリアフリーは、最近では、あらゆる場面において一般的に使われるようになりました。しかし、ノーマライゼーションという言葉はまだわかりにくい。それよりも障害者の社会参加というのがわかりやすいのではないでしょうかね。

いずれにしても、これから障害者の皆さんに頑張って社会参加していただく。それが一般的な当然のことになってまいりましたけれども、まだまだ理解の足りない面もあると思います。そういうことを考えますと、障害者の立場に立った皆さんの考え方、あるいは支えているご家族の皆さんのご意見というものもよく聞いて、今後の障害者の施策に反映していくことが重要だと思います。

こうして皆さんに委員をお引き受けいただいたわけでありますので、この協議会を有効に活用していただきまして、今後の日本の障害者施策の充実に当てていきたいと思っておりますので、よろしくご協力、ご鞭撻いただければありがたいと思います。

今日はお忙しいところをおいでいただきまして、本当にありがとうございました。

○山本政策統括官 本日は細田内閣官房長官、江渡内閣府大臣政務官にご出席いただいておりますので、ご紹介いたします。

(官房長官、政務官紹介)

○山本政策統括官 私は内閣府政策統括官の山本でございます。恐縮でございますが、会長を選出いただくまでの間、この協議会の進行を務めさせていただきます。よろしくお願い申し上げます。

それでは、座って進めさせていただきます。

それでは、本日、ご参集をいただきました委員の皆様のご紹介をさせていただきます。本協議会の委員の皆様の名簿は資料1としてお配りをしております。ご参照いただきたいと思います。

それでは、この名簿に沿いまして五十音順に順次ご紹介をさせていただきます。

まず、財団法人全日本ろうあ連盟理事長、安藤豊喜委員でございます。

静岡県立大学国際関係学部教授、石川准委員でございます。

東京都重症身心障害児(者)を守る会副会長、岩城節子委員でございます。

国立社会保障・人口問題研究所長、京極高宣委員でございます。

三鷹市長、清原慶子委員でございます。

社団法人日本経済団体連合会常務理事、紀陸孝委員でございます。

特定非営利活動法人全国精神障害者団体連合会副理事長、小金沢正治委員でございます。

社会福祉法人日本身体障害者団体連合会会長、兒玉明委員でございます。

社会福祉法人日本盲人会連合会長、笹川吉彦委員でございます。

埼玉県立大学保健医療福祉学部教授、佐藤進委員でございます。

熊本県知事、潮谷義子委員でございます。

法政大学大学院政策科学研究科教授、諏訪康雄委員でございます。

社会福祉法人プロップ・ステーション理事長、竹中ナミ委員でございます。

日本労働組合総連合会総合政策局長、龍井葉二委員でございます。

社会福祉法人東京都知的障害者育成会本人部会副代表、館森久秋委員でございます。

早稲田大学大学院法務研究科教授、田山輝明委員でございます。

社団法人全国脊髄損傷者連合会理事長、妻屋明委員でございます。

アテネパラリンピック水泳日本代表、成田真由美委員はご都合で、本日ご欠席でございます。

翻訳家、ニキリンコ委員でございます。

日本大学理工学部教授、野村歡委員でございます。

国立精神・神経センター武蔵病院院長、樋口輝彦委員は、本日はご欠席でございます。

東京大学先端科学技術研究センター助教授、福島智委員も、本日はご欠席でございます。

日本障害者協議会常務理事、藤井克徳委員でございます。

社会福祉法人全国社会福祉協議会常務理事、松尾武昌委員でございます。

社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会常務理事、松友了委員でございます。

株式会社イトーヨーカ堂常務取締役常務執行役員、水越さくえ委員でございます。

財団法人全国精神障害者家族会連合会常務理事、三橋良子委員でございます。

東洋大学文学部教授、宮﨑英憲委員でございます。

福祉ジャーナリスト、村田幸子委員でございます。

全国心臓病者友の会会員、米田幸司委員でございます。

以上、30名の皆様に委員をお願いしております。どうぞよろしくお願いいたします。

それでは、本来でございますれば委員皆様からごあいさつ、ご発言をいただくところでございますけれども、30名の委員の皆様でございますので、大変恐縮でございますけれども、障害当事者として委員にご就任いただき、本日、ご出席の10名の方から一言ごあいさつ、ご発言をいただければと思います。順次、五十音順にお名前を申し上げますので、着席のままでお願いをいたします。

まず、それでは安藤委員、よろしくお願いいたします。

○安藤委員 私は全日本ろうあ連盟の安藤です。聴覚障害者を代表する立場で参加させていただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

今、国会で障害者自立支援法が審議されています。3障害の一元化や市町村実施など優れた施策の面もあるんですけれど、課題も多くあります。厚生労働省には一生懸命努力していただいていますけれど、なお踏み込めない面もたくさんあるのではないかと思うんです。その一つが低所得者の所得保障をどうするかという大きな問題です。

2つ目は、24時間介護や見守りを必要とする、親から自立できない重度の障害者の職等をどうするかという問題です。

3つ目が、障害者がもっと働ける社会を目指すことです。もっと働ける社会というのは障害者全体が大きな期待を持っていますけれど、非常に厳しい環境にあると思うんです。

4つ目が、私たちは手話を言語として社会に参加しています。今、こちらに手話通訳が2人いまして、皆さんたちの意見などを通訳を通して聞いているわけです。手話通訳なしに社会参加とか自立はできない、考えられないということです。手話通訳問題については、日本の福祉レベルにおける手話通訳制度は国際的に見ても大きな発展を遂げています。けれど、これからは、手話通訳事業だけでなく、手話そのものを言語的に認知していく時代になっているのではないかと思うんです。

それで、この障害者施策推進協議会ではこの4つの問題に踏み込んだ方策が出てきたらよいのではないかと私は期待しているのです。どうぞそのようなことの検討をお願いしてごあいさつといたします。

よろしくお願いいたします。

○山本政策統括官 どうもありがとうございました。次に石川委員、よろしくお願いいたします。

○石川委員 ご紹介、ありがとうございます。静岡県立大学の石川准と申します。30年ほど全盲の視覚障害者をやっております。

何でもそうですけれども、この障害分野も障害者を支えたり、あるいはエンパワーしたりする社会的な仕組みであるとか、思想であるとか、文化であるとか、そういったものは多くの人々の有名無名の努力の成果を引き継ぎながらここまで来ていると思います。駅伝で言えばタスキをつないで走ってきたということです。一人で永遠に走れる人は誰もいない。いつかは誰もがかならず止まる。だから誰かが止まればまた誰かがタスキを受け継いで走っていくということではないかと思います。そう考えるとき、「あなたは走っていない、歩いてさえいない」というふうに言われているような気になることがあります。といいますのは、なすべきことが障害分野にもあまりにもたくさんあって、その中で私はIT分野のバリアフリーに特化して仕事をしてきました。具体的には特に視覚障害者の情報へのアクセスを高めるためのコンピュータとかインターネットに関連した開発をやっています。自分がやりたいこと、好きなことであり、かつ得意な分野で貢献したいと考えてやってきました。それだけにやってこなかったことがとても多いのです。

今日、お集まりの皆さんは、多くの方が団体の会長であるとか、理事であるとか、リーダーシップを持っていらっしゃる方がほとんどだと思います。しかし、私は小学校のときから学級委員をやったこともないという、個人プレー中心の人間だったんです。しかし、最近、障害学会の会長なるものを初めてやらせていただくようになりました。

また、今年の4月から私が勤務している大学で情報センター長というのをやることになりました。2つも長なるものをやることになったのは、私の人生においては初めての経験です。願わくは、これからも、私にできることで、かつ好きな場所で走らせていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○山本政策統括官 ありがとうございました。次に小金沢委員、よろしくお願いいたします。

○小金沢委員 精神障害者になって、23歳からですから約33年たちます。活動を始めて16年たちますが、障害者基本法によって精神障害者も他障害者と一緒と言われたにもかかわらず、いまだに法定雇用に入っていない。今国会で入るといううわさを聞いておりますけれども、そういうふうに障害者の間でも差別を受け続けてきたという歴史がございます。230万とも250万とも言われる精神障害者が、一人の生活者として、一人の市民として生きていくことも許され、また市民から尊敬されるというような夢を私は見ながら、この16年間活動を続けてまいりました。

そういった面で今回の推進協議会が我々精神障害者を含めて、オール障害者の皆さんの、当事者の方たちのために少しでもなるように、精一杯頑張っていきたいと思っております。

それともう1点は、やはり精神障害のみ言わせていただければ、生活保障という視点、観点が非常に薄い。経済的な低所得、もしくは所得がなくて年金だけというような仲間が多くいます。生活保護受給者でいちばん多いのは精神障害者だというデータもあります。そういった面で少しでも人間らしい生き方をできるように。私自身は福祉のセンターで働いておりますけれども稀です。そういった面でこの協議会が実りのあるものになっていただきたいという熱い思いを持ちまして参加させていただきました。ひとつよろしくお願いいたします。

○山本政策統括官 ありがとうございました。兒玉委員、お願いいたします。

○兒玉委員 日本身体障害者団体連合会の会長をしております兒玉でございます。

今、総理がおっしゃいましたように、バリアフリーという言葉が本当にまちの中にはあふれております。鉄道駅へ行きますとエスカレーター、エレベーター、またバスなども低床のバスが走って、私ども身体障害者にとりましては本当にいい、便利な世の中になりました。

しかし、私は思うんでございますが、いわゆる「心のバリアフリー」はまだまだ浸透しておりません。優先席でも席を身体の不自由な方などに譲り合うことがなかったり致します。

どうかひとつ総理、こうした「心のバリアフリー化」へも、力を入れていただきたいと存じます。ぜひ私どもの団体のお願いでございます。よろしくお願いします。

○山本政策統括官 ありがとうございました。笹川委員、お願いいたします。

○笹川委員 日本盲人会連合の会長の笹川と申します。実は私どもの団体、一昨日から今日の正午まで山口県下関市におきまして、第58回の全国盲人福祉大会というものを開催いたしました。全国から約2,000人ほどが参加をいたしました。

3日間を通じて論議の中心になりましたのは、今国会で審議されております障害者自立支援法の中身でございます。いろいろな経過からしまして、私ども障害者自身が法律の内容を十分に理解していない。また、いろいろ疑問もあり、問題点もある。我々の将来を決定づけると言ってもいいほど重みのある法律であります。そういう意味からすれば十分審議をしていただいて、本当に障害者がそれぞれの地域で生きられる、そういう内容にしていただきたいと願っております。

また、今、緊急の課題として私どもが大変大きな問題としておりますのが、日本とタイとの自由貿易協定の中で、タイで行われておりますスパという、いわば療術的な治療あるいは疲労回復等の行為でございますが、これがどうも日本に参入されるのではないかという問題でございます。

ご承知のとおり視覚障害者の多くは日本でマッサージをして自立しております。それに類似した行為が導入されますと、たちまち視覚障害者の生活を圧迫する結果になる。また、法的に言いましても違法性のあるものであります。

私たちは自立して生活をし、社会参加をしたい、これが最大の願いであります。そういう意味から働く場が少しでも広がるよう、そして一人でも多くの者が働ける、そういう環境をつくることを願っておりますので、こうした問題につきましては政府も真剣に取り組んでいただいて、少なくとも今、自立している視覚障害者が自立できなくなるようなことのないよう、十分ご検討をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○山本政策統括官 ありがとうございました。館森委員、お願いいたします。

○館森委員 東京都育成会本人部会の館森でございます。本人活動を始めてから10年過ぎました。全日本育成会の全国大会、本人決議文をつくりました。私たちに係わることは私たちを交えて決めてほしい。今は全日本育成会の国際活動委員をしています。

障害者基本計画を誰にでもわかりやすくつくっていただきたい。ニュージーランドではすでに本人にわかるような文章ができています。やはり誰にでもわかるように、誰もが見て理解できるようなものをよろしくお願いいたします。以上です。

○山本政策統括官 ありがとうございました。妻屋委員、お願いいたします。

○妻屋委員 全国脊髄損傷者連合会は1959年に神奈川県の箱根療養所の中で全国組織の患者団体として発足したわけでありますけれども、私たちはほぼ全員が車いすを使用しているものですから、入院している病院から、あるいは療養所から社会に出るためには、まず車いすで社会に出られるような環境が必要だということで運動が始まったわけでありますが、その当時は車いすで病院から一歩も出られないような状況でした。そのことを逆の活力としてこれまで活動を続けてきたわけですけれども、今ではほぼどこへでも行けるような状況になりました。まだまだすべてではありませんけれども、主だったところはかなり車いすでも行けるようになりました。これも私たちの力、あるいは国の政策のおかげだと考えております。

どんなに重い障害があっても、それぞれの地域で自立して普通に暮らせる社会を目指している私たちは、社会の環境がいろいろ整えられれば、車いすであっても細かいところで言うと町内会の役員もできますし、大きいところで言うと会社の経営もできます。四肢マヒ者であっても経営者になることができるわけですね。そういった方が今全国にたくさんいらっしゃいます。そういった方々を私たちは支援する活動をしているところであります。私たちは、社会環境さえ整えば車椅子使用者であっても十分社会に貢献できるものと、そういう基本的な考えをもとに現在も活動を続けているわけです。どうぞよろしくお願いいたします。

○山本政策統括官 ありがとうございました。続いてニキ委員、お願いいたします。

○ニキ委員 さっきフラッシュがパチパチしていたので、ちょっと今上手にしゃべれなくなっていますが、ご辛抱ください。

広汎性発達障害の一種で、広い意味での自閉症の一種とも言われているアスペルガー症候群の本人です。もちろん生まれつきの障害なわけですが、「何でもない」と言われながら育って、診断がついたのは30歳を超えてからでした。かつては自閉症と言えば知的障害が必ず重なっているものと思われていた時期もありましたし、重複していない人がいることが知られるようになってきてからも、知的障害が重複していれば、それを根拠に援助を受けることはできるけれども、自閉そのものは援助の根拠にはならないという状態が長く続いてまいりました。

最近になってようやく公式に障害として認められたといいますか、私などは、法律の上ではこの間まで健常者だったという言い方もできるかもしれません。つまり、もともと足りないリソースを取り合う新参者として新たに現れる格好になってしまいました。

そんな段階ですが、子どもたちはともかくとして、診断の遅れた私たちの場合、これまで人に助けてもらうことをお願いした経験が浅いものですから、まず何を頼んでいいか、何をどうしてもらえば楽になるのか、役に立つのかも、実はまだ経験不足でよくわかっていないということもあります。何か頼もうと思っても、何をしてもらえば良い状態になるか、見えていない人もたくさんいる段階だと思います。

中には、困難を自覚する力が弱いという障害特性を持つ人たちもいます。全員じゃないですけど、「何か困ったなという気がつく力」の部分に遅れを抱えている人の場合は、自分の力を過信して、できると思って玉砕して、かえって失敗を大きくしてしまうことになります。そういう人もいますので、そういう人の場合はちょっと、本人の申告を待っていることが本当にベストなのだろうかというようなことも考えていたりします。

あるいは、小さいうちに周りの人が「ちょっとどうかな」と思っても、何しろはっきり目で見てわかるものではないので、親御さんであるとか、親戚の方であるとか、おじいさん、おばあさんであるとか、そういう方がつい「何でもない」と思いたいという心理が働くこともあります。でもそれは「何でもない、この子はどうもない、普通だ」というのは、その方がいいと思っている、普通である方がいいと思っているあらわれなんですね。だから、愛情の表現として、あるいはよそのお子さんのことであればお世辞、お愛想の一種として、つまり褒め、励ますつもりで「何でもないわよ、気にしすぎよ」とか言いたくなる力が働いてしまいます。つまり、よかれと思ってすることが仇になってしまうこともあったり、なかなかパラドキシカルな面の多い障害、そういう状況が起こりやすい種類の障害だと知っていただけたらいいと思います。

あと、何かやっぱり自分一人の力ではうまくいかないなと自覚することができて、何かいろいろな手立てを考えようとするなり、何か道具を使ってみるとか、人に相談してみるとか、手伝ってもらうとか、そういうことをやるにしても、なかなか参考にできる前例が少なかったり見つけにくかったりと、手探りのことが多くなります。

援助と成果が1対1対応しない場面もあります。できることがいつもできるとは限らないとか、できないことがいつもできないとは限らないとか。

今、私はだんだん調子が出てきて、普通に日本語が出てくるようになりましたけれども、最初つっかえてしゃべり出せなかったのは、別に口がどうとか、のどがどうとかじゃなくて、先ほどのフラッシュで、ちょっとどこかスイッチが外れちゃって、しゃべるところのスイッチを探していたんです。

例えば、フラッシュでびっくりしたなどという、そういう目から入ってきたものなのに、声を出すところの調子を狂わせてしまうことがあるんですね。あるいは、私はバランス機能にそんなに問題はないはずで、竹馬も自転車もちゃんと乗れるんですが、それでもごく最近、近所に出かけるときに杖をついて歩くようになりました。歩行に困難がないのに杖をつくという発想はなかなか浮かばなかったんですが、たまたま札幌に引っ越して、凍結路面を歩くようになると、歩ける人でも氷に刺さるような杖をつくことがあるんですね。ストックのような、ピッケルのような感じでしょうか。それでたまたま凍結路面対策として持ち歩いてみたのですが、杖といったら普通、歩く力を助けるものだと思いますよね。ところが、私の場合は違う面に恩恵がありました。例えば、映画を見に行くと、映画が始まって間もないうちから映画の内容がわかるようになったんです。内容がわかるとどうしても話が面白くなるものだから、このごろ映画に行くことが多くなりました。

何が起きたかというと、おそらく、それまでは段差を目で見分けて歩くのにかなり緊張していたらしくて、でもそんなことには自分では気がついてなかったんですよね。見分けるのに苦労して疲れているもんだから、映画が始まっても登場人物がみんな同じ顔に見えちゃっていたんですが、杖をついて行くようになると、転ばないように気をつけることで疲れていないので、物語がわかるようになった。そういうふうに、あるところを楽にしたら、全然別のところの機能が上がったりすることがあります。でも普通は、「映画を見ても話がわからない」という問題があったとして、杖をついて変わるなんて思いつかないですよね。困っているのと違うところを嵩上げしたら、余力が出るから改善することはあるんですが。

もう1つ言えることがあります。たまたま路面が凍っているところに引っ越したから、杖をついてみた。それで、映画がわかりやすくなって初めて、「今までは映画がわかりにくかったのだ」と気がつくことができた。でもこれまでは、単に「映画なんてつまらない」と思っていたわけです。自分の理解力が弱いからだという結びつきが見えてなかったんです。このように、本当は困難のあらわれでありながら、本人が自分の障害と関係あるんじゃないかと結びつけることができていない、そういった一筋縄でいかないことがあるんですね。でもそういうことはあまり知られていないので、説明してもなかなか通じないんですよね。「エッ」とか言われてしまって。自分でも「エッ」とか思ったんだから、人はなおさらそうであろうと思うんですが。  そのような、単純に行かない現象が多いので、「これができないんですね、それならハイ、これですね」ってパターンにはまった考え方で援助しても、必ずしもうまくいくとは限らないことがあるんじゃないかと思います。そこは、とても柔軟な発想と、柔軟な発想を許す制度、柔軟な発想のできる枠組みがもしかしたらこの先大事になってくるのじゃないかなと、まだ手探りなんですけど、そんなことを考えています。

○山本政策統括官 ありがとうございました。藤井委員、お願いいたします。

○藤井委員 藤井です。今の話とも関係しますが、障害というのはよく言われますように環境との関係で重くもなれば軽くもなる。私は5年ほど前から全く目が見えませんけれども、こういう音声パソコンがあれば、ほとんど文字の入出力には不便を感じませんし、これで音を聞くことができる。でも、もしなかったらどうなっているのだろうという心配を感じます。

しかし、障害をとりまく最も大きな環境の1つは、やはり市民の意識だと思うのです。人の意識、先ほどの話にもありましたが、ここをどうしていくのか。まさにこのメンバーが知恵を出し合っていくことが大きな役割だと思うのです。

同時に、もっと社会の表舞台でこの問題を論じ合うことが重要です。まず隗より始めろではありませんけれども、政治の表舞台にもっと登場できないでしょうか。

かつて女性国会というのがありました。子供国会もありました。私は総理が在任期間中に、障害者国会という名称にするかどうかは別として、政治の表舞台で全閣僚がそろって語り合えるような、そういう場があればいいと思っております。

もう1点は、お金が大変無い中での今いろいろな動きの中で、行政の中での工夫がもっとできないかということです。つまり縦割り行政の弊害というのが多過ぎますね。総理の古巣である厚生省もせっかく労働省と統合したのだけれども、一向に統合効果が出てきにくい。つまり福祉と就労、福祉と雇用という、この連結がなかなか難しいのです。ですから、何も現金の補助ということを考えるだけではなく、この場というのは総理を中心にまさに12省庁超えての場であるわけですから、行政の中での環境を考えていくということができないだろうかと考えております。以上です。

○山本政策統括官 ありがとうございました。最後に米田委員、お願いいたします。

○米田委員 全国心臓病者友の会の米田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

私自身、実は心臓病で身体障害3級でございます。いつも言われるのですが、あなたのどこが障害者なのか、と。これが内部障害者の一番の特徴ではないかと思っています。

今回、私がこの委員会に参加させていただくときに、2つの視点で考えたいと思っています。一つは、自分自身が障害者として働いていること。そして、もう1つは、民間企業でずっと人事関係の業務を13年しておりますが、そういった雇う立場の考え方です。そういった2つの視点から考えたいと思っています。

当然、法定雇用というのは大切な問題なんですけど、障害者だから雇うということだけでなくて、やはり障害者が自らエンプロイアビリティ、こんなことを言うとまた小泉首相から横文字を使うなと怒られてしまいそうですけれど、そういった働く力を障害者自身が養っていく、そういった環境を私自身つくっていきたい。それに対して行政であり、企業であり、そしてNPO等々、社会全体で支えていく。そういった共通のプラットフォーム、基盤をつくっていく場、そういった議論をこの場でしていただけたらと思っています。

どうぞよろしくお願いいたします。

○山本政策統括官 ありがとうございました。まことに恐縮でございますが、小泉総理、所用のためここで退席をいたしますので、ご了承をお願いいたしたいと思います。

○小泉総理大臣 皆さん、いい意見をどうもありがとうございました。また今後ともよろしくお願いいたします。どうもお疲れさまです。(拍手)

○山本政策統括官 それでは、議事に入らせていただく前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。ごらんいただいていると思いますが、まず配席表、それから議事次第、委員の皆様方の名簿、障害者基本法、中央障害者施策推進協議会令、そしてこの後ご議論をしていただきますこの協議会の運営規則の案、以上を配布をさせていただいております。

このほかに参考資料としまして、障害者基本法の全文、障害者基本計画、重点施策実施5か年計画とその進捗状況、障害者白書、以上を配布をいたしております。

なお、それぞれ委員としての皆様の辞令は封筒に入れさせていただいております。

それでは、次に本協議会の会長を選出していただきたいと思います。中央障害者施策推進協議会令第2条におきまして、中央協議会に会長を置き、委員の互選により選任するという規定になっております。

委員の皆様方におきまして会長の選出をお願いしたいと存じますが、いかがでございましょうか。

どうぞ。

○兒玉委員 日身連の兒玉でございます。前回も計画策定の懇談会の座長をお願いしておりました京極先生にぜひお願いしたいと思いますので、ご推薦申し上げます。

○山本政策統括官 ただいま兒玉委員から京極委員を会長にというご提案がございましたが、いかがでございましょうか。

〔拍手〕

○山本政策統括官 ありがとうございます。ご賛同いただきましたので、京極委員に本協議会の会長をお願いしたいと存じます。

それでは、京極委員、恐縮でございますが会長席の方にお移りをいただきまして、今後の議事運営につきましては京極会長にお願いしたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

○京極会長 それでは、早速、議事を進めさせていただきますが、協議会令第2条第3項に会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員がその職務を代理するとされておりますので、会長の方で会長代理を指名させていただければと思います。

会長代理につきましては野村委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

それでは、私、恐縮でございますが簡単にあいさつをさせていただきます。

平成14年の12月に新しい障害者基本計画が閣議決定されまして、その準備を懇談会で行いましたが、そのとき座長をやらせていただきました。はからずも今回、また中央障害者施策推進協議会の会長という重責を担わせていただきますので、大変緊張しておりますけれども、皆様方のご協力を得て、よりよい共生社会の実現に向けて議論を進めていきたいと思っておりますので、ご協力方、よろしくお願いいたします。

野村委員、何か一言。

○野村委員 会長のご指名ですので謹んでお受けをしたいと思います。会長の代理ということは大変重責ですが、会長にはぜひ事故のないようにご尽力をいただきたいと思います。それだけでございます。

○京極会長 それでは、議事に入らせていただきます。初めにこの協議会の概要について、事務局からご説明をお願いいたします。

○依田参事官 内閣府の障害者施策担当参事官の依田でございます。本協議会の概要についてご説明いたします。お手元の資料2をごらんください。

本協議会の設置根拠となります障害者基本法でございますが、昨年6月に法律が改正され、第9条第4項において内閣総理大臣が障害者基本計画の案を策定する際に、関係行政機関の長に協議するととともに、中央障害者施策推進協議会の意見を聞くことが定められました。

第9項では計画の変更についても同様の手続きを定めております。

障害者基本計画は、「障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため」に策定される計画であります。お手元には参考資料2として、現行の障害者基本計画をお配りしております。

この計画は平成14年12月に閣議決定されたもので、平成15年度から24年度までの10年間を計画期間とし、本年度は3年目に当たります。このため、当面は計画の進捗状況などについてご報告をさせていただき、将来の計画の策定や改定に向けて種々ご議論をお願いしたいと考えております。

続きまして、資料3の中央障害者施策推進協議会令をごらんください。ポイントを絞ってご説明いたします。

第1条では、委員の任期は2年とし、再任できることを定めております。

第3条では、本協議会に専門の事項を調査させるため、必要があるときは専門委員を置くことができることとしております。

第4条では、会議の開催や議決には委員の過半数の出席が必要であるとしております。

第6条では、この政令に定めるもののほか、議事の手続き、その他協議会の運営に関し必要な事項は会長が協議会に諮って定めることとしております。以上でございます。

○京極会長 ありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、何かご質問がございましたら、お願いいたします。

いかがでしょうか。

質問がないようですので、それでは次にこの協議会の運営規則について事務局からご説明をお願いいたします。

○依田参事官 それでは、資料4の中央障害者施策推進協議会運営規則(案)をごらんください。先ほど説明しました協議会令第6条の規定に基づき、議事の手続きその他協議会の運営に関して必要な事項について、会長が協議会に諮って定めていただくものであります。

第1条では、協議会は会長が招集すること、招集する際にはあらかじめ日時、場所、議題を委員に通知すること、会長は会議の議長として議事を整理することを規定しております。

第2条では、会議は公開することとしております。従いまして、人数的な制約はございますが、通常は会議の傍聴が可能ということになります。ただし、「公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるとき、その他正当な理由があると認めるとき」には会議を非公開とすることができること、「会議における秩序の維持のため、傍聴人の退場を命ずるなど、必要な措置をとることができる」ことを併せて規定しております。

第3条は、議事録の作成及び議事録の公開についての規定であります。会議と同様に議事録も公開とした上で、「公平かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれが認められるとき、その他正当な理由があると認めるとき」は議事録の全部または一部を非公開とすることができること、その場合は非公開とした部分について議事要旨を作成して公開することを規定しております。

第4条では、この規則に定めるもののほか、協議会の運営に関し、必要な事項は会長が定めることとしております。以上でございます。よろしくご審議ください。

○京極会長 ありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、何かご質問がありましたら、お願いいたします。

原則公開ということで、前回と若干違うような感じもいたしますけれども、今の時代の流れですので。

どうでしょうか。

もし、ないようでございましたら、多少時間もありますので、自由に意見交換をしたいと思います。

委員30名でございます。今日休みの方を除いても相当の人数でございますので、1人1分しゃべっても30分になってしまいますので、私の方から特にこれから地方分権化ということで地方の役割は非常に大きいし、また行政の責任という点で県並びに市の代表の方がいらしていますので、一言まず発言いただいて、お時間がございましたら、またさらに皆様方からいただくということで。

じゃあ熊本県知事、そして三鷹市長、よろしくお願いいたします。

○潮谷委員 突然の指名でございますので、よくまとまらないかもしれませんけれども、平成15年度から始まりました支援費制度、これは利用者本位の理念のもとに始まったということで、大変意味合いが深かったと思います。しかし、今回の障害者自立支援法案、これは非常に大きな改革であるにもかかわらず、施行までの期間が短いという点でございます。

それから、2つ目は実施に当たって、まだ具体的な姿が見えていないという状況があります。そういった中で特に利用者、それから事業者、自治体共々に大きな不安を抱えているという、率直な姿を申し上げたいと思います。

それから、さらに障害者自立支援法案が私ども地方にとって過大な財政負担にならないように、あるいは事務負担が生じないようということをひたすらに願うものでございます。

ただ、この法案が私は当事者の皆さんたちにとって非常によりよいものとなるようにということで、ぜひ当事者、利用者の意見を十分くみ上げて尊重し、わかりやすく説明責任を果たしていくということが大変大事な観点ではないかと思います。

今、この会議について、情報公開の観点から原則公開とし、非公開の場合にも要点的なものを明確にお示しするということが言われましたが、ぜひ当事者の皆さんたちにとっても社会参加と自立という点でこの会がどのように進捗をしていくかということを明らかにしていくということは非常に大事だと思います。

ぜひ、これから先この会の議論が細部にわたって有効に法案の実りにつながっていくことを願うところでございます。以上です。

○京極会長 ありがとうございました。では、三鷹市長、お願いします。

○清原委員 三鷹市長の清原でございます。発言の機会をいただきまして、どうもありがとうございました。

本日、中央障害者施策推進協議会の第1回目に当たりまして、障害者当事者の皆様の大変実存に基づいた重いお話を伺いまして、私自身、自治体の長として、改めて地域社会の中で障害者の皆様とご一緒に共に生きる上で重要な条件整備を任されているという、その責任の重さを痛感いたしました。

先ほど熊本県の潮谷知事がおっしゃったことと重なりますが、そういう意味でまず第1に私たちが障害者施策を推進していく場合には、まず当事者の皆様の声を謙虚に聞き、そしてその上で障害種別を超えた連携と連帯の中での政策の立案と実行をしていくことが望ましいと思います。

本日、中央障害者施策推進協議会が発足したということは、まさにそうした当事者の立場を尊重し、そして障害種別を超えた連携、連帯の第一歩を踏み出すものではないか、このように私は受け止めております。

その上で自治体経営の観点からは、まさに潮谷知事と同意見でございまして、私たちの障害者施策がきちんとした財源の保障の中で遂行されますような、財政面での裏付けのある制度を提案していきたいし、それについては、国、県、市町村といった各団体の連携強化がさらに重要になってくると認識しております。

1つ例を申し上げますと、三鷹市の場合でもそうでございますけれども、多くの市町村は当事者の皆様との意見交換や交流の機会を増やしております。その中で私どもは、先ほどご発言の委員もおっしゃいましたけれども、やはり何よりも「物理的なバリアフリー」だけではなくて、「心のバリアフリー」を広げていくことが大事と考えまして、障害者当事者の方をメンバーとする「心のバリアフリー」の委員会をつくりまして、広報紙の連載記事等で問題提起をし、幅広く市民の皆様に「心のバリアフリー」の認識を広めさせていただいております。

また、実際に障害者施策を実行する際の事業化の主体に障害者当事者の方も含めたNPOにお願いするなど、作業所の支援をさせていただく他に、公の仕事にも障害者当事者の方に参加していただくような、そうした機会を増やしてきております。そうした自治体の活動にもご理解とご支援を国にはいただきまして、さらに「働く」ということを中核的にとらえた障害者の社会参加あるいは政治参加、教育参加ということについても、この中央障害者施策推進協議会が具体的な提案をできればと願っております。

突然のご指名でしたので、以上で私の意見とさせていただきます。ありがとうございました。

○京極会長 ありがとうございました。先ほど館森委員の方から障害者基本計画についても、やや役所言葉があって難しい。もっとわかりやすい表現はないかということで、これにつきましては内閣府、何かございましたら。

○山本政策統括官 先ほど館森委員から、今、会長からもご提案がございました。早速、ご提案を受けまして、今の基本計画、どなたにでも理解していただけるような、そういった普及本といいますかPR本といいますか、そういうものをぜひ作りたいと思います。館森委員にもご指導をいただきながら、関係省庁とも相談して、ぜひそういういいものを作りたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

○京極会長 大変残念ですけれども時間が来まして、最後に細田官房長官からごあいさつをいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○細田官房長官 内閣官房長官の細田博之でございます。本日は第1回の中央障害者施策推進協議会、こうしてたくさんの皆様方にお集まりいただきまして、大変お忙しいところをありがとうございます。

本日は、障害のある皆様方から直接、さまざまなご意見も含めてお話しいただいたわけでございます。皆様方は、同志の方々あるいは同じ障害にお悩みの方々の代表でもあられるわけでございます。私ども政府としても、そして先ほどお話になった都道府県あるいは市町村の代表の地方公共団体の方も、これからさまざまな施策を足らざるところは補い、また必要な施策を充実するということが必要でございます。そういったことにつきましても、社会経済全体での支援も当然必要でございます。

経済団体の方もお見えでございますし、研究者の方、大学の方もいらっしゃいますし、社会福祉関係の団体の方、そしてマスメディアの方々、それぞれのお立場でご協力をお願いしなければならない場面が非常に多いと思います。そして、社会全体の理解を深め、対応していくということが大変大事だと思いますので、今後とも、私どももこの障害者基本法の考え方に沿いながら、障害者の皆様方にとって、よりよき社会を実現していくために努力をいたすことをお誓い申し上げて、今後ともよろしくお願い申し上げたいと思います。

本日はまことにありがとうございました。

○京極会長 これをもちまして、第1回の協議会を終了させていただきます。

次回の開催は、これは10か年の計画でございますので、来年の1月を目途に事務局を通じて連絡させていただきます。本日はありがとうございました。

午後 6時35分 閉会