第5回中央障害者施策推進協議会 議事録

日時
平成20年11月26日 
出席委員
京極会長、安藤委員、岩城委員、かわさきいいん、川本委員、小金澤委員、
笹川委員、佐藤委員、副島委員、竹中委員、館森委員、田山委員
妻屋委員、ニキ委員、野村委員、樋口委員、福島委員、藤井委員
松尾委員、水越委員、みやざきいいん、村田委員、山本委員、米田委員

内閣府政策統括官(共生社会政策担当)


(報道関係者入室)

(麻生内閣総理大臣入室)

○京極会長 定刻でございますので、これより第5回中央障害者施策推進協議会を開催いたします。

まず、新しく委員に就任された方を御紹介いたします。

社団法人日本経済団体連合会常務理事の川本委員でございます。

本日は、石川委員、清原委員、潮谷委員、とくもいいん成田委員が御欠席されております。

また、本日は、麻生内閣総理大臣、河村内閣官房長官、内閣府からは、野田内閣府特命担当大臣、増原副大臣及び並木大臣政務官に御出席いただいております。

それでは、協議会の開催に当たりまして、麻生内閣総理大臣からごあいさつをお願いいたします。

○麻生内閣総理大臣 それでは、委員の皆様には、お忙しい中にもかかわらずお集まりをいただき、誠にありがとうございました。

私は、障害のある方、ない方、いわゆる健常者にとっても、今の日本というのは、強く明るい日本にしていかなければならないものと考えております。したがって、そのためには、障害のある・なしにかかわらず、国民のすべてが、お互いに認め合い、尊重し合い、ともに生きていける社会、「共生社会」の実現が必要であろうと考えております。

その実現のため、障害のある人への生活支援、また、生活環境のバリアフリー化といった重点施策実施5か年計画などに、政府としては取り組んでいるところです。

この会議が、障害者施策の牽引役として、引っ張っていく役として重要な役割を果たしていかれることを期待しております。

担当、野田大臣ですけれども、今日は、私にとりましては総理大臣としては初めてということもありますので、今日この会合に参加させていただいた次第です。よろしくお願い申し上げます。

○京極会長 どうもありがとうございました。明るい社会にとって、障害者福祉の意義についてもお言葉をいただきましてありがとうございました。

麻生内閣総理大臣及び河村官房長官は、後ほど、退席されますので、本日は、障害当事者またはその家族として御活動されている委員の方々に、まず御発言いただいた上で、議事に入りたいと思います。

時間の関係上、大変恐縮ですけれども簡潔にお願いいたします。できれば全員にということで、1分以内でいただければ幸いと存じます。

順次、五十音順にお名前を申し上げますので、着席のままでお願いいたします。

まず、安藤委員、よろしくお願いいたします。

○安藤委員 こんにちは。私は、全日本ろうあ連盟理事長の安藤豊喜です。聴覚障害の立場から出席させていただいております。

私どもは今、2つのお願いを持っております。1つは、今、社会保障審議会障害者部会で障害者自立支援法の見直しが論議されております。12月には決着されると思われますが、全国の聴覚障害者の願いに沿った見直しが実現することを願っております。

2つ目は、国連の障害者権利条約ですが、批准の問題が出ております。批准については、権利条約の理念に沿った国内法の見直しを実現し、早期の批准をお願いしたいと思っております。

この2つについての御援助を心からお願い申し上げます。

○京極会長 ありがとうございました。

それでは、岩城委員、よろしくお願いいたします。

○岩城委員 失礼いたしました。重症心身障害児(者)を守る会の岩城でございます。

今年は、障害児支援の見直しに関する検討会、また関係します部課長会議等におきまして、私どもの意見を非常に広く、深く御検討いただきましたことを心より感謝申し上げます。また、更には、それらが私どもの期待します方向につながればと思っております。

また、もう一点は、産科医療保障制度がこのたびできました。これに関しましても、ほとんどの重い障害の子どもたちはこの範疇に入っております。まず一つの取りかかりといたしまして、決して脳性麻痺だけではないんですが、これからの親たちに大変大きな励みになるのではないかと思っております。

あともう一つ、やはり、重い子どもたちに取りまして、現在、施設のベッドが大変不足しております。それから、それに伴う看護師、支援員等の不足で、在宅者は思うように短期入所等が利用できておりません。在宅にとりましても入所にとりましても、医療的ケアを伴うために、どうしても施設というものはなくてはならないものとなっております。どうぞよろしくお願いいたします。

○京極会長 ありがとうございました。

それでは、かわさきいいんよろしくお願いいたします。

かわさきいいん 精神障害者の家族会でございます。家族の立場で少しお願いさせていただきます。

現在、障害者を支えておりますのは、ほとんどが家族であるということ。特に精神障害者に関しましては、在宅者の7割強を、家族が精神的にも肉体的にも支えているのが現状でございます。その家族に対する支援をお願いしたいと思います。

今の総理のお話のように、明るい世界をつくるためには、家族が元気で、そして元気に障害者を支えることによって明るい共生社会が実現できるのではないかと、私は常日頃考えております。どうぞ、現状の国策にはございませんが、障害者を支える家族のために、支援策の創設をお願いしたいことを申し上げさせていただきます。

以上でございます。

○京極会長 ありがとうございました。

小金澤委員、よろしくお願いいたします。

○小金澤委員 全国精神障害者団体連合会の小金澤です。

精神障害に関して言いますと、我々は、ひとりぼっちの障害者をなくそうというのがスローガンです。というのは、その裏に何があるかといいますと、偏見、差別です。偏見、差別。この偏見、差別は、すごい根っこになっていて、今般、自立支援法ができましたけれども、それにもうたわれているにもかかわらず少しも変わっておりません。10年前、20年前と変わったと言えるような部分はありません。これを何とか直してもらいたい、直していきたいという意味合いで、東京も全国も、「ひとりぼっちの精神障害者をなくそう」というスローガンでやってきております。

具体的に、自立支援法の3年目の見直しを当事者側に立って見直しをしてほしいという点と、もう一つ、権利条約に関しては、速やかにではなくて、逆に、じっくり時間をかけて当事者の側に立ったものにしていただきたいと考えております。

以上です。

○京極会長 ありがとうございました。

笹川委員、よろしくお願いいたします。

○笹川委員 日本盲人会連合の会長の笹川と申します。

総理、大変お疲れの中、御出席いただきまして本当にありがとうございます。私ども本当に心強く感じております。

思いがけない金融経済、世界的な恐慌の時代が参りまして、こういった中で一番影響を受けますのは、我々障害者でございます。これからの生活がどうなるか、大変不安を抱いております。

そういう中で、障害者自立支援法、更には障害者基本法という、私どもにとりましては大変重要なこの2つの法律が今、見直し作業が進められております。私たちは、決して甘える気持ちは全然ありません。働ける者はみんな働く、そして国民の一人としてそれぞれの地域で生き生きと生活できる。先ほど総理がおっしゃいました、共生社会の中で一人の人間として生き抜いていきたいということを常に願っております。

そういう我々の立場を具体化するのは、やはりこの2つの法律だと思います。権利条約がもう既に施行されている現状でございます。是非ひとつ総理の力で、私どもが本当に満足できる人生を終えることができるよう格別の御配慮を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

○京極会長 ありがとうございます。

それでは、副島委員、よろしくお願いいたします。

○副島委員 私たちは、知的障害の子どもを持つ家族とその本人の会です。

知的障害のある人たちが、地域において、障害の重さにかかわらず、各ライフステージに応じた適切な支援のもとで豊かな生活を実現できることを願っております。そのためには、まず、安心できる経済的環境の確立が一番だと思っています。

障害者自立支援法は、低所得の利用者に対する所得保障の手だてを何もせずに負担増のみを求めたということで、現場は混乱しております。その所得保障の確立ということでは、一つは、障害基礎年金の見直しとか、地域の中で家を獲得するための家賃が負担ですので、住宅手当の創設とか、それから、今現在ある特別障害者手当の利用拡大をすることによって所得の一部にするとかというような、所得に関する直接的とか間接的な対応が組み合わされて実現ができるのではないかと思っております。

特に、この所得保障というものをかっちり固めていかないと、我々のいろいろな取組みが先に進まないものだと思っていますので、是非この点をよろしくお願いいたします。

○京極会長 ありがとうございました。

竹中委員、よろしくお願いいたします。

○竹中委員 プロップ・ステーションのナミねぇです。いつもありがとうございます。

プロップ・ステーションでは、障害のある人のことを、その人たちの可能性に着目した「チャレンジド」という言葉を使わせていただいて、「チャレンジドをタックスペイヤーにできる日本」というスローガンを掲げて、どんなに重い障害のある人も、その人の能力が仕事として活かせる社会ということを目指して20年近く活動してきました。

おかげさまで、たくさんのチャレンジドの皆さんが、在宅で介護を受けながらも、あるいは施設のベッドの上でもお仕事をされるというような時代が徐々にやってまいりました。そういったことをこれからもより一層強めていけるように、私たち自身も一生懸命頑張ります。明るい日本、元気な日本に向けて、眠っている力を全部生かしていくということがとても重要かと思っていますので、今日の会でも、このようなことも御議論いただければと思っています。

どうぞよろしくお願いします。

○京極会長 ありがとうございました。

それでは、館森委員、よろしくお願いいたします。

○館森委員 東京都知的障害者育成会、本人部会ゆうあい会、館森です。

安倍首相のときにこれをつくらせていただきました。私たちがやはり文章とかパソコンがなかなかわからないので、こういうものにつくっていただくととてもわかると思います。ところが、役所に行っても障害者基本計画のパンフレットが無いです。こういう物を役所の方で置いていただきたいと思います。

知的障害者は、全国に55万人いると言われています。その人たちが、地域の中で暮らしていくには何が必要でしょうか。どこに住んで、どんな仕事をしているか。みんな大変です。仕事をしたいと思っていても、何をしたらよいか相談に乗ってくれる人もいないし、仕事の仕方もわからないで怒られたり、そういうときに相談に乗ってくれる、一緒に行ってくれる人が必要です。仕事の仕方がわからないときに、教えて相談に乗ってくれる人が必要です。働く時間も、人によって違うと思います。割引というよりも所得保障をしてほしいです。

アパートを借りるにも、敷金、礼金などがかかります。大変です。だから、障害者が優先で入れる福祉住宅をつくってほしいです。福祉住宅はバリアフリーで相談センターがあると便利です。

自分たちにとって本人活動は必要です。本人活動して暮らして学んでいくのです。友達をつくり、仲間をつくり、本人活動を大きくしたい。親が亡くなっても友達に相談できる環境が必要です。一人でいては何もできなくても、みんなでやればできると思います。よろしくお願いいたします。

○京極会長 ありがとうございました。

妻屋委員、よろしくお願いいたします。

○妻屋委員 バリアフリー法ができて今8年になっていますが、おかげさまで、私たち車椅子の使用者は、非常に暮らしやすい社会になりました。そして、2010年までに一定の目標を立てて今着々とバリアフリーが進んでいますけれども、鉄道駅舎で2010年までに、1日の乗降客が5,000人以上のところは完全にバリアフリーされるという目標を立てて着々と進んでいますけれども、さあ、その次のことですが、次のことをぼちぼち考えて、5,000人以下の小さな駅、そういうところもバリアフリーが進むように検討すべきだと私は主張したいと思います。

それから、船のバリアフリー、あるいは空港のバリアフリーはかなり進んでいますけれども、特に船のバリアフリーが、船というのは高価なのでなかなかチェンジができないということで、いまだにまだ不便な状況でありますけれども、そういうこともどんどん進めるべきだと考えております。

そして、バリアフリーが進むにつれて、障害者が本当に自立して社会で活動できるという社会をつくっていかなければならないと考えております。よろしくお願いいたします。

○京極会長 ありがとうございました。

ニキ委員、よろしくお願いいたします。

○ニキ委員 こんにちは。私は、発達障害というか自閉症と診断されて10年ぐらいになります。大人になってから診断されたわけですけれども、診断がついたときは大変意外に思いました、青天のへきれきという感じです。意外だったものですから、自分はよっぽど軽いんだろうな、大人になるまでわからなかったぐらいだからよっぽど軽いんだろうなと思って納得したものです。

だけれども、10年たって、だんだんこの障害がどういうものかという理解が深まるにつれて、自分は意外に障害が重かったことに気がつきました。今までは、障害の自覚というのは、告知だけはされても自覚って、なかなか実感が持てなかったんですね。周りを見回して見ますと、私よりも更に程度の軽い人たち、軽度の人たちなんかは、更にいまいち自覚が持てていないことがよくわかります。

どうしてかというと、何か具合が悪いなとか、これは私は助けが要るなとか、調子が悪いなということを検出するのも、それも脳の機能ですから、そこに障害を持っていると、自分ではできているつもりとか平気なつもりに結構なってしまうんですよね。自信過剰になりがち、状況をなめてしまうというのも、脳の障害で起こり得る症状の一つだということがだんだんわかってまいりました。つまり、障害の程度が軽い人であったり、あとは、障害とは関係なく、性格が前向きで明るい人ほどそのわなに陥りやすいということが、私は日々感じております。

では、障害の自覚を持ちにくい人も救済されるためには、ヘルプを出せませんから、そういう人たちがカバーされるためには、やはりスムーズに回る社会、人身や人員、リソース、予算に余裕があって、一般の働く人たちも意欲的で物事が何でもスムーズに回る社会だと、余り私たちもぼろが出ないわけです。ですので、そういう一般に景気よく、楽しく、みんなが元気で、お金にも余裕があって、時間にも余裕があって回っていく社会をよろしくお願いします。

○京極会長 ありがとうございました。

福島委員、よろしくお願いいたします。

○福島委員 東大先端研の福島といいます。目と耳の両方に障害がある盲ろう者といいまして、指に点字を打ってもらって、指点字という方法で読んでおります。

障害者の施策は、結局のところ財政問題だと思いますので、社会保障の抑制の方針はそろそろ限界ではないかと。総理もおっしゃるように、そろそろ抑制の方針を転換する方向で力強く進めていただきたいと、是非よろしくお願いします。

○京極会長 ありがとうございました。

藤井委員、よろしくお願いいたします。

○藤井委員 1分ということなので、2つほど。

1つは、「障害」という言葉ですね。これは、私はこの場で何回も言っていますけれども、何とか見直しを考えられないかと。これは、そのまま言いますと、「差し障わりがあって害がある」ということになり、本人からしますと、気持ちがよくないんですね。名は体を現す。やはり社会の見方が、いやが応でもネガティブになってくるのではないかということを感じます。言葉というのは文化でありますので、多分時間がかかりますけれども、検討に着手してもらえないか。

もう一点は、この中央障害者施策推進協議会及び事務局についてです。是非ともこれの強化を図っていただきたい。障害問題はいっぱい課題があります。この協議会のレベルがこれらの課題の好転につながっていくのではないか。アメリカではNational Council on Disabilityという、非常に中立的であり、また権限と機能の強いものがあります。こういったものを参考にしながら、基本法の改正の過程、また条約の締結の過程で是非ともお考えいただきたい。

○京極会長 ありがとうございました。

山本委員、よろしくお願いいたします。

○山本委員 日本身体障害者団体連合会の山本、副会長でございます。総理、お忙しい中ありがとうございます。

まず、大きく課題をとらえているかと思いますけれども、障害者自立支援法を初め、数次にわたる見直しのおかげで、何とか一息つけるような状態にはなったかなと思いますけれども、何せ制度そのものが複雑なものですから、非常に使いにくい状態にあるかと思います。

そうしたことにおいて、社会保障制度の充実という中にあっては、経済的な支援のもとになるところの扶養義務制度の見直しを「新アジア・太平洋障害者の十年」の今後10年間における基本課題の一番初めにうたわれておる内容でございます。国として経済的な自立ができるように、ひとつ、是非、基本課題におけるところの課題を速やかに解決いただけるように、御尽力をお願いいたします。

長くなりました、済みません。

○京極会長 ありがとうございました。

最後になりますが、米田委員、よろしくお願いいたします。

○米田委員 全国心臓病者友の会の米田と申します。よろしくお願いします。

私自身、外見からは全くわかりませんが心臓病の障害者でございます。私たちが一番取り組んでいるのは、内部障害者のQOLの向上です。必要な施策として医療・福祉等々ありますけれども、特に就労を私どもは一番強くとらえています。単に会社に勤めるだけではなくて、継続して働き、そして社会に参画し税金を納めていく、そういう場づくりを私たちは一緒に考えていきたいと思って活動しています。どうぞよろしくお願いいたします。

○京極会長 ありがとうございました。以上でお話を伺いました。

ここで、麻生内閣総理大臣、河村内閣官房長官は、退席されますので御了承お願いいたします。

○麻生内閣総理大臣 最後に、ちょっと出る前に一言だけ。

いろいろな方の御意見を聞かせていただきまして大変ありがとうございました。

昔、自由民主党の政務調査会長をしておりました。ちょうどITという言葉が日本で始まったころで、IT戦略本部というものがまだ余り言葉になっていなかったころでした。そのときに、各省庁で、すべての法律の中で「書類を提出しなければならない」と書いてある手続が5万2千ありました。それをすべて「オンラインで可」ということに変えるために法律を全部つくり替えるという大事業を政府でやり始めたんですが、できませんでした。

自由民主党でそれをやろうとしました。そのときに、参考人としてお見えいただいた方の中の一人に竹中ナミさんがおられた。厚生省の役人含め、各省の官房長、局長で、ITという言葉のわからない者は、来ても意味がわからないから来なくていいと。ただし、ITのわかる者は若い者しかいないはずだから、それに権限だけ渡して出席させろということになったんですが、役所というのはなかなかさようなわけにいきませんので、局長さん、官房長さん、ITのわかる人何人かというので、1省大抵4~5人になるんですが、そういったメンバーで、みんなでIT化させるという大事業に手をつけて、結果的にはブロードバンド世界最速・世界最低料金ということを達成できたんです。

そのときに、この障害の関係の話が出ました。その関係で、竹中さんに参考人としてお見えいただいたときに、発言の第一発目が極めて強烈で、関西弁丸出しのすごみのある方がいきなり立ち上がって、「補助金は要りまへんのや。仕事ください」って言われたんです。いやあ迫力あったですなあ。できる人には仕事を与えて我々を納税者にしてもらいたいという発言をしたんです。あれは、あのIT委員会で最も大きな影響を与えた発言だったと、私は今でもそう思っております。

おかげさまで、そういう方向でどっと動き始めたんですが、是非そういったことを皆さんの仲間の方がしていただいたということは、これは健常者の方から見ても、あの発言がなければ違ったものになっていたと、私は今でもそう思っています。是非そういう意味で、皆さん方の発言が非常に大きな影響を与えていた一つの例として御記憶いただければということをお話し申し上げて、締めのごあいさつにさせていただきたいと存じております。

いずれにいたしましても、だんだん寒くなってきますので、体には十分お気をつけられますようお願い申し上げます。

ありがとうございました。

○京極会長 どうもありがとうございました。

(麻生内閣総理大臣、河村内閣官房長官退室)

○京極会長 それでは、ここで議事に入らせていただきます。押し迫っていますので、進行したいと思います。

「障害者施策の在り方に係る検討状況等について」、はじめに、各府省から資料の説明をお願いいたします。

まず、内閣府からお願いいたします。

○松田政策統括官 まず、内閣府から、資料に基づきまして御説明申し上げます。

お手元配付資料のA4横長の資料1をごらんください。

前回、7月24日の協議会で御説明いたしましたとおり、障害者基本法のいわゆる検討規定を踏まえまして、障害者施策推進本部の課長会議におきまして、委員の皆様の御協力をいただきながら、障害者施策の在り方につきまして検討を進めてまいりました。本日は、この検討状況につきまして御説明させていただきます。

今申し上げましたとおり、関係する資料は資料1、それからお手元に横長でA4判がございますが、参考資料の1から5まででございます。

資料1の1ページでございます。「障害者基本法等に基づく施策の実施状況」でございますが、冒頭ございますように、平成16年の障害者基本法改正以降、障害者に関する施策はこの基本法、基本計画、それから重点施策実施5か年計画等によりまして、「共生社会」の実現に向け着実に推進されてきていると考えております。

資料1の左下の枠、「障害者施策関係法制度の改正等」に記載しておりますとおり、平成12年以降、発達障害者支援法、障害者自立支援法の制定、障害者雇用促進法の改正、教育基本法の改正、いわゆるバリアフリー新法の制定等、障害者の生活支援、雇用・就業、教育・育成、生活環境等の諸分野におきまして制度改正等が実施されてきております。また、昨年9月には、障害者の権利に関する条約の署名が行われているところでございます。

資料1の1ページ右側に示しておりますとおり、関係予算でございますが、金額を特定できる事項についての集計でございますが、着実に増加してきているところでございます。ちなみに、平成20年度は16年度の約20%弱の増となっております。

なお、お手元に、先ほど申し上げましたとおり、参考資料1から4、A4横長の資料でございますが、それぞれ障害者基本法15ページもの、それから障害者基本計画67ページ、前期の重点施策実施5か年計画19ページ、平成16年5月の参議院内閣委員会の附帯決議の現時点での実施状況となっておりますので、追ってごらんいただきたいと思います。昨年末には、新たな重点施策実施5か年計画を策定したところでございまして、今後とも、その新計画に基づきまして、施策の着実な推進を図ってまいりたいと考えております。

次に、資料1の2ページ目をごらんください。「障害者施策における課題と対応」でございます。

課長会議におきます検討の過程では、委員の皆様を初め多くの方々、延べ46の個人・団体から御意見を伺いましたが、その中では、現在の障害者施策につきまして多くの課題を御指摘いただいたところでございます。いただいた貴重な御指摘は、基本計画の施策分野ごとに分類して、御指摘ごとに現時点での対応について整理いたしております。

資料では、施策の分野ごとに全体の概況をお示ししておりますが、全体の指摘事項197項目につきまして、このうち新たな重点施策実施5か年計画に沿って措置済みまたは措置予定、この事項が101項目、それから、その他、措置済み・措置予定の事項が73項目、それから検討中の事項が13項目、その他の項目が10項目となっております。

なお、詳細につきましては、お手元の参考資料5をごらんいただきたいと思います。これらにつきましては、更に精査して取りまとめをしていきたいと考えておりますが、今後とも、なお新たな5か年計画等に基づきまして、施策の着実な推進を図ってまいりたいと考えております。

3ページに移ります。「障害者の権利に関する条約の締結に際し、障害者基本法について考えられる主な改正事項」でございます。

新たな重点施策実施5か年計画におきましては、この障害者権利条約に関し、可能な限り早期の締結を目指して必要な国内法令の整備を図ることとされております。現在、障害者施策推進本部の条約対応推進チームにおきまして国内法制の整備のあり方の検討が行われておりますけれども、障害者基本法につきましても、条約の締結に際して必要と考えられる改正事項について検討を進めてきているところでございます。

この検討を踏まえまして、基本法との関係では、後ほど御説明いたします権利条約の第2条、第5条、第33条等が関係することとなると考えておりまして、条約締結に際しまして、現時点で考えられる主な改正事項といたしまして、今申し上げました3ページ、4ページにお示ししているものでございます。

具体的には、1、定義規定におきまして、差別行為をある程度類似的に明示すること。

2点目、併せて、定義規定におきまして、新たな差別概念である合理的配慮の否定を明示すること。

3点目、基本的理念として、合理的配慮の否定を含めた差別行為等を禁止すること。

4点目、国・地方公共団体の差別を防止する責務につきまして、合理的配慮の否定を含むことを明確にすること。

5点目、国民の理解の関係では、合理的配慮の否定を含めました差別防止を図るために、差別行為に該当するおそのある行為について事例収集を行い、公表することとすること。

6点目、国民の差別を防止するよう努める責務についても、合理的配慮の否定を含むことを明確にすること。

それから、4ページに移りまして、中央障害者施策推進協議会について、これまでの障害者基本計画作成の際の意見聴取等に加えまして、障害者施策に関する調査審議、意見具申、実施状況の監視等の機能を追加し、その機能を強化すること。

それから、8点目が、併せて関係行政機関に対しまして、資料の提出、意見の開陳等の協力を求めることができることとする等の一層の機能強化を図る。

なお、9点目で、これらにつきまして、現在、関係省庁間で検討を継続しているところでございますので、その他、今後の検討によって修正、追加等の可能性があるものとなっておりますことを御紹介いたします。

ただいま御説明いたしました主な改正事項に関連する権利条約の第2条、第5条、第33条につきまして、資料1の5ページにお示しいたしております。

この条約の第2条でございますが、障害を理由とする差別の定義、特に、アンダーラインですが、新たな差別概念としての「合理的配慮の否定を含む」ことが規定されているところでございます。

また、第5条でございますが、「障害を理由とするあらゆる差別の禁止」等が規定されております。

それから、第33条では、第2項に「権利条約の実施を促進、保護、監視するための枠組み」について規定されておりますほか、第3項には、障害者等を含めた「市民社会が、条約の監視の過程に十分関与、参画する」ことが規定されているところでございます。

次に、資料6ページ、7ページでございますが、今回の課長会議での意見聴取におきまして、障害当事者の方々などから障害者基本法に関しまして多くの御意見をいただいております。これらのうち、今申し上げました3ページ、4ページの考えられる主な改正事項の中に盛り込んでいるものもございますが、本日、お示しした各事項は、条約の締結に関して必要と考えられる事項として整理しておりますので、対象となっていないものもあるところでございます。こうした意見につきまして御参照願いたいと思います。今後、更に取りまとめに向けて検討を進めてまいりたいと考えております。

以上でございます。

○京極会長 次に、外務省よりお願いいたします。

○廣木外務省総合外交政策局審議官 障害者権利条約をめぐる現状について報告申し上げます。

資料2をごらんいただければと思います。

平成18年12月の第61回国連総会で採択された障害者権利条約は、本日、11月26日現在で135か国と1地域機関(EC)が署名しております。41か国が締結済みとなっております。

本年4月3日に締約国が20か国に達しましたことから、この条約は5月3日に発効いたしました。

去る10月31日及び11月3日には第1回締約国会合が開催され、手続規則の採択、それから「障害者の権利に関する委員会」の委員選出などが行われました。

我が国は、昨年9月に障害者権利条約に署名を行い、外務省、内閣府、法務省、総務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、警察庁の関係各課を構成員とする「障害者権利条約に係る対応推進チーム」において、可能な限り早期の締結を目指して検討を行っています。

また、障害当事者の方々を含むNGOとの意見交換も行っており、そこでいただいた御意見も参考としつつ、更なる検討を進めてまいりたいと考えております。

続きまして、「障害者権利条約 国内法整備関連の主要論点」のペーパーの方に移らせていただきます。検討を行っている主要な論点について御説明申し上げます。

これには、合理的配慮の概念、教育、労働及び雇用、国内における実施及び監視のための枠組みなどがあります。

まず、合理的配慮についてですが、本条約には、障害に基づく差別にはあらゆる形態の差別を含むとの規定があります。合理的配慮については、障害者が障害を持たない者と同じように、自らの権利を行使できるようにすることを確保するための必要かつ適当な配慮を指すとしており、同時に、その配慮に当たっては、均衡を失したまたは過度な負担を課さないものとされています。どのような場合に合理的配慮がないとして障害に基づく差別とされるのかについては、この合理的配慮という考え方が、これまでにない新しい概念であることも踏まえ、慎重な検討が必要であると考えております。

次に、教育、労働及び雇用について申し上げます。

教育及び労働に関しては、「障害者を包容する」、英語では「inclusive」という語が使われていますが、そうした制度及び環境が求められています。その趣旨は、障害のない児童に通常提供される教育の場に障害のある児童を組み入れること、障害のない人が通常参加する労働市場及び労働環境に障害者が参加できるようにすることだと考えられます。すべての障害児あるいは障害者を無条件に受け入れることまで求めているものではないと考えますが、いずれにしましても、教育の場や職場における合理的配慮の提供についても条約で規定されており、教育及び労働についての障害者の権利を保障する観点から、必要な検討を進めているところです。

最後に、国内における実施のための枠組みについて申し上げます。

条約第33条では、条約の実施を促進、保護、監視するための枠組みを指定あるいは設置することを規定しており、その際には、「人権の保護及び促進のための国内機構の地位及び役割に関する原則」、いわゆるパリ原則を考慮に入れることとされています。先ほど内閣府から中央障害者施策推進協議会の所掌事務追加などにつき説明がありましたが、このような点も含め、我が国における条約の実施の促進、保護、監視のための枠組みにつき検討を行っております。

以上でございます。

○京極会長 ただいまの点、恐縮でございますけれども、駆け足で内閣府並びに外務省より御説明いただきました。

ここでちょっと区切りまして、ただいまの説明につきまして、何か御質問がありましたらお願いいたします。

○笹川委員 障害者基本法についてお尋ねいたします。

今、ポイントが幾つか挙げられましたけれども、この障害者基本法で一番問題になるのは、大変立派な法律ではありますが、その実効性に問題があります。それは何かというと、例えば、障害者に対する差別ですとか不利益をもたらした場合に対する罰則規定というものが全くないわけです。そうなりますと法律そのものが有効に機能しないと考えますが、今後、見直しの中で、この罰則規定についてどのように取り組んでいかれるのか。

それから、今後の最終的な見直しのスケジュール、これをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

○須田参事官 内閣府の障害者施策担当の須田でございます。

今、笹川委員からお話がございましたけれども、1つは、差別禁止の関係で、実効性がないのではないかという御指摘であったかと思います。

これにつきましては、今、外務省さんからのお話にもございましたけれども、今回、権利条約の中で合理的配慮の否定という非常に新しい概念、また抽象的な概念でもございますが、こういった概念が登場している。これを今回の提案では差別の概念として位置づけていくということになるわけでございますが、国民の間では、こういった概念を十分認識しているということには必ずしもならないのではないかと。

平成19年の世論調査によりますと、「そういった配慮を行うことが差別に該当する場合があると思うか」ということに対して、「差別ではないのではないか」という方が4割近くいらっしゃるというような実態もあるようでございます。そういたしますと、そういったことに対して国民の間には十分周知がされていないということでございますし、合理的配慮といったこと、あるいは差別とはどういったことかということをできるだけ明らかにしていく必要があるのではないかということになろうかと思います。

そこで、今回は、差別の概念について定義規定を設けますとか、あるいは具体的な事例として明らかにしていくといったことを通じて、その実効を図っていったらどうだろうかということ、今の基本法の中身も、基本的にはそういった考え方に基づいているのではないだろうかと考えるわけでございます。そこで、罰則という議論も一部ございますけれども、やはり、まずは国民の理解と協力を得ながら差別の防止を図っていくということが必要なのではないかと考えているところでございます。

また、併せて、2つ目の今後のスケジュールでございますけれども、また議論があろうかと思いますが、年内を目途といたしまして課長会議の議論を取りまとめるということにしているところでございますが、その後の対応につきましては、この見直しの時期は来年の6月ということで前回の協議会でも御報告したところでございますが、これまで基本法が議員立法によって制定され改正されてきた経緯がございますので、立法府とも相談していかなければならないと考えているところでございます。

以上でございます。

○京極会長 ありがとうございました。

それでは、佐藤委員、藤井委員という順番でお願いいたします。

○佐藤委員 権利条約のことで先ほど御説明をいただきましたけれども、インクルーシブという言葉について、インクルーシブエディケーションなりあるいは、更にインクルージョンということでもいいかと思いますが、先ほどの説明が、少し後半があいまいでよくわからなかったんですけれども、前半部分では、障害のある人たちの教育を、いわゆる普通教育の場に組み入れていく、参加を図るというふうに理解しているとおっしゃったと思いますが、最後に、しかし、それは重い障害の人たちをすべてそうするということを必ずしも意味しないとおっしゃったのでしょうか。

このインクルーシブエディケーションについては、政府の仮訳と、それからいろいろな人たちが訳しているのとを比較すると、一番わかりやすいところでは、ジェネラル・エデュケーション・システムを政府の仮訳は「教育システム一般」と訳していますが、普通に読めば「ジェネラルな教育制度」となると思うので、このインクルーシブというものをどう定義するか、あるいはどういう概念として定着させるかというのは、ある意味では権利条約の最も根幹にかかわるところだと思いますので、もう一度明確に、私が聴き取れなかったのかかもしれませんが、もう一度御説明いただければありがたいんですが。

○廣木外務省総合外交政策局審議官 どうもありがとうございました。今、御質問のございましたジェネラル・エデュケーション・システムということでございますが、今、私どもの方で適切な訳をということで種々協議を行っているところでございます。

インクルーシブ・エデュケーション・システムの意味するところでございますけれども、今回のこの条約の趣旨及び目的、更には交渉経緯を踏まえて考えますと、「すべての障害者に教育を受ける権利を保障するという観点から、障害のある児童が、その潜在能力を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加できるようにすることなどを目的に、障害のない児童に通常提供される教育の場に障害のある児童を組み入れること」と考えております。

この条約に列挙された締約国の取るべき措置の内容にかんがみますと、この条約が、障害のある児童と障害のない児童とが物理的に同じ学校及び教室で教育を受けることを例外なく実現することまで求めているものではないと思いますけれども、障害のある児童が、その潜在能力を最大限に発達させ、自由な社会に効果的に参加することを目指す上で、両者が、つまり障害のある児童も障害のない児童も、可能かつ適切な限り同じ場で教育を受けることが望ましい、こういう考え方に立っているものと考えております。

○佐藤委員 例外を認めるか認めないかというのは、理念的には非常に重要なところで、例外なく障害のある子どもを障害のない子どもたちが参加している教育なり、あるいは、もうこれは教育の問題だけではなくて、雇用を含めてさまざまなところでインクルーシブにということになるだろうと思うんですが、言葉じりをとらえるようで恐縮ですが、「例外なくそういうことを求めているわけではないと思うけれども」とおっしゃったけれども、その「思う」主語は「政府」ですか。それはどういうことなのかもうちょっと説明を。

つまり、これは国際的な条約で、我が国でもこれを批准していくという方向性がある中で、国際的に見て、齟齬のある理解で条約を締結することはできないだろうと思いますので、まだそこは検討中であるなら検討中であるでも結構ですし、基本的にはどういうふうな今スタンスなのか、もう決まっているのか決まっていないのか、検討しているのか、そのことを含めて、もう一度御説明いただければと思います。済みません、しつこくて。

○廣木外務省総合外交政策局審議官 お答え申し上げます。

今申し上げましたこのインクルーシブ・エデュケーション・システムにつきましては、どういうふうに考えていくか、明文上明らかではないので、この条約の趣旨、目的、それから交渉経緯というものを踏まえて、その意味するところを私ども考えていっておるわけでございます。

その際に、私どもの方で、今、政府部内の方でも、この条約の趣旨、目的、交渉経緯を踏まえて、いかなる国内の制度によって担保していくかということを協議しておるところでございます。その協議の結果をいずれ国会の方に提出させていただきたいと思っておりますので、そこでまた議論があろうかと思いますけれども、いずれにしましても、先ほど申し上げたようなことを踏まえながら、関係者と今相談して、具体的な制度に落とし込んでいるという状況でございます。

○京極会長 検討中ということになると思いますが。

それに関連してですか。では。

○福島委員 福島です。

委員である私が言うのも変ですが、佐藤先生の御質問について一言だけ。

私の障害である盲ろうの関係で出てきますので、先ほど外務省の方がおっしゃったように、基本的には、普通学校への統合という基本線は条約で出てはいるわけですが、例えば24条の中に、聴覚障害や盲ろう者については特別なコミュニケーションが必要なので、その点については特別なニーズでの配慮が必要だという規定が条約の中にありますので、完全にすべて包括すればいいという単純な構造にはなっていないと理解しております。つまり、政府見解云々ではなくて、条約自体がそういう構造になっているであろうと。

一言、補足まで。

○京極会長 どうぞ。

○藤井委員 今のと関係しますが、私は、この条約というのは、一つは翻訳、それからもう一点は解釈、これが非常に重要かと思います。条約の批准は、障害者団体からしますとまさに千載一遇の好機と考えています。官民を超えて、是非とも高い次元でのこの翻訳、解釈をお願いしたいと思います。日本という国は相当な力がある国ですので、条約にぎりぎりでかすっていればいいなどというのではいけないわけで、やはりきちんとした翻訳、解釈を。

今おっしゃったinclusive educationもそうだし、合理的配慮、この「配慮」という言葉も、本当にaccommodationの訳としていいのだろうかと思います。フランス語では「合理的措置」あるいは「便宜的措置」という言葉を使っていますね。韓国は少し意訳になりますが「正当な条件整備」と訳していますけれども、やはり日本も、極力片仮名は使わない、それからわかりやすい漢語または大和言葉、こういった点に配慮して、正確な翻訳をお願いしたい。

それから、もう一点、障害者基本法の今度の改正というのは、条約の批准と連動してまさに前哨戦であると思うんですね。基本法の改正が恐らく条約の批准のレベルを占うと思うんです。

そのときに関係してきますのは差別禁止法制をどうするのかということです。現行の基本法の差別禁止条項、つまり第3条第3項の強化で終わるのか、また、裁判規範に耐え得る差別禁止法としての独立法を展望するのか。これのところは前回もここで議論になっていましたけれども、もう一度、今の段階での内閣府の見解をお聞かせいただければと思うんですが。

○京極会長 現在の時点での検討状況ということです。

○松田政策統括官 障害者権利条約の締結に当たりまして、障害者基本法において、障害を理由とする差別につきまして新たに定義規定を設け、差別行為をある程度類型的に明示するとともに、新たな差別概念である合理的配慮の否定が障害を理由とする差別に含まれることを明記するということを検討しているところでございます。

それで、新たに独立した障害者差別禁止法を制定すべきとの御意見があることは、勿論承知しているところでございますけれども、いわゆる差別禁止法制のあり方につきましては、まずは、障害者権利条約の差別禁止規定との関係で障害者基本法の関係規定をどのように整理するか。それから、その他の個別法制についてどのように整理するかといったような点等について、先行する障害以外の差別禁止法制の状況等も考慮しながら検討する必要があると考えております。

いずれにしましても、障害に係る差別禁止法制のあり方について、条約に係る国内法制のあり方を検討する中で、引き続き考えてまいりたいと存じます。

○京極会長 今おっしゃった質問は、必ずしも選択肢として差別禁止法をつくれということではなくて、基本法の中で従来の差別禁止条項とどういうかかわりで整理するのかということも含めておっしゃったんですね。

○藤井委員 私の意見は、やはりおっしゃったように、この基本法で担うべき、つまり理念法としての基本法では、確かにどう謳うのかと。

もう一点、これだけでは不十分であって、やはり実定法として裁判規範に耐え得るような独立法としての差別禁止法というものの展望を今回どう示すんだろうかということが重要だと思います。私は、今の答えでは、内容的には決して満足していませんけれども、言っている意味は理解いたしました。

○京極会長 どうも。

それでは次に、厚生労働省の資料も出ておりますので、厚生労働省よりお願いいたします。

では、1点だけ。どうぞ。

○妻屋委員 この理念法になっている障害者基本法ですが、私が一番わからないところがありまして、差別してはならないとか、合理的配慮を怠ったらそれは差別になるとかというのはわかります。だけれども、その基準なんですが、まず一つは、差別をあからさまにした、あるいは間接的にそういうふうになった場合に、この法律でどういう裏づけがあるのかないのかということが1点。

それから、合理的配慮について、その合理的配慮を行わなかったとかということに関して「均衡を失した過度の負担を課さない」と書いてありますけれども、この条文は日本の法律に当てはめるのでしょうか。その場合、過度か過度でないかはどこで基準が決まるのでしょうか。これによって差別になるとかならないとかとなるわけです。したがって、なった場合には、一定の基準があって、それ以上のことになった場合には、その場合はどうするのかという、その裏づけの法律はどこかにあるんでしょうか。

○松田政策統括官 いわゆる間接差別の話は権利条約において、国連での条約案策定過程において、本日申し上げた概念、間接差別の概念が必ずしも明確でないということから、最終的に「間接差別」の用語は盛り込まれなかったと考えておりますけれども、当然、差別防止を図るに当たって、すべての差別を含めるということが必要と考えております。

先ほどこちらの方から申し上げましたけれども、どういう形で差別なんだというところは、まさに今、合理的配慮の考え方で申し上げましたが、極めて抽象的な概念でありまして、新しい概念でもあることから、やはり国民に理解を求めるのは、直ちにはなかなか難しいと考えております。そのためにも差別事例の収集・公表という形で、その過程の中で類型的に明示しながら明らかにしていくということではないかと考えております。

○京極会長 議論が尽きないところがありますので、恐縮ですけれども、次に進めさせていただきたいと思います。

それでは、厚生労働省よりお願いいたします。

○木倉厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長 それでは、資料の3をご覧いただきたいと思います。

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長の木倉でございます。

「障害者自立支援法の検討状況等について」ということでございます。

1枚おめくりいただきまして、1ページでございますけれども、障害者自立支援法につきましては、成立時の附則、そこに書いてあります附則で検討規定が置かれております。「施行後三年を目途として、この法律及び障害者等の福祉に関する他の法律の規定の施行の状況、障害児の児童福祉施設への入所に係る」云々と書いてありますが、必要な措置を講ずるものとするということで見直しの規定が置かれております。

これを踏まえまして、これまでの経緯とその下に書いてありますように、完全施行は平成18年10月でございました。この10月で完全施行から丸2年を迎えますが、これを踏まえて、3年をもう目の前にしておりますので、この全体についての見直しということで今検討を進めております。

具体的には、本年の4月から、そこの一番下に書いてございますが、社会保障審議会の障害者部会におきまして議論を行っていただいております。今日は御欠席ですが、この協議会の委員でもございます潮谷委員、あるいは今日御出席の何人かの委員の皆様に御参加いただきまして、精力的に法全体についての見直しをいただいているという段階にございます。

次の2ページにありますように、4月から6月までは全般的な議論をいただきました。一通り議論をいただきました上で、夏場に、7月から8月にかけて関係団体からの御意見をヒアリングという形でいただきまして、個別論点を掲げまして、9月以降、論点ごとの整理を深めていただいているということでございます。現在、年内の取りまとめ、12月の取りまとめということを目標に、全体の議論の整理ということで御議論をいただいているということでございます。

また、別途、1ページの中にございましたように、昨年の暮れには与党・障害者自立支援に関するプロジェクトチームの方からも、見直しの視点あるいは方向性についての御指摘をいただいております。審議会の議論あるいは与党からの御指摘を踏まえまして、具体的に法の見直しあるいは予算の確保ということに努めてまいりたいと思います。

一番最後の3ページでございますが、審議会におきまして挙げられております論点は、法全体にわたりますけれども、ここに上げておりますような論点を挙げて御議論をいただいているところでございます。これらについての方向性について12月のうちには御指摘をいただきたいと思います。

また、この法律とは少し離れますが、この自立支援法に基づきます障害福祉サービスのより充実した実施をお願いするために、これは予算になりますけれども、報酬の改定・引き上げということも来年4月から実施したいということで、今、予算編成に取り組んでいるところでございます。

以上でございます。

○京極会長 ただいまの説明につきまして、何か御質問等がございましたらお願いいたします。

○福島委員 私もこの自立支援法の部会での審議に加わっておりますけれども、まず簡単に意見と、あと質問がございます。

意見としては、先ほども申し上げましたけれども、結局は、この障害者施策の問題は、最終的に予算措置の裏づけがあるかというところになりますので、是非、この財政的な基盤を充実していただくという方向を目指していただきたいということが一つと、もう一つは、雇用の促進の話、障害者の仕事の話も出ておりましたが、一般に、やはり法定雇用率というところは注目を浴びますけれども、御承知のようにあれは、例えば1.8%といっても、従業員100人の中に1.8人障害者がいるというわけではなく、ダブルカウントなどもいろいろあって実数はもっと少ないわけです。更に、普通の人の失業率であれば5%~6%で大騒ぎになるわけですが、障害者の場合は、障害種別で異なっているとはいえ、30%とか40%とか桁が違う失業率だと言われています。

したがって、法定雇用率を達成するかどうかという議論とは別に、実際に障害者が、働きたい人がどれだけ働けているのかということに注目すべきであろうと。なかなかそこに光が当たらないのが疑問に思っておりますが、これは注目いただきたいという意見ですね。

最後に質問ですが、自立支援法は、3年たって改正のめどで議論するわけですけれども、先ほど来の権利条約の批准の問題もありますし、更に、先頃の社会保障国民会議の答申や、年金関係の議論の進捗なども考えますと内外の情勢が変化しつつありますので、今回の3年後の見直しだけで恐らくクリアできない、網羅できないことがたくさん出てくるだろうと思いますが、3年後を過ぎた後の障害者自立支援法の更なる改正ということについては、一体どういう手続というか、どういう方針になる見込みなのか、その点を伺いたいと思います。

以上、意見と質問です。

○京極会長 それでは、厚生労働省。

○木倉厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長 お答え申し上げます。

先に、後段の自立支援法の見直しと条約やその年金関係等の組み替えの御指摘があるような事項についての関係でございますが、権利条約の批准に向けての見直し、これは、先ほどから御説明がありますように、この障害者自立支援法の福祉という分野に限らず、政府全体の法体系あるいは施策体系全体について今、見直しが行われているところでございますので、この自立支援法についての3年の当面の見直し、附則から求められている見直し、あるいは与党から指摘を受けている見直しについてのものがありましても、もしもこのタイミングが一緒であれば、一緒の批准に伴います法整備、施策整備の中でやるべきものだろうと思っておりますが、もし時点がずれるようなことがありますれば、それはそれとして、我々の自立支援法についても含めて見直しを一体として行っていただくべきものと思っております。

それから、国民会議等でも御指摘を受けております所得保障の問題、これは、福島先生も御参加いただいておりますこの社会保障審議会の中でも、所得保障のあり方ということは一体として御議論いただいておりますが、別途、年金そのものにつきましても、財源の問題等の議論もございます。これは年金制度全体の議論との一体での議論が必要なのかと思っておりますので、今回の議論の中で必ずしも一体で見直しができない部分につきましては、年金改正の中でもまた取り組んでいかなければいけない問題だろうと思っております。

雇用の問題について一言、担当の課長の方から御説明申し上げます。

○吉永厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長でございます。

法定雇用率の関係で1点御意見がございましたので、若干触れさせていただきます。

法定雇用率1.8%を定めておりますけれども、これは、労働市場にいる通常の健常者の方、失業者の方も含めた数と実際に働いてらっしゃる障害者の方と失業している障害者の方、この割合で1.8%というものを定めているところでございます。労働市場にいる方をという形で限定して考えますと、1.8%をクリアすると、基本的には、雇用という形で働きたいという方がすべて雇用されるという状況になるかと思っております。

先週、今年の6月1日現在の雇用の状況につきまして報告させていただいております。御指摘のようにダブルカウントを入れた数字ではございますが、昨年の30万2,000人から32万5,000人という形でかなり改善してきております。全体としての雇用率も1.55から1.59%に改善しているという状況でございます。まだ1.8%には届いておりませんけれども、こうした中で、働きたいと考えていらっしゃる障害者の方は、なるべく多く働けるような形で努めていきたいと考えております。

以上でございます。

○京極会長 藤井委員。

○藤井委員 自立支援法問題は大変大きな問題で、多くの障害者が関心を持っています。一つ、これは木倉部長に伺いたいんですが、先ほど、合理的配慮というのがこの権利条約の真髄であると言いました。これは障害がある者とない者との不平等を社会の側が埋めるという考え方です。今度の自立支援法の一つの大きな問題というのは、応益負担あるいは定率負担の問題で、これはいわば1割あるいは3%といっても、やはり障害からくる不利益を自分の責任でという考え方です。どう考えても、また一般に考えても、この合理的配慮という概念と定率負担または応益負担という問題は、競合するのではないかと思うんですが、この辺はどんなふうな見解を持っておられますか。

○木倉厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長 藤井委員御指摘の点、この自立支援法で最大1割までの自己負担をお願いしているということ、今、委員からも御指摘いただいたように、上限というものを設けてそれを見直ししていく中で、3%程度の負担に抑えられているわけではございますけれども、いずれにしても、サービスの利用に応じた負担をお願いしているということにつきましての御指摘だろうと思います。

これにつきましては、この自立支援法制定のときの御議論からずっとある指摘ではございますけれども、この障害者についての福祉サービスということをしっかり利用していただく中で地域での生活を営んでいただく、そのときに可能な範囲での御負担をお願いする。その負担の程度というものが過大なものかどうかという御議論はずっと続いているとは認識しておりますけれども、私どもとしては、これまでの自立支援法の趣旨の中での見直し、特別対策、緊急対策の中で、所得の低い方にはその上限を押さえていくという見直しをしていただく中で、御理解をいただいて実施をしていく。

それが、合理的配慮として十分かどうかという御指摘は、条約との関係で更に議論を整理していくべきだと思いますが、そういう考え方の中で、御理解をいただいて、法の施行が今を迎えていると思っているところでございます。

○藤井委員 もう一点、どうしても看過できませんのは、精神科病院の社会的入院という問題と、それから知的障害を持った人の入所施設偏重政策、これは両者とも、物事を主張できにくい、または主張できない人の問題であって、やはり自立支援法がそこまで本当に効果があるのであれば、こういった数が減っていると思うんですけれども、どうも2年8ヵ月間、施行後を見てもこの数は減っていないんです。その辺の本当の原因と今後の展望を、できる範囲でお示しいただけませんか。

○木倉厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長 精神科病院での入院の問題、あるいは知的の人に限らずですが、福祉施設への入所の問題ということでございます。

精神科病院の問題につきましては、今日も樋口委員が御指摘でございますけれども、別途、この審議会と別の場でも、精神保健医療福祉の在り方に関する検討会、平成16年から10年間のビジョンのもとに、地域への移行、地域で生活できる人たちにつきましては、是非地域で生活していくように、医療関係者や福祉関係者ともども応援をして、地域で生活していただけるようにしていきたいということで努力をしているということでございます。前期の5年を来年で迎えるわけですが、なかなか十分な取組みが進んでいないということもありまして、更に地域への移行、地域での生活支援を充実・強化するための取組み、支援策を今御検討いただいていると。障害者自立支援法の中でこれを応援するということもやっていくとともに、来年夏に向けまして、更に精神保健福祉法の中でも必要な見直しを加えて、見直しの御検討を引き続きお願いしていきたいと思っております。

また、福祉施設への入所の問題につきましても、地域移行支援ということを地域で都道府県や市町村に計画をつくっていただいて、目標を持って前期3年、それから来年から第2期目の3年と、3年ごとの計画のもとに目標達成に向けて努力していきたいと思いますが、御指摘のように、地域でのいろいろな生活の支援策、新しい法律のもとで取組みを進めてもらっていますが、まだまだ地域へ移行できるという十分な基盤となっていないと認識しております。住宅の問題につきましてもそうですし、さまざまなサービスが更に使いやすくしていかなければいけない、そういう課題があると認識しております。

以上でございます。

○京極会長 竹中委員。

○竹中委員 自立支援法の中で、福祉から就労へ、あるいは福祉を得ながらも就労へという大きな理念の転換をされたということは、私は大変心から敬意を表しております。

とりわけ、私たちはその就労の促進といったところで長年活動をしてきたんですが、自立支援法に関して言えば、「負担のできない大変な障害者」と同情論的な見方で制度に反対するのではなく、「本当に必要な負担ができる人たちにしていくには、どのようにすれば良いのか」というのが、自立支援法本来の非常に重要な観点ではないかと思っています。

プロップ・ステーションでは、大変重度のチャレンジドが介護を受けながらもお仕事をされているんですが、やはりその方々の働き方を見ていますと、いわゆる一般雇用になじまない方が相当いらっしゃいます。例えば、大変難病で絵をかくことがお好きで得意なんですが、年に何度も入退院を繰り返される。そういう波のある方は、やはり週に二十数時間は最低でも働くんだよとか、あるいは全面介護が必要であったら無理だよという一般雇用にはなかなかなじまないんですね。でも彼女に絵をかくお仕事を提供してくださる方があり、彼女は立派にタックスペイヤーしています。今年も、体調のいいときだけですが、一生懸命絵をかかれて、そして私どもプロップ・ステーションはそれを企業とか発注者につなぐコーディネイトを行い、彼女は年末に御自分で確定申告をされて生活をされている。そういう方々がたくさんいらっしゃいます。

そういうチャレンジドを増やして行くには、通勤型雇用の促進だけではなくて、在宅就労や起業など、多様な働き方をチャレンジドが選べるような仕事の出し方を企業が選択できる、そしてその企業は社会責任を果たしたとみなされるような仕組みが必要です。施設のベッドの上で御自分で業を起こしたチャレンジドもいらっしゃるんですが、そういうふうに、雇用よりも自分自身は独立して仕事をしたいんだというような方の場合は、その業を起こすといったようなことを法が支援できるとか。これは諸外国、特に先進諸国では、既にやられているわけですけれども、日本の場合はどうしても「雇用率」に非常に重きが置かれる余り、逆にそういった多様な働き方の支援がまだまだ足りないと思います。今、企業はどこも厳しいわけですけれども、起業支援や、発注率いわゆるアウトソーソングの量を雇用率に換算する、といったような、何らかのインセンティブを付与することによって、働くチャレンジドを増やそうという意欲を企業が持つようにする施策の創出が、大変重要だと思っています。

○京極会長 御意見でよろしいですか。

○竹中委員 はい。基本法もそうですし、この自立支援法もそうです。やはり、とりわけ就労というところへ踏み込まれた法の中で、そういったことも御検討いただけばと思っています。

○京極会長 自立支援法の中で就労支援につきましては継続と移行と2つ、小さなブリッジが福祉行政から労働行政にかかっていますけれども、労働行政側からもう少し大きな橋がかかってもいいような感じもしますが、これは今後の検討課題ということで、いろいろ議論が出たということを記録にとどめたいと思います。

ほかにどうでしょうか。どうぞ。

○山本委員 日身連です。

総理がおいでになるときに冒頭お願いしたことですけれども、新アジア・太平洋障害者の10年の期間の2003年から2012年までの間に重大課題項目を上げてありますね。それ等に対して、表面的にというんですか全体的に見たときには、それに沿ったような形で国内法の整備などを遅々ではありますけれどもやっていただいていると思うんです。

そうしたときに一番申し上げたいことですけれども、20歳を過ぎたら社会で障害者を面倒見るというような仕組みをどこかで確立するということが、やはり扶養義務制度の見直しを含めて、経済的には20歳を過ぎたら、もう社会で面倒を見て、親子関係とか親戚関係は、それこそ精神的な支えであるというバックボーンをしっかりと確立しないことには、いろいろの対策を立てていただいても、知っている人は利用できるけれども知らない人は利用できない。それこそ複雑な制度にだんだんなってきているところからすれば、基本であるところの新アジア・太平洋障害者の10年の中で、重大基本項目を早い段階にやりましょうねというアジアに対してメッセージを日本が送っている立場であって、それに対する今の考え方を担当課の方から少し意見をちょうだいできたらうれしいと思いますけれども。

○須田参事官 内閣府でございますが、これは、今日の資料にもお出ししておりますけれども、このヒアリングの過程におきましても扶養義務制度についての御指摘をいただいたところでございまして、特に、扶養義務制度の見直しに関する御意見については、現時点で、民法の規定を見直すことについては考えていないという関係省からのコメントを紹介させていただいているところでございます。

今いただいた議論につきましては、議論として受け止めさせていただきたいと思っているところでございます。

○京極会長 資料のどこに載っているんですか。

○須田参事官 済みません。お手元の参考資料5の8ページになっているところでございます。

この参考資料5につきましては、申し上げましたように、これまでのヒアリングの過程で、個人あるいは団体の方から意見をいただいたところでございますけれども、それを障害者基本計画の分野別に整理したものでございます。

御指摘については、生活支援の分野として整理をしているところでございまして、8ページの、小さな字でございますが、上から2つ目の・のところで御紹介させていただいているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○京極会長 担当大臣も副大臣も政務官もいらっしゃいますので、せっかくのときに、先ほどの障害当事者並びに家族の方々の御発言がございましたけれども、その他の方の御発言がまだございませんので、時間が若干ありますので、御自由にどうぞ一人一人御発言いただきたいと思います。

樋口委員どうぞ。

○樋口委員 私は、一番最初の資料1の「障害者施策の在り方に関する検討状況等」という中で触れられている、それの2ページの課題と対応の中で、保健・医療に関連して発言させていただきたいと思います。

私は精神医療に携わっている者でございまして、精神医療にかかわるいろいろな問題は、厚生労働省の中でも検討会があって、今検討されているところでありますが、ここで、さっきの参考資料5の21ページのところに保健・医療分野の課題が整理されておりまして、その上から2つ目が「精神障害の早期発見・早期治療のため、精神科と他科が連携して精神疾患の情報を共有する」、あるいは「地域医療体制を構築すべき」と書かれているわけでありますが、これに関連いたしまして、最近非常に困ったといいますか、これの反対に向かっているような大きな動きがありますものですから、それについて触れさせていただきます。

「医療崩壊」という言葉が最近しばしば使われて、主にマスメディアを通して出てくる問題としては、御承知のように、産科医療の問題とか小児科医療とか、麻酔科の医師が足りないとかという、これはよく聞くわけでありますが、精神科も例外ではないということでございます。どういうことかといいますと、公的な医療機関、特に自治体病院とか私たちの国立系の病院であるとか、そういうところの総合診療機能を持った病院にある精神科が、今消えつつあるという事態であります。

これは、まさに精神科医療と一般医療の両方が連携してやることが必要とここに課題として掲げられていることと相反することでありまして、それが生じている一つの原因は、こういった公的な医療機関が、ほかの産科とか小児科と同じように、非常に仕事の量が多いとか、仕事が非常にハードであるとかというようなこともあるんですけれども、もう一つは、精神科特有のこととしては、診療報酬の格差があります。内科の2分の1ぐらいの診療報酬ということで、そうしますと、総合病院も今、経営の改善を迫られておりますから、精神科のベッドを1つ持っているよりは内科に置き換えた方が収入が2倍になるという非常に単純な計算ができるわけです。そういうこともあって、それから医師の確保が難しいということもあって次々、総合病院から精神科のベッドが消えていっているわけです。本来、公的な医療機関で総合診療機能を持っているところは、今問題の自殺未遂に対する対応であるとか、それから合併症の問題であるとか、あるいは、これから増えてくる高齢者の精神的な課題に対して対応できるのは、やはり総合診療機能を持ったところなんですが、そういうところが次々消えていくというのは、非常にゆゆしき事態であると思います。

そういった診療報酬の格差も含めて、早急の是正をして、やはりこういった地域の中の中核である、しかも単科の病院でない総合診療機能を持った病院での、精神科に障害を持った方がいつでも医療を受けられるという体制を是非整備していただきたいと思います。

以上です。

○京極会長 先ほど御発言なかった方々の中で、企業からの水越委員、それから全社協の松尾委員、何かございましたら。

○水越委員 私はセブン&アイホールディングスの特例子会社の社長も兼務しております。現在の世界同時不況の中で日本企業の雇用環境も厳しさを増しています。障がい者の雇用についても例外ではございません。

障がい者の雇用環境を考えると、障がいによっては、むしろ短時間勤務の方が働きやすいという状況もあって、短時間勤務の雇用の場を広げようということ自体は大変重要なことだと受け止めています。ただし、私どものグループの事業会社は小売業が中心ですので、短時間勤務の従業員が多く、分母が大幅に拡大するわけですから、法定雇用率を超えるためには抜本的な対応が必要になります。

この激変の時代、同一の価値観を持った従業員だけで会社経営するより、さまざまな価値観、カルチャーを持った人たちを組織の中に内包していくこと、いわば、従業員の多様性の推進がこの厳しい時代を乗り越える重要なキーワードと捉え、高齢者も障がい者もその一翼を担う人材と考えて尽力したいと思いますが、現実の厳しさは免れないというのが実情です。

○京極会長 今日初めてで恐縮でございますけれども、川本委員、何か御発言ございましたら。その次、松尾委員。

○川本委員 今日初めての出席でございますけれども、今、経済情勢のお話がちょっと出ましたが、非常に足もとの経済状況が悪くなってきてございますし、来年は更に厳しい状況になるのかなという思いがしているところでございます。したがって、この雇用問題につきましては、全般にかなり厳しい状況の中で、さまざまな企業努力、一方で、政府のいろいろな施策の展開をしていかなければいけないという状況になっていくのかなと、まず一般論として思っている次第でございます。

また、本日の皆様から御意見をいただいているこの障害者の施策のあり方につきましては、障害のある方あるいはない方ともども、両者がお互いを理解して協力し合っていく、そういう状況をいかに啓蒙していくかということであり、併せて、それに向けて施策を展開していっていかに共生社会をつくっていくかということを一歩一歩前進させていくということがとても大事なことだろうと思っているところでございます。

○京極会長 ありがとうございました。

発言なさっていない方にちょっと発言いただきまして、もし時間が余るようでしたら早目に終わらせたいと考えております。

○松尾委員 よろしいですか。2点申し上げます。

古い話になりますけれども、国連障害者の10年の障害者施策の始まりの、そのとき感じましたことは、10年という期間、最初から障害者施策がスムーズに推進できたわけではないのでありまして、やはりこの10年がだんだん終わりに近づいてくると、何が残ったか、何をしなかったかということをみんなで議論しました。そこから飛躍的に障害者施策が伸びたのではないかと思います。

残った課題で一番大きかったのは、やはり各省が一緒に協力してやらなくてはいけない施策が残った。各省庁単独でできる施策は、各省庁の方々が尽力してやっていただきましたので大きく推進しました。しかし、各省庁が共同してやらなければいけないバリアフリー等は残ったのではないかと思います。

国連障害者の10年の成果の一つに、事業によっては最終年近くになって各省が力を合わせて施策を伸ばしたというのが、私は一つ評価できると思います。

今もいろいろな10年計画あるいは5年計画ということで実施されております。その計画の中身を洗ってみて、何が残っているのか、どうしたらそれができるのかということを大いに議論・検討して取り組むべきだと思います。その際には、関係省庁力を合わせてやっていただきたいということが一つございます。

それから、障害者施策は施設から居宅へという大きな流れがありますけれども、居宅というのは、ある意味では施設以上に施策を実施するのに大変困難な環境にあるのではないかと思います。と申しますのは、やはり地域の住民の皆さんの協力なくしては地域ではできないわけでありまして、そこをどういう形で地域の住民あるいは福祉団体、いろいろな団体が一緒になって地域で障害者を支えていくかと。これは、恐らく地域で相当エネルギーを使わないとできないのではないかという感じがいたします。

そういう意味で、これから地域で共生という言葉が今出ておりますけれども、そこに視点を置くのであれば、障害者施策のいろいろな施策の内容や言葉をもう少し住民の方にわかりやすいようにしていかないと感じております。だんだん難しい言葉、難しい仕組みの施策になっていっているのではないかということをちょっと私は危惧いたします。そういう意味では、もう少しわかりやすい言葉で、わかりやすい内容で、地域の皆さんと障害者施策の問題あるいは障害者問題が議論できるような社会をどうしたら目指せるかということを考えるべきではないかと思います。

以上、2点です。

○京極会長 ありがとうございました。

○野村委員 野村でございます。

私は、建築学の立場からこのバリアフリーのことについてずっと研究しているわけですが、今日の資料でいいますと、参考資料2の22ページ、あるいは参考資料5の5ページあたりに住宅の問題が幾つか出ています。

ハートビル法あるいは交通バリアフリー法、更にそれが一緒になってバリアフリー新法ができてまいりまして、公共建築物あるいは交通施設は相当に整備されてきたように思いますが、一方で、住宅は、そういう法律体制になくて、別の住生活基本法で位置づけられています。しかし、この法律では高齢者等という言葉の中で障害がある人たちの住宅に対応されているわけです。そうすると、どうしても障害のある人たちの住宅の問題が少し見えづらくなってきている。ここを何とかしていかないといけないのではないか。

特に障害者自立支援法で、できるだけ地域へと言いながら、実は、その住む住宅がなかなか確保できないということ。一方で、住宅建設計画法が住生活基本法という法律に変わって、その第6条でセーフティーネットという言葉がありながら、なかなかその公的な住宅を中心としてセーフティーネットが形成できていないのではないだろうか。その辺をもう少しきっちりと体系づけて整備をしていくことが、やはり障害のある人たちが地域で生活する基本整備をきっちりとしていく必要があるのではないかと感じております。

○京極会長 田山委員どうぞ。

○田山委員 せっかく参考資料5というものを配っていただきましたので、それの8ページです。先ほど御発言においても、親子間の扶養制度等についての指摘がございました。この親子間の扶養制度というのは、私も民法の方が専門でありますので、これを見直すのが大変難しいというのはわかるんですが、ただ、問題は、少子化の中で親子、例えば両親がいて1人しか子どもがいないというような組み合わせでいきますと、4、2、1となってしまうわけで、そういう基本的な人口構成の中で、親子間で子どもが親の面倒を見るということ、これは扶養そのものではないんですが、そういうことを考えていったときに、その介護、それから成年後見もそうですが、そういう問題を真正面から社会的問題として受け止めなければならないだろうという点では、ここでの問題指摘はそのとおりだと私も感じているところであります。

そういう意味で、例えば成年後見の問題につきましては、成年後見人のような人をどうやって養成していくのか。今は親族後見人が8割弱ですから、それで何とかなっている面があるんですが、先ほどのような人口構成でいきますと、その8割弱は将来的にはもう無理でありまして、ドイツなどでももう6割を切ろうかというところまで来ておりますので、日本の社会もいずれそうならざるを得ない。そういうところで、この広い意味での親子関係のあり方について御検討いただきたいと思います。

それからもう一つ、ここには法定後見のことが書かれていると思うんですけれども、実は任意後見という制度があって、公正証書で後見契約を結ぶ制度でありますが、この制度を悪用して高齢者が被害を受けているという例が出てきております。任意後見制度というのは、家庭裁判所が監督人をつけて初めて動くように仕組んでありますので、制度自体は大変良いのですが、制度が機能する前に民法上の契約を利用して財産的な収奪みたいなことがされてしまうような事例があります。これをマスコミなどではヤミの部分と呼んでおりますが、この部分に光を照らして、どうやったら高齢者等を守れるかというようなことも是非御検討いただけたらと思います。

以上です。

○京極会長 ありがとうございました。

まだ議論は尽きないと思うんですけれども、取りあえず本日の予定されている議題につきましては一通り終えましたので、ちょっと時間が早いのでございますが、最後に、野田内閣府特命担当大臣からごあいさつをお願いいたします。

○野田内閣府特命担当大臣 野田でございます。

本日は、御多忙のところ協議会に御出席をいただきまして本当にありがとうございました。

私は、実は8月まで自由民主党の障害者特別委員会の委員長を務めており、昨年末の新たな重点施策実施5か年計画の策定に携わらせていただきました。また、この協議会のメンバーの方々の中には、もう随分以前からお知り合いで、様々の御指導を賜っているところです。

ちょっと余談になりますけれども、私はちょうど20年前にパソコンと出会いました。当時はインターネットではなくパソコン通信でありましたし、カラーもなく画像もなく、ただひたすら文字だけが流される、そういう草創期のパソコンを勧められたのが、当時の地元の障害者団体の青年部の仲間でした。

パソコンの使い方を教えてくれたのが特に重度の障害を持っている男子で、彼とは面と向かって話をすることができません。障害が重いのでしゃべることができず、トーキを使ってでしか話をすることができなかったんです。その彼の勧めでパソコンを買って、パソコン通信を始め、そして、チャットというのを御存じだと思いますけれども、やり取りを彼とするようになって、私自身のバリアフリーというものを彼に提供してもらった、そういう強い思いがあります。おかげさまで、パソコンの担い手となった私は、情報通信を担当する郵政大臣にもなることができまして、本当にそういう友情を持てたことを幸せに思っています。

その仲間の1人が今でも私の秘書をやってくれています。彼も歩くことができませんが、パソコンの天才で、政治活動の魂といわれる私の後援会の名簿の一括管理という一番大切な仕事をしていただいております。当然在宅でやっておりますし、事務連絡は全部インターネット。

それらのことを通じて、私自身は、専門的に障害者施策ということで取り組んできた訳ではありませんが、そういうネットワークの中で、様々な皆さんの御指導をいただいてきたことを本当に幸せに思っています。

本日も、皆様方から貴重な、率直な御意見をいただきましたので、副大臣、政務官、それぞれ来ておりますので、しっかりとチームを組んで頑張って、形として実行し、皆様方にお返しをしていきたいと思います。

さて、障害者施策につきましては、今日もお話がありましたように、障害者基本計画等に基づく施策の総合的な実施、そして障害者基本法の検討規定に基づく施策のあり方等の検討、そして、障害者の権利に関する条約の早期締結を目指した国内法制度の整備など、私たちには大変多くの課題があります。これらの課題に対しまして、皆様方の力をかりてスピーディに、そして確実に取り組んでいく覚悟を持っているところであります。

今後とも、担当大臣として、これまで皆様方からいろいろいただいたアドバイスとか経験、事例を生かしつつ、本日いただいたたくさんのすばらしい御意見を踏まえて、各省庁と連携を図りながら、障害施策の目指す共生社会、先ほども総理が何度もおっしゃいましたように、共生社会の実現に向けて着実に、確実に取り組んでまいりたいと考えております。

委員の皆様におかれましては、本日は長時間本当にお疲れさまでございました。今後とも、皆さんの手で日本の幸せや日本の明るさ、日本の強さを是非とも実現していただきたく、心から御協力、御指導をお願い申し上げまして、私の方からお礼のごあいさつといたします。ありがとうございます。

○京極会長 どうもありがとうございました。

この協議会はいつも時間が足りなくなりまして最後はばたばたになってしまいますが、今日は、大変申し訳ないんですけれども、司会の不手際で、逆に急がせ過ぎたということで、もう一言発言したかった方がたくさんいらっしゃると思います。

これをもちまして、取りあえず今日の議論を踏まえまして、今後、施策の推進が図られることを祈っております。

本日の会合を終了させていただきます。

次回の開催は、事務局を通じて連絡させていただきます。

本日は誠にありがとうございました。