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障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会(第10回)
議事録

○棟居部会長 定刻になりましたので、これより第10回「障がい者制度改革推進会議差別禁止部会」を開催させていただきます。
差別禁止部会は一般傍聴者の方にも公開いたします。また、会議の模様はインターネットを通じても幅広く情報提供いたします。
なお、御発言に際してのお願いとして、発言を求めるときはまず挙手いただき指名を受けた後、御自身のお名前を述べられてから、可能な限りゆっくりと御発言いただくようお願いいたします。
本日の会議は18時までを予定しております。
最初に委員及び専門協力員の退任等について報告をいたします。
日本労働組合総連合会の小島委員が退任され、今回より同連合会の伊藤彰久委員が就任されました。伊藤彰久委員、よろしくお願いします。(拍手)
また、相澤専門協力員より、業務上の担当が増え、差別禁止部会への出席が困難になったことから、退任したいとの申出がございました。これを了承いたしました。
報告は以上です。
それでは、東室長から委員、オブザーバー及び専門協力員の出席状況と資料説明をお願いいたします。
○東室長 どうもこんにちは。担当室の東です。
それでは、本日の出欠状況についてお知らせします。本日は川内委員、松井委員、山本委員が御欠席、遠藤オブザーバーが1時間ほど遅れて御出席の御予定です。その他の委員、オブザーバー、専門協力員は御出席でございます。
まず最初に報告がありますが、実は委員の方から太田委員の発言をより聞きとりやすくする工夫が必要ではないのかといった御意見がございました。そこで太田委員ともお話をさせていただきまして、その結果として今回から太田委員の机の横にパソコンを設置して、要約筆記の画面が見られるように工夫しまして、要約筆記自体がちゃんと拾えているかどうか支援者の方に確認していただいて、聞きとれない部分があれば再度太田委員の方から言い直してもらうことにしました。
それとともに、本来は太田委員が発言されて、その意味がわからないのであれば、わからない委員の方から、もう一度そこはどういうことですかというふうに聞き直すといったことが求められるのではないかと思っております。ですので、そういう場合につきましては遠慮する必要はないとのことですので、きちんと皆さんの方でそこはちょっとわかりませんという形で、もう一度お願いしますという形で聞いてほしいということでした。
太田委員の方でも、長くしゃべられると、どこで質問していいのかとかわからないこともありますので、できるだけ切ったような形でお話していただければいいかなと思っております。
そういうことですので、こういうやり方をこの会議の1つのルールという形で定着していっていただければと思っている次第です。
本日の議事は15分の休憩を2回とることとしまして、3つのコーナーに分けます。
第1のコーナーは100分で差別禁止に関する個別の分野のうち、司法手続について議論いたします。
第2のコーナーは60分で、同じく個別分野のうち選挙等につい議論することにします。
第3のコーナーでは、差別禁止部会における今後の議題について一応の案を報告した後で、皆様方の御意見をいただきたいと思っておる次第です。
以上が今日の予定ということであります。次にかなりの資料がありますので、資料の確認等をさせていただきます。
まず、いつものように議事次第と配席図というものがありますが、議事次第がお手元にありますか。資料一覧ということで載っております。
資料1「検察改革-その現状と今後の取組-(平成23年7月8日最高検察庁)」。この資料には司法分野における障害者との関連での取組みといったものについても触れてあります。ですので、第1コーナーのところで用いる資料です。
資料2「障がい者に係る投票環境向上の現状について(平成23年統一地方選挙以降の知事選挙での状況)」。総務省より出されております。これにつきましては第2コーナーのところで用いることにります。
資料3「障がい者に係る投票環境向上に関する検討会報告書」。資料2の前提となった報告書であります。
資料4「差別禁止部会における今後の議題(案)」。先ほど言いました第3コーナーで使う資料です。
そのほか順番を飛ばしますが、参考資料として司法分野における障害者に対する配慮に関連した法律等の抜粋として、参考資料1が出ております。したがいまして、第1コーナーに関係する資料ということでございます。
参考資料2としましては「司法手続に関する参考文献」ということで、判例等が挙がっております。
参考資料3「障害者に対する障害を理由とする差別事例等の調査」ということで、これは内閣府が委託調査したものの中から司法もしくは政治参加、選挙といった辺りの事例の抜粋でございまして、第1コーナーと第2コーナーに関係するものであります。
続きまして、委員から4種類ほど資料が出されております。
専門協力員ほか数名の委員等から「司法及び選挙における外国法制」というものが出されております。これは外国では例えばこういうふうになっているということを調査してもらったものでございます。ですので、司法につきましては第1コーナー、選挙等につきましては第2コーナーで関係してくる資料です。
続きまして池原委員、大谷委員、竹下委員から司法における差別の事例集が挙がっております。1冊になっておりますけれども、中身としては個別の事例をまとめたものがずっとありまして、その後、自立支援法に対する訴訟の中で特に傍聴に関連して生じた手話通訳の問題についての本の抜粋があります。ページで言うと13ページまでが個別の事例集で、14ページ以下が今、言ったところになります。それとともに20ページからは「障害を理由とする差別を禁止する法律」日弁連法案概要といったものの中で、参政権と司法の部分だけを抜粋したものが出されております。
当日配付資料となりますが、引馬専門協力員から司法及び政治分野に関するEUの動きについての報告書が挙がっております。これにつきましては第1コーナーと第2コーナーで関係する資料になります。
また、川島委員から法案の概要的なものとして、総則の部分、各則の部分を触れた川島案といったものが出されております。
更に太田委員の方から「障害者権利条約総務省関連の項目についての意見書」「障害者権利条約法務省関連の項目についての意見書」と題して、日本障害フォーラム名義の資料が1つ綴じで出されております。
川島委員提出のものは第1コーナー、第2コーナー、第3コーナーに関連するものとなります。
以上が今回の資料なんですが、当日資料が分量としても随分挙がっております。しかしながら、当日資料は当日アップすることはできません。テキストで事前に委員に送るということもできませんので、できるだけ早めに出していただきたいと思っております。
資料説明としては以上でございます。
○棟居部会長 ありがとうございます。
それでは、議事に入らせていただきます。
第1コーナーは100分で司法手続についてです。最初に東室長から10分程度で御報告をお願いします。資料1と参考資料1を御参照ください。
○東室長 法務省の方から参考資料1が出されておりますが、これらは捜査、公判において障害の状況や程度に応じたさまざまな配慮が行われるといったことに関連する条文を抜き出していただいております。
実は司法の問題につきましては以前、推進会議でも議論したところでもありますし、それを受けて法務省からのヒアリングも行っていたものであります。ですので若干そのときの状況をこれから説明したいと思っております。
まず捜査段階における配慮という点でありますが、法務省からヒアリングを行った第9回障がい者制度改革推進会議におきまして、当時の中村政務官から「捜査段階においては逮捕状の提示、弁護人選任権や黙秘権の告知、取り調べ等の各場面において、発問をできる限りわかりやすく行ったり、手話通訳や筆談を利用するなど、障害の内容や程度などに応じて適切な配慮が行われているものと承知している」といった御説明がありました。
推進会議の後の法務省の説明も含めますと、具体的には、被疑者に逮捕状を提示する際、被疑者において目が見えない場合や字を読むことができない場合、知的障害がある場合においては逮捕状の記載内容をできる限りわかりやすく読み聞かせているといったことであります。
また、検察当局においては取り調べの際、被疑者や被害者の特性を考慮し、例えば聴覚障害者に対する取り調べにおいて、手話通訳による通訳を介したり、筆談を行うなどの配慮をしているほか、被疑者等の特性に応じた適切な発問を行うなど、意思疎通に配慮しているといったことが述べられております。
次に、公判中における配慮に関しましては、公判段階においても刑事訴訟法176条などにより、例えば聴覚障害の場合は実務上、手話通訳などによる陳述がなされているといったほか、知的障害がある場合など、意思疎通が困難な者に対する質問等の場合は、発問をできる限りわかりやすくするとともに、質問等を正確に理解できているのか適時確認をするなど、そのような対処をしているといったことも言われております。
さらに、証人の年齢や心身の状態、その他の事情を考慮し、裁判所への出廷に当たっては被害者支援員により付き添いを行うほか、証人尋問の際に被告人と証人の間で一方から、または相互に相手の状態を確認することができないようにするための措置、傍聴人と証人の間で相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置などを講じたり、更にはいわゆるビデオリンクによる証人尋問を実施するなどの配慮が行われている、できることになっているということであります。
また、最近では例えば視覚障害とか聴覚障害者が裁判員や補充裁判員に選任された裁判員裁判において、視覚障害者のための点字資料を作成したり、聴覚障害者のために供述調書をモニター画面に映すといった配慮がなされることもあるそうであります。
なお、裁判の傍聴における配慮等につきましては、改正障害者基本法29条は、司法手続に直接参加する当事者が対象となっておりますので、傍聴者への配慮は含まれていないということになりますけれども、裁判所では障害の特性に応じて庁舎内の移動に際して職員が介助するなどの配慮が行われているということであります。
次に推進会議におけるヒアリング以降の新しい取組みとして、本年3月にとりまとめられております検察の在り方検討会議の提言の内容を若干御紹介いたします。
この提言におきましては、例えば知的障害によりコミュニケーションに困難を抱える被疑者等の取り調べについて、研究者や障害者団体の意見を十分に聴取しつつ、取り調べ全過程を含む広範囲な録音、録画を行ったり、心理、福祉関係者の立ち会いを求めるよう努めるなど、さまざまな試行を行うべきであるという点とか、先端の専門的知識を集積、活用するため、専門的分野に関するシンクタンク機能を有する分野別の専門委員会の設置を進めるべきであるといった点が指摘されておりました。
なお、検察の在り方検討会議におきましては、被疑者取り調べに当たり、被疑者と取調官との実質的な対等性を確保するために、多くの国で認められている弁護人の立会権を認めるべきでないかといった問題提起がなされておりましたが、この会議の提言では一定の方向性は示されておりませんでした。ただ、同提言を踏まえて設置された法制審議会の部会において議論、検討することが同提言においても期待されているところであります。
当時の江田法務大臣は、検察の在り方検討会議における提言を受けて、検察当局に対して本年4月、知的障害によりコミュニケーションに困難を抱える「被疑者等の取り調べの録音、録画については3か月以内を目処に試行に着手し、1年後を目処に多角的な検証を実施する」こと。更に「最高検においては先端の専門的知識を組織的に集積・活用するため、3か月以内を目処に分野別の専門委員会を設置する」ことを指示されておられます。
これを受けまして、検察当局では各庁の実情に応じて知的障害の程度などの被疑者の特性などの種々の点を考慮し、知的障害によりコミュニケーションに困難を抱える被疑者などの取り調べの録音、録画の試行を実施しているそうであります。
本年7月、知的障害に関する知見を集積し、これを有効に活用するとともに、知的障害者に対し刑事政策上必要な配慮が適切に行われることを目的として、最高検察庁に「知的障がい専門委員会」が設置されております。この委員会では外部専門委員と連携し、必要な調査分析を行うとともに、適切な方策について検討が行われているそうであります。
なお、現在法務省の法制審議会において取り調べの可視化の導入を含め、刑事の実体法及び手続法の整備の在り方について、新たな刑事司法制度を構築するための審議が行われているところであります。
更に、その他の取組みとして本年4月、最高検察庁は各地方検察庁に対して、人の特性に関する各検察官の知見を涵養させるために、精神科医を含む精神医療関係者や福祉団体、福祉関係者等との意見交換や、講義等の機会を設けるよう指示したということであります。
以上が推進会議におけるこれまでの法務省の説明並びにその後の取組みといったものであります。こういうことを前提に議論をしていただければと思っているところです。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございます。
続きまして、池原委員、大谷委員、竹下委員からの提出資料がございますが、提出資料について15分程度で大谷委員が御報告をされるということでお願いをします。委員提出資料を御参照ください。
○大谷委員 大谷です。時間をとっていただいてありがとうございます。
今、東室長からの報告にもありましたように、我々制度改革推進会議の方でのヒアリングのときに、法務省からの説明に大きな驚きを持ちました。我々というのは、少なくとも弁護士である私は、その事実とかけ離れたことが報告されたと認識しました。
今日はこれを討議するに当たって、そのときの法務省の認識と我々法律実務、少なくとも弁護士として事件を取り扱っている過程において、感じていることとの落差を知っていただくために、急遽我々が業務の範囲でとりまとめたものということで、参考資料として提出させていただいたものが今日配付されているものです。ですから、これが全部ではない。少なくとも我々が経験したことでもこれだけあるということで、理解していただきたいと思います。
非常にだらだらずっとそれぞれの事件を集めたものですから、読みにくいかと思いますので、少し要点を説明させていただきたいと思います。
大きく言うと、まず法務省の方も言っていたように捜査段階、取り調べ過程でのものということで言うと、やはり知的障害の方、発達障害の方に対する不利益取扱い、障害特性を理解されていないがゆえの不利益取扱い、もしくは障害特性にかこつけてと言ったら失礼かもしれませんけれども、障害特性を理由にして、そのものによって不利益取扱いをしているかと思われるような事例が、取り調べ過程において経験しているところだろうと思います。
具体的に言うと誘導されやすい、1つのことにこだわりが強い、もしくは決めつけられたことに対して反論しにくいという知的障害、発達障害の方が持っている固有のそういうような障害だと、密室での取り調べに関して十分な反論ができない。よって、結果として冤罪もしくは不当な逮捕といったことにつながってしまう事例が我々の中では多々報告されております。それが最初の方に報告している刑事事件、冤罪ということで報告させてもらっているものです。有名なところで言えば宇都宮事件がそうでありましたように、名前のない無名の事件であっても、これは本当に多々あるものです。障害特性さえ理解されていれば、そして取り調べ段階における刑事がそのことを理解していれば、このようなことにはならなかったと思われるケースが多々報告されております。
それは1つの障害特性による不利益取り扱いというふうにまとめることができると思いますけれども、もう一つ大きなものとして、障害によるアクセス権の保障がない、要するに排除される。これは逆から言えば合理的な配慮さえされれば司法にアクセスが十分できたにもかかわらず、それがされていなかったケースであります。これは特に通訳の問題で表れていると思います。これはケースでも例えばアクセス権の保障となりますと11ページ以降の視覚障害関係、聴覚障害関係等において手話等が保障されていなかったというケースであります。これを少し理解していただきたいと思いますが、逆にこのことに関しては法律で既に明記されているところがあり、逆に今日配付されている法務省がつくられたという関係法律等を見ていただいた方が、より理解されやすいかと思いますので、それをちょっとごらんいただきたいと思います。
皆さん御存じのように、手話は必ずしも法廷、取り調べ、接見、面会等において保障されているわけではありません。具体的にどういう規定になっているかというと、例えば民事事件の裁判のときには154条、口頭弁論に関与する者が日本語に通じないとき、または耳が聞こえない者、もしくは口がきけない者であるときは、通訳人を立ち会わせる。ただし、耳が聞こえない者または口がきけない者には文字で問い、または陳述させることができる。要するに筆談でもいいことになっております。ですから通訳人がいれば通訳人を立ち会わせますけれども、しかし筆談でもいいんだから筆談でやりなさいということにもなっております。これによって筆談が強制されることにもなって、要するに通訳が保障されない事態になっている。これが154条です。
○棟居部会長 大谷先生、それはこれにありますか。
○大谷委員 参考資料1の法令を見ていただいた方がわかりやすいと思って説明しております。
○棟居部会長 ございました。ありがとうございます。
○大谷委員 法令にそれが書いてありますので、逆に法律上は筆談でも可ということになっていることを理解していただこうということで、今、そういうふうに説明させてもらっております。
刑事訴訟はどうなっているか。刑事訴訟は6ページの175条、176条がそれに該当する条文です。175条というのは、これは国語に通じない者に陳述させる場合には、通訳人に通訳をさせなければならない。これは刑事訴訟法の175条の規定。ですから、これはある種義務的に通訳をつけろということになっております。これは公判廷でのことですけれども、そうなっている。
176条、耳の聞こえない者または口のきけない者に陳述させる場合には、通訳人に通訳をさせることができるということで、裁量行為になっております。ですから、必ずしもつけなくてもいいけれども、つけてもいいよという裁量行為であります。ここが外国人の場合と障害のある場合では、明確に差をつけているということになっております。
こちらには載っていないんですけれども、拘置所もしくは刑務所における接見、面会のときにはどういうことになっているかというと、これは刑事訴訟法ではなくて刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律というものがあります。これですと面会のときには暗号の使用その他の理由によって、刑事施設の職員が理解できない表現方法をした場合には、その面会を中止させることができるというふうになっています。これは具体的には刑事収容施設及び被収容者の処遇に関する法律113条で規定されている。これがときに手話が暗号の扱いを受けて、手話の禁止ということになっております。
75条は規則の方ですけれども、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則。先ほどの法律を受けた規則ですが、同じようにその法律を受けてそういうものが使えません。暗号に通じる手話は使えないということを、事前に刑事施設内の見やすい場所に掲示しておくようにという規定になっております。その結果、多くの刑事施設もしくは刑務所において手話が使えず、筆談を強制される事態になっております。一部において理解のされた拘置所においては手話通訳を配置しておきましょうということで、解決した事例もありますけれども、原則このような規定になっている以上、暗号の使用ということで手話が禁止されるおそれは多分にあるという事態になっております。それはですから障害の理由によってアクセスが保障されていないという大きな事例だろうと思っております。
大きなケースで言えば、訴訟能力の問題があります。これは精神障害の方もしくは知的障害の方に大きな問題になると思われますけれども、精神障害によって是非弁別能力がないということになれば、それはそれとして手続が進むんですが、そうではないと判断された場合における訴訟行為における援助はまた非常に意外なことに、私は法務省がおつくりになったということでさもありなんと思ったんですけれども、このように配慮しておりますという形で出された法規の刑事訴訟法第28条、要するに刑事訴訟法においては障害者に対してこれだけ配慮しておりますということで、とりあえずこんな条項がありますよということで提示されたものでしょうが、刑事訴訟法28条という条文があるんですけれども、正直申し上げて39条、41条というのは心神喪失ではないということになった場合のことなんですが、法定代理人をつけることができる。要するに未成年だったら親が訴訟行為についてこれを代理するという規定がありますけれども、刑法の手続においてこれが利用されたことは希有。少なくとも私が調べた限りでは本当にないです。
ですけれども、こういうふうに配慮していますということで28条を一番最初に、条文の順序からするとこうなるんでしょうが、ちょっと意外な感じです。訴訟能力がないという形で判断のある場合には、公判の執行停止ということで刑事訴訟法314条が問題になって、公判の途中で裁判をやめなければいけないという事態があるやなしやということが問題になって、本日配られているどなたかが提出していただいた被告人の訴訟能力、参考資料2の問題で問題になるぐらいであって、精神疾患もしくは知的障害が重度な場合の刑事犯における訴訟追行は非常に問題がある事態になっております。この辺に関してはもし補足があれば補足していただきたいと思います。
もう一つ大きな問題は医療の保障です。これは精神障害の場合もそうなんですけれども、刑事施設における医療の保障がほとんどされていないということが大きくあります。これは難病を抱えている人が刑事犯になる場合もあるんですが、難病の人の保障もない。これに対しても本日の配付資料、これは480条以降にこういうような保障がされておりますという形で条文が記載されておりますけれども、480条は心神喪失の状態になったときには執行の停止をしなさいという、必要的執行停止ですが、482条は病気になった場合には執行停止することができるという、これも裁量的執行停止になっております。ということで、多くの難病患者の方は非常に厳しい条件の中で、刑務所の中で貧しい医療に悩まされているという実態があります。
これらのことも、このような規定があっても運用上もしくは裁量行為によってほとんど権利保障に至っていない。その結果として不利益を受けているし、合理的配慮もされていないということが、本日私たちが示した13ページにわたる事例の中に全部網羅されておりますので、全部読み切るにはなかなか大変かと思いますけれども、是非目を通していただいて、司法における差別、不利益取り扱いもしくは合理的配慮というのは何が必要かということを是非新しい法律に盛り込んだ形で、裁判官にも、検察官にも、勿論私たち弁護士にも、それから、警察官もしくは刑事施設の職員に対しても、要するに裁量行為ではなくて、こういうことはしてはいけないんだということの規範性のある差別禁止法が、是非とも必要だということを理解していただけるのではないかと思っております。
以上です。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
池原委員は特に今、補足をされることはございますでしょうか。よろしいですか。
なお、今のお話に関連いたしまして、専門協力員他数名から提出いただいております資料、司法へのアクセス権利条約13条、政治的及び公的活動への参加29条という2枚とじの資料は、他国でどのような法律をつくっておるかという参考事例が出ておりますので、それも御参照いただければと思います。
それでは、議論に移らせていただきたいと思います。議論につきましては第1コーナー終了を15時50分を予定しておりますので、1時間以上の時間があることになります。ということで、たっぷりいきたいと考えております。
太田委員、お願いします。
○太田委員 太田です。今回から私の発言に合理的配慮をいただき、まず冒頭、感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
○棟居部会長 ありがとうございます。
先ほど室長からもお話がありましたやり方でお願いしてよろしいですか。
○太田委員 今の大谷委員の発言に関連してでありますが、刑事施設処遇法で手話が暗号とされているという解釈によって、手話による面会者との会話が禁止されている実例は、昨日、私たちの会議でも報告があったところであります。
手話は暗号ではありません。きちんとした日本語であり、言語です。暗号というのは何か他人に知られたくないことを、当事者間にわかるコミュニケーション手段として暗号というのはあるわけで、もしそういうふうにとられるとしたら、非常に聴覚障害者の生活を愚弄している解釈によって、刑事施設は障害者に対しているのではないかと思います。非常に怒りを感じます。これは差別禁止法という法体系ができてもできなくても、即刻改善をされる必要があると思います。
また、知的障害を持つ被疑者に対する接し方について、今の障害者差別の在り方の本質を垣間見る思いがします。つまり、警察、司法、要はマジョリティーが描いたストーリーを弱い立場の者に押し付けて、それをよしとするやり方については差別の象徴と言えるように思います。
難病の人たちに対する配慮でありますが、多分これは議論が分かれるように思いますけれども、障害者団体としては他の者との平等という観点に立ちながら、刑の執行を止めるというのではなく、刑事施設内にきちんと障害のある人たちが刑事施設内の処遇といいますか、さまざまな障害を持つ人たちが処遇を受けられるような環境、すなわち合理的配慮というものが必要だと考えます。
○東室長 太田さん、やはりわからないところがあります。
どういう人たちが合理的配慮が受けられる必要があるとおっしゃったのか、私はちょっと聞き取れなかったんですけれども、もう一度お願いします。
○太田委員 難病、身体障害者、知的障害者、精神障害者、さまざまな障害の人です。
○東室長 わかりました。ありがとうございます。
○棟居部会長 以上でよろしいですか。
○太田委員 昨日お話に出たのは、起訴前鑑定の不当性。刑事訴訟法では逮捕から起訴まで23日間以内に検察は起訴しなければならないとありますが、起訴前鑑定となると23日を超えて何日でも拘留を受けるという問題があるとすれば、心神喪失というような精神疾患に関することでありますが、そういう問題を解決していただきたい。
今、言ったのはほんの数例ですが、実際に起きていることでありますので、よろしくお願いします。
○棟居部会長 ありがとうございました。
それでは、御確認をいただくということでよろしいですか。
○太田委員 文字通訳は全部正しく行われています。
○棟居部会長 ありがとうございました。
今の御発言について、あるいはほかの論点につきまして、時間は1時間弱まだございますけれども、私の余り印象をしゃべると川島さんとかに怒られるかもわからないけれども、法律としてちゃんとありますよと法務省の側はいろいろ規定をおっしゃっている。しかし、先ほどの大谷委員は規定とは離れた実態があるんだと。この両者はかみ合っていないわけです。我々が法律をつくる材料といいますか、いろいろ考え方をここで議論しているつもりなんですけれども、ゴールはあくまで法律、規範です。規範のできが悪いのであれば、それを直していく必要があるけれども、規範はそれなりにあるけれども、現実がずれているというときに、その規範の方の議論というのがどこまで現実にインパクトを与えられるのか。
まず、恐れ入りますが、大谷委員。
○大谷委員 大谷です。
説明の仕方が悪かったのかもしれませんけれども、法律そのものが既にもう差別的であるというところもまずある。少なくとも手話は外国語以下という扱いがされている。外国語においては通訳を付さなければいけない、必要的通訳事項になっているのにもかかわらず、手話の場合にはそれさえもなくできる、もしくは筆談も可という扱いになっているので、せめて外国語と同じに。外国語と同じと言われると手話を使っておられる方に異論が出てくるのかもしれませんけれども、少なくとも通訳を介さなければならない者には、必ず通訳を付するという形で規定しない限り、この格差は是正されないわけだから、法そのものが問題である。
それから、法はそのことを規定していないということがある。これまた論議のために、あえて私は法務省の書いた文章だということがわかると、なおさらのことかと言われてしまうかもしれませんけれども、例えば先ほどから紹介させていただいている参考資料1なんですが、その中で刑事訴訟法でヒアリングの過程では逮捕状の提示、黙秘権の告示は適切にやっておりますと言っておりましたけれども、確かにそういう人もいるかもしれない。しかし、法の規制が全くない。そのことに関して例えば知的障害があるということがわかった被疑者に対しては、こうしなければいけないというような法律の規定がない。だからその場面によっていい警察官に当たればちゃんとやってくれたかもしれないが、知らない人はひどい扱いをされることがある。
加えて、そのことをなお書き以降なんですけれども、逮捕状の提示や黙秘権の告知等の適正手続、自白の任意性の有無等については裁判所の判断に委ねられた事実認定の問題であり、当該事実認定等を踏まえ判決で有罪、無罪等の言い渡しがなされることとなる。このように法務省が説明されておられるんです。
ここまで私はヒアリングの過程で聞いたかどうか記憶していないんですけれども、しかし手続的正義というか、手続が保障されなければならないということは、必ずしも有罪、無罪に関わる事項だけではないです。手続は手続自体において他者との平等において保障されなければいけないにもかかわらず、裁判官が判断するときにいわゆる違法手続があった場合には証拠排除される。証拠排除されるから無罪になるからいいのではないかという発想であるとしたら大間違いであって、証拠排除だけの問題ではない。違法手続の結果、証拠排除にならなくても、その手続だけによって不利益を被っているということがあるわけですから、逮捕状の提示、黙秘権の告知、その適正手続違反は必ずしも裁判官が独自に判断する事項ではなくて、その場その場における保障がされていなければならない。その規定がないんです。そういうようなことを規定されたものがない。
ですから、それは合理的配慮の問題なのかもしれませんけれども、不利益に扱ってはならないという、不利益取り扱いの禁止の方になるのか、両面の問題があると思いますけれども、その両面からもそういう規定を差別禁止法に設け、それを受ける手続規定として刑事訴訟法の方にもそこを設け、なおかつ、このように外国語との差があるところに関しては、ちゃんと任意的通訳事項にきちんとするようにということも踏まえた改正が必要ではないかということを私は言いたかったんです。
○棟居部会長 今、参考資料1、法務省提供のものをお使いになりまして、その4ページ、刑事訴訟法における障害者に係る規定の例。この一番最初の2段目といいますか、なお以下について大谷委員は言及されたわけでして、一々こういう通訳というか翻訳は必要ないぐらいクリアーにおっしゃっているわけですけれども、事実認定の問題のポイントはここですね。大谷委員は事実認定ではなくて法規の欠落であるとおっしゃっている。
○大谷委員 事実での問題でもありますけれども、証拠排除の問題だけではないのではないか。
○棟居部会長 いずれにしましても、法律の内容あるいは不足の問題を大谷委員がおっしゃれば、法務省の側は事実の問題ですよとなかなかかみ合ってこないのか、あるいはもう少しうまく接点ができないものかと思うんですけれども、とりあえずまず大谷委員につきまして、私は素朴な疑問を申し上げました。
竹下副部会長、お願いします。
○竹下副部会長 ホットな事例なんですけれども、今、日本弁護士連合会に申立があった案件です。埼玉県の視覚障害者が裁判の当事者となっているそうですが、裁判で提出される準備書面とか訴訟資料という、訴訟に提出される書類が点字で自分に提供されないのは差別であるという申立が来ております。 この申立がなされた背景には、昨年名古屋で名古屋市を相手とする介護保険の支給量に関する訴訟がありまして、原告は全盲の女性だったのですが、その女性が弁護士をつけずに自ら訴訟を提起したことから、点字の訴状を裁判所に提出されました。裁判所は迷ったようですけれども、最終的にはその訴状を受理し、我々は点字に対して墨字と言うんですけれども、活字文字に置き換えて被告に送付し、更には今度は被告は名古屋市なわけですが、被告に答弁書は点字でできれば提出するようにという指導があった。そういう事例を踏まえてだろうと思うんですが、そういう申立が来ています。
では、これは人権侵害と言えるのかというのが日弁連としては悩ましく、今調査をしているわけでありますが、合理的配慮としてどこまでが問われるのかということで、1つの事例になっているので御紹介しておきます。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
西村委員、お願いします。
○西村委員 今、大谷委員からお話をされた事例等々を聞きながら思っていたんですけれども、この差別禁止部会は障害者権利条約を批准し、障害者の差別をなくすためにどういった法律をつくることが重要なのかということでこの間、議論をしてきたと思います。そのために外国の法律を学び、差別類型などを検討してきたと思います。
この検討過程で、差別の類型、例えば障害に基づく直接差別なのか、関連差別なのかということについて言えば、今回、具体的に挙げられた状況から、差別は、複合的な類型の関係の中で起きていることが見えてきたと思います。
また、欠格条項を含めたヒアリングの中で出てきた意見がございました。それは単に差別を禁止する法律をつくるだけではなく、既存の法律そのものの中に障害者を差別、排除する規定があるのではないかと言われました。
これまでは労働分野を議論し、労働法令の中に差別禁止規定の必要性を議論していたと思いますが、今回の事例を聞いて驚きました。
法律の中でまさに大谷委員が言われるように、手話が外国語以下である、あるいは知的障害を含めた配慮が現場ではされていない。そしてそれは法的根拠があるということは、極めて深刻な問題として受け止めなくてはいけないと思います。
ですから、今後の議論に当たっては、個別分野で起きている差別の具体的事実は重要ですが、併せて関連する法律の検証と対応も差別禁止法をつくることと同じく重要であると思います。この後出てくる分野は日常生活、教育、公共施設等々ですが、この後の議論で検証することが必要であると思いましたので、発言をさせていただきました。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
確認したいんですけれども、これは我々せっかく今まで直接差別、間接差別という概念の区別をしてきて、しかしながら現実の法律の中では間接差別的なもの、つまり一見中立的だけれども、障害者に当てはめた場合、対象が障害者の方の場合には非常に差別的に機能してしまう。むしろこれは排除していく形になる。こういう問題点を現行法についていろいろ指摘をしていく。そして間接差別禁止ということを規範として掲げる意味を我々なり確認していく必要が今後あるのではないかという御指摘と受け止めてよろしいでしょうか。
○西村委員 そのとおりです。
もう一つ、これを考えるときに障害者基本法は既に法律として成立しています。その中で手話は言語であることが明確になっています。この規定を受けて、関連法の見直しが求められると思います。そうすると、権利条約の批准だけではなく、障害者基本法の規定が、各個別法に反映される必要があります。もし反映されていなければ、それは当然基本法に基づいて見直すべき法律ということになると思いますし、そのための具体的な対応も検討する必要があると思っています。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
お待たせしました。川島委員、お願いします。
○川島委員 ありがとうございます。
今、大谷委員、西村委員のお話がありましたけれども、数点私からこれは議論した方がいいのではないかという点を挙げたいと思います。
まずは刑事訴訟法175条、176条における差別的規定という、障害者差別禁止法とは別の現行法の見直しのチェックというのは当然必要だと思うんですけれども、大谷委員がおっしゃられたとおり、もう一つ合理的配慮の規定が具体的に明記されていないので、それを差別禁止法の中にある程度具体的に書き込む必要がある。しかし、その際に過重な負担という要件が合理的配慮という概念には一般に盛り込まれているわけで、ただし、この司法アクセスなどに関しては、過重な負担の中でも金銭コストなどについては原則要件に入れるべきではないのではないか。
ただ、司法手続のルールの本質を根本的に変えてしまうような合理的配慮というのは、さすがに過重な負担だとみなすことはできると思うんですけれども、金銭コストについては入れなくてもいいのではないかという、過重な負担の具体的内容について1回議論しなければいけないのではないか。
2点目が、そもそも合理的配慮の限界という論点なんですけれども、つまり当事者が何か手続をする際に合理的配慮を要請して、それはできないよという形の回答があり、そこでまた時間をかけて配慮を提供しないことが差別に当たるのかどうか議論をずっとするのは、あまりにも権利の実効的保障という観点からは問題がありますので、合理的配慮という事後的、個別的な差別禁止規定だけではなくて、いわゆる事前的な、予測的な措置というものを差別禁止法の中にちゃんと入れ込んで、例えば検察官、裁判所職員、弁護士の方々等に対する教育啓発訓練を義務づけたり、しかも単に義務づけるだけではなくて、それをモニタリングしていって、継続的に常に障害のある人全般のニーズを考慮しながら手続を改善していく法的義務を課す。
勿論、そのような義務というのは具体的な不利益を被った人がいない限り、裁判に訴えるという話にはならないのかもしれないんですけれども、オーソドックスな合理的配慮とは質的に違うんですが、事前の積極的義務というものを入れないと実際に裁判を利用する方々からしてみれば、合理的配慮は使いづらいし、それを要求された側からしても、突然言われても準備不足でできませんということになってしまうので、あらかじめ事前の措置を差別禁止法に入れるべきだとは思っておりまして、この点も併せて検討した方がいいのではないかと思っております。
以上です。
○棟居部会長 確認ですが、今おっしゃった事前の措置というのは、今までどこかで御発言の中にも入っておりましたか、それとも今回新たにということでしょうか。
○川島委員 私の記憶では、今日初めてだと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
野沢委員、お願いします。
○野沢委員 弁護士の先生方が資料をつくっていただいて、私も特に知的障害の彼らが遭った事件というのはあれこれと携わってきたものですから、ここに載っているのはほんのごく一部で、載っていないものの話をしたら何時間もかかるぐらいなのであえて言いませんけれども、特に知的の人たちというのは被害に遭ったときはなかなか救ってもらえなくて、一度嫌疑をかけられるととことんいろんなものを背負い込まされることは、どこでもそんなことを聞きますし、私自身もそんなふうに思っています。
今日は特に知的のこともそうなんですけれども、知的の遅れを伴わない発達障害についても、彼らは相当司法の場で大変な状況にあるというお話をさせていただきたいと思います。
先ほどもどなたかからお話がありましたけれども、知的障害のある人たちに対してゆっくり話したり、丁寧にわかりやすく話す。これは勿論大事なんですけれども、発達障害の彼ら、知的の遅れを伴わない彼らには、こういうような話し方では全然通用しないんです。
コミュニケーションというのは基本的に共通認識や共通体験というものが土台にあって、それによって暗黙の了解事項でかなり成り立っているものであって、それが通用しない彼らというのは一体どういうことになるのかというと、例えば捜査の段階で人を殺す経験をしてみたかったと言った少年がいます。あるいは自分が死なせてしまった相手はもうこの世にいないんだから、反省のしようがないと言った彼らがいます。こんなものを新聞報道されるととんでもないやつだというレッテルを貼られて、社会的にバッシングを受けるし、司法の場でも厳罰化の道に追いやられていくと思うんですけれども、ただ、発達障害の人たちの心理特性に詳しい専門家なんかに言わせると、これはだれだって当然持っているものであって、子どもで人を殺したらどうなるのかなんてこれっぽっちも思わない子どもなんかいないと言うんです。
だれだって昆虫の足だの抜いてしまった経験があるぐらいなので、ただ、それを言葉に出して言ったらどういうふうに見られるかわかっているからあえて言わないだけであって、彼らは正直にそれを言っているわけです。亡くなってしまった相手が目の前にいないから反省のしようがない。これは彼らの論理から言わせれば全くそのとおりで、ただ、こんなこと我々もちょっと思ったって言ったら、どういうふうに思われるかわかるからあえて言わないことである。
これはイギリスなんか行ったときも同じで、麻薬の売人で逮捕されたアスペルガーの青年が、裁判所で裁判官に自分がやったことが悪いことだと認識があるのかと聞かれたときに「どうして私が悪いんだ。ちゃんとした適正な量の麻薬をはかって、適正な価格で売っているのに悪くないじゃないか」と言って、これまたとんでもないというレッテルを貼られたことがあって、どこの国でも同じような状況だと思うんです。
日本でこういう人たちの問題というのがクローズアップされたのは、恐らく2000年に愛知県で高校生がおばあちゃんを刺殺してしまって、人を殺す経験をしてみたかったということでマスコミが大騒ぎして、その3年後に長崎で発達障害の中学生が幼児を誘拐して突き落として死なせてしまったということで、またマスコミが障害名を1面の見出しに大きく掲げて、そのころに物すごくマスコミ批判があったんです。そのころからマスコミは余りこういうものについて報道しなくなってきたんです。特に障害名については表に余り出さなくなってきた。だけれども、よくよく調べてみるとこういう事件は今でもいっぱい起きているんです。母親にカリウムを飲ませて衰弱していく様子を観察した女の子だとか、塾の先生が小学生の女の子を殺してしまったとか、ホームから人をつき落して死なせてしまったとか、自宅に放火して家族を死なせてしまったとかいうのは毎年何件か起きているんです。これらはみんな発達障害が精神鑑定で出たりしています。
全部が全部とは言いませんけれども、捜査の段階あるいは裁判、少年審判の段階で彼らの言っている言葉だとか態度に反省がないというレッテルを貼られて誤解されて、悪質だとか猟奇的だというイメージだけつけられて、厳罰化の方向に追いやられる。
では、少年院、刑務所に行ったときにどうなのかというと、彼らの特性に合わせたような環境だとか、あるいは矯正プログラムというものがないものですから、また同じ状況あるいはもっとひどい状況で社会に戻ってくる。一番ひどい例は大阪で自分の母親を殺害したアスペルガーの青年が服役して、出てきた後、今度は見知らぬ姉妹2人を殺して死刑になったケースがありますけれども、彼の生い立ちをずっと追っていた共同通信社が出したノンフィクションがありますが、それを見ていると本当に発達障害の特性というのは全くどこでも配慮されないまま、小突きまわされるようにしてそういう状況に追いやられてきたというのが非常にわかる。
これはどこでもそうなんです。要するに事件に関わって逮捕されたりして、捜査の段階で言ったこと、やったことが誤解されて報道されて、ますます暮らしにくい状況にされ、彼らは厳罰化され、矯正プログラムもないものだからよけいひどい状況で社会に戻ってきて、また同じことを繰り返す。この負の連鎖に陥っているような気がします。そうすると、勿論、本人の不利益な、不合理な取扱いというのは一番問題ですけれども、本人のためにもなっていないし、社会のためにも全然なっていない。マスコミが報道すればとんでもないという世論をあおる。そういうゲームみたいなことがされていて、だれの役にも立っていないという状況があるのではないかと思っています。
そういう問題意識で去年イギリスに行っていろいろと見てきたんですけれども、イギリスの場合には例えば発達障害の方たちが警察に関わって逮捕されたりするときは、アプロプリエイト・アダルトスキームということがあって、通訳者が必ずつく。彼らが喋ったことは一体どういう意味なのかというのを警察官が伝える。警察官が言っていることを彼らにも伝える。アプロプリエイト・アダルトなしでの供述調書というのは証拠価値がないとされているぐらいです。そのアプロプリエイト・アダルトをどうやって養成していくのかみたいなことを今、一生懸命やっているんです。ひとたび刑務所に入ってもダイバージョンと言ってどんどん移していくんです。日本の医療観察法はイギリスをモデルにつくって、非常に日本のあれは批判が強いんですけれども、オリジナルのイギリスに行ってみると全然違って、日本で言う医療観察法の施設の病院に行くと、統合失調症の人はほとんどいないんです。いるのは発達障害と人格障害の方ばかりです。あと知的障害もいます。
要するに薬でおさまるような、そんな簡単なものではない人たちを取り扱うと言われて、中でどうしているのかというと、何年か前に精神科の保健福祉法が改正されて、アスペルガー症候群をきちんとこういうもので扱えということになって、刑務所にいる人たちを調査してアスペルガーだと後からわかると、みんな病院の方に移して、そこで認知行動療法などを中心にして矯正プログラムをやって、再犯リスクが下がってくるとどんどん開放病棟に移していって、最後にはかなりの人を地域に出すんです。地域に出した後も6人とか10人ローテーションを組んで24時間の見守りをしたりして、フォローしているという実勢があって、相当こういう人たちに対する考え方が違うものだなと思いました。
日本でも何年か前、10年ぐらい前に東さんと一緒にシカゴに研修に行って、警察官がきちんと知的障害とか障害について勉強しているという実践を組んで、日本でも同じことをやろうではないかということで私なんかは警察庁に行ったりしてお願いして、警察官向けの研修なんかは少しやっています。でも、どうしても制度ではなくてベストプラクティスで終わってしまって、うまくいくところはいくけれども、千葉県警の警察学校なんかは私は3年か4年ぐらい毎年行って、研修をやらせてもらったりしましたけれども、制度ではないものですからとても重要なんですけれども、なかなか継続してやっていけない。いいところはいいけれども、そうでないところはすぐ消えてしまう。
ここ2~3年、司法研修所で裁判官の前でこういうお話をさせてもらう機会があって、すると終わった後、懇親会で話すと裁判官の方皆さん悩んでいることに気がつきます。明らかに発達障害だとわかる。だけれども、何のチェックもないまま自分の前で座っていて、この人たちをどうやって裁いていったらいいか。どうやってこの人たちは矯正していくのかみたいなことを悩んでいるという声を率直に聞いたりしています。
今年9月にニューヨーク州に行ってきたんですけれども、ニューヨークでもやはり警察官、検察官、裁判官向けのこういう発達障害についてトレーニングするというビヘイビアアナリストという人たちが何人かいて、その人たちに話を聞いたりしましたけれども、先ほど川島先生がおっしゃったように事前の、いざというときに最低限のことが理解していなければ意味がない。本人たちには極めて不合理、不利益な取り扱いをされて人生を坂道に落されてしまうようなことというのは繰り返されているというのが、どこを行ってもそういう問題意識を持った方たちと出会うんです。
日本でも是非、特に私の立場から言わせていただければ知的障害や発達障害の方たちの特性というものを理解した、事前の研修プログラムみたいなものを制度化してほしい。実際にそういう事件になったときに、きちんとした通訳者、視覚障害の方に点字通訳が必要なように、聴覚障害の方に手話通訳が必要なように、発達障害の人たちの言葉というのを正確に相手に伝えてもらえる、あるいは相手の言葉を正確に発達障害の方が理解できるようなことを促すことができる通訳者というものが、こういう場面では私は必要だと思いますので、その辺の制度化を是非盛り込んでいただきたいと思います。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
この特性を踏まえると、通訳者、事前の研修等も踏めた配慮が必要だという御指摘だったように私は思いました。
山崎委員、お願いします。
○山崎委員 ちょっと質の違う御質問2点なんですが、部会長が今日は第1コーナーたっぷり時間があるとおっしゃっていましたけれども、伺っているとどうもそうでもなさそうなので、だんだん心配になりました。資料4で今後の議題案というのがあるので先取りで恐縮ですが、ここに日常生活とか労働とか教育とか今日やっている司法手続、選挙等各項目が出ています。私の理解が正しいかどうかですけれども、これを今後、今日も含めて各回ごとに1つずつこなしていくというのだろうと推測します。まずそれが正しいかというのが1点。
仮にそうだとした場合、今日の第1コーナーでは司法手続をめぐって現行法の不足している部分、改正すべき部分が現状と余りにも乖離が甚だしいという御指摘がたくさんありました。本来であれば乖離が甚だしいことについて、当事者団体などからヒアリングできる機会があれば一番よろしいんでしょうが、恐らくそういう時間がないので推進会議でやったヒアリングのようなものの文章を私どもが見て、追体験をここでするということだと思います。どういう隔たりがあるかをこの部会メンバーで共有して、その上で今後の障害差別禁止法で隔たりを埋めるためにどういう新たな規定を盛り込むべきかという問題の所在をあぶり出して、その上で具体的な差別禁止規定はどういうふうにすべきかは、これまた今日ここではとてもできないと思いますので、また別のクールでもう一回日常生活とか労働の順にいくのか。
あるいは司法手続、選挙については例えば今日と設定した場合にはここで問題の所在のあぶり出しをやり、それを踏まえて次のコーナーでこういう規定が必要だというところまで一気にやってしまうのか、その辺りの進め方が私はぴんと来ないので、実質的などういう発言をしていいか思い悩んでいるところです。その辺りを少し教えていただければ幸いです。
以上です。
○棟居部会長 今の点につきまして、東室長の方からお願いできますか。
○東室長 資料4につきましては今日以降の分については、それを議論するかどうかも含めて第3コーナーで一定の意見をいただきたいということであります。一応書いている分野につきましては順番どおりというわけではありませんが、それは今後の議題として入れ込むということで想定しております。
現行法制度の下における実態はどうかという議論が、労働の分野でも、ここの司法の分野でもあったわけですけれども、そういった実態に基づいて差別禁止法としてはどういう在り方にすべきかといったところまで、いつ議論を詰めるんだというのが、御質問の内容だろうと思います。
その点につきましては総論で随分時間がかかってしまいました。そして、総論もまだ詰め切れておりません。大方の方向はいただいたと理解しておりますが、細かいところまでは詰まっていない状況の中で、各論については同じように一つひとつやっていく時間もない。そういう中で、今日も専門委員の方とか日弁連の案とか、もしくは川島先生の方から法律として具体化した場合を想定した形の資料もいただいております。ですので、それらを参考にもう少し時間がありますので、今日できれば議論していただきたいところだと思っています。
ただ、議論していただいても細かく詰めるというところまではとてもできないので、その部分につきましては夏に予定しております。骨格提言をつくるまでの過程の中で詰めるべきところは詰めていくことを考えておりますが、具体的にいつごろそれを詰めていくのかというところまでは、まだある程度各論を進めてみないとわからないのかなと思っているところです。
○棟居部会長 ありがとうございました。
山崎委員は今の1点でよろしいでしょうか。ありがとうございます。
なお、残り時間は15時50分までをこのコーナーでは予定しておりますので、あと20分ほどとなります。竹下副部会長、お願いします。
○竹下副部会長 先ほどの野沢さんとか川島委員の発言に関連して、我々が少し考えるべきだと思うことが3点ほどあります。1点は司法の分野の悩ましさは例えば捜査段階で言いますと捜査密行の原則、要するに秘密で進めなければならないという、ある意味では民主的コントロールとの関係も含めて非常に難しい部分がある。
今度は裁判という段階に来ると司法の独立、あるいはもっとややこしいのは、例えば竹下が起こした裁判、だれだれが提起した訴訟というのは、それを審理する裁判体、法律の言葉では受訴裁判所、要するにその訴訟を受け止めた裁判所というのは1つの独立性を持って物事を進めるわけです。ですから、そこで行われるべき配慮というものを、例えば日弁連何かが何とかしろと最高裁に言うと、それは裁判体で決めることだから最高裁と言えども口出しできないんだという対応があり得るんです。
もう一つ、司法の場面で悩ましいのは、先ほど点字の資料化の問題を申し上げましたけれども、ではだれがそれをするのかというのは単純ではないんです。例えば民事で言いますと原告が訴状を裁判所に提出する。そのときに原告自身が全盲とか聴覚障害の場合は自らに対する配慮をしろ。これは理解としては簡単にできるわけです。では被告が聴覚障害か視覚障害かだれもわからないわけです。原告もわかっていない場合すらある。どの時点でだれがどう判断するのかというのは、非常に決めかねる部分あるいは配慮の仕方が悩ましいわけです。
例えば先ほど名古屋の点字の例を申し上げましたけれども、そういう一般民事の場合ですと当事者に点字化をしろということを裁判所は言うしかないんです。裁判所の手によって点字化をするということには今のシステム上はならないわけです。そういう問題もある。
そうすると、こういう合理的配慮の問題あるいは差別を排除するというときに、どういう仕組みが必要かというのは独自性を持って判断しなければ、この分野の問題は解決しないのではないかというのが1つあると思うんです。
2つ目に、発達障害の例を野沢さんがおっしゃったことで皆さんお気づきだと思うんですけれども、多分裁判所もそうですが、発達障害について十分な理解というものを我々自身もできていない。そのときに研修を裁判官にすることも、あるいは警察官にすることも弁護士にすることも必要だということ自身については、だれも否定しないだろうと思うんですけれども、どの範囲でやるかというのは非常に難しいのかなと。
例えばイギリスで見てきたのは知的障害者に対する警察官の研修、トレーニングを私は見てきました。しかし、発達障害というものになってくると、発達障害そのものの分析と言うんでしょうか、整理の仕方そのものはまだこれからもずっと続くんだろうと思うんですけれども、それをどういう範囲で定型化していくのかということを問題提起というよりも、具体的に提起してシステム化していかないと多分解決しないと思うので、それをだれがどこで判断してやっていくのかという問題。
もう一つ、昨日偶然知ったんですけれども、デンマークなんかでも精神障害者に対する対応というのは進化しているみたいです。発達障害の場合もそうなんですが、私も事件を取り扱ったことがありますけれども、率直に言ってどう対応していいかわからないというだけではなくて、事件の防止という点や本人の社会的な自立という点からも、どういう支援をしていくかということについて極めてだれも答えを持っていない。そういう中で受刑の段階を含めた支援について、差別禁止法のところで解決できるのかというところについても私は疑問があって、それを検討するのはどこでやるのかも少し議論をしておきたいと思います。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
今の点に関連してですか。どうぞお願いします。
○大谷委員 竹下委員の発言に関連して、それから、是非私は山崎委員がその旨で発言してくださるかなと思って期待したんですけれども、そこで今、場所が違うところで発言されるおつもりなのかどうかということかもしれませんが、私の方から言わせていただきたいのは、合理的配慮の内容が非常に多岐にわたるであろうと思われます。
一般的に司法における合理的配慮が必要であると言っても、個別具体的な場面、例えば司法の場面も広いし、障害の特性も幅が広い。こういうことになると一つひとつのケースにおいて合理的配慮の中身を決めるときに、一体だれがどこで責任を持って決めるのか。本人は要求する、しかし向こうはできないと言ったまま、すれ違ったまま最終的にそれが差別になるかどうかで人権救済機関がやればいいんだというふうにもいかない。私はある種予防的にとおっしゃった川島委員の内容を、少し教育ということも必要ですけれども、個別のケースにおいても何らかの調整機関的なものがない限りは、事後的に差別かどうか、人権救済機関で救済すればいいんだというだけではなくて、今この時点における合理的配慮を実現するためのシステム、これは差別禁止法の中に設けておかなければいけないのではないかと思っています。
それは非常に各論的に雇用においてはここでやります、教育においてはここでやります、司法においてはここでやりますというふうに、ばらばらに設けた方がいいのか、それとも横断的にあらゆる場面において合理的配慮が問題になるようなケースにおいては、この差別禁止法の中における例えば不服申立期間とか、調停期間、調整期間、名前はどうでもいいんですけれども、そこで申立てをして、そこで調整しろというような調整期間を設けた方がいいのかという議論も必要かと思いますが、私の今の個人的な見解では、各論的に司法における合理的配慮の調整期間をどこでやるかというと、司法そのものが問題になってくるわけで、裁判所における合理的配慮を裁判所で決めろというのはなかなか難しいわけで、一定程度そこから距離のある横断的なものを設けておかなければ、実現可能性が少なくなるのではないかと思っております。
そこもいつ、どこで論点に挙げるのか。救済機関として最後のところで全部やればいいのか、個別のところで司法における合理的配慮の策定を個別にどういうふうにしたらいいのかは、ここでやるんだというふうにするのかどうかも含めて、議論の進捗も検討していただきたいなと思います。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございます。
ついでと言っては失礼ですが、今、日弁連案につきまして大谷委員に御言及を、この時間にいただけないかなと進行上そのように思うのでございますが、いかがでしょうか。あるいは池原委員がなさいますか。この差別事例についての最初の20ページ以下になります。「障害を理由とする差別を禁止する法律」日弁連法案概要2007年3月、これにつきまして御紹介いただければと思います。
○大谷委員 これは2007年3月に出した要綱です。日弁連として全体としてとりまとめました。大部になりますので読んでいただきたいために抜粋しました。今日は参政権と司法ということなので、そこの条項を抜粋して皆さんに提示させていただきました。
我々日弁連とすると、差別禁止を規範性のあるものに何とかする。具体的にこれが差別であるということをわかるような禁止法が必要であるという気持ちから、まず各論的な第1項にすべての権利の内容を明らかにする。裁判を受ける権利という形で障害のある人が具体的に裁判を受けるに際して、個別どのような権利を持っているのかということをまずそこに規定をする。
そして合理的配慮義務。具体的にならば合理的配慮義務としてどのようなものが想定されるのかということを、その次に規定する。
その次に3項、差別の定義。これを受けて差別というのはこのようなものに当たるであろうということで規定させていただいて、差別の推定をし、ということで、除外事由も規定するという形になろうかと思いますけれども、そういう形で大枠そのような規定ぶりにしようということにのっとって、この各論的なものも構成しております。
司法のところの裁判を受ける権利というのは、読んでいただければわかるように、あらゆる場面において障害を理由として差別を受けることなく、適正な手続が保障されることを原則に、場面を分けた形で規定させていただきました。合理的配慮義務も同じです。これは本当に先ほど言ったように、こんなに合理的配慮義務を個別に規定させていただいて、提案させていただいているんだけれども、このように個別具体的に提案すればするほど、どこでどういうふうに最終的に調整されるんだろうかというふうに不安に思うぐらい、非常に広くこの内容は想定されてくるだろうと思います。それを受けて差別の定義をしました。
裁判においてはこれだけではなくて、裁判の傍聴、一般市民が裁判傍聴できるのと同じように、障害がある人も裁判を傍聴することができるという意味でも、司法アクセスの中に含めるべきではないかということで、裁判の傍聴の項を設けさせていただいております。
第6項、人的設備充実義務というのは先ほど来から言っているように教育、そういうようなことの専門性がなければならないという意味で、ここも規定させていただいているということです。
一番の大きな問題は、やはり裁判を受ける権利、一般に司法というのは憲法では保障されていますけれども、障害があるがゆえに司法にアクセスできないというようなことがある以上、やはり権利の内容として明確化するべきではないかということを提起させてもらっていますが、ここが大きな第1ハードルになるのではないかと思います。
それから、合理的配慮義務というものをこういう形で細かく規定してしまうことがいいのかどうか、規定できるのかどうかというのも、今後我々が司法における差別禁止を条項化するときに参考にはしていただきたいけれども、ここまで具体的に書く必要があろうかどうかということも是非御検討いただけたらと思っております。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
時間が押しておるんでございますけれども、本日、引馬協力員から御提出がありましたEU及び加盟国の司法手続及び選挙等の分野への対応についてというものをせっかくおつくりいただいておりますので、もし今、若干不意打ちぎみですけれども、引馬協力員、よろしければ司法へのアクセスという第1コーナーに限って、ここを見てほしいといった点がございましたら御指摘ください。
○引馬専門協力員 EUの司法へのアクセスにつきましては、資料にありますように、全体として障害のある方の司法へのアクセスを高めていく方向性にあります。先ほど野沢委員、川島委員からお話がありました、例えば司法の全過程における司法に携わる者に対する訓練は、この間、私がヨーロッパの資料を読んでいて取り組みが強調されている点かと思いました。
やはり、司法へのアクセス向上を目指す中で、差別禁止とも関わって差別されないという実効性を高めていくためには、これに携わる人たちあるいは場合によっては市民社会という表現も出ていましたが、皆が障害特性を含めて、障害への理解を深める必要があるという考えのようです。併せて、障害特性を理解する前にまず、自分が接している人にもしかすると障害があるかもしれないという考えが思い浮かぶこと、こうしたことを含めて、訓練だと思います。
あともう一点ですが、先ほど合理的配慮の過重な負担について話が出ていました。今日の話にありますように国によっていろいろな法律が関わっているので、必ずしも差別禁止法上でとは言えませんが、合理的配慮に相当する内容について、その負担のあり方を明確に書き込んでいる例があるようです。幾つか条文をざっと読んだところで、例えば具体的には、この点については無料で受けることができるなどという表現をする国があることがわかりました。
調整過程などは大事な課題だと感じながらお話を拝聴し、さらに調べてみたいと思っております。
以上です。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
では、残り5分ほどなんですけれども、伊東副部会長いかがでしょうか。いろんな論点が出ておりますが、どれについてでも結構ですし、あるいはこれはまだ出ていない論点ではないかという点についてでも結構です。
○伊東副部会長 司法の分野は先ほど竹下先生からも御説明いただいたように、逮捕の瞬間から隔絶された環境に置かれる。そして外側からの支援がなかなか届かないという状況がありますので、これはサポートがすごく難しいし、体制が必要なところだと思います。
そういう点では、司法の分野については合理的配慮がしっかりとなされるよう、明確にしておかないと、実態が骨抜きになる危険があるのではないかと感じております。
司法だけではなくて、特に国をはじめ役所サイドによる対応は国民にとって強制力があり、上からのいわゆるお上の路線で対応されますので、国民、とくに心身に障害のある人が弱い立場に置かれるような状況も考えられます。
アメリカの場合ですと、ほとんどの行政庁内部にADAコーディネーターが配置されていて、各役所でのADAに対応するよう、コーディネーターが調整や職員の指導援助をしています。更に先ほど例えば野沢委員がおっしゃったようなアプロプリエイト・アダルトスキームというような、言わば直接専門的に対応できるような人も必要だし、それをまた調整する人も必要です。また、対応する、担当する方のスキルだとか経験だとかというものもかなり違ってきますから、それを調整するような人も必要です。法律や制度を作り、レールを敷くだけではなく、差別禁止法がつくられるときには、運用の方法を構築しないと実効効果が上がらないと思います。
先ほど大谷委員がおっしゃったような、そこを調整したりする機関があって機能することが大事です。アメリカの場合にも法律の成果をあげるために、雇用だとか教育だとかいろいろな分野について、それぞれに専門機関があって、そこが調整しています。今は法律を検討しておりますが、運用をどうするかということを片方で考えながら、この法律づくり、骨格をつくっていく必要があるのではないかと思います。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
それでは、今の流れが締めにもなっておりますので、15分ほど休憩をとらせていただきたいと思います。16時03分辺りをめどに開始をいたしたいと思います。

(休憩)

○棟居部会長 それでは、15分の休憩時間が尽きましたので、再開をさせていただきます。
第2コーナーは60分で、選挙等についてお話いただきます。最初に東室長から15分程度で御報告をお願いいたします。
○東室長 担当室の東です。
司法に続きまして、選挙等につきましても推進会議の方で議論が行われております。それに関しましては先ほど言いましたように、この分厚い資料の中にありますし、ホームページでもアップしているところでございます。それらを基に新しい取組みも含めて御説明申し上げたいと思います。
まず、障害を有する有権者がより投票をしやすい環境を整備するといった観点から、総務省においては昨年、「障がい者に係る投票環境向上に関する検討会」が設けられております。そこで検討を行い、その結果をできる限り今年4月の統一地方選挙にも反映させているということであります。
具体的には資料2というものがありますけれども、まず政見放送につきましては国政選挙に加えて、都道府県知事選挙についても手話通訳を付与することとして、今年4月の統一地方選挙を始めとして、今年度実施されたすべての知事選、これは16都道府県において実施されたわけですが、手話通訳が導入され、希望する候補者全員の政見放送において付与されたところであります。
資料3の後半(12ページのあと)に参考資料が付いておりますが、その参考資料の7ページには政見放送における手話通訳、字幕の付与の状況について表が載っております。その表をごらんいただきますと、参議院の選挙区については手話通訳が付されておりませんけれども、総務省の検討会におきましては2ページ分戻っていただいた5ページの5行目に書いてありますように、「参議院(選挙区選出)議員の選挙の政見放送については、都道府県知事選挙における政見放送への手話放送の付与の実施状況等を踏まえ、手話通訳の付与の導入に向けて検討を行うこととする。」というふうになっております。
もう一度言いますと、ただいま言いました表というのは資料3を見てください。資料3は「障がい者に係る投票環境向上に関する検討会報告書」というものです。これの12ページの後に参考資料というものがあります。その参考資料のページをめくっていただきますと、また通し番号が付いておりまして、それの7ページを見ていただくと「政見放送における手話通訳・字幕の付与について」という表があります。ここの表は選挙の種類として5種類挙げております。「衆議院・小選挙区」、「衆議院・比例代表」、「参議院・選挙区」、「都道府県知事」、「参議院・比例代表」といった形で選挙の種類が書いてありますが、それごとに手話通訳であったり字幕がどうなっているのかということが書かれております。
衆議院の小選挙区につきましては、既に持ち込みビデオに挿入可という形でなされておりますけれども、その隣の衆議院の比例代表につきましては、手話通訳については平成21年選挙から導入と書いてありますが、下の欄で字幕についてはまだできていない。参議院の選挙区につきましては手話通訳、字幕ともまだできていない。都道府県知事につきましては今、御説明申し上げましたように23年3月15日施行ということで実施されている。しかし、字幕についてはまだできていないということです。参議院の比例代表につきましては手話通訳については平成7年の選挙から導入と書いてありますが、字幕については次回通常選挙から実施といった形でまとめてあります。
政見放送への字幕の付与につきましては重要な課題であるものの、現時点では放送事業者の体制、字幕付与が難しいという技術的な問題があることなどから、次回の参議院の比例代表選出の議員選挙における政見放送への字幕付与の実施状況等を踏まえて、それ以外の選挙についても検討していくということになっている状況です。
また、選挙情報の提供につきましては資料2にありますように、平成19年と比べて平成23年は点字及び音声による選挙のお知らせ版を発行している都道府県の数が拡大しております。これにつきましても、資料3の参考資料の10ページ目と11ページ目に同様の状況が記載されております。ただ、選挙のお知らせにつきましては都道府県県議会議員選挙とか、市町村議会議員選挙等につきましては、そもそも選挙公報を発行していないところもあります。しかしながら、選挙公報を発行している場合には国政選挙や都道府県知事選挙に準じた対応をとることが望ましい旨が記載されております。
次に、物理的な環境、投票所のバリアフリーといった問題につきましては、支障となる段差はないのか、設置したスロープの勾配は適正か、すぐに職員が対応できる体制となっているかなど、障害者、高齢者の視点に立った点検を再度行う、必要な措置を講ずる。また、中山間地域等における障害者などの投票所への移動が困難な人の投票機会の確保のために、巡回バスの運行などについて配慮するよう、全国の選挙管理委員会に要請しているといったことが言われております。詳細は資料3の10ページ以降に記載されているところでございます。
なお、障がい者制度改革推進会議の議論では、成年被後見人が選挙権及び被選挙権を有しないといったことについての議論がありました。この部会でも関心の高い委員はいらっしゃると思います。ただ、この関係で申しますと成年後見制度を利用することで選挙権を失うということは違憲だとして、選挙権があることの確認を求めた訴訟が全国で4件提起されているところであります。国としてはこれらの訴訟の動向について注意深く見ているといった状況です。
また、選挙権、被選挙権を有する者の範囲をどのように定めるかといったことにつきましては、選挙制度の基本に関わるということでありますので、各会派における議論が重要になってくるといった問題であると思っているところです。
以上、選挙に関する取組みについて紹介しましたけれども、差別禁止部会においてはどのようなことが合理的配慮として必要かといった議論をしていただきたいと思っております。
以上でございます。
○棟居部会長 ありがとうございました。
それでは、議論に移りたいと思います。議論の時間は45分ほどを予定しております。
なお、先ほども室長の方から言及をいただきましたが、引馬専門協力員あるいは日弁連から資料の提供がございまして、それについてこの選挙についてはどこら辺りを手元で参照すべきかについて、引馬委員から。
○東室長 その前に、内閣府の差別の事例の調査に関して申し上げますと、少しだけ事例が挙がっております。
参考資料3というものがあります。これは障害者に対する障害を理由とする差別事例等の調査という標題がついております。これの3ページを見ますと5として選挙について配慮や工夫をしてほしいといったことで、5つほど丸という形で書いてあります。
1つ目はテレビの政見放送に手話や字幕を入れること。
2つ目として、政見放送の内容をわかりやすくすること。
3つ目として、必要な点字投票用紙や点字器を用意すること。
4つ目として、成年被後見人となっても選挙権を認めること。
5つ目として、投票用紙の記入台を明るくすること。低い記入台を設置することなどが挙がっております。
調査では以上のものが挙がっておりますけれども、ほかにもいろいろあるのではないかなというところです。
以上です。
○棟居部会長 それでは、御議論をお願いします。
○太田委員 ありがとうございます。JDFの太田です。
JDFとしては選挙等ではなくて、差別禁止法という視点に立ちましたときに、政治参加という枠組みでとらえていただきたいと思います。
公民権、市民権を発動する1つの重要な権利が選挙でありますが、政治家になった場合あるいは市議会や県議会、その他もろもろの議会の構造的アクセスの問題とか、支援の問題とか、そういう視点も含めて考えていただきたい。
昨日、私たちの会議で問題になったことは、ある市議会で言語障害がある議員の通訳を認めないということでした。ということは、議員活動を奪うということであります。ほかの議員と同じように民主的に選出された議員が言葉を発せられないということは、他の議員との平等な活動を奪われるという実態があることにも着目していただきたいと思います。
後見人制度を受けた場合、成年後見制度を受けた場合、選挙権がはく奪されるという問題は、大きな問題であります。しかし、その是正を図ると、施設で暮らしている障害者が実質的に選挙権を行使できていない実態もあります。先日、ある施設に見学に行ったところ、その施設で選挙はどうしているんですかと聞いたら、介助体制はないし、そんなに関心もないのでやっていませんという話でした。そういう実態に着目し、すべての障害者が選挙権を行使できるようにしていただきたいと思いますし、政見放送における字幕はすぐにでもできることなので、行っていただきたいと思います。
とりあえず以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。お手元で御確認よろしいですか。
○太田委員 すべての障害者の人たちが、選挙権を行使できるようにしていただきたいということであります。
○棟居部会長 ありがとうございました。
浅倉委員、お願いします。
○浅倉委員 今の御発言と関係すると思うので一言申し上げたいと思います。
選挙権が強調されていたと思うんですけれども、被選挙権というところが私はもう少し強調されてもよいと思います。太田さんがおっしゃった意味が重要です。被選挙権もしくは何と言ったらいいんでしょうか、太田さんは政治参加とおっしゃいましたけれども、むしろ政策決定における参加と言うのでしょうか、つまり、政策決定に関するあらゆる側面における参加権という意味での障害者の権利について、もう少し幅広く盛り込んだ方がいいのではないかという感じがいたしました。
選挙に立候補する権利、国や地方自治体の公的な活動に参加する権利、政策決定におけるあらゆる側面における参加の確保等、そういう重要な政策決定に障害者が参加する権利ということが非常に重要だと思います。
審議会に障害者の方が参加するということも、通常、ほかの審議会にはないことだと思いますが、障害を持っているという方がどこにでもいるということであれば、障害者の意見をあらゆる政策に反映させることが非常に重要です。そういう意味からも、今、言ったようなことがとても大事だと思いました。
とりあえずはそれだけです。
○棟居部会長 ありがとうございました。
ほかいかがでしょうか。池原委員、お願いします。
○池原委員 出ていない論点として太田さんのお話も伺って思ったことなんですけれども、精神障害の人の場合に強制入院させられている人も含めて、30万人の人が入院しているわけですが、その入院している人の大体50%弱ぐらいが5年以上入院しているわけです。平均的な入院期間でも約1年ということになっているので、投票日のときに投票の機会を失わされている人というのは相当数存在しているのではないかと推測されるんですけれども、残念ながら病院に入院させられている人の投票がどう保障されているのかということついて、どのぐらいの人が投票できているのかということについて実態調査がなくてよくわかりません。
ただ、入院の形式にはごく大ざっぱに言うと自発的入院というか、自分の意思で入院していて、本来なら外出も自由であるはずの入院形態という、任意入院という形態があるわけなんですけれども、この人たちは投票所に行こうと思えば行けそうな気がするんですが、ただ、任意入院の人でも約45%ぐらいが閉鎖病棟に処遇されているということなので、果たして自由に投票できているんだろうかということには相当の疑問があるし、10万人ぐらいの人が医療保護入院という強制入院になっているので、この人たちはなかなか制度的に自由に投票所に行くということが難しい状態に置かれていることがあって、この辺は実は日弁連案をつくったりするときとか、今まで余り意識しないで論点化していなかったんですけれども、先ほど太田さんの方から施設に暮らしている人たちの投票というのができていない場合が多いというお話があって、それと類似していて精神障害の人も暮らしているというわけではないんですけれども、事実上生活施設化しているような入院形式というものもあり、かつ、制度的に強制的に入院させられていて、要するに外出ができないという制度の枠組みにはまっている場合もあるので、この辺もちょっとどうするのかなというのは考えていく必要があるのではないかということで、具体的にどうしたらいいかというのは今すぐ思いつかないんですけれども、論点としては考えておいた方がいいかなと思いました。
○棟居部会長 ありがとうございました。
今のに関連して竹下副部会長、何か日弁連ということで。
○竹下副部会長 池原委員指摘の入院、入所中の障害者の選挙権の行使というのは簡単に解決できると思うんです。それは何かと言うと、現在の投票所への出頭主義を緩和し、現に行われているように選管が施設などに出張し投票してもらうという制度を拡大するだけで解決できるはずなんです。
選挙管理委員会が病院、老人施設などに出張して事前の投票制度での投票の機会を確保しているわけですから、精神病院に出向いて投票の機会を確保することは十分可能なわけで、それをしないことは私は立派な人権侵害が現在も常態化していると思うんです。
先ほど被選挙権のことも出ましたけれども、日弁連はその点で政治活動、政治参加のところをもとらえて権利の保障を意識して要綱づくりをしましたので、参考にしていただければと思います。
もう一つ、私はなぜこういうことが起こるのか信じられないんですが、太田委員が言ったのは岐阜県の中津川という市議会で喉頭がんだったと思うんですけれども、声帯を摘出した人の現役の市会議員の発言を、議会が発言を結果的には制限どころかさせない。本人の選択する方法での議会での発言をさせないというのは、単に政治参加どころか議員の自由な政治活動というか、議会での活動を奪うということがこの日本の民主主義の中で堂々と行われていることに驚きを覚えるわけですけれども、そういう状態があることも我々は十分認識して、参政権あるいは選挙における権利保障というものを早急に解決しないと、差別ということ以上に憲法で保障されている国民主権そのものが、私は障害者にとって無視されている状態が現在の状態ではないかと思っております。
○棟居部会長 ありがとうございました。
野沢委員、お願いします。
○野沢委員 成年後見の問題は東室長が指摘してくださったのであえて触れませんけれども、前にも話したかもしれませんが、今でもときどき知的障害の人たちなんかが投票に行くと、様子を見て選挙管理委員会の人とか手伝っている市民がいます。ああいう人たちが投票させないで追い返してしまうというのを結構聞くんです。それはこういう場で話すものではなくて、とんでもないことだと思うんですけれども、実際にそういうふうな誤解をされていることがたくさんあることを指摘しておきたいのと、政見放送のわかりやすさもさることながらですけれども、投票の送られてくるはがきがありますね。あれは知的障害の人たちが見ても全然わからないと思うんです。やはりもう少しわかりやすく、漢字ばかりで細かい字でごちゃごちゃ書かれても何だかわからない。そもそもそれがバリアになっていることを是非知ってほしいなと思います。
それと、字を書けない人がいます。これは代筆が制度的に認められていますけれども、なかなかうまくそれが使われていない。できれば投票用紙に顔写真でも貼ってあって、そこに丸をふるぐらいのわかりやすさがあってもいいのではないか。特に発達障害の人は視覚的に目で見てのわかりやすさ、見通しのよさみたいなもので非常に情報保障をされている、いい効果が上がっているということも実証されていますので、そういうものも積極的に取り入れていただきたいと思っています。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
いかがでしょうか。太田委員、お願いします。
○太田委員 私は自分で字が書けませんので代筆をお願いするんですが、いつも選挙管理委員会と議論となるのは、私の目の前にある候補者名に鉛筆で順番に「この人ですか」というようにやって、あるいは私が小声で言ったとしても、わざわざ鉛筆で指す。後ろの立会人に見えるわけですね。だれに投票したか見える可能性がある。可能性として見える可能性がある。代筆者が変わるたびにもめ事になるんですが、やはり投票の秘密という意識を選挙管理委員会の人には持っていただきたいと思っています。
○棟居部会長 ありがとうございました。
○竹下副部会長 確認していいですか。太田委員、今の話はあなたが小声で代筆してくれる管理委員の人に告げても、鉛筆で指すとおっしゃったかと思うんだけれども、立会人に見えてしまうということが、秘密投票の上で自分の権利が侵害されているのではないかという指摘ですか。
○太田委員 そうです。
○竹下副部会長 そこは誤解があるかと思うのだけれども、今の公職選挙法の考え方は、代筆投票するときには必ず代筆する人間とは別にもう一人、立会人がその代筆内容を確認することになっているわけです。すなわち、太田君が例えば「竹下」と言っているのに「竹下」と書かない可能性があるから、そんなことはないんでしょうが、ちゃんと竹下という名前を太田さんが指示して、それをちゃんと代筆者が竹下と書いていることを確認することになっているわけです。だから、その部分では秘密投票の問題ではなくて制度上の確認の必要からやっているのです。
○太田委員 そういう意味ではなくて、まずは私の周りには書く人が1人して、もう一人立会人がいるんです。その後ろに選挙全体の立会人がいるんです。投票所には。選挙全体の立会人に見えてしまうということです。2人以外の人間に見えてしまう。3人かもしれないし、4人かもしれないし、5人かもしれないということです。
○棟居部会長 ありがとうございました。
御発言を御確認いただいてよろしいですか。
○太田委員 大丈夫です。
○棟居部会長 川島委員、お願いします。
○川島委員 ありがとうございます。
先ほど竹下副部会長がおっしゃられた中津川市における発声障害のある元議員の代読発言の拒否事件なんですけれども、あの事件の示唆というのは、合理的配慮における当事者の自己決定という論点だと思うんです。つまり、合理的配慮というのはいわゆるさまざまな形態があり得るわけで、それを例えば議会側とかそういったところが、幾つか複数ある合理的配慮の中からこれを用いなさいという決定をした場合に、それは必ずしも障害のある方の望ましい合理的配慮ではない場合があるわけです。
しかし、過重な負担を伴わない限り、つまり例えば議会であれば議会の内部規律の本質を害さない限り、あとは安全面で危険な方法でない限りは、まず原則として合理的配慮というのはそれを主張する当事者の希望するものに沿ったものでないと、これは嫌がらせとかハラスメントとか、つまり合理的配慮をしてあげながらハラスメントをするようなことにもなりかねないということで、これは議員とか参政権などの論点に限らず、総論的な部分でも当事者の自己決定を合理的配慮の中で特に原則として入れ込まないといけないのではないかと思っております。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
今のにあれでしょうか、あるいは関連して今日御提出の川島案について、もし関連するところがございましたら御紹介いただく時間を今とるというのはいかがでしょうか。
○川島委員 ありがとうございます。
それでは、恐縮ですが、手短に本日配付させていただきましたB4の用紙1枚なんですけれども、2~3分で説明したいと思いますが、まず要点は第一に総則と各則というのがイメージとしてあると思うんです。第1章で総則として例えば障害者、障害の定義とか、合理的配慮の定義とか、不均衡待遇とは何かとか、そういったものを書いたとして、第2章以下は各則で、例えば第2章は労働で、第3章は公的制度で、第4章は教育で、また物品・サービスという各則があって、あとは救済手続なりそういう流れになると思うんですけれども、常に総則と各則というのは、各則の議論で得られた具体的・経験的な理解を踏まえて総則の差別の定義なども見直していったり、そういう形でフィードバックしながら議論を進めていくということは、これから必要になるのではないかというのが1点目です。
第2点目に、これまでの部会で議論されていなかった論点として、先ほど少し触れさせていただきましたのが積極的措置という考え方です。イギリスでは合理的調整という言葉が合理的配慮という言葉と同じ意味で使われますけれども、イギリスの場合は、合理的調整義務は2つの種類に分かれます。1つはanticipatory reasonable adjustment、もう一つがreactive reasonable adjustment。Anticipatory というのは予測的なとか、事前的なという、つまり障害者一般がサービスを使うということを、サービスプロバイダーが想定して予測して、すべての障害種別を考慮はできないけれども、さまざまな障害種別を一応考慮に入れて、あらかじめ合理的配慮をさせておく義務です。
それに対してreactive reasonable adjustment というのは対応的とか反応的というか、つまり皆様が念頭に置かれている一般的な合理的調整で、当事者が何らかのバリアにぶつかったときに配慮をしてくださいという形で、事後的に、相手側が配慮をする。イギリスでanticipatory という事前の合理的調整というのは極めて重視されておりまして、そういったものも日本の差別禁止法の中に入れていく必要があるのではないかと思っております。これが2点目です。
第3点目は、これは第3コーナーでお話するところだと思うんですけれども、どういう論点をこの部会で扱うかというところで、労働とか教育とか物品・サービスとか情報通信、建物・交通、公的制度などさまざまあると思うんですけれども、いずれにしても相互に重なる部分は当然出てくるわけです。これはイギリスの平等法でも重なる部分はあるんですけれども、そこは調整規定という形で、どちらを優先させるかという形で調整を最後の段階でできると思います。
最後に第4点目としては、各則の部分では、まずだれがどのような事項について差別をしてはいけないかということを、まず差別禁止事項を明確にしなければいけない。例えば第2章の労働では次に掲げる事項について差別をしてはいけないという形で、これは浅倉先生に御指摘ただきまして、うっかりしていましたけれども、募集、採用、配置、昇進、降格など、それについては差別してはいけないということを一定程度具体的に書き込む。その次に合理的配慮の内容も一定程度具体的に書き込む。次に過重な負担の内容も一定程度具体的に書き込む。最後に積極的措置という形で事業主に義務を課すという章立てで、これは実は日弁連案の構成ともすごく近いと思うんですけれども、法律を読む人からしてみれば、ある程度ルール化というか、こういう感じでやっていった方が読みやすいのではないかということがあると思います。
以上です。ありがとうございます。
○棟居部会長 確認ですが、先ほどお話がいろいろありました秘密投票実質確保とかそういうことは、積極的措置ですることになるんですか。
○川島委員 はい。個別的に救済になじまない部分は積極的措置に入ると思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
東室長、お願いします。
○東室長 先ほど触れられたと思いますけれども、今日提案なさった試案は第3章までしかないんですが、これだけで終わりという提案ではなくて、まだほかに続くという含みを含めた提案ということでいいんですね。教育とか触れられていないでしょう。
○川島委員 今日時点での第3章までしか書いていなくて、勿論、この後に続くということです。
○東室長 だから範囲としてはこれに限定するという趣旨ではないということですね。
○川島委員 はい。
○棟居部会長 ありがとうございました。
ほかいかがでしょうか。伊東副部会長、お願いします。
○伊東副部会長 参政権のことに立ち返ってよろしいですか。
私は選挙権、投票する権利あるいは被選挙権の行使において、大きな差別があると認識しています。国民だれもが選挙権、被選挙権があり行使できること。これを確保するという基本的理念を明確にすると同時に、勿論いかなる障害があっても、その権利が確保できるという基本的理念、原則の実現が原点です。それが確立すれば、テクニカルな対応で可能にすることができると思います。
現状で考えれば、投票所に行けない人の権利が失われている。入場できても決められた投票の方法をとれない人について権利が失われている。あるいは事情によって立候補できる環境が整備されていないことで、被選挙権が失われている。あるいは政策立案や決定に参加して意見を表明できる環境の整備もないために権利が失われている。先ほどご意見のありましたように、病院に入院したり施設に入所・入居者などが、選挙権が行使できる環境や条件が確保されていない、あるいは選挙に関する情報を入手しにくいということで、意思表明ができなかったり、投票の機密が漏えいしないような環境も実は多くの施設で本当にとられているかどうか、現状はかなり問題があると思います。
日本の高齢化の進展と併せて考えますと、障害のある人だけではなくて高齢者、過疎地域で移動もできないような状況にある方々にとっては、現に多くの国民が投票する権利を失なっているのではないかと思います。今の選挙の方法そのもの、あるいは被選挙権の行使の方法そのものを考え直して、権利を確保しなければなりません。
アメリカにおいては投票を可能にする機械がいろいろと開発され採用されている。自宅でも勿論投票できる。
成年後見制度を利用すると選挙権がなくなる。これも非常におかしなことです。
○棟居部会長 ありがとうございました。
御発言が比較的少なかった方、あと残り15分ほどですが、例えばこのコーナーでまだ御発言のない西村委員、いかがですか。よろしいですか。浅倉委員、何か先ほど以外のことでおっしゃいますでしょうか。では、ちょっとお考えいただいて、その間に引馬協力員からお願いいたします。
○引馬専門協力員 では、またヨーロッパの状況の御報告です。
ヨーロッパでは、全体としては、政治及び公的活動への参加という捉え方をとって、これを障害のある人にも促進する方向にあります。先ほども、どの範囲を差別禁止として扱うのかという、例えば浅倉委員からのお話がありましたが、EUの中の議論としては選挙権に限らず、非選挙権あるいは政策決定への障害のある人たちの参加という枠組みが共有されていると言えます。そこで先ほどの合理的配慮と自己決定ですとか、例えば狭い意味で選挙権をどのように考えて合理的配慮の負担、先ほどの過重な負担をどうとらえるかなども議論になっているようです。
これまでの論点で出ていないこととしまして、もし広く政治参加や公的な活動への参加、政策決定への参加を考えていった場合には、障害のある人に対する差別にもう一つ、複合的な差別、例えばもっとも議論が盛んなものとして障害のある女性に関わる問題があるかと思います。政治参加に関する複合的な差別という意味では、障害と更に障害のある男女の差について何らかの対策が必要ではないかという議論はかなりあるようです。
あとは先ほどの司法と同じですが、選挙などの分野においてこれに携わる人たちへの訓練が大きな課題としてあり、その取り組みが進められていることが出ていました。
成年後見との関係はヨーロッパでも大分議論になっております。例えば、オランダなどが2008年にこれに関して法改正を行っている。昨年には、EUではなくて欧州評議会の方になりますが、欧州人権条約との関わりで欧州人権裁判所が成年後見に関する判決を出しています。判決内容としては、ただ成年被後見人であるというだけの理由で、内容を見ないで選挙権がなくなることは問題ではないかというものです。以上のように、ヨーロッパでは、司法手続や選挙の分野を含めた政治及び公的活動への参加について、かなり一定の方向性や流れが打ち出されていると思います。
以上です。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
西村委員、お願いします。
○西村委員 先ほどの司法にも出てきた関係であるように思いますけれども、東さんからそれぞれの選挙ごとの状況についての報告がありました。公職選挙法含めて選挙関連の法律はほとんど読んだことがないのでわからないのですが、選挙に関わる法律の規定の中で、手話通訳を置いてはいけないという障害者に対する配慮が制限されていると聞いたことがありますので、司法と同じように障害者に係る必要な配慮を拒否する、あるいは間接的な差別となるような項目があるのかどうかも、検証する必要があると思っています。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
山崎委員、お願いします。
○山崎委員 2点ほど申し上げたいと思います。
1点目は先ほど浅倉委員が言及されたことの言わば延長ですが、選挙制度に関して障害者がより参加しやすくするというのは当然としても、皆さんがおっしゃっている全体の政治プロセスの政策決定の中に、いかに実質的に参画できるか、それをどうやって確保していくかというのが大事だと思います。 そういう点では例えばパブリックコメント制度というものがかなり前から国とか自治体で運用されていると思うんですが、手紙とかFAXあるいはeメールで意見を伝えることが可能なんですけれども、この場合に現行の制度の運用の中で各種の障害をお持ちの方々がアクセスしづらいということがあるのかないのか。これはかなり総合的に見直す必要があるのではないかというのが1点目の意見です。
それに関連して、さまざまな国ないし自治体の決めごとをする際に公聴会なりの仕組みをとるわけですが、この場合にそれこそ各種のさまざまな障害種別に応じた情報保障というものがその都度確保されているのかどうか。この点については権利条約に入ればある程度の改善は可能かもしれませんが、こういったことを差別禁止法の中に書くのか、あるは現行のさまざまな制度あるいは国のガイドライン等を実質的に変えていく必要があるのかという問題点に気が付いた次第です。
今、申し上げたこととの関連で言えば、差別禁止法に禁止規定を書くというのが極めて大事だと思うんですが、やはりそれを見守って運用していくというモニタリングといいますか、監視機関、条約33条の2項を実現するような権利委員会であれ何であれ、そういったところへの障害をお持ちの方の実質的な参画が重要です。権利委員会のようなところにきちんとした政策提言機能を与え、問題点はそこであぶり出して、内閣とか国会とか地方の首長とかあるいは地方議会にきちんとした知見を基に、見識をベースとした提言ができるシステムをつくっていく必要があると、この間の御議論を伺って感じました。
以上です。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
ほかよろしいですか。伊東副部会長、先ほども既に御発言ありましたが、よろしいですか。
先ほど池原委員と大谷委員の中で分業体制のような形で、お互いにかなり遠慮されていましたが、池原委員、御自身の御発言が今日は比較的少なかったような気がしますが、よろしいでしょうか。
私の言うことは余り歓迎されないかもしれませんが、やはり政治参加というのはすべての基礎です。つまりこの法律ではこうなっていますというようなことで、さまざまな障害というか障壁があるわけですけれども、これはやはり基本的には政治参加が少ないという大元を正していかないことにはどうにもならないのかなという印象を、本日も持たせていただきました。
○竹下副部会長 この資料を見ていただいてもわかるように、都道府県あるいは参議院の選挙で点字のところをわざわざ選挙公報と書いていないでしょう。選挙のお知らせと書かれています。これはなぜかというと、選挙公報そのものではないという意味なんです。しかもここを見てください。総務省は都道府県選管に要請したと書いてあるでしょう。これはどういうことを意味するかというと、要するに選挙公報が視覚障害を持つ選挙人には保障されていないという現状の中で、選挙公報の一部だけが点字化されていたり、選管では配付していない都道府県があったりするということの中で、こういう資料になっていることを是非皆さん注意して見ていただきたいと思います。
それだけに、法律によってきちんと政治参加の権利、あるいは投票の機会を確実に保障するためには、選挙公報というものが極めて重要である。先ほど私は野沢さんが言った選挙公報が発達障害者の人であれ知的障害者の人であれ、それがすべての選挙人に十分理解できる内容で伝わる工夫を仮に選管がそれをしないのであれば、例えば知的障害者のために団体が選挙公報を書き直す権利までをも認める形でやらないと、だめなのではないかと思っています。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
室長、どうぞ。
○東室長 今、竹下委員が言われた点は非常に重要な点だと思いますけれども、資料2で配付してある中で、点字版については選挙公報全文という形で書いてあります。きちんと正確に記憶しているわけではないのですが、お知らせ版という形ではあるけれども、選挙公報に即した形でつくっているというお話を聞いたような記憶もあるんですが、果たしてカセット版、CD版がそれと同じであるかどうかについては必ずしも確認していないところですので、必要があれば確認しておきますけれども、いかがしましょうか。
○竹下副部会長 私の方で確認しておきます。
○棟居部会長 ありがとうございました。
それでは、予定の時間より少し早いですけれども、第3コーナーも十分議論すべきテーマでございますので、ここで休憩をとらせていただきたいと思います。今、私の時計で17時02分でございます。17分再開とさせていただきます。

(休憩)

○棟居部会長 それでは、再開させていただきます。
第3のコーナーは30分で、差別禁止部会における今後の議題についてです。最初に東室長から10分程度で御報告をお願いします。
○東室長 担当室の東です。
資料4をお手元に開いていただけますでしょうか。「差別禁止部会における今後の議題(案)」ということで表示されております。この中では、とりあえずということですが、日常生活という中で商品、役務、医療、不動産といったものが1つの枠の中に入っております。また、その下の方を見ますと、労働は既に議論した部分ですが、教育とか公共的施設、交通施設の利用、情報、今日、行いました選挙、司法手続といったものが書いてあります。
これらの中で例えば今日、議論したところによると選挙というよりも、もう少し幅の広い政治参加とかそういった形で各論をまとめるべきだという議論もあったかと思います。そこで、皆様方にこういう分野だけでいいのかどうか、もっと違った切り口とか違ったこういう分野を議論すべきであるとかそういった御意見があれば、いただきたいなと思っております。こういう形での議論の提示は本来、各論に入る前にやるべきであったと思っております。しかしながら、いろいろ都合がありまして、途中という形になって申し訳ないなと思っているところです。
例えばこの中で公共サービスといった形での切り口のまとめ方はなされておりません。公共サービスの中で言えば、例えば選挙とか司法手続、公共的施設とか交通施設も一部入るのかもしれません。教育もそうですね。そういったものをひっくるめて言うと、そういう形にもまとめられるかもしれませんが、そこはそうせずに特化した形で書いてあるわけです。
しかしながら、例えば千葉県条例をつくるときのアンケートを見ますと、福祉サービスという分野に非常に多くの事例が集まっていたように記憶しております。この福祉サービスというのは、障害者に特化した福祉サービスだけではなくて一般向けの福祉サービスといったものも含まれる形でまとめてあったと思うのですが、例えば保育所に子どもを入れようとしたのだけれども障害を理由に拒絶されたといった例とか、必要な配慮がなされていない例であるとか、そういうこともかなり生々しい形で事例として挙がっておりました。
例えば市町村が提供する住民一般に対する健康診断など、これは事例で挙がっていたかどうかはっきりしませんが、普通、巡回車などで回ってくる健康診断などを例えば車椅子の人が受けようとしても、ほとんどできないですね。まとめた形で設備のあるところで健康診断がなされている、そんなところもあるのではないかと思います。例えば、会社勤めであるとか施設に通っているとか、そういう場合にはそこで健康診断の機会があるのかもしれませんが、例えば家の中で暮らしているといった障害者については事実上、そういう健康診断を受ける機会が奪われているといった状況もあるのではないかなということも思います。
それと、市町村でいろいろな催し物をするんです。例えば成人式とかありますけれども、私の知っている限りでは一般の成人式に出てはだめだというところはないかと思いますが、障害者だけを集めた成人式が行われたりします。なぜそういうことがあるかと言うと、一般の成人式には出づらいとかそういった背景があるのではないかなという感じもします。
町民体育祭にしても障害者が出るということは余りない。町内の施設が招待を受けて特別に参加するといったことはあるようにも思いますが、一般の種目の中で一緒になってという形はなかなかとられていない。
市町村が開催している市民講座、書道とかパソコンにしてもいろいろありますね。ああいった機会に参加しようとしても、物理的な面で参加できなかったりとか合理的配慮がなかったりといったことで、生活にかなり密接に関連するような公共サービスなどが一般に提供されているけれども、障害者のところまで下りてこないといった現実もあるかなと思います。
そうすると、そういった分野が、例として書いてある分野に入るのかなというと、難しいところもあるような気がします。それは1つの例でしかないのですが、果たしてこういう形で大体主要な分野を網羅できるのか、できないのか。他の分野の議論をする必要性といったものがあるのであれば、それを含めて皆様方の議論をここでしていただければと思っておるところです。
説明としては以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
御自由に御意見どうぞ。
太田委員、どうぞ。
○太田委員 太田です。
今、室長から公共サービスにおける差別を中心にお話をいただきましたが、例えば車椅子の障害者がまちで居酒屋に行ったけれども、その店の店主がうちは車椅子の人は入店を認めていませんとか、小売業で小さい店で入店を拒否されるという問題はこの項目のどこに入るのでしょうか。
○棟居部会長 東室長、お願いします。
○東室長 民間のサービスの中の1つの類型で、ここでは「商品、役務」と書いておりますけれども、役務提供といった部分に入るのかなという感じはします。役務という言葉が非常にわかりにくいと思いますけれども、そういうことも含めた形でここには表記しているところです。
○太田委員 昨日、私たちの会議で役務とは何なのかという質問を出せということだったので、もう一回役務とは何かを教えてください。
○東室長 「商品」と書いているのは、売買契約ですね。りんごを100円で買うといった売買契約に伴う、そこら辺に絡む差別の問題なのですけれども、役務というのは、例えば居酒屋さんに行ってお酒を買うというだけではないわけですね。そこでお酒を飲んで楽しむという場を提供して、何時間かいるということも含めてサービスを提供する、そういうことを含めて役務と言っているわけです。商品は物を買うわけですけれども、役務というのはそういうサーヒスを買う、そういうことに絡んだ差別ということで、ここで一応書いておるつもりです。
○太田委員 わかりました。
○東室長 西村委員、お願いします。
○西村委員 西村です。
質問ですけれども、意見あるいは検討すべき内容ということで、1点確認したいのですが、総則ではなくて個別規定というか分野がいろいろある。その中で例えばここに挙げられたものがある。それ以外の分野について御意見があるのであれば、それを今、挙げてもらいたいという理解でよろしいですか。
○東室長 はい。
ただ、この時間に限ってというわけではなくて、この課題は次回もやりたいと思っております。
○棟居部会長 西村委員、どうぞ。
○西村委員 そうであれば、何点か申し上げたいと思います。
この分野の中で教育が入っています。これは障害児になると思いますけれども、子どもに関することでは、教育だけではなく保育所や放課後児童クラブにおける障害児が置かれている実態も多くの困難な状況がございます。
そういった意味では教育以外にも、保育や学童現場の問題もあると思っています。
また、日常生活の中で医療があります。これは、多分、病院に行って治療を受けることだと思いますが、医療に関する課題には、医療的ケアを必要とする人たちが、一般の福祉サービスや学校、これは特別支援学校も含めてということになりますが、本来、障害を持っていることで受けられる、あるいは用意されているものからも医療的ケアが必要ということで排除をされている実態があります。
そういった意味では、医療的ケアについても、課題あるいは検討分野として入れておくことが必要であると思っています。
それから、公共施設とか交通機関の関係で言いますと、太田委員が御発言をされましたが、これまではバリアがあって、バスに乗れませんよとか、地下鉄に乗れませんよという状況がありましたが、今は、ノンステップバスとか車いす用スペースがあるにもかかわらず、一部の車いす利用者の乗車拒否がされています。これは、明らかな直接差別だと思いますが、そういった分野もあると思っています。
それから、裁判で障害者の地域生活の権利が争われている事例などを見ていくと、いわゆる介助であれば支給時間や利用範囲の問題のため、生活の範囲の制限と制約があるということで裁判が起きているものがございます。
総合福祉部会あるいは総合福祉法の中での議論とも関わってくるのかもしれませんけれども、先ほども出ていましたが、福祉サービスにおける権利性の担保もあると思います。
とりあえず、今後も議論はされるということですけれども、個別分野ということで今、思いついたのが以上です。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
東室長、コメントをお願いします。
○東室長 ありがとうございます。
最初の保育の問題、保育をどうするか、今、国の方で議論があって、いろいろ考え方があるとは思うのですが、保育もしくは幼稚園、ここら辺をどの分野に入れるかという議論はしなければいけないなと思っています。それをどういう形で取り込むかということは皆さん方に議論していただきたいと思っているところです。
また、医療的ケアを受けている人が、そのことで、ほかの受けていない障害者と比較しても、いろいろな不利益取扱いを受けるという問題があるという御指摘についてですが、それはある意味で範囲や各論のどの分野で議論をするかという問題ではなくて、障害を理由とする差別といったものの中に、障害といってもいろいろあるわけで、障害種別ごとの差別、軽度とか重度といった面での差別とかいろいろあると思うんです。ですから、障害があるかないかだけの問題ではなくて、種別の違いであったり程度の違いであったり、そういうことも含むのかどうなのかという中で、医療的ケアを必要としている状況において差別が発生する場合も「障害を理由とする」という中に入れるかどうかといった議論であり、また、それは、直接、間接、関連といった類型論にもかかわる議論であると思います。もちろん類型論がどういうふうになっていくのかというのは未整理のところがあると思いますけれども、そういった部分の問題ではないかなと、聞いて思いました。勿論、これも議論していただきたいところです。
それと、例えばノンステップのバスが来るまで待ちなさいとかいう形で一般のバスに乗せてくれない、合理的配慮をしたかどうかではなくて、要するに、直接差別みたいな形の事例が多いという問題については、各論としてどういう分野を設けるかということではなくて、それぞれの分野においてどういう差別があるのか。それぞれの分野において直接、関連、間接、合理的配慮という問題があると思いますので、その中の問題ではないか。各論の分野で対象となるのは、合理的配慮の議論だけというわけでは決してないということは、確認しておいた方がいいという感じがいたします。
最後に言われた、例えば支給量の問題。本来、24時間重度訪問介護サービスが要るのに現実には15時間しかいただけないといった問題は、これは差別の問題と捉えるべきかという御議論だと思います。
1つの見方で言えば、それは障害の重度、軽度によって実際の生活が違ってくるわけですから、差別の問題かなという感じもしますけれども、一面で言えば、それは社会福祉、社会保障の問題であって、差別の問題とは違う分野ではないのかといった見解もあるのだろうと思っています。ですので、そこら辺をどう位置づけるのか、まさにこの部会で議論して検討していかなければならぬところかなと思うところです。
以上です。
○棟居部会長 今の点はよろしいですか、西村委員。
では、山崎委員、お願いします。
○山崎委員 山崎です。ありがとうございます。
先ほど、室長さんが資料4に基づいて今後の課題(案)を御説明くださったのですが、ここに書いていないこともお伺いしたいと思います。
先ほど、川島委員が私見と私案というのを御紹介になって、これは今後、ここで議論を固める際の差別禁止法の骨格といいますか、章立てをお示しになったと思うのですが、第1章に総則があって、先ほど室長が資料4に基づいて御提案になっている項目は、第2章以下の各則の分野で十分かどうかというお尋ねだったんですね。
先ほども川島委員がおっしゃっていたとおり、各則のもろもろの章の後に、多分ですが、差別禁止法を具体的にどうやって実施していくのか、モニタリングとか救済に関わる章立てが付いてくると思うんです。仮にそうだとした場合、ここの部会でその部分の議論というのは例えば平成24年3月16日、第16回以降辺りに数回来るのかなと邪推しているのですが、その辺りを確認いただいて、既に一般的には何回か御提示なさっていると思うのですけれども、ここの部会での最終結論はいつごろ出すめどになっているか。一応それを伺って、それの逆算として救済とかモニタリングのところが大体来年のどの辺りに来るのかというのが少し気になりますので、教えていただければ幸いです。
○東室長 ありがとうございます。
先ほども若干、触れたかと思いますけれども、モニタリング、救済といった部分については一応、資料4の下の方に3月までの日程を書いておりますが、それが終わった春辺りにこの問題点を議論することになるのかなと思っております。最終的には平成24年の夏ぐらいには差別禁止に関する骨格提言といった形で、この部会の意見をまとめるということが求められております。
ただ、できれば中間的なまとめのような形で一定の大枠のまとめができればなとは思っています。なぜ今、そういうものが必要かというのは、一定のまとめがないと、この差別禁止部会で一体どんな議論がなされているのか、多くの人に知ってもらうことが難しいわけです。そういうものがあれば、いろいろな反響とか御意見とか上がってくることにもなりますので、全国民の人にこの議論をわかってもらって考えていただくという意味では、そういうものが必要になるのかなと思っています。
ただ、時間との関係もありますので、それが果たしてできるのかどうか、まだ未確定のところだと思います。
以上です。
○棟居部会長 西村委員、関連ですね。お願いします。
○西村委員 関連です。
ありがとうございます。西村です。
もう一つ確認をしたいのですが、障害者制度改革については3つの法律の流れがある。1つは障害者基本法の改正、もう一つは総合福祉法、そして、差別禁止法。この3つが障害者制度改革の大きな流れの中で進めていくと聞いております。
障害者基本法につきましては、先般、国会に出ました。これは第1次制度改革推進会議の第2次意見書が骨格案という形で示されたと理解していますが、その具体的な法案づくりについては関係省庁と調整して内閣府がまとめられたと思っています。
総合福祉法については、総合福祉部会で検討を重ね、障がい者制度改革推進会議で確認されて、今、法案の作業に入っていると聞いています。法案の作業は厚労省が担当していると私は理解しています。
つまり、この2つの法律案の作成は、それぞれの所管する省庁が担当してきたという認識でいます。
それで、障害差別禁止法については、夏に骨格提言をまとめることになると思いますが、再来年の通常国会に出される法案作成につきまして私たちが果たすべき役割があるのか、それともそれは所管するべき省庁が作成するのか、教えていただきたいと思います。
○東室長 前半言われた部分は、そのとおりでございます。
差別禁止法の制定に際してこの部会が果たす役割は如何ということで聞かれたんですかね。
○西村委員 それと、その法案まで我々がつくるのかということです。今までの制度改革推進会議も総合福祉部会も法案まではつくっていない。あくまでも骨格案を示して、それを受けて各所管省庁がつくってきた経過がありますけれども、差別禁止法については当初、こうした法律は日本にはないという話があったのと、人権救済委員会については法務省所管なので、そうすると法務省が法案をつくるのかなとも思ったりするのですが、その辺のところが見えていないので、教えていただきたいということです。
○東室長 まず、差別禁止法に関しましては、内閣府が主管する法律として閣法として出すということです。ただ、人権救済部分について現在、法務省で検討されている人権救済法案がありますので、法務省として提出されていくということであれば、差別禁止法に関しましては、そことどうドッキングするかという形で差別禁止法の中で対応する条項ができることになるのかなと思っています。
ただ、これは議論が必要なところですので、議論次第で変わってくるかなとも思います。場合によっては、独自の救済システムを差別禁止法に入れ込むといった議論もあり得ると思いますので、その議論をベースにしないとどうなるかは確定的なことは言えませんが、法務省に任せるということであれば、そこをつなぐ技術的な条項が必要になってくるのかなと思います。
また、骨格提言としてどこまでつくるのかといったことが御質問の内容だろうと思うんですが、第2次意見につきましては、障害者基本法の改正において求められるべきエッセンスをまとめるという形で議論してまとまっております。また、総合福祉部会における骨格提言は、自立支援法を見てもらうとわかりますように、障害者自立支援法が結構膨大な量がありますし、技術的な規定などもあります。総合福祉部会の骨格提言は、そういうことも踏まえて、仕組みとか考え方の大枠を骨格提言で示すといった形になっております。ですので、それが即条文になるという関係ではないわけです。
ただ、差別禁止法ということになりますと、そこは差別禁止法として予定されている法律との関係で言えば、ある程度、これまでの議論を見てもそうですけれども、法案そのものではなくても法案と大体似たような形の提言にならざるを得ないのではないかなとは思っております。総論で議論したときにも最終的には法案的なものを並べた上でどうするという議論になってしまいますね。ですから、議論の性格上、そういった議論をせざるを得ないので、それは当然、骨格提言の中身にも影響していくとは思っております。もちろん、法律そのものというものではないとは思っています。
以上です。
あと、まだ先の話でありますけれども、骨格提言ができた上で内閣府がそれをベースに法案を作成していく。その策定過程の中において部会の意見を聞くといったことについても問題になります。それは総合福祉部会においてもそうですけれども、基本法を議論した推進会議においても問題提起がありまして、法案作成過程についても意見を聞く機会を設けるということが必要だと言われて、実際にそういう形で基本法が制定されてきました。したがいまして、差別禁止法についても同じような形になるかなと思っているところです。
いかがでしょうか。いいでしょうか。
○西村委員 わかりました。
○棟居部会長 ありがとうございました。
もう時間が押しております。
大谷委員、手短にお願いします。
○大谷委員 時間が押しているのにごめんなさい。
救済機関のことなのですけれども、4月以降に実質的な審議になろうかということでしたね。モニタリングということからするならば、基本法の中に位置づいた政策委員会の発足がいつごろになるのか。年度内、年内ということでしたので、近々予定されているのかなと期待しているのですけれども、そのモニタリングを担うだろうと予定されているはずの政策委員会が例えば合理的配慮の、先ほど川島さんが言っていただいたような一般的な基準を設けるなどのことに関与し得るのかどうか。
もしくは、現在、法務省が予定している人権救済機関が障害固有の差別もしくは合理的配慮に関してどこまで期待できるのかどうかということに関しては4月以降に法案の審議、どこまでかわかりませんよ、法務省がいつ出してくるかわかりませんけれども、今、予定されている次回常会に出してくるだろうと思われている法案に関しては、さほど期待が持てないのではなかろうかと思っていますので、ならば、ここに影響を与えるつもりで構えるならば、もうちょっと前倒しをしてやる。人権救済機関の審議をもう少し前倒しをしてやるとか、いろいろな配慮をしなければいけない時期に来ているのではないかなと思っています。
そのことも全部踏まえた上で4月以降に救済機関もしくは全体的なモニタリング機構をどうするかということをやればいいんだというふうに考えておられるのかどうか、そこは確認させていただきたいと思います。
○棟居部会長 東室長、お願いします。
○東室長 その点に関しましては、かなり微妙な問題があると思っています。実効性があるような機関として、どういうものができるのか、期待できるのか。あちらの議論にかかっているところもあるわけですけれども、差別禁止部会で一定の議論をして、それを踏まえていただくといったことも可能なのかもしれませんが、そこら辺については正直言って余り深く詰めて時間設定しているわけではありません。
とにかく、総論、各論の議論を踏まえたうえで、どういう救済機関をつくるのかということになりますので、実体部分が確定しない限り救済の在り方、例えば労働だけでほかの部分を議論せずに救済の在り方を議論できるかと言うと、そうではないわけです。だから、時間的には非常に厳しいかもしれませんけれども、現状としては今、言ったような順番で議論していくしかないのではないかなと思っております。
○棟居部会長 もう時間が尽きております。一言でお願いします。
太田委員、どうぞ。
○太田委員 以前、ヒアリングした欠格条項について載っていないのですが、問題意識としてはあるということでいいのでしょうか。
○棟居部会長 東室長、お願いします。
○東室長 国会答弁みたいでえらく責められていますけれども、実は今日も本質的には同じ議論がありました。例えば司法分野における差別禁止法の規定と現行刑訴の規定について、両者の関係をどう把握するのか、どう処理するのかという問題と欠格条項の問題も基本的な同じ話だと思っているわけです。
特定の分野において欠格条項を定める既存の法律が存在し、かつ差別的であるとされる場合、差別禁止法のその分野で書くべき条項でどう対応するのか。この部会で既存の法律の各条項について、これは差別的な規定であるという議論をして、そこを変えるべきだというところまで、この部会で持っていくかどうか。恐らくそれは全部やるなど不可能な話だとは思うんです。ただ、明らかにこれはおかしいといった部分について何ら議論しないというのも、それもないだろうという感じもするんですね。
法律で差別禁止法ができた場合に問題となっている箇所が自動的に改正されるということもありませんので、そういった部分を実質、どういう方向で変えていくのか。法律ということではなくて、先ほど大谷委員からも言われました政策委員会辺りで議論を積み重ねていって制度改革していくという流れの中で変えていくということも1つの大きな方法だとは思うんです。
差別禁止法は初めてできるわけですから、100%すべてのものを抱え込んだ形でできるのかというと、なかなかそれは難しいといった現実的な話もあろうかと思います。
そういうことをにらみながら、最終的な局面で欠格条項ないしその他の法律の関係にどう対応するのか、基本的なスタンスを皆様で議論していただければなと思います。
以上です。
○棟居部会長 では、伊東副部会長、20秒でお願いします。
○伊東副部会長 最初に室長から投げられました分野についての議論が余りなかったので、検討していただきたい。国民の日常生活においては、民間によるサービスとともに、我々の生活は特に国、県、市町村の行政によるサービスがあります。この行政によるサービスが国民等しく利用できることが保証されることが必要です。是非、御検討いただきたい。
○棟居部会長 ありがとうございました。
それでは、もう時間過ぎております。以上で第3コーナーを終わります。これで本日の議事は終了しました。
最後に東室長から次回の予定等について報告をお願いします。
○東室長 担当室の東です。
次回は12月9日ということになります。12月9日は、公共的施設、交通施設の利用という辺りを念頭に置いて議論をしたいと思っております。今の第3コーナーでされた議論、ほとんど質問でしたけれども、今の議論をベースに、あらためてこういう分野がこういう理由で議論が必要だということについて、これまで一旦、書面で意見を求めることはやめておりましたが、この範囲に関する限りできれば事前に根拠とどういう分野が必要だという御意見をいただければなと思っているところです。
以上です。どうもありがとうございました。
○棟居部会長 ありがとうございます。
本日の差別禁止部会の概要につきまして、この後、記者会見において私と伊東副部会長、竹下副部会長、東室長から説明させていただきます。
本日はお忙しい中、お集まりいただき、ありがとうございました。
以上です。

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