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第20回障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会(2012年6月29日)
議事要録
【議事 部会提言の取りまとめの方向性について】
- (東室長)部会の取りまとめでは部会として一致した点を結論とし、そこに至るまでの考え方や根拠をわかりやすく示すことになる。議論をしてもまとまらない場合は共通項まで遡って書く等が考えられるが、この点のご意見をいただきたい。部会の取りまとめの項目だては次のコーナーで議論するが、内容については、部会で共有された基本的な考え方を示した上で差別禁止法制の在り方を述べることになる。理想的には条文に近いものを示すことができればよいのだが、そこまでまとまるのかという問題がある。部会三役を中心として原案を作成し、小出しにはなるが議論の進行に合わせて項目ごとに部会に諮るという形で進めてはどうか。
- (発言)議論に入る前に、部会での合意点と相違点を説明していただきたい。
- (東室長)中間整理を見ていただければ、大体のところはわかるだろう。合意している点としていない点を分けるのは難しい作業である。
- (発言)まとまっている点を確認しなければ、議論を進めることができない。中間整理は意見の羅列であって、合意したとは書いていない。
- (東室長)合意点をどこに求めるかについて丁寧に確認するのは、かなり大変な作業になる。実際には、部会三役が作成するまとめについて意見を言っていただく中で、合意したかどうかが明確になるのではないか。
- (発言)部会の取りまとめでは基本的な考え方で合意できる点をまとめるが、その後、事務方が条文にすると内容面でギャップが生じることが懸念される。途中で何か担保できるような手続が考えられるのか、確認させていただきたい。
- (東室長)障害者基本法改正の時も国会に上程するまでには何度か推進会議を開いて委員の意見を聞き、これを反映させたので、差別禁止法制についても基本的なやり方は同じだろう。
- (発言)部会で一致したのは差別禁止法をつくることと、総論及び各論の項目である。「資料1」で示された各項目について、出された意見と一致した点を盛り込み、法律に近い形の要綱をまとめてはどうか。一致しない点については、障害者権利条約が示す方向でまとめるのがよいのではないか。
- (棟居部会長)「資料1」で示されている総論と各論の項目については一致していることを前提にしたご意見だが、これについても色々な意見が出ている。それぞれの項目について委員ごとに意見を表にしてはどうかとのご提案である。
- (発言)各項目についての意見を紹介するもので、誰が何を発言したかまでは必要ない。
- (棟居部会長)意見が分かれる点については、時間をとって議論を尽くしたい。その前提には、委員意見の表が必要になる。
- (東室長)1つの項目について議論が細部まで深まる程、意見が分かれる。細かい点で違いがあっても、主要な部分ではまとまっているのではないか。その主要な部分がどこなのかについて部会三役に判断していただき、その原案に対して意見をいただきたい。
- (発言)難しいのはまとまらない場合の取扱いだが、両論併記は適切ではなく部会として一定の結論を出すべきである。どうしてもまとまらない時は、多数意見か少数意見かを調べざるを得ないだろう。ただ、ここでは権利条約の批准を前提に作業をしているため、国際的な人権規範との関係を無視して多数決をとるべきではない。どうしても反対意見がある場合はその理由を簡潔に書いていただき、これを盛り込むというのはどうか。条文化した方が、今後この提言を修正して提案されるものとの比較が明確になる。
- (発言)法令協議や法制局等の審査があり、ここでまとめたものがそのまま法案にならないかもしれないので、骨格ではあるが許容範囲がわかる形の文章で示してはどうか。その際に、たたき台を具体的に示していただき、議論を深めてはどうか。意見が分かれる部分については議論を尽くすことを求めたい。雇用、労働分野は厚生労働省の労働政策審議会でも議論されているため、お互いが把握できるよう報告し、すり合わせをしていただきたい。
- (発言)まとめる際に、基本的なものの考え方等については意見が分かれるだろう。したがって、具体的な条文案で一致が得られればよい。そのレベルでも意見が分かれる場合は、両論併記とせざるを得ないが、基本的な考え方について複数の意見を併記するのはいかがなものか。
- (棟居部会長)我々は権利条約の批准のためには差別禁止法制が必要だとして議論してきたが、このような外圧だけで世論の納得を得られるのか。条文案を取りまとめれば、ここでのコンセンサスは得られやすいだろう。しかし、なぜこの法律が必要なのか等について、法制局や政治家の納得を得る時に、条約を批准するというだけでは難しい。私人間の日常生活に関係する可能性のある法律なので、日常用語で説得する必要がある。
- (発言)国民の合意を得る努力はするが、障害者への理解がない中で差別が起きている事実を踏まえるべきである。どこまで合意を得ることができるかは宿題としつつ、まず差別禁止法をつくることを確認したい。障害者差別が昨日今日に始まった問題ではないことは、内閣府の調査等も示している。法律の名称は議論の余地があるが、障害者が受けている生活上の制限や制約を、善意ではなく社会のルールとして解消し、これを多くの方に周知する必要がある。
- (棟居部会長)差別禁止法は立法自体に啓蒙的な意味合いがあり、突然現れた問題ではないという指摘は、その通りである。単に条文でまとめればよいという事ではなく、共通の言葉や理念が必要であり、それを世間に向かって示す責任がこの部会に課せられている。
- (発言)理念や定義等についてはいろいろな意見があるので、部会の取りまとめは条文の形にし、説明の中でこれらの意見の趣旨をすべて汲み取ったことを書くのがよいのではないか。
- (発言)部会の取りまとめとしては部会員の思いを合意した範囲で書くのが生産的である。条文案を書くならばその解釈も必要だが、これについて合意をとるのは難しいだろう。合意しない部分は多数意見と少数意見を書くのが民主的だが、少数意見をすべて書くのかまとめて書くのかについても合意を得るのがよい。部会三役の原案を出す際には、たたき台であることを明示するべきである。案が決定のように報道されたため建設的な議論ができなかったという経験がある。
- (棟居部会長)我々が分かり易い言葉で議論してきた理念を確認しながら、進めていきたい。結果としてわずかしか条文には反映されない場合でも、裁判を通じて部会の議論が反映されることがあるので、立法後に有効性をもつよう説得力のある法律にしたい。
- (東室長)項目立てについては、これまで議論したものを「資料1」にまとめた。中間整理以降に議論したハラスメント、欠格条項、障害女性については、総論で触れるべきか、各論になるのかについて議論が必要である。その他の項目についてもご意見をいただきたい。
- (発言)総論の項目に「障害の定義」とあるが「障害者の定義」の方がよいのではないか。差別の防止や啓発についてはどこで扱うのか。
- (東室長)本法は障害を理由とする差別が主題であるので、障害の定義は必要だが、障害者の定義は独自の項目として書く必要はないのではないか。これまでの議論では、必要であれば障害の定義に関連して書いてはどうかということだった。差別の防止については、書くべきであるならば、国もしくは都道府県、市町村の責務で触れることになるだろう。
- (発言)障害と見なされて差別されること等があるので、障害を定義することが大事である。
- (発言)事前防止は国、都道府県、市町村の責務で触れるとのことだが、事前的改善措置も併せて考えた方がよいのではないか。差別禁止法を障害のない人にも適用するのかは議論が分かれていた。車いすを使用しているために飛行機に搭乗できない場合、車いす使用の理由が怪我でも障害でも差別禁止法が適用されるべきではないか。この点は障害の定義で入れ込むのか。
- (東室長)障害を理由として誰を差別してはいけないかという問題は、障害者だけに限るのか障害のない人にも広げるのかという議論なので、障害の定義とは別の問題である。事前的改善措置は義務であり、行政施策として行われる事前の啓発等とは質が違う。事前改善措置が合理的配慮とどのような関係になるのか、議論するべきである。
- (発言)各論の項目に「雇用、就労」とあるが、第一次意見等にそろえて「労働及び雇用」とした方がよい。「就労」の範囲が議論になるので整理していただきたい。
- (東室長)雇用、労働、就労という言葉の意味の違いやその範囲については、部会の取りまとめの中で整理していただきたい。
- (発言)法律のタイトルは障害者差別禁止法ではなく、障害差別禁止法の方がよい。国、都道府県、市町村の責務に加え、国民の責務として、国民がどのような意識でこの問題に対処するべきかについて書いてはどうか。まとめ方は中間整理のように「~の意見が出された」「異論があった」等とするのではなく、端的に「~である」等としていただきたい。少数意見を記載する際に全体の論旨が伝わらないような書き方はしない方がよい。雇用、就労、労働については福祉的就労も含まれることを明確にするべきである。労働法が適用される労働だけを対象とするのではなく、労働者と同じような働き方をする人を幅広く救える形にした方がよい。
- (発言)総論に交通事業者等の役務提供者の責務を追加するべきではないか。障害児も追加する必要がある。
- (東室長)役務提供者の義務は各論ごとに内容が違うので、総論ではなく各論に書く方がよいのではないか。障害者の定義を書く必要がないとすれば、障害児についてのみ、年齢で区別して項目を追加する必要はないのではないか。障害女性のように複合差別があるということならば、総論に盛り込むことについての議論が必要になる。
- (棟居部会長)障害に怪我等の一時的な特徴までも含むと、範囲が曖昧であるとして立法化に否定的な意見が出てくるだろう。日本国憲法に差別禁止の項目はあるが障害者は明示されておらず、社会的身分で読むというつくりになっている。人種、信条、性別等の集団の属性を挙げていることと整合性をとるなら、障害者という集団も明示できるのではないか。
- (発言)イギリスの平等法では障害の定義があり、障害者は障害を持つ人であるとしている。障害を理由とする差別には、障害者に加えて関係者や過去に障害を持っていた人への差別も含まれている。日本の差別禁止法でも障害を理由とする差別を禁止し、その主要な対象者は障害者だが、周辺にも差別禁止規定の適用対象者がいるという書き方にしてはどうか。
- (発言)障害を持たない親への、その子どもの障害を理由とする差別等も禁止するならば障害差別禁止法とするのがよい。ただし、合理的配慮は障害者に提供すると書くならば、障害と障害者の両方の定義が必要なのではないか。部会三役の原案は「資料1」の項目に沿って作成されるのだろうが、各論の項目の根拠は何か。別の項目立ての可能性は考えられないのか。
- (東室長)項目立てはこれまで取り上げた項目をまとめたものなので、これについて意見をいただきたい。千葉県条例等各地の条例づくりの過程で差別の実態が整理されているので、それを踏まえて議論していただいた。しかし、これまでの議論に拘泥するということではないので、各論の項目や順番、切り口について意見をいただきたい。
- (発言)オーストラリアの差別禁止法には関係者に対する差別についても規定がある。EU加盟国27か国はすべて、関係者等を障害差別に入れている。フランスやオーストリアの差別禁止法では家族を含む関係者にも合理的配慮を提供することが規定されているはずである。
- (発言)差別禁止法に差別をしてはいけないと書くだけでは、公法の問題として国が差別をしてはいけないと述べるにとどまり、差別された人が損害賠償や差し止めを求める等しても、差別禁止法から直ちには私人と私人の間の効力は出ないと解釈される可能性がある。この法に私法上の効果まで書くかどうかは重要な論点である。
- (発言)労働分野では私法的効果について裁判所が判断しており、法律上、明確に「禁止する」「してはならない」と書かれていれば私法的効果があるとして、「それに反する契約は無効である」「損害賠償の対象になる」と解釈している。差別禁止法についても、条文からいかなる私法的効果を導き出すことができるのか、これに反する契約が無効とされた場合の補充的な効力はどうなるのか等について議論しておきたい。
- (棟居部会長)労働法では私法的に無効であるという規範の立て方を既にしているとのことだが、労働法は公法と私法の中間の社会法だと認知されており、その考え方を私法上の関係にまで拡張できるのか。
- (東室長)各国の差別禁止法は、憲法的アプローチ・刑事法的アプローチ・福祉的アプローチ・民事法的アプローチの4つの視点から分類されているが、多くの差別禁止法は民事法的な類型で、当事者間の私法的関係を通して解決することとしている。差別禁止部会でもこの点を踏まえてご議論いただいてきたが、必要であれば部会の取りまとめで触れた方がよいかもしれない。
- (発言)本法を民事法的な類型とするということは、これまでの議論の前提だっただろう。しかし、「資料1」では、国の責務・都道府県の責務・市町村の責務といった民事法では見られない項目が示されており、また、法の実効性を確保するためには罰則が必要だという議論もある。これでは、法の性格が分かりにくくなる危険性がある。
私法上の効果論としては、入店拒否のために300円の牛丼を食べることができず自己決定を侵害されたとして損害賠償請求をしても、その金額が小さくなってしまい実効的ではないという問題がある。差別禁止法に違反した契約が無効であるという主張は公序良俗論等で立て易いが、契約を差別的に拒否されている場合は無効であると主張したところで問題は解決されず、また契約強制は負担を受ける側の権利との調整等難しい問題がある。私法上の効果としてどのぐらいのことを差別禁止法で考えることができるのかについて議論した方がよい。
- (発言)役務には福祉サービス等の公的サービスが含まれている。現在の法律では、利用者が福祉サービスを権利として請求することはできない。差別禁止法は権利保障法であり、この請求権を保障するものであると考えてよいのか。
- (東室長)本法が民事法的な枠組みの中で解決するものであれば、そこにおける権利は私法上の権利という位置づけになる。憲法で保障されている権利を、私法的な権利義務の中で保障するということである。したがって、憲法上の権利と本法における権利とは性格が違うということになるのではないか。この点についてもご議論いただきたい。
- (棟居部会長)公序良俗や不法行為の違法性の解釈を通じて差別事案について慰謝料を認める下級審の判例があり、民法の仕掛けの中で憲法上の権利が私法の意味内容に取り込まれている。したがって、私法上の直接の権利ではないという指摘か。
- (東室長)間接適用により一般条項を使ってしか私法レベルで解決できなかったものを、私法レベルで明確な法体系をつくり解決を図るということである。このことは、憲法上の人権に資することにもなる。
- (棟居部会長)合理的配慮請求権を民民の関係で立てるなら、権利を創設すると言わざるを得ない。男女雇用機会均等法の差別禁止等では、権利がまずあって、その結果として違法もしくは無効だということになるのか。
- (発言)男女雇用機会均等法や労働基準法4条(男女同一賃金の原則)違反については、不法行為と同様に損害賠償の対象になる等事後的な救済が多い。しかし昇進や昇格、採用について争われる事案では、昇格請求権や昇進請求権、採用請求権があるかという議論が過去にもあった。その場合は、労働契約の内容に含まれる権利を履行せよという履行請求権があるという解釈になり、全く何もないところから権利を創設しその履行を認めるものではない。
- (東室長)権利を創設するのかは大きな問題である。権利条約や各国の差別禁止法においては、一般の市民がもたない権利を障害者のために特別に規定するという議論はしていない。しかし、これまでにないことを規定することになるという点は否めないので、部会の取りまとめにどのように書き込むべきなのか、積極的に提案していただきたい。
- (発言)民事的に効力を持つことは簡単ではない。労働分野の法律でもごく一部でしかなく、それについても相当な議論が重ねられてきた。また、請求権に関する議論があったが、労働分野でも有給休暇の取得以外に、請求権として位置づくものがあるかどうかについては見解が一致していない。請求権を創設することについては慎重な立場である。
- (発言)私人間で民事的な効力を認めるかどうかについて検討するに当たっては、私人が他の私人に対して何かをしてくれと求めることができるかという問題と、一定の行為をするなと求めることができるかという問題を区別する必要がある。
前者について民事法では、契約があれば約束した行為をせよと請求できるとされている。契約がないのに一定の行為を請求できるとするとそれは何故か、あるいは契約の締結強制を求めることができるのかが問題になる。民事法の領域では締結強制が可能な場合は一定の限度内であるとされており、差別禁止法でそこまでの効果を認めるとすれば、どういう場合にどのような理由で認めるのかを検討する必要がある。
後者は契約に限って問題になる事柄ではないので、求めやすいという面はある。差別禁止法ではどういう場面を想定して、どのような根拠で求めるのか等について、議論が必要がある。
- (棟居部会長)作為と不作為を区別するべきとのご指摘だった。不作為については人格権侵害で慰謝料が発生した判例もあり、これを立法化することに違和感はない。しかし、合理的配慮請求権を新たに立てると、そのような作為請求権はどこから発生するのかということになる。
- (発言)障害者が差別禁止法に求めているのは、障害のない人たちと同じように生きていくことのできる社会をつくるということである。当たり前の暮らしを求めるための法的措置が難しいということが理解できない。障害者にとっては差別禁止法でも機会均等法でもよいが、新しい法制度の中で実効性を担保するということを共通認識にしていただきたい。
- (発言)障害者は新しい権利の創設を求めているのではなく、同じ日本人として当然あるべき権利や機会が失われている現状の修復を求めている。一般の国民が当事者の視点からこのことに合意できるような議論が必要であり、部会の取りまとめの基本はこの点にある。法律論や制度論ではなく、国民の当たり前の意見や質問に視点を置いて部会の取りまとめをつくるべきではないか。
- (発言)私たちは平等に生きたいと願っている。机の高さを車いすに合せる、車いすでも仕事ができるよう通路を保障する等の簡単な合理的配慮が行われないために、多くの障害者が働けない、教育を受けられないといった状況になっている。合理的配慮は、障害者の壁になっているのは実は簡単なことなのだというメッセージである。
「資料1」の項目に選挙等とあるが、選挙に限定せず、政治参加としていただきたい。
- (発言)地方自治体の採用試験には一般枠と障害者枠があるが、いずれにおいても多くの自治体で、介助者なしで職務が遂行できる・口頭面接が可能である・活字印刷物に対応できる・自家用車での来庁は認めないといった受験資格の制限がある。障害者雇用促進のためには、こうした排除を改善しなければならない。一方、一般枠の採用試験でも点字試験の実施・手話通訳の配置・福祉機器の持込・体力試験や集団討論の免除等の配慮をしている自治体もある。
これらの課題は、学校の入学試験や欠格条項に関わる資格試験等にもつながっている。試験等の受験資格や実施方法に関する障害者への制約をなくすとともに、合理的配慮の提供を明確にすべきである。これらの試験の実施要綱から障害者への制限になる項目を削除すべきであることを、総則か各則に盛り込む必要がある。
合理的配慮について、自治労障害労働者全国連絡会が示したガイドラインを資料として提出している。国も2005年に「資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について」を示していることから、この部会としてもこうした事例を示す必要がある。また、こうした配慮は、採用後も必要であることを明記するべきである。
- (棟居部会長)公務員になることは就職という職業選択の側面に加え、公の職務に就く権利すなわち参政権という側面もある。この観点を強調すれば、合理的配慮の必要性を導き出しやすいのではないか。
- (発言)試験や資格取得における合理的配慮を総則と各則のどちらに規定するかについては、実効性がある方にするべきであり、確信的な意見はない。
- (棟居部会長)各論の選挙等と言う項目を政治参加にするべきとのご意見があったが、そうした上で、公務就任をこれに含めるという整理も考えられるのではないか。
- (東室長)差別禁止法は福祉法と違い障害者と国民との関係を規律する法律になる。一般の国民の側から見ると色々な疑問が出てくるのではないか。この法の必要性、有用性、性格、差別と合理的配慮の定義や例外等についての国民の基本的な疑問を念頭に置きつつ、部会の取りまとめをわかりやすくする必要がある。「参考2(議場配布)」という資料に質問として考えられるものを示したので、これらを踏まえ、どう分かり易く説明するか、ご議論いただきたい。
- (発言)障害者差別をなくすには国民的理解が必要である。障害者は自らがなぜこの法律を求めているのかについて発信する義務があり、国民の基本的な疑問に対して専門用語ではなく「なるほど」と思える形で答える必要がある。
- (棟居部会長)「障害者に対する差別といった実態があるのかないのかよくわからない」という疑問への答えとしては、正式な機関による統計的な資料や大規模なアンケート等の証拠が必要なのか、それとも、読む人が「なるほど」と思えるような典型事例を挙げればよいのか。
- (東室長)両方あり得るのではないか。差別禁止条例を制定した自治体ではその過程で多くの差別事例を挙げており、また内閣府が行った差別事例の調査報告書もある。そのような公的な資料にある事例でも、もしくは委員の個人的体験でもよく、海外の取組も参考になる。例えばADAは30年の歴史の中で判例の集積もあり、障害者差別の実態があることの説明にはなるだろう。
- (発言)権利条約や千葉県の差別禁止条例を持ち出して「だから差別はダメだ」と説明しても一般の人は腑に落ちないという観点から言うと、ADAに30年の歴史があることも説得力をもたないのではないか。
- (発言)障害者差別禁止法ではなく障害差別禁止法とするのがよいという議論があったが、「参考2(議場配布)」にある質問は、障害ではなく障害者を対象とする差別禁止法への質問になっている。質問の仕方を変える必要があるのではないか。
- (東室長)「参考2(議場配布)」はQ&A集を作ることを想定したものではなく、このような質問を念頭において、どう分かり易く部会の意見を取りまとめるのかを考えて欲しい。
- (発言)「差別禁止法の制定によって多くのお金がかかりませんか」という質問を入れた方がよい。差別禁止法ができてもお金が必要にならない場合も多いことを伝える必要がある。
- (棟居部会長)差別の問題はお金ではなく行動によって解決されるものであるから、お金はそんなにかからないと想定しているというのが、その質問への答えということになる。
- (発言)合理的配慮の費用を軽減するための財政的措置は不可避である。自治体の条例が差別禁止を掲げるよりも、多くの方々の理解を深める市民教育をメインにしているという現状を踏まえれば、最初は緩やかな制度とし、後に拘束力を強くすることも考えられる。どこまで拘束力のあるものをつくるのかは十分に議論するべきだろう。
- (棟居部会長)自治体の条例は、市民教育を全面に押し出しながら、従来から取組んでいる市民社会における助け合いのルール作りの延長線上で策定されている。差別禁止法で国民に負担を課す部分については、自治体の条例と組み合わせて実施できないものか。条例づくりの先進的な議論から、私たちも学ぶべきだろう。
- (発言)差別した人を処罰するのかどうかは明確に議論されてこなかったが、処罰は入れずに救済をするという仕組みを考えているという理解でよいのか。
- (東室長)差別禁止法は処罰するための法律ではないということを多くの人に理解してもらう必要がある。一番大事なことは、何が差別であるのかという物差し、つまり行為準則を提供することであり、これは救済する時の目安ともなる。
- (発言)「差別禁止法によって表現の自由が侵される危険性はないのか」という質問はどういうことを想定しているのか。
- (東室長)一般的に言って、そういった疑問が出される可能性がある。しかし、差別禁止法が禁止することになる差別の定義からも分かるように、この法律が表現の自由を規制するものではないことを理解してもらうことが重要と思われる。
- (棟居部会長)差別的表現については、規制するのではなく相互による批判で淘汰されるべきであるという意見が普通だろう。建築家のつくった建物にスロープを付けることを求めるとそのコンセプトが台無しになるといった場合は、表現の自由と差別禁止がぶつかり合うのか。
- (東室長)どんな建築物も建築基準法に従わざるを得ない。そこでは表現の自由と建築基準法が衝突することはない。同じように差別禁止法も表現の自由と対立するものではないという点を説明することが重要である。
- (発言)差別禁止法の実現に当たり、政府内及び議会の理解や国民的コンセンサスを得るための説明が必要になるが、抵抗感が強い点や理解されやすい点がどこなのかが分からないので、説明が難しい。そこで、中間取りまとめについてパブリックコメントを取り、国民が疑問を持ちやすい点を実証的に把握できないか。通常行われる条項化された段階でのパブリックコメントは、出しても聞いてもらえないだろうという印象を与えるので、その前の段階で国民がどのように感じているのかについて把握したい。
- (発言)1985年の女性差別撤廃条約についての議論の際には、固定的役割分担という家庭内の問題に法律が介入することについて抵抗感が強かった。差別禁止法においては、合理的配慮義務として1対1の個人の関係に法が介入し、関係を強制することについて抵抗感があるのではないか。したがって、合理的配慮に関して丁寧過ぎるぐらいに説明をする必要がある。
- (発言)多くの市民は障害者と差別を結び付けるのも難しく、かわいそうな人たちという感覚でしかないのではないか。また、福祉の充実を差別と関連づけて考えることはできないにもかかわらず、多くの人は障害者福祉を充実すれば十分だと考えている。まだまだ、関係者と市民の意識はかけ離れている。
- (棟居部会長)女性差別より根が深く、障害者はかわいそうな人と一括りにされているとの意見である。障害のない側が、障害者をかわいそうな状態にしていると言える。そこに排除が加わるという点に、障害者差別の特徴がある。
- (発言)障害者権利条約を批准するには合理的配慮義務を国内法で整備する必要があるというだけでは、差別禁止法を成立させる上で説得力がない。そのために「参考2(議場配布)」のような想定問答集は重要であるが、加えて想定事例集も必要ではないか。教育、労働等の場面毎に差別の事例集があると、学校や企業等の理解が進むだろう。英国平等法では、行動準則の中に具体例が掲載されており、条文の意味を理解するのに役立つ。
- (東室長)Q&Aや想定事例集は法案ができた段階でその説明として必要になるかもしれないが、「参考2(議場配布)」を示した趣旨は部会の取りまとめにどのように盛り込むのかということなので、その点について議論していただきたい。
- (発言)多くの市民にとっては差別の事例を並べられても「何故それが差別なのか」という疑問がある。それが差別だと説明されても、次には「でも仕方ないのではないか」という思いがある。この点を明確にしなければ、その先の合理的配慮は理解できないのではないか。また、「それならば、旅費の半額等障害者だけが受けている優遇もなくすことになるのではないか」という疑問も出てくるだろう。
- (発言)多くの国民は障害のある人を故意に差別しようとは思っていない。障害のある人が何を求めているのかが社会に知らされていない中で善意の人たちが誤解をし、その結果差別が生じている。だから「啓発」をまとめの項目に入れるべきである。
- (棟居部会長)生きるために必死になっている人の中には、障害者は年金や交通機関の半額等で優遇されているとする人がいる。しかし、障害者はお金のためではなく、社会に参加して障害のない人と同じ土俵に立ちたいと思っている。このズレを啓発で埋めるべきという重い指摘であった。
- (発言)法律をつくった後だけではなく、部会の取りまとめをつくる際にも典型事例があった方がよいのではないか。
- (発言)「他にも差別で困っている人たちがいる中で、障害を理由とする差別だけを取り上げるのは何故か」という質問も加えるべきではないか。「条約を批准するためである」という答えでは、国民一般の理解は得られないだろう。
- (東室長)「参考2(議場配布)」の質問については、これに対する正解を求めるという話ではないので、強制的に回答例の提出を求めるものではない。意見をいただければいろいろな答え方が検討できるので、ご協力をお願いしたい。
- (棟居部会長)従来の議論を踏まえた上で事務局が回答例を作成し、それについて補充意見を聞く方がよいのではないか。
- (発言)権利条約の批准はいつ頃を予定しているのか。
- (東室長)条約の批准は内閣府ではなく外務省の所管である。差別禁止部会では、条約の批准は差別禁止法をつくることが必要条件であるという前提で議論してきたが、現時点で批准の時期の見通しについて、特段の検討はなされていない。
[以上]
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