平成19年度を中心とした障害者施策の実施状況~20年版障害者白書から~
平成20年版 障害者白書について
今回の白書の特徴及び構成
○第1章・・・・平成19年度が、「障害者基本計画」(平成15~24年度)の中間年となることから、基本計画の前半における障害者施策の主な動向等について記述
○第2~5章・・・・「障害者基本計画」に定める8つの施策分野ごとに施策の概況について記述
第1章 障害者施策の総合的取組
第1節 障害者施策の動向
○ 平成19年度は、「障害者基本計画」(平成15~24年度)の中間年。「障害者基本計画」の前期5か年において、障害者施策は「共生社会」の実現に向けて着実に推進。
【法制度の改正等】
- 平成16年
- 障害者基本法の改正
・・・・障害を理由とする差別の禁止等 - 発達障害者支援法の制定
・・・・発達障害者に対する生活全般にわたる支援の促進等
- 障害者基本法の改正
- 平成17年
- 障害者雇用促進法の改正
・・・・精神障害者に対する雇用対策の強化等 - 障害者自立支援法の制定
・・・・障害者が地域で安心して暮らすことができるよう、障害福祉サービスを質・量ともに充実等
- 障害者雇用促進法の改正
- 平成18年
- 学校教育法等の改正
・・・・複数の障害に対応した教育を行うことのできる特別支援学校の制度化等 - 教育基本法の改正
・・・・教育の機会均等に係る規定に障害者の教育に係る支援を追加 - バリアフリー新法の制定
・・・・公共交通機関、道路、建築物等の一体的・総合的なバリアフリー化の促進等
- 学校教育法等の改正
【国連の動向】
- 平成18年
- 障害者権利条約(仮称。以下同じ)の採択
・・・・障害者の権利及び尊厳を保護し、及び促進するための包括的かつ総合的な国際条約
- 障害者権利条約(仮称。以下同じ)の採択
- 平成19年
- びわこプラスファイブの採択
・・・・「びわこミレニアムフレームワーク」に係る後期5年間の行動指針 - 障害者権利条約の署名
- びわこプラスファイブの採択
○ 「身体障害児・者実態調査」(平成18年)に基づく新たな障害者数の推計
総数 |
在宅者 |
施設入所者 |
|
---|---|---|---|
身体障害児・者 | 366万人 |
358万人 |
9万人 |
知的障害児・者 | 55万人 |
42万人 |
13万人 |
精神障害者 | 303万人 |
268万人 |
35万人 |
出典: 厚生労働省「身体障害児・者実態調査」(平成18年) 「知的障害児(者)基礎調査」(平成17年) 「社会福祉施設等調査」(平成17年)等(高齢者関係施設は除く) 「患者調査」(平成17年) |
第2節 障害者施策の推進体制
○ 平成19年5月及び12月に「障害者施策推進本部」(本部長:総理)を開催
- 新たな「重点施策実施5か年計画」に係る審議、同計画の決定
○ 「障害者施策推進本部」の下、「障害者施策推進課長会議」及び「課題別推進チーム」を開催
- 「課題別推進チーム」において、公務部門における障害者雇用の推進、障害者権利条約等について検討
○ 平成19年10月に「中央障害者施策推進協議会」を開催
- 新たな「重点施策実施5か年計画」の策定に係る取組状況等に関し審議(障害当事者等、延べ120の個人・団体から意見聴取を行い、8分野97項目の課題として取りまとめ、報告)
○ 平成20年3月に「バリアフリーに関する関係閣僚会議」を開催
- 「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進要綱」を決定
第3節 障害者基本計画、重点施策実施5か年計画の策定
○ 平成19年12月、「障害者施策推進本部」において新たな「重点施策実施5か年計画」を決定
「重点施策実施5か年計画」(H19.12.25障害者施策推進本部決定)の構成
(前文)
○障害者施策は、障害者基本計画及び現行重点施策実施5か年計画に基づき着実に推進
- 障害者基本法の改正
- 発達障害者支援法の制定
- 障害者雇用促進法の改正
- 障害者自立支援法の制定
- 学校教育法等の改正
- バリアフリー新法の制定
- 障害者権利条約の採択・署名
- びわこプラス5の採択
○今後とも、自立と共生の理念の下に、共生社会の実現に寄与するよう施策展開
- 地域での自立生活を基本に、障害の特性に応じ、障害者のライフサイクルの全段階を通じた総合的な利用者本位の支援
- 誰もが快適で利用しやすいユニバーサルデザインに配慮した生活環境の整備と、IT活用等による障害者への情報提供の充実等
- 障害者自立支援法の抜本的な見直しの検討とその結果を踏まえた本計画の必要な見直し
- 障害者権利条約の可能な限り早期の締結を目指しての必要な国内法令の整備
I 重点的に実施する施策及びその達成目標
(主なポイント)
○施策項目数8分野120項目(旧計画では60項目)
○数値目標数57項目(うち42項目は新規)(旧計画では34項目)
1 啓発・広報
○将来を担う若者に対する啓発広報の一層の推進等による障害者に関する国民理解の促進
2 生活支援
○障害者自立支援法の抜本的な見直しの検討及び利用者負担の見直し・事業者の経営基盤の強化
○ホームヘルプサービス等の障害福祉サービス等の計画的な整備
→ 新サービス体系に基づき9項目の新たな数値目標を設定
3 生活環境
○住宅、建築物、公共交通機関等のハード面及びバリアフリー教室等のソフト面に係るバリアフリー化の推進
→ 都市公園等に係る7項目の新たな数値目標を設定
4 教育・育成
○福祉、労働等の関係機関との連携による幼稚園から高校までを含めすべての学校における特別支援教育の体制整備
→ 個別の教育支援計画の策定等4項目の新たな数値目標を設定
5 雇用・就業
○障害者雇用率制度を柱とした障害者雇用の一層の促進
○授産施設等の工賃水準引上げによる福祉的就労の底上げの推進
○国等による福祉施設等の受注機会増大への取組
→ 一般就労への年間移行者数等19項目の新たな数値目標を設定
6 保健・医療
○脳の損傷による記憶障害等の高次脳機能障害の支援拠点機関の整備
→ 高次脳機能障害の支援拠点機関に係る数値目標を新たに設定
7 情報・コミュニケーション
○字幕番組・解説番組等の制作の促進
→ 字幕放送時間・解説放送時間に係る数値目標を新たに設定
8 国際協力
○障害者権利条約の可能な限り早期の締結を目指した必要な国内法令の整備
II 計画の推進方策
○新計画は、障害に係るニーズ、社会・経済状況、制度改正の際の見直し規定等を踏まえ、必要に応じ見直し
○毎年度、新計画の進ちょく状況を中央障害者施策推進協議会に報告
○障害を理由とした不当な差別的取扱い等に対する救済措置の整備
○毎年、都道府県との会議を開催するとともに、市町村に対し障害者計画に係る技術的協力を実施
第4節 地方障害者計画の策定状況
○ 平成16年の「障害者基本法」の改正において、平成19年4月から、市町村における障害者計画の策定が義務化
・平成20年3月末現在、計画策定市町村数: 1,736団体(全体の96.5%)
(注)都道府県・政令指定都市については、すべて策定済み。
国連 「長期的国家計画」 策定勧告 (昭和54年) |
障害者基本法成立 |
障害者基本法 改正 (平成16年) |
||
中央心身障害者対策 協議会意見具申 (昭和57年) |
||||
国 | 障害者対策に関する 長期計画 (昭58~平4) |
義務化 障害者対策に関する 新長期計画 (平5~平14) |
障害者基本計画 (平15~平24) |
国の「障害者基本計画」 の枠組み I 基本的な方針 II 重点的に取り組むべき課題 III 分野別施策の基本的方向 1 啓発・広報 2 生活支援 3 生活環境 4 教育・育成 5 雇用・就業 6 保健・医療 7 情報・コミュニケーション 8 国際協力 IV 推進体制等 |
都道府県 | 努力義務 | 義務化 都道府県障害者計画 (平成16年6月~) |
||
市町村 (含指定都市) |
努力義務 | 義務化 市町村障害者計画 (平成19年4月~) |
障害福祉サービス等に関する障害のある人の評価
~平成19年度障害者施策総合調査の結果(速報)から~
○障害のある人が社会活動を行う上で障壁(バリア)となっている課題を明確化するため、障害のある人を対象とした「障害者施策総合調査」を実施。
○平成19年度は、「生活支援」及び「保健・医療」分野について調査。
- 調査対象:5,124人(2,563人から回答)
- 調査期間:平成20年2月~3月
- 調査方法:郵送による回答
障害福祉サービス
○過去3か月間に障害福祉サービスを利用している人は50.2%、利用していない人は44.9%。利用している人の満足度は、「満足している」・「やや満足している」が62.2%、「不満である」・「やや不満である」が32.7%。(図表1)
図表1
○「満足」の理由については、「職員や介護者等の接し方が良い」が最も多い(図表2)。「不満」の理由については、「費用負担」、「サービス内容」、「サービス量」の項目が多い(図表3)。
図表2
図表3
(参考)
○サービスの質や量に関する3年前との比較では、「変わらない」が最も多い。(図表4(1)、(2))
図表4(1)
図表4(2)
○サービスを利用している人のうち、別のサービスを必要とした、又は利用量を増やしたいと思ったことがある人は、48.4%。
保健・医療サービス
○過去3か月間に保健・医療サービスを利用している人は49.6%、利用していない人は42.4%。利用している人の満足度は、「満足している」・「やや満足している」が67.9%、「不満である」・「やや不満である」が25.0%。(図表5)
図表5
○「満足」の理由については、「職員等の接し方が良い」、「費用負担」の項目が多い(図表6)。「不満」の理由については、「費用負担」の項目が最も多い(図表7)。
図表6
図表7
(参考)
※自立支援医療(育成医療)については、客体が少ないことから省略している。
○サービスの質や量に関する3年前との比較では、「変わらない」が最も多い。(図表8(1)、(2))
図表8(1)
図表8(2)
○サービスを利用している人のうち、別のサービスを必要とした、又は利用量を増やしたいと思ったことがある人は、26.9%。
第2章 相互の理解と交流
第1節 障害のある人に対する理解を深めるための啓発広報等
○ 将来を担う若者に対する啓発広報の一層の推進等による障害のある人に対する国民理解の促進
○ 「障害者週間」行事の積極的推進
- 「アジア太平洋障害者の十年(2003~2012年)中間年記念「障害者週間の集い」「障害者関係功労者(団体)」並びに全国の小中学生等から応募された「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」の内閣総理大臣表彰、記念シンポジウムの開催
- 「障害者週間連続セミナー」(障害者権利条約、身体障害者補助犬、精神障害のある人、知的障害のある人の雇用・地域活動等)の開催
- 「ユニバーサル・スポーツフェスタ2007」の開催ほか
○ バリアフリー化推進功労者表彰
第2節 我が国の国際的地位にふさわしい国際協力
○ 国際協力
- 草の根・人間の安全保障無償資金協力により、29か国、48件の障害者関連援助を、NGO・教育機関・地方公共団体等に対し実施。
○ 障害者権利条約
- 平成19年9月、我が国による署名。今後、可能な限り早期の締結を目指して必要な国内法令の整備を図る。
第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり
第1節 障害のある子どもの教育・育成に係る施策
○ 特別支援教育の推進を始めとする一貫した支援体制の整備
- 平成19年4月からの「学校教育法等の一部改正法」の施行
-盲・聾(ろう)・養護学校から「特別支援学校」へ
-特別支援学校による小中学校等への助言援助(「センター的機能」)
-小中学校等における特別支援教育の推進等 - 幼稚園から高等学校段階までの校内支援体制の整備
-校内委員会の設置、特別支援教育コーディネーターの指名(24年までに、公立幼稚園及び公立高等学校の70%において、
校内委員会の設置及び特別支援教育コーディネーターの指名)
-個別の教育支援計画の策定(24年までに、小・中学校の50%において策定)
○ 発達障害のある子どもへの支援
- 幼児期の支援方法等に係る「発達障害早期総合支援モデル事業」の実施
- 「高等学校における発達障害支援モデル事業」の実施
○ 特別支援学校における教育の充実
- 特別支援学校教諭免許状の保有率向上を図る。(24年までに、全都道府県において保有率向上を中期計画等に位置づけ)
- 障害のある生徒の「職業自立を推進するための実践研究事業」等を実施
○ 学校施設のバリアフリー化の促進
- 「特別支援学校施設整備指針」の策定(平成19年7月)等
第2節 雇用・就労の促進施策
○ 障害のある人の雇用の場の拡大
- 『「福祉から雇用へ」推進5か年計画』の策定、推進
- 「障害者の雇用の促進等に関する法律」改正法案の第169回国会提出
-障害者雇用納付金制度の中小企業への適用範囲の拡大
-短時間労働者を雇用義務の対象化 - 国の行政機関において、知的障害者等の「チャレンジ雇用」を率先して実施(20年度には全府省で実施)
- 企業の障害者施設等に対する発注額を増加させた場合の税制上の特例措置を創設
○ 総合的な支援施策の推進
- ハローワークを中心に福祉・教育等の関係機関が連携した「チーム支援」
- 障害者就業・生活支援センター等による就業面・生活面一体の支援(23年までに、全障害保健福祉圏域に設置)
- 「工賃倍増5か年計画」の策定、推進
- 福祉施設等における官公需による仕事の確保に向けた取組の推進
第4章 日々の暮らしの基盤づくり
第1節生活安定のための施策
○ 「障害者自立支援法」(平成18年4月一部施行、10月全面施行)
- 障害福祉サービスの一元化(3障害の一元化、実施主体の市町村への一元化)
- 利用者本位のサービス体系への再編
- 費用をみんなで負担し合う仕組みの強化
- 就労支援の抜本的強化
- 計画的なサービス基盤整備の推進
- 支給決定の透明化・明確化
(平成18年12月)
○ 「障害者自立支援法円滑施行特別対策」(平成18~20年度の3年間、総額1,200億円)
- 通所・在宅・障害児世帯を中心とした利用者負担の軽減・・・・1割負担上限額の引下げ等
- 通所事業者を中心とした事業者に対する激変緩和措置・・・・従前額保障(90%)等
- 小規模作業所への助成など新法への移行等のための緊急的な経過措置
上記「特別対策」に加え、利用者負担の更なる軽減、
事業者の経営基盤の強化等の緊急措置を実施
(平成19年12月)
○ 「障害者自立支援法の抜本的な見直しに向けた緊急措置」(平成20年度、総額310億円(満年度ベース))
- 利用者負担の更なる軽減等(20年7月実施)・・・居宅・通所サービスに係る負担上限額を更に軽減等
- 事業者の経営基盤の強化(20年4月実施)・・・通所サービスに係る単価の引上げ等
- グループホーム等の整備促進(20年度実施)
○ 「身体障害者補助犬法の改正」
- 都道府県等における苦情窓口の設置
- 一定規模以上の事業所等において、勤務する身体障害者の補助犬使用の拒否の禁止(20年10月~)
○ 発達障害者支援の推進
- 「発達障害者支援法」など、発達障害者支援の推進に向けた取組
- 発達障害に関する情報提供等を行う「発達障害情報センター」の開設
第2節 保健・医療施策
○ 高次脳機能障害のある人への対応
- 都道府県への支援拠点機関の設置
○ 心の健康づくり
- 「自殺総合対策大綱」の決定等
第5章 住みよい環境の基盤づくり
第1節 障害のある人の住みよいまちづくりのための施策
○ 住宅のバリアフリー化の推進
- 「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律」を踏まえ、公的賃貸住宅の供給及び民間賃貸住宅の活用等を実施。
- 高齢者・障害者等が居住する住宅において一定のバリアフリー改修工事を行った場合の税制上の特例措置を創設。
○ 「バリアフリー新法」に基づくバリアフリー環境の整備推進
- 旅客施設(鉄軌道駅、バスターミナル、旅客船ターミナル、航空機ターミナル)
- 車両等(鉄軌道車両、乗合バス車両、タクシー車両、旅客船、航空機)
- 道路
- 都市公園(園路・広場、駐車場、トイレ)
- 路外駐車場
- 建築物
- 信号機等
※平成19年度には、旅客施設、車両等、都市公園等に関するバリアフリー整備ガイドラインを策定。
○ 安全な交通の確保
- 「道路交通法の一部改正」
聴覚に障害のある人の運転免許に関する規定の整備
聴覚障害者標識
○ 災害時要援護者対策等の推進
- 市町村における「避難支援プランの全体計画」の策定の促進等
第2節 障害のある人の情報・コミュニケーションを確保するための施策
○ 情報バリアフリー化の推進
- 障害者ITサポートセンター等
○ 社会参加を支援する情報通信システムの開発普及
- 「テレワーク人口倍増アクションプラン」の策定
○ 情報提供の充実
- 聴覚障害者情報提供施設の整備(全都道府県での設置を目指し、整備を促進)
- 字幕放送の推進等(29年度までに、NHK総合及び在京キー5局等において、字幕付与可能なすべての放送番組※に字幕を付与等)
※複数人が同時に会話を行う生放送番組など技術的に字幕を付すことができない放送番組等を除く7時から24時までの全放送番組
○ コミュニケーション支援体制の充実