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第5回障がい者制度改革推進会議 差別禁止部会(2011年6月10日)
議事要録


議事 差別禁止に関する諸外国の法制度について

*上記のテーマでヒアリングを行いました。ヒアリングについては議事要録を作成しないこととしておりますので、内容の確認は議事録をご覧下さい。

議事 差別禁止法制の必要性等の論点について


1 差別禁止法制の必要性について…主な書面意見(9名)

  • (東室長より冒頭に提起)差別禁止法は国、行政と障害者という2面関係に加えて、一般の国民と障害者の関係が出てくる。国民との利害関係を調節する法律になり、その必要性を多くの国民が理解する必要がある。更に、障害者と国民の在り方を問う差別禁止法制が新しい社会づくりに重要な役割と意義があることについても、理解を広げなければならない。
  • あらゆる分野で差別の事例があり障害者の尊厳が害されていることが法制定の根拠になる。
  • 現行の法制度では差別をなくすのは困難であるため、差別禁止法が必要である。憲法や人権条約の差別禁止条項は私人間を問題にしないという枠組みの制限があり、差別の防止や救済が困難である。障害者基本法の差別禁止規定は理念であり、裁判規範性も救済手続もない。
  • 社会の意識として差別禁止が確立されるためには、差別の定義や類型、適用範囲、社会生活や日常生活の場面ごとの基準等を体系的に示し、裁判規範性を備えた統一的な法律が必要だ。立法を通じて差別の反社会性を国家意思として表明することが、差別をなくすのに有効だ。
  • 障害者権利条約は国家と個人の間の差別禁止だけでなく、私人間の差別禁止を求めているので、合理的配慮の否定を含む差別の禁止を日本の法制度として確保すべき。
  • 救済手続について、新設が見込まれる人権委員会の判断基準を明確に示すためにも差別禁止法の制定が望まれる。
  • 民間では契約自由・思想の自由・私的自治等の原則が働く中で、何が差別か、どういう差別が違法となるか、国がどのような条件整備を行うべきかといった論点について、社会通念上の最大公約数を差別禁止法に書くべきだ。
  • (発言)差別禁止法という統一法は必要である。アメリカもイギリスも統一法があるから間接差別の概念の確立や、範囲の拡大、適用場面の拡大などが進化している。合理的配慮という新たな考え方が出てきた点、従来の人権擁護が場面ごとで適用が違うためトラブルを招いていた点などから、日本でも差別禁止法の必要性が高まっている。フランスの場合、2005年法ができたことで、教育や労働の分野における問題を顕在化、明確化し、次の段階に踏み込むことができている。
  • (発言)現に差別があり、現行法では救済されないから差別禁止法が必要だ。障害者基本法に差別禁止条項があるにもかかわらず救済されないという現状を踏まえるべきだ。法制定に当たり立法事実の有無が問題になるので、差別禁止条例が制定された千葉等の事例を共有したい。
  • (発言)欠格条項や精神障害者の強制的な医療の問題など、現行の差別的な法令も見直しながら差別禁止法制をつくっていきたい。
  • (発言)今後の進め方についても当てはまるが、このような難しい立法については、基本的な考え方に対立があり得る。少なくとも多様な見解があり、一致を見なくても、立法の中身についてコンセンサスが得られるのであれば、それを立法する方向で進めていくべきである。

2 差別禁止の分野における「障害」をどうとらえるかについて…主な書面意見8名

  • 社会モデルをベースとしつつも、差別禁止法における障害は別の考え方が入れられるべきだ。(多数)
  • 権利条約で述べられている社会モデルの規定を差別禁止法でも入れるべきとの意見もある。

3 機能障害について、すべての機能障害を対象とすべきか、何らかの制限(例えば、期間、程度)を加えるべきかについて…主な書面意見8名

  • 一時的な傷病や軽微な障害については、機能障害からは除くべきとの意見と機能障害に含めるべきとの意見が半数ずつだった。
  • 「実質的な」のように、一定の評価を伴うために判断するものによって結論が左右されるような制限規定を入れるかどうかが問題だ。
  • (発言)参考資料3各国差別禁止法における障害(者)の定義比較表にあるドイツの法律は、何年法なのか。各国比較で6か月と明記したものは、ドイツしかないのか。
  • (東室長)ドイツ障害者対等化法というのは1つしかなく、何年法というのはないと思う。
  • (発言)EUで期限を定める国と定めない国があるという比較で、定めている国がほかにもあると読んだことがある。
  • (発言)日本では身体障害者の認定基準があり、脳梗塞関係は、おおむね6か月で状態が固定したと判定されれば、障害者と認定される。3か月で認定する場合もあるが、その場合は一定の時点でドクターの診断により再認定する。
  • (棟居部会長)困難な立法の場合は全員一致にこだわるのではなく、ある程度のコンセンサスが得られたところで立法化するプラグマティックな手段が好ましいいう意見があった。その観点だと、障害定義は社会モデルではなく医学モデルになるのではないか。
  • (発言)定義をどちらにすべきかというレベルの問題ではなく、障害者差別禁止法の目的をどこに求めるかといった基本的な考え方のレベルの話をした。
  • (発言)理想的な法、先駆的な法がほしいが、平成25年までの立法では不可能だろう。ただ、論点ごとにどういう対立点があるのかという議論を尽くしておく必要がある。また、どこを到達点とするのか、それが技術的に可能かということを念頭に置きながら、この1年半の議論を進めていただきたい。
  • (東室長)障害の社会モデルは障害者が負う不利益の原因が社会の側にあることを気づかせる視点であるとした上で、差別禁止においては社会に存在する差別行為即ち社会的障壁を取り除くことが重要なので、障害をインペアメントとしても問題ないという意見がある。障害をインペアメントと社会的障壁の相互作用と定義づけた場合、障害があると立証するためには、訴訟で原告はその3つを立証しなければならないが、インペアメントに限定すれば1つ立証すればよい。また、社会による軽減措置があれば、インペアメントがあっても相互作用により障害が打ち消されて障害がないという判断構造を提供することにもなりかねない。
  • (棟居部会長)障害は社会が作り出しているという面があるのに、医学的な観点からは一見客観的に障害を判定できる。これではまずいという問題発見的な視点が社会モデルにはある。障害から社会モデルが外れた場合、この点に気づかず「努力が足りないだけだ」となるとよくない。社会モデルの問題発見的な側面にはこれからも留意する必要がある。
  • (発言)障害者差別禁止法はインペアメントを持つ人を対象にしている。まずインペアメントの障害を定義づけ、そしてそれから起こる現象によって生じている差別に焦点を当てる。これは社会的環境によって起こる不利を示しているのであり、何でも障害と表しては混乱する。
  • (発言)障害者基本法と障害者差別禁止法で、障害について全く別の定義をすることも議論の前提にしているのか。
  • (東室長)法律の目的が違えば、目的に応じて解釈をすることもある。障害者基本法が通った後、また差別禁止部会での議論が済んだ後、最終的に本法ではどうかという議論をすべきだ。今は純粋に差別禁止法においてどうなのかという議論をしていただきたい。
  • (発言)インペアメントの概念を広げるべきである。150キロの体重の人が飛行機に座れないから座席を2人分買うしかないという場合、障害者基本法では太っていることは障害ではないが、差別禁止法ではインペアメントに入るかどうかを視野に置く必要がある。
  • (東室長)体重が150kgの方は医者から見て障害がなくても、社会モデル的には機能障害に見える側面がある。インペアメントといった場合、医学的な基準でいうのか、社会モデル的な側面を入れるのかも問題になる。インペアメントに限るから医学モデル、社会的障壁を入れるから社会モデルという切り分けではない。

4 障害が、現在存在している場合だけに限るか、過去に障害の履歴を有する場合や将来発生する蓋然性がある場合、さらには、誤解などで障害があるとみなされた場合も含めるかについて…主な書面意見8名

  • 含めるべき(多数)。被害の実態があれば救済すべきだ、障害に起因する差別という観点から対象に含めるべきだ、社会モデルの観点から入れるべきだ等の意見があった。ただ、障害があるとみなされる場合については、合理的配慮の提供は要らないとの意見があった。
  • (東室長)この論点は差別禁止法が障害者を対象とするのか、それともすべての人を対象として障害を理由とする差別を禁止するのかという、全体の枠組みに関連する問題であり、枠組みの議論は別立てでする。日本国憲法には「すべての国民は」と書いている。障害者の権利条約の第5条1項は「締約国は、すべての者が…(中略)…いかなる差別もなしに法律による平等の保護及び利益を受ける権利を有することを認める」とあり障害者に限定していないが、2項では「締約国は、障害を理由とするあらゆる差別を禁止するものとし、いかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な法的保護を障害者に保障する」と書いてある。各国が法律をつくるとき、障害者を対象にするのか、それとも対象を広げるのかという議論が含まれているのではないか。

5 障害に、必ずしも機能障害が伴わない外貌やその他心身の特徴を含めるべきかについて…主な書面意見8名

  • 差別禁止の分野では、入れるべき(全員)。当事者団体の意見も尊重すべき。
  • 1980年のWHOの国際障害分類では、インペアメントに形態障害もしくは形態異常が入っている。日本では、障害者基本法でも身体障害者福祉法でも、機能障害を伴わない形態障害は障害には当てはまらない。

6 差別禁止法の適用対象について

(1、障害者について、ADAは一定の分野の差別に関して、障害者について「有資格」という限定をつけているが、かような限定をつけるべきか、つけないとしたら一般的例外規定ないしは差別に該当するのかという判断などの場面で対処する方法があるかについて…主な書面意見7名)
  • 資格制限を設けるべきではない(多数)。理由としては、差別に該当するかどうかということで判断すれば足りる、差別禁止の例外として許容されるところで議論すべき等があった。
  • 有資格の概念や範囲があいまいであり、新たな差別を持ち込む可能性もある。
  • 日本では職種ごとに求められる必須の職務を含む職務内容を詳細に規定する慣行がないので、「有資格」という限定をつけることは日本にはなじまない。
(2、障害のない人が、身内や友人など、その関係する障害のある人の障害を理由に差別を受けた場合、差別禁止法の適用対象に含めるべきかについて…主な書面意見8名)
  • 適用対象とすべき(多数)。理由としては、障害に起因する差別と言える、障害のある人に関係した人が関係性を理由に差別を受けることを放置することは障害に対する否定的な評価を容認することになる、障害のある人が人間関係を形成することが妨げられる等があった。
  • 現実に障害者の家族が不利益を負わされている。「障害を理由に差別されない」という書きぶりであれば、身内や友人も入ることになる。
  • 関係者自身の障害が推測されるような場合については対象にすべきだが、関係者の介護などによる労働能力の減殺が疑われる場合には対象としない。
  • 一般条項としての法の下の平等という規定で十分に禁止することができるから、対象としなくてもいいのではないか。
  • (棟居部会長)論点の4と5については、医学モデルに立脚する場合、医学的には問題ない巨体や外貌に特徴がある等の限界事例を議論してはどうか。医学モデルに立っても、限界事例を障害だと拾っていけば、修正できるという議論もある。社会モデルで法体系を整えても、運用では問題が出るかもしれない。
  • (発言)医学モデル、社会モデルとカテゴリーで分けるのではなく、裁判でその人の障害や特徴、機能を理由に差別されたということを立証しやすくする必要がある。そのために障害、インペアメントの定義が求められている。
  • (発言)体の特徴などを障害の中に含めるとすると、法律にはどう書くのか。形態の不全と書けば足りるのか。
  • (東室長)インペアメントを日本語では機能障害と一般的に訳しているが、ICIDHでは形態障害も含むという形で厚生労働省から訳が出ている。機能障害に形態障害を含むと推測しにくければ、括弧書きで形態障害を含むといった念押しの規定が要る。過去、将来、もしくはみなしについても確認規定として入れるか、付加的な形で入れるかのような議論があり得る。
  • (発言)有資格の概念自体は否定しないが、この人は地域で生活できる資格がある人、この人はできない人という運用の危険性があるならば、有資格という書きぶりはやめた方がよい。
  • (発言)障害を理由とする差別なのか、それ以外のことを理由とする差別なのかの区分けをするときに有資格かどうかが問題になるので、裁判所や行政機関が判断基準としてとらえておけばよく、有資格について法律に書く必要はない。障害を理由とする差別の例示を規範として書くことには賛成だ。
  • (棟居部会長)身内や友人など、関係する障害のある人の障害を理由に差別を受けた場合、適用対象にするかどうかというテーマに戻ります。社会モデルの観点からだと障害がある人の周りの方も含むが、医学モデルだと含まれない。
  • (東室長)考え方の基本を示す論点を提示しているので、まず幅広い議論をしてから、現実的にはどうするかという議論に移ればよい。
  • (発言)イギリスのコールマンケースは、障害のある子どもを産んだ母親が就労上の差別を受けて仕事を辞めたことについての欧州司法裁判所でのケースで、その後、イギリスの2010年の平等法には、家族、関係者も対象にすることが法文に明記された。EU加盟の27か国では欧州司法裁判所の判例に基づき、差別禁止に障害の関係者が入ることになる。
  • (発言)障害者を定義するのか、障害を定義するのかという2つの議論があることを改めて感じた。また、一般的に定義するのか、厳密に救済の対象になり得ると限定するのか等、整理すべきことがあると感じた。
  • (発言)厚労省の労働政策審議会で、労働分野における差別禁止の絡みで議論しているが、ほかの分野で今後この問題をどう関連づけ展開していくかを考えながら今日の議論を聞いた。
  • (棟居部会長)労政審では労働に特化した細かい議論をしているので、そちらの議論の状況をこちらにも発信していただきたい。

[以上]

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