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障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会(第12回)
議事録
○棟居部会長 定刻になりましたので、これより第12回「障がい者制度改革推進会議差別禁止部会」を開催させていただきます。
差別禁止部会は、一般傍聴者の方にも公開いたします。
また、会議の模様はインターネットを通じても幅広く情報提供いたします。
なお、御発言に際してのお願いとして、発言を求めるときは、まず挙手をいただき、指名を受けた後、御自身のお名前を述べられてから、可能な限りゆっくりと御発言いただくようお願いします。
本日の会議は18時までを予定しております。
それでは、東室長から、委員、オブザーバー、及び専門協力員の出席状況と資料説明をお願いします。
○東室長 どうもこんにちは。担当室の東でございます。
本日の欠席状況についてでありますが、本日は浅倉委員、川内委員、竹下委員、野沢委員、遠藤オブザーバーが御欠席でございます。その他の方で少し遅れられている委員もいらっしゃいますけれども、出席と思われます。
本日の議事は「厚生労働省と文部科学省からのヒアリング」「情報分野における差別禁止について」「その他」といった議題になります。
15分の休憩を2回とることとして、3つのコーナーに分けていきます。
第1のコーナーは80分で、厚生労働省からのヒアリングです。最初に20分程度御報告いただき、その後60分程度で質疑応答といったプログラムになっております。
第2コーナーは80分で、文部科学省からのヒアリングです。同じように最初に20分御報告いただき、その後60分程度の質疑と議論といったことになります。
第3コーナーは30分ほど予定しておりまして、情報分野における差別禁止について議論します。
最初に私の方から10分程度報告をさせていただきまして、その後20分ほど質疑と議論といった形になろうかと思います。
以上が今日の予定でありますけれども、資料について確認をいたしたいと思います。
まず、資料1です。これは厚生労働省提出の資料ということで、第1のコーナーで使用するものになります。
資料2は、文部科学省から提出された資料であります。枝番が1~3までございます。これは第2コーナーで使う資料になります。
資料3は、担当室で作成しました情報についての議論の整理のためのメモ書きでございます。
更に、委員から資料が出されております。4名の方が出されておられます。大谷委員、西村委員、松井委員、川島委員の資料です。大谷委員、西村委員、松井委員の資料は、教育に関しての意見でございますので、第2コーナーで使用するかと思います。
川島委員の提出資料は差別禁止法全体についての意見ですので、今日、特段使うといった形にはならないかなと思っております。
また、委員だけの配布ですけれども、第9回のときに配付いたしました資料が1と2とあると思います。資料1は「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する中間的な取りまとめ」。これは労政審の雇用分科会の報告書であります。
資料2が「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応について(中間整理)」ということで、これは分科会の中の「条約への対応の在り方に関する研究会」のまとめといったものであります。既に配付している資料でありますが、今日、第1コーナーで参考になるかなと思って配付させていただいております。
配付資料としては以上であります。確認をお願いしたいと思っているところです。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございます。
なお、ヒアリングに先立ちまして確認しておくべき事項がございます。本日の部会は、労働・教育分野の施策の全般について検討を行う場ではありません。現状を踏まえた上で、差別禁止法制がどうあるべきかについて議論を収れんさせていくことが必要です。
また、新たな施策の実施や施策の変更に当たっては、厚生労働省であれば労政審の、また文部科学省であれば中教審の検討をそれぞれ経る必要があるため、本日のヒアリングでは各省の今後の対応について確定的な回答を期待できないこともあるかと思います。
以上の点をよろしくお願いします。
それでは、議事に入らせていただきます。
第1のコーナーは80分で、厚生労働省からのヒアリングです。本日は、厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課より、山田雅彦課長においでいただいております。まず、山田課長より20分程度で御説明をいただきますので、よろしくお願いします。
それでは、山田様、よろしくお願いします。
○山田課長 厚生労働省の障害者雇用対策課長をしております山田と申します。
最初に私の方から厚生労働省における権利条約への対応に関する検討状況について、お話をさせていただきたいと思います。
資料1の方をごらんいただけますでしょうか。
1ページ目に「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会開催要綱」というものを載せております。「趣旨」の第1パラグラフにありますように、差別禁止部会の第9回においても紹介があったと思いますが、新しい研究会に先立ち平成20年4月に「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」というのを既に厚生労働省では開催をしております。その検討を経て平成21年7月に中間整理をとりまとめている状況でございます。
その後、これを受けて、労働政策審議会の障害者雇用分科会において平成21年10月から検討を行い、22年4月に「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する中間的な取りまとめ」というものをとりまとめているところであります。
こちらについては、先ほど申し上げましたように、第9回の差別禁止部会において内閣府事務局の方から御説明をいただいておりますので、今回私どもの方からの資料としては出しておりませんし、この場でも特段説明をすることはいたしません。
それ以降の状況について本日御報告するようにということで御指示をいただきましたが、それがまさに(昨年11月に始めた)「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」というものであります。
実は、これ以外にもう二つ研究会を同時に走らせております。1番目は「障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方に関する研究会」です。2番目の研究会が今から御説明する「条約への対応の在り方に関する研究会」になります。3番目の研究会として、今日の午前中にその研究会の第3回を終えておりますけれども、「地域の就労支援の在り方に関する研究会」というのを設けておりまして、いずれも障害者雇用政策に係るもろもろの課題について検討するために設けたということで、「趣旨」の第2パラグラフにあります「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」というところで掲げられている案件について検討するために3つの研究会を設置して、今、精力的に各研究会の委員には御検討いただいているという状況がございます。
その中の1つの「権利条約への対応の在り方に関する研究会」というものについては、「趣旨」の第2パラグラフにありますように、「労働・雇用分野における障害を理由とする差別の禁止、職場における合理的配慮の提供を確保するための措置等の具体的な方策について検討を行い、平成24年度内を目途にその結論を得る」ということが22年6月の閣議決定に書かれておりますけれども、これまでの議論も踏まえつつ、障害者雇用分科会の「中間的な取りまとめ」から更に検討を進めるためにこの研究会を設置したというのが趣旨でございます。
主な検討事項につきましては、2ポツのところに「主な検討事項」ということでありますが、「差別禁止等の枠組みの対象範囲について」、「(2)合理的配慮の内容及びその提供のための仕組みについて」、「(3)合理的配慮を行う事業主の負担に対する助成の在り方について」、「(4)その他」ということで、列挙はしておりますけれども、およそ権利条約への対応をするために障害者雇用対策の中でどういったことを進めていけばいいかということを包括的に議論する場だというふうに御理解いただければ結構でございます。
研究会の委員の皆さんにこれまで2回の研究会の場で私から申し上げたのは、中間整理、中間取りまとめは既にできておりますけれども、その中で、関係者の間で確認ができているというパートもございますが、例えば合理的配慮が適切に提供されるための仕組みですとか、合理的配慮を行う事業主の負担に対する助成の在り方といったものについては、先ほど御説明した21年の中間整理、22年の中間取りまとめにおいて、引き続き検討すべき事項ということで、まだ掘り下げが必ずしも十分でない点があるということで、研究会ではその点をしっかり議論していただきたいということを申し上げております。
それから、これは個別の論点ではございませんけれども、合理的な配慮など、差別禁止をめぐる新概念を日本の経済社会に打ち込んでいく。それを職場という現場にどう溶け込ませていくか。それをきちんと定着させていくことができるかどうか、法制度の内容をどういうふうに見直すかということもさることながら、それが実際の現実社会の中できちんと施行されていくという観点で、すべての案件に関して、しっかり御議論いただきたいというふうにお願いをしております。
研究会の運営につきましては、そこに書いてあるとおりで、2ページに参集者のリストを挙げております。
3ページの「今後のスケジュール」というところをごらんください。
スケジュールについては、冒頭申し上げましたように、23年11月にスタートをしています。第1回が23年11月にありまして、ここでは「これまでの検討経緯等について」ということですが、主に厚生労働省におけるこれまでの検討についてということで、御説明をしております。先ほど申し上げた研究会の中間整理、審議会の中間的取りまとめといったものについての内容を中心にして、それに加えて大前提とするべき権利条約について、内閣府における障害者制度改革の動きについても併せて御説明をしております。
第2回目は先月12月に行いましたけれども、こちらは平成20年に行われた研究会において障害者関係団体等からのヒアリングをしたということで、これを総括的に御説明するとともに、現在まさに差別禁止部会でやっていただいている議論について御紹介をするという場になっております。
第3回は1月の末、これはまだやっておりませんけれども、「各国制度について」ということで、諸外国の状況について御説明をする予定をしております。
第4回以降は、それぞれの権利条約の批准に当たって必要とされる制度見直し。労働・雇用分野における制度見直しについての各論の掘り下げの議論は、第4回以降になります。ある意味網羅的にやっておりますけれども、第4回で言えば、差別禁止の対象範囲の問題。障害者についても事業主についてもです。障害を理由とする差別の禁止の在り方。それから合理的配慮の内容については、第4回、第5回にまたいで議論することにしております。
第5回の2つ目の○にありますように、「合理的配慮の提供のための仕組みについて」というのは、ここがある意味これまでの研究会や分科会の場で必ずしも掘り下げがされていなかった部分でありますので、提供のための仕組み、そういった一定のスキームが必要だということについては、およそだれも異論のあるところではないのですが、では、それは具体的にどうするのだという議論については、必ずしも深められていなかった。ただ、ある意味この仕組みがうまく機能しなければ、合理的な配慮の提供ということをいくら法制度上うたったとしても全く機能しないということになりますので、ここのところをどう扱うのかということは1つの大きな論点であろうと思います。
第5回目の3番目の論点として「権利擁護について」ということです。
第6回の最初の○に「これまでの論点整理」ということで、第4回、第5回にやった議論をとりあえず一旦ここで総括をするということが第6回の1つ目○の「論点整理」ということになります。
それから、第6回目と第7回目にまたいで「合理的配慮を行う事業主の負担に対する助成の在り方」ということで、これについても、これまで研究会や分科会で、公的な助成がこれまで障害者雇用対策を進める上で大きな寄与があったという点については、公労使障害者の四者とも異論はないところでありますけれども、ただ、合理的配慮という概念を新しく職場という空間に打ち込んだ場合に、公的な負担の在り方というのは一定の思想の変換が必要だというところもあります。そうしたところについてどうしていくのかということについて議論するのが第6回、第7回のセッションになります。
それを踏まえて最終的に6月、7月と研究会のとりまとめということに流れ込んでいくということで考えております。
これ以降の道行きとしては、あくまでも研究会というのは、1ページ目にありますように、我が厚生労働省の高齢・障害雇用対策部長が有識者を集めて論点整理をする場でしかなくて、ここで最終的な関係者の合意形成を終えてしまうという場ではありません。その場は、雇用対策については、およそ労働政策審議会の労働者側、使用者側、公益側、それから障害者雇用対策に関しては、四者目として障害者代表の方にも入っていただいていますけれども、その四者の合意形成の場というのは労働政策審議会の場で行われるということですので、この研究会のとりまとめをそちらの労働政策審議会障害者雇用分科会に送って、公労使障害者の四者において御議論いただき、合意形成を図るという流れになります。
次のページは、先ほど御説明した平成22年6月の閣議決定の差別禁止をめぐる議論に関するところを抜粋したものですけれども、そちらにおいて24年度内を目途にその結論を得ると。第2、3(1)の最初の○の末尾にありますように、それを目指して最終的に労働政策審議会の議論を収束させるということで、全体のスケジュールを考えております。
ちなみに、6月の閣議決定において、直接的に差別禁止をうたっているのは、(1)の最初の○の方は、障害を理由とする差別の禁止、合理的配慮の提供を確保するための措置云々ということでありますが、これと裏腹になっているのが「職場における支援の在り方について」は、合理的配慮とセットの議論ということで、こちらについて抜粋しているのはそういう理由であります。
今回こうしたお話をさせていただく機会をつくっていただいたのですが、何分研究会はまだ2回しかこなしていない状況にあって、なおかつ各論の議論に入っていないということで、私の立場で個々の項目について厚生労働省としてこう考えるという形での説明は非常にしにくい状態であります。研究会の委員にはお知恵を借りたいということで委員をお願いしているということもありますので、事務局が勝手に研究会以外の場で見解を表明するのは避けたいとは思っています。
とはいえ、せっかくのこういう機会でもあります。「厚生労働省からのヒアリング」というふうに銘打たれておりますけれども、逆に我々としては、労働雇用分野について、そのものを扱うわけではないと先ほど東室長の方から御説明がありましたけれども、差別禁止部会の委員の皆様がどういうふうにお考えになっているかということ、どういう考え方を背景にしてそういう御見解をお持ちなのかということについて、お聞きすることもできる機会かなというふうに思っております。
そういうことで、皆様方にとっては消化不良になってしまうかもしれませんが、今回この差別禁止部会においていただいた御意見については、先ほど御説明したように、第2回において差別禁止部会の動向については研究会の委員の皆さんに御紹介したように、研究会の方にも御意見については紹介をさせていただくということを考えております。
以上です。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
それでは、質疑及び議論に入らせていただきます。時間は60分少々を予定しております。
どなたからでも御自由にお願いします。松井委員、お願いします。
○松井委員 ありがとうございます。
御承知のように、差別禁止については、労働部門が最初に取り組んでここまで来ているわけですけれども、1つ非常にベーシックな質問をさせていただきたいのは、労働雇用分野はかなりいろんな法律が入っていると思います。例えば労働基準法の第3条の均等待遇というところでは、「社会的身分を理由として、賃金、労働時間、その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない」ということになっておりますけれども、今、議論されているのは、主に障害者雇用促進法の中にどう取り入れるのかということだと思いますけれども、ここで決着すれば、先ほどの労働基準法の「社会的身分」は、当然障害を含むものであるというふうに解釈できるようになると。つまり、雇用促進法を改正することによってその他の関連労働法にも普遍的な形で反映できるというふうに理解していいのかどうか。
特に、例えば合理的配慮については、職業能力開発促進法に基づくさまざまな施設、プログラムがございますけれども、今回、雇用促進法における合理的配慮についてのいろいろな議論は当然そこにも反映されるというふうに理解していいのか。つまり、それ以外の関連労働法について見直しをしなくても、少なくとも雇用促進法ということを1つの代表というか、焦点化することによって、それは普遍的に広がるというふうに理解していいのかどうかということの確認です。
もしそうでないとすると、その他の関係労働法については、どういう形で厚労省として取り組むことになるのか。その辺の展望を山田課長に聞くのは非常に失礼かもわかりませんけれども、厚労省の中で取り組む全体像の中でこれがどういうふうな位置づけになるのかということについて、非常に基本的な質問ですが、伺いたいと思います。
よろしくお願いします。
○棟居部会長 山田課長、お答えをお願いします。
○山田課長 障害者雇用対策課、山田です。
まだ研究会の方向性が出ていないということもあって、一般的論としてのお答えになりますけれども、例えばそれがほかの法律まで見直していかなければいけないということになれば、恐らくそれを所管するところにもお諮りすることになると思います。今、労働政策審議会の場で議論をしているわけではないので、研究会の成果は、折々に労働政策審議会には御報告するつもりですが、労働政策審議会の場で本格的に権利条約への対応についてどうするかということについて議論をするという場にはなっていないので、研究会の結果次第としか申し上げようがありません。
案件によっては複数の労働政策審議会の分科会や部会の場で議論するようなケースも、障害者の話以外であります。前回の中間整理、中間取りまとめにおいても、他法との関係については若干議論はされていますが、正直なところ、我々が最終的にどういう着地点にこの研究会をとりまとめるかということが決まっていないので、それはその結果次第としか言いようがありません。障害者雇用分科会ですべて決着をさせるということには必ずしもならないと思います、内容によってはですね。
○棟居部会長 ありがとうございました。
松井委員、今の点について、よろしいですか。
ありがとうございます。
では、太田委員、お願いします。
○太田委員 太田でございます。ありがとうございます。
今の松井委員の質疑とも関連いたしますが、労働分野における合理的配慮という問題は、もしそれがきちんと実現されるならば、今まで仕事ができなかった、あるいは第三セクターや障害者のための工場などで働く人たちの可能性をもっともっと引き出して、多くの一般の労働者とともに働く、自らの可能性を最大限に発揮しながら働くことができる仕組みとなるだろうということで、大きな期待をいたしているところであります。
それで、今、課長さんから御報告がありましたが、今、私たちは、この推進会議差別禁止部会で差別禁止法の制定に向け、法律の中における合理的配慮の在り方について議論をしているわけですが、厚生労働省さんのお立場からは、どういう立場で研究会に合理的配慮などの問題について研究をしてほしい、その研究成果をどの制度に生かしたいというふうにお考えでしょうか。見解をお伺いしたいと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
山田課長、お答えいただけますでしょうか。
○山田課長 質問の御趣旨に合っているかどうかわかりません。もし私が趣旨を取り違えていたら、御指摘いただければ、また説明はさせていただきます。
労働雇用分野における合理的配慮の提供ということについて、差別禁止法が、すべての障害者の人が生活していくあらゆるステージにわたって差別禁止、合理的配慮というのを徹底していくということではあるのですけれども、ただ、実際のところは、障害者の人で働いておられる方というのは、過ごす時間のかなりの部分を職場という現場で過ごされるということから考えれば、労働雇用分野における合理的配慮の在り方ということが非常に重要な問題になるということは認識をしております。
ただ、そうした中で、これは既に2回開いた研究会の場でも議論になっているのですけれども、合理的配慮というのは新しい概念として提示されているということで、企業の側に合理的な配慮の提供ということを求めるわけですが、企業として、本当に障害者の差別について全く無関心であったり、差別して何が悪いとか言っている企業は別として、そうでないような企業において、合理的な配慮の提供が必要だということであれば、それはしっかりやっていこうとする企業において、非常に悩んでおられるのは、合理的な配慮の提供として企業側は一体何をすればいいのかという点です。
例えば、IQが一定水準の知的障害者の方に対して、その人が職場で働く場合は、合理的な配慮というものについて、こういうものを提供すべきだということを形式的に決めてしまうというのは、おそらく権利条約の精神に反するとは思うのですけれども、ただ、一方で、企業側として知的障害者の人を新たに雇う。彼が働いていくに当たってその働きづらさを軽減して、その人の能力を一番発揮できるようにするために合理的な配慮の提供をしようといった場合に、何をしたらいいかというのが全く展望が開けないということでは、せっかくの企業の思いというものが体現できないということになろうと思います。
ですので、ここはちょっと難しいところなのですけれども、個々の障害者に対して合理的な配慮の提供をそれぞれの状況に応じてしていくということは一方であるものの、ただ、一方で、企業として何を合理的配慮の提供と考えたらいいのかということで、その地図が全く描けないというような状態では、多分これはうまく施行ができない、そういうジレンマがあります。これはおそらく職場だけの問題ではないと思うのですが、そういったところをどうやって解きほぐしていくのか。
おそらく個々の方々に対する合理的配慮の提供の在り方ということについては、先ほど申し上げたような、それをどういうものとして考えていくための一定のスキームが必要だということはあるとは思うのですけれども、そこが難しい問題かなと思っています。そこを乗り越えていくことによって、この話について実質的な意味を持たせる、きちんと施行していけるということになるのではないかと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
私なりにやりとりを多少かいつまんで敷衍させていただく格好でよろしいですか。
先ほど太田委員がおっしゃった最後は、厚労省のお立場としては、どういう研究会で合理的な配慮について研究をするべきで、またその成果をどういう法律で実現していくべきかという、かなり具体的な手法、私の言葉遣いで言うと、仕事の振り分けというのか、もっと俗に言うと、縄張りというか、つまり、どこでだれがどういうふうに決めるのだという、そこの点を非常に重要だという御指摘、太田委員の最後にあったのではないかなと。そうですね。
その点について、山田課長、多分直接にはお答えになっていないと思うのです。
では、お願いします。
○山田課長 障害者雇用対策課の山田です。
基本的にそういった合理的な配慮の提供ということが具体的に職場という空間で実現されていくためには、やはり労働の現場を一番よく知っている労働者側、使用者側、それから当然のことながら障害者の問題でありますので障害者側と、あと、労働政策審議会の場にはもう一つ公益側ということで四者が入りますけれども、そういった場で最終的に議論をしていくということが、合理的配慮の提供の議論については一番実質的にきちんと進めることができると考えています。
○棟居部会長 ありがとうございました。
これも勝手な私なりの敷衍なのですけれども、つまり、この差別禁止部会では、ややもすればと言うのか、非常に理念的に何が差別か、何が合理的配慮かという議論を今までもやってきておりますし、そのこと自体、先ほど課長の御報告の中でも、掘り下げということを強調されました。我々も基本的な概念の掘り下げというのは非常に大事だということで、回を重ねてやってきておるわけであります。
しかしながら、立派な概念ができても、それを現実に実行に移すというときに、良心的な企業も戸惑ってしまう。何をどうすればいいかと。仕事、職場の内容もさまざまであり、他方で障害の方の障害の内容もさまざまです。場合によっては個人によっても違う。そういう場合にどうすればいいかというところが、もう少し具体的に示されないと動きようがない。そこを先ほど課長はジレンマという言葉でおっしゃった。それはよろしいですね。
○山田課長 はい。
○棟居部会長 いろんな現場に近い。そして障害者の代表の方も入れている。四者という言葉をお使いになりましたが、労政審で議論していくというのが、結局、実効性のある合理的配慮をとるためにはよろしいのではないかと、お立場からの御発言であったかと思います。合理的な説明をされたわけです。
つまり、我々としても、もう少し具体的な目線というのは必要なのですけれども、この場で逆に具体的過ぎることをやっても、それは労政審マターでしょうというものもございまして、我々、勢い抽象論になりますけれども、抽象論だけでは動かないよというかなり重い御指摘を伺ったというふうに私は個人的に受けとめました。
ありがとうございました。
ほかに御質問、いかがでしょうか。池原委員、お願いします。
○池原委員 池原です。
平成22年4月27日の中間取りまとめのことについて、ちょっと教えていただきたいのです。
2つほどありまして、1つは2ページのところの「合理的配慮の内容」の「基本的な考え方」というところです。(1)の「基本的な考え方」の1行目のところで、結局「職場における合理的配慮の提供を事業主に義務付けることについて、異論はなかった」という記述があって、これは言わば合理的配慮の提供というのが、事業主にとっては義務であるし、障害のある労働者にとっては権利であるという趣旨に読めると思うのです。
3ページの(4)で「合理的配慮の提供の実効性担保」というところで、1行目の終わりの方から、「あまり確定的に権利義務関係で考えるのではなく、指針等により好事例を示しつつ、当事者間の話合いや第三者が入ってのアドバイスの中で、必要なものを個別に考えていくことが適切であるとの意見が出され、異論はなかった」というふうに記述されていて、読み方によると、1行目の「余り確定的に権利義務関係で考えるのではなく」という表現が、ややもすると合理的配慮についての法律関係が権利義務ではないのだというふうに読めなくはないように思うのです。
これは、基本的な理解としては、「基本的な考え方」の方で示されているように、基本的には権利義務関係なのだけれども、ただいまいろいろ言いましたように、言わば具体的な合理的配慮の内容はかなり個別的に決めなければならないので、その内容は余り確定的にこうだということを例えば法律で書くということが難しい、そういう趣旨で理解してよろしいのかということが1つです。
もう一つは、同じ中間取りまとめの4ページ目のところで、第4の「権利保護」のところの「企業内における紛争解決手続」の2行目の中間辺りからです。「企業内で自主的に解決しない場合は、外部の第三者機関による解決を図るべきであるが、刑罰法規や準司法的手続のような判定的な形で行うのではなく、調整的な解決を重視すべきであるという意見が出され、異論はなかった」ということなのですが、これはちょっと私の読み方がおかしくて、わからないのかもしれないのですけれども、企業内での自主的解決の場合には、言わば判定的な形で行わないで、調整的な方がいいと言っているというふうに理解してよいのか、それとも、外部の第三者機関による解決を図る場合に、判定的なものでなく、要するに、準司法的なものでない方がいいというようなことまでおっしゃっているのか。文脈が私にとってはよくわかりにくかったので、企業内でやる場合に準司法的でなくていいというのは理解できるのですけれども、第三者機関的なものも、準司法的なものでなくていいという趣旨までであると、合理的配慮の権利義務という関係の確定という点で行くと不十分ではないのかというふうに思ったものですから、伺わせていただきました。
○棟居部会長 山田課長、お願いします。
○山田課長 1点目につきましては、第3の1の(1)の「基本的な考え方」の最初の2行にあるのは、これがとりまとめられたときには私は障害者雇用対策課におりませんでしたので、この記述に最終的にまとまった詳細な経緯はちょっとわかりかねますけれども、おそらくは権利条約で事業者に対して合理的配慮の提供を義務づけるということを受けての話だと思います。
後に出てくる「合理的配慮提供の実効性担保」というところに書かれている話については、恐らく前回の研究会、分科会において、合理的配慮の提供の在り方自体の非常に具体の議論というのは、そこまで深くはされていなかった。ただ、先ほど私が申し上げたような個々の障害者がいろんな職場にいるというところで、合理的な配慮の提供ということはある意味さまざま変わってくるといったことが、「必要なものを個別に考えていくことが適切である」ということにつながっていると思います。
ですので、これは私が先ほどいった「ジレンマ」という話にそのまま当てはまらないとは思いますが、多分そういった背景ではないかと思います。余り回答になっていなくて申し訳ないです。
○棟居部会長 これも勝手に私なりに敷衍させていただきますと、池原委員の御指摘は、要するに、権利性と言いながら、かなりそれを弱める方向が出ているのではないかという御懸念を指摘されたと考えてよろしいでしょうか。
○池原委員 権利条約から読めば、合理的配慮の問題は、最終的には権利義務の問題だというふうに理解すべきだと思いますが、ただ、個別具体的な、例えばAさんというある特定の障害を持たれた方がBという企業に勤める場合に、具体的にどういう内容の合理的配慮が必要なのかということは、個別具体的に確定する必要があるので、内容の確定という作業が必要なことについては勿論、異論がなくて、そういう趣旨で読めれば問題がないのですけれども、逆に、内容が不確定だから権利性があいまいになったり、ないのだみたいな理解のされ方は適当ではないのではないかというふうに思ったわけです。
○棟居部会長 山田課長、先ほど今の点についても御回答いただいたということでよろしいですね。
○山田課長 きれいに議論がかみ合っていたかどうかわかりませんけれども、そういった御意見があったことについては、冒頭申し上げましたように、また研究会で紹介をさせていただきます。
○棟居部会長 今の点に私なりにまた関連づけさせていただくと、一番最初に松井委員が御発声といいますか、御質問されたときの御趣旨も結局、差別禁止という、例えば性差別の問題と同じように、言わば自由権的というか、権利性という目線でどこまでとらえるお覚悟があるのかというふうな御質問を最初に振られたのではないかなと思うのですけれども、今の池原委員の御指摘なんかも結局、同じ疑問というか、我々なりの1つの素朴な懸念といいますか、つまり、政策マターにどうしてもすぐ行ってしまって、権利性というのがそこで弱まったり、何か別のものに置き換えられたり、すぐ保護の対象にされたり、そういうことになりはしないかなと。ただ、これは先ほど掘り下げということを言われましたので、研究会で掘り下げていただけるというふうに期待をしたいと思います。
ほかいかがでしょうか。
2点目について。
○西川課長補佐 障害者雇用対策課で課長補佐をしております西川と申します。
2点目の御質問につきましては、刑罰法規や準司法的な手続ではなくて、調整的な解決を重視すべきという御意見があったということでございますが、こちらについては、まずは企業内で解決をするという手続をとった上で、その後にいわゆる刑罰法規を適用してしまって、例えば裁判、司法上の救済に持っていくのではない、行政上の救済。例えば今の労使関係で言えば、紛争の調整委員会とかを活用していくということが望ましいのではないかということで、御意見をいただいております。
諸外国の例なんかも見ますと、まず企業内で解決をするようなプロセス、仕組みというのを設けて、それで解決がされないといった場合に、いわゆるあっせんですとか調停といったような行政上の救済を設け、そしてそれがうまくいかなかった場合の司法救済というような形をとっていることを踏まえてそういった御意見になったのだと考えております。
○棟居部会長 ありがとうございました。
あくまで最終的には司法的救済につながると。その手前の話をされているということですね。
ありがとうございました。
先ほど私、スキップして大変失礼しました。
それでは、ほかの御質問に移らせていただいてよろしいでしょうか。
山崎委員、お願いします。
○山崎委員 山崎です。ありがとうございます。
私も一昨年4月の中間整理に関わることでございます。これの2ページ目の第2の「障害を理由とする差別の禁止」の1の「基本的考え方」の2行目、「また」以下なのですが、「労働者代表委員及び障害者代表委員から差別禁止の実効性を担保するためには、企業での啓発的な活動を合理的配慮の内容に位置づけるべきではないかとの意見が出された」と。なかなかすごいことが書いてあるのですが、これを素直に読みますと、きちんと啓発的な活動をしないと合理的配慮に欠ける、差別になると。そうすべきであるという御趣旨だったのか。そうではなくて、合理的配慮を進めるため企業内で啓発に取り組む方がよろしい。それを進めるような手だてを何らかの形で考えた方がいいというのか。あるいは具体的な問題があった場合に、企業に対して、企業の費用で合理的配慮等について研修とか広報をするようなことを義務づけるべきだというふうに考えた、そういった御意見が背景にあるのか。多分第1だと思うのですが、この文章だけではよく読めなかったので、もしわかれば、その点を教えていただきたいというのが第1点です。
もう一点は、今なさっている研究会の今後のスケジュールを拝見していますと、4回目、5回目辺りで「合理的配慮の内容」とか「合理的配慮の提供のための仕組みについて」というような項目が今後検討されようとしているというふうに拝見しています。今、私が質問させていただいたものを今後この研究会で検討されることになった場合、これは合理的配慮の内容についての検討なのか、あるいは提供のための仕組みについての検討に当たるのか、その辺りも教えていただければ幸いです。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
西川補佐、お願いします。
○西川課長補佐 課長補佐をやっております西川です。
ただいまの御質問でございますが、企業内の啓発的な活動を合理的配慮の内容に位置づけると。私もその当時の研究会、分科会には参加をしていなかったわけでありますが、ただ、考えられるのは、合理的配慮の内容に位置づけるということですから、合理的配慮、それぞれ障害種別なり職場の状況に応じてさまざまな配慮があると思いますが、その中で位置づけていくべきではないかという御意見だったのではないかと。
ただ、合理的配慮というのは、この分科会の中間取りまとめでも書いていますように、それぞれの職場、それぞれの障害をお持ちの方々に応じて非常に多様性があるということは合意を得ているというところもありまして、単純な啓発活動ということをもってそれを合理的配慮の中身だというふうにしていくところまではなかなか難しい。まさにそこも含めて今、立ち上げた研究会で議論はしていきたいと思いますが、そこは企業の負担でやっていくのかどうか。そもそも「合理的配慮というものを事業主に義務づけたのだ」という制度のことを啓発していくのであれば、それは政府の役割なのか。そういったことも含めて今後、研究会では考えていきたいと思っています。
○棟居部会長 ありがとうございました。
○山崎委員 山崎です。
2番目に伺った細かい点ですけれども、合理的配慮の中身という点で検討されるのか、仕組みの話題として検討されるのか、あるいは両方なのかについてもお願いいたします。
○棟居部会長 お願いします。
○西川課長補佐 課長補佐の西川です。
企業が啓発をするということをその仕組みの中に盛り込むのか、それとも個別の合理的配慮の1つとして押さえていくのかということだと思うのですが、そちらについても、実際中間整理、中間取りまとめでもまだ結論が出ておりませんので、今いただいた御意見を踏まえながら御紹介をさせていただきながら議論をしていきたいと思っています。
○棟居部会長 ありがとうございました。
副部会長、お願いします。
○伊東副部会長 伊東でございます。
2点質問を申し上げます。
労政審は、雇用政策の決定について非常に重要なお立場にあると思いますが、雇用分科会による「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する中間的な取りまとめ」(平成22年4月27日)についてです。
この取りまとめは、分科会で定義されたさまざまな意見を集約、紹介される内容、流れになっておりますが、本文中に、第1のところで「基本的枠組み」「枠組みの全体像において」で、「我が国における障害者雇用率制度は成果を上げてきていることから、引き続き残すべきとの意見が出され、異論はなかった」とございます。
1976年4月から改正雇用促進法が施行され、ある程度強制力のある雇用率制度が始まったわけでございますが、「目標」とされる雇用率は現在1.8%となっています。しかしながら、法律が改正されてから38年という時間がたっているにもかかわらず、いまなお1.8%の雇用率を達成していない企業が全体の半分ほどあるという現状の中で、にもかかわらず、これをもって「成果を上げてきている」と言われるのは、どのような根拠を持ってそのような評価となっているのか、をお尋ねしたい。
現状をもって「成果を上げてきている」と言われますと、労政審あるいは労働行政が想定している障害者雇用対策、特に一般雇用の目標が余りにも低いのではないかと感じます。この程度で良し、とされるということになると、差別禁止法において、一般雇用の位置づけとその成果を上げるための「合理的配慮」のあり方に関して心配します。
すなわち第1点は、障害者雇用のこれまでの成果について、本当に現状程度で成果を上げてきていると評価を持っておられるのか、この分科会あるいは労政審の中でのニュアンスをもう少し御説明いただければ、ありがたいです。
第2点は、雇用率制度そのものについて、継続という御意見のようでございますが、雇用促進法の他の事項、内容については一体どうなのでしょうか。例えば特例子会社制度なども含めてこの分科会あるいは労政審で現状程度の雇用促進制度を肯定しているのか、雇用率制度だけについて継続でいいのではないかという御意見なのか。できましたら、もう少し御説明を追加していただければありがたいです。
○棟居部会長 ありがとうございました。
山田課長、お願いします。
○山田課長 障害者雇用対策課の山田です。
障害者雇用対策の現状の評価ということについて、労政審を代表して私の方から意見を述べるわけにはいかないですけれども、そこのところは、少なくとも8年連続で今、障害者の雇用者数が伸びているというのは事実としてあります。その間にリーマンショックがあり、東日本大震災があり、一般の雇用状況はかなり悪かったにもかかわらず、障害者の雇用者数は伸びている。ただ、今おっしゃられたように、法定雇用率の1.8%に届いていないというのは事実としてありますし、半数の企業は法定雇用率に達していないというのもまた事実としてありますので、そこはプラスの面とマイナスの面が交錯している状況であって、我々として障害者雇用対策を更に進めていく必要があるという認識ではあります。
ただ、第1点目の障害者の雇用者数が伸びているというのは事実としてある話であって、その程度でいいのかということを言われれば、それは法定雇用率を目指して引き続き頑張る必要があるとは思いますが、そこは事実としてあろうかと思います。
2番目の御質問の雇用率制度の話以外の話も含めて議論していくかどうかということについては、冒頭申し上げましたように、「権利条約への対応の在り方に関する研究会」、我々は、第2研究会と呼んでいますけれども、それ以外に第1研究会、第3研究会というのを先ほど申し上げたとおりやっております。それは結局、障害者雇用制度改革のために我々としてしなければいけない課題が山積している、それについてどういうふうに具体的に考えていくかということについて考えると。特例子会社のことも含めて検討はしていきます。
○棟居部会長 ありがとうございました。
山本委員、お願いします。
○山本委員 山本です。
質問でもあり、将来へ向けての問題提起としてもお受けとめいただければと思うことを1つ申し上げたいと思います。
と言いますのは、雇用の領域に関する事柄については、差別禁止の問題ではあるとしても、より具体的な問題に即したものとして法形成を考えていくべきであり、したがって、労政審等しかるべきところで議論をして、しかるべき形で法整備を行うという考え方は、勿論、そうあるべきだろうと考えています。
その上での問題なのですが、これによりますと、どの法律かは別として、労働法制の領域のどこかで労働の領域における差別禁止に関する具体的な法整備が行われることになります。ただ、その一方で、障害者差別禁止法というような一般的な法律が制定されるとしますと、そのような法律が制定された後で、実際に紛争が起こったときに、労働法制で定められている基準やルールは、言わば最低限のものであって、個別の状況によってはそれを超えるような保護が図られる必要があるのではないか。そこで、障害者差別禁止法という一般的な規定があるので、それを利用して訴訟等が行われていくという可能性はないわけではないだろうと思います。
障害者差別禁止法は、特に限定をつけて規定しないとするならば、一般的に適用可能なものですので、そういった形で使われる可能性はあるだろうと思います。そのような状態になるかもしれないということを見据えて、どう法整備を進めらるべきかというのが、課題の1つになるだろうと思います。
民事法の領域ですと、消費者契約法がそうなのですが、消費者契約法では、消費者のための法規制を行っているわけですけれども、労働契約については、現在は適用除外としています。それは、労働法の領域では労働者保護のための法整備が行われているのであって、それにゆだねるというのが一般的な説明です。このように、消費者契約法が適用されないとしているのと同じような形で、一般規定である障害者差別禁止法は労働法の領域では適用除外にするというのが一番ラジカルなやり方なのですが、そのようなことを考えるのか、あるいはそうではないとして、どのように整理をしておくのかということが、将来に向かって問題になってくるだろうと思います。
その点について今、御検討をされているかどうかは定かではありませんけれども、そういった法整備の進め方について何らかの指針のようなものがおありであるならば、お聞かせ願いたいと思いますし、いずれにしても今後の課題として受けとめていただければと思います。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
山田課長、お答えいただけますでしょうか。
○山田課長 障害者雇用対策課の山田です。
正直なところ、現在の状態ですと、我々がどういった形で法制度の整備をするのかということも、ある意味白紙の状態でありますし、差別禁止法の具体的な姿というのもまだ明らかではないという状態の中では何とも答えのしようがないのですけれども、一般的な法律上の組み立て方ということよりは、今、私が念頭に置いているのは、どのやり方が一番施行がうまくいくかという観点からさかのぼって法律上どういう定め方がよいのかということで考えていますので、今の段階で法律上の整理をどうするかということについては、最終的には研究会、分科会の方に御検討いただくことになります。そういった論点が今回、差別禁止部会で示されたということについては御紹介をさせていただきますが、今の段階では、恐らく研究会としてもそういった問題提起をされても私と同じような御意見しか出てこないのではないかと思うのですけれども、そういった御意見があったということについてはお伝えします。
○棟居部会長 ありがとうございました。
川島委員、お願いします。
○川島委員 ありがとうございます。川島です。
平成22年4月27日の中間取りまとめの内容について、ちょっとお伺いしたいと思います。それと関連して今後のスケジュールのことについてもお伺いしたいと思います。
22年4月27日の中間取りまとめの2ページ目の「障害を理由とする差別の禁止」なのですけれども、幾つか記述があるのですが、次の3点について議論がなされたのかどうかということと、今後のスケジュールでも、今から言う次の3点について議論されるようなことがあるのかどうか。それはまだわからないかもしれないので、今後のスケジュールについては、私からのコメントということになります。
まず、1つはハラスメントです。ハラスメント、嫌がらせ、という概念が障害差別の中に入ってくるのかどうか、という議論はあるのかというところをお伺いしたい。
2つ目が女性障害者。つまり、男性の障害者に対しては差別がない。障害がない女性に対しても差別はない。しかし、障害のある女性にだけ不利益を与えるような処遇がある場合に、イギリスではコンバインド・ディスクリミネーション、結合差別という形で、差別の概念にちゃんと入っているわけですけれども、そういう議論がありましたかどうかということです。
第3点目が、いわゆる関係者の障害と言われるものです。この部会で議論がありましたけれども、例えば自分のお子さんが障害を持っていて、母親もしくは父親は障害がないのだけれども、お子さんに障害があるということで、職場で差別を受けてしまう。そういうような議論があったかどうか。
今後のスケジュールで1月に論点の提示というのが行われて、第4回目で差別の禁止の議論が最初に行われるようなのですけれども、この3点を議論されるかどうかというのも現時点でわかる範囲で教えていただければと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
山田課長、お願いします。
○山田課長 前回の労働政策審議会の議事録をすべて持ってきているわけでもないので、それぞれ個々のものについて議論があったかどうかということについては、今、あった、なかったということは申し上げられないのですけれども、ただ、今おっしゃられた話については、この新研究会の方に、そういった御議論が差別禁止部会であったということについてはお話をしています。
今、第2回目で御説明したものについての議事録は調整中ですので、そこでどういうやりとりがあったかということについては、今、申し上げられません。
そういった論点があるということについては、差別禁止部会の議論を紹介する形で研究会にはお話をしています。
これからについては、例えば中間取りまとめのこの項目、この2文についてはどこで議論するかということは、ある意味決めの問題になりますので、どこで議論されるかということ、あと議論するかしないかということについても基本的に研究会の御判断にゆだねることになろうかと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
これもまた答えにくい質問だったかと思います。
ほかいかがでしょうか。
東室長、お願いします。
○東室長 担当室の東です。
「今後のスケジュール表(案)」というものが資料1の3ページに載っているわけですけれども、例えば第5回で「権利擁護」という言葉が書いてあるのですが、具体的には例えば企業内での自主的な紛争解決の在り方とか、外部機関における紛争解決の在り方、そういったものがここでは議論されることになるかどうか、おわかりの範囲で答えていただければと思います。
その前に記載のある「仕組み」と「権利擁護」の関係ですが、この仕組みの中自体に権利擁護というのは入るのか、入らないのか、そこら辺の論点の仕切りみたいなところをもう少し詳しく教えていただけませんでしょうか。
○棟居部会長 補佐がお答えになりますか、お願いします。
○西川課長補佐 課長補佐の西川です。
権利擁護の部分についてでございますが、今、室長から御質問があったように、企業内でまずは話し合いによって解決をしていくということが中間取りまとめで言われているのですが、では、実際どういったルールをつくっていくのか、それをルール化していくのかどうか、そういったことは詰められているとは思っておりませんので、その部分について議論をしていただきたいと思っています。
「合理的配慮の提供のための仕組みについて」と「権利擁護」の関係性でありますが、重なってくる部分は当然あると思いますが、我々が考えているのは、企業側が採用を行ったとき、それから例えば配置転換なり人事異動を行ったとき、ある種雇用の場面における変化が何か生じたときにどういった合理的配慮が適切に提供されていくかといったときに、当然労使と障害をお持ちの方が入って何らかの会議の場を設定すべきだというのか、それとも企業側にそういった役割を担う担当の何かを位置づけて、その人が推進していくとして、その人が調整を常に図っていくのか、そこの仕組みというのをどうするかと。
先ほどお答えさせていただいたのは、まさにそれが提供されたのだけれども、それが合理的ではないとか、提供されていないといった問題が起きたときに、では、企業内でどういうふうな解決がというところで、若干権利擁護の部分の記述とステージが異なってくるかなと思うのです。
○棟居部会長 室長、今のはよろしいですか。
○東室長 はい。
○棟居部会長 ほかいかがでしょうか。
では、松井委員、お願いします。
○松井委員 松井です。
これは非常に理念的なことになると思いますけれども、もともと障害者雇用促進法の理念は、企業間の経済的負担のバランスをとるというか、そういうことが基本的な考え方だと思いますが、権利条約に基づく、例えば合理的配慮にしても、権利性が非常に強い。だから、2つの理念が違うものを1つの法律の中で処理をされるということなのか、あるいは仮に今回の検討を経た段階で、今の雇用促進法ではないということもあり得るのか。ここまでの質問をするのは大変強引かもわかりませんけれども、その辺、どういうふうに考えられているのか教えていただきたいと思います。
よろしくお願いします。
○棟居部会長 山田課長、お願いします。
○山田課長 障害者雇用対策課の山田です。
恐らくそれは合理的な配慮の提供ということをどう位置づけるかによって決まってくる話だと思っています。我々も合理的な配慮の提供をどう位置づけるのかということについてのいろんな場合分けをして、それの場合だと法律上はこうなるというような作業は、今の段階ではしていませんので、ただ、今おっしゃられたことが何によって方向づけられるかと言われれば、職場での合理的な配慮の提供ということをこのスキームの中でどういう形で位置づけるかということを決めた後に出てくる話だと思うので、今の段階でどうだという話はできないです。
○棟居部会長 私、確認のために山田課長にお聞きしたいのですけれども、先ほどの松井委員の御発言の最初におっしゃった点は、障害者雇用促進法の中に入れ込むにしては、障害者雇用促進法というのが、そもそも権利条約の掲げる権利性というのと本質的に違う仕組みなのではないか、そこに入れるのは無理があるのではないかという御指摘だったと思うのです。そして、それは今日の一番最初の御質問とも多分つながってくると思うのですが、この点についてお答えいただけますでしょうか。
○山田課長 障害者雇用対策課の山田です。
何と答えていいものか。逆に今、松井委員のおっしゃられたことを研究会の方に、今回の差別禁止部会でこういった御意見が出たということについてお示しして、研究会のメンバーがどういうふうにお考えになるのかということを尋ねてみないと、私としてもここは何とも言いようがないです。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
では、補佐、お願いします。
○西川課長補佐 課長補佐の西川です。
今、課長の山田が申し上げたことに補足をさせていただきますが、現行の障害者雇用促進法につきましては、御承知のとおり、雇用義務、雇用率制度というのが大きく取り上げられますけれども、それ以外にも、松井先生御承知のとおり、例えば事業主が適切な雇用管理を行うためにハローワークが助言をしたり、逆に企業側が達成をされていない雇用率については行政指導を行うというような規定を書いておりますし、それ以外にも、いわゆる適切な雇用管理にかかるための例えば施設設備とか人的な支援をする際の助成措置というものも既に今、規定をしております。
実際差別禁止を雇用分野についてどう規定をしていくのかというのは、まさに今後の話でありますが、ただ、実効性を担保するというのは、まさに行政指導をだれがどういう手続でやっていくのかとか、あとは、今後の大きな論点でございますが、合理的配慮を提供するときに事業主の負担を助成するといったときに、その財源なりその仕組みというのを全く新たにゼロからつくっていくのか、それとも今ある既存の制度をうまく活用していくのかというところでは、障害者雇用促進法というのは、単純に雇用を促進させるということ、雇用率を規定しているだけではございませんので、そういうメリットというのは逆にあるのかなというふうに思っています。
○棟居部会長 ありがとうございました。
障害者雇用促進法は権利性と十分両立している、あるいはそういう運用は可能だと。こういう御指摘と受けとめてよろしいですね。
ありがとうございました。
伊東副部会長、お願いします。
○伊東副部会長 ただいまの松井委員がおっしゃられたことは非常に重要な観点だと思います。雇用促進法では、雇用率達成企業に助成金を出したり、逆に雇用率未達成であれば、調整金を納付させる仕組みになっています。障害者雇用促進施策の財源として調整金を使う仕組み、雇用率未達成の企業にペナルティーという言い方をしていいかどうかわかりませんが、実質ペナルティーにあたる金を出させて、それを雇用する側に助成金として出すと言うことが今の雇用促進法では前提になっています。一般会計とは別枠の会計で雇用対策が行われています。
雇用している側としていない側のお金のやりとりで財源を作ることで雇用促進をするという思想とシステムは、差別禁止法の理念から考えると、それでいいのかと疑問があります。
障害のある人が機会を得て当たり前に社会で働けるようにするというのは、社会全体の基本理念として確立することが大事であり、そのためには、考え方としても、別枠会計ではなく、一般会計で対応することが良いのではないかと思いますがいかがでしょうか。
○棟居部会長 ありがとうございました。
お答えいただけますか。では、山田課長、お願いします。
○山田課長 障害者雇用対策課、山田です。
納付金制度は、企業に対するペナルティーではありません。先ほど松井委員が冒頭おっしゃられたのは、むしろ納付金制度の説明に一番合っていると思いますけれども、雇用率を上回る企業、それを下回る企業が本来負担すべき障害者雇用に伴うコストの負担の経済調整を行うための仕組みというのが納付金制度であります。
おっしゃられるように、納付金制度によって支給している助成金はありますけれども、障害者雇用対策については、それ以外に一般会計、雇用特別会計による助成金制度を別途設けておりますので、そういったものである意味企業をバックアップしており、納付金制度に基づく助成金だけで支援しているわけではありません。
○棟居部会長 ありがとうございました。
池原委員、お願いします。
○池原委員 うまく整理して説明できるか、まだ頭がよく整理できていないのですけれども、今、松井委員と課長とのやりとり、あるいは課長補佐さんとのやりとりを伺っていて、当委員会ともう少し議論の場を持てた方がいいのかなというふうに思った点が1つありました。
というのは、特に障害者雇用促進法の従来的な義務というものの本質を少し考える必要があると思うのです。従来、企業に課せられている雇用義務というのは、ある種の行政法的な義務であって、個々の労働者なりがその義務に対応して権利を持っているかというと、そういう理解ではないはずです。
合理的配慮義務の義務というのは、我々は、義務に対応して、当然障害のある労働者側に権利があるというふうに考えるわけです。だから、ここで合理的配慮義務の義務というところに着目をして、従来型の雇用促進法における行政法上の義務みたいな位置づけをしてしまうと、言わば合理的配慮義務に従わない場合には、一定の行政指導を受けたり、あるいは行政罰を受けるというような効果が発生するとしても、障害を持っている労働者側が、企業に義務があるのだから、当然私には権利があるはずだという主張をすると、裁判所では必ずしも反射的に権利が発生するという理解にはならないということになる危険性があって、雇用促進法の中に合理的配慮義務を定めたから、それでいいではないかということに落ちついていいのかどうかという議論は、もう少し義務の本質論を整理しておく必要があるかなというふうに今の議論を伺っていて思いました。
それは、先ほどの松井委員の方の雇用促進法という法的枠組みの中に入れても大丈夫なのかなという懸念にも恐らくつながることかなというふうに思ったのです。その辺の権利義務関係については少し論点を整理して、共通認識を持てるようにした方がいいのかなというふうに思いました。
○棟居部会長 ありがとうございました。
今の点に山田課長、お答えいただけますか。
では、済みません、大谷委員、お願いします。
○大谷委員 済みません、独立した質問ではないように思うので、ちょっと関連で質問をさせてください。
私も先ほどからこの辺をどういうふうに考えたらいいのかなというふうに思って、ちょっと考えがまとまらないままですから、併せて聞かせていただきたいのは、やはり労働のところはすべておおよそ民民ですね。個人と個人との関係。そこで過度な負担の抗弁というのは、我々、当然意識しなければいけないのですけれども、事業主を固有に判断するということになると、過度の負担の抗弁はかなり予想される事態になるのではなかろうかというふうに危惧するのですが、それに対して公的助成を前提として考えている。公的助成の位置づけをどのように考えていいのか。過度の負担を軽減するという意味で公的負担をかませるというか、公的負担の在り方という形で、平成22年の取りまとめが検討されているようですけれども、どのように検討されているのか、どのように公的な助成を位置づけているのかも含めてお聞かせ願いたいと思います。
○棟居部会長 では、お願いします。
○山田課長 障害者雇用対策課の山田です。
池原先生の御指摘については、非常に重い話でありまして、これは研究会で差別禁止部会について御紹介するときに、そういった御意見があったということでお話をしようと思います。今、それに対してどうこうと答えられるものではないです。
大谷委員の御指摘は、それにつながる話ではあるのですけれども、実は合理的配慮の提供、過度の負担、公的助成というのは、ある種差別禁止を考える上での大きなアポリアになる可能性があります。私もこれまでの差別禁止部会の御議論を伺っていても、そこの整理、どういうふうに考えたらいいのかというのはすごく悩ましくて、更に難しいのは、我々はそれを制度として結晶化させないといけないことになる。それが差別かどうかという問題については制度ではないですが、権利条約の精神を体現するために、障害者の人の働きづらさの解消ということをするためにも、この権利条約に埋め込まれたいろんなツールを制度として結晶化させていくに当たって、非常に悩ましい問題だと思っています。
それで、公的な助成、事業主の負担に対する助成の在り方について、この研究会で割と時間をとろうと考えているのは、まさにそこのところの難しさゆえであります。
ですので、今、大谷委員と私の意見が合っているのか、合っていないのかということはありますが、少なくともこの問題が非常に難題だということについては共通の思いでありますので、ここはいろんなテーマがある中で非常に掘り下げをしなければいけない部分だと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
問題の所在についてかなり合意が見られたというのは、我々にとって大変有益だったと思います。研究会での議論を楽しみにしております。
そろそろ予定の時間、尽きつつあるのでございますが、あと一つございますか。よろしいでしょうか。
それでは、以上で第1コーナーを終わらせていただきます。
ヒアリングに御協力いただいた山田課長、お忙しい中、どうもありがとうございました。
ここで15分間の休憩をとります。再開は15時45分より少し前とさせていただきます。
(休憩)
○棟居部会長 それでは、時間が参りましたので、再開させていただきます。
第2のコーナーは80分で、文部科学省からのヒアリングでございます。
なお、先ほどの繰り返しになりますが、改めて申し上げます。ヒアリングに先立ちまして、確認しておくべき事項がございます。本日の部会は、教育分野の施策の全般について検討を行う場ではありません。現状を踏まえた上で、差別禁止法制がどうあるべきかについて議論を収れんさせていくことが必要です。この点を御注意ください。また、新たな施策の実施や施策の変更に当たっては、文部科学省であれば中教審の検討を経る必要があるため、本日のヒアリングでは文部科学省の今後の対応について確定的な回答を期待できないこともあるかと思います。以上の点、よろしくお願いします。再度確認させていただきました。
それでは、初等中等教育局特別支援教育課より千原由幸課長においでいただいております。まず、千原課長様より20分程度で御説明をいただきますので、よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
○千原課長 座ったままで大変失礼をいたします。ただいま部会長より御紹介をいただきました文部科学省特別支援教育課長の千原でございます。本日は、この場にお呼びいただきまして大変ありがとうございます。
本日は、今、部会長から御紹介がございました中教審、そのもとに「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」というものが設置されております。更に、その委員会のもとに「合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ」というものが設置されておりまして、そちらの方で合理的配慮あるいは環境整備ということにつきまして議論をしてまいりましたので、その状況を御報告に上がらせていただきました。
お手元に資料2-1から2-3がございますけれども、まず、これまでの審議経過等を御紹介するために資料2-3をごらんいただけますでしょうか。こちらにございますように、特別委員会の方で去年の5月に決定をしております。1ページ目でございます。「1 検討事項」ということで、特別委員会の方では、更にその前の22年の年末にいわゆる論点整理というものをまとめました。その論点整理におきましては、就学先決定の在り方、あるいはインクルーシブ教育システムということについて議論がまとめられておりますけれども、その際、合理的配慮あるいは環境整備、そういったことについては、ありていに申し上げますと、引き続き検討という形になりました。
年が明けまして23年から具体的に積み残した課題を特別委員会の方でも議論をしておりますけれども、その際、やはり合理的配慮等につきましては、いろいろ障害種別でも違うだろうし、またソフト面、ハード面からも議論が必要だといった議論がございまして、こちらにあるような委員会決定としてワーキンググループの設置が決められました。
検討事項にありますように、「(1)合理的配慮について(障害種別並びにこれら障害種に共通する事項)」ということについて、「(2)その他の環境整備について」ということで、ワーキンググループが議論を開始してございます。
1枚おめくりいただきまして2ページ目でございますが、こちらがワーキンググループの委員名簿でございます。全部で14名ということで、尾崎主査、河本主査代理を中心に14名の委員で構成されてございます。
また、下の方のオブザーバーは、特別委員会の委員長及び委員長代理ということで、石川委員、
委員ということでございます。
1枚おめくりいただけますでしょうか。3ページ目でございます。5月に設置が決定されまして、第1回7月から第8回、本年の1月まで8回にわたりまして議論が進められてまいりました。第1回目は、こういったワーキンググループにおける検討事項について議論をいただき、顔合わせ的な会議でございますが、その後、第2回、第3回と障害者御本人あるいはその保護者の方から障害種別でヒアリングをさせていただきました。そして、第4回、こういったそれぞれの障害種別のヒアリングの結果をまとめながらも、また障害種別を超えた共通的な事項というのはどういうのがあるかというようなことについて、また、そもそも合理的配慮というのは新しい概念でございますので、合理的配慮ということについて、一体どういうことか、そういったことについての議論をしていただきまして、第7回目、第8回目でワーキンググループ報告について御議論をいただいて、1月の第8回で主査一任という形になってございます。
本日、資料2-1、2-2としてお持ちいたしましたのは、そのときの第8回目の主査一任になりました資料でございます。第8回におきましても、るる御議論がございまして、一任にはなっておりますが、したがいまして、今、お手元の資料2-1、2-2は最終版ではございません。現在、主査、主査代理が第8回の御議論を踏まえて、どう修正するかということを今、詰めているという状況にございます。
では、早速報告(案)の方に移らせていただきたいと思います。資料2-1は概要版でございまして、資料2-2の方が報告(案)本体となっておりますので、恐縮ではございますが、資料2-2の本体の方をかいつまんで御説明させていただくという形にしたいと思っております。
おめくりいただきまして、最初の方に目次ということでございます。「はじめに」、それから1ポツとして「『合理的配慮』の定義等について」、2ポツ「『合理的配慮』の決定方法等について」、3ポツとして「基礎的環境整備について」、4ポツとして「学校における『合理的配慮』の観点」、5ポツで「関連事項」となっております。それぞれ中を見ながら、どういうことかを御紹介させていただきたいと思います。
また1ページおめくりください。1ページ、「はじめに」のところから、飛ばしながらで恐縮ですが、全体を追いたいと思っております。
まず、1ページの<2>にありますことは、先ほどの設置紙に書いてありました2点について、検討、審議するということで、ワーキンググループが設置されましたと。
そして<3>でございますが、今、御紹介したこととかぶりますけれども、障害御当事者・保護者の方からヒアリングをさせていただき、委員による障害種別の検討を行って、また、障害種別を超えた共通的な事項を整理するというような経過をとりました。その中で合理的配慮の観点ということを整理していただいております。また、これと並行して条約における合理的配慮ということを踏まえながら、本ワーキンググループとしての定義を決めていただきました。
2ページに行きまして<6>のところに飛ばせていただきますけれども、「『合理的配慮』というものは新しい概念である」と。その上に書いてございますけれども、「障害者基本法において、『可能な限り障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるよう配慮ししつ』」ということを規定していただいた趣旨を踏まえて、本ワーキンググループにおいて条約の理念を踏まえた障害のある子どもに対する『合理的配慮』の観点というものの整理を行った」ということでございます。
今回、本ワーキンググループにおきましては、合理的配慮の観点を改めて整理をして、ワーキンググループとしての思いということになりますけれども、これを踏まえて、「それぞれの学校における障害のある子どもへの教育が一層充実したものになっていくことを願ってやまない」というまとめになってございます。また、「合理的配慮については、教育委員会、学校、各教員が正しく認識しなければならない」ということと、また、「地域における理解」ということについても「理解促進のための啓発活動が必要」というふうにまとめていただいております。
その下、2ページの1ポツからが「『合理的配慮』の定義等について」ということでございます。(1)<1>のところは条約上の定義を書いてございますので、省略をさせていただきますが、これを踏まえまして次の3ページをごらんください。<2>というところで本ワーキンググループにおける「合理的配慮」の定義をさせていただいております。1行目の最後にありますように、本ワーキンググループにおいては、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に『教育を受ける権利』を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、「学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」という定義とされてございます。この際、「条約において、『合理的配慮』の否定は、障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要がある」というふうに指摘されてございます。
また、今、出てまいりました「均衡を失した又は過度の負担」ということにつきましては、<3>、「各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、『「均衡を失した』又は『過度』の負担について、個別に判断することとなる。各学校の設置者及び学校は、障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、『合理的配慮』の提供に努める必要がある」という指摘になってございます。
次の(2)のところでございます。先ほど見ていただきましたように、本ワーキンググループは、合理的配慮、その他の環境整備、この2つを議論するということで、また、合理的配慮というのは新しい概念で、委員それぞれの中にもいろいろな思いがあったようでございますが、それを議論する中で、「合理的配慮」と「基礎的環境整備」というふうに位置づけるというような方向になりました。
まず、<1>のところで、障害のある子どもに対する支援については、法令に基づき又は財政措置により、国、都道府県あるいは市町村で教育環境の整備をそれぞれ行う。これらは、『合理的配慮』の基礎となる環境整備であり、それを『基礎的環境整備』と呼ぶ、というふうに本ワーキンググループでは御指摘をいただきました。この環境整備というのは、その状況によって異なるところではございますが、これらをもとに、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて『合理的配慮』を提供する、というまとめになってございます。
1つ飛ばさせていただきまして、<3>は「合理的配慮」の観点というものを書いた部分になりますが、個別の状況に応じて提供されるものであって、これを具体的かつ網羅的にすべて記述するというのは困難であるということで、本ワーキンググループにおきましては、合理的配慮を提供するに当たっての観点を「合理的配慮」の観点というふうにとらえまして、<1>教育内容・方法、<2>支援体制、<3>施設・設備、それぞれを類型化する、そして、次の4ページですけれども、各「合理的配慮」の観点ごとに各障害種に応じた「合理的配慮」を例示するというような構成で整理をいただきました。
次の「2.『合理的配慮』の決定方法等について」でございます。(1)基本的な考え方というところは、合理的配慮を行う前提として、学校教育に求めるもの、そこの下にありますけれども、時間の関係で読み上げませんが、(ア)から(カ)に当たるようなことを求めていく教育というのが大事であると。
<2>、これらは、障害者の権利に関する条約24条第1項の目的と方向性を同じくするものであり、「合理的配慮」の決定に当たっては、こうした目的に合致するかどうかの観点から検討することが重要であるという御指摘でございます。
具体的な決定方法につきましては、(2)の<1>のところでございますが、「合理的配慮」は、一人一人の障害の状態、教育的ニーズ等に応じて決定されるものであります。その検討の前提として、設置者・学校は、御本人の興味・関心、学習上又は生活上の困難、健康状態等、そういった子どもさんの状態把握を行う必要がある。これを踏まえた上で、学校現場におきましては、障害のあるお子様について個別の教育支援計画というものを作成してまいりますけれども、それを作成する中で、「合理的配慮」の観点を踏まえまして、「合理的配慮」について可能な限り合意形成を図った上で決定して、提供していくことが望ましい、その内容が個別の教育支援計画に明記されることが望ましいというおまとめになってございます。
次、4ページから5ページに参りますけれども、そうした合理的配慮の決定に当たって、5ページの上に飛ばせていただきますが、設置者・学校と本人・保護者の御意見が一致しない場合には、第三者機関により、その解決を図ることが望ましいというおまとめでございます。
1つ飛ばしまして、「(3)『合理的配慮』の見直しについて」でございますけれども、「合理的配慮」が決定された後も、一人一人の発達の程度、状況等を勘案しながら柔軟に見直しができることを共通理解とすることが重要であるという御指摘。
その次の「(4)一貫した支援のための留意事項」ということで、<1>、例えば小学校から中学校に移行するような場合の情報の引継ぎということの重要性、その際の「合理的配慮」の引継ぎを行うことが必要であるという御指摘。
<2>では、発達や年齢に応じた配慮を意識することが必要であるという御指摘。
<3>では、例えば高等学校においては入学者選抜ということが行われますけれども、そういったものに対して、一層の配慮を行うということ。選抜方法の多様化ですとか評価尺度の多元化というというような御指摘。更にはキャリア教育あるいは就労支援の充実を図っていくことが大事だという御指摘をいただいております。
続きまして、6ページに飛ばさせていただきまして、「(5)通級による指導、特別支援学級、特別支援学校と『合理的配慮』の関係について」というところでございます。合理的配慮について、委員の御意見、最初、意識合わせの段階ではさまざまございましたが、例えばこういう通級による指導、特別支援学級、特別支援学校と「合理的配慮」の関係をどう整理するかという議論がございました。結論は<1>の2行目からでございますが、通級による指導等の設置というのは、多様な学びの場の確保のための「基礎的環境整備」として行われているものである、というおまとめでございます。
そして、<2>に飛ばせていただきますけれども、通常の学級のみならず、通級による指導等においても、「合理的配慮」として、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことが必要だ、というおまとめになってございます。
<3>、それぞれの学びの場における「合理的配慮」というのは、この後に具体的には出てまいりますけれども、「合理的配慮」の観点を踏まえて、個別に決定されることとなりますが、「基礎的環境整備」を基に提供されるために、「基礎的環境整備」の状況により提供される「合理的配慮」は異なることとなる、というふうに御指摘をいただいています。
<4>、「障害のある子どもが通常の学級で学ぶことを可能な限り配慮していくことが重要である。他方、十分な教育を受けられるようにするためには、本人・保護者の御理解を得ながら、必ずしも通常の学級で全ての教育を行うのではなく、通級による指導等多様な学びの場を活用した取り出し指導を柔軟に行うことも必要な支援と考えられる」というおまとめになってございます。
続きまして、下の方に行かせていただきまして「3.基礎的環境整備について」のところでございます。「『合理的配慮』の充実を図る上で、『基礎的環境整備』の充実は欠かせない。そのため、必要な財源を確保し、国、都道府県、市町村は、(中略)共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、『基礎的環境整備』の充実を図っていく必要がある」というふうに指摘をいただいております。
その際ということで、<2>、「現在の財政事情に鑑みると、そのためには、共生社会の形成に向けた国民の共通理解を一層進め、社会的な機運を醸成していくことが必要であり、それにより、財政的な措置を図る観点を含めてインクルーシブ教育システム構築のための施策の優先順位を上げていく必要がある」というふうにいただいております。
その先、「基礎的環境整備」につきまして、(1)~(8)までまとめてございますけれども、時間の関係で飛ばさせていただきますが、それぞれの視点について、現状と課題をまとめていただきました。
飛んで恐縮でございますが、10ページの一番下、「4.学校における『合理的配慮』の観点」というところでございます。これが今回の報告書のサブタイトルにもなってございますけれども、<1>、「合理的配慮」は、個々の障害のあるお子さんの状況に応じて提供されるもので、多様かつ個別性が高いものであることから、本ワーキンググループについては、その観点について整理をいたしました。どういう観点を念頭に置いて合理的配慮を提供するのかというその観点をまとめたということでございます。
合理的配慮を提供する際に当たっては、<3>、「体制面、財政面をも勘案し、『均衡を失した』又は『過度の』負担について、個別に判断する」と。ここのところについては第8回のときも議論がございましたが、「『合理的配慮』を決定する際において、現在必要とされている『合理的配慮』は何か、全てできないとすれば何を優先するか、について関係者間で共通理解を図る必要がある」という御指摘がございました。
また、「合理的配慮」については、先ほども少し出てまいりましたが、<4>、「全ての場合を網羅することはできないため、その代表的なものと考える例を以下に示す」ということでございます。「ここに示されているもの以外は『合理的配慮』として提供する必要がないということではなく、一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて決定されることが望ましい。」また、「障害を併せ有する場合には、各障害種別に例示している「合理的配慮」を柔軟に組み合わせることが適当である」ということでございます。
その下、網かけのところ、「『合理的配慮』の観点(1)教育内容・方法」ということで、それぞれに幾つか枝分かれしている部分もございまして、(1)-1は教育内容でございます。
12ページに飛んでいただきまして、(1)-2では「教育方法」ということでございます。
その下では「『合理的配慮』の観点(2)支援体制」ということです。それぞれについて(2)-1からございます。言い忘れましたが、別表というのが後ろについてございまして、ここには配慮の観点としてタイトルがあり、それを解説するような文章が下に並んでおりますが、更にそれぞれについて、各別表に例として、それぞれの障害の場合、「合理的配慮」の観点の下に連なることとして、こういうようなことが例として挙げられるということで、別表がついてございます。
更に、13ページの方に参りまして、「『合理的配慮』の観点(3)施設・設備」というところでございます。13ページの5ポツは「関連事項」ということで、ここの下にありますように、今回、「合理的配慮」をまとめる際に、併せて委員の方々から御意見のあった中で、特別委員会において検討することが望まれることということで、早期からの教育支援、学校外・放課後における支援、教職員の確保、専門性の向上ということで、3点まとめさせていただきました。
少し時間を超過しておるかもしれません。申し訳ございません。
今後でございますけれども、ワーキンググループとしては、主査一任ということになってございますので、8回の議論をもってワーキンググループの方は開催が終了したというふうに思っております。
今後、主査、主査代理が相談をされて、今、見ていただいた報告書(案)を最終化していただきまして、これを親の委員会でございます「特別支援教育の在り方に関する特別委員会」の方に報告をいたしまして、委員会の方で、引き続き議論をしなければならない教職員の専門性の向上ですとか、今、5ポツに出てきたようなことを含め御議論をしていただくというような流れというふうに事務局、庶務としては考えてございます。
冒頭、大変雑駁な御説明で恐縮でございましたが、以上でございます。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
それでは、質疑及び議論に入らせていただきます。時間は60分を予定しております。
太田委員、どうぞ。
○太田委員 ありがとうございます。
今、御説明いただきましたが、私が理解できる部分と理解できない部分がありました。合理的配慮というのは、他の人たちと同等に暮らせるための支援、配慮、それを怠れば差別であるということを文部科学省さんもここできちんとおっしゃられているということは評価したいと思います。
現実には、障害の重い人が地域の学校に行きたいと言っても、断られてしまう、行けないということで、裁判になっているのは何件かございます。合理的配慮というものと教育というものを一緒に同じところで論理立てされてしまっているので、私の理解を超えてしまうのだろうと思います。合理的配慮は、環境をつくる、配慮を怠れば差別であるというあれは、そういう人的な保障や設備的な保障をするということは、まず第一にそういうことを行っていかなければならないだろうと私は思います。
例えば交通機関の問題で言えば、重度の障害者は、「あなたは重度だから、一般交通機関ではなくて、ハンディキャブのような輸送車で」と、それをもって合理的配慮としましょうというのは筋が通らない話であって、一般公共交通機関もタクシーもバスもすべてを障害者が利用できる仕組みとなり、それをどう使うかは本人の選択。私は電車で行く方がよいとか、私はリフトタクシーで行く方がよいとか、それは本人の選択権に託す問題になるのだろうと思います。
この2つを見た感じでは、重度の障害者はハンディキャブでいいと。リフトタクシーではなくて、ハンディキャブですよ、そういうふうな福祉的なニュアンスが感じられます。それは、差別禁止法、権利条約で言えば、私は差別だと思います。すべてを整備していくことが大事だと思います。
そして、多分合理的配慮は過度な負担を超えない範囲ということをおっしゃるかもしれませんが、小学校、中学校は義務教育であり、地方自治体や国が設置するものだと思います。過度な負担という場合は、企業や事業者がそれを負担することによって経営ができなくなるとか倒産してしまう状態を過度な負担というふうに認識をしています。
そういうところが合理的配慮と教育の現実と障害児教育がごちゃごちゃにされて、文部科学省は一体何をされようとしているのかについて、再度伺いたいと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
本人の選択の自由を保障すべきであると。つまり、権利性、権利条約の考え方をちゃんと受けとめることが大事であるという御指摘、それから過度な負担ということについて、最後、私自身はよく理解できなかった面がありますけれども、小学校、中学校という義務教育で企業や事業者に言われる過度の負担という考え方をそもそも入れるのがおかしいという御指摘ですか。
○太田委員 小学校、中学校ですが、地方自治体や国が財政を出しているわけで、障害児の支援、合理的配慮をすることによってその自治体がつぶれるということは考えにくい。もしつぶれそうな場合は過度な負担になるでしょうということです。だから、過度な負担という議論を持ち込まないでいただきたいなという意味です。
○棟居部会長 わかりました。ありがとうございました。
それでは、千原課長、お願いします。
○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
太田委員からの御指摘、ありがとうございました。
私、ワーキンググループの庶務、事務局でございますので、今回の報告書(案)について、代表としてこういうことですというふうに言える状況にはないのでございますが、ただ、近くで庶務を務めさせていただいた観点から、やや事務局の見解というふうになるかもしれませんことは、先ほど部会長もおっしゃっていただきましたが、お許しいただければと思います。
まず、1点目の差別ということについては、この報告書(案)、先ほども見ていただきましたが、2ページのところに「障害者の権利に関する条約」の定義を書かせていただく中で、最後のところでございますが、「障害を理由とする差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含むとされている」ということをうたった上で、<2>のパラの最後でございますが、「なお、障害者の権利に関する条約において、『合理的配慮』の否定は、障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要がある」ということで、ワーキンググループの委員もそのことをしっかり認識して議論をされております。また、文部科学省としても、この条約はそのとおりというふうにちゃんと理解をしているつもりでございます。
もう一点は、いわゆる私企業とかそういったところが「均衡を失した」又は「過度の」負担ということについての御意見だと思いますので、そのことについても受けとめさせていただきました。ワーキンググループでも、私の記憶ではそのような御議論がありまして、例えば労働分野のことと一般的な公教育といったこととでは、「均衡を失した」又は「過度の」負担ということについても、やはり差があるのではないかという御議論もございました。差があるのではないかというのは、より公教育の方が、過度の負担と言ってもしっかりやらなければいけないのではないかという議論があったというふうに趣旨として思い起こしております。
ただ、一方で、委員の中には、やはり現場の教育長の方とかもいらっしゃいまして、さはさりながら、実際には地方公共団体においてもなかなか財政事情が厳しくてというような御議論もあったというふうに承知しております。
そういった議論を積み重ねる中で、本ワーキンググループでは、その下の<3>、「均衡を失した」又は「過度の」負担ということについては、このようなまとめになってきておる、そういう状況でございます。
ただ、この報告はまだ案でございますので、これをまた特別委員会の方でも詰めていただき、そういった報告を受け取る際には、国としてこのことを受けとめてやっていかなければならないということでございますが、現時点でのこの報告(案)を拝見するに、このまとめでは、合理的配慮を合理的配慮の観点で提供する際の土台といいますか、基礎として基礎的環境整備を国はしっかりやっていくのだというふうに受けとめております。また、これは法令に基づき、あるいは財政的な措置に基づいてやっていくということで、そのことがしっかりなされる方向で文部科学省、私どもとしてはしっかりやっていきたい。そのことについて、インクルーシブ教育システムの構築に向けて合理的配慮の提供ということはしっかりやらなければいけないというのが、この報告(案)の全編を貫く考え方だろうというふうに思ってございます。
○棟居部会長 ありがとうございました。
大谷委員、お願いします。
○大谷委員 大谷です。
いろいろ質問が多いので、正直申し上げて、今日、私の資料として3点提出させていただきました。事前に読ませていただいた今日の案に対して、余りにも質問が多いものですから、書面で出させていただいたので、時間の配分上、これに全部お答えいただくわけにはいかないというふうに思われますので、ここから主要なところだけをこの場で聞かせていただきたいと思います。
併せて、私の個人的な見解を述べておりますが、これは私の個人的な見解ですから、今日は意見を述べる機会ではないので、これは後で読んでいただければと思います。ただ、それに添付する形で、私ども、この間、「学校教育における差別体験」というアンケート調査をいたしました。これを踏まえて2~3質問をさせていただきたいと思います。
「学校教育における差別体験」。通し番号で言うと14ページ以降なのですけれども、差別禁止部会で教育における差別が問題になろうかということで、去年の年末、1か月強の期間、メーリングリスト等で集めただけで一気に211件の差別事例。勿論、差別と意識したということで、当事者、主要には保護者の方からのアンケート結果です。
「就学先の決定にかかわる差別」が64件、「障害に基づく異別取り扱い」が66件、「合理的配慮の欠如と思われるもの」、自分はそういうふうに感じるということですけれども、101件、「虐待及びハラスメント」が39件ということで、もう少し細かく集計したいと思いますが、本日に間に合わせるために、「就学先の決定」と「異別取り扱い」にかかわる差別を今日ここに持ってきました。これを見ると、合理的配慮の欠如に絡むことも多々あります。ざっと見ていただければ本当にわかると思うのですけれども、就学先を決定するに当たって、そこではこういうことをされません、何にもしてあげませんよというようなことを言われて、事実上、就学強制がされる。地域の学校に入れなかったという訴えがある。それから、入った以降も、それは「異別取り扱い」という形でまとめさせていただきましたけれども、主要には保護者の付き添いがなければ何にもしてもらえない、個別教科においても保護者の付き添いが強要されるというような実態の中で、普通学級に入ったはいいけれども、実質的な教育が保障されないというような形の差別の訴えが本当に多いのです。
これを今後、具体的にどういうふうに制度的もしくは個別的、合理的配慮として解決していくかということが今、問われているのだろうと思います。その観点でこのまとめも案も出されたのだと思いますけれども、具体的な質問をさせていただきます。
ざっと読ませていただいた形では、既に今、行われている配慮を合理的配慮もしくはインクルーシブ教育の方向に向けて整理し直したというふうにされておりますけれども、現に通常学級で行われている配慮、実際あるという形でどのように取り上げていただいたのかどうかということがちょっと見えてこない。
加えれば、通常学級における合理的配慮、学校における合理的配慮として、すべてが必要だという形で学校における合理的配慮という形でまとめておられますけれども、一方、基礎的環境整備があるところとないところでは合理的配慮の多寡が違う。多い少ないは異なってくるだろうというようなまとめもされております。
とすると、基礎的環境整備があるのは、どうやらまとめを見ますと、特別支援学校、特別支援学級において基礎的環境整備が既にこれだけありますというようにまとめておられるようですので、基礎的環境整備がいまだ不十分である通常学級においては、合理的配慮がかなり必要になってくる場面があろうかと思いますが、そういった観点での学校における合理的配慮という形でとりまとめ、意識がされたのかどうか。これを2点目にお伺いさせていただきたい。
もう一つだけ。私が全部聞いてしまうと時間をとってしまうので、余り聞かないようにしますけれども、合理的配慮をニーズ把握という形でいろいろその観点から精査するというふうに言っておられますが、これは、請求に基づいて合理的配慮というものが精査され、決定されていくというふうにお考えなのか、何らかの機関、学校側が、あなたの配慮はこれですという形で決めていくものなのかどうかということに関して、これは一応「合意形成を図る」というふうに言っておられますけれども、保護者の意に反した形での合理的配慮というようなものが想定されるのかどうかということも併せて伺わせていただきたい。
もう一点だけ。太田委員と一緒です。先ほど来から合理的配慮に関しては学校と設置者の義務であるというふうに言っておられますけれども、学校と設置者ということになりますと、市町村の財政状況によって、市町村でかなり差が出てきてしまうというようなことにもなりかねない。とすると、基礎的環境整備は国の責任であるというふうに明確に言っておられますから、基礎的環境整備を十全にする。そして合理的配慮一つひとつにとっても国の責任というものを意識されているのかどうか。合理的配慮は、特に義務教育段階においては、いわゆる条件整備として国が整備すべきものであるというような御意見はそこでは出なかったかどうかということも併せて聞かせていただければと思います。
私からはたくさん出ていますけれども、せめてこの4点だけはここで口頭で答えていただければと思っております。
以上、お願いします。
○棟居部会長 ありがとうございました。
では、お願いします。
○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
大谷委員、ありがとうございます。
的確にお答えできるかどうか自信はございませんが、頑張ってみたいと思います。
まず、1点目は、いわゆる就学先決定の制度の関係のことのお問い合わせかというふうに理解をいたしました。14ページから始まる大谷委員がお示しいただいた差別の事例ということで、こういうことについて、本来は双方の御意見を承ってということではありますが、ただ、少なくともそのようにお感じになられていらっしゃる御本人、保護者がいらっしゃるということは、私としても個人的には非常に残念というふうに思います。こういったことがないように国としてもしっかりやっていくということが基本だろうと思っています。
特に就学先決定にかかわるところについては、むしろこのワーキンググループということではなく、その上の委員会の方で、大谷委員も御案内かと思いますが、論点整理をまとめる中で、これまで特別支援学校に通うことができる目安としての学校教育法施行令22条3というのがございますが、そこに該当しますと特別支援学校の方に就学するという今の仕組み。これはその後の通知等で、そういうことではなくて、論点整理に示されたような総合的に判断をするようにという方向で進めていただいていますが、仕組み上は、特別支援学校に行っていただくという仕組みを改めて、本人・保護者の御意見、専門家の御意見、そういったことを踏まえて総合的に判断していくのだというふうになってございます。
また、さきの通常国会で御議論をいただき、成立いたしました改正障害者基本法では、「可能な限り障害のある子とない子が共に教育を受けられるよう配慮しつつ」という条項が加わってございます。また、第2項においては、情報の提供、本人・保護者の意見を可能な限り尊重ということが入ってまいりましたので、文部科学省の方としては、そういったことを踏まえてその仕組みを改めるということを今、検討している状況にございます。
○横井企画官 1点目について、今、課長から説明がありましたけれども、私からも事務局としての説明になりますが、ヒアリングを第2回、第3回で行いましたが、その中では、特別支援学校で教育を受けられた方以外にも、小学校、中学校で教育を受けられた経験のある方からもヒアリングを行いました。
また、先ほど課長からも紹介がありましたが、16ページ以降の例示につきましても、特別支援学校でしかできないような配慮を書くのではなく、通常の学級でもできるものを意識して各委員にそれぞれ障害種別のものについて作業をいただきました。そのような形でまとめさせていただいたところでございます。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
千原課長。
○千原課長 今、横井の方は、既に大谷委員の2番目の御質問に入ったかと思いますけれども、ワーキンググループでの御議論でも、本来、合理的配慮というのは通常の学級で行われることを想定するのではないかという御意見がありました。また、一方で、いやいや、特別支援学級あるいは特別支援学校でも合理的配慮というのは必要であろうというような御意見もございました。今、横井が申し上げましたように、ヒアリングでは通常の学級に通っていらっしゃる方からもヒアリングをいたしましたし、また、先ほど申し上げた前者の御意見の方もいらっしゃいまして、通常の学級での合理的配慮ということにも十分配慮をして御議論いただいて、例えば後ろにある別表の例示というところには入ってきてございます。
ただ、合理的配慮の観点ということでは、通常の学級も通級による指導も特別支援学級も特別支援学校も共通をするといいますか、ちゃんと合理的配慮を提供するに当たっては、そういった観点を頭に置きながら、チェックリスト的なといいましょうか、そういうことで合理的配慮を提供していくのだというような御議論があったというふうに理解してございます。
3番目のニーズ把握に基づいて、特別支援教育というのは、一人一人の障害の状態、あるいは教育的ニーズ等を踏まえて、自立、社会参加を目指すために本人の能力を最大限に伸ばしていくということでございますけれども、ニーズ把握という観点では、請求がなければしないのかという御質問かと思いますが、そこは、事務局としてはそういうことではなくて、本人あるいは保護者の方から何かこういう配慮をしてくださいというような請求がないと動かないということではなくて、当然学校の設置者あるいは学校が御本人のニーズを見た上で、適切に、自発的にそういった合理的配慮を提供していくべきであると。私どもは、この報告書、まとめていただく御議論を踏まえるとそういうふうに考えてございます。
したがいまして、意に反してという御指摘もございましたが、そこのところは、先ほど合理的配慮の決定のところに記述がございますけれども、4ページ(2)<1>でございます。特に個別の教育支援計画を作成する中で、合理的配慮の観点を踏まえて、合理的配慮について、可能な限り合意形成を図った上で決定していくということでございますので、そういうような方向でやっていかないといけない。
繰り返しになりますが、その下の<2>の5ページの方で、もし合理的配慮の提供に当たって御意見が一致しない場合は、第三者機関でその解決を図ると。この第三者機関については、まだ議論がされている状況で、今、この場で具体的にどういうものだというのをお示しする状況にはございませんけれども、おっしゃるように、皆様が理解、合意を図っていくように努めるということだろうというふうに思ってございます。
4番目、合理的配慮あるいは基礎的環境整備、こちらの提供ということについての設置者は、先ほど太田委員から御指摘がありましたけれども、より公教育あるいは義務教育というものは提供義務があるのではないかという御趣旨かというふうに思っております。基本的には、国としては、この報告書(案)に基づけば、合理的配慮を提供するための基礎となるものが基礎的環境整備である。それをしっかり充実させていくということが国として合理的配慮をしっかりさせていくための大事なポイントだろうというふうに考えてございます。
以上でございます。
○棟居部会長 ありがとうございました。
山崎委員、お願いします。
○山崎委員 山崎です。ありがとうございます。
まず、私のお尋ねとも関わるのですが、冒頭の太田委員の御指摘の中で、一部お答えになってらっしゃらないのがあると思いますので、再度指摘させていただきます。
太田委員がいろいろおっしゃっていた中で私が感じるところの1つのポイントは、全体としてこのワーキンググループ報告を眺めた場合に、福祉的ニュアンスが強いというようなことをおっしゃっていたと認識しております。実は私も、そういう言い方はしませんが、同じような印象を持っております。同じことは実は大谷委員もニーズ把握とかということを、要するに個別対応が勝っているのではないかという御指摘をされています。
私の言葉を使えば、2ページ目の合理的配慮の定義等についての(1)の<1>の数行目にある「個人に必要とされる」というキーワードです。こういうものを見ますと、どうやら、医学モデル的な発想とは申しませんが、どちらかというと、現場としたら個々の児童・生徒さんの具体的なニーズ、要望に対応することが強調されていると思います。これは当然のことだと思うのですが、これをおっしゃるのであれば、あと幾つかのポイント、例えば改正障害者基本法4条2項の「社会的障壁の除去」というキーワードにも言及すべだと思います。先ほどの御説明の中にもこのキーワードは表れてこないのですね。その割には「可能な限り」という言葉は何回か拝聴したような記憶があります。
そういう意味で、せっかく改正された日本の現行法の中に「社会的障壁の除去」ということが繰り返し出てきておりますので、こうした文章をおまとめになるという際には、社会モデル的な認識をされていることも表現された方が良いと思います。つまり副題のタイトルで言えば「観点」という言葉ですが、高い広い観点に立っておまとめになっているということであれば、現行の日本法、ごく最近に直に関わる改正障害者基本法の中のかなり重要なキーワードも網羅していただいた方が適切ではないかという気がしておりますので、これを策定された委員会にそのような旨をお伝えいただければ幸いでございます。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
コメントされますか。では、千原課長、お願いします。
○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
山崎委員、ありがとうございました。
今の社会的障壁という観点、社会モデルという観点について触れるべきではないかということで、今の御指摘、御意見と受け止めましたので、そのことは、ワーキンググループ自体は先ほど申し上げましたように議論は終了しておりますので、今後、この報告が最終版になったときに特別委員会の方に報告するものでございますから、その際に、そういう御指摘をいただいたということを事務局の方から特別委員会の方に御紹介させていただくということで御理解いただければありがたいと思います。
1点、先ほど省略させていただいた部分でございますが、お手元の資料2-2の11ページの<2>の3行目からの「また、障害の状態等に応じた『合理的配慮』を決定する上で、ICF(国際生活機能分類)を活用することが考えられる」ということで、これは御案内のようにICFということで、これは参考資料6でも付けてございますが、37ページからございますけれども、特別支援学校の学習指導要領解説自立活動編にこういうICF、いわゆる医学モデルと社会モデルというような両方があるということを踏まえて対応しなければならないということと私は理解しておりますが、そういったことを踏まえて、先ほどの11ページでございますけれども、活用して対応するということは委員の念頭にあったとは考えてございます。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
先ほどお手が挙がっていました伊藤委員、お願いします。
○伊藤委員 では、3点ほど質問したいのですが、「基礎的環境整備」という言葉がまだ十分理解できていないものですから、もう少し詳しく教えていただきたいのですが、「合理的配慮」の基礎となる環境整備という説明が3ページのところにありまして、特に2-2の6ページの(5)の<1>のところの理解の仕方なのですけれども、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校の設置は「基礎的環境整備」として行われているものであるということからすると、通学先として特別支援学校等があるということだけをもってして合理的配慮をしているということにはならないということでよろしいですね。
また、「合理的配慮」は、特別支援学級等、ここで例示している通級等による指導とかの中においても、個別に必要だということで、設置者への義務については余り書いてないのですけれども、こういうことを行うことが求められるということになるという理解なのでしょうかというのが1つです。
あと、4ページの2.の(2)の<1>の辺りは、合理的配慮を行うことについて、「望ましい」「望ましい」ということが繰り返し書いてあるのですけれども、そういった対応で合理的配慮義務と言われていることが達成できるというように考えられているのか。そちらでの検討ではどのようにされているのかということを教えていただければと思います。
最後、行ったり来たりで申し訳ないのですが、5ページ一番下の私立学校のことなのですけれども、よく私立学校については建学の精神と公平性といったような観点とのバランス、どちらが優先されるべきかといったことがよく問題になると思うのですけれども、この障害児の考え方については、建学の精神との関係について議論があったのか、なかったのか。そこは完全に乗り越えてインクルーシブ教育がすべての学校について、初等中等教育においては行うのだということがきちんと共有されているのかどうかということを確認させていただきたいのです。
○棟居部会長 では、お願いします。
○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
伊藤委員、ありがとうございます。
まず1点目の6ページの(5)<1>のところに関連いたしましてですが、特別支援学級あるいは特別支援学校に行くことをもって、それが合理的配慮だということではないと解釈してございます。また、通常の学級、通級、特別支援学級、特別支援学校、それぞれにおいて合理的配慮が必要だと私ども理解しております。
2点目は、4ページの(2)の<1>のところで「望ましい」「望ましい」という記述で、これで合理的配慮が担保できるのかというような御指摘かと思います。合理的配慮について先ほども御指摘がございましたが、その前の3ページの<2>の最後のところでありますように、条約を踏まえて定義をする中で、合理的配慮の否定というのは障害を理由とする差別に含まれるということについて、ワーキンググループの委員は念頭にしっかり認識した上で御議論をしておりまして、ここの(2)の<1>、私、先ほど申しましたように、代表する立場にはございませんが、私の解釈は、ここは決定方法で合理的配慮を決定する際に個別に教育支援計画を作成する中で、ここの合理的配慮について決定していく、明記する、そういったところに望ましいというところがかかっていくのかなとは感じてございます。合理的配慮が否定されることはあってはならないということはそのとおりだと思っております。
5ページの私立学校についてでございますが、私の記憶が間違っておりましたら、横井にも発言してもらいますが、建学の精神ということについて踏まえてどうするかという御議論は、ワーキンググループの方ではなかったように記憶してございます。
当然、インクルーシブ教育システムということについては、私立、公立、国立、そういうことを問わず、改正障害者基本法で16条第1項にそういうワーディングが入りまして、そこには特に何か私立だから除外とかそういうことはないというふうに理解しておりますので、初等中等教育においては、そういうインクルーシブ教育システムというものがちゃんと構築されていかなければならないと認識してございます。
以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
時間があと15分少々しかございませんので、それぞれの御質問、できればコンパクトにお願いします。
松井委員、お願いします。
○松井委員 ありがとうございます。私は既に資料を提出しておりますので、具体的な内容はこれを読んでいただきたいのですけれども、限られているので2~3だけ絞って質問させていただきます。
1つは、合理的配慮という場合に、しないことは差別であるということですけれども、できない場合に優先順位をつけるという考え方は基本的にはないのではないかと思うのです。勿論、学校設置主体に対する財政支援をきちんと国としてやる必要があると思いますけれども、少なくともそういう考え方の問題。
合理的配慮に関して、学校設置者と本人、保護者の間に意見の一致がない場合に、第三者機関によって解決を図ることが望ましいということになっておりますけれども、この第三者機関というのは具体的に何をイメージされているのか、あるいはどういうものを設置することと考えられているのかです。
もう一つ、最後は、今回、特別支援学校を中心というような感じはするのですけれども、少なくともこの合理的配慮というのは、全教育というか、生涯にわたって関わってくることなので、特定の期間だけの問題ではなくて、それ以外についてどう考えるのかということも併せて検討する必要があるのではないかと思います。
特にインクルーシブ教育ということで言えば、制度全体に関わってくることではないのか。その意味では、この中でインクルーシブ教育というのは、ともに育つ理念を共有する教育というような、この理念を共有という限定にされておりますけれども、インクルーシブ教育というのは、まさにともに育つ教育そのものを言っているわけで、必ずしも理念ではないのではないかということを指摘させていただきたいと思います。
ありがとうございました。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
千原課長、お願いできますでしょうか。
○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
松井委員、ありがとうございました。
御指摘の中には、御意見といいましょうか、そういうこともございましたので、御意見の部分は先ほど山崎委員の話と同様、特別委員会の方に報告をさせていただくということで御理解いただければと思います。
御質問に関するところで、第三者機関についてどういうイメージ、何を設置するのかという御指摘をいただきました。これについては、先ほど大谷委員の御質問の中でお答えしたかちょっと失念しましたが、どういうものになるか具体的な検討は正直なところはこれからでございます。ただ、議論の過程で、本ワーキングあるいはこの第三者機関ということについては、特別委員会の論点整理で、就学先決定について意見が一致しない場合にもやはり第三者機関ということが出ていまして、その双方でいろいろなやり方があるのではないかという議論がございました。
事務局の方からも、今、内閣府等で御議論をいただいております行政不服審査制度でこういう議論がございますというような紹介をいたしましたり、あるいは海外の例で仲介者が入って、何かもつれてしまった場合にうまく調整をする仕組みというのがありますという御紹介などもさせていただきましたが、そういったことを踏まえて、こういう第三者機関というのはどういうものがあるのかというのを議論したいと思ってございます。検討したいと思います。
ただ、どちらのワーキンググループか特別委員会かちょっと記憶が定かでないのですが、その御議論の中では、裁判とかそういったところに至ってしまう手前のところといいましょうか、そういうところで解決できるものというような御指摘もあったことを御紹介させていただきます。
今回、この特別委員会は、先ほど御説明を端折ってしまいましたが、特別委員会自体は中教審の初等中等教育分科会に属してございまして、ある意味、守備範囲は初等中等教育ということでございますが、ただ、生涯にわたってインクルーシブ教育システムということはしっかりやっていかなければいけないという委員の御指摘はそのとおりかと私も思ってございます。
その観点では、このワーキンググループの議論の中でも、卒業後のことですとか早期ということで、やや初等中等教育のエリアを超える部分についてもそのような御意見があったと思ってございます。
簡単ですが、以上でございます。
○棟居部会長 ありがとうございました。
それでは、お待たせしました。西村委員、先ほど来から手を挙げておられますのでお願いします。
○西村委員 西村です。ありがとうございます。
私も委員提出資料ということで21ページに載せさせていただいております。多くの委員の方たちからの意見もありましたけれども、ここに書いていますとおり、この報告書を見る中で、やはり社会モデルとしての視点が非常に弱いのではないか。あるいは合理的配慮の必要性が大事だと言いながら非常にあいまいではないかという印象を受けています。
やはり障害者権利条約と基本法にうたわれていることを考えたときに、こうした部分をもっときちんと真正面からとらえる必要があると思います。今までいろいろ御意見をいただいているので、特にお答えは結構です。
ただ、最後に私の方で書かせていただいています、障害の有無によって分けないことを原則とするべきではないかと。つまり、障害者権利条約では、あらゆる区別を否定している。基本法では分け隔てられないことを強調している、であれば、必ずしも特別支援教育だとか特別支援学級を否定するわけではないですけれども、通常学級の中で必要な配慮などを受けられる、障害の有無によって分けられない、それがこの報告書でも出てきているインクルーシブ教育システムの原則とすべきと思っていますが、どうもこの報告書の中を見ると、そうではないように受け止められます。そこら辺につきましての考え方等々があれば教えていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○棟居部会長 ありがとうございました。
では、その最後の点、お答えになりますでしょうか。千原課長、お願いします。
○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
西村委員、ありがとうございました。
1点目、お答えが要らないということでございました。先ほど来、申し上げさせていただいておりますように、こうしたいただいた御意見は特別委員会の方に報告をさせていただきたいと思っております。
障害の有無によって分けないことを原則とすることということについて、この報告書はそうではない感じがあるのではないかということで、これもどちらかというと御指摘に近いのかなと思いながらお聞きしてございました。
先ほど大谷委員からの御質問、御指摘の中でも申し上げさせていただいたことにまた重複しますが、就学先の決定の在り方というところに結局はたどりつくのかなと思ってございます。論点整理の中ではこれまでの仕組みを改めて、保護者の御意見、専門家の御意見、また本人のニーズ、その他を踏まえて総合的に判断するようにすべきであるという御指摘をいただきましたので、また、今お話がございましたように、改正障害者基本法が成立してございますので、そういったものを踏まえて文部科学省としても対応していきたいと思ってございます。ありがとうございます。
○棟居部会長 済みません、時間がないのですが、1点だけ関連で確認させていただきたいのですが、このインクルーシブ教育とか特別支援学校あるいは学級ということを考える場合に、障害者の子どもと健常者の子どもを混ぜることで、健常者の子どもが将来例えば企業で働くときに合理的配慮がどういうものなのかとわかりやすくなる、やりやすくなるという健常者の側のプラス面というのは御配慮に入っておるのでしょうか。
○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
その観点につきましては、ワーキンググループの報告書案でいきますと、別表の方を見ていただいた方がわかりやすいかと思いますが、22ページ、(2)の2、申し訳ございません。これはちょっと外れるかもしれませんが、言い出してしまったので少し申し上げさせていただきますと、これは22ページの(2)の2、これは第8回のときにも御議論はありまして、少し多分主査はお変えになられるかなとは思いますが、要は障害のあるお子様がいらっしゃって、その周りのお子さん、先生、保護者、地域の方々が障害のあるお子様に対してどう合理的配慮をするときにしなければいけないかというような合理的配慮の観点を記したところが、(2)の2ということになってございます。
今、ちょっと横井からアドバイスをいただきましたが、その2行目のところでございますけれども、障害のない幼児児童生徒が考え実践する機会や障害のある幼児児童生徒が障害について周囲の人に理解を広げる方法等を考え実践する機会を設定すると、そういったところに部会長御指摘の観点が少し含まれますのと、あと特別委員会の論点整理の方では、そういう障害のないお子さんが障害のあるお子さんと共に学ぶことによって、将来の共生社会とか社会的な自立とか、そういったことを学ぶ機会になると論じているところがございまして、お手元に資料を配っていなくて恐縮ですが、簡単に読ませていただくと、障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶことは、共生社会の形成に向けて望ましいと考えられる。同じ社会に生きる人間として、お互いを正しく理解し、共に助け合い、支え合って生きていくことの大切さを学ぶなど、個人の価値を尊重する態度や自他の敬愛と協力を重んずる態度を養うことが期待できる、というような御指摘がございます。ありがとうございます。
○棟居部会長 どうもありがとうございました。
それでは、時間を押しておりまして、この後の5分少々の時間を、ちょっと段取りを申し上げるのも不規則かもわかりませんが、まず伊東副部会長に御質問あるいは御指摘を1つ伺う。その後、川島委員に手短にお願いします。済みません。それから、東室長から少し補充的な御質問。そういう順番で進めさせていただきたいと思います。
では、伊東副部会長、お願いします。
○伊東副部会長 伊東でございます。千原課長さんは初等中等教育特別支援教育課であり、ただいまのお話も特別支援教育に関する内容でした。本日は文部科学省ヒアリングということですのでうかがいたいのですが、文部科学省において、心身に障害のある子どもたちの大学教育について、どのような課題や対応をしておられるのか、差別禁止法あるいは国連の権利条約がらみで何か検討されておられるのかどうか、あるいはしていないのか、その辺のところを是非お聞かせいただきたい。大学、大学院といった高等教育は障害のある人たちの大きな問題、課題であります。自分の選択、志望があってもなかなか受けられないという現状があります。文部科学省の取組みがどうなっているかについて御回答いただければありがたいです。
○棟居部会長 ありがとうございました。よろしくお願いします。
○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
副部会長様、ありがとうございました。
今、ちょっと横井とも話をしたのですが、帰りまして確認をさせていただけますでしょうか。恐縮ながら、大学での障害者の関係は、高等教育局が担当でございまして、私自身、初等中等教育局なものですから、どのようなことをされているか、今、にわかに申し訳ございませんが、お答えができません。お許しください。
○棟居部会長 では、川島委員、お願いします。
○川島委員 ありがとうございます。簡潔に質問させていただきます。
まず3ページのところで、ワーキンググループにおける合理的配慮の定義というのがありますが、これは<2>のところですけれども、ほぼ障害者権利条約に沿ったもので、合理的配慮の概念というのは個別的に行われる、当事者の要求に応じてある意味事後的に、当事者の要求があって初めて相手側がそれに応じた配慮をしていくという個別的、事後的な性格を記していると思うのですけれども、ここから質問なのですが、基礎的環境整備と合理的配慮との関係が、すごく重要になってくると思うのですけれども、3ページの(2)の<1>のところで、合理的配慮の基礎となる環境整備が基礎的環境整備ということで、つまり、合理的配慮の実効性を確保するために、あらかじめさまざまな障害種別を考慮に入れてインフラ整備をするというか、環境を整えるというのが基礎的環境整備だという理解でよろしいのかというところです。
そうすると、次に問題になってくるのが、同じ3ページの<3>のところで、合理的配慮を提供するに当たっての観点というところが出てきまして、<1><2><3>とありますね。この<1><2><3>の内容が11~13ページ以降に出ているのですけれども、これを読みますと、合理的配慮それ自体の内容を整理したのか、基礎的環境整備を整理した内容なのかが、私が読んだ限りではわからなかったのです。合理的配慮を提供するに当たっての観点という意味がよくわからなかったのと、<1><2><3>という整理の仕方がどういう観点から、つまり分類というのは何らかの目的があって行うと思うのですけれども、どういう観点からこの3つに整理したのかが、実はこれも読んだ限りでわからなかったので、時間がないところで申し訳ございませんが、御教示いただければ幸いです。
○棟居部会長 ありがとうございました。
では、お願いします。
○千原課長 特別支援教育課長の千原でございます。
川島委員、ありがとうございます。
場合により、横井から少し解説をさせていただく可能性もお許しください。
まず1点目でございます。質問なのですがと言われたちょっと手前のところからなのでございますが、合理的配慮については、本ワーキンググループにおいては、個別にという点はおっしゃるとおりの議論だったと思っております。
ただ、要求があって事後的にというところは、このワーキンググループでは、先ほど大谷委員の御質問でもお答えを申し上げたつもりなのですが、2ページの<6>の真ん中辺りでございますけれども、学校教育においてこれまでも行われてきた配慮、ということで、合理的配慮も含まれるわけですが、学校現場の場合には、先ほど申しましたように、保護者本人の方から請求というか要求がなくてもやはりニーズを踏まえてしっかりやっていくということが大事だと思っておりまして、そこのところはコメントをさせていただきます。
基礎的環境整備と合理的配慮の関係ということで、そういう意味では基礎的環境整備はこれの3.にるる(1)~(8)まで書いてあるわけですが、例えば通常の学級においても、特別支援学校においても、そういう意味ではあらかじめといいますか、教育をするために必要な環境整備というのは既になされている。それぞれの状況においてまちまちになる部分はありますが、ある意味、土台となるところというか、そういうのはあらかじめ整備がされているものであるという理解をしております。
ただ、この御議論の中では、当然それについて現状があるけれども、課題もあるよというところで、そういったところは国あるいは都道府県がしっかりさらなる整備を図っていかなければいけないという御指摘だと思います。
合理的配慮の内容なのか、基礎的環境整備の内容なのか、ちょっとわかりづらいという御指摘、また3つの観点はなぜこうなったかということですが、これはワーキンググループで御議論をしていただくに当たってヒアリングとかをしたわけですが、その際にこういう観点で、例えば教育内容、方法あるいは支援体制、施設整備、学校のいろいろな環境整備といった全般を見ると、この3つでまとめていくというのがわかりやすいのかなという形で、たしか事務局の方から御提示をして、この3点でヒアリングあるいはこういうまとめをさせていただいていいでしょうかということで御議論いただいた結果、そういうことでということで、この3つの観点はさせていただきました。
あと合理的配慮の内容なのか、基礎的環境整備の内容なのかちょっとわかりにくいというところは、御指摘として受け止めさせていただきます。
○棟居部会長 千原課長、どうもありがとうございました。
それでは、最後に、東室長の方からお願いします。
○東室長 担当室の東です。若干質問をさせていただきたいのですが、時間もありませんので、一問一答的な形で端的にお答えいただければと思っております。
まず、合理的配慮の定義に関する問題として、合理的配慮は学校が「必要かつ適当な変更・調整を行う」ことであるとは書いてありますが、提供義務者がだれかということは、必ずしもこの定義からは出てこないのですけれども、議論の前提としては、当然、学校の設置者及び学校が提供の義務を負うという前提での議論だったかどうか、お願いします。
○千原課長 そのとおりと理解しております。
○東室長 では、その提供義務の中身なのですが、それは行政法上の義務として考えられているのか、それとも端的に障害者本人もしくは保護者も入るかもしれませんけれども、障害者本人の権利に対応する障害者本人に対する義務としてお考えなのでしょうかという点についてはどうでしょうか。
○棟居部会長 この点をお願いします。
○東室長 その議論がなければ、議論していただければと思っております。
○千原課長 千原でございます。
ワーキンググループの方では、今、東室長がおっしゃったような具体的な議論はございませんでした。
○東室長 この点は非常に大事な点です。それが差別禁止と言えるのか、言えないかといった違いをもたらすところなのです。行政政策として行政が学校及び設置者に義務づける、単にそれだけでは差別禁止と言えないのです。差別禁止は本人の権利ですから、あくまで本人に対する義務という形で議論されなければならないといったところについて御議論いただければと思います。
次に、どういう義務かは御議論していただくとして、義務があるということであれば、合理的配慮は提供に努めるといったものではなくて、提供しなければならないという表現が適切だと思うのですが、資料2-2の3ページの上の<3>の中で、「合理的配慮の提供に努める必要がある」というような形で結論付けられておられるのです。これは義務があるという前提であれば、この部分の文章はいかがかといった疑問が出てくるのですね。その疑問についてはどんなふうにお答えられますか。お願いします。
○千原課長 ありがとうございます。千原でございます。
今、東室長からの御意見ということで承らせていただければと思います。
○東室長 では、次に、定義の中で「学校」とありますけれども、これは学校教育法上の「学校」、すなわち、「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校」という定義があるわけですけれども、それを指しているのかどうかという点です。
○千原課長 学校といった場合にはそういう定義になろうかと思いますが、今回、このワーキンググループが設置されたところが初等中等教育分科会ということもありまして、その守備範囲を念頭に議論していただいております。
○東室長 ということは、小学校、中学校、特別支援学校というのが念頭にあるということですか。
○千原課長 あと高校、幼稚園が含まれる。
○東室長 わかりました。
次に合理的配慮に関する国の責任についてはいろいろ出ましたけれども、障害者権利条約の5条3項には、「締約国は、平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な措置を取る。」と書いてあります。この適当な措置の中には、財政的な支援というのが勿論入るわけですけれども、基礎的な環境については国の責務といったことが触れてあるのですが、合理的配慮の確保自体についての国の責務といった部分については、議論はなかったのでしょうか。
○千原課長 本ワーキンググループの議論、今の報告書案の方向としては、合理的配慮の提供は先ほど室長がおっしゃられたように、設置者及び学校ということで、その合理的配慮の基となる基礎的環境整備は国または都道府県、あと市町村という議論だったということでございます。
○東室長 ただ、権利条約上の国の責務といったものについて、御議論がなければ御議論していただければと思います。
次に、「合理的配慮の決定方法等について」という部分についてなのですが、合理的配慮の「決定に当たっての基本的考え方」ということで、条約の24条1項を引用して議論されております。けれども、合理的配慮というのはあくまでも差別禁止という部分に本籍を持つ考え方なのです。差別禁止というのは憲法でもそうですけれども、一番基本的な古典的な価値というのは、機会の均等なのです。合理的配慮というのは機会の均等をどう実質化していくかという観点からつくられてきた概念であるわけですから、その合理的配慮を決定するに当たっては、機会の均等ということが一番最初に考えるべき事項ではなかろうかと思うのです。その点がほとんど触れられていないという点について疑義を持っているわけですが、そういった点に御議論がなければ御議論していただきたいと思います。よろしゅうございますか。
○千原課長 よろしいですか。室長から御指摘いただいた御意見ということについては、特別委員会の方にお諮りというか、御報告をさせていただくということでございます。
○東室長 もう少しあるので済みませんが、合理的配慮と基礎的環境整備の関係ですけれども、「『合理的配慮』の充実を図る上で、『基礎的環境整備』の充実は欠かせない。」という前提の下に、6ページの上の方に「通級による指導、特別支援学級、特別支援学校の設置は、多様な学びの場の確保のため『基礎的環境整備』として行われているものである」と書いてあります。普通、差別禁止の事例などで、例えばアメリカなどで見ますと、地下鉄が使えないという場合に、障害者も同じように機会均等に地下鉄を使えるようにするかというのが合理的配慮として議論されているわけですね。しかし、なかなか物理的に難しいところは、代替バスなどを走らせることによって、結果的には何とか行けるという状況をつくっているわけですけれども、その代替手段を合理的配慮としては位置づけられていないのです。あくまでも地下鉄を同じようにどうやったら使えるのか、これが合理的配慮の本体的な議論だと思います。
ですから、合理的配慮を確保するための基礎的環境として、今述べたようなことが入ると合理的配慮は一体何なのかと非常に不明確になってしまうといったようなことが、差別禁止という観点からは出てくるのですが、そのような視点についての御議論はあるのでしょうか。
○千原課長 今回、ワーキンググループでは先ほど申し上げた2点、合理的配慮、その他の環境整備ということについて、委員会の方から指示を受けて議論があって、こういう議論の形にまとめていただいたというところでございます。
今、室長の御質問に正面でどう答えたらいいのかわからないのですが、差別ということというよりは、合理的配慮がしっかりと学校現場で提供されて、教育が十分受けられるようにというような観点でこの報告書をまとめていただいておると思っておりまして、差別ということについては、まさにこの差別禁止部会で御議論されているのかなとは思ってございます。
○東室長 済みません、あと1点だけです。「学校における合理的配慮の観点」という標題の中の「支援体制」の部分、これは合理的配慮の例示として書かれている部分ですが、合理的配慮というのはやはり障害者本人に対してどう支援するかといったことがメインの問題になるわけですけれども、「指導体制」とか「地域の理解」といったものは、最終的には本人にいい影響があるかもしれませんけれども、そういうような一般的な啓発活動とか、指導体制の確立といったものまでも合理的配慮に含めると、合理的配慮の概念が非常にあいまいとなってしまう危険性がある。それは逆に言えば、権利性が弱まるといった危惧があるわけですけれども、この部分を合理的配慮という形で言えるのか、基礎的環境の方に入れるのかといった御議論はなかったのでしょうか。
○千原課長 今の点につきましては、ワーキンググループの方では、今、室長の御指摘はそのような御指摘と受け止めさせていただきましたけれども、議論の結果、当然、基礎的環境整備とは何か、合理的配慮というのは何かというのを議論した結果、ワーキンググループとしてはそういった今指摘のあったことも踏まえて、合理的配慮の観点というところに落ち着けるということだと理解しています。
○棟居部会長 では、企画官、どうぞ。
○横井企画官 済みません、お時間ないところ。今、東室長から御指摘いただいた点は、全般的なことは合理的配慮ではないということで、ワーキンググループでも話し合われており、例示のところで、その子に対して何らかの配慮をする、という観点から少し書き直した方が良いのではないかといった指摘も第8回のワーキングではありましたことを報告いたします。
○棟居部会長 ありがとうございました。
それでは、少々時間を超えてしまいましたが、太田委員、一言お願いします。
○太田委員 今日はとても有意義な時間でしたが、合理的配慮という概念について、まだ共有しなければならないと思っています。是非、差別禁止部会と文科省と厚生労働省の間で差別禁止の中核をなす合理的配慮という概念の統一をする方向で議論をお願いしたいと思います。
○棟居部会長 ありがとうございました。
それでは、以上で第2のコーナーを終わらせていただきます。
ヒアリングに御協力いただきました千原課長、お忙しい中、どうもありがとうございました。
それでは、ここで15分間の休憩を取らせていただきます。15分休憩しますと、再開は35分ということになりますが、15分より少し早めにお集まりいただければありがたく存じます。
(休憩)
○棟居部会長 時間が来ておりますので、再開いたします。
第3のコーナーは、時間がございません関係で20分弱に短縮させていただきまして行います。テーマは「情報分野における差別禁止について」です。
まず、東室長から少々のお時間で資料の御説明をお願いします。
○東室長 担当室の東です。
資料3をおあけください。次回に情報とコミュニケーション分野についての差別の問題を検討していただく予定ですが、情報とコミュニケーションに関しましては、広い分野にまたがるといったことが予想されます。そこで、こうした分野についてはどういう課題があるかという形で、皆さん方にも一定の整理をしていただければなということで、担当室のメモをつくってみました。
まず、情報とコミュニケーションの関係ですけれども、情報は、ある意味一方的な流れというのが基本形態になっているのではなかろうか。勿論、今、インターネットの発達などによって双方向の情報のやりとりもありますが、基本は一方的な流れで考えていけばいいのかなと。それに対しまして、コミュニケーションという問題は、双方向の情報の伝達であったり、意見の伝達であったりするわけです。こういった違いが両者にはあるだろうと思っております。
しかし、双方向の場合でも、発信と受信という形で2つに分けて考えれば、両方とも、情報もコミュニケーションも同じように分析できるのではなかろうかといった観点から2つの場合に分けて考えてみました。
まず、障害者が情報とか意見などを受ける場合は、発信する側の発信行為がどのような場合に差別になるか、そういう問題だろうというふうに思っております。発信といった場合にいろんな形の発信の形態がありますので、発信する側の立場に応じて場合を幾つか分けております。
まず、Aとして、発信する側が一般公衆への発信を予定している場合には、障害を持たない人との関係で、障害者にも平等に受領できるようにといった課題が当然出てきますので、差別の問題というのがそこで考え得るということが言えると思うのです。
一般公衆向けへの発信というのは、形態としては、マスメディアを利用して提供される情報、テレビ、ラジオ、インターネット、新聞、出版本、その他いろいろあります。もう少し話を広げると、図書館とか美術館とか博物館などが提供する情報があるのではなかろうか。行政が公開する又は提供するような情報もあります。
また、商品売買とか役務の提供に際して必ず情報というものがくっついているわけです。そういう付加的な形ではありますけれども、その情報がなければ商品たる価値がないといった場合もあります。例えば薬の効能書きがなければ、薬としての価値はないわけです。そういった意味で、商品とか役務の提供に関して、一般公衆に発信される情報というのがあるのではなかろうかということが考えられるわけですけれども、この場合に直接差別という問題は出てこないのではないかなとも思われます。不特定多数に対して提供するわけですから、障害者だけ提供しないといったようなパターンは少ないのかなというふうには考えられるところです。
問題は、やはり合理的配慮だと思っています。情報の受領を容易ならしめる多様な形式による情報提供が、合理的配慮としてどの程度この分野でなされるべきかといった問題があると思います。
ただ、マスメディアに対して、合理的配慮をしないことは差別であるというふうに仮に規定した場合に、即時に全般的に求めるような形で果たしてできるのかといった問題が現実的な問題としては出てきます。ですから、例えばアメリカのADAのように、公共交通機関の中で旅客運送、そういう部分について一定の猶予期間みたいな形を与えている、そういった手法をとるような法制もあるわけです。
ないしは、建物とか交通に関するバリアフリー法の施策といった観点から全般的な合理的配慮を適用させていくようにしていくといったような方法などもあるわけで、そこら辺をどんなふうに整理していくのか、考えていくのかということが、ここでは結構大きな課題になるのではなかろうかと思っているわけです。
次に、発信する側が、不特定多数というわけではないのですけれども、一定の集団を対象に発信することを予定するような場合があるのではなかろうかということです。例えば何らかの集会とか、シンポジウムとか、講座とか、学校における授業、もしくは職場とか、サークルとか、地区の会合とか、行政の審議会、そういう特定の集団において情報をどう提供するかということで、ここにおいても合理的配慮をどうするかといったことが問題となると思います。ここでは先ほどいったような時間的な問題は余りなかろうかと思います。例外として許されるのかどうかという議論はあったにしても、これは即時的な義務として考えられる分野ではなかろうかと思っています。
最後のパターンとしては全く私人の立場で障害者に対して発信する場合です。例えば近所の人がたまたま遭遇した近所の障害者に津波が来たよということを知らせた場合に、相手は聴覚障害があったという場合に、近所の人は合理的配慮をそのとき提供しなければならないのかといったような議論が出てくるかなと思います。ここまで合理的配慮を義務づけることがどうなのかといった問題が、ぎりぎり詰めていけば出てくるのかなという感じがします。
次に、逆に障害者が発信する場合はどうかということです。この場合は、受信者側の受領行為が差別になるかどうかという形で問題が提起されます。
受信者と言っても、いろんな立場があります。2つに分けてみましたが、まず受信者側が一般の公衆や特定の集団から発信を受領することを予定しているような場合には、ほかの発信者との関係で差別の問題が出てくるというふうに思います。例えばレストラン、ホテル、店舗での接客などで考えられるのではなかろうかと思います。
この場合に、例えば障害者の発信自体を拒否する場合もあるわけです。例えばろうの人が来て何か言おうとしている場合に「私のところは手話通訳もいませんし、ちょっと対応できません」という形で拒否する場合には、直接差別的な問題が出てくる。
次に合理的配慮の問題も当然出てくるわけで、この場合は、意思疎通を容易にする手段とか、通訳者の提供に関して、それは合理的配慮として相手方が提供すべき問題として議論されると思うのですが、この場合には相手方が大きいレストランから小さいレストランまでさまざまな状況が考えられますので、過度な負担というものがかなりいろんな場面で議論になるという感じがします。
それと、余りないかもしれませんけれども、受信する側が一般公衆とか特定の集団からの発信を受領するといったことを全く予定していない場合は、他の発信者との関係でというのは出てきませんので、差別の問題ということが言えるのかどうか。例えば全く私人の立場でだれの話を聞くかというのは、ある意味本人に任されている。全く対等な私人と私人の関係においては、あなたの話を聞きたくないと言えば、一般の場合でもそれは許されるわけです。そういった場合には直接差別とか合理的配慮という問題が出てくるのかどうか。そういったところの検討が必要になるのかなと思います。
以上がこちらで考えたことをメモしたものでしかないのですが、もっと違った形での整理の仕方も当然あり得ると思うのですが、次回の議論の前提として、どういう守備範囲で、どういう点を問題にするのか、それを皆さん、あらかじめ考えていただければなということで提供したものです。ですから、これは1つのメモでしかありませんので、そういう位置づけで次回、御議論願えればなというふうに思っているところです。
ありがとうございます。
○棟居部会長 ありがとうございました。
では、今日の議論は、御質問というような格好で少し次回につながるような、そういう質疑だけを残りの時間でさせていただいてよろしいでしょうか。御質問いかがでしょうか。
太田委員。
○太田委員 質問というわけではありませんが、今日この部屋にいて、ちょうど1時30分ぐらいでしょうか、緊急地震速報が流れて、警報音と音声が流れたのですが、その他の媒体ではわからない状況だったと思います。内閣府の建物ですが、聴覚障害者がいるかもしれないという前提が必要なのではないかなというふうに今日感じました。
○棟居部会長 ありがとうございました。
今の点について、室長。
○東室長 同感であります。僕は昔、フィラデルフィアに行って法律事務所で研修を受けたことがあったのですが、そのとき泊まったホテルで夜中の2時ぐらいにぼや騒ぎがあり、警報が鳴ったわけです。しかし、僕は何で気づいたかというと、実は音声による警報ではなくて、寝ているとき、目の前が本当に真っ白になるぐらいの光による警告でした。だから、ADAの合理的配慮としてそういうことまでもなされているのだなという驚きの経験を持っております。
もっとも、それだけが多様な情報発信のシステムではなくて、ほかにも電光掲示板とかいろいろあると思うのですが、そういったことも当然この情報の中での議論につながっていくだろうと思っております。ただ、ご指摘された点について現実にどうするかということまでは私の立場ではちょっと言えないところがあります。
済みません。ありがとうございます。
○棟居部会長 では、私も感想というか、一番最後のだれとコミュニケーションをとるかは個人の自由だというのは、だれと契約するかは個人の自由だという契約拒否の自由が最後まで残るのではないかということで、私人間での差別を廃止というか、それをなくしていく上で大きな壁になる1つの契約拒否の自由というのがあります。それと同じ発想でここで個人の自由ということをおっしゃっているのでしょうか。
○東室長 必ずしも契約関係に入る場合の申し込みと承諾、そういうふうに民法のところまで掘り下げて提起した話ではありませんが、通常、日常関係の中で、たとえ一緒に住んでいる夫婦でも、あなたの話、もう聞きたくないと言って拒否する自由は当然あるわけですから、それ以上に無関係の赤の他人がばったり出会ったときにそういったことが考えられるのかどうかという問題点はあるだろうということで、書かせていただきました。
○棟居部会長 お聞きしたのは、いわゆる事実行為の世界で常にだれと関係を持ち、だれとは持たないかについて自由であるという、そういう一般的な選択の自由の一応用例として今日、特に情報という重要なテーマに限っておっしゃっているということですか。
○東室長 はい。
○棟居部会長 これは施策上も、先ほど太田委員の御指摘があったように、今日、私も昼間、たまたまテレビのある部屋にいましたので、サイレンのような音声だけではなくて、画面でも警告文は流れていましたけれども、気がつかないとか、その人に届かないという場合、これは生命にもかかってくるわけで、この情報というものをそういう観点からも制度上の穴がないかというのも宿題にしたい、こういう御趣旨ですね。
わかりました。
あと1、2点ございましたら、その程度の時間が残っておりますが、いかがでしょうか。
では、太田委員、お願いします。
○太田委員 最後の第3の2のB)ですが、室長のおっしゃるとおりだろうとは思うのですが、しかし、契約関係を結ばないという動機が相手方に、この人は障害があるから嫌なのだということが内心上あって、それをもし証明できたら、それは差別になるのではないでしょうか。
○棟居部会長 障害者を差別するという意識でコミュニケーションを拒否しているという場合には、証明は難しいだろうけれども、違法になるのではありませんかという御質問ですね。つまり、一番最後の「だれとコミュニケーションを取るかは、個人の自由だ」と言ってしまうと、あしき差別意識でもって、あなたは障害者だから、あなたの話は聞かないと。それも違法とならなくなりませんかという質問だったと。
○東室長 例えば何人かいらっしゃって、ほかの人の話は聞いて、「あなただけは障害があるから聞かない」と言ったら、それは比較という問題が出てきます。ほかの人との対応と障害者だけは違う対応をするわけですから、そういった場合には差別の問題になるかもしれませんけれども、僕がここで書いているのはそういうことではなくて、全く純粋に私人と私人の立場でどうなのかということなのです。ほかの人との関係を考慮するような、この人とはこうだけれども、あの人とは違う対応という、そういう場面の設定ではないのです。
例えば賃貸借の契約で、大家さんが不動産業者に情報を出して、一般不特定多数に対して貸しますという、契約で言えば、承諾の前の勧誘みたいなことを一般不特定多数にしているような場合であれば、契約自由、個人の自由という話だけではなくて、そこには差別という問題が当然出てくるわけです。そういう場面を想定して、私的自治だから差別の問題とならないと言っているわけではないのです。
○棟居部会長 今日で終わる話ではないということでしたので、あとお一方、どなたか御質問、御意見があれば、そこでちょうど時間ということになります。もしなければ、今やめてもいい。もう時間をオーバーしておりますので。では、今日はもうよろしいですか。
ということで、ありがとうございました。以上で第3コーナーを終わらせていただきます。
これで本日の議事は終了しました。
それでは、最後に東室長から次回の予定等について報告をお願いします。
○東室長 担当室の東です。どうもありがとうございました。
次回、13回差別禁止部会は2月10日金曜日、14時~18時までを予定しております。議題としては、教育と情報の分野についての議論です。
それ以降の予定は、14回目が2月24日金曜日で、商品、役務、不動産について議論する予定です。
更に、15回目が3月9日金曜日で、日常生活、これには医療も含みますけれども、その分野と、これまでの議論の中間的な議論の整理といったことに向けての議論を行う予定です。
更に、16回目が3月16日金曜日で、中間的な議論の整理をそこで終えればと思っております。
報告としては以上です。
○棟居部会長 ありがとうございました。
太田委員、どうぞ。
○太田委員 今日提出された川島委員の資料はどのように位置づけされるのでしょうか。
○東室長 委員提出資料の中に川島委員の意見が上がっております。これは総論、各論含めて全体的な議論ですので、8月、夏ごろに予定しているこの部会のまとめといったときに必要になるものかなと思っております。ですので、議論の整理のために役立つとは思いますけれども、そのときに再度出していただければなと思いますが、いかがでしょうか。
○棟居部会長 確認ですが、特に1コーナーを設けて川島委員の御提案を含む総論的な話をするという機会は、この2月、3月から夏までにかけてはないと。
○東室長 夏までにかけてではなくて、まず3月いっぱいで何をやるかということなのです。まだ各論について議論をし切れていないわけです。だから、3月以降も残った各論を議論する必要が出てくると思うのです。そういう各論を一応全部終わった段階で、総論も振り返りながら、8月頃の全体のまとめをどうするかといったことにつながっていくと思います。
○棟居部会長 では、しばらくは出番がないけれども、随所で逆に振り返っていくこともあるということだろうと。御自身が積極的に発言をされる中で織り込まれればいいことだろうと思います。
ありがとうございました。
本日の差別禁止部会の概要につきまして、この後、記者会見において私と伊東副部会長、東室長から説明させていただきます。
本日はお忙しい中お集まりいただき、ありがとうございました。